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特許7264237エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、及び繊維強化複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、及び繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20230418BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20230418BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20230418BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C08J5/24 CFC
C08G59/32
C08G59/50
C08L63/00 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021512254
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 IB2019001057
(87)【国際公開番号】W WO2020058766
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】62/734,623
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/897,701
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】スウィーゼン・サン・タン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ヒューズ
(72)【発明者】
【氏名】荒井 信之
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/204173(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/038880(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/033056(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/073652(WO,A1)
【文献】特開2010-202727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0049426(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/04-5/10、5/24
B29B11/16、15/08-15/14
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
C08G59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)を含む、繊維強化複合材料のためのエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂組成物は、硬化された場合、180℃で1000時間の熱浸漬時の重量喪失が1.0%未満であり:
成分(A)は、式(I)で表される、2つ以上のナフタレン構造を含み、2つのエポキシ官能基を有する少なくとも1つのポリナフタレン型エポキシ樹脂を含み;
成分(B)は、少なくとも1つの非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂を、全エポキシ樹脂の100PHRあたり10~35PHRの合計量で含み;
成分(C)は、ポリナフタレン型エポキシ樹脂でも非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂でもない、少なくとも3つのエポキシ官能基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂を含み;並びに
成分(D)は、少なくとも1つのアミン硬化剤を含む、
エポキシ樹脂組成物。
【化1】
式中、R~R12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシル基、C1~C10フルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、及びグリシドキシ基から成る群より選択され、Y~Yは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシル基、C1~C10フルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、及びグリシドキシ基から成る群より選択されて、各ベンゼン核は、1又は複数のY基で置換されていてよく、nは、0であり、kは、0又は1であり、前記Y基は、各ナフタレン核の一方又は両方の環に結合していてよく;並びに各Xは、独立して、直接結合、-CH-、-C(CH-、-S-、-SO-、-O-、-C(=O)O-、-C(=O)-、-C(=O)NH-、C1~C6アルキレン基、C1~C6アルコキシレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びアリールオキシレン基から成る群より選択され、これらの基は、所望に応じて個々に用いられ、又は異なる基が、所望に応じてXとして組み合わせて用いられる。
【請求項2】
成分(B)が、式(II)に相当する構造、及びそのオリゴマーを有する少なくとも1つの非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物:
-C(Y)(Z)-X 式(II)
式中、X及びXは、同じであるか又は異なり、各々独立して、グリシジルエーテル置換フェニル基、及びヒドロキシル置換フェニル基から成る群より選択され;
i)Yは、グリシジルエーテル置換フェニル基、ヒドロキシル置換フェニル基、及び-C(H)(X)(X)から成る群より選択され、X及びXは、同じであるか又は異なり、各々独立して、グリシジルエーテル置換フェニル基、及びヒドロキシル置換フェニル基から成る群より選択され、X及びXは、X及びXと同じであるか又は異なり;並びにZは、Hであるか;又は
ii)C(Y)(Z)は、フルオレン基を表し、この場合、C(Y)(Z)においてCで表される炭素原子は、前記フルオレン基の9位に存在するか、
のいずれかであり;
但し、前記非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂が、1分子あたり少なくとも2つのグリシジルエーテル基を含むことが条件である。
【請求項3】
成分(B)が、トリス及びより高次の(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂、テトラ(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、これらのオリゴマー、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つの非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂を含む、請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
成分(D)が、少なくとも1つ芳香族ポリアミン硬化剤を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
成分(D)が、少なくとも1つのジアミノジフェニルスルホンを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
成分(A)が、全エポキシ樹脂の100PHRあたり合計で15~50PHRを成す、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
成分(C)が、全エポキシ樹脂の100PHRあたり合計で30~50PHRを成す、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
成分(D)が、活性水素対エポキシ基のモル比を0.8:1~1.2:1の範囲内とするのに有効であるような量で存在し、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)が、活性水素対エポキシ基のモル比を0.8:1~1.2:1の範囲内とするのに有効であるような合計量で存在する、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂組成物が、硬化された場合、1.9GPa以上の121℃で試験される熱/湿潤曲げ弾性率を有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂組成物が、硬化された場合、2.0GPa以上の121℃で試験される熱/湿潤曲げ弾性率を有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂組成物が、硬化された場合、2.1GPa以上の121℃で試験される熱/湿潤曲げ弾性率を有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
前記エポキシ樹脂組成物が、硬化された場合、200℃超の湿潤Tgを有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
前記エポキシ樹脂組成物が、65℃で2時間保持された場合、初期粘度の2倍未満の粘度上昇を有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
前記エポキシ樹脂組成物が、少なくとも1つの熱可塑性樹脂をさらに含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、少なくとも1つのポリエーテルスルホンを含む、請求項14に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項16】
少なくとも10PHRのポリエーテルスルホンを含む、請求項15に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項17】
前記エポキシ樹脂組成物が、40℃で1×10Pas~3×10Pasの粘度、及び1Pas超の最低粘度を有する、請求項16に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項18】
次の成分を含むエポキシ樹脂組成物:
(A)全エポキシ樹脂の100PHRあたり合計で少なくとも20PHRの、式(I)に示される構造を有し、
【化2】
式中、R~R12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシル基、C1~C10フルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、及びグリシドキシ基から成る群より選択され、Y~Yは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシル基、C1~C10フルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、及びグリシドキシ基から成る群より選択されて、各ベンゼン核は、1又は複数のY基で置換されていてよく、nは、であり、kは、0又はであり、前記Y基は、各ナフタレン核の一方又は両方の環に結合していてよく;並びに各Xは、独立して、直接結合、-CH-、-C(CH-、-S-、-SO-、-O-、-C(=O)O-、-C(=O)-、-C(=O)NH-、C1~C6アルキレン基、C1~C6アルコキシレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びアリールオキシレン基から成る群より選択され、これらの基は、所望に応じて個々に用いられ、又は異なる基が、所望に応じてXとして組み合わせて用いられる、
2つ以上のナフタレン構造を含み、2つのエポキシ官能基を有する少なくとも1つのポリナフタレン型エポキシ樹脂;
