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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20230418BHJP
   H01M 6/02 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M6/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020523121
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2019022175
(87)【国際公開番号】W WO2019235476
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2018109250
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】尾地 克弥
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-242970(JP,A)
【文献】国際公開第2010/087384(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-39
H01M6/00-22
H01G13/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の芯材と、前記芯材に巻回された極板及びセパレータとを有する電極体を備える蓄電素子であって、
前記芯材は、前記電極体の巻回軸の方向から見た場合、前記蓄電素子の容器の長側面に平行な第一仮想線及び第二仮想線にそれぞれ沿って延びる第一線部及び第二線部を有し、
前記第一線部及び前記第二線部の少なくとも一方は、前記第一仮想線または前記第二仮想線を越えて他方に向けて突出する湾曲部を有し、
前記極板の、巻回開始位置における内周端縁は、前記第一線部及び前記第二線部の少なくとも一方における、前記湾曲部以外の箇所に位置し、
前記芯材は、前記巻回軸の方向から見た場合、前記セパレータが固定された部分である固定部を前記第一線部に有し、
前記湾曲部は、前記第一線部において前記固定部に隣接して形成されている
蓄電素子。
【請求項2】
前記電極体において、前記内周端縁は、前記第二線部に位置する
請求項記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記電極体において、前記固定部及び前記内周端縁は、前記巻回軸を挟んで互いに対向する位置に配置されている
請求項1または2記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記芯材の内部空間は、前記巻回軸の方向から見た場合において前記内部空間を横切る仕切壁部によって2つの空間に区分されており、
前記固定部は、前記2つの空間の一方の外側に位置し、
前記内周端縁は、前記2つの空間の他方の外側に位置する
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
筒状の芯材と、前記芯材に巻回された極板及びセパレータとを有する電極体を備える蓄電素子であって、
前記芯材は、前記電極体の巻回軸の方向から見た場合、前記蓄電素子の容器の長側面に平行な第一仮想線及び第二仮想線にそれぞれ沿って延びる第一線部及び第二線部を有し、
前記第一線部及び前記第二線部の少なくとも一方は、前記第一仮想線または前記第二仮想線を越えて他方に向けて突出する湾曲部を有し、
前記極板の、巻回開始位置における内周端縁は、前記第一線部及び前記第二線部の少なくとも一方における、前記湾曲部以外の箇所に位置し、
前記芯材は、前記セパレータの一部が巻かれることで形成されている
電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回された極板及びセパレータを有する電極体を備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、箔状正極板及び箔状負極板が、それらの間にセパレータを挟んだ状態で巻芯に捲回されると共に、扁平形状に形成された発電要素を有する電池が開示されている。この電池では、巻芯が多孔性の部材にて構成され、捲回の最内周において、箔状正極板と箔状負極板とが、夫々における活物質層を形成した面が前記巻芯を挟んで対向する状態で配置されている。この構成により、発電要素の最内周でも箔状正極板及び箔状負極板が電池として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/148866号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電池における発電要素が備える芯材は、柔軟性を有する。