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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】頭皮用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/73 20060101AFI20230418BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230418BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20230418BHJP
【FI】
A61K36/73
A61K8/9789
A61P17/14
A61P43/00 111
A61Q7/00
A61K127:00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021176827
(22)【出願日】2021-10-28
(62)【分割の表示】P 2020176419の分割
【原出願日】2016-10-14
(65)【公開番号】P2022023188
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2015206939
(32)【優先日】2015-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹内 敬子
(72)【発明者】
【氏名】井野口 友紀
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-316917(JP,A)
【文献】特開平09-118626(JP,A)
【文献】特開2011-068583(JP,A)
【文献】特開2013-253072(JP,A)
【文献】特開2016-056116(JP,A)
【文献】特開2012-167021(JP,A)
【文献】フレグランスジャーナル,2014年,Vol. 42, No. 6,pp. 50-53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/73
A61K 8/9789
A61P 17/14
A61P 43/00
A61Q 7/00
A61K 127/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンチャ又はこのエキスを有効成分として含有することを特徴とする、細胞外分泌のコラーゲン量を抑制するコラーゲン過剰産生抑制剤。
【請求項2】
頭皮に適用される、請求項1に記載のコラーゲン過剰産生抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン過剰産生抑制剤を含む、頭皮柔軟剤に関する。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞が産生するコラーゲンは、皮膚の弾性を保つために重要である。しかし炎症により線維芽細胞がTGF-β等の刺激を受けると、コラーゲン産生が過剰になり、コラーゲンの沈着や線維芽細胞の増生を特徴とした線維化が生じる(非特許文献1)。線維化した皮膚は、柔軟性を失い硬化する(非特許文献1)。
【0003】
TGF-β1は、毛包の毛乳頭細胞から分泌される脱毛因子としても知られている(特許文献1)。TGF-β1は、線維芽細胞を男性ホルモンで刺激した際にも増加し、コラーゲン産生を亢進させる(非特許文献2)。実際に、男性型脱毛症患者の頭皮では、脱毛領域の毛包周囲に線維化が認められる(特許文献2、非特許文献3~5)。線維化した領域は、毛包伸長の物理的障壁となって発毛剤による治療応答性の低下(非特許文献4)、頭皮の血流の低下、毛母細胞の活性低下等(特許文献2)を招くことが示唆されている。そのため、頭皮の線維化を予防又は改善し、頭皮を柔軟化する成分の開発が期待されている(特許文献2)。
【0004】
頭皮を柔軟化するには、コラーゲンの異常蓄積を抑制して線維化を解消することが有効である(特許文献2)。今までに、頭皮を柔軟化するために、皮膚の角質層にスチームを浸透させる方法等が行われているが(特許文献3)、スチームを浸透させる方法が必ずしもコラーゲン過剰産生抑制作用を有するわけではない。また、線維化した組織の治療には、例えば、抗炎症薬が使用されてきた(非特許文献6)。しかし、抗炎症成分は必ずしも抗線維化作用を有するとは限らず(非特許文献7)、既知の抗炎症成分の線維化予防又は改善効果は充分とはいえない。抗線維化薬としてはピルフェニドンがあり、TGF-β1刺激した線維芽細胞のコラーゲン過剰産生抑制作用等により、線維化を改善する(非特許文献8)。しかし副作用の観点から、さらに安全性の高い成分の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-248632.
【文献】特許第2869168号.
【文献】特開2013-244079.
【非特許文献】
【0006】
【文献】横崎恭之ら.総合保健科学. 2012 28:81-86.
【文献】Yoo HG. et al. Biol Pharm Bull. 2006 29(6):1246-1250.
【文献】Mahe YF. et al. Int J Dermatol. 2000 39(8):576-584.
【文献】宇野秀夫. 臨床と研究. 2000 77:1117-1124.
【文献】Sueki H. et al. Acta Derm Venereol. 1999 79(5):347-350.
