(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230418BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2020512338
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2019015190
(87)【国際公開番号】W WO2019194311
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-30
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 恒之
(72)【発明者】
【氏名】岩上 直記
(72)【発明者】
【氏名】山口 康夫
(72)【発明者】
【氏名】藤原 久嗣
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-055163(JP,A)
【文献】特開2009-261139(JP,A)
【文献】特開2013-143439(JP,A)
【文献】特開2014-107957(JP,A)
【文献】特開2008-086099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置と、前記電力変換装置から電力供給を受けるモータ部と、補機と、を備えるシステムであって、
前記電力変換装置は、
パワーモジュールと、
コンデンサと、
前記補機を駆動する補機用駆動ユニットと、
底部、前記底部から起立する側部、および前記側部の上方開口部を閉じるカバー部を含み、前記パワーモジュール、前記コンデンサ及び前記補機用駆動ユニットを収容する筐体と、
を有し、
前記筐体には、前記パワーモジュールを冷却する冷媒が流れる冷媒流路が設けられており、
鉛直方向において、前記コンデンサ及び前記補機用駆動ユニットは、前記パワーモジュールと前記モータ部の間に位置し、
鉛直方向において、前記パワーモジュールは、前記コンデンサと前記冷媒流路の間に位置する、
システム。
【請求項2】
前記コンデンサは前記パワーモジュールの上に配置され、
前記コンデンサの上には前記補機用駆動ユニットが配置され、
前記パワーモジュールは前記筐体の前記底部に載置され、
前記冷媒流路は、前記筐体の前記底部に設けられている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記パワーモジュールは、モータ駆動用パワーモジュールと、発電機用パワーモジュールを含むことを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の
システム。
【請求項4】
前記補機はオイルポンプであり、
前記補機用駆動ユニットは、前記オイルポンプ
を駆動するアクチュエータまたは前記オイルポンプを駆動するインバータ部である請求項1
から3のいずれか一項に記載の
システム。
【請求項5】
前記側部は
、複数の側面を含み
、
前記冷媒流路の冷媒入口部は、前記複数の側面のうちの1つの側面に位置し
、
前記冷媒流路の冷媒出口部は、
前記複数の側面のうちの前記1つの側面とは異なる側面に位置する
請求項1から4のいずれか1項に記載の
システム。
【請求項6】
前記冷媒流路
は、
所定の深さを有して前記筐体の
前記底部の上面に露出する第1窪み部
と、
前記第1窪み部とは異なる位置に設けられ、所定の深さを有して前記筐体の底部の上面に露出する第2窪み部
と、
前記第1窪み部と前記第2窪み部を繋ぐ連結流路と
、
を備え、
前記連結流路は、
前記底部の内部に設けられた中空の流路であることを特徴とする
請求項1から5のいずれか1項に記載の
システム。
【請求項7】
前記パワーモジュールは、モータ駆動用パワーモジュールと、発電機用パワーモジュールを含み、
前記発電機用パワーモジュールは
、前記第1窪み部に配置され
、
前記モータ
駆動用パワーモジュールは
、前記第2窪み部に配置され
ることを特徴とする請求項
6に記載の
システム。
【請求項8】
前記第1窪み部は、平面視で、4つの角部を有し
、
前記第1窪み部の冷媒入口部は、前記4つの角部のうちの1つの角部の近傍に設けられ
、
前記第1窪み部と前記連結流路との接続部は、
前記4つの角部のうちの前記1つの角部の対角にある角部の近傍に設けられていることを特徴とする請求項
6または
7に記載の
システム。