そのため、極板の端縁とセパレータとの間に隙間が生じる可能性があり、この隙間に、例えば金属片または金属粉などの導電性の異物(コンタミネーション)が侵入した場合、微短絡等の不具合が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、巻回された極板及びセパレータを有する電極体を備える蓄電素子であって、信頼性の高い蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、筒状の芯材と、前記芯材に巻回された極板及びセパレータとを有する電極体を備える蓄電素子であって、前記芯材は、前記電極体の巻回軸の方向から見た場合、前記蓄電素子の容器の長側面に平行な第一仮想線及び第二仮想線にそれぞれ沿って延びる第一線部及び第二線部を有し、前記第一線部及び前記第二線部の少なくとも一方は、前記第一仮想線または前記第二仮想線を越えて他方に向けて突出する湾曲部を有し、前記極板の、巻回開始位置における内周端縁は、前記第一線部及び前記第二線部の少なくとも一方における、前記湾曲部以外の箇所に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、巻回された極板及びセパレータを有する電極体を備える蓄電素子であって、信頼性の高い蓄電素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る蓄電素子の容器内に配置されている構成要素を示す斜視図である。
図3図3は、実施の形態に係る集電体の外観を示す斜視図である。
図4図4は、実施の形態に係る電極体の構成概要を示す斜視図である。
図5図5は、実施の形態に係る電極体を巻回軸の方向から見た場合の構成概要を示す図である。
図6図6は、実施の形態に係る電極体の製造方法を簡易的に示す図である。
図7図7は、実施の形態に係る電極体の芯材及びその周囲の構成概要を示す図である。
図8図8は、比較例に係る電極体の構成概要を示す図である。
図9図9は、実施の形態の変形例1に係る電極体の芯材及びその周囲の構成概要を示す図である。
図10図10は、実施の形態の変形例2に係る電極体の芯材及びその周囲の構成概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明者らは、特許文献1における電池に関し、以下の問題が生じることを見出した。特許文献1における発電要素のように、芯材に巻回された極板及びセパレータを有する電極体では、芯材は、例えば樹脂フィルムなどの柔軟性が高い素材で筒状に形成されている。そのため、電極体を、巻回軸と直交する方向から圧迫することで扁平形状に形成する場合に、例えば、芯材が極板及びセパレータを損傷させるようなことがない。しかし、芯材は、柔軟性を有するが故に、セパレータ及び極板からの締め付け力を受けて、一部が内側に湾曲した状態になりやすい。このように芯材の一部が内側に湾曲した場合、その湾曲した部分の外側では、例えば、極板の内周側の端縁が、隣接するセパレータから浮く(内側に持ち上がる)可能性がある。つまり、極板の端縁とセパレータとの間に隙間が生じる可能性があり、この隙間に、例えば金属片または金属粉などの導電性の異物(コンタミネーション)が侵入した場合、微短絡等の不具合が生じる可能性がある。
【0010】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、筒状の芯材と、前記芯材に巻回された極板及びセパレータとを有する電極体を備える蓄電素子であって、前記芯材は、前記電極体の巻回軸の方向から見た場合、前記蓄電素子の容器の長側面に平行な第一仮想線及び第二仮想線にそれぞれ沿って延びる第一線部及び第二線部を有し、前記第一線部及び前記第二線部の少なくとも一方は、前記第一仮想線または前記第二仮想線を越えて他方に向けて突出する湾曲部を有し、前記極板の、巻回開始位置における内周端縁は、前記第一線部及び前記第二線部の少なくとも一方における、前記湾曲部以外の箇所に位置する。
【0011】
このように、本態様に係る蓄電素子では、筒状の芯材に巻回された極板及びセパレータを有する電極体において、芯材の湾曲部以外の箇所に、極板の内周端縁(巻き始めの端縁)が位置している。これにより、極板の内周端縁は、内側(芯材側)のセパレータによって外側に押さえられ、その結果、内周端縁の浮き上がりが抑制される。従って、電極体の端部から侵入するコンタミネーションに起因する微短絡等の不具合が生じ難い。このように、本態様に係る蓄電素子は、信頼性の高い蓄電素子である。
【0012】
前記芯材は、巻回軸の方向から見た場合、前記セパレータが固定された部分である固定部を前記第一線部に有し、前記湾曲部は、前記第一線部において前記固定部に隣接して形成されている、としてもよい。
【0013】
芯材における固定部は、セパレータ及び極板を芯材に巻回する巻回工程において、セパレータによって直接的に巻回方向に引っ張られる部分である。そのため、芯材には、固定部に隣接する位置に湾曲部が形成されやすい。例えば、固定部の、極板及びセパレータの巻回方向における側方に比較的に大きな湾曲部が形成されやすい。湾曲部以外の部分は外側に張り出した状態となりやすい。従って、極板の内周端縁を、この湾曲部の外側領域を避ける位置に配置することで、内周端縁の浮きの抑制がより確実化される。セパレータ及び極板を芯材に巻回する前の時点において、その後に形成される湾曲部の位置を、固定部を基準として特定しやすい。従って、第一線部における湾曲部以外の箇所に極板の内周端縁が配置された電極体の製造が容易である。
【0014】
前記電極体において、前記内周端縁は、前記第二線部に位置する、としてもよい。
【0015】
この構成によれば、固定部が第一線部に配置され、極板の内周端縁が第二線部に配置される。言い換えると、固定部が、長軸線によって2つに区分される領域の一方に配置され、極板の内周端縁が、当該2つに区分される領域の他方に配置される。従って、極板の内周端縁は、固定部の側方に位置する湾曲部の影響を受けにくい。これにより、内周端縁の浮き上がりがより確実に抑制される。
