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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/241 20170101AFI20230418BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20230418BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20230418BHJP
   B22F 12/13 20210101ALI20230418BHJP
   B22F 12/37 20210101ALI20230418BHJP
   B22F 12/40 20210101ALI20230418BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20230418BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20230418BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20230418BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20230418BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230418BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230418BHJP
【FI】
B29C64/241
B22F10/28
B22F10/85
B22F12/13
B22F12/37
B22F12/40
B29C64/153
B29C64/245
B29C64/264
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021512128
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2020014648
(87)【国際公開番号】W WO2020203992
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2019070690
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】清水 六
(72)【発明者】
【氏名】中山 雄一朗
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-534543(JP,A)
【文献】特表2018-507957(JP,A)
【文献】特開2016-074205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B28B 1/30
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルの主面に供給される粉末材料に対してエネルギビームを照射することにより、三次元の造形物を造形する三次元造形装置であって、
回転軸線を中心として前記テーブルを周方向に回転させる回転駆動部と、
前記回転軸線と交差する前記造形物の断面に対応する、前記テーブルの主面における前記エネルギビームの照射領域を、前記周方向に分割した複数の分割領域を設定する領域設定部と、
前記テーブルの主面に対面し、前記分割領域ごとに前記粉末材料に対して前記エネルギビームを照射する照射部と、
前記テーブルの回転速度を調整する回転速度調整部と、
を備え、
前記複数の分割領域のうちの第1分割領域の単位中心角当たりの面積は、前記複数の分割領域のうちの第2分割領域の単位中心角当たりの面積よりも小さく、
前記回転速度調整部は、前記第1分割領域への前記エネルギビームの照射期間における前記テーブルの回転速度が、前記第2分割領域への前記エネルギビームの照射期間における前記テーブルの回転速度よりも速くなるように調整し、
前記領域設定部は、前記分割領域の最大中心角を、前記テーブルの主面において前記照射部が前記エネルギビームを照射可能な範囲を示す造形エリアに収まる前記分割領域の最大の中心角とした場合に、前記第1分割領域及び前記第2分割領域のそれぞれの中心角を前記最大中心角の半分よりも小さくなるように設定する、三次元造形装置。
【請求項2】
前記第1分割領域の第1中心角は、前記第2分割領域の第2中心角とは異なる値である、請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項3】
テーブルの主面に供給される粉末材料に対してエネルギビームを照射することにより、三次元の造形物を造形する三次元造形装置であって、
回転軸線を中心として前記テーブルを周方向に回転させる回転駆動部と、
前記回転軸線と交差する前記造形物の断面に対応する、前記テーブルの主面における前記エネルギビームの照射領域を、前記周方向に分割した複数の分割領域を設定する領域設定部と、
前記テーブルの主面に対面し、前記分割領域ごとに前記粉末材料に対して前記エネルギビームを照射する照射部と、
前記テーブルの回転速度を調整する回転速度調整部と、
を備え、
前記複数の分割領域のうちの第1分割領域の単位中心角当たりの面積は、前記複数の分割領域のうちの第2分割領域の単位中心角当たりの面積よりも小さく、
前記回転速度調整部は、前記第1分割領域への前記エネルギビームの照射期間における前記テーブルの回転速度が、前記第2分割領域への前記エネルギビームの照射期間における前記テーブルの回転速度よりも速くなるように調整し、
前記領域設定部は、前記テーブルの主面において前記回転軸線と交差する基準線と、前記周方向において前記第2分割領域の中心角を規定する分割線と、の差を示す回転角である位相差の調整を行う位相差調整部を含み、
前記位相差調整部は、前記調整後の前記第2分割領域の前記位相差を、前記調整前の前記第2分割領域の前記位相差とは異なる値に設定し、
前記位相差調整部による前記調整前後において、前記第2分割領域の中心角は同じ値である、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2は、造形物を造形する三次元造形装置に関する技術を開示する。特許文献1に開示された造形物を造形する技術では、回転する形成コンテナに塗布された材料にエネルギビームを照射する。特許文献2に開示された造形物を造形する技術では、回転するテーブルの材料にプリントヘッド内のインクジェットから液体を吐出する。当該液体には、硬化させるためのプリント処理が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2005-534543号公報
