(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/454 20060101AFI20230418BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230418BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230418BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230418BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K31/496
A61P25/00
A61P25/08
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2020511102
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019014045
(87)【国際公開番号】W WO2019189781
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2018066541
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 香奈子
(72)【発明者】
【氏名】西村 和美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 知比古
(72)【発明者】
【氏名】西 建也
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/136944(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/147160(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 25/00
A61P 25/08
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤。
【化1】
[式中、Aは、下記一般式(IIa)、(IIb)又は(IIc)で示される基を表し、
【化2】
R
1は、水酸基又は水素原子を表し、R
2は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、ジフルオロメチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基を表し、R
3は、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子を表し、R
4は、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、nは、1又は2を表し、R
1が水酸基を表す場合、*を付した炭素は、不斉炭素を表す。]
【請求項2】
Aは、一般式(IIa)で示される基である、請求項1記載の神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤。
【請求項3】
Aは、一般式(IIb)で示される基である、請求項1記載の神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤。
【請求項4】
Aは、一般式(IIc)で示される基である、請求項1記載の神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤。
【請求項5】
R
1は、水素原子である、請求項1記載の神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤。
【請求項6】
R
1は、水酸基である、請求項1記載の神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤。
【請求項7】
R
2は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基である、請求項1~6のいずれか一項記載の神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤。
【請求項8】
R
2は、n-プロピル基である、請求項1~6のいずれか一項記載の神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤。
【請求項9】
R
3は、水素原子又は塩素原子である、請求項1~6のいずれか一項記載の神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤。
【請求項10】
*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置である、請求項1~4及び6のいずれか一項記載の神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤。
【請求項11】
アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、クロイツフェルト・ヤコブ病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、脊髄小脳失調症、ダウン症、多発性硬化症、統合失調症、うつ病、躁病、不安神経症、強迫神経症、恐慌性障害、双極性障害、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症、アルツハイマー病の前病変である軽度認知障害、前頭側頭葉型認知症、てんかん、アルコール依存症、薬物依存症、不安症状、不快精神状態、情緒異常、感情循環気質、神経過敏症、自閉症、失神、耽溺、又は性欲低下を含む中枢神経疾患;頭部外傷、脊髄損傷、又は脳浮腫を含む中枢神経障害;老年性認知症、脳血管性認知症、又は健忘症を含む記憶障害;脳出血及び脳梗塞、並びにそれらの後遺症・合併症;無症候性脳血管障害、一過性脳虚血発作、高血圧性脳症、又は脳血液関門の障害を含む脳血管障害;脳血管障害の再発若しくは後遺症;脳血管閉塞後の中枢機能低下症、脳循環・腎循環自動調節能の障害若しくは異常;特発性正常圧水頭症、閉塞性水頭症、又は感染性あるいは代謝性の脳症を含む代謝異常症;視神経脊髄炎、又は辺縁系脳炎を含む自己免疫疾患;神経膠腫若しくは神経細胞性腫瘍を含む神経上皮組織性腫瘍、神経鞘腫若しくは神経線維腫を含む神経鞘性腫瘍、髄膜腫若しくはその他の間葉性腫瘍を含む髄膜性腫瘍、トルコ鞍部腫瘍、又は転移性腫瘍を含む腫瘍性疾患;睡眠障害;並びに掻痒症からなる群より選択される神経細胞の異常興奮に関連する疾患を治療又は予防するための、請求項1~10のいずれか一項記載の神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
神経細胞において細胞内カルシウムは、細胞内情報伝達のメッセンジャーとして、分化、増殖、成長、生存、アポトーシス、遺伝子転写、膜興奮、神経伝達因子放出、シナプス可塑性といった細胞機能の調節に、極めて重要な役割を果たしている(非特許文献1及び2)。
【0003】
平常時の細胞内はカルシウム濃度が数十~百nmol/L程度に保たれているのに対し、細胞に様々な刺激が加わるとそのカルシウム濃度は数百nmol/L~数十μmol/Lに上昇し、この細胞内カルシウム濃度上昇により多様な生命応答が引き起こされる。そして必要な生命応答が完了すると、細胞内カルシウム濃度は平常時に戻る。したがって、細胞の機能が正常に働くためには、様々な受容体やイオンチャネル等を介して細胞内外にて流入又は流出する細胞内カルシウムの濃度を厳密に制御することが不可欠である。
【0004】
神経細胞においては、細胞内カルシウム濃度が上昇すると、神経細胞の最も重要な機能である興奮性伝達を生じる。何らかの原因により、神経細胞内のカルシウム濃度の厳密な制御が不能となると、異常な細胞内カルシウム濃度上昇をきたし、その結果多くの神経疾患及び神経障害が生じる。この異常な細胞内カルシウム濃度上昇とは、例えば、正常の範囲を超える細胞内カルシウム濃度、正常の範囲を超える細胞内カルシウム濃度上昇持続時間の長さ、又は正常の範囲を超える単位時間あたりの細胞内カルシウム濃度上昇回数で示される。例えば、てんかんは大脳神経細胞の異常な興奮、具体的には単位時間あたりの細胞内カルシウム濃度上昇回数が異常に増加することによって引き起こされる疾患の1つであると考えられている。その治療薬であるガバペンチンは、興奮性神経の前シナプスに存在する電位依存性カルシウムチャネルに結合して細胞内カルシウム流入を抑制し、興奮性シナプス伝達を抑制することで抗てんかん作用を発揮することが知られている(非特許文献3)。したがって、神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤は、神経細胞の細胞内カルシウム濃度上昇に伴う異常興奮によって引き起こされる種々の神経疾患及び障害の予防又は治療に有用である。
【0005】
特許文献1及び2には、環状アミン誘導体が鎮痛作用を有していることが開示されているが、神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制に関する効果については開示も示唆も一切ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/147160号