【0016】
前記電極体において、前記固定部及び前記内周端縁は、前記巻回軸を挟んで互いに対向する位置に配置されている、としてもよい。
【0017】
この構成によれば、極板の内周端縁は、芯材の周方向において、固定部から最も遠い位置またはその近傍に存在するため、固定部の側方に位置する湾曲部の影響を受けにくい。これにより、内周端縁の浮き上がりがより確実に抑制される。
【0018】
前記芯材は、前記巻回軸の方向から見た場合、所定の方向に長尺状で、かつ、前記所定の方向で対向する一対のカーブ部を有する形状であり、前記固定部は、前記一対のカーブ部の一方に配置され、前記内周端縁は、前記一対のカーブ部の他方の外側に配置される、としてもよい。
【0019】
芯材のカーブ部の外側は、巻回の際に、極板及びセパレータ(積層要素)の張力が掛かりやすく、すなわち、積層要素の密度が高い部分である。この部分に、極板の内周端縁が位置することで、内周端縁は、外側のセパレータにより内側にしっかりと押さえられ、かつ、固定部からも遠い位置であることで、固定部の側方の湾曲部の影響も受け難い。これにより、内周端縁の浮き上がりがより確実に抑制される。
【0020】
前記芯材の内部空間は、前記巻回軸の方向から見た場合において前記内部空間を横切る仕切壁部によって2つの空間に区分されており、前記固定部は、前記2つの空間の一方の外側に位置し、前記内周端縁は、前記2つの空間の他方の外側に位置する、としてもよい。
【0021】
固定部が巻回方向に引っ張られることに起因して形成される湾曲部は、仕切壁部が突っ張ることで、仕切壁部を挟んで固定部とは反対側の部分には形成され難い。従って、本態様に係る蓄電素子によれば、極板の内周端縁は、その内側のセパレータが浮きがたい位置に配置され、これにより、内周端縁の浮き上がりがより確実に抑制される。
【0022】
前記芯材は、前記セパレータの一部が巻かれることで形成されている、としてもよい。このように、セパレータの一部が巻かれることで芯材が形成されている場合、芯材は柔軟性が比較的に高いため、湾曲部が形成される。従って、極板の内周端縁を、湾曲部以外の箇所に配置することで、内周端縁の浮き上がりが抑制される。これにより、コンタミネーションに起因する微短絡等の不具合の発生が抑制される。
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態及び変形例に係る蓄電素子について説明する。各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0024】
以下で説明する実施の形態及び変形例のそれぞれは、本発明の一具体例を示している。以下の実施の形態及び変形例で示される形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態及び変形例における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0025】
以下の実施の形態、変形例、及び請求の範囲において、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現が用いられる場合がある。これらの表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行である、とは、当該2つの方向が完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行であること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0026】
(実施の形態)
[1.蓄電素子の全般的な説明]
まず、図1図3を用いて、実施の形態に係る蓄電素子10の全般的な説明を行う。図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の容器100内に配置されている構成要素を示す斜視図である。図3は、実施の形態に係る集電体120の外観を示す斜視図である。
【0027】
蓄電素子10は、電気を充電し、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の自動車用(または移動体用)電源、電子機器用電源、または電力貯蔵用電源などに適用される。蓄電素子10は、ガソリン車及びディーゼル車等の車両に、エンジンの始動用バッテリーとして搭載される場合もある。蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子10は、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。
【0028】
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、負極端子200と、正極端子300とを備えている。図2に示すように、容器100の内部には、負極側の集電体120と、正極側の集電体130と、電極体400とが収容されている。
【0029】
蓄電素子10は、上記の構成要素の他、集電体120及び130の側方に配置されるスペーサ、容器100内の圧力が上昇したときに当該圧力を開放するためのガス排出弁、または、電極体400等を包み込む絶縁フィルムなどを備えてもよい。蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解質)などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択できる。