【文献】特開2016-74205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1に記載の三次元造形装置は、形成コンテナであるテーブルを回転させながら、テーブルの回転方向に沿った複数の領域にエネルギビームを順次照射する。その結果、造形物の各層は、積層される。テーブルの回転速度は、テーブル上の複数の領域へのエネルギビームの照射に要する時間に基づいて設定される。テーブルの回転速度は、例えば一定値に設定される。しかし、造形物の層の断面の面積が領域ごとに相違する場合がある。その結果、面積の相違に応じて、エネルギビームの照射に要する時間も領域ごとに変化する。この場合、テーブルの回転速度が当該照射に要する時間の変化に対応しない。従って、造形時間の損失が生じる。
【0005】
本開示は、造形時間を短縮できる三次元造形装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の三次元造形装置は、テーブルの主面に供給される粉末材料に対してエネルギビームを照射することにより、三次元の造形物を造形する。三次元造形装置は、回転軸線を中心としてテーブルを周方向に回転させる回転駆動部と、回転軸線と交差する造形物の断面に対応する、テーブルの主面におけるエネルギビームの照射領域を、周方向に分割した複数の分割領域を設定する領域設定部と、テーブルの主面に対面し、分割領域ごとに粉末材料に対してエネルギビームを照射する照射部と、テーブルの回転速度を調整する回転速度調整部と、を備える。複数の分割領域のうちの第1分割領域の単位中心角当たりの面積は、複数の分割領域のうちの第2分割領域の単位中心角当たりの面積よりも小さい。回転速度調整部は、第1分割領域へのエネルギビームの照射期間におけるテーブルの回転速度が、第2分割領域へのエネルギビームの照射期間におけるテーブルの回転速度よりも速くなるように調整する。
【0007】
三次元造形装置では、テーブルが回転軸線を中心として周方向に回転しながら、テーブルの主面上の粉末材料に対してエネルギビームが分割領域ごとに順次照射される。ここで、第1分割領域の単位中心角当たりの面積は、第2分割領域の単位中心角当たりの面積よりも小さい。このため、第1分割領域の単位中心角当たりの面積へのエネルギビームの照射に要する時間は、第2分割領域の単位中心角当たりの面積へのエネルギビームの照射に要する時間よりも短い。その結果、仮に、第2分割領域へのエネルギビームに要する時間を基準としてテーブルの回転速度を一定値に設定すると、第1分割領域へのエネルギビームの照射が終了してから、次の分割領域へのエネルギビームの照射を開始するまでに待ち時間が発生してしまう。これに対し、上記の三次元造形装置では、第1分割領域へのエネルギビームの照射期間におけるテーブルの回転速度が、第2分割領域へのエネルギビームの照射期間におけるテーブルの回転速度よりも速くなるように調整されている。このように、第1分割領域にエネルギビームを照射するときのテーブルの回転速度を速くすることにより、上記の待ち時間を低減できる。これにより、造形物の造形時間を短縮できる。
【0008】
いくつかの態様において、第1分割領域の第1中心角は、第2分割領域の第2中心角とは異なる値であってもよい。例えば、第1分割領域の第1中心角を大きくし、第2分割領域の第2中心角を小さくする。その結果、照射領域における第1分割領域の割合を大きくし、照射領域における第2分割領域の割合を小さくすることができる。このように、テーブルの回転速度が速い第1分割領域の割合を大きくすることにより、テーブルが一周するのに要する時間を短くすることができる。従って、上述した構成によれば、造形物の造形時間を更に短縮できる。
【0009】
いくつかの態様において、領域設定部は、テーブルの主面において回転軸線と交差する基準線と、周方向において第2分割領域の中心角を規定する分割線と、の差を示す回転角である位相差の調整を行う位相差調整部を含んでもよい。位相差調整部は、調整後の第2分割領域の位相差を、調整前の第2分割領域の位相差とは異なる値に設定し、位相差調整部による調整前後において、第2分割領域の中心角は同じ値であってもよい。このように、第2分割領域の位相差を調整することにより、第2分割領域の単位中心角当たりの面積を小さくすることができる。これに応じて、第2分割領域の単位中心角当たりの面積へのエネルギビームに要する時間を短くすることができる。その結果、第2分割領域へのエネルギビームの照射期間におけるテーブルの回転速度を速くすることができるので、造形物の造形時間を更に短縮できる。
【発明の効果】
【0010】
本開示のいくつかの態様によれば、造形時間を短縮できる三次元造形装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る三次元造形装置を示す断面図である。
図2図2は、図1の三次元造形装置が備える処理部を示す構成図である。
図3図3は、図1の三次元造形装置が備える制御部の構成を示すブロック図である。
図4図4(a)、図4(b)及び図4(c)は、図3の制御部における処理手順を説明するための図である。
図5図5は、図3の制御部により設定される分割領域の中心角の制限について説明するための図である。
図6図6は、図3の制御部により設定される分割領域の面積について説明するための図である。
図7図7(a)は、図6の分割領域の面積を説明するためのグラフである。図7(b)は、図6の分割領域の面積とテーブルの回転速度との関係を説明するためのグラフである。
図8図8は、第1変形例に係る三次元造形装置が備える制御部の構成を示すブロック図である。
図9図9は、図8の制御部により設定される分割領域の面積について説明するための図である。
図10図10(a)は、図9の分割領域の面積を説明するためのグラフである。図10(b)は、図9の分割領域の面積とテーブルの回転速度との関係を説明するためのグラフである。
図11図11は、第2変形例に係る三次元造形装置が備える制御部の構成を示すブロック図である。
図12図12は、図11の制御部により設定される分割領域の面積について説明するための図である。
図13図13(a)は、図12の分割領域の面積を説明するためのグラフである。図13(b)は、図12の分割領域の面積とテーブルの回転速度との関係を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の三次元造形装置1について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付す。そして、重複する説明は省略する。以下の説明では、「上」及び「下」との語は、後述するテーブル12の回転軸線C(図1参照)が鉛直方向に沿った状態を基準として用いる。「下」との語は、回転軸線Cが鉛直方向に沿った状態において、鉛直方向における地面側を示す。「上」との語は、回転軸線Cが鉛直方向に沿った状態において、鉛直方向における地面とは反対側を示す。「周方向」とは、テーブル12の回転軸線Cを中心とする環に沿う方向を示す。「周方向」とは、テーブル12の回転方向R(図2参照)を含む方向を示す。