【文献】国際公開第2016/136944号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Berridge、Neuron、1998年、第21巻、p.13-26
【文献】Pchitskayaら、Cell Calcium、2018年、第70巻、p.87-94
【文献】Finkら、British Journal of Pharmacology、2000年、第130巻、p.900-906
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩が、神経細胞内カルシウム濃度上昇に対して顕著な抑制効果を有することを見出すに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤を提供する。
【化1】
[式中、Aは、下記一般式(IIa)、(IIb)又は(IIc)で示される基を表し、
【化2】
R
1は、水酸基又は水素原子を表し、R
2は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、ジフルオロメチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基を表し、R
3は、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子を表し、R
4は、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、nは、1又は2を表し、R
1が水酸基を表す場合、*を付した炭素は、不斉炭素を表す。]
【0011】
上記の環状アミン誘導体において、Aが一般式(IIa)で示される基であることが好ましく、その際、R2は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましく、R1が水酸基である場合、*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることが好ましい。これらに限定することで、神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制作用を高めることができる。
【0012】
上記の環状アミン誘導体において、Aが一般式(IIb)で示される基であることが好ましく、その際、R2は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましく、R1が水酸基である場合、*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることが好ましい。これらに限定することで、神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制作用を高めることができる。
【0013】
上記の環状アミン誘導体において、Aが一般式(IIc)で示される基であることが好ましく、nは、1又は2であり、その際、R2は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましく、R1が水酸基である場合、*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることが好ましい。これらに限定することで、神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制作用を高めることができる。
【0014】
上記の環状アミン誘導体において、R1が水素原子であることが好ましく、その際、R2は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましい。これらに限定することで、神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制作用をより高めることができる。
【0015】
上記の環状アミン誘導体において、R1が水酸基であることが好ましく、その際、R2は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましく、*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることが好ましい。これらに限定することで、神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制作用をさらに高めることができる。
【0016】
また、本発明は、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩、及び薬理学的に許容される賦形剤等を含有する、神経細胞の異常興奮に関連する疾患を治療又は予防するための医薬組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、神経細胞の異常興奮に関連する疾患の治療又は予防に使用するための、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を提供する。
【0018】
また、本発明は、神経細胞の異常興奮に関連する疾患を治療又は予防するための、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩の使用を提供する。
【0019】
また、本発明は、神経細胞の異常興奮に関連する疾患を治療又は予防するための医薬の製造における、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩の使用を提供する。
【0020】
また、本発明は、神経細胞の異常興奮に関連する疾患を治療又は予防する方法であって、治療の必要のある患者に治療有効量の上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、神経細胞内カルシウム濃度上昇を抑制する方法であって、有効量の上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を神経細胞に接触させることを含む方法を提供する。
【0022】
また、本発明は、神経細胞内カルシウム濃度上昇を抑制する方法であって、有効量の上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を、これを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0023】
また、上記の神経細胞の異常興奮に関連する疾患は、これだけに限定されないが、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、クロイツフェルト・ヤコブ病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、脊髄小脳失調症、ダウン症、多発性硬化症、統合失調症、うつ病、躁病、不安神経症、強迫神経症、恐慌性障害、双極性障害、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症、アルツハイマー病の前病変である軽度認知障害、前頭側頭葉型認知症、てんかん、アルコール依存症、薬物依存症、不安症状、不快精神状態、情緒異常、感情循環気質、神経過敏症、自閉症、失神、耽溺、性欲低下等の中枢神経疾患;頭部外傷、脊髄損傷、脳浮腫、知覚機能障害、糖尿病性ニューロパチー、自律神経機能障害、むち打ち症等の中枢及び末梢神経障害;老年性認知症、脳血管性認知症、健忘症等の記憶障害、脳出血、脳梗塞等及びその後遺症・合併症;無症候性脳血管障害、一過性脳虚血発作、高血圧性脳症、脳血液関門の障害等の脳血管障害、脳血管障害の再発若しくは後遺症;脳血管閉塞後の中枢機能低下症、脳循環・腎循環自動調節能の障害若しくは異常;特発性正常圧水頭症、閉塞性水頭症、感染性あるいは代謝性の脳症等の代謝異常症;視神経脊髄炎、辺縁系脳炎等の自己免疫疾患;神経上皮組織性腫瘍(神経膠腫、神経細胞性腫瘍等)、神経鞘性腫瘍(神経鞘腫、神経線維腫等)、髄膜性腫瘍(髄膜腫、その他の間葉性腫瘍)、トルコ鞍部腫瘍、転移性腫瘍等の腫瘍性疾患、睡眠障害又は掻痒症が挙げられる。
【0024】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2018-066541号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩は、神経細胞内カルシウム濃度上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で使用する次の用語は、特に断りがない限り、下記の定義の通りである。
【0027】
本発明の一実施形態に係る環状アミン誘導体は、下記の一般式(I)で示されることを特徴としている。
【化3】
[式中、Aは、下記一般式(IIa)、(IIb)又は(IIc)で示される基を表し、
【化4】
R
1は、水酸基又は水素原子を表し、R
2は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、ジフルオロメチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基を表し、R
