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特許7264219活性エネルギー線硬化型インキ組成物および印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インキ組成物および印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20230418BHJP
   C08F 2/40 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C09D11/101
C08F2/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021199877
(22)【出願日】2021-12-09
【審査請求日】2022-09-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】榊原 圭織
(72)【発明者】
【氏名】舞 幹子
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-189195(JP,A)
【文献】特開2019-001962(JP,A)
【文献】特開2020-139023(JP,A)
【文献】国際公開第2020/138132(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/162039(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/183691(WO,A1)
【文献】特開2019-108494(JP,A)
【文献】特開2018-154766(JP,A)
【文献】特開2012-167246(JP,A)
【文献】特開2017-171937(JP,A)
【文献】特開2011-201932(JP,A)
【文献】特開2014-210868(JP,A)
【文献】特開2012-211230(JP,A)
【文献】特開2019-098698(JP,A)
【文献】特開2020-033465(JP,A)
【文献】特開2019-192475(JP,A)
【文献】特開2017-066347(JP,A)
【文献】特開平06-143414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00
C08F 2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、樹脂と、光重合開始剤と、光重合禁止剤2種以上とを含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、
(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物を含み、
活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり、
光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含む、活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物の含有量が、組成物の全質量を基準として30~70質量%である、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項3】
光重合禁止剤が、ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩と、t-ブチルヒドロキノンとを含む、請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項4】
光重合禁止剤の含有量の総量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物全量中、0.01~1質量%である、請求項1~3いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項5】
樹脂が、ジアリルフタレート樹脂、および、ロジン変性樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1~4いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項6】
光重合開始剤が、吸収波長のピークを300nm以上に有する光重合開始剤を含む、請求項1~5いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項7】
光重合開始剤の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物全量中1~10質量%である、請求項1~6いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項8】
基材上に、請求項1~7いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物を印刷し、活性エネルギー線で硬化してなる、印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れた活性エネルギー線硬化型インキ組成物および印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型インキは、雑誌やチラシ等の印刷情報の分野から紙器等の食品包装向けパッケージ分野まで広く使用されている。
【0003】
この要因としては、活性エネルギー線硬化型インキが、印刷の高速化、省人化のために重要な高速乾燥性(高い硬化性)を有していること、および、印刷物における重要な物性である溶剤耐性といった塗膜耐性に優れていることが挙げられる。
【0004】
一方で、活性エネルギー線硬化型インキは長期保存によりインキが増粘し、その現象が過度となる場合には重合固化(ゲル化)してしまう傾向がある。これはインキに活性エネルギー線が直接当たらない環境下にあっても、熱等によりインキ組成物中の重合性モノマーやオリゴマーがラジカルを発生し、暗反応によって徐々に重合が進行することに起因する。従って活性エネルギー線硬化型インキは冷暗所に保管することが好ましいが、それでもゲル化の問題を完全に回避することは困難であることから、一般に保存安定性を得る目的で重合禁止剤が添加されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、活性エネルギー線硬化型組成物に使用される重合禁止剤として、N-オキシル化合物と特定の化学構造式である縮合多環芳香族骨格を有する化合物を用いることが開示されており、保存安定性および硬化時間に与える影響が少ないとされているが、印刷インキにおいては、その性能および保存安定性は不十分であった。