【0030】
容器100は、矩形筒状で底を備える本体111と、本体111の開口を閉塞する板状部材である蓋体110とを備える。矩形筒状の本体111は、図2に示すように、一対の長側面111a及び一対の短側面111bを有している。容器100は、電極体400等を内部に収容後、蓋体110と本体111とが溶接等されることにより、内部を密封する構造を有している。電極体400は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。電極体400の詳細な構成については、図4等を用いて後述する。
【0031】
負極端子200は、集電体120を介して電極体400の負極と電気的に接続された電極端子である。正極端子300は、集電体130を介して電極体400の正極と電気的に接続された電極端子である。負極端子200及び正極端子300は、電極体400の上方に配置された蓋体110に、絶縁性を有するガスケット(図示せず)を介して取り付けられている。
【0032】
集電体120は、電極体400の負極と容器100の本体111の壁面との間に配置され、負極端子200と電極体400の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。
【0033】
集電体130は、電極体400の正極と容器100の本体111の壁面との間に配置され、正極端子300と電極体400の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。
【0034】
具体的には、集電体120及び130は、蓋体110に固定されている。集電体120は、電極体400の負極側端部に接合され、集電体130は、電極体400の正極側端部に接合されている。本実施の形態では、集電体120及び130のそれぞれは、電極体400と、超音波接合によって接合されている。本実施の形態では、集電体120及び集電体130の形状および取り付け構造等は、実質的に同一である。そのため、図3を用いて負極側の集電体120の構成について説明し、正極側の集電体130の構成についての説明は省略する。
【0035】
本実施の形態における集電体120は、図3に示すように、電極体400の負極側端部を両側から挟むように配置された一対の脚部122を有する。一対の脚部122は、集電体120が有する端子接続部121の端部から延設された長尺状の部分である。端子接続部121は、負極端子200と接続される部分である。例えば、負極端子200に設けられたリベットが、端子接続部121の貫通孔121aを貫通した状態でかしめられることで、負極端子200と集電体120とが接続される。一対の脚部122は、電極体400の負極側端部と、超音波接合によって接合される。これにより、集電体120は、電極体400の負極に電気的に接続される。電極体400と集電体120及び130との接合の手法として、超音波接合以外に、抵抗溶接またはクリンチ接合等の手法が採用されてもよい。
【0036】
[1-1.電極体の基本構成]
次に、以上のように構成された蓄電素子10が備える電極体400の基本的な構成について、図4を用いて説明する。図4は、実施の形態に係る電極体400の構成概要を示す斜視図である。図4では、積層されて巻回された極板等の要素(積層要素)を一部展開して図示している。図4において符号Wが付された一点鎖線は、電極体400の巻回軸を表している。巻回軸Wは、極板等を巻回する際の中心軸となる仮想的な軸であり、本実施の形態では、電極体400の中心を通るX軸に平行な直線である。つまり、本実施の形態において、「巻回軸Wの方向」は、「X軸方向」と同義である。
【0037】
電極体400は、極板及びセパレータが、後述する芯材に巻回されて形成された電極体の一例である。図4に示すように、電極体400は、巻回軸Wと直交する方向(本実施の形態ではZ軸方向)に扁平な形状である。つまり、電極体400は、巻回軸Wの方向から見た場合に、全体として長円形状であり、長円形状の直線部分が平坦な形状となり、長円形状の曲線部分が湾曲した形状となる。このため、電極体400は、対向する一対の湾曲端部(巻回軸Wを挟んでY軸方向で対向する部分)と、一対の湾曲端部の間の部分である一対の中間部(巻回軸Wを挟んでZ軸方向で対向する部分)とを有している。
【0038】
本実施の形態において、正極板410は、アルミニウムからなる長尺帯状の金属箔(正極基材層411)と、当該金属箔の表面に形成された、正極活物質を含む正極合材層414とを有する。負極板420は、銅からなる長尺帯状の金属箔(負極基材層421)と、当該金属箔の表面に形成された、負極活物質を含む負極合材層424とを有する。本実施の形態では、セパレータ430及び450は、樹脂からなる微多孔性のシートを基材として有している。
【0039】
このように構成された電極体400において、より具体的には、正極板410と負極板420とは、セパレータ430または450を介し、巻回軸Wの方向に互いにずらして巻回されている。そして、正極板410及び負極板420は、それぞれのずらされた方向の端部に、基材層における、合材層が形成されていない部分である合材層非形成部を有する。
【0040】
具体的には、正極板410は、巻回軸Wの方向の一端(図4ではX軸方向プラス側の端部)に、正極合材層が形成されていない合材層非形成部411aを有している。負極板420は、巻回軸Wの方向の他端(図4ではX軸方向マイナス側の端部)に、負極合材層が形成されていない合材層非形成部421aを有している。