3は、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子を表し、R
4は、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、nは、1又は2を表し、R
1が水酸基を表す場合、*を付した炭素は、不斉炭素を表す。]
【0028】
上記の環状アミン誘導体において、Aが一般式(IIa)で示される基であることが好ましく、その際、R2は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましい。またR1が水酸基である場合、*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることが好ましい。
【0029】
上記の環状アミン誘導体において、Aが一般式(IIa)で示される基であることが好ましく、その際、R2は、n-プロピル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましい。またR1が水酸基である場合、*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることが好ましい。
【0030】
上記の環状アミン誘導体において、Aが一般式(IIb)で示される基であることが好ましく、その際、R2は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましい。またR1が水酸基である場合、*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることが好ましい。
【0031】
上記の環状アミン誘導体において、Aが一般式(IIb)で示される基であることが好ましく、その際、R2は、n-プロピル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましい。またR1が水酸基である場合、*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることが好ましい。
【0032】
上記の環状アミン誘導体において、Aが一般式(IIc)で示される基であることが好ましく、nは、1又は2であり、その際、R2は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましい。またR1が水酸基である場合、*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることが好ましい。
【0033】
上記の環状アミン誘導体において、Aが一般式(IIc)で示される基であることが好ましく、nは、1又は2であり、その際、R2は、n-プロピル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましい。またR1が水酸基である場合、*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることが好ましい。
【0034】
上記の環状アミン誘導体において、R1が水素原子であることが好ましく、その際、R2は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましい。
【0035】
上記の環状アミン誘導体において、R1が水素原子であることが好ましく、その際、R2は、n-プロピル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましい。
【0036】
上記の環状アミン誘導体において、R1が水酸基であることが好ましく、その際、R2は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましい。また*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることが好ましい。
【0037】
上記の環状アミン誘導体において、R1が水酸基であることが好ましく、その際、R2は、n-プロピル基であることが好ましく、R3は、水素原子又は塩素原子であることが好ましい。また*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることが好ましい。
【0038】
本発明の別の実施形態に係る環状アミン誘導体は、Aが一般式(IIa)で示される基であり、R1が水素原子であり、R2が、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であり、R3が、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、R4が、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基である。本実施形態において、R2が、メチル基、エチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3が、水素原子であることが好ましい。
【0039】
本発明の別の実施形態に係る環状アミン誘導体は、Aが一般式(IIa)で示される基であり、R1が水素原子であり、R2が、n-プロピル基であり、R3が、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、R4が、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基である。本実施形態において、R3が、水素原子であることが好ましい。
【0040】
本発明の別の実施形態に係る環状アミン誘導体は、Aが一般式(IIa)で示される基であり、R1が水酸基であり、R2が、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であり、R3が、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、R4が、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基である。本実施形態において、R3が、水素原子又は塩素原子であることが好ましい。また本実施形態において、R2が、メチル基、エチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3が、水素原子であることが好ましい。また本実施形態において、*を付した不斉炭素の立体化学が、S配置であることが好ましい。
【0041】
本発明の別の実施形態に係る環状アミン誘導体は、Aが一般式(IIa)で示される基であり、R1が水酸基であり、R2が、n-プロピル基であり、R3が、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、R4が、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基である。本実施形態において、R3が、水素原子であることが好ましい。また本実施形態において、*を付した不斉炭素の立体化学が、S配置であることが好ましい。
【0042】
本発明の別の実施形態に係る環状アミン誘導体は、Aが一般式(IIb)で示される基であり、R1が水酸基であり、R2が、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であり、R3が、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、R4が、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基である。本実施形態において、R2が、メチル基、エチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3が、水素原子であることが好ましい。また本実施形態において、*を付した不斉炭素の立体化学が、S配置であることが好ましい。
【0043】
本発明の別の実施形態に係る環状アミン誘導体は、Aが一般式(IIb)で示される基であり、R1が水酸基であり、R2が、n-プロピル基であり、R3が、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、R4が、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基である。本実施形態において、R3が、水素原子であることが好ましい。また本実施形態において、*を付した不斉炭素の立体化学が、S配置であることが好ましい。
【0044】
本発明の別の実施形態に係る環状アミン誘導体は、Aが一般式(IIc)で示される基であり、nが、1又は2であり、R1が水酸基であり、R2が、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であり、R3が、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、R4が、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基である。本実施形態において、R2が、メチル基、エチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であることが好ましく、R3が、水素原子であることが好ましい。また本実施形態において、*を付した不斉炭素の立体化学が、S配置であることが好ましい。