【0013】
図1に示される三次元造形装置1は、いわゆる3Dプリンタである。三次元造形装置1は、粉末材料Aから三次元の造形物Mを製造する。例えば、三次元造形装置1は、粉末材料Aにエネルギビームを照射することによって、粉末材料Aを溶融又は焼結させる。その結果、三次元の造形物Mが造形される。三次元造形装置1は、パウダーベッド方式を採用する。パウダーベッド方式では、造形のために、敷き均した粉末材料Aに対し電子ビームを照射する。
【0014】
粉末材料Aは、金属の粉末である。粉末材料Aは、例えばチタン系金属粉末、インコネル粉末、アルミニウム粉末等である。粉末材料Aは、金属粉末に限定されない。粉末材料Aは、例えば樹脂粉末でもよい。粉末材料Aは、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)等の炭素繊維を含む粉末でもよい。粉末材料Aは、樹脂を含む粉末でもよい。粉末材料Aは、導電性を有するその他の粉末でもよい。なお、本開示における粉末材料Aは、導電性を有する粉末には限定されない。例えばエネルギビームとしてレーザを用いる場合には、粉末材料Aは導電性を有しなくてもよい。
【0015】
三次元造形装置1は、ハウジング10と、駆動部20と、処理部30と、制御部40とを備える。ハウジング10は、複数のコラム11によって支持されている。ハウジング10は、造形空間Sを形成するチャンバである。造形空間Sは、粉末材料Aを収容する。造形空間Sは、処理部30による粉末材料Aの処理を行うための空間である。造形空間Sは、減圧が可能であると共に、気密を保つことが可能である。造形空間Sには、テーブル12と、テーブル12を収容する造形タンク13とが配置されている。テーブル12は、造形処理が行われる処理台である。テーブル12の形状は、例えば円板である。テーブル12の主面12a上には、造形物Mの原料である粉末材料Aが配置される。テーブル12の主面12aは、造形面又は上面であるともいえる。テーブル12は、ハウジング10に対して回転可能である。テーブル12の回転軸線Cは、ハウジング10の中心軸線と重なる。回転軸線Cは、上下方向に沿っていてもよい。換言すると、回転軸線Cは、鉛直方向に沿っていてもよい。
【0016】
駆動部20は、テーブル12に接続されている。駆動部20は、造形に要する種々の動作を実現する。駆動部20は、例えば、回転駆動部21と直線駆動部22とを有している。回転駆動部21は、回転軸線Cを中心として周方向にテーブル12を回転させる。例えば、回転駆動部21の上端には、テーブル12が連結されている。回転駆動部21の下端には、例えばモータ等の駆動源が取り付けられている。回転駆動部21は、テーブル12を造形タンク13に対して相対的に昇降させる。この昇降は、回転駆動部21の回転軸線Cに沿っている。従って、テーブル12は、駆動部20によって、回転軸線C周りの回転と、回転軸線Cに沿った直線移動と、を行う。なお、駆動部20は、テーブル12を回転及び昇降させることができる機構であればよく、上述した機構に限定されない。
【0017】
処理部30は、粉末材料Aを処理して造形物Mを得る。粉末材料Aの処理は、例えば、粉末材料Aの供給処理、粉末材料Aの予熱処理(予備加熱処理)、及び粉末材料Aの造形処理を含む。処理部30は、テーブル12の上方に配置されている。処理部30は、テーブル12の主面12aに対面している。図2に示されるように、処理部30は、例えば、粉末材料Aの供給処理を行うフィーダ31と、粉末材料Aの予熱処理を行うヒータ32と、粉末材料Aの造形処理を行うビーム源33とを備えている。フィーダ31、ヒータ32及びビーム源33は、テーブル12の回転方向Rに沿って配置されている。
【0018】
フィーダ31は、テーブル12の主面12a上に粉末材料Aを供給する供給部である。例えば、フィーダ31は、図示しない原料タンクと均し部とを有する。原料タンクは、粉末材料Aを貯留する。原料タンクは、テーブル12の主面12a上に粉末材料Aを供給する。均し部は、テーブル12上の粉末材料Aの表面を均す。なお、フィーダ31は、均し部に代えて、ローラー部、棒状部材、及び刷毛部等を有してもよい。
【0019】
ヒータ32は、テーブル12の主面12a上に供給された粉末材料Aの予備加熱を行う加熱部である。ヒータ32は、電子ビームが照射される前の粉末材料Aに対して予備加熱を行う。例えば、ヒータ32は、テーブル12の上方に配置されている。ヒータ32は、放射熱によって粉末材料Aの温度を上昇させる。例えば、ヒータ32として、赤外線ヒータを用いてもよい。ヒータ32は、他の方式により加熱するものであってもよい。
【0020】
ビーム源33は、電子ビームを出射する。ビーム源33は、電子ビームを粉末材料Aに照射する照射部である。例えば、ビーム源33として、電子銃が用いられる。ビーム源33は、カソードとアノードとの間に生じる電位差に応じた電子ビームを発生する。ビーム源33は、電界の調整により電子ビームを収束させる。ビーム源33は、電子ビームを所望の位置に照射する。
【0021】
テーブル12の回転方向Rに沿ったフィーダ31、ヒータ32及びビーム源33の配置と、テーブル12を回転させる造形と、によれば、テーブル12の主面12a上への粉末材料Aの供給処理、粉末材料Aの予備加熱処理、及びビーム照射による造形処理を並行して行うことができる。つまり、同じタイミングにおいて、フィーダ31の位置における粉末材料Aの供給と、ヒータ32の位置における粉末材料Aの予備加熱と、ビーム源33の位置におけるビーム照射と、が行われる。その結果、造形物Mが造形される。このため、粉末材料Aの供給、粉末材料Aの予備加熱及びビーム照射を順次行う場合と比べて、造形物Mの造形時間を短縮できる。特に、大型の造形物Mを造形する場合に有効である。
【0022】
図1に示す制御部40は、三次元造形装置1の装置全体の制御を行う。制御部40は、例えば、プログラムを実行するCPUと、ROM及びRAM等の記憶部と、入出力部と、ドライバとを有する。制御部40の複数の機能は、CPUの制御の下で入出力部を動作させ、記憶部におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことによって実現される。制御部40の形態及び配置場所については特に限定されない。制御部40は、駆動部20及び処理部30と電気的に接続されている。制御部40は、テーブル12の回転制御及び昇降制御、フィーダ31の作動制御、ヒータ32の作動制御、並びにビーム源33の作動制御等を行う。
【0023】
