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特許7264227ガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法
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  • 特許-ガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】ガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
G01N1/00 101T
G01N1/00 F
G01N1/00 101R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021501538
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2019035479
(87)【国際公開番号】W WO2020174729
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】P 2019031369
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 紅良
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-274644(JP,A)
【文献】特表2017-532472(JP,A)
【文献】米国特許第8191402(US,B2)
【文献】米国特許第8276470(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に試料ガスを封入した袋状体を供給ポートに接続したうえで該供給ポートから供給路を介して検査部に試料ガスを供給するためのガス供給部を洗浄するガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法であって、
前記試料ガスとは異なる清浄なガスを内部に封入した前記袋状体を前記供給ポートに接続した後、前記供給路を一定時間減圧する、ガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法。
【請求項2】
請求項に記載のガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法において、
前記清浄なガスは窒素ガスであるガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなガス検査装置の一つの形態として、各種物質のにおいの評価を行うためのにおい識別装置がある。このようなにおい識別装置においては、各種の試料ガスをガス供給部から検査部に供給し、検査部において応答特性が互いに異なる複数のにおいセンサにより検出信号を生成し、この検出信号を解析することによりにおいの評価を行う構成を有する(特許文献1参照)。
【0003】
このようなにおい識別装置においては、検査部に試料ガスを供給するための供給部として、オートガスサンプラとも呼称されるガス供給部が使用される。このガス供給部は、内部に試料ガスを封入したサンプルバッグとも呼称される袋状体を接続するための供給ポートを複数備え、この供給ポートから供給路を介して検査部に試料ガスを供給する構成を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/004861号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなにおい識別装置において、同一条件でにおいの評価を行った場合においても、その測定結果にバラツキが生ずることがある。このバラツキは、先に検査を行った試料ガスがガス供給部における供給ポート等にわずかに残存することによるガス供給部の洗浄不足に起因することがこの発明の発明者によって見出された。
【0006】
このような現象を防止するためには、ガス供給部を十分に洗浄する必要がある。ガス供給部の洗浄を行うためには、ガス供給部から検査部にガスを供給するための供給口を排気ポンプ等に接続し、供給ポートから吸引した気体を、供給路を介して外部に排出する方法を採用することが考えられる。しかしながら、このような洗浄方法を採用した場合においては、洗浄に長い時間を要することになる。ガス供給部の汚染状況によっては、この洗浄に数日から数週間を要することもある。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ガス供給部を短時間に清浄状態とすることが可能なガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、供給ポートから供給路を介して検査部に試料ガスを供給するためのガス供給部を洗浄するガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法であって、前記供給ポートを閉止するとともに、前記供給路を減圧する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、供給ポートを閉止した状態で供給路を減圧することにより、ガス供給部を短時間に清浄状態とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施形態に係るガス検査装置としてのにおい識別装置の概略構成図である。