【0045】
本発明の別の実施形態に係る環状アミン誘導体は、Aが一般式(IIc)で示される基であり、nが、1又は2であり、R1が水酸基であり、R2が、n-プロピル基であり、R3が、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、R4が、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基である。本実施形態において、R3が、水素原子であることが好ましい。また本実施形態において、*を付した不斉炭素の立体化学が、S配置であることが好ましい。
【0046】
本発明の別の実施形態に係る環状アミン誘導体は、Aが一般式(IIa)で示される基であり、R1が、水酸基又は水素原子であり、R2が、n-プロピル基、イソプロピル基又はn-ブチル基であり、R3が、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、R4が、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基であり、R1が水酸基である場合、*を付した炭素が、不斉炭素を表す。
【0047】
本発明の別の実施形態に係る環状アミン誘導体は、Aが一般式(IIb)で示される基であり、R1が、水酸基又は水素原子であり、R2が、n-プロピル基、イソプロピル基又はn-ブチル基であり、R3が、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、R4が、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基であり、R1が水酸基である場合、*を付した炭素が、不斉炭素を表す。
【0048】
本発明の別の実施形態に係る環状アミン誘導体は、Aが一般式(IIc)で示される基であり、R1が、水酸基又は水素原子であり、R2が、n-プロピル基、イソプロピル基又はn-ブチル基であり、R3が、水素原子、フッ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、R4が、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基であり、nが1又は2であり、R1が水酸基である場合、*を付した炭素が、不斉炭素を表す。
【0049】
上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体(以下、「環状アミン誘導体(I)」という)の好ましい具体例を表1-1、表1-2及び表1-3に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
なお、環状アミン誘導体(I)に、鏡像異性体、立体異性体等の異性体が存在する場合には、いずれか一方の異性体及びそれらの混合物が環状アミン誘導体(I)に含まれる。また、環状アミン誘導体(I)に、鏡像異性体、立体異性体等の異性体が存在する場合には、環状アミン誘導体(I)は、いずれか一方の異性体又はそれらの混合物を含む混合物であってもよい。また、環状アミン誘導体(I)に、コンホメーションによる異性体が存在する場合には、いずれか一方の異性体及びそれらの混合物が環状アミン誘導体(I)に含まれる。目的とする異性体は、公知の方法又はそれに準ずる方法によって得ることができる。例えば、環状アミン誘導体(I)に鏡像異性体が存在する場合には、環状アミン誘導体(I)から分割された一方の鏡像異性体も環状アミン誘導体(I)に包含される。
【0054】
目的とする鏡像異性体は、公知の手段(例えば、光学活性な合成中間体を用いるか、又は、最終物のラセミ混合物に対し、公知の方法又はそれに準ずる方法(例えば、光学分割)を用いる)により得ることができる。
【0055】
また、環状アミン誘導体(I)には、環状アミン誘導体(I)のプロドラッグ又はその薬理学的に許容される塩が含まれる。環状アミン誘導体(I)のプロドラッグとは、生体内で酵素的又は化学的に、環状アミン誘導体(I)に変換される化合物である。環状アミン誘導体(I)のプロドラッグの活性本体は、環状アミン誘導体(I)であるが、環状アミン誘導体(I)のプロドラッグそのものが活性を有していてもよい。
【0056】
環状アミン誘導体(I)のプロドラッグとしては、例えば、環状アミン誘導体(I)の水酸基が、アルキル化、リン酸化又はホウ酸化された化合物が挙げられる。これらの化合物は、公知の方法に従って、環状アミン誘導体(I)から合成することができる。
【0057】
また、環状アミン誘導体(I)のプロドラッグは、公知文献(「医薬品の開発」、広川書店、1990年、第7巻、p.163~198及びProgress in Medicine、第5巻、1985年、p.2157~2161)に記載の生理的条件で、環状アミン誘導体(I)に変化するものであってもよい。
【0058】
環状アミン誘導体(I)は、同位元素で標識されていてもよく、標識される同位元素としては、例えば、2H、3H、13C、14C、15N、15O及び/又は18Oが挙げられる。
【0059】
環状アミン誘導体(I)の薬理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩若しくは臭化水素酸塩等の無機酸塩、又はシュウ酸塩、マロン酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、キシナホ酸塩、パモ酸塩、アスコルビン酸塩、アジピン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩若しくはケイ皮酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
【0060】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩には、その水和物及び溶媒和物が含まれる。
【0061】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩に結晶多形が存在する場合には、全ての結晶多形及びそれらの混合物が、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩に含まれる。
【0062】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、例えば、公知文献(国際公開第2013/147160号)又は公知文献(国際公開第2016/136944号)に記載の方法に従って合成することができる。
【0063】
本明細書において、「細胞内カルシウム濃度上昇」とは、異常な神経細胞の興奮性伝達が生じる程度に細胞内のカルシウム濃度が上昇することを意味し、例えば、正常の範囲を超える細胞内カルシウム濃度、正常の範囲を超える細胞内カルシウム濃度上昇持続時間の長さ、又は正常の範囲を超える単位時間あたりの細胞内カルシウム濃度上昇回数を指標として示される。
【0064】
本明細書において、「細胞内カルシウム濃度上昇抑制」とは、生じた異常な神経細胞の興奮性伝達を抑制する、又は異常な神経細胞の興奮性伝達が生じない状態を維持することを意味し、例えば、正常の範囲内の細胞内カルシウム濃度、正常の範囲内の細胞内カルシウム濃度上昇持続時間の長さ、又は正常の範囲内の単位時間あたりの細胞内カルシウム濃度上昇回数を指標として示される。また、「細胞内カルシウム濃度上昇抑制」とは、細胞内カルシウム濃度上昇を抑制しない場合と比較して、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は100%細胞内カルシウム濃度上昇を抑制することも意味する。
【0065】
また、上記の神経細胞の異常興奮に関連する疾患は、これだけに限定されないが、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、クロイツフェルト・ヤコブ病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、脊髄小脳失調症、ダウン症、多発性硬化症、統合失調症、うつ病、躁病、不安神経症、強迫神経症、恐慌性障害、双極性障害、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症、アルツハイマー病の前病変である軽度認知障害、前頭側頭葉型認知症、てんかん、アルコール依存症、薬物依存症、不安症状、不快精神状態、情緒異常、感情循環気質、神経過敏症、自閉症、失神、耽溺、性欲低下等の中枢神経疾患;頭部外傷、脊髄損傷、脳浮腫、知覚機能障害、糖尿病性ニューロパチー、自律神経機能障害、むち打ち症等の中枢及び末梢神経障害;老年性認知症、脳血管性認知症、健忘症等の記憶障害、脳出血、脳梗塞等及びその後遺症・合併症;無症候性脳血管障害、一過性脳虚血発作、高血圧性脳症、脳血液関門の障害等の脳血管障害、脳血管障害の再発若しくは後遺症;脳血管閉塞後の中枢機能低下症、脳循環・腎循環自動調節能の障害若しくは異常;特発性正常圧水頭症、閉塞性水頭症、感染性あるいは代謝性の脳症等の代謝異常症;視神経脊髄炎、辺縁系脳炎等の自己免疫疾患;神経上皮組織性腫瘍(神経膠腫、神経細胞性腫瘍等)、神経鞘性腫瘍(神経鞘腫、神経線維腫等)、髄膜性腫瘍(髄膜腫、その他の間葉性腫瘍)、トルコ鞍部腫瘍、転移性腫瘍等の腫瘍性疾患、睡眠障害又は掻痒症が挙げられる。