図3に示されるように、制御部40は、駆動部20の回転駆動部21と電気的に接続されている。制御部40は、回転駆動部21に対し制御信号を出力することにより、回転駆動部21の動作を通じてテーブル12の回転制御を行う。例えば、制御部40は、回転駆動部21を作動させる。その結果、回転軸線Cを中心としてテーブル12は、回転方向Rに回転する。テーブル12の回転速度は、後述する回転速度調整部44によって調整される。
【0024】
制御部40は、駆動部20の直線駆動部22と電気的に接続されている。制御部40は、直線駆動部22に対し制御信号を出力する。その結果、直線駆動部22の動作を通じてテーブル12の昇降制御が行われる。例えば、制御部40は、直線駆動部22を作動させることにより、テーブル12を昇降させる。具体的には、制御部40は、造形の初期においてテーブル12を造形タンク13の上部の位置に配置する。そして、制御部40は、造形物Mの造形が進むに連れてテーブル12を降下させる。テーブル12の降下速度は、例えばテーブル12の回転速度に応じて決定してもよい。
【0025】
制御部40は、処理部30のフィーダ31と電気的に接続されている。制御部40は、フィーダ31に対し制御信号を出力する。その結果、粉末材料Aの供給制御が行われる。例えば、制御部40は、フィーダ31を作動させる。その結果、テーブル12の主面12a上に粉末材料Aが供給される。テーブル12上の粉末材料Aの表面層は、テーブル12の回転に伴って敷き均される。
【0026】
制御部40は、処理部30のヒータ32と電気的に接続されている。制御部40は、ヒータ32に対し制御信号を出力する。その結果、粉末材料Aの予熱制御が行われる。例えば、制御部40は、ヒータ32を作動させる。その結果、テーブル12の主面12a上の粉末材料Aが加熱されることにより、粉末材料Aの予備加熱が行われる。粉末材料Aへ与えられる熱量は、粉末材料Aの材質及び種類、並びにテーブル12の回転速度等に応じて設定してもよい。
【0027】
制御部40は、処理部30のビーム源33と電気的に接続されている。制御部40は、ビーム源33に対し制御信号を出力する。その結果、電子ビームの出射制御が行われる。例えば、制御部40は、ビーム源33を作動させる。その結果、電子ビームが発生するので、粉末材料Aの所定の位置に電子ビームが照射させられる。電子ビームを照射させる位置は造形物Mを造形すべき領域である。電子ビームは、予め設定される照射位置に照射される。照射位置は、後述する照射位置設定部43によって設定される。
【0028】
制御部40は、データ取得部41と、領域設定部42と、照射位置設定部43と、回転速度調整部44と、を含んでいる。データ取得部41は、図4(a)に示されるように、造形物Mの断面のスライスデータDを取得する。造形物Mの断面は、造形物Mにおいて回転軸線Cと交差する。本開示では、造形物Mの断面は、造形物Mにおいて回転軸線Cと直交する。つまり、造形物Mの断面は、水平断面である。データ取得部41は、造形物Mの三次元CAD(Computer-Aided Design)データを利用して、造形物MのスライスデータDを取得する。図4(a)では、造形物Mが円柱体である場合について図示しているが、造形物Mはその他の形状を有してもよい。データ取得部41は、造形物Mの上下の位置に応じて複数のスライスデータDを取得する。1層分のスライスデータDは、1層分の粉末材料Aに対応している。
【0029】
領域設定部42は、図4(b)に示されるように、テーブル12の主面12aにおいて電子ビームが照射される照射領域45を設定する。図4(b)では、1層分のスライスデータDに含まれる造形物Mの水平断面を回転軸線Cが延在する方向から示している。照射領域45は、テーブル12の主面12aにおいて電子ビームが照射され得る全体の領域である。照射領域45は、スライスデータDに含まれる造形物Mの水平断面に対応している。領域設定部42は、複数のスライスデータDに対して、照射領域45を設定する。図4(b)に示される例では、照射領域45は、回転軸線Cを中心とする円形状の領域として示されている。
【0030】
領域設定部42は、回転軸線Cを中心とする周方向において照射領域45を複数の分割領域50に分割する。図4(b)に示される例では、複数の分割領域50の形状は、回転軸線Cを中心とする扇形である。分割領域50の中心角Δθは、例えば、互いに同じ値である。複数の分割領域50の中心角Δθは、例えば、図5に示される造形エリアFに収まる分割領域50の最大の中心角Δθの半分よりも小さい。
【0031】
造形エリアFは、例えば、円形の領域である。造形エリアFには、ビーム源33が電子ビームを照射可能である。造形エリアFに収まる分割領域50の最大の中心角Δθが60度である場合、分割領域50の中心角Δθは30度より小さい。このように中心角Δθを設定することにより、テーブル12の回転により分割領域50が回転移動する際、分割領域50が造形エリアFを通過している間に分割領域50に対する造形処理を完了することができる。言い換えれば、分割領域50の造形処理が完了する前に、分割領域50が造形エリアFを通過してしまうことを抑制することができる。
【0032】
照射位置設定部43は、分割領域50ごとに電子ビームの照射位置を設定する。照射位置設定部43は、図4(c)に示されるように、電子ビームの照射位置を照射点Pとして設定する。照射点Pは、分割領域50ごとに設定される軌道データTに沿って所定の間隔で配置される。例えば、照射位置設定部43は、軌道データTとして、一定の方向に沿って並んだ軌道のデータを生成する。電子ビームの照射位置は、電子ビームを照射するための目標である。照射位置は、現実の照射位置に対応して設定してもよい。照射位置は、電子ビームの照射制御の指令位置として設定してもよい。
【0033】
図4(c)は、軌道データTに沿って照射点Pとして設定される照射位置を示している。図4(c)の例においては、照射位置のデータは、軌道データTと点データ群により構成されている。つまり、図4(c)において、軌道データT上に照射点Pが所定の間隔で設定されている。この照射点Pは、電子ビームの照射位置である。軌道データT及び軌道データT上の照射点Pは、分割領域50内の照射位置を示している。なお、分割領域50に対する照射位置の設定は、このようなものに限定されるものではない。すなわち、分割領域50に対する照射位置の設定は、軌道データT及び点データ群を設定するものに限られない。照射位置の設定は、分割領域50に対し電子ビームを所望の位置に照射できれば、その他の設定態様であってもよい。例えば、照射位置の設定として、一つの軌道データTに対し一つの照射点Pを設定してもよい。また、照射位置の設定として、軌道データTの設定のみを行ってもよい。この場合に、電子ビームは、軌道データTに沿って走査するように照射される。
【0034】
回転速度調整部44は、分割領域50ごとにテーブル12の回転速度を調整する。すなわち、回転速度調整部44は、分割領域50ごとに、テーブル12の回転速度を設定する。回転速度調整部44による具体的な回転速度の設定の方法について、図6及び図7を参照しながら以下に説明する。