(B)全エポキシ樹脂の100PHRあたり合計で少なくとも10PHRの量の、トリス及びより高次の(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂、テトラ(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、これらのオリゴマー、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される3つ以上のエポキシ官能基を有する少なくとも1つの非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂;
(C)ポリナフタレン型エポキシ樹脂又は非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂のいずれでもなく、ジアミン又は1分子あたり少なくとも1つのアミン基と少なくとも1つのヒドロキシル基とを含有する化合物のグリシジルエーテルである、少なくとも3つのエポキシ官能基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂;
(D)少なくとも1つのジアミノジフェニルスルホンを含む少なくとも1つの硬化剤であって、成分(D)、並びに成分(A)、(B)、及び(C)は、活性水素:エポキシ基のモル比を0.8:1~1.2:1とするのに有効な量で存在する、少なくとも1つの硬化剤;
(E)全エポキシ樹脂の100PHRあたり5~30PHRの量のポリエーテルスルホンから成る群より選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂;並びに
(F)所望に応じて存在してよい有機粒子。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物で含浸された強化繊維マトリックスを含むプリプレグ。
【請求項20】
請求項19に記載のプリプレグを硬化することによって得られる繊維強化複合材料。
【請求項21】
請求項1から18のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物及び強化繊維を含む混合物を硬化することによって得られるエポキシ樹脂硬化物を含む繊維強化複合材料。
【請求項22】
請求項19に記載のプリプレグを170℃~230℃の温度で硬化することを含む、繊維強化複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、各々の全開示内容があらゆる点において参照により本明細書に援用される2018年9月21日に出願された米国仮特許出願第62/734,623号及び2019年9月9日に出願された米国仮特許出願第62/897,701号の優先権を主張するものである。
【0002】
本出願は、航空宇宙用途、スポーツ用途、及び一般産業用途に良好に適する繊維強化複合材料のためのエポキシ樹脂組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
強化繊維及びマトリックス樹脂を含む繊維強化複合(FRC)材料は、強度及び剛直性などの非常に優れた力学特性を有すると共に軽量でもあり、したがって、航空機部材、宇宙船部材、自動車部材、列車部材、船舶部材、スポーツ用品部材、及びラップトップ用筐体などのコンピュータ部材として広く用いられている。FRC材料は、様々な方法によって製造されており、広く実践されている方法は、未硬化のマトリックス樹脂で含浸した強化繊維をプリプレグとして用いることである。この方法では、プリプレグのシートが積層され、加熱されて、複合材料が形成される。プリプレグのために用いられるマトリックス樹脂としては、ほとんどの場合、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の両方が挙げられるが、熱硬化性樹脂は、ハンドリング性に非常に優れている。これらの中でも、高い耐熱性、高い弾性率、硬化時の低い収縮、及び高い耐化学薬品性などの傑出した特性を提供するエポキシ樹脂が、最も多くの場合に用いられる。
【0004】
FRCの特性は、強化繊維及びマトリックス樹脂の両方に依存する。重要な意匠性としては、引張強度及び引張弾性率、圧縮強度及び圧縮弾性率、耐衝撃性、損傷許容性、並びに靭性が挙げられる。一般的に、FRC材料において、強化繊維が、特性の大部分に寄与する。他方、マトリックス樹脂は、圧縮強度及び横引張特性に対して最も大きな影響を与える。FRC材料が構造材として用いられる場合、圧縮強度が特に重要な特性である。
【0005】
プリプレグに用いられる樹脂組成物として、エポキシ樹脂が、非常に優れたハンドリング特性、並びに硬化された場合の非常に優れた力学特性及び耐熱性を提供するために、熱硬化性樹脂として広く用いられてきた。近年、軽量化に向けての力学特性が必要とされる航空機、自動車、一般航空、及び産業利用のための構造材としての使用に対する用途が増加しており、硬化エポキシ樹脂組成物の力学特性を利用して、そのような用途での軽量化を実現している。引張強度及び圧縮強度のさらなる強化も重要な特性であり、高い湿度、高い温度の環境下で高い特性を維持することが、特に航空宇宙及びロケット産業において、ますます重要になってきた。複合材料の引張強度を改善するためには、ベース材料としての炭素繊維の引張強度を改善することに加えて、エポキシ樹脂組成物の硬化物(「硬化物」と略される場合もある)の架橋密度を下げることも有効である。しかし、架橋密度を下げると、耐熱性が低下する。他方、複合材料の圧縮強度を高めるために、硬化物の高い弾性率を改善することが有効である。しかし、硬化物の弾性率を改善するためには、架橋密度を高めることが有効である。したがって、複合材料の引張強度及び圧縮強度の両方を改善することは、非常に困難な課題であり続けている。FRC材料の圧縮強度を高めるためには、硬化物の曲げ弾性率を可能な限り高めることが不可欠である。
【0006】
分子鎖間の相互作用点を導入することによって硬化物の低い架橋密度を維持しながら、複合材料において高い引張強度及び高い圧縮強度の両方を実現するためには、分子鎖の動きを抑制することが有効であると考えられる。樹脂の官能基を増加させることによって架橋密度を高めることなく、硬化物中での分子鎖の運動を抑制するための方法は、分子鎖が曲がった構造で相互作用を起こす分子構造を導入することであり、それによって、架橋密度を高めることなく構造が剛性化される。さらに、高い湿度及び高い温度の環境下での力学特性を維持するためには、重合体鎖中の空いた空間を減らして、硬化物の吸水率を低下させることが有効である。
【0007】
湿潤耐熱性を190℃超に高めるためには、エポキシ官能基が3よりも多い多フェニル基エポキシ樹脂(multi-phenyl group epoxy resins)(すなわち、1分子あたり4つ以上のエポキシ基を有する多フェニルエポキシ樹脂)を用いて湿潤Tgを改善することができることが見出された。しかし、この種のエポキシ樹脂の使用は、硬化物のETW(高温湿潤)曲げ弾性率を低下させ、それによって、圧縮強度が低下する。さらに、これらのエポキシ樹脂は、結晶化する傾向を有し、それによって、エポキシ樹脂のハンドリング性が低下する。
【0008】
硬化物の弾性率を増加させる他の形態は、ナフタレン構造、又はより好ましくは、ビナフタレン構造を付与することである。これは、硬化物に剛性構造を導入することによって、弾性率を高めるのに良好に作用する。しかし、この硬化物は、高い湿潤耐熱性を有しない。
【0009】
他の系では、無水物硬化剤を用いることによる硬化物の耐熱性及び弾性率の両方の向上効果が示された。無水物硬化剤は、アミン硬化エポキシと比較した場合、多くの有益性を提供するが、いくつかの欠点もある。未硬化状態において、無水物は水と反応するため、製品の長期間の保存についてその使用が制限される。別の欠点は、水の存在下及び高温下で無水物が分解され得ることであり、このため、航空宇宙用途には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、良好な成形性及びハンドリング性を依然として提供しながら、高い湿潤耐熱性、引張強度、及び高温湿潤圧縮強度を同時に実現することができるエポキシ樹脂組成物を提供しようとするものである。
【0011】
本発明者らは、上記の問題を集中的に研究し、特定の相対量での特定の成分の組み合わせ又は混合物をエポキシ樹脂組成物として用いることによって、上記問題を解決することができることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの態様では、成分(A)、(B)、(C)、及び(D)を含む、繊維強化複合材料のためのエポキシ樹脂組成物が提供され、このエポキシ樹脂組成物は、硬化された場合、180℃で1000時間の熱浸漬時の重量喪失が0.5%未満である。
【0013】
成分(A)、(B)、(C)、及び(D)は、各々、以下の通りであってよく:
成分(A)は、式(I)で表される、2つ以上のナフタレン構造を含み、2つのエポキシ官能基を有する少なくとも1つのポリナフタレン型エポキシ樹脂を含み;
成分(B)は、全エポキシ樹脂の100PHRあたり10~35PHRの合計量で、少なくとも1つの非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂を含み(すなわち、全エポキシ樹脂の100重量部あたり10~35重量部の非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂);
成分(C)は、ポリナフタレン型エポキシ樹脂でも非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂でもない、少なくとも3つのエポキシ官能基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂を含み;並びに
成分(D)は、少なくとも1つのアミン硬化剤、特に少なくとも1つの芳香族ポリアミン硬化剤を含む。
【化1】
式中、R ~R 12 は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシル基、C1~C10フルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、及びグリシドキシ基から成る群より選択され、Y ~Y は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシル基、C1~C10フルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、及びグリシドキシ基から成る群より選択されて、各ベンゼン核は、1又は複数のY基で置換されていてよく、nは、0であり、kは、0又は1であり、前記Y基は、各ナフタレン核の一方又は両方の環に結合していてよく;並びに各Xは、独立して、直接結合、-CH -、-C(CH -、-S-、-SO -、-O-、-C(=O)O-、-C(=O)-、-C(=O)NH-、C1~C6アルキレン基、C1~C6アルコキシレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びアリールオキシレン基から成る群より選択され、これらの基は、所望に応じて個々に用いられ、又は異なる基が、所望に応じてXとして組み合わせて用いられる。
【0014】
成分(A)は、全エポキシ樹脂の100PHRあたり合計で少なくとも20PHRの、1分子あたり2つ以上のナフタレン構造を有し、つのエポキシ官能基を有するエポキシ樹脂である少なくとも1つのポリナフタレン型エポキシ樹脂を含んでよい(すなわち、成分(A)は、組成物中のエポキシ樹脂の合計量の100重量部あたり少なくとも20重量部のポリナフタレン型エポキシ樹脂を含んでよい)。好ましい実施形態によると、ポリナフタレン型エポキシ樹脂は、式(I)に示される構造を有する。
【化1】
式中、R~R12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシル基、C1~C10フルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、及びグリシドキシ基から成る群より選択され、Y~Yは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシル基、C1~C10フルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、及びグリシドキシ基から成る群より選択されて、各ベンゼン核は、1又は複数のY基で置換されていてよく、nは、であり、kは、0又はであり、Y基は、各ナフタレン核の一方又は両方の環に結合していてよく;並びに各Xは、独立して、直接結合、-CH-、-C(CH-、-S-、-SO-、-O-、-C(=O)O-、-C(=O)-、-C(=O)NH-、C1~C6アルキレン基、C1~C6アルコキシレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びアリールオキシレン基から成る群より選択され、これらの基は、所望に応じて個々に用いられ、又は異なる基が、所望に応じてXとして組み合わせて用いられる。