【0041】
つまり、正極板410の露出した金属箔(合材層非形成部411a)の層によって正極側端部が形成され、負極板420の露出した金属箔(合材層非形成部421a)の層によって負極側端部が形成されている。正極側端部は集電体130と接合され、負極側端部は集電体120と接合される。
【0042】
[1-2.芯材及びその周囲の構造]
以上のように構成された電極体400において、極板の巻き始めの端縁(本実施の形態では負極板420内周端縁)が、芯材の湾曲部の外側領域とは異なる位置に配置されており、これにより、内周端縁の浮きが抑制されている。この構造について、以下、図5図8を用いて説明する。
【0043】
図5は、実施の形態に係る電極体400を巻回軸Wの方向から見た場合の構成概要を示す図である。図6は、実施の形態に係る電極体400の製造方法を簡易的に示す図である。図7は、実施の形態に係る電極体400の芯材500及びその周囲の構成概要を示す図である。図8は、比較例に係る電極体490の構成概要を示す図である。
【0044】
図6では、芯材500に最初に巻き付けられるセパレータ430及び450を図示し、セパレータ430及び450に挟まれて巻回される負極板420及び正極板410の図示は省略されている。図7及び図8では、負極板420、セパレータ430及び450それぞれの巻き始めの一部のみを図示し、正極板410の図示は省略されている。図6図8では、セパレータ430とセパレータ450とを識別しやすいように、セパレータ430は実線で表され、セパレータ450は点線で表されている。これら図6図8についての補足事項は、後述する図9及び図10についても適用される。
【0045】
本実施の形態に係る電極体400は、図5に示すように、巻回軸Wの方向から見た場合にZ軸方向に扁平な長円形状である。このような形状は、負極板420等の、電極体400を構成する要素(以下、「積層要素」ともいう。)を巻回した後に、Z軸方向に圧縮されることで形成される。本実施の形態では、電極体400は芯材500を有しており、芯材500も、大まかにはZ軸方向に扁平な形状を有している。芯材500は、図7に示すように、第一仮想線VL1に沿って延びる第一線部501と、第二仮想線VL2に沿って延びる第二線部502とを有している。第一仮想線VL1及び第二仮想線VL2は、蓄電素子10の容器100の長側面111a(図2参照)に平行な仮想線である。より具体的には、第一仮想線VL1及び第二仮想線VL2は、長側面111aに平行で、かつ、巻回軸Wの方向から見た場合に、芯材500の厚み方向(Z軸方向)の両端部を通過する一対の仮想的な直線である。
【0046】
本実施の形態では、芯材500として、ポリプロピレンまたはポリエチレン等を素材とする樹脂シート600を巻くことで筒状に形成されたものが採用されている。つまり、芯材500は比較的に柔軟性が高い部材である。そのため、上述のように電極体400がZ軸方向に圧迫された場合に、芯材500は、芯材500の周囲のセパレータ430等の積層要素を損傷させることなく、その圧迫力に応じて扁平な形状に変形する。つまり、芯材500は、巻回軸Wの方向から見た場合に、Y軸方向に長尺状で、かつY軸方向で対向する一対のカーブ部531及び532を有する形状に形成される。
【0047】
より具体的には、本実施の形態に係る芯材500を作製する場合、樹脂シート600の巻き始め部分をS字状にして、図5に示すように、例えばP1及びP2の2か所を溶着する。さらにそのS字状の部分を中心として樹脂シート600を巻き付ける。これにより、芯材500には、巻回軸Wの方向から見た場合に内部空間を横切る仕切壁部520が形成される。つまり、筒状の芯材500の内部空間は、図5に示すように、仕切壁部520によって第一中空部521と第二中空部522とに区分される。
【0048】
図5以降の図では、芯材500は、樹脂シート600が1周半程度巻かれることで形成されているが、芯材500を形成する樹脂シート600の巻き数に特に限定はない。例えば、樹脂シート600が、S字状の部分を中心として1周以上巻かれることで、芯材500が形成されてもよい。樹脂シート600を1周以上巻くことで芯材500が形成されることは必須ではなく、例えば、金型を用いた樹脂成型によって筒体を作製し、その筒体が芯材500として採用されてもよい。
【0049】
このように形成された芯材500を中心として、セパレータ430等の積層要素を巻回した場合、柔軟性が高い芯材500の一部は、積層要素の張力によって内側に湾曲する。その結果、芯材500には、図5に示すように湾曲部510が形成される。
【0050】
具体的には、芯材500を中心としてセパレータ430等の積層要素を巻回する工程(巻回工程)では、芯材500を回転させる巻回装置700が用いられる。巻回装置700は、図6に示すように、芯材500を回転させる一対の支持部材710を有する。つまり、芯材500は、第一中空部521に挿入された支持部材710と、第二中空部522に挿入された支持部材710とで支持され、その状態で巻回軸W周りに回転される。芯材500には、図6に示すように、セパレータ430及び450の端部が、例えば溶着等の所定の手法により固定されており、この状態で芯材500の回転が開始される。その後、セパレータ430の外側かつセパレータ450の内側に負極板420が挟み込まれ、セパレータ450の外側かつセパレータ430の内側に正極板410が挟み込まれる。これにより、芯材500を中心として、セパレータ430、負極板420、セパレータ450及び正極板410が巻回された電極体400が得られる。