【0006】
また、特許文献2には、N-オキシラジカルの構造を有するヒンダードアミン系重合禁止剤を含有する活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物が開示されているが、高速印刷適性と保存安定性の性能を両立するには不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-14103号公報
【文献】国際公開第2015/016131号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高速印刷性を有すると共に、溶剤耐性といった塗膜耐性に優れ、更に、高い保存安定性をも有する、活性エネルギー線硬化型インキ組成物およびそれを用いた印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す活性エネルギー線硬化型組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、樹脂と、光重合開始剤と、光重合禁止剤2種以上とを含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、
(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物を含み、
活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり、
光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含む、活性エネルギー線硬化型インキ組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物の含有量が、組成物の全質量を基準として30~70質量%である、上記活性エネルギー線硬化型インキ組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、光重合禁止剤が、ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩と、t-ブチルヒドロキノンとを含む、上記活性エネルギー線硬化型インキ組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、光重合禁止剤の含有量の総量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物全量中、0.01~1質量%である、上記活性エネルギー線硬化型インキ組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、樹脂が、ジアリルフタレート樹脂、および、ロジン変性樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含む、上記活性エネルギー線硬化型インキ組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、光重合開始剤が、吸収波長のピークを300nm以上に有する光重合開始剤を含む、上記活性エネルギー線硬化型インキ組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、光重合開始剤の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物全量中1~10質量%である、上記活性エネルギー線硬化型インキ組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、基材上に、上記活性エネルギー線硬化型インキ組成物を印刷し、活性エネルギー線で硬化してなる、印刷物に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、高速印刷性を有すると共に、溶剤耐性といった塗膜耐性に優れ、更に、高い保存安定性をも有する、活性エネルギー線硬化型インキ組成物およびそれを用いた印刷物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下に記載の実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0020】
本明細書で使用される用語について説明する。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよび/またはメタアクリレートを意味する。「活性エネルギー線」とは、紫外線、電子線等、照射することによって照射されたものに化学反応等の化学的変化を生じさせ得る性質を有するエネルギー線を意味する。また、「PO」は「プロピレンオキサイド」を、「EO」は「エチレンオキサイド」を表す。
【0021】
<活性エネルギー線硬化型インキ組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ組成物は、少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、樹脂と、光重合開始剤と、光重合禁止剤2種以上とを含む。
以下、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物(以下、単に「組成物」ともいう)に含まれるか、または含まれ得る成分を説明する。
【0022】
[(メタ)アクリレート化合物]
本発明の組成物は、組成物中の(メタ)アクリロイル基の含有量が、組成物100g中0.40~0.53molとなるものである。この範囲であると、十分な皮膜強度と十分な保存安定性を両立できる。また、組成物中の(メタ)アクリロイル基の含有量は、好ましくは、0.43~0.50molである。
なお、組成物100g中の(メタ)アクリロイル基の含有量(mol)は、(メタ)アクリレート化合物の構造から算出される分子量を用い、配合量100g当たりの(メタ)アクリロイル基のモル数を計算で求めた値である。
【0023】
本発明の組成物において、(メタ)アクリロイル基の含有量を、組成物100g中0.40~0.53molとするためには、(メタ)アクリレート化合物として(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の組成物における(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として30~70質量%であることが好ましく、35~60質量%であることがより好ましい。
【0025】
