(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
A47J27/00 109F
A47J27/00 109B
A47J27/00 109G
A47J27/00 109P
(21)【出願番号】P 2020027053
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】守岩 和秋
(72)【発明者】
【氏名】坂田 直也
(72)【発明者】
【氏名】大竹 彩斗
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-050146(JP,A)
【文献】特開2005-118250(JP,A)
【文献】特開2001-087130(JP,A)
【文献】特開2012-005626(JP,A)
【文献】特開2007-125357(JP,A)
【文献】特開2002-202499(JP,A)
【文献】特開2001-340215(JP,A)
【文献】特開2016-112182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-27/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物である米及び水が収納される内釜と、
電力の供給を受けて前記内釜を加熱する加熱手段と、
前記被加熱物の温度を検出する温度センサと、
標準モード又は冷凍用モードの何れかを選択する操作が入力される入力手段と、
米の炊き方に関する複数の選択項目が表示される表示手段と、
前記標準モード又は前記冷凍用モードでは、前記被加熱物の温度が予め設定した予熱温度となるように前記電力を制御する予熱工程を実施し、前記予熱工程の後に、前記被加熱物の温度が予め設定された第1温度となるように前記電力を制御する昇温工程を実施し、前記被加熱物の温度が前記第1温度に到達すると沸騰工程を開始し、前記被加熱物の温度が沸騰温度となるように前記電力を制御し、前記被加熱物の温度が前記沸騰温度よりも高い第2温度に到達すると前記沸騰工程を終了させ、前記沸騰工程の後に、前記被加熱物の加熱を継続させるむらし工程を実施する制御手段と、
を備え、
前記入力手段は、前記表示手段に表示された米の炊き方に関する複数の選択項目のうちの1つを選択する操作キーと、この選択項目での炊飯モードを行う炊飯キーとを有し、
前記標準モードは、前記表示手段に表示された、炊き方に関する複数の選択項目のうち「ふつう」が選択された状態で、前記炊飯キーを押すことで行われ、
前記冷凍用モードは、前記表示手段に表示された、炊き方に関する複数の選択項目のうち「冷凍用」が選択された状態で、前記炊飯キーを押すことで行われ、
前記標準モードにおける前記予熱工程及び前記昇温工程における40℃~70℃の温度範囲内における温度と、前記温度範囲内での時間とで構成される面積を第1の面積、
前記冷凍用モードにおける前記予熱工程及び前記昇温工程における40℃~70℃の温度範囲内における温度と、前記温度範囲内での時間とで構成される面積を第2の面積とした際、第2の面積と第1の面積との面積比(第2の面積÷第1の面積)が、1.1~3の範囲内であることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
冷凍用モードにおける予熱温度は、
標準モードにおける予熱温度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
冷凍用モードにおける予熱工程の時間は、
標準モードにおける予熱工程に時間よりも長いことを特徴とする請求項1又は2に記載の炊飯器。
【請求項4】
冷凍用モードにおける予熱工程は、終了前所定時間は通電を停止することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項5】
冷凍用モードにおける昇温工程での電力は、
標準モードにおける昇温工程での電力より小さいことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米及び水等の被加熱物を収納した容器を加熱する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