【請求項9】
前記第2窪み部は、平面視で、4つの角部を有し
、
前記連結流路と前記第2窪み部との接続部は、前記4つの角部のうちの1つの角部の近傍に設けられ
、
前記第2窪み部の冷媒出口部は、
前記4つの角部のうちの前記1つの角部の対角にある角部の近傍に設けられていることを特徴とする請求項
6から8のいずれか1項に記載の
システム。
【請求項10】
前記筐体の
前記側部は、側方向に突出する突出部を有し
、
前記突出部には、前記電力変換装置へ供給される電力を受け取る電源コネクタが設けられていることを特徴とする
請求項1から9のいずれか1項に記載の
システム。
【請求項11】
前記パワーモジュールは、モータ駆動用パワーモジュールと、発電機用パワーモジュールを含み、
前記筐体の
前記側部は
、複数の側面を有し
、
前記モータ
駆動用パワーモジュールからの電力を出力する第1コネクタと、前記発電機用パワーモジュールからの電力を出力する第2コネクタとは、前記複数の側面のうちの同一の側面に設けられていることを特徴とする
請求項1から10のいずれか1項に記載の
システム。
【請求項12】
前記筐体の
前記カバー部は、前記補機用駆動ユニットを収容するための凸部を有し
、
前記凸部には、前記補機用駆動ユニットからの電力を出力する第3コネクタが設けられていることを特徴とする
請求項10または11に記載の
システム。
【請求項13】
前記パワーモジュールは、モータ駆動用パワーモジュールと、発電機用パワーモジュールを含み、
前記筐体の前記側部は、複数の側面を有し、
前記モータ駆動用パワーモジュールからの電力を出力する第1コネクタと、前記発電機用パワーモジュールからの電力を出力する第2コネクタとは、前記複数の側面のうちの同一の側面に設けられ、
前記筐体の前記カバー部は、前記補機用駆動ユニットを収容するための凸部を有し、
前記凸部には、前記補機用駆動ユニットからの電力を出力する第3コネクタが設けられ、
前記第1コネクタ、前記第2コネクタ及び
前記第3コネクタは、同じ方向に向いていることを特徴とする請求項10に記載の
システム。
【請求項14】
前記カバー部には、前記パワーモジュールを、前記電力変換装置の近傍に位置するモータに繋ぐ配線が通過する第1窓部が設けられていることを特徴とする請求項
1から13のいずれか1項に記載の
システム。
【請求項15】
前記カバー部には、前記第1窓部と異なる位置に、第2窓部が設けられており
、
前記第2窓部は、前記配線を前記筐体内部の所定箇所に固定する固定部を露出する窓部であることを特徴とする請求項
14に記載の
システム。
【請求項16】
前記カバー部には、前記第2窓部を閉じる蓋部が設けられていることを特徴とする請求項
15に記載の
システム。
【請求項17】
前記モータ
部には、前記モータ
部の出力軸が接続されるギア機構が付設されていることを特徴とする
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記モータ
部は車両駆動用のモータであることを特徴とする
請求項1から17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記筐体の
前記側部から、前記モータ
部に第1ケーブルが延びていることを特徴とする
請求項1から18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記モータ部には、前記モータ部の出力軸が接続されるギア機構が付設され、
前記ギア機構に隣接して発電機が配置さ
れ、
前記筐体の前記側部から、前記発電機に第2ケーブルが延びていることを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記補機はオイルポンプであり、
前記ギア機構には
、前記オイルポンプが設けられており
、
前記筐体の前記カバー部から、前記オイルポンプに第3ケーブルが延びていることを特徴とする請求項
20に記載のシステム。
【請求項22】
前記筐体の前記側部は複数の側面を有し
、
前記第1ケーブルと前記第2ケーブルは、前記複数の側面のうちの同一の側面から延びていることを特徴とする請求項
21に記載のシステム。
【請求項23】
前記モータ部には、前記モータ部の出力軸が接続されるギア機構が付設され、
前記冷媒流路は、前記筐体の前記底部に設けられ、
前記冷媒流路の出口は、前記ギア機構に対向する前記筐体の前記側部に開口していることを特徴とする