【0051】
図7では、負極板420の内側(芯材500に近い側)に、セパレータ430が一層のみ配置されているが、負極板420の内側に、芯材500に巻かれた複数層のセパレータ430が配置されていてもよい。負極板420の内側において、セパレータ430及び450が重ねられた状態で、芯材500に巻回されていてもよい。
【0052】
上記の巻回工程では、芯材500は、長手方向(図6における横方向)の両端のそれぞれが支持部材710で支持されており、この時点では、芯材500に湾曲部510は明確には存在しない。しかし、その後に、セパレータ430等が巻き付けられた芯材500から一対の支持部材710が取り外された場合、芯材500は、セパレータ430等の積層要素から受ける力によって一部が内側に湾曲し、その結果、湾曲部510が形成される。
【0053】
より詳細には、図7に示すように、芯材500は、セパレータ430及び450が固定された固定部560を有し、巻回工程では、固定部560が巻回方向(図7では右方向)に引っ張られる状態となる。その状態で芯材500から一対の支持部材710が取り外された場合、固定部560に作用するセパレータ430及び450の張力により固定部560の巻回方向の側方が湾曲しやすい状態となる。さらに、芯材500に巻回されたセパレータ430等の積層要素による締め付け力が芯材500に作用し、その結果、固定部560の巻回方向の側方に湾曲部510が形成される。本実施の形態では、芯材500の第一線部501に、第一仮想線VL1を越えて第二仮想線VL2に向けて突出する湾曲部510が形成されている。湾曲部510は、第一線部501において固定部560に隣接して形成されている。湾曲部510が形成された電極体400がZ軸方向に圧迫された場合であっても、湾曲部510は平坦に矯正されず、芯材500に湾曲部510が残存した状態で、電極体400に集電体120及び130(図1及び図2参照)が接合され、容器100に収容される(図2参照)。
【0054】
このように、芯材500に湾曲部510が存在した場合、そのすぐ外側の領域(外側領域550)において、セパレータ430及び450は内側への移動が可能となり、これにより、セパレータ430及び450の間に隙間が形成されやすい。
【0055】
従って、図8に示す比較例に係る電極体490のように、外側領域550に、負極板420の内周端縁420aを配置した場合、内周端縁420aが隣接するセパレータ450から浮きやすい。内周端縁420aと隣接するセパレータ430との間にも隙間も生じやすい。この場合、例えば以下のような不具合が生じる可能性が高くなる。すなわち、例えば集電体120と電極体400との接合時において生じた微細な金属粉(コンタミネーション)が、電極体400の端部から侵入してイオン化し、負極板420に接触する。その結果、負極板420にデンドライトが形成され、このデンドライトが、セパレータ450を貫いて正極板410と負極板420との間の微短絡を発生させる。
【0056】
そこで、本実施の形態では、図7に示すように、負極板420の巻回開始位置における内周端縁420aを、芯材500の湾曲部510以外の箇所に配置する構成が採用されている。具体的には、内周端縁420aを、芯材500における湾曲部510の外側領域550に配置しない構成が採用されている。
【0057】
つまり、本実施の形態に係る蓄電素子10は、筒状の芯材500と、芯材500に巻回された極板及びセパレータを有する電極体400を備える。芯材500は、電極体400の巻回軸Wの方向から見た場合、容器100の長側面111aに平行な第一仮想線VL1及び第二仮想線VL2にそれぞれ沿って延びる第一線部501及び第二線部502を有している。第一線部501及び第二線部502の少なくとも一方は、第一仮想線VL1または第二仮想線VL2を越えて他方に向けて突出する湾曲部510を有する。負極板420の、巻回開始位置における内周端縁420aは、第一線部501及び第二線部502の少なくとも一方における、湾曲部510以外の箇所に位置する。本実施の形態では、第一線部501は、第一仮想線VL1を越えて第二仮想線VL2に向けて突出する湾曲部510を有している。内周端縁420aは、第一線部501における、湾曲部510以外の箇所に配置されている。
【0058】
具体的には、本実施の形態に係る電極体400では、図7に例示されるように、負極板420及びセパレータ430が、セパレータ430が内側の状態で筒状の芯材500に巻回されている。この電極体400において、芯材500の湾曲部510の外側領域550に、負極板420の内周端縁420aが位置していない。つまり、湾曲部510以外の箇所に内周端縁420aが配置されている、これにより、負極板420の内周端縁420aは、内側(芯材500側)のセパレータ430によって外側に押さえられ、その結果、内周端縁420aの浮き上がりが抑制される。つまり、内周端縁420aを含む負極板420の端部は、両側からセパレータ430及び450に挟まれた状態となり、電極体400の端部から侵入するコンタミネーションに起因する微短絡等の不具合が生じ難い。従って、本実施の形態に係る蓄電素子10は、信頼性の高い蓄電素子である。
【0059】
本実施の形態では、芯材500は、巻回軸Wの方向から見た場合、セパレータ430が固定された部分である固定部560を第一線部501に有する。湾曲部510は、第一線部501において固定部560に隣接して形成されている。本実施の形態では、固定部560には、セパレータ430及び450の端部が、熱溶着等によって固定されている。