(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物として、具体的には、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能(メタ)アクリレート化合物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能(メタ)アクリレート化合物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能(メタ)アクリレート化合物、などが挙げられる。
【0026】
また、(メタ)アクリレート化合物として、(メタ)アクリロイル基を1~3個有する化合物を用いることもできる。
【0027】
(メタ)アクリロイル基を1~3個有する(メタ)アクリレート化合物として、具体的には、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、EO変性(2)ノニルフェノールアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1、3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、アクリロイルモルフォリンなどの(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能(メタ)アクリレート化合物、
1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(300)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性(2)1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル基を2個有する2官能(メタ)アクリレート化合物、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル基を3個有する3官能(メタ)アクリレート化合物等があげられる。
【0028】
また、(メタ)アクリレート化合物として、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等も用いることができる。
【0029】
ウレタンアクリレートは、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類とを反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの等がある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
【0030】
ポリエステルアクリレートは、例えば、多塩基酸及び多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリカルボン酸と、水酸基含有(メタ)アクリレート等とを反応させて得ることができる。
【0031】
エポキシアクリレートは、例えばエポキシ樹脂のグリシジル基を(メタ)アクリル酸でエステル化して、官能基を(メタ)アクリレート基としたものが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物、ノボラック型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物等がある。
【0032】
本発明において、上記(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
[光重合開始剤]
本発明の組成物は、光重合開始剤を含有する。本発明における重合開始剤は、光の作用、または増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカルを生成する化合物であり、中でも、露光という手段で重合開始させることができるという観点から光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0034】
本発明において、光重合開始剤は、吸収波長のピークを300nm以上に有する光重合開始剤を用いることが好ましい。また、十分な被膜強度を得るためには、光重合開始剤の総量が組成物全量中1質量%以上であることが好ましく、更に、十分な保存安定性を確保するためには10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、組成物全量中2~8質量%である。
【0035】
吸収波長のピークを300nm以上に有する上記光重合開始剤として、具体例としては、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チオキサントン系化合物が挙げられる。
【0036】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、ジフェニルアシルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0037】
チオキサントン系化合物としては、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。
【0038】
また、光重合開始剤として、上記吸収波長のピークを300nm以上に有する光重合開始剤以外の光重合開始剤も用いることができる。具体例としては、ベンゾフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、などが挙げられる。
【0039】
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタノンなどが挙げられる。
【0040】
ジアルコキシアセトフェノン系化合物としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンなどが挙げられる。
【0041】
α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシメトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0042】
α-アミノアルキルフェノン系化合物としては、2-メチル-1-[4-(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル-1-ブタノンなどが挙げられる。
【0043】
本発明において、上記光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明の組成物に紫外線を照射して硬化させる場合、組成物に光重合開始剤を添加するだけでよいが、硬化性をより向上させるために、光増感剤を併用することもできる。