【文献】岡本竜哉,菅守隆. 日本内科学会雑誌 2005 94(6):1075-1081.
【文献】奥久司,世森重信. 別冊BIO Clinica 2011 26(12):50-55.
【文献】医薬品インタビューフォーム ピルフェニドン錠「ピレスパ錠200mg」.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、線維芽細胞のコラーゲン過剰産生を抑制する素材を提供することである。さらには、頭皮の毛包部の線維芽細胞のコラーゲン過剰産生を抑制する素材を提供することである。本発明のもう一つの目的は、コラーゲン過剰産生抑制剤を含有する頭皮柔軟剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、発明者らは鋭意検討した結果、アスパラサスリネアリス、イチョウ、イネ、ウコン、ウンシュウミカン、オウレン、ガンビールノキ、キイチゴ、キナノキ、クララ、シナニッケイ、ゲンノショウコ、サンザシ、ショウガ、セイヨウオトギリソウ、セイヨウトチノキ、セイヨウバラ、チョウジ、テンチャ、ドクダミ、ノイバラ、ハマメリス、ヒキオコシ、ヒバマタ、ブドウ、ホップ、マグワ、ユーカリ、ヨーロッパシラカバ及びワレモコウから選ばれる少なくとも1種の植物又はこれらのエキスが、優れたコラーゲン過剰産生抑制作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)アスパラサスリネアリス、イチョウ、イネ、ウコン、ウンシュウミカン、オウレン、ガンビールノキ、キイチゴ、キナノキ、クララ、シナニッケイ、ゲンノショウコ、サンザシ、ショウガ、セイヨウオトギリソウ、セイヨウトチノキ、セイヨウバラ、チョウジ、テンチャ、ドクダミ、ノイバラ、ハマメリス、ヒキオコシ、ヒバマタ、ブドウ、ホップ、マグワ、ユーカリ、ヨーロッパシラカバ及びワレモコウからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物又はこれらのエキスを含有することを特徴とする、コラーゲン過剰産生抑制剤、
(2)頭皮に適用される、(1)に記載のコラーゲン過剰産生抑制剤、
(3)(1)又は(2)に記載のコラーゲン過剰産生抑制剤を含む、頭皮柔軟剤、
(4)TGF-β刺激によりコラーゲン産生量が増加した線維芽細胞に対して被験物質を添加し、コラーゲン過剰産生を抑制することを指標として、コラーゲン過剰産生抑制剤又はコラーゲン過剰産生抑制作用に基づく頭皮柔軟剤をスクリーニングする方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、コラーゲン過剰産生抑制剤及びこれを含有する頭皮柔軟剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、試験例1におけるコラーゲン産生量を示したものであり、TGF-β1刺激群のコラーゲン産生量と、無刺激群のコラーゲン産生量を示した図である。
図2図2は、アスパラサスリネアリス、イチョウ、ウコン、ウンシュウミカン、オウレン、ガンビールノキ、キイチゴ、キナノキ、クララ、ゲンノショウコ、サンザシ、セイヨウオトギリソウ、セイヨウトチノキ、セイヨウバラ、テンチャ、ノイバラ、ハマメリス、ヒキオコシ、ヒバマタ、ブドウ、ホップ、マグワ、ユーカリ、ヨーロッパシラカバ、ワレモコウのエキス(溶媒:0.1%1,3-ブチレングリコール)のコラーゲン過剰産生抑制効果を示した図である。
図3図3は、イネとドクダミのエキス(溶媒:0.3%1,3-ブチレングリコール)のコラーゲン過剰産生抑制効果を示した図である。
図4図4は、シナニッケイ、ショウガのエキス(溶媒:0.1%エタノール)のコラーゲン過剰産生抑制効果を示した図である。