【0066】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル又はヒト)、特にヒトにおける神経細胞の異常興奮に関連する疾患の治療又は予防するための医薬として用いることができる。
【0067】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を医薬として用いる場合、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を、そのまま若しくは医薬として許容される担体を配合して、経口的又は非経口的に投与することができる。
【0068】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬を経口投与する場合の剤形としては、例えば、錠剤(糖衣錠及びフィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤及びマイクロカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤又は懸濁剤が挙げられる。また、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬を非経口投与する場合の剤形としては、例えば、注射剤、注入剤、点滴剤、坐剤、塗布剤又は貼付剤が挙げられる。さらには、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を適当な基剤(例えば、酪酸の重合体、グリコール酸の重合体、酪酸-グリコール酸の共重合体、酪酸の重合体とグリコール酸の重合体との混合物又はポリグリセロール脂肪酸エステル)と組み合わせて、徐放性製剤とすることも有効である。
【0069】
上記の剤形の製剤の調製は、製剤分野において一般的に用いられる公知の製造方法に従って行うことができる。この場合、必要に応じて、製剤分野において一般的に用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、甘味剤、界面活性剤、懸濁化剤又は乳化剤等を含有させて製造することができる。
【0070】
錠剤の調製は、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤又は滑沢剤を含有させて行うことができる。丸剤及び顆粒剤の調製は、例えば、賦形剤、結合剤又は崩壊剤を含有させて行うことができる。また、散剤及びカプセル剤の調製は、例えば、賦形剤を含有させて行うことができる。シロップ剤の調製は、例えば、甘味剤を含有させて行うことができる。乳剤又は懸濁剤の調製は、例えば、界面活性剤、懸濁化剤又は乳化剤を含有させて行うことができる。
【0071】
賦形剤としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、デンプン、ショ糖、微結晶セルロース、カンゾウ末、マンニトール、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム又は硫酸カルシウムが挙げられる。
【0072】
結合剤としては、例えば、デンプンのり液、アラビアゴム液、ゼラチン液、トラガント液、カルボキシメチルセルロース液、アルギン酸ナトリウム液又はグリセリンが挙げられる。
【0073】
崩壊剤としては、例えば、デンプン又は炭酸カルシウムが挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム又は精製タルクが挙げられる。
【0074】
甘味剤としては、例えば、ブドウ糖、果糖、転化糖、ソルビトール、キシリトール、グリセリン又は単シロップが挙げられる。
【0075】
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ソルビタンモノ脂肪酸エステル又はステアリン酸ポリオキシル40が挙げられる。
【0076】
懸濁化剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース又はベントナイトが挙げられる。
【0077】
乳化剤としては、例えば、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン又はポリソルベート80が挙げられる。
【0078】
さらに、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬を、上記の剤形に調製する場合には、製剤分野において一般的に用いられる着色剤、保存剤、芳香剤、矯味剤、安定剤又は粘稠剤等を添加することができる。
【0079】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬の1日あたりの投与量は、患者の状態若しくは体重、化合物の種類又は投与経路等によって異なる。例えば、成人(体重約60kg)に経口投与する場合には、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分量として1~1000mgの範囲で、1~3回に分けて投与することが好ましい。成人(体重約60kg)に非経口投与する場合には、注射剤であれば、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分量として体重1kgあたり0.01~100mgの範囲で静脈注射により投与することが好ましい。
【0080】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、治療若しくは予防効果の補完又は増強、あるいは投与量の低減のために、他の薬剤と適量配合又は併用しても構わない。環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、他の薬剤と同時に投与されてもよく、任意の順序で連続的に投与されてもよい。他の薬剤としては、これだけに限定されないが、上記の神経細胞の異常興奮に関連する疾患の治療薬が挙げられる。例えば、ドネペジル,メマンチン,ガランタミン,リバスチグミン、エンタカポン、レボドパ、ベンセラジド塩酸塩、カルビドパ、ゾニサミド、アマンタジン塩酸塩、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、カベルゴリン、プラミペキソール塩酸塩水和物、ロチゴチン、タリペキソール塩酸塩、ロピニロール塩酸塩、アポモルヒネ塩酸塩水和物、セレギリン塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ビペリデン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、イストラデフィリン、ドロキシドパ、リルゾール、プロチレリン酒石酸塩水和物、タルチレリン水和物、クロルプロマジン、ハロペリドール、スルピリド、リスペリドン、ペロスピロン、オランザピン、クエチアピン、パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリン、エスシタロプラム、ミルナシプラン、デュロキセチン、ミルタザピン、アモキサピン、アミトリプチリン、イミプラミン、クロミプラミン、ドスレピン、トリミプラミン、ノルトリプチリン、ロフェプラミン、セチプチリン、マプロチリン、ミアンセリン、炭酸リチウム、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、トフィソパム、クロチアゼパム、エチゾラム、ロラゼパム、アルプラゾラム、ブロマゼパム、ジアゼパム、クロナゼパム、クロキサゾラム、ロフラゼプ酸エチル、フルトプラゼパム、タンドスピロンクエン酸塩、ジスルフィラム、シアナミド、アカンプロサート、バルプロ酸、エトスクシミド、フェノバルビタール、カルバマゼパム、フェニトイン、アンベノニウム塩化物、エドロホニウム塩化物、塩化アセチルコリン、臭化ネオスチグミン、スガマデクスナトリウム、ネオスチグミンメチル硫酸塩、ピラセタム、ピリドスチグミン臭化物、ベタネコール塩化物、メチル硫酸ネオスチグミン、アトロピン硫酸塩水和物、プレガバリン、エパルレスタット、メキシレチン、アスピリン、チクロピジン塩酸塩、クロピドグレル硫酸塩、シロスタゾール、ワルファリンカリウム、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩、エドキサバントシル酸塩水和物、リバーロキサバン、アピキサバン、アモバルビタール、エスゾピクロン、エスタゾラム、クアゼパム、スボレキサント、セコバルビタールナトリウム、ゾピクロン、ゾルピデム酒石酸塩、デクスメデトミジン塩酸塩、トリアゾラム、トリクロホスナトリウム、ニトラゼパム、ハロキサゾラム、フェノバルビタールナトリウム、フルニトラゼパム、フルラゼパム塩酸塩、ブロチゾラム、ブロモバレリル尿素、ペントバルビタールカルシウム、抱水クロラール、ミダゾラム、ラメルテオン、リルマザホン塩酸塩、ロルメタゼパム又はナルフラフィン塩酸塩が挙げられる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない.