【0015】
ある特定の実施形態によると、成分(B)は、全エポキシ樹脂の100PHRあたり合計で少なくとも10PHR、好ましくは10~30PHRの、3つ以上のエポキシ官能基を有する少なくとも1つの非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂を含んでよい。
【0016】
ある特定の実施形態によると、成分(C)は、ポリナフタレン型エポキシ樹脂又は非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂である少なくとも3つのエポキシ官能基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂を含んでよい(すなわち、成分(A)及び成分(B)のエポキシ樹脂とは異なる、1分子あたり3つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂)。
【0017】
本発明のある特定の実施形態では、成分(D)は、少なくとも1つのアミン硬化剤、好ましくはジアミノジフェニルスルホンなどの少なくとも1つの芳香族ポリアミン硬化剤を含む。
【0018】
好ましくは、ある特定の実施形態によると、成分(A)、(B)、及び(C)は、活性水素:エポキシ基のモル比を0.8:1~1.2:1の範囲内とするのに有効な量でエポキシ樹脂組成物中に存在する。
【0019】
本発明はさらに、上述のエポキシ樹脂組成物を硬化することによって得られる硬化エポキシ樹脂、強化繊維を上述のエポキシ樹脂組成物で含浸することによって得られるプリプレグ、プリプレグを硬化することによって得られる繊維強化複合材料、並びに上述のエポキシ樹脂組成物及び強化繊維ベースを含むプリプレグを硬化することによって得られる硬化物を含む繊維強化複合材料、を含む。
【0020】
広範な研究の後、本発明者らは、驚くべきことに、本明細書で述べる成分(A)に相当する高弾性率エポキシ樹脂(ポリナフタレン型エポキシ樹脂)及び本明細書で述べる成分(B)に相当する非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂が、本明細書で述べる成分(C)に相当する多官能性エポキシ樹脂(少なくとも3つのエポキシ官能基を有し、成分(A)及び(B)のエポキシ樹脂とは異なるエポキシ樹脂)と共に、適正な比率である場合、樹脂硬化物において、高い曲げ弾性率を高い湿潤Tgと共に実現することが可能であり、したがって、より良好な全体としての特性が得られることを発見した。これは、予想外なことであったが、その理由は、少なくとも部分的には、先行技術においてそのようなエポキシ樹脂が、それらの意図する特性を実現するために別々に用いられていたからである。また、高弾性率樹脂(A)又は高Tg樹脂(B)のいずれかを用いる量が多過ぎると、特性を逆に低下させてしまうことも見出された。先行技術のほとんどは、室温弾性率の高い樹脂を作製する方法について示している。しかし、これは、熱/湿潤曲げ弾性率の高い樹脂とは直接相関していない(すなわち、硬化された場合に高い室温弾性率を提供する樹脂は、必ずしも高い熱/湿潤曲げ弾性率も有するわけではない)。
【0021】
理論に束縛されるものではないが、少量の非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂(B)を、成分(A)及び(C)の混合物に添加することによって、ポリナフタレン型エポキシ樹脂(A)のより剛性である網目構造を形成して高いETW(高温湿潤)曲げ弾性率を維持することを依然として可能としながら、全体としての湿潤Tgを高めるのに充分に重合体網目構造を結合させるものと考えられる。これは、当然、他の方法でも達成可能であるが、そのような他の手法が用いられた場合、曲げ伸びが維持されず、それによって材料の靭性が低下し、したがって、硬化FRC材料の引張強度が低下する。
【0022】
高いETW(高温/湿潤)曲げ弾性率の利点により、より高い温度で良好な圧縮弾性率を有するプリプレグが可能となる。高い湿潤Tgにより、通常の使用温度よりも高い温度で材料を使用することが可能となる。これらの特性の両方を一緒に有することにより、材料は、より高い温度であっても非常に優れた力学特性を有すること、及びこれらの特性を長期間にわたって劣化することなく維持することが可能となる。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、硬化された場合に、190℃超の湿潤Tgを有する。他の実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、硬化された場合に、200℃超の湿潤Tgを有する。
【0023】
樹脂系の高い弾性率は、有利には、FRCにより高い圧縮特性を付与し、航空宇宙のための一次及び二次の両方の構造領域でそれを使用することが可能となる。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、硬化された場合、121℃で少なくとも1.9GPaのETW曲げ弾性率(「高温/湿潤曲げ弾性率」)を有する。他の実施形態では、硬化エポキシ樹脂組成物の121℃でのETW曲げ弾性率(「高温/湿潤曲げ弾性率」)は、少なくとも2.0GPaである。さらに他の実施形態によると、硬化エポキシ樹脂組成物の121℃でのETW曲げ弾性率(「高温/湿潤曲げ弾性率」)は、少なくとも2.1GPa以上である。ETW曲げ弾性率(「高温/湿潤曲げ弾性率」)は、発明を実施するための形態(成分(C)に関して)及び実施例を含む本明細書の他所に記載した手順に従って測定される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、本明細書において具体的な実施形態を参照して説明され、記載されるが、本発明は、示される詳細事項に限定されることを意図するものではない。そうではなく、請求項の均等物の範囲内で、本発明から逸脱することなく、その詳細事項に様々な改変が成されてもよい。
【0025】
「およそ」、「約」、及び「実質的に」の用語は、本明細書で用いられる場合、所望される機能を依然として実行する又は所望される結果を依然として実現するものである、記載された量に近い量を表す。例えば、「およそ」、「約」、及び「実質的に」の用語は、記載された量の10%未満以内、5%未満以内、1%未満以内、0.1%未満以内、又は0.01%未満以内である量を意味し得る。
【0026】
「室温」の用語は、本明細書で用いられる場合、当業者に公知であるその一般的な意味を有し、約15℃~43℃の範囲内の温度を含み得る。
【0027】
「硬化」の用語は、本明細書で用いられる場合、約180℃~約220℃の範囲内の温度で少なくとも2時間にわたって硬化することを含む。
【0028】
成分(A)
成分(A)は、1分子あたり少なくとも2つのナフタレン部分及び少なくとも1つのグリシジルエーテル基(好ましくは、少なくとも2つのグリシジルエーテル基)を含有する1又は複数のエポキシ樹脂を含む。そのようなエポキシ樹脂は、本明細書において、「ポリナフタレン型エポキシ樹脂」と称される。「ナフタレン」の用語は、本明細書で用いられる場合、以下の構造で表されるように、互いに直接結合した2つのベンゼン環の構造を表す。
【化2】
【0029】
いかなるナフタレン型モノマー前駆体(ヒドロキシル置換ビナフタレンなど)から、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂などのグリシジル型エポキシ樹脂が形成されてもよい。前駆体のジグリシジルエーテルは、塩基性触媒の存在下で前駆体をエピクロロヒドリンと反応させることによって形成され得る。
【0030】
理論に束縛されるものではないが、本明細書で述べるエポキシ樹脂組成物の一部を形成するポリナフタレン型エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂組成物が硬化された場合に、低い吸水率、高い曲げ弾性率、及び高い耐熱性を提供するものと考えられる。上述の成分(A)は、エポキシ樹脂組成物が、特に熱/湿潤条件下で、非常に優れた性能を問題なく提供するために不可欠な成分である。
【0031】
ポリナフタレン型エポキシ樹脂は、少なくとも1つのグリシジルエーテル置換基が結合された1つのビナフタレン部分(2つのナフタレン構造単位を含有する部分)を含み得る。2つ以上のグリシジルエーテル置換基が、適切ないかなる位置で適切ないかなる組み合わせで、ビナフタレン部分に結合されていてもよい。ビナフタレン部分はまた、いずれかのナフタレン環にあるグリシジルエーテル未置換部位のいずれかに結合した非グリシジルエーテル置換基を有していてもよい。適切な非グリシジルエーテル置換基としては、限定されないが、水素原子、ハロゲン原子、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシル基、C~Cフルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールオキシル基、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。そのような非グリシジルエーテル置換基は、直鎖状、分岐鎖状、環状、又は多環状の置換基であってよく、これらの基は、所望に応じて個々に用いられ、又は異なる基が、所望に応じてそれらの組み合わせとして用いられる。
【0032】
ポリナフタレン型エポキシ樹脂は、直接又はメチレン基(-CH-)などの連結(架橋)部分によって互いに連結され、少なくとも1つのグリシジルエーテル基(好ましくは、少なくとも2つのグリシジルエーテル基)が1つのナフタレン環(又は、2つ以上のグリシジルエーテル基が存在する場合は複数のナフタレン環)に結合した(置換した)、2、3、4、又はそれ以上のナフタレン環を含有し得る。複数のナフタレン環は、所望に応じて、上述した種類の置換基のいずれをも含む1又は複数のさらなる置換基で置換されていてもよい。したがって、本発明の様々な実施形態では、成分(A)は、以下の式(III)で表される1又は複数のポリナフタレン型エポキシ樹脂を含んでよく:
【化3】
式中、nは、繰り返し単位の数を表して、1以上の整数であり(例:1~10);R~Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシル基、C~Cフルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールオキシル基から成る群より選択され、これらの基は、所望に応じて個々に用いられ、又は異なる基が、所望に応じてR~Rの各々として組み合わせて用いられ;Y及びYは、各々独立して、水素原子及びグリシジルエーテル基から成る群より選択され、これらの基は、所望に応じて個々に用いられ、又は異なる基が、所望に応じてY及びYの各々として組み合わせて用いられ;並びに各Xは、独立して、直接結合、-CH-、-C(CH-、-S-、-SO-、-O-、-C(=O)O-、-C(=O)-、-C(=O)NH-、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールオキシル基から成る群より選択され、これらの基は、所望に応じて個々に用いられ、又は異なる基が、所望に応じてXとして組み合わせて用いられる。
【0033】
別の実施形態では、成分(A)は、以下の式(I)で表される少なくとも1つのエポキシ樹脂を含んでよく:
【化4】
式中、R~R12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシル基、C1~C10フルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、及びグリシドキシ基から成る群より選択され、Y~Yは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシル基、C1~C10フルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、及びグリシドキシ基から成る群より選択されて、各ベンゼン核は、1又は複数のY基で置換されていてよく、nは、0又は1~5の整数であり、kは、0又は1~3の整数であり、Y基は、各ナフタレン核の一方又は両方の環に結合していてよく;並びに各Xは、独立して、直接結合、-CH-、-C(CH-、-S-、-SO-、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、C1~C6アルキレン基、C1~C6アルコキシレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びアリールオキシレン基から成る群より選択され、これらの基は、所望に応じて個々に用いられ、又は異なる基が、所望に応じてXとして組み合わせて用いられる。