図5図5は、チョウジのエキス(溶媒:0.5%エタノール)のコラーゲン過剰産生抑制効果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に用いるアスパラサスリネアリス、イチョウ、イネ、ウコン、ウンシュウミカン、オウレン、ガンビールノキ、キイチゴ、キナノキ、クララ、シナニッケイ、ゲンノショウコ、サンザシ、ショウガ、セイヨウオトギリソウ、セイヨウトチノキ、セイヨウバラ、チョウジ、テンチャ、ドクダミ、ノイバラ、ハマメリス、ヒキオコシ、ヒバマタ、ブドウ、ホップ、マグワ、ユーカリ、ヨーロッパシラカバ、及びワレモコウの学名及び使用部位を表1に示す。本発明に用いる各植物は、任意の部位を使用することができるが、表1に記載されている部位を用いることが好ましい。
【0013】
【表1】
【0014】
本発明に用いる各植物は、例えば乾燥刻み加工品を更に細かく粉砕した粉末状の乾燥品としてもよいし、抽出したエキスを使用してもよいが、抽出したエキスを使用するのが好ましい。本発明の植物エキスはどのような方法で抽出されたものでもよく、例えば水、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、多価アルコール(プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコールなど)、低級脂肪族ケトン(アセトンなど)などの溶媒により抽出したエキスを使用することができる。
【0015】
本発明の植物を水とエタノールからなる溶媒で抽出する場合、溶媒中におけるエタノールの含有量は、30~90体積%が好ましく、水と1,3-ブチレングリコールからなる溶媒で抽出する場合、溶媒中における1,3-ブチレングリコールの含有量は30~70体積%が好ましい。
【0016】
また、本発明の植物エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、乾燥エキス末、エキス末、軟エキス、流エキスなどを使用することができる。なお、本発明に用いるいずれの植物エキスも、本発明のコラーゲン過剰産生抑制作用や頭皮柔軟作用については知られていない。
【0017】
本発明のコラーゲン過剰産生抑制剤は、化粧品、医薬部外品又は医薬品として提供することができる。投与形態は、頭皮に適用する外用である。その他、試薬として用いることも可能である。
【0018】
本発明を外用で適用する場合の剤形としては、例えばシャンプー、コンディショナー、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、スプレー剤、石鹸等が挙げられる。これらは、公知の方法で製造することができる。製造に際しては、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬部外品、医薬品又は試薬に含有可能な種々の添加物を配合することができる。
【0019】
さらに本発明のコラーゲン過剰産生抑制剤は、センブリエキス、ニンジンエキス、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、ビワ葉エキス、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、パントテン酸、パンテノール、ビタミンE及びその誘導体、ヒノキチオール、サリチル酸、ピロクトンオラミン、ミノキシジル、アデノシン、t-フラバノン、サイトプリン、ペンタデカン酸グリセリド、アラントイン、ニコチン酸アミドをはじめとした発育毛物質と組み合わせて使用することもできる。
【0020】
本発明の植物又は植物エキスの配合量は、化粧品、医薬部外品、医薬品又は試薬で提供する場合、組成物全体に対して0.000001~10質量%、好ましくは0.0001~5質量%、より好ましくは0.001~1質量%である。
【0021】
また、本発明は、優れたコラーゲン過剰産生抑制剤をスクリーニングする方法を提供するものであり、また、コラーゲン過剰産生抑制作用に基づく頭皮柔軟剤をスクリーニングするための方法を提供するものである。
【0022】
