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特許7264316活性炭素繊維、活性炭素繊維成形体、及びそれらの製造方法、有機溶剤吸脱着処理装置、有機溶剤回収システム、有機溶剤吸脱着処理方法、並びに有機溶剤回収方法
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  • 特許-活性炭素繊維、活性炭素繊維成形体、及びそれらの製造方法、有機溶剤吸脱着処理装置、有機溶剤回収システム、有機溶剤吸脱着処理方法、並びに有機溶剤回収方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】活性炭素繊維、活性炭素繊維成形体、及びそれらの製造方法、有機溶剤吸脱着処理装置、有機溶剤回収システム、有機溶剤吸脱着処理方法、並びに有機溶剤回収方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 9/24 20060101AFI20230418BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20230418BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20230418BHJP
   C01B 32/318 20170101ALI20230418BHJP
   D01F 9/14 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
D01F9/24
B01D53/04 230
B01J20/20 A
C01B32/318
D01F9/14 513
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2022545424
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2022010667
(87)【国際公開番号】W WO2022202375
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2021048767
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021057459
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 武将
(72)【発明者】
【氏名】安井 章文
(72)【発明者】
【氏名】北條 健太
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3229841(JP,U)
【文献】特開2011-106051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0161781(US,A1)
【文献】国際公開第2021/200223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 9/08 - 9/32
B01D 53/02 - 53/12
B01J 20/00 - 20/28
B01J 20/30 - 20/34
C01B 32/00 - 32/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維、前記ポリフェニレンエーテル繊維が不融化された不融化ポリフェニレンエーテル繊維、前記ポリフェニレンエーテル繊維又は前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維が耐炎化された耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維、又は前記いずれかのポリフェニレンエーテル繊維が炭素化された炭素繊維、が賦活された活性炭素繊維。
【請求項2】
前記パラ位の結合で連続する繰り返し単位が、下記一般式(1):
【化1】

(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭素化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭素化水素基を表す)
で表される繰り返し単位であり、前記転位構造が、下記一般式(2):
【化2】

(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭素化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭素化水素基であり、R3’は、前記Rから水素原子が1個除かれた2価の基を表す)
で表される構造である請求項1に記載の活性炭素繊維。
【請求項3】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分における転位量が、前記ポリフェニレンエーテル成分中の全ポリフェニレンエーテル構造単位に対して、0.01モル%以上である請求項1又は2に記載の活性炭素繊維。
【請求項4】
前記ポリフェニレンエーテル成分の含有量が、前記ポリフェニレンエーテル繊維中に95質量%以上である請求項1~3のいずれかに記載の活性炭素繊維。
【請求項5】
前記転位構造が、核磁気共鳴スペクトル(H-NMR)測定において、6.8~7.0ppmの範囲と3.8~4.0ppmの範囲にピークを示す請求項1~4のいずれかに記載の活性炭素繊維。
【請求項6】
前記ポリフェニレンエーテル繊維中のラジカル量が、50g-1以上である請求項1~5のいずれかに記載の活性炭素繊維。
【請求項7】
前記ポリフェニレンエーテル繊維のガラス転移点温度が、190℃以上210℃以下である請求項1~6のいずれかに記載の活性炭素繊維。
【請求項8】
前記活性炭素繊維の繊維径が、10μm以上100μm以下である請求項1~7のいずれかに記載の活性炭素繊維。
【請求項9】
前記活性炭素繊維のBET比表面積が、500m/g以上2500m/g以下である請求項1~8のいずれかに記載の活性炭素繊維。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の活性炭素繊維を含む活性炭素繊維成形体。
【請求項11】
前記活性炭素繊維成形体は、活性炭素繊維不織布である請求項10に記載の活性炭素繊維成形体。
【請求項12】
前記活性炭素繊維不織布の引張強度が、4N/cm以上である請求項11に記載の活性炭素繊維成形体。
【請求項13】
前記活性炭素繊維不織布が、短繊維不織布である請求項11又は12に記載の活性炭素繊維成形体。
【請求項14】
前記活性炭素繊維不織布が、長繊維不織布である請求項11又は12に記載の活性炭素繊維成形体。
【請求項15】
パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、及び前記ポリフェニレンエーテル繊維を賦活する工程を含む請求項1~9のいずれかに記載の活性炭素繊維の製造方法。
【請求項16】