標準(ふつう)の炊飯モードと、標準(ふつう)の炊飯モードとは異なる炊飯モードとの2種以上の炊飯モードを有する炊飯器は従来から存在しており、例えば、特許文献1には、標準(ふつう)モードAと、単位重量あたりの飯の中に含まれる所定の成分が標準(ふつう)モードAよりも多くなる成分増量モードBとの2つの炊飯モードを有する炊飯器が記載されている。この標準(ふつう)モードA、成分増量モードBともに、予熱工程、昇温工程、沸騰工程、むらし工程の順で炊飯を行うが、成分増量モードBの予熱工程の時間を標準(ふつう)モードAの予熱工程の時間よりも長く、成分増量モードBの昇温工程の電力を標準(ふつう)モードAの昇温工程の電力よりも小さく、成分増量モードBの沸騰工程の電力を標準(ふつう)モードAの沸騰工程の電力よりも大きくするとともに、沸騰工程の時間を短くする等の制御を行うことで、炊き上がったご飯の成分や食味が変わるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1人暮らしの老人や単身赴任者が増えた現在では、炊飯器でご飯を炊いたのち、それを小分けしてラップで包んで冷凍庫で冷凍にし、数日の間に、必要に応じて電子レンジなどで解凍し、食べるという状況が見られる。しかし、現在販売されている炊飯器は、炊き立てでの食味、成分がベストの状態になるようにした炊飯モードはあるが、これら炊飯モードで炊いたご飯を冷凍・解凍すると、ご飯の水分含有量が減少し、ぱさぱさしたまずいご飯になってしまう。冷凍・解凍した後に、使用者が食べておいしいと感じるようなご飯になるような炊飯モードを備えた炊飯器は現在存在していない。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、冷凍・解凍をした状態で使用者が食べた場合に、おいしいと感じるようなご飯を炊飯するモードを有する炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここでの炊飯器は、第1炊飯モードと第2炊飯モードを備え、第1炊飯モードにおける予熱工程及び昇温工程における40℃~70℃の温度範囲内における温度と、温度範囲内での時間とで構成される面積を第1の面積、第2炊飯モードにおける予熱工程及び昇温工程における40℃~70℃の温度範囲内における温度と、温度範囲内での時間とで構成される面積を第2の面積とした際、第2の面積と第1の面積との面積比(第2の面積÷第1の面積)が、1.1~3の範囲内であるようにした。
【発明の効果】
【0007】
第1炊飯モード(標準モード)の他に、より膨潤で糖成分が第1炊飯モードより大きくなるように炊き上げる第2炊飯モード(冷凍用モード)を設けたので、必要に応じて使い分けができ、冷凍・解凍後でもおいしいご飯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図1の炊飯器の制御部の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1の炊飯器の操作部及び表示手段の概略模式図である。
【
図5】標準モードの炊飯工程を示すフローチャートである。
【
図6】冷凍用モードの炊飯工程を示すフローチャートである。
【
図8】予熱工程、昇温工程での時間と温度の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る炊飯器1を示す斜視図であり、
図2は、実施の形態1に係る炊飯器1を示す断面図である。
【0010】
図1及び
図2に示すように、炊飯器1は、例えば電磁誘導加熱式調理器であり、本体2と、蓋体3と、加熱手段4と、内釜5とを有している。本体2は、上面が開口21となっている有底円筒状をなしており、内部に中空部22が形成されている。蓋体3は、本体2の上面に開閉自在に取り付けられ、本体2の開口21を塞ぐ。加熱手段4は、本体2の中空部22の底面に設けられており、内釜5の底面に沿う形状をなしている。加熱手段4は、例えば加熱コイルであり、内釜5に渦電流を誘起して内釜5を加熱する。なお、加熱手段4は、平坦であってもよい。また、蓋体3の内釜5に面する内蓋6には内釜5内の温度を検出する内部温度センサ7が、本体2の底部には、内釜5の底部の温度を検出する釜底温度センサ8がそれぞれ設けられている。
【0011】
図3は、炊飯器1の制御部の概略構成を示すブロック図である。
図4は、蓋体3の上面部(本体とは反対の面)に形成された入力手段及び表示手段の概略模式図である。