請求項1から22のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は発熱する部品(例えば、インバータ回路)を有しているので、当該発熱する部品を冷却するために冷却構造を有する場合が多い。例えば、特許文献1には、直流電流を交流電流に変換するパワーモジュールを冷却する冷却水路を構成するために、中継流路形成体を有する電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の電力変換装置では、電力変換装置において中継流路形成体が占める体積は大きく、中継流路形成体の重量も大きい。従って、電力変換装置の重量が大きくなる。
【0005】
上記問題点に鑑みて、本発明は、電力変換装置の重量を軽減できる冷却構造を有する電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシステムの一つの態様は、電力変換装置と、前記電力変換装置から電力供給を受けるモータ部と、補機と、を備えるシステムであって、前記電力変換装置は、パワーモジュールと、コンデンサと、前記補機を駆動する補機用駆動ユニットと、底部、前記底部から起立する側部、および前記側部の上方開口部を閉じるカバー部を含み、前記パワーモジュール、前記コンデンサ及び前記補機用駆動ユニットを収容する筐体と、を有し、前記筐体には、前記パワーモジュールを冷却する冷媒が流れる冷媒流路が設けられており、鉛直方向において、前記コンデンサ及び前記補機用駆動ユニットは、前記パワーモジュールと前記モータ部の間に位置し、鉛直方向において、前記パワーモジュールは、前記コンデンサと前記冷媒流路の間に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、部品点数が減り、電力変換装置の重量を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る電力変換装置をモータ部、ギア部及び発電機と共に示す斜視図である。
【
図2】
図2は
図1の状態を電力変換装置の背面から見た斜視図である。
【
図6】
図6は
図4の状態から発電機を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は
図6の状態から発電機の第2ハウジングを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は
図7の状態からギア部を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図9】
図9は電力変換装置を正面から見た斜視図である。
【
図11】
図11は電力変換装置を右側面から見た斜視図である。
【
図12】
図12は電力変換装置を左側面から見た斜視図である。
【
図17】
図17は別の方向から見たトップカバーの斜視図である。
【
図19】
図19は
図9の状態からトップカバーを外した状態の電力変換装置の斜視図である。
【
図20】
図20は
図19の状態からモータ3相線及びアクチュエータ駆動ユニットを取り外した状態の斜視図である。
【
図22】
図22は
図20の状態からバスバー及び制御基板を外した状態の電力変換装置の斜視図である。
【
図24】
図24はハウジング本体とパワーモジュールを示す斜視図である。
【
図26】
図26は別の方向から見たハウジング本体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電力変換装置について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
【0010】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向であり、
図1および
図2における電力変換装置の高さ方向であるとする。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向である。Y軸方向は、
図1および
図2においては電力変換装置の幅方向(左右方向)である。X軸方向は、Y軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。
【0011】