【0060】
上述のように、芯材500における固定部560は、巻回工程においてセパレータ430及び450によって直接的に巻回方向に引っ張られる部分である。そのため、芯材500には、固定部560に隣接する位置に湾曲部510が形成されやすい。例えば、固定部560の、負極板420及びセパレータ430の巻回方向における側方に比較的に大きな湾曲部510が形成されやすい。湾曲部510以外の部分は外側に張り出した状態となりやすい。従って、負極板420の内周端縁420aを、この湾曲部510の外側領域550を避ける位置に配置することで、内周端縁420aの浮き上がりの抑制がより確実化される。例えば、巻回工程を開始する前の時点において、その後に形成される湾曲部510の位置を、固定部560を基準として特定しやすい。従って、湾曲部510以外の箇所に負極板420の内周端縁420aが配置された電極体400の製造が容易である。
【0061】
本実施の形態に係る蓄電素子10において、内周端縁420aは、第二線部502に位置する。
【0062】
このように、本実施の形態では、固定部560が、第一線部501に配置され、負極板420の内周端縁420aが第二線部502に配置される。言い換えると、固定部560が、長軸線Lによって2つに区分される領域の一方に配置され、負極板420の内周端縁420aが、当該2つに区分される領域の他方に配置される(図7参照)。従って、負極板420の内周端縁420aは、固定部560の側方に位置する湾曲部510の影響を受けにくい。これにより、内周端縁420aの浮き上がりがより確実に抑制される。
【0063】
本実施の形態に係る蓄電素子10では、電極体400において、固定部560及び内周端縁420aは、巻回軸Wを挟んで互いに対向する位置に配置されている。つまり、電極体400を巻回軸Wの方向から見た場合、固定部560と巻回軸Wとを通る直線上またはその近傍に、負極板420の内周端縁420aが位置している。
【0064】
すなわち、本実施の形態では、負極板420の内周端縁420aは、芯材500の周方向において、固定部560から最も遠い位置またはその近傍に存在するため、固定部560の側方に位置する湾曲部510の影響を受けにくい。これにより、内周端縁420aの浮き上がりがより確実に抑制される。
【0065】
本実施の形態に係る蓄電素子10において、芯材500の内部空間は、巻回軸Wの方向から見た場合において内部空間を横切る仕切壁部520によって2つの空間に区分されている。固定部560は、当該2つの空間の一方の外側に位置し、内周端縁420aは、当該2つの空間の他方の外側に位置している。より具体的には、芯材500の内部空間は、例えば図7に示すように、仕切壁部520によって第一中空部521と第二中空部522とに区分されている。固定部560は第一中空部521の外側に位置し、内周端縁420aは、第二中空部522の外側に位置している。
【0066】
固定部560が巻回方向(図7参照)に引っ張られることに起因して形成される湾曲部510は、仕切壁部520が突っ張ることで、仕切壁部520を挟んで固定部560とは反対側の部分には形成され難い。従って、本実施の形態に係る蓄電素子10によれば、負極板420の内周端縁420aは、その内側のセパレータ430が浮き難い位置に配置される。これにより、内周端縁420aの浮き上がりがより確実に抑制される。
【0067】
以上、実施の形態に係る蓄電素子10について説明したが、蓄電素子10が備える電極体400の構成は、図5図7に示される構成とは異なっていてもよい。そこで、以下に、電極体400の構成についての変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
【0068】
(変形例1)
図9は、実施の形態の変形例1に係る電極体400aの芯材500及びその周囲の構成概要を示す図である。図9に示す電極体400aでは、巻回軸Wの方向から見た場合において、芯材500の長手方向(Y軸方向)で互いに対向する位置に、固定部560と、負極板420の内周端縁420aとが配置されている。
【0069】
つまり、本変形例に係る蓄電素子10において、芯材500は、巻回軸Wの方向から見た場合、所定の方向(本変形例ではY軸方向)に長尺状で、かつ、Y軸方向で対向する一対のカーブ部531及び532を有する形状である。固定部560は、一対のカーブ部531及び532の一方に配置され、内周端縁420aは、一対のカーブ部531及び532の他方の外側に配置されている。図9に示す例では、固定部560は、芯材500のカーブ部531に配置されており、内周端縁420aは、カーブ部532の外側に配置されている。
【0070】
巻回軸Wの方向から見た場合に長円状に形成された芯材500において、カーブ部531及び532それぞれの外側は、巻回の際に、セパレータ430等の積層要素の張力が掛かりやすい部分である。つまり、カーブ部531及び532それぞれの外側は、積層要素の密度が高い部分である。従って、この部分に負極板420の内周端縁420aが位置することで、内周端縁420aは、外側のセパレータ450により内側にしっかりと押さえられ、かつ、固定部560からも遠い位置であることで、固定部560の側方の湾曲部510の影響も受け難い。これにより、内周端縁420aの浮き上がりがより確実に抑制される。これにより、コンタミネーションに起因する微短絡等の不具合の発生が抑制される。
【0071】
(変形例2)