【0035】
図6は、分割領域50を詳細に示す図である。図6では、造形物Mは、鉛直方向に延びる回転軸線Cを中心軸とする車輪として示されている。照射領域45は、車輪を水平面で切断したときの断面形状に対応している。例えば、照射領域45は、二重円環状部分60と、複数の直線状部分61と、を有している。二重円環状部分60は、回転軸線Cを中心とする。複数の直線状部分61は、二重円環状部分60の複数の円環形状部分を径方向に繋ぐ。例えば、複数の直線状部分61は、周方向において等間隔に離間して並んでいる。
【0036】
複数の分割領域50は、照射領域45を周方向に分割したものである。複数の分割領域50は、複数の第1分割領域51と、複数の第2分割領域52とによって構成されている。複数の第1分割領域51及び複数の第2分割領域52は、周方向において互いに異なる位置に並んでいる。第2分割領域52は、直線状部分61を含む。第2分割領域52の面積は、第1分割領域51の面積よりも大きい。第1分割領域51は、直線状部分61以外の二重円環状部分60を含む。第1分割領域51の面積は、第2分割領域52の面積よりも小さい。なお、第1分割領域51において二重円環状部分60は離れて配置されている。第1分割領域51の面積とは、分離した二重円環状部分60の面積の合計である。以下の説明では、説明の都合上、「第1分割領域51及び第2分割領域52のそれぞれ」をまとめて「分割領域50」と称することがある。
【0037】
図6に示されるように、周方向における分割領域50の位置は、回転軸線Cを中心とする角度θによって規定される。角度θは、基準線Lを基準として設定される。基準線Lは、照射領域45において回転軸線Cと直交(又は交差)する直線である。図6に示される例では、基準線Lは、分割領域50の一の分割線と重なる位置に設定されている。分割線は、図6における破線である。分割領域50の分割線は、回転軸線Cから径方向に延在する直線である。分割線は、周方向において分割領域50の境界を示している。回転方向Rにおける基準線Lの位置をθ=0とすると、回転方向Rにおける複数の分割領域50の分割線の位置はθ=θ1,θ2,θ3…と規定される。
【0038】
回転角度は、周方向において互いに隣り合う2つの分割線の差を示す。回転角度は、分割領域50の中心角Δθである。すなわち、中心角Δθは、分割領域50の2つの分割線によって規定される。中心角Δθは、周方向において照射領域45を分割領域50に分割する分割角度として規定されてもよい。複数の分割領域50の中心角Δθは、上述したように、例えば互いに同じ値である。従って、第1分割領域51の第1中心角Δθは、第2分割領域52の第2中心角Δθと同じである。
【0039】
径方向における分割領域50の長さrは、ある角度θにおいて、分割領域50が存在しない部分を含まず、分割領域50が存在する部分のみの長さを合計した値とする。従って、図6に示されるように、第1分割領域51の長さrは、二重円環状部分60の複数の円環形状部分の長さのみの合計である。一方、第2分割領域52の長さrは、直線状部分61の位置を示す角度θにおいて、直線状部分61の長さと、二重円環状部分60の複数の円環形状部分の長さと、の合計である。
【0040】
図7(a)において、横軸は、回転軸線Cを中心とする角度θを示している。縦軸は、回転軸線Cを中心とする径方向における分割領域50の長さrを示している。上述したように分割領域50の長さrを定義すると、分割領域50の面積は、分割領域50の中心角Δθと、分割領域50の長さrとの積である。本開示では、上述したように、第1分割領域51の第1中心角Δθと、第2分割領域52の第2中心角Δθとは互いに同じである。一方、図7(a)に示されるように、例えば、角度θが0からθ1までの第1分割領域51の長さrの平均値は、角度θがθ2からθ3までの第2分割領域52の長さrの平均値よりも小さい。このため、第1分割領域51の単位中心角当たりの面積は、第2分割領域52の単位中心角当たりの面積よりも小さい。
【0041】
図7(b)において、横軸は、角度θを示している。縦軸は、テーブル12の回転速度を示している。回転速度調整部44は、テーブル12の回転速度を分割領域50ごとに設定する。具体的には、回転速度調整部44は、第2分割領域52に電子ビームを照射する期間において、テーブル12の回転速度ω2を設定する。一方、回転速度調整部44は、第1分割領域51に電子ビームを照射する期間において、テーブル12の回転速度ω1を、回転速度ω2よりも速く設定する。
【0042】
テーブル12の回転速度は、分割領域50の単位中心角当たりの面積に応じて決定される。分割領域50の単位中心角当たりの面積が大きいほど、分割領域50の単位中心角当たりの面積を電子ビームが照射するのに要する時間は長い。分割領域50の単位中心角当たりの面積を電子ビームが照射するのに要する時間は、「単位照射時間」と称する。一方、分割領域50の単位中心角当たりの面積が小さいほど、単位照射時間は短い。単位照射時間が長い場合は、分割領域50の全ての部分への電子ビームの照射を完了するために、テーブル12の回転速度を遅くする必要がある。しかし、単位照射時間が短い場合は、テーブル12の回転速度を速くしても、分割領域50の全ての部分への電子ビームの照射を完了することができる。従って、単位中心角当たりの面積が小さい分割領域50に対しては、テーブル12の回転速度を速くすることができる。なお、単位中心角あたりの面積と回転速度との関係は、上記の関係に従う限り、特に制限されない。例えば、第1分割領域51の単位中心角あたりの面積は、第2分割領域52の単位中心角あたりの面積の1/2であったとする。この場合、第1分割領域51におけるテーブル12の回転速度は、第2分割領域52におけるテーブル12の回転速度の2倍としてもよい。
【0043】
上述したように、第1分割領域51の単位中心角当たりの面積は、第2分割領域52の単位中心角当たりの面積よりも小さい。従って、第1分割領域51の単位照射時間は、第2分割領域52の単位照射時間よりも短くなる。このため、第1分割領域51に電子ビームを照射する期間における回転速度ω1は、第2分割領域52に電子ビームを照射する期間における回転速度ω2よりも速い。
【0044】
本開示の三次元造形装置1は、分割領域50の単位中心角当たりの面積に応じて、テーブル12の回転速度を変更する。なお、本開示では、複数の分割領域50は、第1分割領域51及び第2分割領域52によって構成されていた。しかし、複数の分割領域50は、第1分割領域51及び第2分割領域52に加えて、他の分割領域を有してもよい。この場合、これらの分割領域のうち任意の2つの分割領域を選択し、単位中心角当たりの面積が小さい一方の分割領域を第1分割領域として定義し、単位中心角当たりの面積が大きい他方の分割領域を第2分割領域として定義すればよい。
【0045】