以下の説明においては、電力変換装置の高さ方向(Z軸方向)を上下方向とする。ある対象に対してZ軸方向の正の側(+Z側)を「上側」と呼ぶ場合があり、ある対象に対してZ軸方向の負の側(-Z側)を「下側」と呼ぶ場合がある。尚、前後方向、前側および後側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。本実施形態では、Z軸方向の上方(+Z側)から-Z側を見た場合を、平面視で見た場合と称する。
【0012】
図1は、本実施形態の電力変換装置10がモータ部20及びギア部(ギア機構)30に取り付けられている状態を、発電機40と共に示す斜視図である。
図2は
図1の状態を電力変換装置10の背面から見た斜視図である。
図3は
図1の状態を上から見た斜視図である。
図4は
図1の状態を発電機40側から見た斜視図である。
図5は
図1の状態を下から見た斜視図である。
【0013】
電力変換装置10は、本実施形態では、自動車のエンジンルーム内に、モータ部20、ギア部30及び発電機40と共に配置されるとする。電力変換装置10は、モータ部(車両駆動用モータ)20の下に配置される。矢印Fは、自動車のフロント方向を示している。矢印Fを基準にすると、モータ部20の前に、ギア部30が位置し、ギア部30の前に発電機40が位置している。ギア部30には補機用アクチュエータ35及びパーキングブレーキ機構60が設けられている。矢印Fは、-X方向である。補機は、本実施形態では電動オイルポンプ(図示せず)であり、補機用アクチュエータ35は電動オイルポンプを駆動するアクチュエータである。発電機40はギア部30に隣接して配置されている。尚、電力変換装置10とモータ部20とギア部30と発電機40により、駆動システム(単に「システム」と称する場合もある)が構成されると考えることもできる。
【0014】
電力変換装置10は、ケーブル46によってモータ部20に接続され、ケーブル47によって発電機40に接続されている。また、電力変換装置10は、ケーブル48によって補機用アクチュエータ35に接続されている。符号Jは発電機40の軸を指している。電力変換装置10の筐体18の底部24には、電力変換装置10を冷却するための冷却水(例えば、LLC)を導入するための冷媒入口管部37が設けられている。LLCはLong Life Coolantの略である。冷媒入口管部37は、ハウジング本体14からY方向に延出している。また、電力変換装置10の筐体18の底部24には電力変換装置10を冷却した冷却水が流れ出る冷媒出口管38が設けられている。冷媒出口管38は、S字状の配管であり、電力変換装置10からギア部30に延びている。尚、冷却水は冷媒の一例であり、冷却水以外の冷媒(例えば、冷却油)を使用してもよい。
発電機40は、軸Jが突出する円形部分41a及び円形部分41aに付随する部分41bを含む第1ハウジング41と、第1ハウジング41が取り付けられる第2ハウジング43とを有する。電力変換装置10は、3相線45により発電機40に接続されている。
【0015】
図6は、
図4の状態から発電機40を取り外した状態を示す斜視図である。
図6には、ギア部30のハウジング31と、ハウジング31に取り付けられた発電機40の第2ハウジング43と、ハウジング31の中に設けられている遊星歯車機構32が示されている。
図7は、
図6の状態から発電機40の第2ハウジング43を取り外した状態を示す斜視図である。
図8は
図7の状態からギア部30を取り外した状態を示す斜視図である。尚、
図8ではモータ部30のケーシング21だけが示されており、ケーシング21に収容されるモータは図示していない。
【0016】
図9は電力変換装置10を正面から見た斜視図である。
図10は
図9の状態から蓋部27を外した状態の電力変換装置の平面図である。
図11は電力変換装置を右側面から見た斜視図である。
図12は電力変換装置10を左側面から見た斜視図である。
図13は電力変換装置10を下から見た斜視図である。
図14は電力変換装置10の底面図である。
電力変換装置10は、トップカバー12と、ハウジング本体14とを有する。トップカバー12はハウジング本体14の上に設けられており、トップカバー12とハウジング本体14により、電力変換装置10の筐体18が構成される。トップカバー12はハウジング本体14に、ボルト22により固定されている。トップカバー12は、カバー部と称してもよい。
【0017】