光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2-ジメチルアミノ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、および4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル等のアミン類が挙げられる。
【0045】
[樹脂]
本発明の組成物は、樹脂を含有する。
【0046】
本発明における樹脂としては、(メタ)アクリレート化合物と優れた相溶性を有する点から、ジアリルフタレート樹脂、および、ロジン変性樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0047】
<ジアリルフタレート樹脂>
本発明におけるジアリルフタレート樹脂は、オルソジアリルフタレート樹脂、イソジアリルフタレート樹脂のいずれを使用することも可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。ジアリルフタレート樹脂を含むことで、インキ流動性が著しく向上する。
【0048】
<ロジン変性樹脂>
本発明におけるロジン変性樹脂とは、樹脂骨格中に、ロジン由来の骨格を含有する樹脂のことである。ロジン由来の骨格を含有することで、高速印刷時でのUV照射による硬化収縮を抑えることができ、乾燥被膜の平滑性を維持することができるため、光沢性と、基材に対する密着性が向上する。
【0049】
また、本発明におけるロジン変性樹脂は、ロジン変性樹脂が、ロジン酸類およびα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物の付加反応物と、ポリオールとの反応物であるロジン変性樹脂が好ましい。
【0050】
ロジン変性樹脂としては、国際公開第2017/164246号、特開2019-178323号公報、特開2019-199492号公報に記載の樹脂などが挙げられる。
【0051】
また、本発明における樹脂は、さらに上述したジアリルフタレート樹脂、および、ロジン変性樹脂以外の樹脂(「その他の樹脂」ともいう)を含有しても良い。その他の樹脂として具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アルキッド樹脂、石油樹脂、尿素樹脂、ブタジエンーアクリルニトリル共重合体のような合成ゴム等が挙げられる。
【0052】
本発明の組成物における樹脂の含有量は、組成物の全質量を基準として5~30質量%であることが好ましい。さらに好ましくは、組成物の全質量を基準として10~20質量%である。
【0053】
<光重合禁止剤>
本発明の組成物は、光重合禁止剤を2種以上含む。光重合禁止剤を2種以上含むことで、優れた保存安定性を得ることができる。これは、光重合禁止剤はその分子構造の違い等により、重合禁止効果を有効に発現する条件が異なっており、複数の光重合禁止剤を組み合わせることで、より広範囲の条件で保存安定性を発現できるためと考えられる。
【0054】
本発明における光重合禁止剤としては、保存安定性の観点から、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含むことが好ましい。
【0055】
ニトロソ系化合物としては、ニトロソベンゼン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、ピクリン酸、クペロン、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。
【0056】
フェノール系化合物としては、(アルキル)フェノール、p-メトキシフェノール、o-イソプロピルフェノール、カテコール、レゾルシン、t-ブチルカテコール、ピロガロール、ジブチルクレゾール、グアヤコール等が挙げられる。
【0057】
キノン系化合物としては、ハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン等が挙げられる。
【0058】
ピペリジン系化合物としては、フェノチアジン等が挙げられる。
【0059】
また、本発明における光重合禁止剤は、上述したニトロソ系化合物、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物以外の光重合禁止剤(「その他の光重合禁止剤」ともいう)を併用することも可能である。その他の光重合禁止剤の具体例としては、1,1-ピクリルヒドラジル、ジチオベンゾイルジスルフィド、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、等が挙げられる。
【0060】
本発明における光重合禁止剤は、特に、ニトロソ系化合物であるニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩と、キノン系化合物であるt-ブチルヒドロキノンとを含むことが好ましく、高速印刷性と保存安定性が特に優れた組成物を提供できる。
【0061】
本発明の組成物への光重合禁止剤の配合量の総量は、硬化性を阻害しない観点から、組成物の全質量を基準として、0.01~1質量%であることが好ましく、0.1~0.5質量%であることがより好ましい。本発明の組成物への光重合禁止剤の配合量の総量を上記範囲とすることで、塗膜耐性に優れ、高速印刷性(高い硬化性)を有し、保存安定性にも優れる組成物が得られる。
【0062】
[着色剤]
本発明における着色剤としては、顔料および染料のうち少なくとも一方を用いることができるが、耐光性の観点から、顔料を用いることが好ましい。
【0063】
本発明における顔料としては、特に制限はなく、公知の顔料を用いることができる。顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれも用いることができる。
【0064】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラック類、酸化鉄、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0065】
有機顔料としては、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系等の溶性アゾ顔料; β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料;銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(例えば、塩素化または臭素化)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系など)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系等の多環式顔料および複素環式顔料などが挙げられる。
【0066】