蓋体3の上面部には、お米キー9a、メニューキー9b、音声キー9c、予約キー9d、設定キー9e、切・保温キー9f、操作キー9g、炊飯キー9hからなる入力手段9と、液晶やLED等からなる表示手段10とが配置されている。
【0012】
また、入力手段9と表示手段10は、制御手段11に接続されている。制御手段11は、経過時間を計測するための計時手段12を有し、入力手段9から入力された信号に基づき、表示手段10の表示や加熱手段4を制御する。例えば、使用者が入力手段9を用いて、お米の種類や炊き方を設定した場合には、対応する信号が制御手段11に送られ、制御手段11が、対応する炊飯ができるように加熱手段4の通電制御をする。
【0013】
次に、入力手段9を用いて、炊飯条件を選択するときの動作の具体例について説明する。
まず、最初に、電源をオンにした時点では、表示手段10には、デジタルでの時計が表示されている。
【0014】
この状態で、使用者が、お米キー9aを押した場合に、表示手段10には、お米の種類に関する複数の選択項目:「白米」、「無洗米」、「発芽米」、「分づき米」、「玄米」のうちの3つが左側に、炊き方に関する複数の選択項目:「ふつう」、「冷凍用」、「エコ炊飯」、「おかゆ」、「炊込み」のうちの3つが右側に同時に表示される。
具体的には、
図4のように、左側には上から、「玄米」、「白米」、「無洗米」が並び、「白米」が白黒反転している。そして、右側には上から、「白米」に対応して選択できる「ふつう」、「冷凍用」、「エコ炊飯」が表示されている。
この状態では、操作キー9gの上側矢印部分、下側矢印部分を押すことで、左側の表示がスクロールし、例えば、上側を押した場合には、上から「白米」、「無洗米」、「発芽米」が表示され、「無洗米」が白黒反転するとともに、右側も、「無洗米」に対応して選択できる「エコ炊飯」、「ふつう」、「おかゆ」などが表示される。
また、
図4の状態で、操作キー9gの右側矢印部分を押すことで、右側の「冷凍用」が白黒反転し、上側矢印部分、下側矢印部分を押すことで右側の表示がスクロールする。
【0015】
図4で、右側にて「ふつう」や「冷凍用」が白黒反転している状態で、使用者が炊飯キー9hを押すと、制御手段11は、白黒反転しているモードに対応した炊飯工程になるように、すなわち、「ふつう」が白黒反転している状態で炊飯キー9hを押したときは、標準モードが、「冷凍用」が白黒反転している状態で炊飯キー9hを押したときは、冷凍用モードが、選ばれ、それに合うように加熱手段4の通電制御を行う。
【0016】
次に、炊飯工程の流れについて説明する。
図5は標準モードのフローチャート、
図6は冷凍用モードのフローチャートである。
図7は、それぞれのモードでの温度と時間とを記載した時間―温度の関係図である。なお、
図5及び
図6に示される温度の内、それぞれ予熱工程(S2)の予熱温度と沸騰工程(S4)の検知温度は釜底温度センサ8で検出した温度、昇温工程(S3)の検知温度は内部温度センサ7で検出した温度であり、
図7に示される温度は、釜底温度センサ8で検出した温度である。
【0017】
炊飯工程の流れについて大まかに説明する。
図5、6に示すように、予熱工程(S2)、昇温工程(S3)、沸騰工程(S4)、むらし工程(S5)で構成されている。
【0018】
予熱工程(S2)は、米に吸水を促す工程である。
【0019】
昇温工程(S3)は、予熱工程での吸水が終了したのち、被加熱物(内釜5内の米と水)が沸騰温度に至るまでの工程である。
【0020】
沸騰工程(S4)は、被加熱物(内釜5内の米と水)を沸騰温度に維持し、デンプンの糊化が盛んに行われる工程である。加熱が継続されると、炊飯液(米から溶け出した成分と水の混合液)が徐々に少なくなり、炊飯液が消失するとドライアップと判定され、むらし工程(S5)へ移行する。
【0021】
むらし工程(S5)は、米を蒸らすことにより米の中心部まで糊化を促進させ、米粒内の水分分布を均一にする工程である。むらし工程が終わると炊飯は終了する。
【0022】
次に、炊飯工程の制御に関し、標準モードと冷凍用モードとを説明する。
以下、標準モードの炊飯制御を説明したあと、冷凍用モードの炊飯制御について、標準モードと比較しながらその特徴について説明する。
【0023】
[標準モード]