ハウジング本体14の前面14aには冷媒出口配管38が取付けられている。また、前面14aは、矢印Fの方向(フロント方向)に突出する立方体形状の凸部15を有する。凸部15は、以下、フロント凸部15と称する。フロント凸部15の前面15bからは3相線45が延出している。フロント凸部15の上面15aには、平面視で長円形の蓋部26が取り付けられている。フロント凸部15は、水平方向に突出する突出部である。
【0018】
トップカバー12は、平らな環状外周部(周縁部)12aと、環状外周部12aの内側縁からZ方向に起立する低い第1凸部12bと、第1凸部12bからZ方向に起立する高い第2凸部16とを有する。第1凸部12bはY方向に長い略直方体形状を有している。第2凸部16は、X方向に長い略直方体形状を有している。第2凸部16の左側面16aには、モータ3相線29が設けられている。モータ3相線29は、Y方向に延びて、電力変換装置10をモータ部20に接続する。第2凸部16の上面16bには、平面視で長円形の蓋部27が取り付けられている。蓋部27が取り外された状態は、
図10に示されている。
図10に示すように、蓋部27を取り外すと、第2凸部16は長円形の開口部17aを有していることが分かる。開口部17aは、モータ3相線29の端部29a、29b、29cを電力変換装置10にネジ止めする(固定する)際の作業穴として使用される。モータ3相線29の端部と電力変換装置10との接続は、
図19を用いて後述する。開口部17aは、以下の記載において、第1長円形開口17aと称する。
【0019】
図11に示すように、ハウジング本体14のフロント凸部15の右側面15cには、自動車のバッテリ(図示せず)からの2本のケーブルが接続されるDC入力部51が取り付けられている。また、ハウジング本体14の右側面14bには、発電機用コネクタ52とモータ用コネクタ53が取り付けられている。発電機用コネクタ52とモータ用コネクタ53は、ハウジング本体14の右側面14bから同じ方向に延出している(同じ方向に向いている)。DC入力部51には電源(バッテリ)からの電力が供給されるので、DC入力部51は電源コネクタと称してもよい。符号15dは、フロント凸部15の左側面を指している。発電機用コネクタ52は、発電機駆動ユニット70からの電力を出力するコネクタである。モータ用コネクタ53は、モータ駆動ユニット80からの電力を出力するコネクタである。
【0020】
トップカバー12の第2凸部16の右側面16cには、アクチュエータ用コネクタ54が取り付けられている。アクチュエータ用コネクタ54は、発電機用コネクタ52及びモータ用コネクタ53と同じ方向に延出している。アクチュエータ用コネクタ54は、アクチュエータ駆動ユニット90からの電力を出力するコネクタである。
図11において、Z方向は筐体18の高さ方向であり、X方向は筐体18の長さ方向であり、Y方向は筐体18の幅方向である。
【0021】
図12と
図9を比較して見ると分かるように、
図12では、
図9に示されていた冷媒出口管38がハウジング本体14から取り外されている。また、フロント凸部15からは発電機3相線45が取り外されている。さらに、トップカバー12の第2凸部16からはモータ3相線29が取り外されている。
図12に示すように、ハウジング本体14の前面14aからは、冷媒出口管部39がフロント方向(矢印F)に延出している。冷媒出口管部39には、冷媒出口管38が取り付けられる。フロント凸部15の前面15bには、3相線端子部56が設けられている。3相端子部56には、発電機3相線45が取り付けられる。トップカバー12の第2凸部16の左側面16aには、3相線端子部57が設けられている。3相線端子部57には、モータ3相線29が取り付けられる。3相線端子部57は、第2凸部16の左側面16aに取り付けられる長円形基部58を有する。
【0022】
図13及び
図14に示すように、筐体18の底部24は、-Z方向に突出する第1底部凸部24aと、第2底部凸部24bと、第1底部凸部24aを第2底部凸部24bに繋ぐ連結凸部24cとを有している。また、筐体18の底部24は、第1底部凸部24aと冷媒入口管部37を繋ぐ入口凸部24dと、第2底部凸部24cと冷媒出口管部39を繋ぐ出口凸部24eとを有している。尚、筐体18の底部24はハウジング本体14の底部でもあるので、符号24は筐体18の底部を指すと共に、ハウジング本体の底部を指す。
図1、
図2及び
図9に示すように、モータ部20とギア部30の下側に電力変換装置10が配置されている。また、矢印F方向に突出するフロント凸部15はギア部30の下側に配置され、Z方向に突出する第2凸部16はモータ部20とギア部30とハウジング本体14(電力変換器10)との間に配置されている。第2凸部16には、アクチュエータ駆動ユニット90が収容されている。この配置によって、自動車のエンジンルーム内において、最適配置された駆動システムを提供することができる。