図2】ガス供給部8の斜視図である。
図3】ガス供給部8におけるガスの供給路を示す流路図である。
図4】ガス供給部8の洗浄工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。最初に、この発明の実施形態に係るガス検査装置の構成について説明する。図1は、この発明の実施形態に係るガス検査装置としてのにおい識別装置の概略構成図である。
【0012】
このにおい識別装置は、各種の物質のにおい(臭気、香気など)の評価を行うためのものであり、試料ガスを供給するためのガス供給部8と、ガス供給部8から供給された試料ガスを希釈するための希釈部2と、希釈部2で希釈されたガス中の水分を除去し、および、物質を選択的に濃縮するための濃縮部3と、複数のにおいセンサ41を備えたセンサセル4と、センサセル4で検出された検出信号に基づいて解析を行う信号処理部5と、パーソナルコンピュータ等から構成され各種のデータを入力するとともに信号処理部5による解析結果を表示する操作部6と、装置全体を制御する制御部1とを備える。なお、上述した希釈部2、濃縮部3、センサセル4および信号処理部5は、この発明に係る検査部を構成する。
【0013】
このにおい識別装置におけるガスの供給路中には、複数の電磁切替バルブ11、12、13、14が配設されている。電磁切替バルブ11は排気ポンプ15と接続されており、電磁切替バルブ14は排気ポンプ16と接続されている。また、上述したセンサセル4は排気ポンプ17と接続されている。さらに、電磁切替バルブ12および電磁切替バルブ14は、窒素ガス供給部18と接続されている。
【0014】
においの識別を行うときには、電磁切替バルブ11、12が切り替えられ、ガス供給部8と希釈部2とが接続される。そして、希釈部2におけるシリンジの作用により、試料ガスがガス供給部8から希釈部2に送られる。次に、電磁切替バルブ11、12が切り替えられ、窒素ガス供給部18と希釈部2とが接続される。そして、希釈部2におけるシリンジの作用により、窒素ガスが窒素ガス供給部18から希釈部2に送られることにより、試料ガスが希釈される。なお、試料ガスを希釈する必要がないときには、窒素ガスが供給されることはない。
【0015】
次に、電磁切替バルブ12、13が切り替えられ、希釈部2と濃縮部3とが接続される。そして、電磁切替バルブ14が切り替えられ、排気ポンプ16の作用により試料ガスは濃縮部3における捕集管を通過し、試料ガスの成分が濃縮部3における捕集管の吸着剤に吸着される。しかる後、電磁切替バルブ13、14が切り替えられ、窒素ガス供給部18とガス供給部8と濃縮部3とが接続されるとともに、濃縮部3とセンサセル4とが接続される。この状態で濃縮部3における捕集管の温度を急速に上昇させるとともに、窒素ガス供給部18から供給された窒素ガスをセンサセル4に向けて流出させる。これにより、濃縮部3における捕集管の吸着剤に吸着されていたにおい成分が吸着剤から離脱し、窒素ガス流に乗ってセンサセル4へと導入される。濃縮部3においては、供給される試料ガスおよび窒素ガスの流量により濃縮率を調整することができる。なお、濃縮が不要であるときには、上述した動作は実行されない。
【0016】
そして、排気ポンプ17の作用により濃縮後のガスがセンサセル4に導入され、ガス中の成分が複数のにおいセンサ41に接触し、各においセンサ41からそれぞれ異なる検出信号が出力される。この検出信号は信号処理部5に送信され、信号処理部5により解析される。解析後のデータは信号処理部5から操作部6に送信され、測定データが操作部6における表示装置に表示される。
【0017】
次に、上述したにおい識別装置におけるガス供給部8の構成について説明する。図2は、ガス供給部8の斜視図である。また、図3は、ガス供給部8におけるガスの供給路を示す流路図である。
【0018】
このガス供給部8は、オートガスサンプラとも呼称されるものであり、内部に試料ガスを封入したサンプルバッグとも呼称される袋状体10を接続するための12個の供給ポートP01~P12を備える。各供給ポートP01~P12は、各々、フィルターF01~F12および電磁開閉バルブV01~V12を介して、管路81と接続されている。各電磁開閉バルブV01~V12は、図1に示す制御部1からの制御信号を受信するバルブコントローラ82と接続されている。各電磁開閉バルブV01~V12は、バルブコントローラ82の指令により開閉動作を実行する。なお、この明細書における「袋状体」とは、内部に気体を封入可能な袋状の形状を有するものであり、例えば、悪臭防止法で定められる「におい袋」に相当するものである。
【0019】
におい識別装置においてにおいの識別を行うときには、袋状体10には、試料ガスが封入される。そして、制御部1から信号を受けたバルブコントローラ82の制御により電磁開閉バルブV01~V12が順次開放され、各袋状体10内の試料ガスが希釈部2、濃縮部3、センサセル4および信号処理部5からなる検査部に送られる。
【0020】
所定の検査が実行された後には、ガス供給部8は試料ガスにより汚染される。特に、各供給ポートP01~P12におけるフッ素樹脂素材のコネクタ等は、試料ガスに含まれる成分が付着する。このような状態でにおいの識別を行った場合には、識別結果にバラツキを生ずる。このため、定期的に、ガス供給部8の洗浄の実行が必要となる。
【0021】
図4は、ガス供給部8の洗浄工程を示すフローチャートである。
【0022】