更に詳しくは、C.I.カラーインデックスで示すと、黒顔料としては、C.I.Pigment Black 1、6、7、9、10、11、28、26、31などが挙げられる。
【0067】
白顔料としては、C.I.Pigment White 5、6、7、12、28などが挙げられる。
【0068】
黄顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、18、24、73、74、75、83、93、95、97、98、100、108、109、110、114、120、128、129、138、139、174、150、151、154、155、167、180、185、213などが挙げられる。
【0069】
青またはシアン顔料としては、C.I.Pigment Blue 1、2、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62などが挙げられる。
【0070】
赤または紅顔料としては、C.I.Pigment RED 1、3、5、19、21、22、31、38、42、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、50、52、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、90、104、108、112、114、122、144、146、148、149、150、166、168、169、170、172、173、176、177、178、184、185、187、193、202、209、214、242、254、255、264、266、269、C.I.Pigment Violet 19などが挙げられる。
【0071】
緑顔料としては、C.I.Pigment Green 1、2、3、4、7、8、10、15、17、26、36、45、50などが挙げられる。
【0072】
紫顔料としては、C.I.Pigment Violet 1、2、3、4、5:1、12、13、15、16、17、19、23、25、29、31、32、36、37、39、42などが挙げられる。
オレンジ顔料としては、C.I.Pigment Orange 13、16、20、34、36、38、39、43、51、61、63、64、74などが挙げられる。
【0073】
本発明において、上記顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0074】
本発明における顔料は、目的の濃度が再現可能であれば任意の含有量で使用することが可能であり、組成物の全質量を基準として5~30質量%であることが好ましく、より好ましくは10~25質量%である。
【0075】
本発明の組成物は、耐摩擦剤、ブロッキング防止剤、スベリ剤等の各種添加剤を、目的に応じて、さらに含んでもよい。各種添加剤は、常法によって組成物に添加することができる。本発明の組成物に対して各種添加剤を添加する場合、他の材料の効果を阻害しない範囲で配合量を調整することが好ましい。各種添加剤の配合量は、組成物の全質量を基準として15質量%以下であることが好ましい。
【0076】
本明細書において、活性エネルギー線とは、代表的に、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線のような電離放射線、マイクロ波、高周波等が挙げられるが、ラジカル性活性種を発生させ得るならば、いかなるエネルギー種でもよく、可視光線、赤外線、およびレーザー光線でもよい。
紫外線を発生するものとしては、例えば、LED、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、ヘリウム・カドミウムレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、およびアルゴンレーザーなどが挙げられる。
【0077】
本発明の組成物は、各種基材や、フォーム用印刷物、各種書籍用印刷物、カルトン紙等の各種包装用印刷物、各種プラスチック印刷物、シール/ラベル用印刷物、美術印刷物、金属印刷物(美術印刷物、飲料缶印刷物、缶詰等の食品印刷物)などの印刷物に適用される。
【0078】
<印刷物>
本発明における印刷物は、本発明の組成物を、基材上に印刷することによって得られる。基材としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、アート紙、コート紙、キャスト紙などの塗工紙や上質紙、中質紙、新聞用紙などの非塗工紙、ユポ紙などの合成紙、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)のようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0079】
本発明の組成物を、基材上に印刷する方法としては、オフセット印刷( 湿し水を使用する通常の平版及び湿し水を使用しない水無し平版)、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
【実施例
【0080】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、本明細書に記載の「部」は質量部を表し、「%」は質量%を示す。
【0081】
以下の実施例で実施した各種測定の詳細は以下のとおりである。
【0082】
実施例1~32、比較例1~6
[活性エネルギー線硬化型組成物1の製造]
顔料として、LionolBlueFG7330を20.0部、ネオライト5.3部、顔料分散剤として、アジスパーPB821を0.5部、(メタ)アクリレート化合物として、MIRAMERM600を23.0部、エベクリル1142を20.0部、MIRAMER M3130を7.0部、樹脂として、DAP-Aを15.0部、光重合開始剤として、Omnirad379EGを3.0部、KAYACURE DETX-Sを3.0部、光重合禁止剤として、Q-1301を0.1部、TBHQを0.1部、添加剤としてワックス3.0部を加え、ミキサーを用いて攪拌混合し、3本ロールにて最大粒径が15μm以下になるように分散し活性エネルギー線硬化型組成物1を作成した。
【0083】
[活性エネルギー線硬化型組成物2~38の製造]
表1に記載した原料と量を変更した以外は、活性エネルギー線硬化型組成物1と同様の方法で活性エネルギー線硬化型組成物2~38を得た。なお、表中の数値は特に断りがない限り「質量部」を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表1】
【0086】
【表1】
【0087】
【表1】
【0088】
【表1】
【0089】
上記活性エネルギー線硬化型組成物1の製造方法、および、表1中の略語は、以下の通りである。
[樹脂]
・DAP-A:株式会社大阪ソーダ製、ジアリルフタレート樹脂
・ロジン変性樹脂:国際公開第2017/164246号の段落番号0076に記載の樹脂4を使用した。