【0034】
ナフタレン部分にあるグリシジルエーテル基は、各ナフタレン環の炭素原子のいずれに対しても、いかなる組み合わせで結合していてもよい。グリシジルエーテル基は、したがって、存在するいずれのナフタレン環の2、3、4、5、6、及び/又は7位に存在してもよく、2つ以上のグリシジルエーテル基がある場合は、エポキシ樹脂のいずれのナフタレン環にも、適切ないかなる組み合わせで存在してもよい。
【0035】
1分子あたり2つ以上のナフタレン部分を有するポリナフタレン型エポキシ樹脂を製造するために用いられ得る具体的な前駆体としては、例えば、1-(2-ヒドロキシ-ナフタレン-1-イルメチル)-ナフタレン-2-オール、1-(2-ヒドロキシ-ナフタレン-1-イルメチル)-ナフタレン-2,7-ジオール、1-(2-ヒドロキシ-ナフタレン-1-イルメチル)-ナフタレン-7-オール、1-(7-ヒドロキシ-ナフタレン-1-イルメチル)-ナフタレン-7-オール、1-(2,7-ジヒドロキシ-ナフタレン-1-イルメチル)-ナフタレン-2,7-ジオール、又はこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。そのような前駆体を、塩基性触媒を用いてエピクロロヒドリンと反応させ、前駆体のヒドロキシル基がエピクロロヒドリンと反応する結果として、所望されるグリシジルエーテル基を導入することができる。
【0036】
本発明で使用するのに適する具体的な例示的(非限定的)ポリナフタレン型エポキシ樹脂の化学構造を以下に示す。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0037】
そのような化学構造において、nは、繰り返し単位の数であり、1以上の整数である(例:1~5の整数)。
【0038】
上述のポリナフタレン型エポキシ樹脂のいずれか2つ以上が組み合わされて、成分(A)として用いられてもよい。
【0039】
成分(A)(ポリナフタレン型エポキシ樹脂)の量は、全エポキシ樹脂の100PHRあたり20~50PHRの範囲内であってよい。ある特定の実施形態では、ポリナフタレン型エポキシ樹脂の量は、全エポキシ樹脂の100PHRあたり25~40PHR又は25~35PHRの範囲内であってよい。この量が20PHR未満であると、吸水率が高くなる可能性があり、及び熱/湿潤曲げ弾性率が低くなる可能性がある。この量が50PHRを超えると、樹脂粘度が高くなって、FRC材料の取り扱い及び加工が困難となる可能性がある。
【0040】
成分(A)としての使用に適する市販品の例としては、「エピクロン(登録商標)」HP4700、HP4710、HP4770、EXA4701、EXA4750、及びEXA7240(大日本インキ化学工業株式会社製)、NC-7000L及びNC-7300L(日本化薬株式会社製)、並びにESN-175及びESN-375(東都化成エポキシ株式会社製)など、さらにはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
成分B
本発明によると、エポキシ樹脂はまた、成分(B)も含み、成分(B)は、硬化エポキシ樹脂組成物に高い耐熱性を付与することができる1若しくは複数のエポキシ樹脂を含むか、又は1若しくは複数のエポキシ樹脂である(すなわち、エポキシ樹脂組成物を、硬化された場合に、耐熱性とする補助となるエポキシ樹脂)。そのようなエポキシ樹脂は、本明細書において、「非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂」と称される。非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂は、2、3、又はそれ以上のエポキシ官能基を有し得る。ある特定の実施形態によると、非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂は、式(II)に相当する構造、及びそのオリゴマーを有してよく:
-C(Y)(Z)-X 式(II)
式中、X及びXは、同じであるか又は異なり、各々独立して、グリシジルエーテル置換フェニル基、及びヒドロキシル置換フェニル基から成る群より選択され;
i)Yは、グリシジルエーテル置換フェニル基、ヒドロキシル置換フェニル基、及び-C(H)(X)(X)から成る群より選択され、X及びXは、同じであるか又は異なり、各々独立して、グリシジルエーテル置換フェニル基、及びヒドロキシル置換フェニル基から成る群より選択され、X及びXは、X及びXと同じであるか又は異なり;並びにZは、Hであるか;又は
ii)C(Y)(Z)は、フルオレン基を表し、この場合、C(Y)(Z)においてCで表される炭素原子は、フルオレン基の9位に存在するか、
のいずれかであり、
但し、非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂が、1分子あたり少なくとも2つのグリシジルエーテル基を含むことが条件である。
【0042】
適切な非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂の具体的な代表例としては、限定されないが、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂(この場合、式(II)のYが、グリシジルエーテル置換フェニル基又はヒドロキシル置換フェニル基から選択され)、ZはHである、テトラ(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂(この場合、式(II)のYが、-C(H)(X3)(X4)であり、ZはHである、フルオレン型エポキシ樹脂(この場合、式(II)のC(Y)(Z)が、フルオレン基を表し、C(Y)(Z)においてCで表される炭素原子が、フルオレン基の9位に存在する)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。そのような非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂のフェニル環は、本発明のある特定の実施形態では、水素原子、ヒドロキシル基、及びグリシジルエーテル基以外の1又は複数の置換基で置換されていてもよい。そのようなエポキシ樹脂のオリゴマーが用いられてもよく、そのようなエポキシ樹脂のモノマー形態と組み合わせる場合を含む。エポキシ樹脂オリゴマーは、例えば、式(IV)に相当してよく:
GE-[X-C(Y)(Z)-X-OCHCH(OH)CHO]-GE 式(IV)
式中、GEは、グリシジルエーテルであり、nは、少なくとも1の整数であり(例:1~20)、各X、X、及びXは、同じであるか又は異なり、独立して、フェニル基、グリシジルエーテル置換フェニル基、及びヒドロキシル置換フェニル基から成る群より選択され;
i)Yは、フェニル基、グリシジルエーテル置換フェニル基、ヒドロキシル置換フェニル基、及び-C(H)(X)(X)から成る群より選択され、X及びXは、同じであるか又は異なり、各々独立して、グリシジルエーテル置換フェニル基、及びヒドロキシル置換フェニル基から成る群より選択され、X及びXは、X及びXと同じであるか又は異なり;並びにZは、Hであるか;又は
ii)C(Y)(Z)は、フルオレン基を表し、この場合、C(Y)(Z)においてCで表される炭素原子は、フルオレン基の9位に存在するか、
のいずれかである。
【0043】
理論に束縛されるものではないが、ポリナフタレン型エポキシ樹脂(A)及び非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂(B)の両方を組み合わせることにより、湿潤Tg及び弾性率の両方を高める相乗効果が生み出される。これは、部分的に、上記で述べたように、ナフタレン構造が、重合体構造中の全体としての空いた空間を減らすことによって水分の取り込みを低減することに起因するものと考えられる。そして、成分(B)によって湿潤Tgが高められる。成分(A)が単独で用いられた場合、それも湿潤Tgを高めはするが、通常は最大で僅かに180℃までである。成分(B)は、湿潤Tgを高めることが公知であるが、湿潤弾性率に対して逆の影響を与え、それを2.0GPa未満に制限する。
【0044】
成分(B)は、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂を含んでよい。トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂は、トリス(ヒドロキシフェニル)メタンのグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂であり、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン分子のヒドロキシル基の2つ以上が、エピクロロヒドリンとの反応によってグリシジルエーテル基に変換されたものであり、そのような物質のより高次のオリゴマーを含む(1分子あたり2つ以上のトリス(ヒドロキシフェニル)メタン構造単位を含有し得る)。トリス(p-ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテルは、適切なトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂の例である。そのようなエポキシ樹脂は、以下の構造を有し得る。
【化11】
【0045】
テトラ(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂は、テトラ(ヒドロキシフェニル)エタンのグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂であり、テトラ(ヒドロキシフェニル)エタン分子のヒドロキシル基の2、3、又は好ましくは4つすべてが、エピクロロヒドリンとの反応によってグリシジルエーテル基に変換されたものであり、そのような物質のより高次のオリゴマーを含む(1分子あたり2つ以上のテトラ(ヒドロキシフェニル)エタン構造単位を含有し得る)。テトラ(p-ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテルは、適切なテトラ(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂の例である。テトラ(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂の代表的なテトラグリシジルエーテルの構造は、以下のように表すことができ、式中、G=グリシジルである。
【化12】
【0046】
他の実施形態では、グリジシル基の1又は2つが、水素(H)に置き換えられて、フェニル環上に1又は2つのヒドロキシル置換基が提供され得る。テトラ(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂のテトラグリシジルエーテルのオリゴマーは、以下のように表すことができ、式中、G=グリシジルである。
【化13】
【0047】
フルオレン型エポキシ樹脂は、エポキシ官能基だけでなく、フルオレン(アルファ-ジフェニレンメタン)構造単位も含有するエポキシ樹脂である。適切なフルオレン型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェールフルオレン型エポキシ樹脂が挙げられ、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、さらには2つ以上のビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン構造単位を1分子あたりに含有するそのオリゴマーなどである。フルオレン型エポキシ樹脂は、本技術分野において公知であり、例えば、各々その全内容があらゆる点において参照により本明細書に援用されるKorshak et al., Vysokomol Soedin 1971, 13, 150;Lin et al., J Polym Sci Polym Chem Ed 1979, 17, 3121;及びChen et al., J Appl Polym Sci 1982, 27, 3289に記載されている。