図10は、実施の形態の変形例2に係る電極体400bの構成概要を示す図である。本変形例に係る電極体400bでは、上記実施の形態に係る電極体400とは異なり、芯材580は、積層要素の一部によって形成されている。具体的には、図10に示すように、セパレータ430の一部が巻かれることで芯材580が形成されている。つまり、セパレータ430の一部によって形成された芯材580の外周に、負極板420、セパレータ450、正極板410、及びセパレータ430の残りの部分が巻かれることで、電極体400bが形成されている。
【0072】
セパレータの一部によって芯材が形成される場合、例えば、セパレータの巻き始めの端縁から、内周端縁の側方の位置(極板開始位置)までを「芯材」と定義してもよい。つまり、本変形例の場合、図10に示すように、セパレータ430が巻かれた部分であって、最内周の端縁Paから極板開始位置Pbまでの部分を、芯材580として扱うことができる。
【0073】
このように、セパレータ430が巻かれることで芯材580が形成されている場合であっても、芯材580は柔軟性が比較的に高いため、湾曲部510が形成される。つまり、巻回装置700を用いた巻回工程(図6参照)の後に、芯材580から一対の支持部材710が取り外された場合、芯材580は、積層要素から受ける力によって一部が内側に湾曲し、その結果、湾曲部510が形成される。従って、負極板420の内周端縁420aを、湾曲部510以外の箇所(図10では、芯材580の径方向における湾曲部510の外側領域550とは異なる位置)に配置することで、内周端縁420aの浮き上がりが抑制される。これにより、コンタミネーションに起因する微短絡等の不具合の発生が抑制される。
【0074】
図10に示す例では、セパレータ430のみによって芯材580が形成されているが、例えば、セパレータ430及び450を重ねて巻くことで、芯材580が形成されてもよい。セパレータ450の巻き始めの端部が、その内側の一層以上のセパレータ430で形成される芯材580に、溶着等によって固定されていてもよい。この場合、芯材580におけるセパレータ450が固定された部分が、芯材580が有する固定部であり、固定部に隣接して湾曲部510が形成される。
【0075】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電素子について、実施の形態及び変形例に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態及び変形例に限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態または変形例に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0076】
例えば、実施の形態及び変形例では、負極板420及び正極板410のうち、内周側に配置される負極板420に着目し、負極板420の内周端縁420aが湾曲部510以外の箇所(例えば外側領域550とは異なる位置、以下同じ)に配置されること、及び、その効果を説明した。しかし、負極板420の内周端縁420aに加えてまたは替えて、正極板410の内周端縁を湾曲部510以外の箇所に配置してもよい。これにより、正極板410の内周端縁の近傍における隙間が生じ難く、その結果、コンタミネーションに起因する微短絡等の不具合の発生が抑制される。
【0077】
実施の形態に係る芯材500において、仕切壁部520は必須ではない。例えば、樹脂シート600を単純に巻くことで、内部空間を横切る壁を持たない筒状の芯材500が形成されてもよい。
【0078】
例えば、芯材500における固定部560の位置が、図7に示される位置である場合において、負極板420の内周端縁420aの位置は、図7に示す位置である必要はない。例えば、芯材500において、固定部560の位置と内周端縁420aの位置とが、長軸線Lを基準した場合における同じ側の領域(例えば図7における長軸線Lよりも下の領域)に存在してもよい。この場合であっても、内周端縁420aが、湾曲部510以外の箇所に配置されていることで、内周端縁420aの浮き上がりが抑制される。
【0079】
本実施の形態では、蓄電素子10は、電極体400を1つのみ備えているが、蓄電素子10が備える電極体400の数は2以上であってもよい。例えば、蓄電素子10が電極体400を2つ備える場合、集電体120は、2つの電極体400と接合される4つの脚部122を有してもよい。
【0080】
上記実施の形態に記載された構成を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0081】
本発明は、上記説明された蓄電素子として実現できるだけでなく、当該蓄電素子が備える電極体400としても実現できる。本発明は、当該蓄電素子を複数備える蓄電装置としても実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0083】
10 蓄電素子
100 容器
111a 長側面
400、400a、400b 電極体
410 正極板
420 負極板
420a 内周端縁
430、450 セパレータ
500、580 芯材
501 第一線部
502 第二線部
510 湾曲部
520 仕切壁部
521 第一中空部
522 第二中空部
531、532 カーブ部
550 外側領域
560 固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10