【0023】
図15は、
図14のA-A矢視断面図である。
図15に示すように、筐体18の中には、発電機を駆動する発電機駆動ユニット70と、モータを駆動するモータ駆動ユニット80と、フィルムコンデンサ88と、アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動ユニット90とが収容されている。発電機駆動ユニット70とモータ駆動ユニット80は、筐体18の底部24の上に設けられている。より具体的には、発電機駆動ユニット70は、第1底部凸部24aの上方に配置され、モータ駆動ユニット80は、第2底部凸部24bの上方に配置されている。発電機駆動ユニット70及びモータ駆動ユニット80の上方に、フィルムコンデンサ88が配置されている。そして、フィルムコンデンサ88の上方に、アクチュエータ駆動ユニット90が配置されている。発電機駆動ユニット70は、発電機用パワーモジュールであり、モータ駆動ユニット80は、モータ駆動用パワーモジュールである。
【0024】
図16はトップカバー12の斜視図である。
図17はトップカバー12の他の斜視図である。
図18はトップカバー12を下から見た斜視図である。
トップカバー12の外周部12aは、トップカバー12の外縁を規定する環状部分であり、ボルト22が通る穴13を複数有している。トップカバー12の第2凸部16は、上面16bに第1長円形開口17aを有すると共に、左側面16aに第2長円形開口17bを有する。第2長円形開口17bには、3相線端子部57の長円形基部58が取り付けられる。第2長円形開口17bは、3相線端子部57の長円形基部58により塞がれる。第1長円形開口17a及び第2長円形開口17bは、フロント方向Fに長い長円形開口である。第1長円形開口17aは、配線29を筐体18の内部の所定箇所に固定する固定部62を露出する窓部である。第1長円形開口17aは、第2長円形開口17bより小さい。第2長円形開口17bは、パワーモジュール(モータ駆動ユニット80)をモータに繋ぐ配線29が通過する窓部である。
【0025】
また、トップカバー12は、フロント凸部15の上面15aとなる四角形の平板部分も有している。フロント凸部の上面15aはフロント方向Fに長い長円形の第3長円形開口部15dを有している。第3長円形開口部15dは、蓋部26により塞がれる(
図9)。
図17に示すように、トップカバー12の第2凸部16は、右側面16cにアクチュエータ用コネクタ54を取り付けるための第1コネクタ取付部61を有する。第1コネクタ取付部61は、長円形の穴61aを有する。アクチュエータ駆動ユニット90は、トップカバー12の第2凸部16の中に収容される。アクチュエータ駆動ユニット90は、補機駆動用ユニットであり、電動オイルポンプやアクチュエータを駆動するユニット(インバータ部)である。
【0026】
図19は
図9の状態からトップカバー12を取り外した状態の電力変換装置10の斜視図である。
図20は
図19の状態からモータ3相線29及びアクチュエータ駆動ユニット90を取り外した状態の斜視図である。
図21は
図20と同じ状態を示しているが、異なる方向から見た斜視図である。
図22は
図20の状態から第1バスバー64、第2バスバー65、第3バスバー66及び制御基板68を取り外した状態の電力変換装置の斜視図である。
図23は電力変換装置の縦断面図(B-B矢視断面図)である。
図24は筐体とパワーモジュールを示す斜視図である。符号71は発電機駆動ユニット70のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を指し、符号81はモータ駆動ユニット80のIGBTを指す。発電機駆動ユニット70はインバータユニットであり、モータ駆動ユニット80もインバータユニットである。制御基板68は、電力変換装置10の各部品(発電機駆動ユニット70、モータ駆動ユニット80、アクチュエータ駆動ユニット90等)を制御する。
【0027】
図19及び