【0048】
以下は、本発明の成分(B)中に又は成分(B)として用いるのに適するフルオレン型エポキシ樹脂の例である。
【化14】
【0049】
成分(B)(非直鎖状多フェニルエポキシ)の量は、全エポキシ樹脂の100PHRあたり10~35PHRの範囲内であってよい。ある特定の実施形態では、ナフタレン型エポキシ樹脂の量は、全エポキシ樹脂の100PHRあたり10~20PHRの範囲内であってよい。この量が10PHR未満であると、耐熱性が低過ぎる可能性がある。この量が35PHRを超えると、湿潤弾性率が低過ぎる可能性があり、及び粘度が高くなって、FRC材料の取り扱い及び加工が困難となる可能性がある。
【0050】
市販のトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂の例としては、Huntsman Advanced Materials製のTactix(登録商標)742、及びDIC株式会社製のEXA7250が挙げられる。
【0051】
市販のテトラ(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂の例としては、Huntsman Advanced Materials製のXB 4399-3が挙げられる。
【0052】
入手可能なフルオレン型エポキシ樹脂の例としては、Huntsman Advanced Materials製のLME 10169が挙げられる。
【0053】
成分(C)
本発明によると、エポキシ樹脂組成物は、架橋及びプロセス性を改善するための成分(C)も含み、成分(C)は、本明細書で定められ成分(A)として用いられるポリナフタレン型エポキシ樹脂以外であり、及び本明細書で定められ成分(B)として用いられる非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂以外である、1又は複数のエポキシ樹脂であるか、又は1又は複数のエポキシ樹脂を含む。成分(C)中で又は成分(C)として有用であるエポキシ樹脂は、少なくとも3つのエポキシ官能基を有する(エポキシ樹脂が、1分子あたり3つ以上のエポキシ基を含有することを意味する)。
【0054】
成分(C)は、樹脂組成物の全体としての特性を低下させることなくプロセス性を高めるために用いられる。これは、ほとんどのポリナフタレン型エポキシ樹脂及びほとんどの非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂が、室温で固体であり、加熱された場合に非常に低い最低粘度を有するために必要とされる。このような特性があると、材料をプリプレグの製造に用いる場合、エポキシ樹脂組成物の最終製剤を達成することができない。
【0055】
成分(C)として有用であるこれらのエポキシ樹脂(エポキシ)は、アミン(例:ジアミンと、少なくとも1つのアミン基及び少なくとも1つのヒドロキシル基を含有する化合物とを用いて製造されるエポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジルジアミノジフェニルアミド、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、及びテトラグリシジルキシリレンジアミン、並びにこれらのハロゲン置換生成物、アルキノール置換生成物、水素化生成物など)などの前駆体から製造されてよく、少なくとも3つのエポキシ官能基を有するナフタレン型エポキシ樹脂(1分子あたり単一のナフタレン部分のみを含有するエポキシ樹脂)、ビフェニル骨格及び少なくとも3つのエポキシ官能基を有するエポキシ樹脂、並びに少なくとも3つのエポキシ官能基を有するイソシアネート変性エポキシ樹脂であってもよい。成分(C)での使用に適するエポキシ樹脂が、上記の例に限定されないことには留意されたい。これらのエポキシ樹脂をハロゲン化することによって製造されるハロゲン化エポキシ樹脂が用いられてもよい。
【0056】
成分(C)として又は成分(C)中に有用である市販品の例としては:YH434L(新日鉄化学株式会社製)、「jER(登録商標)」604(三菱ケミカル株式会社製)、TG3DAS(小西化学工業株式会社製)、「スミエポキシ(登録商標)」ELM434及びELM100(住友化学株式会社製)、「アラルダイト(登録商標)」MY 9655T、MY 720、MY 721、MY 722、MY 0500、MY 0510、MY 0600、及びMY 0610(Huntsman Advanced Materials製)、「jER(登録商標)」630(三菱ケミカル株式会社製)、並びにTETRAD-X及びTETRAD-C(三菱ガス化学株式会社製)などのアミン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0057】
実施形態のいくつかでは、上述の成分(C)は、互いに異なるエポキシ樹脂である成分(C1)及び成分(C2)を含んでよく、この場合、成分(C1)は、1分子あたり3つ以上のエポキシ官能基を有するエポキシ樹脂であり、成分(C2)は、成分(C1)とは異なる、1分子あたり2つ以上のエポキシ官能基を有するエポキシ樹脂である。理論に束縛されるものではないが、成分(C)のエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂組成物が硬化されると、高い架橋及び高い強度を提供するものと考えられる。また、成分(C)のエポキシ樹脂は、ハンドリング性及びタックのために、高い伸び及び低い粘度の樹脂を提供するとも考えられる。「ハンドリング性」とは、材料を容易に取り扱い、加工することができることを意味する。
【0058】
成分(C)の量は、全エポキシ樹脂の100PHRあたり30~80PHRの範囲内であってよい(すなわち、成分(C)は、組成物中のエポキシ樹脂の合計量の100重量部あたり30~80重量部の量で存在してよい)。この量が30PHR未満であると、得られるFRC材料の強度が損なわれ得る。この量が80PHRを超えると、吸水率が高くなる可能性があり、得られるFRC材料が低い圧縮強度を有する可能性がある。
【0059】
エポキシ樹脂組成物の40℃での粘度は、未硬化FRCプリプレグのハンドリング性及びプロセス性の両方を実現し、同時に硬化FRCの力学特性を維持するためには、1×10~3×10Pa・sであってよい。40℃での粘度が低過ぎると、タックが高過ぎる可能性があるために、ハンドリング性が損なわれ得る。40℃での粘度が高過ぎると、タックが低過ぎる可能性があり、プリプレグが過度に脆性となることから、未硬化FRCの成形性が不充分であり得る。また、エポキシ樹脂組成物の最低粘度は、1Pa・s超であるべきである。最低粘度が低過ぎると、樹脂の流動性が高過ぎ、特別の取り扱い及び成形の手順が必要となり、材料の処理が困難となる(ブリードアウトによって失われる樹脂が多くなり過ぎるなどによる)。エポキシ樹脂組成物の粘度は、直径40mmのパラレルプレートを用いた動的粘弾性測定装置(ARES、TA Instruments製)を用い、ひずみ10%、周波数0.5Hz、及びプレート間隔1mmで、速度2℃/分で40℃から150℃まで昇温して測定した。エポキシ樹脂組成物の粘度は、組成物に用いるための特定の成分を選択することによって、所望され得るように調節及び制御されてよい。特に、成分(A)、(B)、及び(C)として存在するエポキシ樹脂の種類及び相対的割合は、組成物全体の粘度を調節するために、必要に応じて変動されてよい。例えば、40℃で比較的低い粘度を有する成分(C)は、他の成分が存在することに起因して、成分(C)がなければ好ましい粘度よりも高い40℃での粘度を有することになるエポキシ樹脂組成物の粘度を低下させる目的で導入され得る。
【0060】
成分(A)、(B)、(C)、及び(D)を含む硬化エポキシ樹脂組成物は、少なくともある特定の実施形態では、210℃、2時間で硬化して、少なくとも90%の硬化度(「DoC」)を実現することができる。硬化度が90%未満であると、樹脂硬化物は、低い耐熱性を有することになり、得られるFRC材料は、低い力学特性を有することになる。エポキシ樹脂組成物のDoCは、示差走査熱量計(DSC、TA Instruments製)を用いることによって特定することができる。DoC値は、未硬化樹脂の発熱ピーク面積(ΔHuncured)を、樹脂硬化物の残存発熱ピーク面積(ΔHcured)と実験的に比較することによって得られる。本明細書において、DoCは、以下の式から算出することができる:
【数1】
式中 ΔHuncured=未硬化樹脂の発熱ピーク面積
ΔHcured=樹脂硬化物の発熱ピーク面積
【0061】
成分(A)を含むエポキシ樹脂組成物は、硬化された場合、121℃で少なくとも1.9GPaの熱/湿潤曲げ弾性率も有し得る。他の実施形態では、121℃での熱/湿潤曲げ弾性率は、少なくとも2.0GPaである。さらに他の実施形態では、硬化エポキシ樹脂組成物は、121℃で少なくとも2.1GPaの熱/湿潤曲げ弾性率を有する。121℃での熱/湿潤曲げ弾性率が1.9GPa未満であると、得られるFRC材料は、低い圧縮強度を有することになる。硬化エポキシ樹脂の曲げ弾性率は、ASTM D 7264に従ってInstron製のInstron Universal Testing Machineを用いた3点曲げ試験によって特定することができる。
【0062】
成分(D)
硬化剤としては、アミン系硬化剤(又は、異なるアミン系硬化剤の組み合わせ)が、エポキシ樹脂組成物を硬化するために適している。アミン系硬化剤は、分子内に少なくとも1つの窒素原子を含有する化合物であり(すなわち、それはアミン含有硬化剤である)、硬化のためにエポキシ樹脂のエポキシ基と反応することができる。窒素原子は、1級アミノ基及び/又は2級アミノ基の形態であってよい。理論に束縛されるものではないが、本実施形態で用いられるアミン系硬化剤は、高い耐熱性及び保存安定性を提供するものと考えられる。
【0063】
実施形態のいくつかでは、成分(D)は、少なくとも1つの芳香族ポリアミン硬化剤、すなわち、1分子あたり2つ以上のアミン基及び1又は複数の芳香族環を含有する硬化剤、を含む。成分(D)に適する1つの種類の芳香族ポリアミン硬化剤は、ジアミノジフェニルスルホンである。適切なジアミノジフェニルスルホンの具体的な代表例としては、限定されないが、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)及び3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)及びこれらの組み合わせが挙げられる。本発明のある特定の実施形態では、成分(D)は、1又は複数のジアミノジフェニルスルホンから成る、又は本質的に成る。そのような実施形態では、ジアミノジフェニルスルホンは、エポキシ樹脂組成物中に存在する唯一の種類の硬化剤であるか、又は硬化剤の全量の少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、若しくは少なくとも99重量%を成す。
【0064】
ほとんどの実施形態では、ジアミノジフェニルスルホンを用いることが特に有利である。これは、それが非常に良好な潜在性を有して、特にプリプレグに用いられた場合に、長期間にわたって周囲温度でプリプレグを保存することが可能となることに起因する。また、樹脂材料の高温での加工時に、材料が非常に良好な安定性も有する。ジアミノジフェニルスルホンはまた、高い温度での良好な耐溶媒性及び耐水分性などの良好な硬化後特性も有する。
【0065】
ジアミノジフェニルスルホン単独を硬化剤として用いる場合、成分(D)の量は、活性水素対エポキシ基のモル比を0.8:1~1.2:1の範囲内とするのに有効であるような量で存在し、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)は、活性水素対エポキシ基のモル比を0.8:1~1.2:1の範囲内とするのに有効であるような合計量で存在する。
【0066】
このモル比が0.8未満であると、エポキシ反応部分に対するエポキシの量が増加し、FRC材料のTg及び力学特性の両方が低下する。このモル比が1.2を超えると、未反応のアミン硬化剤が過剰となることにより、硬化度が不充分となり得る。したがって、得られるFRC材料の力学特性も、悪影響を受ける可能性がある。
【0067】
成分(D)としての使用に適する市販品の例としては、「Aradur(登録商標)」9664-1及び9791-1(Huntsman Advanced Materials製)が挙げられる。
【0068】