【0082】
被験化合物としては、表2で示される、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-エチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン(以下、「化合物1」という)、(S)-1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オン(以下、「化合物2」という)、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オン(以下、「化合物3」という)及び1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オン硫酸塩1水和物(以下、「化合物4」という)を用い、公知文献(国際公開第2013/147160号及び国際公開第2016/136944号)に記載の方法に従って合成した。
【0083】
【0084】
さらに、被験化合物として表3で示される、1-((R)-3-(3-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オン(以下、「化合物5」という)、3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロパン-1-オン(以下、「化合物6」という)、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-プロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン(以下、「化合物7」という)、1-((R)-3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オン(以下、「化合物8」という)、3-(5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン(以下、「化合物9」という)、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン(以下、「化合物10」という)、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(2-メトキシエチル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン(以下、「比較例1の化合物」という)及び1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン(以下、「比較例2の化合物」という)を用いた。
【0085】
表3で示される被験物質のうち、化合物5、化合物6及び化合物8は、公知文献(国際公開第2013/147160号及び国際公開第2016/136944号)に記載の方法に従って合成した。化合物7、化合物9及び化合物10の化合物は、以下の実施例に記載する方法で合成した。比較例1の化合物及び比較例2の化合物については、以下の参考例に記載する方法で合成した。また、これらの原料及び中間体は、以下の参考例に記載する方法で合成した。なお、参考例化合物の合成に使用される化合物で合成法の記載のないものについては、市販の化合物を使用した。
【0086】
以下の記載において、NMRデータ中に示される溶媒名は、測定に使用した溶媒を示している。また、400 MHz NMRスペクトルは、JNM-AL400型核磁気共鳴装置(日本電子社製)を用いて測定した。ケミカルシフトは、テトラメチルシランを基準として、δ(単位:ppm)で表し、シグナルはそれぞれs(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、quint(五重線)、sept(七重線)、m(多重線)、br(幅広)、dd(二重二重線)、dt(二重三重線)、ddd(二重二重二重線)、dq(二重四重線)、td(三重二重線)、tt(三重三重線)で表した。ESI-MSスペクトルは、Agilent Technologies 1200 Series、G6130A(AgilentTechnology社製)を用いて測定した。溶媒は全て市販のものを用いた。フラッシュカラムクロマトグラフィーはYFLC W-prep2XY(山善社製)を用いた。
【0087】
(参考例1)1-プロピル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒドの合成:
【化5】
1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(1.00g、10.4mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(10.0mL)溶液に1-ヨードプロパン(1.22mL、12.5mmol)と炭酸カリウム(2.16g、15.6mmol)を加え、60℃で3時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、1-プロピル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.786g、5.69mmol、55%)を黄色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ: 0.93 (3H, t, J=7.4 Hz), 1.77-1.85 (2H, m), 4.37 (2H, t, J=7.2 Hz), 7.16 (1H, s), 7.28 (1H, s), 9.82 (1H, s).
【0088】
(参考例2)5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒドの合成:
【化6】
(5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)メタノール(0.300g、2.05mmol)のジクロロメタン(20.0mL)溶液にデスマーチン試薬(1.04g、2.46mmol)を0℃で加え、同温度で3時間撹拌した。反応液に10%チオ硫酸ナトリウム水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.235g、1.62mmol、79%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ: 3.98 (3H, s), 7.24 (1H, s), 9.70 (1H, s).
【0089】
(参考例3)1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒドの合成:
【化7】
1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(1.00g、10.4mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(10mL)溶液に2-ヨードプロパン(1.26mL、12.5mmol)と炭酸カリウム(2.16g、15.6mmol)を加え、60℃で3時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.703g、5.09mmol、49%)を黄色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ: 1.47 (6H, t, J=6.6 Hz), 5.48 (1H, q, J=6.6 Hz), 7.30 (1H, s), 7.33 (1H, s), 9.83 (1H, s).
【0090】
(参考例4)1-(2-メトキシエチル)-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒドの合成:
【化8】
1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(1.00g、10.4mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(10.0mL)溶液に2-ブロモエチルメチルエーテル(1.20mL、12.5mmol)と炭酸カリウム(2.16g、15.6mmol)、ヨウ化ナトリウム(0.468g、3.12mmol)を加え、60℃で3時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、1-(2-メトキシエチル)-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.535g、3.47mmol、33%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.32 (3H, s), 3.67 (2H, t, J=5.0 Hz), 4.59 (2H, t, J=5.0 Hz), 7.23-7.30 (2H, m), 9.81 (1H, s).
【0091】
(参考例5)1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒドの合成:
【化9】
1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.500g、5.20mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(5.20mL)溶液に1,1,1-トリフルオロ-3-ヨードプロパン(0.710mL、6.24mmol)と炭酸カリウム(1.08g、7.81mmol)を加え、60℃で5時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.0863g、0.449mmol、8.6%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.60-2.72 (2H, m), 4.61 (2H, t, J=6.8 Hz), 7.18 (1H, s), 7.32 (1H, s), 9.83 (1H, s).
【0092】
(参考例6)比較例1の化合物の合成:
【化10】
1-(4-ジメチルアミノピペリジン-1-イル)エタノン(0.300g、1.76mmol)のテトラヒドロフラン(6.00mL)溶液にリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液(2.0M、0.969mL、1.94mmol)を-78℃で滴下し、同じ温度で1時間撹拌した。反応液に同じ温度で1-(2-メトキシエチル)-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.292g、2.12mmol)のテトラヒドロフラン溶液(2.80mL)を加え、1時間撹拌後、0℃で更に1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、炭酸カリウム水溶液を順に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、比較例1の化合物(0.193g、0.594mmol、34%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 1.04-1.40 (2H, m), 1.62-1.80 (2H, m), 2.10-2.35 (7H, m), 2.46-2.59 (1H, m), 2.80-2.90 (1H, m), 2.95-3.10 (2H, m), 3.24 (3H, s), 3.61 (2H, t, J=5.5 Hz), 3.90-4.00 (1H, m), 4.10-4.38 (3H, m), 5.05-5.11 (1H, m), 5.38-5.42 (1H, m), 6.73 (1H, s), 7.07 (1H, s).
(参考例7)比較例2の化合物の合成:
【化11】
1-(4-ジメチルアミノピペリジン-1-イル)エタノン(0.0760g、0.448mmol)のテトラヒドロフラン(1.80mL)溶液にリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液(2.0M、0.246mL、0.492mmol)を-78℃で滴下し、同じ温度で1時間撹拌した。反応液に同じ温度で1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.0860g、0.448mmol)のテトラヒドロフラン溶液(0.70mL)を加え、1時間撹拌後、0℃で更に1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、炭酸カリウム水溶液を順に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、比較例2の化合物(0.0845g、0.233mmol、52%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 1.03-1.40 (2H, m), 1.63-1.79 (2H, m), 2.10-2.33 (7H, m), 2.47-2.59 (1H, m), 2.78-2.90 (3H, m), 2.95-3.13 (2H, m), 3.90-3.98 (1H, m), 4.21-4.36 (3H, m), 5.03-5.10 (1H, m), 5.49-5.54 (1H, m), 6.77 (1H, s), 7.17 (1H, s).
ESI-MS: m/z= 363 (M+H)
+.