次に、制御部40における処理手順について説明する。まず、制御部40は、データの読み込み処理を実行する。制御部40は、造形物Mの三次元CADデータを読み込む。次に、データ取得部41は、三次元CADデータからスライスデータDを取得する(図4(a)参照)。このとき、データ取得部41は、造形物Mの上下の位置に応じて複数のスライスデータDを取得する。
【0046】
次に、領域設定部42は、造形物Mの第n層について、テーブル12の主面12aにおいて電子ビームの照射の対象となる照射領域45を設定する(図4(b)参照)。なお、第n層の「n」は自然数である。例えば、上下方向において、上から順に、第1層、第2層、第3層、…とすることができる。そして、領域設定部42は、回転軸線Cを中心とする周方向において照射領域45を複数の分割領域50に分割する。周方向において照射領域45を分割領域50に分割する中心角Δθは、例えば、互いに同じ値に設定される。
【0047】
次に、照射位置設定部43は、分割領域50ごとに電子ビームの照射位置を設定する。照射位置設定部43は、電子ビームの照射位置を照射点Pとして設定する(図4(c)参照)。照射点Pは、分割領域50ごとに設定される軌道データTに沿って所定の間隔で配置される。例えば、照射位置設定部43は、軌道データTとして、一定の方向に沿って並んだ軌道のデータを生成する。ここで、分割領域50はテーブル12の回転に伴って移動する。従って、照射位置設定部43は、分割領域50に沿って電子ビームを照射するために軌道データTを補正してもよい。例えば、照射位置設定部43は、補正後の軌道データTを湾曲した軌跡としてもよい。
【0048】
次に、回転速度調整部44は、分割領域50ごとにテーブル12の回転速度を決める。第1分割領域51の単位中心角当たりの面積は、第2分割領域52の単位中心角当たりの面積よりも小さい。従って、第1分割領域51の単位照射時間は、第2分割領域52の単位照射時間よりも短い。よって、回転速度調整部44は、図7(b)に示されるように、第1分割領域51に電子ビームを照射する期間における回転速度ω1を、第2分割領域52に電子ビームを照射する期間における回転速度ω2よりも速くなるように設定する。
【0049】
次に、三次元造形装置1における造形の際の動作について説明する。図1において、制御部40は、直線駆動部22を制御する。その結果、テーブル12は、上方へ移動する。テーブル12は、上方へ移動した結果、造形タンク13の上部に配置される。また、制御部40は、回転駆動部21を制御する。その結果、テーブル12は、回転軸線Cを中心に回転する。テーブル12の回転速度は、回転速度調整部44によって設定される。回転速度調整部44は、上述したように、第2分割領域52に電子ビームを照射する期間では、テーブル12の回転速度をω2に設定する。第1分割領域51に電子ビームを照射する期間では、テーブル12の回転速度ω1を回転速度ω2よりも速くなるように設定する。
【0050】
次に、制御部40は、フィーダ31を制御する。その結果、テーブル12上に粉末材料Aが供給される。テーブル12上の粉末材料Aは、リコータによって均される。フィーダ31が供給した粉末材料Aは、テーブル12の回転に伴って移動する。その結果、粉末材料Aは、ヒータ32の下方の領域に進入する。ヒータ32は、ヒータ32の下方に配置された粉末材料Aを予備加熱する。粉末材料Aは、テーブル12の回転に伴って移動しながら加熱される。
【0051】
ヒータ32によって予備加熱された粉末材料Aは、テーブル12の回転に伴って移動する。その結果、粉末材料Aは、テーブル12の周方向においてビーム源33に接近する。制御部40は、ビーム源33を制御する。その結果、ビーム源33の照射範囲内に存在する粉末材料Aに対して電子ビームが照射される。具体的には、ビーム源33は、ビーム源33の照射範囲内に存在する分割領域50ごとに、電子ビームを照射する。分割領域50は、テーブル12の回転に伴って回転軸線Cを中心として回転移動する。複数の分割領域50上の粉末材料Aに対して電子ビームが順次照射される。その結果、分割領域50ごとに造形物Mが造形されていく。
【0052】
このとき、例えば、図5に示されるように、分割領域50における造形の開始位置Paが設定されてもよい。開始位置Paは、ビーム源33の設置位置に対応する固定の位置である。開始位置Paは、1つの分割領域50の全部が造形エリアF内に収まるときの位置である。つまり、ビーム源33は、1つの分割領域50の全部が造形エリアFに入ったときに、その分割領域50の造形を開始してもよい。
【0053】
テーブル12は、造形物Mの造形が進むにつれて降下する。すなわち、制御部40は、直線駆動部22を制御する。その結果、テーブル12が回転軸線Cに沿って降下する。テーブル12の降下は、テーブル12の回転と同期させてもよい。テーブル12の降下は、テーブル12の回転と完全に同期させなくてもよい。そして、全ての層について造形が完了したときに、造形物Mの造形が完了する。
【0054】
以上に説明した、本開示に係る三次元造形装置1によって得られる作用及び効果を説明する。三次元造形装置1では、テーブル12が回転軸線Cを中心として回転方向Rに回転しながら、テーブル12の主面12a上の粉末材料Aに対して電子ビームが分割領域50ごとに順次照射される。ここで、第1分割領域51の単位中心角当たりの面積は、第2分割領域52の単位中心角当たりの面積よりも小さい。このため、第1分割領域51の単位照射時間は、第2分割領域52の単位照射時間よりも短い。
【0055】
よって、仮に、第2分割領域52への電子ビームに要する時間を基準としてテーブル12の回転速度を一定値に設定すると、第1分割領域51への電子ビームの照射が終了してから、次の第1分割領域51又は第2分割領域52への電子ビームの照射を開始するまでに待ち時間が発生してしまう。これに対し、三次元造形装置1では、第1分割領域51への電子ビームの照射期間におけるテーブル12の回転速度ω1は、第2分割領域52への電子ビームの照射期間におけるテーブル12の回転速度ω2よりも速い。このように、第1分割領域51に電子ビームを照射するときのテーブル12の回転速度ω1を速くすることにより、上記の待ち時間を低減できる。従って、造形物Mの造形時間を短縮できる。
【0056】
以上のように本開示の三次元造形装置1について説明したが、本開示の三次元造形装置1は上述した説明に限定されない。本開示の三次元造形装置1は、特許請求の範囲の記載の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形態様を取ることができる。
【0057】
図8は、第1変形例に係る三次元造形装置の制御部40Aの構成を示している。本変形例の制御部40Aの領域設定部42Aは、中心角調整部42aを含んでいる。中心角調整部42aは、複数の分割領域50Aの中心角を調整する。具体的には、図9に示されるように、中心角調整部42aは、第1分割領域511の第1中心角Δθ1と、第2分割領域512の第2中心角Δθ2と、を互いに異なる値に設定する。