本発明は、TGF-βで刺激しコラーゲン産生を亢進させた線維芽細胞に対して被験物質又は素材を添加し、コラーゲン過剰産生を抑制することを指標として、コラーゲン過剰産生抑制剤又はコラーゲン過剰産生抑制作用に基づく頭皮柔軟剤をスクリーニングする方法である。そして、本発明によりスクリーニングされる頭皮柔軟剤は、TGF-β刺激によるコラーゲン過剰産生を抑制し、頭皮が柔軟化するという新たな作用機序に基づいている。
【実施例
【0023】
以下に試験例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は試験例に限定されない。
【0024】
(試験例1)TGF-β1刺激したヒト線維芽細胞に対するコラーゲン過剰産生抑制作用の評価
<試験方法>
ヒト線維芽細胞(倉敷紡績(株))を96穴プレートに1×104細胞/穴の密度で播種し、37℃、CO2 5%にセットしたインキュベーター内で24時間予備培養した。培地には、血清(2体積%)、L-グルタミン及びペニシリン・ストレプトマイシンを含むFibroLife BM基礎培地(倉敷紡績(株))を用いた。予備培養後、PBSにて細胞表面を洗浄した後、下記の通りに培地を添加した。無刺激群には、溶媒(1,3-ブチレングリコール又はエタノール)の終濃度が各植物エキス群と同一となるように溶媒を含有した無血清培地を添加した。TGF-β1刺激(対照)群には、コラーゲン産生を亢進させるためにTGF-β1(10ng/mL)を加え、さらに溶媒(1,3-ブチレングリコール又はエタノール)の終濃度が各植物エキス群と同一となるように溶媒を加えた無血清培地を添加した。各植物エキス群には、コラーゲン過剰産生抑制作用を評価する素材として植物エキス(10μg/mL)を加え、さらにTGF-β1(10ng/mL)を加えた無血清培地を添加した。培地交換後、72時間培養した。その後、培地を回収し、コラーゲン産生量の測定に用いた。培地回収後の細胞に、M-PER Mammalian Protein Extraction Reagent(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))を添加して細胞溶解液を回収し、細胞蛋白質量の測定に用いた。コラーゲン産生量は、Procollagen type I C-peptide (PIP) EIA Kit(タカラバイオ(株))を用いて、取扱説明書の手順に従い測定した。細胞蛋白質量は、BCA protein assay reagent kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))を用いて、取扱説明書の手順に従い測定した。コラーゲン産生量の測定値は、細胞蛋白質量当たりのPIP量(ng/μg protein)とした。各穴のコラーゲン産生量の測定値から、各群3穴の平均値及び標準誤差を算出した。なお、1,3-ブチレングリコール及びエタノールの終濃度は、細胞に対して毒性を示さないようにいずれも0.5体積%以下とした。
【0025】
<結果>
図1は、TGF-β1刺激(対照)群のコラーゲン産生量と、無刺激群のコラーゲン産生量を示した図である。コラーゲン産生量の測定値(ng/μg protein)は、無刺激群で12.35±0.62、TGF-β1刺激(対照)群で26.79±0.69であり、TGF-β1刺激(対照)群でコラーゲン産生の有意な亢進が認められた。
図2図5は、本発明の各植物エキスのコラーゲン過剰産生抑制効果を示した図である。図2では、コラーゲン過剰産生抑制効果について、TGF-β1刺激(対照)群のコラーゲン産生量を100%として、各植物エキス群のコラーゲン産生量の相対値(平均値±標準誤差)で示した(溶媒:0.1%1,3-ブチレングリコール)。図1に示したTGF-β1刺激(対照)群のコラーゲン産生量の測定値(ng/μg protein)は26.79±0.69であり、このTGF-β1刺激(対照)群のコラーゲン産生量を100%として図2に示した。図2から明らかなように、各植物エキスはコラーゲン過剰産生抑制効果を示した。