【0093】
(実施例1)化合物7の合成:
【化12】
1-(4-ジメチルアミノピペリジン-1-イル)エタノン(0.300g、1.76mmol)のテトラヒドロフラン(6.00mL)溶液にリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液(2.0M、0.969mL、1.94mmol)を-78℃で滴下し、同じ温度で1時間撹拌した。反応液に同じ温度で1-プロピル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.292g、2.12mmol)のテトラヒドロフラン溶液(2.8mL)を加え、1時間撹拌後、0℃で更に1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、炭酸カリウム水溶液を順に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、化合物7(0.296g、0.960mmol、55%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ: 0.85 (3H, t, J=7.4 Hz), 1.00-1.40 (2H, m), 1.61-1.80 (4H, m), 2.10-2.33 (7H, m), 2.45-2.59 (1H, m), 2.73-2.88 (1H, m), 2.93-3.13 (2H, m), 3.86-4.00 (3H, m), 4.25-4.35 (1H, m),4.98-5.05 (1H, m), 5.34-5.40 (1H, m), 6.72 (1H, s), 7.07 (1H, s).
ESI-MS: m/z= 309 (M+H)
+.
【0094】
(実施例2)化合物9の合成:
【化13】
1-(4-ジメチルアミノピペリジン-1-イル)エタノン(0.231g、1.36mmol)のテトラヒドロフラン(5.10mL)溶液にリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液(2.0M、0.745mL、1.49mmol)を-78℃で滴下し、同じ温度で1時間撹拌した。反応液に同じ温度で5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.235g、1.63mmol)のテトラヒドロフラン溶液(1.70mL)を加え、1時間撹拌後、0℃で更に1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、炭酸カリウム水溶液を順に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、化合物9(0.159g、0.505mmol、37%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ: 1.04-1.21 (1H, m), 1.28-1.40 (1H, m), 1.64-1.80 (2H, m), 2.15 (6H, s), 2.24-2.35 (1H, m), 2.44-2.60 (1H, m), 2.78-2.88 (1H, m), 2.95-3.11 (2H, m), 3.59 (3H, s), 3.90-3.98 (1H, m), 4.27-4.35 (1H, m), 5.00-5.10 (1H, m), 5.50-5.58 (1H, m), 6.85 (1H, s).
ESI-MS: m/z= 315 (M+H)
+.
【0095】
(実施例3)化合物10の合成:
【化14】
1-(4-ジメチルアミノピペリジン-1-イル)エタノン(0.300g、1.76mmol)のテトラヒドロフラン(6.00mL)溶液にリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液(2.0M、0.969mL、1.94mmol)を-78℃で滴下し、同じ温度で1時間撹拌した。反応液に同じ温度で1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.292g、2.12mmol)のテトラヒドロフラン溶液(2.8mL)を加え、1時間撹拌後、0℃で更に1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、炭酸カリウム水溶液を順に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、化合物10(0.302g、0.979mmol、56%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ: 1.04-1.41 (8H, m), 1.62-1.80 (2H, m), 2.16 (6H, s), 2.25-2.34 (1H, m), 2.48-2.59 (2H, m), 2.76-2.88 (1H, m), 2.95-3.16 (2H, m), 3.90-4.00 (1H, m), 4.27-4.38 (1H, m), 5.05-5.12 (1H, m), 5.36-5.42 (1H, m), 6.77 (1H, s), 7.20 (1H, s).
ESI-MS: m/z= 309 (M+H)
+.
【0096】
【0097】
(実施例4)ラット脊髄後根神経節(DRG)神経細胞の高カリウム誘発細胞内カルシウム濃度上昇に対する環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩の効果:
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩のDRG神経細胞の高カリウム誘発細胞内カルシウム濃度上昇に対する抑制効果を検討した。
【0098】
(1)DRGの採取
SDラット(4~6週齢、オス;日本チャールス・リバー)を麻酔下にて腹大動脈を切開し、放血により安楽死させた。後背部を切開した後、脊柱を摘出し氷冷した。脊柱背側を切り取り、脊柱腹側から脊髄を除去した後、神経線維束を伴ったDRG(L4~L6)を精密ピンセットで摘出した。摘出したDRGを氷冷したLeibovitz's L-15培地(Thermo Fisher Scientific)に浸漬させ、実体顕微鏡下で神経線維束を除去し、DRGを分離した。
【0099】
(2)DRG神経細胞の分散培養
分離したDRGを眼下バサミで細かく切れ込みを入れた後、Collagenase A(Roche Molecular Systems)で、37℃で20分間インキュベートした。200×g、5分間で遠心分離後、上清を除去し、0.05%のTrypsin-EDTA(Thermo Fisher Scientific)を加えて、37℃で5分間インキュベートした。1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific)及び10%ウシ胎仔血清(Thermo Fisher Scientific)含有DMEM(Thermo Fisher Scientific)を加えて、200×g、5分間で遠心分離後、上清を除去した。上清除去後、DRG神経培養培地として調製した1%ペニシリン-ストレプトマイシン及び2%B-27(Thermo Fisher Scientific)含有Neurobasal-A Medium(Thermo Fisher Scientific)を加えた後、マイクロピペットでピペッティングし、細胞を分散させた。分散後、70μmセルストレイナー(Greiner)に通し、200×g、5分間で遠心した。遠心分離後、上清を除去し、培地を加えて細胞を懸濁した。この細胞懸濁液を予めラミニン(Sigma-Aldrich)をコートさせたポリリジンコート35mmディッシュ(松浪硝子工業)に播種し、37℃、5%CO2下で一晩培養後、細胞内カルシウム濃度変化測定に用いた。