【0058】
第1分割領域511は、中心角調整部42aによる調整前の第1分割領域51(図6参照)に対応している。第2分割領域512は、中心角調整部42aによる調整前の第2分割領域52(図6参照)に対応している。回転方向Rにおける基準線Lの位置をθ=0とすると、回転方向Rにおける複数の分割領域50Aの分割線の位置はθ=θ11,θ12,θ13…と規定される。
【0059】
図9に示されるように、中心角調整部42aは、調整後の第1分割領域511の第1中心角Δθ1が、調整前の第1分割領域51の第1中心角Δθよりも大きくなるように設定する。また、中心角調整部42aは、調整後の第2分割領域512の第2中心角Δθ2が、調整前の第2分割領域52の第2中心角Δθよりも小さくなるように設定する。第2分割領域512の第2中心角Δθ2は、第2分割領域52における直線状部分61以外の二重円環状部分60の面積が更に小さくなるように設定されている。第1分割領域511の第1中心角Δθ1は、互いに隣接する2つの第1分割領域51を包含するように設定されている。そして、第1分割領域511の第1中心角Δθ1は、第2分割領域512の第2中心角Δθ2よりも大きくなるように設定されている。
【0060】
図10(a)において、横軸は、回転軸線Cを中心とする角度θを示す。縦軸は、回転軸線Cを中心とする径方向における照射領域の長さrを示している。なお、図10(a)では、調整前の第1分割領域51及び第2分割領域52の分割線を二点鎖線で示している。図10(a)から明らかなように、第1分割領域511の全体の面積は、第1分割領域511の第1中心角Δθ1が大きくなっている分、調整前の第1分割領域51の全体の面積よりも大きくなっている。しかし、第1分割領域511の径方向における長さrは、第1分割領域51の径方向における長さrと同じである。よって、第1分割領域511の単位中心角当たりの面積は、第1分割領域51の単位中心角当たりの面積と同じである。従って、第1分割領域511の単位照射時間は、第1分割領域51の単位照射時間と同じである。
【0061】
一方、第2分割領域512の全体の面積は、第2分割領域512の第2中心角Δθ2が小さくなっている分、調整前の第2分割領域52の全体の面積よりも小さい。しかし、例えば、角度θがθ11からθ12までの第2分割領域512の長さrの平均値は、角度θがθ2からθ3までの第2分割領域52の長さrの平均値よりも僅かに小さい。よって、第2分割領域512の単位中心角当たりの面積は、第2分割領域52の単位中心角当たりの面積よりも僅かに小さい。従って、第2分割領域512の単位照射時間は、第2分割領域52の単位照射時間よりも僅かに長い。
【0062】
図10(b)において、横軸は、角度θを示している。縦軸は、テーブル12の回転速度を示している。なお、図10(b)では、調整前の第1分割領域51及び第2分割領域52の分割線を二点鎖線で示している。調整前の第2分割領域52への電子ビームの照射期間におけるテーブル12の回転速度ω2を一点鎖線で示している。図10(b)に示されるように、第1分割領域511に電子ビームを照射する期間では、テーブル12の回転速度ω1が設定されている。第2分割領域512に電子ビームを照射する期間では、テーブル12の回転速度ω3が設定されている。上述したように、第2分割領域512の単位照射時間は、第2分割領域52の単位照射時間よりも僅かに長い。従って、回転速度ω3は、回転速度ω2よりも僅かに遅い。
【0063】
しかし、本変形例では、第2分割領域512の第2中心角Δθ2が小さくなっている分、第1分割領域511の第1中心角Δθ1が大きくなっている。このため、照射領域45における第2分割領域512の割合が小さくなる。一方、照射領域45における第1分割領域511の割合が大きくなる。このように、テーブル12の回転速度ω1が速い第1分割領域51の割合を大きくすることにより、テーブル12が一周するのに要する時間を短くすることができる。すなわち、第1分割領域511の単位中心角当たりの面積と、第2分割領域512の単位中心角当たりの面積とにメリハリをつけることができる。例えば、実施形態の制御部40は、図10に示す角度θ2から角度θ11の区間が回転速度ω2である区間に含めていた。つまり、本来であれば回転速度ω1で造形可能な角度θ2から角度θ11の区間の回転速度は、回転速度ω1よりも遅い回転速度ω2であった。一方、本変形例の制御部40Aは、中心角を調整することにより、角度θ2から角度θ11の区間を第1分割領域511に含ませている。その結果、角度θ2から角度θ11の区間を回転速度ω1にて回転させることができる。つまり、高速回転が可能な第1分割領域51の割合を増やすことができ、造形速度の最適化を図ることができる。従って、本変形例によれば、造形物Mの造形時間を更に短縮できる。
【0064】
本変形例では、領域設定部42Aが中心角調整部42aを含んでいる。しかし、領域設定部42Aは、中心角調整部42aを含んでいなくてもよい。この場合、三次元造形装置の外部に設けられる外部装置が中心角調整部42aを含んでもよい。外部装置からデータ取得部41が取得するデータは、第1分割領域511に関するデータ、及び第2分割領域512に関するデータを含んでもよい。また、本変形例では、第1分割領域511の第1中心角Δθを大きくしている。第1分割領域511の第1中心角Δθ1は、造形エリアF内に収まる第1分割領域511の最大の中心角Δθの半分よりも大きくするべきではない(図5参照)。その結果、第1分割領域511の第1中心角Δθ1は、ある程度の大きさに制限される。このように第1分割領域511の第1中心角Δθ1が制限される場合であっても、第1分割領域511に電子ビームを照射する期間における回転速度ω1を調整することにより、造形物Mの造形時間が更に短縮される。
【0065】
図11は、第2変形例に係る三次元造形装置の制御部40Bの構成を示している。本変形例の制御部40Bの領域設定部42Bは、位相差調整部42bを含む。図12に示されるように、位相差調整部42bは、複数の分割領域50Bの位相差を調整する。分割領域50Bの位相差とは、基準線Lと、周方向において分割領域50Bの境界を示す分割線と、の周方向における差を示す回転角度である。基準線Lは、位相差調整部42bによる調整前の第1分割領域51(図6参照)の分割線と重なる位置に設定されている。位相差調整部42bは、調整後の分割領域50Bの位相差と、調整前の分割領域50Bの位相差とを互いに異なる値に設定する。
【0066】