他の実施形態では、本発明の効果が損なわれない限りにおいて、上述のジアミノジフェニルスルホン以外の何らかの硬化剤が、エポキシ樹脂組成物に添加されてもよい。他の硬化剤の例としては、ポリアミド、芳香族アミドアミン(例:アミノベンズアミド、アミノベンズアニリド、及びアミノベンゼンスルホンアミド)、芳香族ジアミン(例:ジアミノジフェニルメタン、及びm-フェニレンジアミン)、3級アミン(例:N-N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、及び2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール)、アミノベンゾエート(例:トリメチレングリコールジ-p-アミノベンゾエート及びネオペンチルグリコールジ-p-アミノ-ベンゾエート)、脂肪族アミン(例:ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ポリエチレンイミンのダイマー酸エステル)、イミダゾール誘導体(例:2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール)、カルボン酸無水物(例:メチルヘキサヒドロフタル酸無水物)、カルボン酸ヒドラジド(例:アジピン酸ヒドラジド、ナフタレンカルボン酸ヒドラジド)、テトラメチルグアニジン、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ポリスルフィド及びメルカプタン、並びにルイス酸及び塩基(例:三フッ化ホウ素エチルアミン及びトリス(ジエチルアミノメチル)フェノール)などが挙げられる。例えば、成分(D)がジアミノジフェニルスルホン又はジシアンジアミド及びジアミノジフェニルスルホンから成る実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、所望に応じて、追加として、上述の硬化剤の1又は複数を含有してもよい。しかし、他の実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、上述のジアミノジフェニルスルホン以外のいかなる硬化剤も含有しない。
【0069】
ある特定の実施形態では、硬化プロファイルは、本発明の効果が損なわれない限りにおいて、特に限定されない。より高いTgが所望される場合、エポキシ樹脂組成物は、より高い温度で硬化されてよい。例えば、エポキシ樹脂組成物は、この組成物が210℃で2時間硬化された場合、190℃以上の湿潤Tgを有し得る。他の実施形態では、湿潤Tgは、200℃よりも高い。さらに他の実施形態では、湿潤Tgは、210℃よりも高い。硬化エポキシ樹脂のTgは、ねじりモードでの動的粘弾性測定装置(torsional Dynamic Mechanical Analyzer)(ARES、TA Instruments製)を用いることによって特定することができる。
【0070】
ある特定の実施形態では、上述の成分(A)~(D)を含むエポキシ樹脂組成物は、65℃で2時間保持された場合、初期粘度の2倍未満の粘度の上昇(65℃で測定)を呈し得る。粘度上昇が2倍未満であると、樹脂組成物は安定であると見なされ得る。粘度上昇が2倍を超えると、樹脂組成物は不安定であると見なされ得、保管寿命が短くなり得る。樹脂の粘度上昇は、動的粘弾性測定装置(ARES、TA instruments製)のパラメータを、粘度測定のための同じ方法に従って設定し、ある特定の時間にわたって所望される温度に、この場合は2時間にわたって65℃に保持することによって測定することができる。粘度上昇は、以下の式を用いて算出される:
【数2】
ηinitialは、65℃での樹脂の初期粘度である。
ηfinalは、65℃で2時間後の樹脂の最終粘度である。
【0071】
ある特定の実施形態では、上記の成分(A)~(D)を含むエポキシ樹脂組成物は、良好な熱分解安定性を呈し得る。硬化エポキシ樹脂組成物が、210℃で2時間硬化され、続いて対流式オーブン中において180℃で1000時間にわたって熱に掛けられ(「熱浸漬」)、重量喪失が1.0%未満である場合、それは良好な熱安定性を有すると見なされる。本発明の他の実施形態では、硬化エポキシ樹脂組成物は、180℃で1000時間の熱浸漬後に、0.7%未満の熱分解を有する。さらに他の実施形態では、硬化エポキシ樹脂組成物は、180℃で1000時間の熱浸漬後に、0.5%未満の熱分解を有する。
【0072】
本発明の効果が損なわれない限りにおいて、熱可塑性樹脂がエポキシ樹脂組成物中に含まれてもよい。例えば、エポキシ樹脂組成物は、全エポキシ樹脂の100PHRあたり、少なくとも1PHR若しくは少なくとも5PHRの熱可塑性樹脂、及び/又は30PHR以下若しくは25PHR以下若しくは20PHR以下の熱可塑性樹脂を含有してよい(すなわち、エポキシ樹脂組成物は、組成物中のエポキシ樹脂の合計量の100重量部あたり、少なくとも1重量部若しくは少なくとも5重量部、及び/又は30重量部以下若しくは25重量部以下若しくは20重量部以下の熱可塑性樹脂を含んでよい)。理論に束縛されるものではないが、熱可塑性樹脂は、硬化エポキシ樹脂組成物に、最大破壊靱性及び耐衝撃性を付与するものと考えられる。そのような熱可塑性樹脂としては、限定されないが、エラストマー、分岐鎖状重合体、多分岐高分子、デンドリマー、ゴム状重合体、ゴム状共重合体、及びブロック共重合体、並びに表面修飾若しくは官能化あり又はなしでのコアシェル粒子が挙げられる。適切な熱可塑性樹脂の例としては、エポキシ樹脂中に可溶性である熱可塑性樹脂、並びにゴム粒子及び熱可塑性樹脂粒子などの有機粒子が挙げられる。エポキシ樹脂中に可溶性である熱可塑性樹脂としては、硬化エポキシ樹脂と強化繊維との間の接着性を改善する効果を有し得る水素結合官能基を有する熱可塑性樹脂が用いられてよい。エポキシ樹脂中に可溶性であり、水素結合官能基を有する熱可塑性樹脂の例としては、1又は複数のアルコール性ヒドロキシ基を有する熱可塑性樹脂、1又は複数のアミド結合を有する熱可塑性樹脂、及び1又は複数のスルホニル基を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。さらに、熱可塑性樹脂は、結晶性又は非晶性であってよい。
【0073】
ヒドロキシ基を有する熱可塑性樹脂の例としては、ポリビニルホルマール及びポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、並びにフェノキシ樹脂が挙げられる。アミド結合を有する熱可塑性樹脂の例としては、ポリアミド、ポリイミド樹脂、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。1又は複数のスルホニル基を有する熱可塑性樹脂の例は、ポリスルホンである。ポリアミド、ポリイミド樹脂、及びポリスルホンは、エーテル結合及びカルボニル基などの官能基をその主鎖中に有し得る。ポリアミドは、アミド基の窒素原子上に置換基を有していてよい。
【0074】
エポキシ樹脂に可溶性であり、水素結合官能基を有する市販の熱可塑性樹脂の例としては:「デンカブチラール(登録商標)」及び「デンカホルマール(登録商標)」(電気化学工業株式会社製)並びに「ビニレック(登録商標)」(JNC株式会社製)などのポリビニルアセタール樹脂;「UCAR(登録商標)」PKHP(Union Carbide Corporation製)などのフェノキシ樹脂;「マクロメルト(登録商標)」(ヘンケル白水株式会社製)及び「アミラン(登録商標)」CM4000(東レ株式会社製)などのポリアミド樹脂;「ウルテム(登録商標)」1000P(General Electric Co.,Ltd.製)及び「Matrimid(登録商標)」5218(Ciba Inc.製)などのポリイミド樹脂;「スミカエクセル(登録商標)」PES5003P(住友化学株式会社製)、「UDEL(登録商標)」(Solvay Advanced Polymers株式会社製)、及び「Virantage(登録商標)VW-10700REP(Solvay Plastics製)などのポリスルホン;並びに「ルビスコール(登録商標)」(BASFジャパン株式会社製)などのポリビニルピロリドンが挙げられる。適切なポリエーテルスルホンは、例えば、約10000~約75000g/molの数平均分子量を有し得る。
【0075】
ある特定の実施形態において、本発明の効果が損なわれない限りにおいて、いかなる種類の添加剤が添加されてもよい。ゴム粒子が添加されてもよい。ゴム粒子の場合、ハンドリング特性の観点から、架橋ゴム粒子、及び架橋ゴム粒子の表面上に異なる重合体をグラフト重合することによって製造されるコアシェルゴム粒子が用いられ得る。
【0076】
市販の架橋ゴム粒子の例としては、カルボキシル変性ブタジエン-アクリロニトリル共重合体の架橋生成物を含むFX501P(日本合成ゴム株式会社製)、並びに各々アクリルゴムマイクロ粒子を含むCX-MNシリーズ(株式会社日本触媒製)及びYR-500シリーズ(新日鉄化学株式会社製)が挙げられる。
【0077】
市販のコアシェルゴム粒子製品の例としては、ブタジエン-アルキルメタクリレート-スチレン共重合体を含む「パラロイド(登録商標)」EXL-2655(株式会社クレハ製)、各々アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体を含む「スタフィロイド(登録商標)」AC-3355及びTR-2122(武田薬品工業株式会社製)、各々ブチルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体を含む「PARALOID(登録商標)」EXL-2611及びEXL-3387(Rohm & Haas製)、並びに「カネエース(登録商標)」MXシリーズ(株式会社カネカ製)が挙げられる。
【0078】
アクリル樹脂は、エポキシ樹脂との非相溶性が高く、したがって、粘弾性の制御に適切に用いられ得る。市販のアクリル樹脂製品の例としては、「ダイヤナール(登録商標)」BRシリーズ(三菱レイヨン株式会社製)、「マツモトマイクロスフィア(登録商標)」M、M100、及びM500(松本油脂製薬株式会社製)、並びに「Nanostrength(登録商標)」E40F、M22N、及びM52N(Arkema製)が挙げられる。
【0079】
熱可塑性樹脂粒子の場合、ポリアミド粒子及びポリイミド樹脂粒子が用いられ得る。ポリアミド粒子は、その非常に優れた靭性に起因して硬化エポキシ樹脂組成物の耐衝撃性を大きく高めることから、最も好ましい。ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン6、ナイロン6/12共重合体、及び特開平01-104624号の実施例1に開示されるようにセミIPN(相互侵入高分子網目構造)を有するようにエポキシ化合物で修飾されたナイロン(セミIPNナイロン)が、エポキシ樹脂との組み合わせで特に良好な接着強度を付与する。適切な市販のポリアミド製品の例としては、SP-500(東レ株式会社製)及び「オルガソール(登録商標)」(Arkema製)、「Grilamid(登録商標)」TR-55(EMS-Grivory製)、及び「トロガミド(登録商標)」CX(Evonik製)が挙げられる。
【0080】
さらに、本発明の効果が損なわれない限りにおいて、クレイなどのいかなる種類の無機粒子がエポキシ樹脂組成物中に含まれてもよい。適切な無機粒子の例としては、金属酸化物粒子、金属粒子、及び鉱物粒子が挙げられる。無機粒子は、硬化エポキシ樹脂組成物の1又は複数の性能を改善するために、及び硬化エポキシ樹脂組成物に1又は複数の性能を付与するために用いられ得る。そのような性能の例としては、表面硬度、耐ブロッキング性、耐熱性、バリア性、導電性、静電気防止性、電磁波吸収、UVシールド、靭性、耐衝撃性、及び低い線形熱膨張係数が挙げられる。他の適切な無機材料の例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、及びガラスバルーンが挙げられる。
【0081】
適切な金属酸化物の例としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ、及びフッ素ドープ酸化スズが挙げられる。適切な金属の例としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、亜鉛、及びステンレスが挙げられる。適切な鉱物の例としては、モンモリロナイト、タルク、マイカ、ベーマイト、カオリン、スメクタイト、ゾノトライト、バーミキュライト、及びセリサイトが挙げられる。
【0082】
他の適切な炭素質材料の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバー、カーボンナノビーズ、フラーレンなどが挙げられる。
【0083】