[(メタ)アクリレート化合物]
・MIRAMER M600:東洋ケミカルズ株式会社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・ネオマーDA600:三洋化成工業株式会社、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
・エベクリル1142:ダイセル・オルクネクス株式会社製、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
・MIRAMER M3130:東洋ケミカルズ株式会社製、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート
[顔料]
・LIONOL BLUE FG-7330:トーヨーカラー株式会社製、C.I.Pigment Blue15:3
・ネオライト:竹原化学工業株式会社製 炭酸カルシウム
[顔料分散剤]
・アジスパーPB821:味の素ファインテクノ株式会社製、塩基性官能基含有の櫛形分散剤
[光重合開始剤]
・Omnirad379EG:IGM RESINS社製、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル-1-ブタノン
・OmniradDETX:2,4-ジエチルチオキサントン
・OmniradEMK:4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
・OmniradOMBB:o-ベンゾイル安息香酸メチル
・TR-NPI-20400:1-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)-2-メチル-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン
・OmniradTPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド
[光重合禁止剤]
・Q-1301:富士フィルム和光純薬株式会社製、ニトロソ系化合物、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
・TBHQ:精工化学株式会社製、フェノール系化合物、2-t-ブチルハイドロキノン
・MQ:精工化学株式会社製、フェノール系化合物、4-メトキシフェノール
・ノンフレックスアルバ:精工化学株式会社製、フェノール系化合物、2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン-1,4-ジオール
・キノパワーNQI:川崎化成工業株式会社製、キノン系化合物、1,4-ナフトキノン
・キノパワー20:川崎化成工業株式会社製、キノン系化合物、2-ヒドロキシル-1,4-ナフトキノン
・フェノチアジン:精工化学株式会社製、ピペリジン系化合物、フェノチアジン
・ポリストップ7300:伯東株式会社製、ピペリジン系化合物、ピペリジン誘導体
・HO-TEMPO:東京化成工業株式会社製、ピペリジン系化合物、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル
[添加剤]
・WAX:三洋化成工業製 サンワックス161P ポリエチレン樹脂




【0090】
[活性エネルギー線硬化型インキ組成物の評価]
得られた活性エネルギー線硬化型組成物1~38について、下記の方法に従い、評価した。各評価の結果を表2に示す。
【0091】
(硬化性(高速印刷性))
得られた活性エネルギー線硬化型インキ組成物について、RIテスター(テスター産業株式会社製)4分割ロール、インキ量0.75mlの条件にて展色物(基材:非吸収原反)を作成した。その後アイグラフィックス社製紫外線硬化装置(160W/cm メタハライドランプ)を用いてコンベア速度100m/minにて紫外線を照射し、印刷面を完全に乾燥させた。綿布を用い印刷面を擦り評価した。擦れが少ない程、硬化性が良好であると判断ができる。評価基準は下記に示した通りであり、◎、〇、△が実用上好ましい。
◎:印刷面への擦れがない
〇:印刷面表層まで擦れる
△:印刷面の中間部まで擦れる
×:印刷面底部まで擦れる
【0092】
(耐溶剤性)
耐溶剤性は、MEK(メチルエチルケトン)を浸した綿棒で印刷面を30回擦った後、印刷面の状態を目視にて観察した。評価基準は下記に示した通りであり、◎、〇、△が実用上好ましい。
◎:印刷面の変化なし。
〇:印刷面の一部(面積の10%未満)に剥離が見られる。
△:印刷面の一部(面積の10~50%未満)に剥離が見られる。
×:印刷面の一部(面積の50%以上)、又は全部に剥離が見られる。
【0093】
(保存安定性)
金属製の容器に活性エネルギー線硬化型インキ組成物を充填し、3000rpmで10分間遠心脱泡した後、容器を密閉して60℃の加熱条件で保存した。6ヶ月後にインキを取り出し、Thermo Scientific製HAAKE Rheo Stress 6000で粘度を測定し、試験開始前の粘度に対する比率を算出した。評価基準は下記に示した通りであり、◎、〇、△が実用上好ましい。
◎:試験前の粘度と比較した増粘率が120%未満
〇:試験前の粘度と比較した増粘率が120%以上140%未満
△:試験前の粘度と比較した増粘率が140%以上160%未満
×:試験前の粘度と比較した増粘率が160%以上
【0094】
【表2】
【0095】
表2に示すように、実施例1~32は、保存安定性、硬化性(高速印刷性)、耐溶剤性のいずれも実用上問題なく良好であった。
一方、光重合禁止剤を含有しないか、1種類のみ含有する比較例1、比較例2、比較例3は、保存安定性が不足していた。
また、組成物中の(メタ)アクリロイル基の含有量が0.40mol/100gより少ない比較例4、および、樹脂を含有しない比較例5は、硬化性および溶剤耐性が不足しており、組成物中の(メタ)アクリロイル基の含有量が0.53mol/100gより多い比較例6は保存安定性が不足していた。
【要約】
【課題】本発明の目的は、高速印刷性を有すると共に、溶剤耐性といった塗膜耐性に優れ、更に、高い保存安定性をも有する、活性エネルギー線硬化型インキ組成物およびそれを用いた印刷物を提供することである。
【解決手段】上記課題は、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、樹脂と、光重合開始剤と、光重合禁止剤2種以上とを含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molである、活性エネルギー線硬化型インキ組成物、特に光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含む組成物により解決できる。
【選択図】なし