例えば、位相差調整部42bは、調整後の分割領域50Bの位相差が、調整前の分割領域50の位相差よりも大きくなるように調整する。具体的には、位相差調整部42bは、調整後の分割領域50Bの位相差を、調整前の分割領域50の位相差に対して、回転方向Rに位相差Δθpだけ大きくする。位相差調整部42bによる位相差の調整によって、直線状部分61における周方向の中央に、分割領域50Bの分割線が位置する。直線状部分61を二等分する当該分割線を共有する2つの分割領域50Bのそれぞれが、第2分割領域522となる。位相差調整部42bによる位相差の調整後においても、直線状部分61を含まない分割領域50Bが第1分割領域521となる。
【0067】
周方向において互いに隣接する2つの第2分割領域522のうち、基準線から遠い第2分割領域522は、調整前の第2分割領域52(図6参照)に対応している。基準線に近い第2分割領域522は、調整前の第1分割領域51に対応している。また、第1分割領域521は、調整前の第1分割領域51に対応している。位相差調整部42bによる調整の前後において、複数の分割領域50Bの中心角Δθは互いに同じである。基準線Lから回転方向Rに位相差Δθpだけずれた位置をθ=0とすると、回転方向Rにおける複数の分割領域50Bの分割線の位置はθ=θ1,θ2,θ3…と規定される。
【0068】
図13(a)において、横軸は、回転軸線Cを中心とする角度θを示している。縦軸は、回転軸線Cを中心とする径方向における照射領域の長さrを示している。なお、図13(a)では、調整前の第1分割領域51及び第2分割領域52の分割線を二点鎖線で示している。図13(a)に示されるように、調整後の第1分割領域521の単位中心角当たりの面積は、調整前の第1分割領域51の単位中心角当たりの面積と同じである。従って、第1分割領域521の単位照射時間は、第1分割領域51の単位照射時間と同じである。一方、例えば、角度θがθ2からθ3までの第2分割領域522の長さrの平均値は、調整前の角度θがθ2からθ3までの第2分割領域52の長さrの平均値よりも小さい。第2分割領域522の単位中心角当たりの面積は、調整前の第2分割領域52の単位中心角当たりの面積よりも小さい。従って、第2分割領域522の単位照射時間は、第2分割領域52の単位照射時間よりも短い。
【0069】
図13(b)において、横軸は、角度θを示している。縦軸は、テーブル12の回転速度を示している。なお、図13(b)では、調整前の第1分割領域51及び第2分割領域52の分割線を二点鎖線で示している。調整前の第2分割領域52への電子ビームの照射期間におけるテーブル12の回転速度ω2を一点鎖線で示している。図13(b)に示されるように、第1分割領域511に電子ビームを照射する期間では、テーブル12の回転速度ω1が設定されている。第2分割領域512に電子ビームを照射する期間では、テーブル12の回転速度ω4が設定されている。第2分割領域522の単位照射時間は、第2分割領域52の単位照射時間よりも短い。従って、第2分割領域522への電子ビームの照射期間における回転速度ω4は、第2分割領域52への電子ビームの照射期間における回転速度ω2よりも速い。
【0070】
本変形例によれば、位相差調整部42bが複数の分割領域50Bの位相差を調整することにより、第2分割領域522の単位中心角当たりの面積を小さくすることができる。これに応じて、第2分割領域522の単位照射時間を短くすることができる。その結果、第2分割領域522に対するテーブル12の回転速度ω4を速くすることができるので、造形物Mの造形時間を更に短縮できる。
【0071】
本変形例によれば、制御部40Bは、第1分割領域521の単位中心角当たりの面積と、第2分割領域522の単位中心角当たりの面積と、の差異(比率)が小さくなるように、位相差を調整する。面積は、回転速度に関係する。従って、面積の差異が小さくなると、回転速度の差異も小さくなる。つまり、回転速度ω4が速くなる。その結果、回転速度ω4を回転速度ω1に近づけることができる。すなわち、図13(b)に示されるように、回転速度ω2と回転速度ω1との差Δω2と比べて、回転速度ω4と回転速度ω1との差Δω4をより小さくすることができる。これにより、テーブル12の回転速度ω1及びω4を、テーブル12の回転速度の許容範囲内に容易に収めることができるので、テーブル12の回転速度の安定性を高めることができる。
【0072】
本開示は、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態及び複数の変形例を必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。また、三次元造形装置1の構成は、適宜変更してよい。例えば、上述した実施形態及び複数の変形例では、三次元造形装置の制御部40は、スライスデータDを取得するデータ取得部41に代えて、スライスデータDを生成するデータ生成部を備えていてもよい。
【0073】
実施形態及び複数の変形例では、フィーダ31、ヒータ32及びビーム源33をそれぞれ1つずつ備えた三次元造形装置1について説明した。しかし、三次元造形装置は、複数のフィーダ、複数のヒータ及び複数のビーム源を備えていてもよい。例えば、三次元造形装置は、2個のフィーダ、2個のヒータ及び2個のビーム源を備えていてもよい。この場合、テーブルの半分の一方側で粉末材料の供給、粉末材料の予備加熱及びビーム照射が行うことができる。これと並行して、テーブルの半分の他方側でも粉末材料の供給、粉末材料の予備加熱及びビーム照射が行うことができる。従って、造形物の造形がより効率良く行える。また、三次元造形装置は、3個以上のフィーダ、3個以上のヒータ及び3個以上のビーム源を備えてもよい。
【0074】
また、上述した実施形態及び複数の変形例では、三次元造形装置が、エネルギビームとして電子ビームを用いて造形物Mを造形する場合について説明した。しかし、三次元造形装置は、電子ビーム以外のエネルギビームを用いて造形物を造形してもよい。例えば、三次元造形装置は、イオンビーム、レーザビーム、紫外線などを照射して造形物を造形してもよい。また、三次元造形装置は、パウダーベッド方式以外の方式で造形物を造形してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 三次元造形装置
12 テーブル
12a 主面
20 駆動部
21 回転駆動部
22 直線駆動部
30 処理部
31 フィーダ
32 ヒータ
33 ビーム源(照射部)
40,40A,40B 制御部
41 データ取得部
42,42A,42B 領域設定部
42a 中心角調整部
42b 位相差調整部
43 照射位置設定部
44 回転速度調整部
45 照射領域
50,50A,50B 分割領域
51,511,521 第1分割領域
52,512,522 第2分割領域
A 粉末材料
C 回転軸線
L 基準線
M 造形物
R 回転方向
Δθ,Δθ1 第1中心角
Δθ,Δθ2 第2中心角
Δθp 位相差
ω1,ω2,ω3,ω4 回転速度

図1
図2
図3
図4
図5
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図12
図13