ガス供給部8の洗浄を実行するときには、最初に、各供給ポートP01~P12に対して、内部に窒素ガスを封入した袋状体10を接続する(ステップS1)。この袋状体10は、においの識別時において試料ガスが封入されるものであるが、ガス供給部8の洗浄時においては、窒素ガスが封入される。窒素ガスの封入時においては、図1に示す窒素ガス供給部18における一つの供給口19と袋状体10とを接続することにより、袋状体10内に、例えば2リットル程度の清浄な窒素ガスが封入される。
【0023】
そして、電磁切替バルブ11を切り替えることにより、管路81と排気ポンプ15とを接続し、排気ポンプ15による排気を開始する。なお、電磁切替バルブ11を使用せず、管路81と排気ポンプ15とを直接接続するようにしてもよい。
【0024】
以上の準備が整えば、供給ポートP01~P12のうちの一つの供給ポート(例えば、供給ポートP01)を選択する(ステップS2)。そして、対応する電磁開閉バルブV01を開放する(ステップS3)。これにより、袋状体10に封入された窒素ガスが排気ポンプ15の作用により排気される。そして、設定時間が経過するのを待つ(ステップS4)。この設定時間は、例えば、5分程度の時間である。
【0025】
この設定時間の間に、袋状体10内の窒素ガスが排気される。この排気により、供給ポートP01から、フィルターF01を介して管路81にいたるガス供給路が窒素ガスにより洗浄される。そして、排気を継続することにより、袋状体10に封入されていた窒素ガスが全て排気された後には、供給ポートP01から管路81にいたるガス供給路が減圧される。これにより、供給ポートP01における袋状体10との接続部等のガス供給路の内部に付着していたにおいの成分が揮発し、外部に排出される。これにより、ガス供給路が清浄な状態となる。
【0026】
設定時間が経過すれば(ステップS4)、電磁開閉バルブV01を閉鎖する(ステップS5)。そして、次の供給ポート(例えば、供給ポートP02)を選択する(ステップS2)。この動作を、全ての供給ポートP01~P12の洗浄が完了するまで繰り返す(ステップS6)。
【0027】
なお、上述した実施形態においては、袋状体10に対して窒素ガスを封入しているが、窒素ガス以外の清浄なガスを封入してもよい。このとき、におい識別装置は一般的に窒素ガス供給部18とともに使用されることから、窒素ガスを利用することが最も簡便であり、また、安価である。
【0028】
また、上述した実施形態においては、各供給ポートP01~P12に対して、内部に窒素ガスを封入した袋状体10を接続したのち、ガス供給路を排気ポンプ15により減圧しているが、袋状体10を使用せず、各供給ポートP01~P12を閉止部材等により閉止した後にガス供給路を減圧するようにしてもよい。但し、袋状体10に封入された窒素ガスを排気することにより、この窒素ガスを利用してガス供給路を洗浄した後に、ガス供給路を減圧することにより、ガス供給部8をより効果的に洗浄することが可能となる。
【0029】
また、上述した実施形態においては、専用の排気ポンプ15を利用してガス供給路を減圧しているが、排気ポンプ16または排気ポンプ17を利用してガス供給路を減圧してもよい。
【0030】
さらに、上述した実施形態においては、各種物質のにおいの評価を行うためのにおい識別装置にこの発明を適用しているが、におい識別装置以外のガス検査装置にこの発明を適用してもよい。
【0031】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0032】
この発明の第1の態様に係るガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法は、供給ポートから供給路を介して検査部に試料ガスを供給するためのガス供給部を洗浄するガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法であって、前記供給ポートを閉止するとともに、前記供給路を減圧する。
【0033】
この発明の第1の態様に係るガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法によれば、ガス供給部を短時間に清浄状態とすることが可能となる。
【0034】
この発明の第1の態様の変形例に係るガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法は、前記供給ポートに対して内部に清浄なガスを封入した袋状体を接続した後、前記供給路を一定時間減圧する。
【0035】
このような態様によれば、供給路を清浄なガスにより洗浄した後に減圧することにより、ガス供給部をさらに短時間に清浄状態とすることが可能となる。
【0036】
この発明の第1の態様の他の変形例に係るガス検査装置におけるガス供給部の洗浄方法は、前記袋状体の内部に封入されるガスは窒素ガスである。
【0037】
このような態様によれば、ガス検査装置に一般的に利用される窒素ガスを利用することにより、最も簡便に袋状体に清浄なガスを封入することが可能となる。
【0038】
なお、上述した記載はこの発明の実施形態の説明のためのものであり、この発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0039】
1 制御部
2 希釈部
3 濃縮部
4 センサセル
5 信号処理部
6 操作部
10 袋状体
15 排気ポンプ
82 バルブコントローラ
P01~P12 供給ポート
V01~V12 電磁開閉バルブ
図1
図2
図3
図4