いかなるサイズの無機粒子が用いられてもよく、例えば、無機粒子は、1nm~10μmの範囲内であるサイズを有していてよい。いかなる形状の無機粒子が用いられてもよく、例えば、無機粒子は、球状、針、板、バルーン、又は中空の形状であってよい。無機粒子は、単に粉末のように用いられてよく、又は溶媒状のゾル若しくはコロイド中の分散体として用いられてもよい。さらに、無機粒子の表面がカップリング剤で処理されて、エポキシ樹脂との分散性及び界面親和性が改善されてもよい。
【0084】
ある特定の実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、本発明の効果が損なわれない限りにおいて、上述の材料に加えて1又は複数の他の材料を含有していてもよい。他の材料の例としては、離型剤、表面処理剤、難燃剤、抗菌剤、レベリング剤、消泡剤、チクソトロピー剤、熱安定剤、光安定剤、UV吸収剤、顔料、カップリング剤、及び金属アルコキシドが挙げられる。
【0085】
本発明に従う特に有利なエポキシ樹脂組成物としては、以下を含む、以下から本質的に成る、又は以下から成るエポキシ樹脂組成物が挙げられる:
(A)全エポキシ樹脂の100PHRあたり合計で少なくとも20PHRの、式(I)を有し、
【化15】
式中、R~R12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシル基、C1~C10フルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、及びグリシドキシ基から成る群より選択され、Y~Yは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシル基、C1~C10フルオロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、及びグリシドキシ基から成る群より選択されて、各ベンゼン核は、1又は複数のY基で置換されていてよく、nは、0又は1~5の整数であり、kは、0又は1~3の整数であり、Y基は、各ナフタレン核の一方又は両方の環に結合していてよく;並びに各Xは、独立して、直接結合、-CH-、-C(CH-、-S-、-SO-、-O-、-C(=O)O-、-C(=O)-、-C(=O)NH-、C1~C6アルキレン基、C1~C6アルコキシレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びアリールオキシレン基から成る群より選択され、これらの基は、所望に応じて個々に用いられ、又は異なる基が、所望に応じてXとして組み合わせて用いられる、
少なくとも1つのポリナフタレン型エポキシ樹脂;
(B)全エポキシ樹脂の100PHRあたり合計で少なくとも10PHRの量の、トリス及びより高次の(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂、テトラ(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、これらのオリゴマー、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される3つ以上のエポキシ官能基を有する少なくとも1つの非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂;
(C)ポリナフタレン型エポキシ樹脂又は非直鎖状多フェニルエポキシ樹脂のいずれでもなく、ジアミン又は1分子あたり少なくとも1つのアミン基と少なくとも1つのヒドロキシル基とを含有する化合物のグリシジルエーテルである、少なくとも3つのエポキシ官能基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂;
(D)少なくとも1つのジアミノジフェニルスルホンを含む少なくとも1つの硬化剤であって、成分(D、並びに成分(A)、(B)、及び(C)は、活性水素:エポキシ基のモル比を0.8:1~1.2:1とするのに有効な量で存在する、少なくとも1つの硬化剤;
(E)全エポキシ樹脂の100PHRあたり5~30PHRの量のポリエーテルスルホンから成る群より選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂;並びに
(F)所望に応じて存在してよい有機粒子。
【0086】
エポキシ樹脂組成物の成分は、ニーダー、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、2軸押出機などで混合されてよい。硬化剤及び触媒を除くエポキシ樹脂及びいずれかの熱可塑性樹脂が、選択された装置に投入される。次に、混合物は、エポキシ樹脂が均一に溶解するように撹拌しながら、130~180℃の範囲内の温度に加熱される。この後、混合物は、撹拌しながら100℃以下の温度まで冷却され、続いて硬化剤及び触媒が添加され、これらの成分を分散するために混練される。この方法を用いて、非常に優れた保存安定性を有するエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0087】
本発明の効果が損なわれない限りにおいて、用いることができる強化繊維の種類に関して特別な制限又は限定はない。例としては、Sガラス、S-1ガラス、S-2ガラス、S-3ガラス、E-ガラス、及びL-ガラス繊維などのガラス繊維、炭素繊維、及びグラファイト繊維、アラミド繊維などの有機繊維、ホウ素繊維、アルミナ繊維などの金属繊維、炭化ケイ素繊維、炭化タングステン繊維、並びに天然/バイオ繊維が挙げられる。特に、炭素繊維を使用すると、並外れて高い強度及び剛性を有し、軽量でもある硬化FRC材料を提供することができる。適切な炭素繊維の例は、東レ株式会社製で、約200~250GPaの標準弾性率を有するもの(トレカ(登録商標)T300、T300J、T400H、T600S、T700S、T700G)、約250~300GPaの中間弾性率を有するもの(トレカ(登録商標)T800H、T800S、T1000G、M30S、M30G)、又は300GPaよりも高い高弾性率を有するもの(トレカ(登録商標)M40、M35J、M40J、M46J、M50J、M55J、M60J)である。これらの炭素繊維の中でも、標準弾性率、4.9GPa以上の強度、及び2.1%以上の伸びを有する炭素繊維が、例で用いられる。
【0088】
用いられる強化繊維の層の形態及び配列は、特に限定されない。一方向の長繊維、ランダム配向のチョップド繊維、単一トウ、狭いトウ(narrow tow)、織物、マット、編物、及び組み紐など、強化繊維の本技術分野において公知である形態及び空間配列のいずれが用いられてもよい。「長繊維」の用語は、本明細書で用いられる場合、10mm以上の長さにわたって実質的に連続している単一繊維、又はその単一繊維を複数含む繊維束を意味する。「短繊維」の用語は、本明細書で用いられる場合、10mmよりも短い長さに切断された繊維を含む繊維束を意味する。特に、高い比強度及び高い比弾性率が所望される最終用途では、強化繊維束が一方向に配列されている形態が最も適し得る。取り扱いの容易さという観点から、布状(織物)の形態も、本発明において適する。
【0089】
本発明のFRC材料は、プリプレグ積層成形法、樹脂トランスファー成形法、樹脂フィルム注入法、ハンドレイアップ法、シートモールディングコンパウンド法、フィラメントワインディング法、及びプルトルージョン法などの方法を用いて製造されてよいが、これに関して特別な制限又は限定は適用されない。
【0090】
樹脂トランスファー成形法は、強化繊維ベース材料が、液体熱硬化性樹脂組成物で直接含浸され、硬化される方法である。この方法は、プリプレグなどの中間品が関与しないことから、成形コスト削減の多大な可能性を有し、宇宙船、航空機、鉄道車両、自動車、船舶などのための構造材の製造に有利に用いられる。
【0091】
プリプレグ積層成形法は、強化繊維ベース材料を熱硬化性樹脂組成物で含浸することによって製造されたプリプレグが、成形及び/又は積層され、続いて、成形及び/又は積層されたプリプレグに加熱加圧を適用することで樹脂が硬化されてFRC材料が得られる方法である。
【0092】
フィラメントワインディングは、1から数十の強化繊維ロービングが、所定の角度での張力下、回転する金属芯金(マンドレル)の周りに巻き付けられながら、一緒に一方向に延伸され、熱硬化性樹脂組成物で含浸される方法である。ロービングの巻き付けが所定の厚さに到達すると、それは硬化され、次に金属芯金が取り除かれる。
【0093】
プルトルージョン法は、強化繊維が、液体熱硬化性樹脂組成物で満たされた含浸槽に連続的に通されて熱硬化性樹脂組成物によってそれらが含浸され、続いて、成形及び硬化のためにスクイズ金型及び加熱金型を通して加工され、引張機を用いて含浸強化繊維が連続的に延伸される方法である。この方法は、FRC材料を連続的に成形するという利点を提供することから、釣り竿、棒状体、パイプ、シート、アンテナ、建築構造物などのためのFRC材料の製造に用いられる。これらの方法の中でも、得られるFRC材料に非常に優れた剛性及び強度を与えるために、プリプレグ積層成形法が用いられてよい。
【0094】
プリプレグは、エポキシ樹脂組成物及び強化繊維を含有してよい。そのようなプリプレグは、強化繊維ベース材料を本発明のエポキシ樹脂組成物で含浸することによって得られ得る。含浸法は、ウェット法、及びホットメルト法(ドライ法)を含む。
【0095】
ウェット法は、強化繊維がまず、メチルエチルケトン又はメタノールなどの溶媒中にエポキシ樹脂組成物を溶解することによって作製されるエポキシ樹脂組成物の溶液中に浸漬され、取り出され、続いて、オーブンによる蒸発などによって溶媒が除去されて、強化繊維がエポキシ樹脂組成物で含浸される方法である。ホットメルト法は、加熱によって予め流動状とされたエポキシ樹脂組成物で強化繊維を直接含浸することによって、又は樹脂フィルムとして用いるために離型紙などをエポキシ樹脂組成物でまずコーティングし、次に平坦形状に配列された強化繊維の一方又は両側上にフィルムを配置し、続いて加熱加圧を適用して強化繊維を樹脂で含浸することによって実行され得る。ホットメルト法は、中に実質的に残留溶媒を有しないプリプレグを与え得る。
【0096】
プリプレグは、40~500g/mの炭素繊維の目付を有してよい。炭素繊維の目付が40g/m未満であると、繊維含有率が不充分となる可能性があり、FRC材料の強度が低くなり得る。炭素繊維の目付が500g/m超である場合、プリプレグのドレープ性が損なわれ得る。プリプレグはまた、20~70重量%の樹脂含有率を有していてもよい。樹脂含有率が20重量%未満であると、含浸が不充分となる可能性があり、多数のボイドが発生し得る。樹脂含有率が70重量%超であると、FRCの力学特性が損なわれることになる。
【0097】
適切な加熱加圧が、プリプレグ積層成形法、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法などの下で用いられてよい。
【0098】
オートクレーブ成形法は、プリプレグが所定の形状のツールプレート上で積層され、次にバッギングフィルムで覆われ、続いて空気が積層体から引き抜かれながら加熱加圧が適用されることによる硬化が行われる方法である。それは、繊維配向の精密な制御を可能とし得るものであり、さらには、ボイド含有率を最小限に抑えることによって、非常に優れた力学特性を有する高品質の成形された材料を提供し得る。成形プロセスの過程で適用される圧力は、0.3~1.0MPaであってよく、一方成形温度は、90~300℃の範囲内であってよい(本発明の1つの実施形態では、200℃~220℃を例とする180℃~220℃の範囲内である)。
【0099】
ラッピングテープ法は、プリプレグが、マンドレル又は他の何らかの芯金の周りに巻き付けられて、管状FRC材料が形成される方法である。この方法は、ゴルフシャフト、釣り竿、及び他の棒形状品の製造に用いられ得る。より具体的には、この方法は、マンドレルの周りにプリプレグを巻き付け、プリプレグを固定してそれに圧力を適用する目的で、熱可塑性プラスチックフィルムから成るラッピングテープを張力下でプリプレグ上に巻き付けることを含む。オーブン中での加熱による樹脂の硬化後、芯金が取り除かれて、管状体が得られる。ラッピングテープの巻き付けに用いられる張力は、20~100Nであってよい。硬化温度は、90~300℃の範囲内であってよい(本発明の1つの実施形態では、200℃~220℃を例とする180℃~220℃の範囲内である)。
【0100】