【0100】
(3)カルシウム蛍光色素の負荷
蛍光カルシウム色素として、Cal-520,AM(登録商標)(AAT Bioquest)を使用した。ディッシュで培養した細胞から培地を除去し、灌流液で2回洗浄した後、4μmol/Lに調製したCal-520,AM溶液を添加し、37℃、5%CO2下で1~1.5時間培養した。灌流液は、pH7.4に調製したNaCl(140mmol/L)、KCl(5mmol/L)、CaCl2・2H2O(1.2mmol/L)、MgCl2・6H2O(2mmol/L)、D(+)-Glucose(14mmol/L)及びHEPES(10mmol/L)を含む水溶液を使用した。その後、灌流液をディッシュに10分間、2mL/分で灌流することにより洗浄した。
【0101】
(4)細胞内カルシウム濃度変化の測定
細胞内カルシウム濃度変化の測定は、カルシウム蛍光色素を負荷した細胞の蛍光強度変化を共焦点レーザー顕微鏡システム(ニコンインステック)で撮影した画像を解析ソフトにより解析することにより行った。レーザー波長は488nmで、画像は1分間に57~60枚の間隔で取得した。
【0102】
神経細胞の興奮誘発として、細胞膜の脱分極による細胞内カルシウム濃度上昇を誘発させるため、高カリウム溶液を用いた処置(以下、「高カリウム処置」という)を行った。細胞への高カリウム処置、及び環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩(化合物1~10、比較例1の化合物及び比較例2の化合物)を用いた処置(以下、「化合物処置」という)は、溶液の灌流置換により行った。灌流速度は、チューブポンプで2mL/分になるように制御した。高カリウム処置による細胞内カルシウム濃度上昇誘発は、pH7.4に調製したNaCl(125mmol/L又は115mmol/L)、KCl(32.5mmol/L又は30mmol/L)、CaCl2・2H2O(1.2mmol/L)、MgCl2・6H2O(2mmol/L)、D(+)-Glucose(14mmol/L)及びHEPES(10mmol/L)を含む水溶液で、細胞に1分間処置することで行った。高カリウム処置は、5分間隔で8回行った。化合物処置は、化合物1~10、比較例1の化合物及び比較例2の化合物を100mmol/Lになるように蒸留水(大塚製薬工場)に溶解後、30μmol/Lになるように灌流液で希釈した溶液を細胞に処置することで行った。化合物処置は、3回目の高カリウム処置が始まる3分前から、8回目の高カリウム処置終了後まで連続的に行った(以下、これを「化合物処置群」という)。対照として、蒸留水を灌流液で希釈した溶液を用いた処置を3回目の高カリウム処置が始まる3分前から、8回目の高カリウム処置終了後まで連続的に行った(以下、これを「溶媒処置群」という)。但し、化合物5~10、比較例1の化合物及び比較例2の化合物については、高カリウム処置による細胞内カルシウム濃度上昇誘発は、pH7.4に調製したNaCl(115mmol/L)、KCl(30mmol/L)、CaCl2・2H2O(1.2mmol/L)、MgCl2・6H2O(2mmol/L)、D(+)-Glucose(14mmol/L)及びHEPES(10mmol/L)を含む水溶液で、細胞に1分間処置することで行った。
【0103】
(5)画像解析及び細胞内カルシウム濃度上昇抑制率の算出
撮影した画像は、ImageJ 1.51j8(National Institutes of Health)により解析した。各細胞の輝度値を経時的に測定して経時変化輝度値曲線を作成し、各高カリウム処置時における経時変化輝度値曲線下面積(AUC)を算出した。各細胞の反応率は、1回目及び2回目の高カリウム処置時のAUCの和に対する7回目及び8回目の高カリウム処置時のAUCの和の割合として以下の式1により算出した。次に、各細胞の細胞内カルシウム濃度上昇抑制率を、各細胞の反応率及び溶媒処置群の全細胞の反応率の平均値をもとに以下の式2により算出した。各群の全細胞の抑制率の平均値を各群の抑制率とし、溶媒処置群の細胞内カルシウム濃度上昇抑制率を0%とした。
各細胞の反応率=7回目及び8回目の高カリウム処置時のAUCの和÷1回目及び2回目の高カリウム処置時のAUCの和×100・・・式1
各細胞の細胞内カルシウム濃度上昇抑制率(%)=(1-各細胞の反応率÷溶媒処置群の全細胞の反応率の平均値)×100・・・式2
【0104】
DRG神経細胞の高カリウム処置により誘発される細胞内カルシウム濃度上昇に対する化合物1~4の抑制効果を表4に示す。表中の「抑制率」とは、算出した細胞内カルシウム濃度上昇抑制率を示す(平均値であり、各群の細胞数は106~262個である)。表中の「化合物1」、「化合物2」、「化合物3」及び「化合物4」とは各化合物による化合物処置群を示す。表中の「♯」及び「♯♯♯」は、溶媒処置群と比較して統計学的に有意(♯:p<0.05、♯♯♯:p<0.001、Dunnet型多重比較検定)な差であることを示す。
【0105】
【0106】
いずれの化合物処置群でも、溶媒処置群と比較して、細胞内カルシウム濃度上昇が有意に抑制された。すなわち、化合物1~4は、DRG神経細胞の高カリウム誘発細胞内カルシウム濃度上昇を抑制することが明らかとなった。また、一般式(I)中、R1が水酸基である化合物1~3による化合物処置群の神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制率は、R1が水素原子である化合物4による化合物処置群より強いものであった。
【0107】
上記と同様の方法で測定した、化合物5~10、比較例1の化合物及び比較例2の化合物の抑制効果を表5に示す(平均値であり、各群の細胞数は60~250個である)。表中の「化合物5」、「化合物6」、「化合物7」、「化合物8」、「化合物9」、「化合物10」、「比較例1の化合物」及び「比較例2の化合物」とは各化合物による化合物処置群を示す。表中の「♯♯♯」は、溶媒処置群と比較して統計学的に有意(♯♯♯:p<0.001、Dunnet型多重比較検定)な差であることを示す。
【0108】
【0109】
化合物5~10処置群では、細胞内カルシウム濃度上昇が抑制された。中でも、化合物5~8処置群では、溶媒処置群と比較して、細胞内カルシウム濃度上昇が有意に抑制された。一方で、比較例1の化合物処置群及び比較例2の化合物処置群では、細胞内カルシウム濃度上昇が抑制されなかった。
【0110】
以上により、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、神経細胞内カルシウム濃度上昇抑制剤であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、神経細胞内カルシウム濃度上昇を顕著に抑制することから、神経細胞の異常興奮に関連する疾患に対する医薬として利用できる。
【0112】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。