図3では、コラーゲン過剰産生抑制効果について、TGF-β1刺激(対照)群のコラーゲン産生量を100%として、各植物エキス群のコラーゲン産生量の相対値(平均値±標準誤差)で示した(溶媒:0.3%1,3-ブチレングリコール)。図3から明らかなように、イネ、ドクダミのエキスはコラーゲン過剰産生抑制効果を示した。なお、コラーゲン産生量の測定値(ng/μg protein)は、無刺激群で8.77±0.08(ng/μg protein)、TGF-β1刺激(対照)群で12.97±1.11(ng/μg protein)であり、TGF-β1刺激(対照)群でコラーゲン産生の有意な亢進が認められた。
図4では、コラーゲン過剰産生抑制効果について、TGF-β1刺激(対照)群のコラーゲン産生量を100%として、各植物エキス群のコラーゲン産生量の相対値(平均値±標準誤差)で示した(溶媒:0.1%エタノール)。図4から明らかなように、シナニッケイ、ショウガのエキスはコラーゲン過剰産生抑制効果を示した。なお、コラーゲン産生量の測定値(ng/μg protein)は、無刺激群で7.12±0.81、TGF-β1刺激(対照)群で13.63±1.13であり、TGF-β1刺激(対照)群でコラーゲン産生の有意な亢進が認められた。
図5では、コラーゲン過剰産生抑制効果について、TGF-β1刺激(対照)群のコラーゲン産生量を100%として、各植物エキス群のコラーゲン産生量の相対値(平均値±標準誤差)で示した(溶媒:0.5%エタノール)。図5から明らかなように、チョウジのエキスはコラーゲン過剰産生抑制効果を示した。なお、コラーゲン産生量の測定値(ng/μg protein)は、無刺激群で8.59±0.26、TGF-β1刺激(対照)群で12.77±1.54であり、TGF-β1刺激(対照)群でコラーゲン産生の亢進が認められた。
【0026】
表2に、検定結果を示す。各植物エキスは、TGF-β1刺激(対照)群と比較して線維芽細胞のコラーゲン産生量を有意に抑制した。
【0027】
【表2】
【0028】
以上の結果から、アスパラサスリネアリス、イチョウ、イネ、ウコン、ウンシュウミカン、オウレン、ガンビールノキ、キイチゴ、キナノキ、クララ、シナニッケイ、ゲンノショウコ、サンザシ、ショウガ、セイヨウオトギリソウ、セイヨウトチノキ、セイヨウバラ、チョウジ、テンチャ、ドクダミ、ノイバラ、ハマメリス、ヒキオコシ、ヒバマタ、ブドウ、ホップ、マグワ、ユーカリ、ヨーロッパシラカバ、又はワレモコウのエキスは、線維芽細胞におけるコラーゲン過剰産生を抑制する効果を有することが明らかとなった。本試験結果に基づけば、本発明のコラーゲン過剰産生抑制剤は、頭皮の毛包に適用すると、TGF-β刺激による線維芽細胞の過剰なコラーゲン産生を抑制すると考えられるので、アスパラサスリネアリス、イチョウ、イネ、ウコン、ウンシュウミカン、オウレン、ガンビールノキ、キイチゴ、キナノキ、クララ、シナニッケイ、ゲンノショウコ、サンザシ、ショウガ、セイヨウオトギリソウ、セイヨウトチノキ、セイヨウバラ、チョウジ、テンチャ、ドクダミ、ノイバラ、ハマメリス、ヒキオコシ、ヒバマタ、ブドウ、ホップ、マグワ、ユーカリ、ヨーロッパシラカバ及びワレモコウのエキスは頭皮柔軟化効果を有すると推察される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のアスパラサスリネアリス、イチョウ、イネ、ウコン、ウンシュウミカン、オウレン、ガンビールノキ、キイチゴ、キナノキ、クララ、シナニッケイ、ゲンノショウコ、サンザシ、ショウガ、セイヨウオトギリソウ、セイヨウトチノキ、セイヨウバラ、チョウジ、テンチャ、ドクダミ、ノイバラ、ハマメリス、ヒキオコシ、ヒバマタ、ブドウ、ホップ、マグワ、ユーカリ、ヨーロッパシラカバ及びワレモコウのエキスは、線維芽細胞の過剰なコラーゲン産生、特にTGF-β刺激によるものを抑制する効果を有するため、頭皮を柔軟化するための化粧品、医薬部外品又は医薬品等の分野に利用可能である。また、本発明のコラーゲン過剰産生抑制剤を含む、頭皮柔軟剤は、素材スクリーニング等を行なう際に、陽性対照薬として用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5