標準モードは、他のモードと比較し食感に関して顕著な特性を有さず、万人に好まれるご飯に炊き上げる炊飯制御を行うモードである。
【0024】
まず、使用者は洗米した米を内釜5に投入し、規定量の水を加える。内釜5の内側には炊飯量に応じた目盛り線(水位目盛り)が印字されている。なお、何れのモードにおいても、米の種類が同じであれば同一の目盛りを使用する。つまり、標準モード、冷凍用モードの目盛りは同じである。目盛りを統一する理由は、目盛りが複数あることにより使用者が間違った目盛りに水位合わせしてしまう事態を防ぐためである。
【0025】
次に、使用者は、米及び水を入れた内釜5を本体2にセットし、「白米」で「ふつう」が白黒反転している状態で炊飯キー9hを押し、制御手段11は炊飯制御を開始する。
【0026】
(予熱工程)
まず、
図5にて、予熱工程が開始すると(ステップS2)、制御手段11は内部の計時手段12で予熱工程経過時間t11の計測を開始させ(ステップS21a)、加熱手段4へ電力を供給する。制御手段11は、加熱手段4への通電及び遮断を繰り返し、釜底温度センサ8の検知する内釜5の温度が所定の予熱温度Ta(例えば54℃)を維持するよう火力調節する(ステップS22a)。そして予熱工程時間t11が所定時間(例えば20分)を経過すると(ステップS23a:Yes)、制御手段11は、予熱工程を終了し昇温工程へ移行する。
【0027】
(昇温工程)
昇温工程が開始すると(ステップS3)、制御手段11は加熱手段4へ電力P11を供給する(ステップS31a)。そして内部温度センサ7が、被加熱物(米と水)が沸騰したと判断される所定の温度(例えば80℃)を検知すると(ステップS32a:Yes)、沸騰工程へ移行する。
なお、内部温度センサ7が検知する内釜5内の空間温度は、実際の被加熱物の温度よりも遅く沸騰温度(例えば100℃)に到達するため、被加熱物の温度が沸騰温度に到達する時に内部温度センサ7が検知する温度(例えば80℃)を、沸騰工程へ移行するか否かを判定する所定の温度として設定している。
【0028】
(沸騰工程)
沸騰工程が開始すると(ステップS4)、制御手段11は加熱手段4へ電力P12を供給する(ステップS41a)。電力P12は被加熱物(米と炊飯液)が沸騰状態を維持できる電力とする。炊飯液が存在している間は、被加熱物及び内釜5の温度は100℃を維持し、内釜5の釜肌付近の炊飯液が消失し始めると、被加熱物及び内釜5の温度は100℃以上になる。そして、釜底温度センサ8の検知する内釜5の温度が100℃以上の所定のドライアップ判定温度(例えば130℃)に到達すると(ステップS42a:Yes)、制御手段11は、炊飯液が消失したと判断し、むらし工程へ移行する。
【0029】
(むらし工程)
むらし工程が開始すると(ステップS5)、制御手段11は計時手段12に経過時間t12の計測を開始させ(ステップS51a)、加熱手段4へ電力P13を供給する(ステップS52a)。経過時間t12が所定時間(例えば15分)を経過すると(ステップS53a:Yes)、制御手段11は、炊飯制御を終了する。
【0030】
なお、この標準モードの炊飯制御にて用いた温度や時間は、一例であり本発明を限定するものではない。
【0031】
[冷凍用モード]
次に、冷凍用モードの炊飯制御について、標準モードと比較しながらその特徴について説明する。
【0032】
(予熱工程)
まず、
図6にて、予熱工程が開始すると(ステップS2)、制御手段11は計時手段12を用いて予熱工程時間t21の計測を開始し(ステップS21b)、内釜5の温度が所定の予熱温度(例えば55℃)を維持するよう火力調節する(ステップS22b)。予熱工程時間t21が所定時間(例えば25分)を経過すると(ステップS23b:Yes)、制御手段11は、予熱工程を終了する。
このような、冷凍用モードの予熱工程において、制御手段11は、ステップS2における予熱温度を、標準モードの予熱温度よりも高く設定し、さらに、所定時間は、標準モードの所定時間よりも長くしている。
【0033】
(昇温工程)
昇温工程が開始すると(ステップS3)、制御手段11は、標準モードの昇温工程の電力P11よりも低い電力P21を、加熱手段11へ供給する(ステップS31b)。そして内部温度センサ7が、被加熱物(米と水)が沸騰したと判断される所定の温度(80℃)を検知すると(ステップS32b:Yes)、沸騰工程へ移行する。