図20に示すように、アクチュエータ駆動ユニット90の上には、モータ駆動ユニット80から延びてモータ3相線29に繋がる第1バスバー64が設けられている。第1バスバー64の端部は、モータ3相線29の端部29a、29b、29cにボルトにより締結(固定)されている。また、アクチュエータ駆動ユニット90の側面には、発電機駆動ユニット70から延びて発電機3相端子45に繋がる第2バスバー65が取り付けられている。フロント凸部15の中には、バッテリからの電流を、DC入力部(電源入力部)51から電力変換装置10内に配電する第3バスバー66が設けられている。フィルムコンデンサ88の上には、制御基板68が設けられている。
DC入力部(電源入力部)51から電力変換装置10へ供給された電流は、コンデンサ88、発電機駆動ユニット70、モータ駆動ユニット80及びアクチュエータ駆動ユニット90に供給される。
図20及び
図21に示すように、第1バスバー64及び第3バスバー66は横配置である(水平方向またはX方向に延びる)ので、電力変換装置10の高さを小さくすることができる。つまり、第1バスバー64及び第3バスバー66の配置により、電力変換装置10の高さ方向の小型化を実現している。
図19~
図21に示すように、第2バスバー65は縦配置である(Z方向に延びる部分を有する)ので、第2バスバー65の配置により、電力変換装置10の横方向の小型化を実現している。
図24に示すように、発電機駆動ユニット70とモータ駆動ユニット80の間に位置しているバスバー67は、電力変換装置10の筐体18内において、2つの駆動ユニット70と80のための空間を広く確保するために縦配置となっている(平面視で、矩形ではなく線状になるように配置されている)。また、バスバー67を縦配置とすることで、バスバー67に電流が流れた際に生じるノイズを低減することができる。
【0028】
図25はハウジング本体14を示す斜視図である。
図26は別の方向から見たハウジング本体14の斜視図である。
ハウジング本体14は、右側面14bの後端部と左側面14dの後端部とを繋ぐ背面14cを有すると共に、右側面14bの前端部と左側面14dの前端部とを繋ぐ前面14aを有する。前面14aからは、平面視で、逆U字形の凸側部14eがフロント方向Fの方向に延出している。本実施形態では、ハウジング本体14の前面14a、右側面14b、背面14c、左側面14d及び凸側部14eをまとめて、ハウジング本体14の側面部(または周部、側部)25と称することがある。側面部25の上側には、上側開口部25aが形成される。ハウジング本体14は、底部24から起立する側面部25を有し、側面部25の上側開口部25aは筐体18の上部であるトップカバー12により塞がれる(閉じられる)。
【0029】
ハウジング本体14の底部24は、平らな部分72と、第1窪み部73と、第2窪み部74と、第1窪み部73を第2窪み部74に繋ぐ連結部75とを有する。第1窪み部73は、平面視で、矩形である。第1窪み部73は、ハウジング本体14の底部24の入口凸部24dに繋がる入口部73aを有する。入口部73aは凹部である。また、第1窪み部73は、入口部73aの上端(縁)に続く平らなフラット部分73bと、当該フラット部73bに続く溝部73cとを有する。溝部73cと連結部75が繋がる箇所は、第1窪み部73の出口73dとなる。平面視で、第1窪み部73は4つの角部を有し、入口部73aは、当該4つの角部のうちの1つの角部(またはその近傍)に設けられ、第1窪み部73の出口は、入口部73aの対角にある角部(またはその近傍)に設けられている。つまり、第1窪み部73の出口は、入口部73aから最も離れた位置に設けられている。第1窪み部73は、所定の深さを有して、筐体18の底部24の上面に露出している。
【0030】
第2窪み部74は、平面視で、矩形である。第2窪み部74は、連結部75との接続箇所に入口部74aを有する。また、第2窪み部74は、入口部74aに続く溝部74bと、平らなフラット部分74cと、当該フラット部74bに続く出口部74dとを有する。出口部74dは凹部である。出口部74dは、第2窪み部74の入口側(入口部74a、溝部74b)の反対側に設けられている。第2窪み部74は、所定の深さを有して、筐体18の底部24の上面に露出している。
連結部75は、ハウジング本体14の底部24の中に形成された中空の流路であり、
図13の連結凸部24cに設けられている。連結部75は連結流路と称してもよい。
【0031】