内圧成形法は、熱可塑性樹脂チューブ又は他の何らかの内圧アプリケーターの周りにプリプレグを巻き付けることによって得られるプリフォームが、金属モールド内部にセットされ、続いて内圧アプリケーター中に高圧ガスが導入されて圧力が適用され、それに付随して同時に金属モールドが加熱されてプリプレグが成形される方法である。この方法は、ゴルフシャフト、バット、及びテニス又はバドミントンラケットなどの複雑な形状を有する物体を成形する際に用いられ得る。成形プロセスの過程で適用される圧力は、0.1~2.0MPaであってよい。成形温度は、室温~300℃、又は180~275℃の範囲内であってよい(本発明の1つの実施形態では、200℃~220℃を例とする180℃~220℃の範囲内である)。
【0101】
本発明のエポキシ樹脂組成物から得られる硬化エポキシ樹脂組成物及び強化繊維を含有するFRC材料は、有利には、一般産業用途、さらには航空宇宙用途に用いられる。FRC材料はまた、スポーツ用途(例:ゴルフシャフト、釣り竿、テニス又はバドミントンラケット、ホッケースティック、及びスキー用ストック)、及び移動体用の構造材(例:自動車、自転車、船舶、及び鉄道車両、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラー、屋根材、ケーブル、及び補修/補強材)などの他の用途にも用いられ得る。
【0102】
本明細書中において、明確で簡潔な明細書の作成が可能となる方法で実施形態を記載してきたが、実施形態は、本発明から逸脱することなく、様々に組み合わされ、又は分離され得ることを意図しており、そのことは理解される。例えば、本明細書で述べるすべての好ましい特徴は、本明細書で述べる本発明のすべての態様に適用可能であることは理解される。
【0103】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書において、組成物又はプロセスの基礎的で新規な特徴に実質的に影響を与えることのないいずれの要素又はプロセス工程も除外するものとして解釈され得る。加えて、いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書において指定されないいずれの要素又はプロセス工程も除外するものとして解釈され得る。
【0104】
本発明は、本明細書において具体的な実施形態を参照して説明され、記載されるが、本発明は、示される詳細事項に限定されることを意図するものではない。そうではなく、請求項の均等物の範囲内で、本発明から逸脱することなく、その詳細事項に様々な改変が成されてもよい。
【実施例
【0105】
本発明の実施形態を、以降、例としてより詳細に記載する。様々な特性の測定は、以下で述べる方法を用いて行った。これらの特性は、特に断りのない限り、23℃の温度及び50%の相対湿度を含む環境条件下で測定した。例で用いた成分は、以下の通りである。
【0106】
トレカ T700G-12K-31E 一方向炭素繊維(登録商標、東レ株式会社製)、繊維数12000、引張強度4900MPa、引張弾性率240GPa、及び引張伸び1.8%。
NC-7000L(登録商標、日本化薬製)、エポキシ当量(EEW)227g/当量。
「エピクロン」(登録商標)HP-4770(DIC株式会社製)、エポキシ当量(EEW)205g/当量。
NC-7000H(日本化薬製)、エポキシ当量(EEW)227g/当量。
「エピクロン」(登録商標)HP-5000L(DIC株式会社製)、平均エポキシ当量(EEW)252g/当量。
4-グリシジルオキシ-N,N-ジグリシジルアニリン、「アラルダイト(登録商標)」MY 0510(Huntsman Advanced Materials製)、平均エポキシ当量(EEW)101g/当量。
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、「アラルダイト(登録商標)」MY 721(Huntsman Advanced Materials製)、平均エポキシ当量(EEW)112g/当量。
XB4399-3(Huntsman Advanced Materials製)、平均エポキシ当量(EEW)228g/当量。
「エピクロン(登録商標)」EXA-7250(DIC株式会社製)、平均エポキシ当量(EEW)162g/当量。
EPPN-501H(日本化薬製)、平均エポキシ当量(EEW)167g/当量。
「Epon(登録商標)」828(Hexion製)、エポキシ当量(EEW)175~180g/当量を有するビスフェノールA型エピクロロヒドリンエポキシ樹脂である。
N,N-ジグリシジルアニリン(GAN)、「Technirez(登録商標)」GAN(ACCI Specialty Materials製)、平均エポキシ当量(EEW)115g/当量。
4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)、「Aradur(登録商標)」9664-1(Huntsman Advanced Materials製)。
3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、「Aradur(登録商標)」9791-1(Huntsman Advanced Materials製)。
ポリエーテルスルホン、「Virantage(登録商標)」VW10700RFP ポリエーテルスルホン(Solvay Advanced Polymers製)、数平均分子量21000g/モル。
「スミカエクセル(登録商標)」PES5003P ポリエーテルスルホン(住友化学株式会社製)。
【0107】
方法
以下の方法を用いて、各例において、エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、及びFRC材料の作製並びに測定を行った。
【0108】
(1)樹脂の混合
硬化剤及び硬化促進剤(硬化触媒)以外のすべての成分の所定量をミキサー中で溶解することによって混合物を作製し、次に所定量の硬化剤を、所定量の促進剤と共に混合物中に混合して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0109】
(2)硬化プロファイル
硬化エポキシ樹脂組成物を、このセクションで述べる以下の方法によって成形した。混合後、(1)で作製したエポキシ樹脂組成物を、2mm厚の「テフロン(登録商標)」スペーサーを用いて厚さ2mmに設定したモールド中に注入した。次に、エポキシ樹脂組成物を、1.7℃/分の速度で室温から210℃まで加熱し、次に210℃で2時間保持して、2mm厚の硬化エポキシ樹脂組成物板を得た。
【0110】
(3)硬化度
本発明の他の実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、ある特定の硬化度を有するように硬化され得る。エポキシ樹脂組成物の硬化パーセント又は硬化度(DoC)は、示差走査熱量計(DSC)(RCS(機械式冷却システム)を備えたQ200、TA Instruments製)を用いて特定することができる。硬化度は、10°/分の昇温速度を用い、未硬化樹脂の発熱ピーク面積(ΔHuncured)を、樹脂硬化物の残存発熱ピーク面積(ΔHcured)と比較することによって、実験的に特定される。(1)で得た未硬化エポキシ樹脂組成物を、-50℃から、発熱反応が完了し、それより上では熱分解が発生する可能性のある最終温度まで、10℃/分の昇温速度での動的スキャンに掛けた。(2)で得た硬化エポキシ樹脂組成物を、50℃から、発熱反応が完了し、それより上では熱分解が発生する可能性のある最終温度まで、10℃/分の昇温速度での動的スキャンに掛けた。本明細書において、硬化度は、以下の式から算出することができる:
【数3】
式中 ΔHuncured=未硬化樹脂の発熱ピーク面積
ΔHcured=樹脂硬化物の発熱ピーク面積
【0111】
(4)硬化エポキシ樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)
本発明の他の実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、ある特定のTg(ガラス転移温度)を有し得る。Tgは、以下の方法を用いて特定することができる。(2)で得た硬化エポキシ樹脂組成物から、寸法12mm×50mmの試料を切り出す。湿潤Tgを測定するべきである場合、試料を沸騰水(98~100℃)中に24時間浸漬する。この試料を次に、SACMA SRM 18R-94に従って、50℃から250℃の温度に5℃/分の速度で昇温することにより、動的粘弾性測定装置(ARES、TA Instruments製)を用いた1.0HzのねじりモードでのTg測定に掛ける。
【0112】
Tgは、温度-貯蔵弾性率曲線上において、ガラス状態の接線と、ガラス状態からゴム状態への遷移状態の接線との交点を見出すことによって特定し、その交点の温度を、ガラス転移温度と見なした(G’Tgとも称される)。
【0113】
(5)粘度測定法
本発明の他の実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、40℃である特定の粘度を有し得る。本発明において、「粘度」は、複素粘弾性係数を意味する。
【0114】
エポキシ樹脂組成物の粘度は、直径40mmのパラレルプレートを用いた動的粘弾性測定装置(ARES、TA Instruments製)を用い、ひずみ10%、周波数0.5Hz、及びプレート間隔1mmで、速度2℃/分で40℃から150℃まで昇温して測定した。最低粘度については、粘度が最低値に到達し、そして硬化によって上昇を開始した時点で測定を行う。最低粘度は、粘度が2.0Pa・sよりも高い場合に、加工にとって良好であると見なされる。
【0115】
(6)粘度上昇
エポキシ樹脂組成物の粘度上昇は、動的粘弾性測定装置(ARES、TA instruments製)のパラメータを、粘度測定のための同じ方法に従って設定し、ある特定の時間にわたって所望される温度に、この場合は2時間にわたって65℃に保持することによって測定する。粘度上昇は、以下の式を用いて算出される:
【数4】
ηinitialは、65℃でのエポキシ樹脂組成物の初期粘度である。
ηfinalは、65℃で2時間後のエポキシ樹脂組成物の最終粘度である。
【0116】
(7)3点曲げ試験
本発明の他の実施形態では、硬化エポキシ樹脂組成物は、ある特定の曲げ特性を有し得る。曲げ特性は、以下の手順に従って測定した。(2)で得た硬化エポキシ樹脂組成物から、寸法12.5mm×60mmの試料を切り出した。次に、ASTM D7264に従ってInstron Universal Testing Machine(Instron製)を用いた3点曲げ試験によって試料を処理する。試験試料を、室温及び121℃で試験して、硬化エポキシ樹脂組成物のRTD(室温乾燥)曲げ特性及び熱/湿潤曲げ特性を得る。熱/湿潤樹脂試料は、試験前に、98℃で24時間浸漬した。
【0117】
(8)熱酸化重量喪失
本発明の他の実施形態では、硬化エポキシ樹脂組成物は、高温で長期間にわたって熱浸漬された場合の耐熱酸化性を有し得る。炭素繊維の目付190及びRc35%の炭素繊維プリプレグとされた場合の硬化エポキシ樹脂組成物の重量喪失パーセントを、パネルを300mm×300mmの寸法の12層から作製して、180℃で1000時間熱浸漬した後に測定した。硬化エポキシ樹脂組成物の重量喪失パーセントは、210℃で2時間硬化した後の寸法2.5mm×300mm×300mmのパネル試料の重量(Wbefore)を、対流式オーブン中、180℃で1000時間熱浸漬した後のパネル試料の重量(Wafter)と比較することによって特定する。本明細書において、硬化度は、以下の式から算出することができる:
【数5】
式中:Wbefore=熱分解前の試料の重量
after=熱分解後の試料の重量
【0118】
各例に用いた様々な量の成分を表1~2に記載する。表1~2に示すエポキシ樹脂組成物は、(1)に記載の方法に従って製造した。表1~2に報告する硬化エポキシ樹脂組成物に対する特性は、(2)に記載の硬化プロファイルを用いて実現した。
【0119】
比較例1~10と比較すると、本発明の実施形態を含む実施例1~17のエポキシ樹脂組成物は、硬化された場合、熱湿潤条件において121℃で著しくより高い樹脂曲げ弾性率及びより高い湿潤Tgを、適切な硬化度及び熱安定性と共に有する。
【0120】
対照的に、比較例は、高い湿潤Tgは有し得ないが、高い弾性率は有し得る。高い湿潤Tgを有するエポキシ樹脂組成物は、高い弾性率を有しない。他の例は、良好なTg及び弾性率を有し得るが、40℃での粘度が高過ぎ、そのようなエポキシ樹脂組成物をベースとするプリプレグのハンドリング性が悪くなる。また、40℃での粘度がハンドリング性にとって良好であるように調節されても、最低粘度が低過ぎる。比較例10は、作製はしたが、非常に高い樹脂粘度のために加工することができず、したがってデータは得られなかった。
【表1】
【表2】