このように、 冷凍用モードの昇温工程において、制御手段11は、ステップS31bにおける電力を、標準モードの電力よりも低く設定しているので、80℃に到達するための温度―時間勾配は、標準モードに比較してなだらかになる。
【0034】
炊飯後のご飯を0℃以下の状態に置くと、ご飯粒の内部に保持された水分が凍結し氷化する。その後、電子レンジ等を用いて解凍すると、ご飯粒の氷化したものが解けて水分となるが、この時、一部はご飯粒内から外部に排出されてしまう現象があり、ご飯粒がやや硬い状態になってしまう。
【0035】
この現象に関し、十分な吸水を行い炊き上げた膨潤したご飯では、解凍した際に、ご飯粒から外部に排出される水分が減少し、ご飯粒内に残る水分が多くなることにより、解凍後のご飯粒もかなり柔らかい状態になることを実験により導き出した。また、ご飯粒内の糖成分が多いと、解凍後でも、ご飯の甘みを感じられることによって、標準モードのご飯粒に比べて、よりおいしいご飯であることを実感できることも分かった。
【0036】
そして、ご飯粒の糖成分への変化は、温度が40℃~70℃の糖成分関与領域といわれる状態において起こることから、温度、時間の条件の組合せを調整しながら炊飯、凍結、解凍、試食を繰り返し評価したところ、温度40℃~70℃と時間との面積比が、標準モードを1とした時、1.1倍以上となる条件設定から、標準モート゛に比べて冷凍モードのおいしさの改善が確認された。また、これが3倍以上の条件設定になると、水が米に吸い込まれ過ぎてしまい、沸騰工程での十分な炊飯液が保てず、生だき状態になってしまい、あるいは、温度を上げて前記面積比を大きくした場合には、糖成分生成に寄与する酵素の働きが弱まってしまうことも知られており、標準モート゛に比べて冷凍モードの方がおいしさを損なってしまうことが分かった。
【0037】
そこで、
図8に示すように、冷凍用モードでの予熱工程、昇温工程における温度40℃~70℃帯での温度と時間との面積2(時間A~C間での冷凍用モードの温度推移のうち、40℃以上の面積部分)、標準モードでの予熱工程、昇温工程における温度40℃~70℃帯での温度と時間との面積1(時間A~B間での冷凍用モードの温度推移のうち、40℃以上の面積部分)とした際、面積2÷面積1が、1.1倍~3倍の範囲になるように、温度、時間、火力等を設定している。
【0038】
なお、
図7の電力状態でもわかるように、冷凍用モードでは、予熱工程の最終部分の所定時間、電力供給を停止し、55℃の温度が維持できるようにしている。
【0039】
(沸騰工程)
沸騰工程が開始すると(ステップS4)、制御手段11は加熱手段4へ電力P22を供給する(ステップS41b)。電力P22は被加熱物(米と炊飯液)が沸騰状態を維持できる電力とする。炊飯液が存在している間は、被加熱物及び内釜5の温度は100℃を維持し、内釜5の釜肌付近の炊飯液が消失し始めると、被加熱物及び内釜5の温度は100℃以上になる。そして釜底温度センサ8の検知する内釜5の温度が100℃以上の所定のドライアップ判定温度(例えば130℃)に到達すると(ステップS42b:Yes)、制御手段11は、炊飯液が消失したと判断し、むらし工程へ移行する。
【0040】
(むらし工程)
むらし工程が開始すると(ステップS5)、制御手段11は計時手段12に経過時間t22の計測を開始させ(ステップS51b)、加熱手段4へ電力P23を供給する(ステップS52b)。経過時間t22が所定時間(例えば15分)を経過すると(ステップS53b:Yes)、制御手段11は、炊飯制御を終了する。
【0041】
なお、冷凍用モードにおける沸騰工程、むらし工程の制御は、基本的に標準モードと同じであり、P22はP12に、t22はt12に、P23はP13に対応する。
【0042】
このように、標準モードの他に、冷凍用モードを設け、冷凍用モードで炊飯したご飯は、より膨潤で糖成分の多いご飯になるので、冷凍・解凍後でもおいしさを維持することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 炊飯器、2 本体、3 蓋体、4 加熱手段、5 内釜、6 内蓋、7 内部温度センサ、8 釜底温度センサ、9 入力手段、9a お米キー、9b メニューキー、9c 音声キー、9d 予約キー、9e 設定キー、9f 切・保温キー、9g 操作キー、9h 炊飯キー、10 表示手段、11 制御手段、12 計時手段、21 開口、22 中空部