ハウジング本体14の底部24に形成された入口凸部24dは、冷却水を第1窪み部73の入口部73aに導く管路を、ハウジング本体14の底部24の中に形成している。第1窪み部73の入口部73aに流れてきた冷却水は、第1窪み部73のフラット部分73bに流れ、その後、ハウジング本体14の背面14c側にある溝部73cに流れる。溝部73cに入った冷却水は、連結部75を流れて、第2窪み部74の溝部74bに入る。その後、冷却水は、溝部74bからフラット部分74cに流れ、出口74dに向かう。冷却水は、出口74dからハウジング本体14の底部24の出口凹部24eを通って、冷媒出口管部39に流れる。ハウジング本体14の底部24に形成された出口凸部24eは、冷却水を冷媒出口管部39に導く管路を、ハウジング本体14の底部24の中に形成している。このような冷却水の流れによって、発電機駆動ユニット70の底部とモータ駆動ユニット80の底部が冷却水により冷却される。
【0032】
冷媒入口管部37が筐体18と接続する部分から、第1窪み部73、連結部75、第2窪み部74を経由して冷媒出口管部39に至るまでの冷却水の流路は、まとめて冷媒流路と称してもよい。本実施形態では、冷媒流路は、筐体18の底部24に設けられている。冷媒流路の出口(24e、39)は、ギア部30に対向する筐体側部に開口している。
【0033】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、筐体18の底部24に冷媒流路(冷却水路)が設けられ、筐体18の底部24の上にパワーモジュール(発電機駆動ユニット70及びモータ駆動ユニット80)が配置され、その上に、フィルムコンデンサ88及び補機用駆動ユニット90が設けられている。発電機駆動ユニット70及びモータ駆動ユニット80を冷却する冷媒流路を電力変換装置10の筐体底部24に形成することにより、中継流路形成体が不要となるので、部品点数が減り、電力変換装置10の重量を軽減することができる。
また、電力変換装置10の筐体18の上部に補機用駆動ユニット90に設けたので、補機用駆動ユニット用のハウジングやカバー等が不要になる。その結果、電力変換装置10の部品点数が減り、電力変換装置10の重量を軽減することができる。
【0034】
さらに、このような積み上げ構造により、電力変換装置10の組立が容易になる。また、電力変換装置10をコンパクトにすることができる。
第1窪み部73の冷却水の入口73aと出口73dは、第1窪み部73の4つの角部のうちの2つの対角線上に位置する角部に設けられている。従って、第1窪み部73に入った冷却水は直ちに出口73dに到達せず、第1窪み部73である程度滞留した後に出口73dに到達する。第1窪み部73で冷却水が滞留するので、パワーモジュール(発電機駆動ユニット70)を効率良く冷却することができる。
【0035】
第2窪み部74の冷却水の入口74aは第2窪み部74の4つの角部のうちの1つの角部に設けられ、出口74dは、入口74aから見て対角線上の角部の近傍に設けられている(溝部74bに対向する辺に設けられている)。従って、第2窪み部74に入った冷却水は直ちに出口74dに到達せず、第2窪み部74である程度滞留した後に出口74dに到達する。第2窪み部74で冷却水が滞留するので、パワーモジュール(モータ駆動ユニット80)を効率良く冷却することができる。
【0036】
尚、本実施形態の電力変換装置10においては、以下の構成を採用することもできる。
平面視で、第2窪み部74の出口部74dは、入口部74aの対角線上に設けてもよい。つまり、第2窪み部74の出口は、入口部74aから最も離れた位置に設けられてもよい。より具体的には、平面視で、第2窪み部73は4つの角部を有しているので、入口部74aは、当該4つの角部のうちの1つの角部(またはその近傍)に設けられ、出口部74dは、入口部74aの対角にある角部(またはその近傍)に設けられてよい。
補機は電動オイルポンプであるとしたが、補機は、ウォーターポンプでもよいし、他の補機でもよい。
【0037】
各部品の取付けは、ボルト締結に限定されない。
筐体18は、トップカバー12とハウジング本体14に分割可能な2ピース構造を有するとしたが、他の構造(例えば、3ピース構造)を有してもよい。
また、上記で説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0038】
10…電力変換装置
12…トップカバー
14…ハウジング本体
18…筐体
24…底部
25…周部(側部)
70…発電機駆動ユニット
73…第1窪み部
74…第2窪み部
75…連結部
80…モータ駆動ユニット
88…フィルムコンデンサ
90…アクチュエータ駆動ユニット