賦活する工程の前に、前記ポリフェニレンエーテル繊維を炭素化する工程を含む請求項15に記載の活性炭素繊維の製造方法。
【請求項17】
パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、前記ポリフェニレンエーテル繊維を不融化して不融化ポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、及び前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維を賦活する工程を含む請求項1~9のいずれかに記載の活性炭素繊維の製造方法。
【請求項18】
賦活する工程の前に、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維を炭素化する工程を含む請求項17に記載の活性炭素繊維の製造方法。
【請求項19】
パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、前記ポリフェニレンエーテル繊維を耐炎化して耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、及び前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維を賦活する工程を含む請求項1~9のいずれかに記載の活性炭素繊維の製造方法。
【請求項20】
パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、前記ポリフェニレンエーテル繊維を不融化して不融化ポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維を耐炎化して耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、及び前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維を賦活する工程を含む請求項1~9のいずれかに記載の活性炭素繊維の製造方法。
【請求項21】
賦活する工程の前に、前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維を炭素化する工程を含む請求項19又は20に記載の活性炭素繊維の製造方法。
【請求項22】
パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を加工してポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、及び前記ポリフェニレンエーテル繊維成形体を賦活する工程を含む請求項10~14のいずれかに記載の活性炭素繊維成形体の製造方法。
【請求項23】
賦活する工程の前に、前記ポリフェニレンエーテル繊維成形体を炭素化する工程を含む請求項22に記載の活性炭素繊維成形体の製造方法。
【請求項24】
パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を加工してポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、前記ポリフェニレンエーテル繊維成形体を不融化して不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、及び前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を賦活する工程を含む請求項10~14のいずれかに記載の活性炭素繊維成形体の製造方法。
【請求項25】
賦活する工程の前に、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を炭素化する工程を含む請求項24に記載の活性炭素繊維成形体の製造方法。
【請求項26】
パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を加工してポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、前記ポリフェニレンエーテル繊維成形体を耐炎化して耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、及び前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を賦活する工程を含む請求項10~14のいずれかに記載の活性炭素繊維成形体の製造方法。
【請求項27】
パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を加工してポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、前記ポリフェニレンエーテル繊維成形体を不融化して不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を耐炎化して耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、及び前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を賦活する工程を含む請求項10~14のいずれかに記載の活性炭素繊維成形体の製造方法。
【請求項28】
賦活する工程の前に、前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を炭素化する工程を含む請求項26又は27に記載の活性炭素繊維成形体の製造方法。
【請求項29】
有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を吸着除去することで当該被処理ガスを清浄化し、さらに吸着した有機溶剤を脱着する有機溶剤吸脱着処理装置であって、
被処理ガスを接触させることで有機溶剤を吸着し、水蒸気又は加熱ガスを接触させることで吸着した有機溶剤を脱着する吸着材を充填した吸着槽を備えており、
前記吸着材が、請求項10~14のいずれかに記載の活性炭素繊維成形体を含む、有機溶剤吸脱着処理装置。
【請求項30】
請求項29に記載の有機溶剤吸脱着処理装置、及び前記有機溶剤吸脱着処理装置から排出される脱着ガスを凝縮して有機溶剤を回収する有機溶剤回収装置を含む有機溶剤回収システム。
【請求項31】
有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を吸着除去することで当該被処理ガスを清浄化し、さらに吸着した有機溶剤を脱着する有機溶剤吸脱着処理方法であって、
被処理ガスを吸着材に接触させることで有機溶剤を吸着させ、水蒸気又は加熱ガスを前記吸着材に接触させることで吸着した有機溶剤を脱着させ、
前記吸着材が、請求項10~14のいずれかに記載の活性炭素繊維成形体を含む、有機溶剤吸脱着処理方法。
【請求項32】
有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を吸着除去することで当該被処理ガスを清浄化し、さらに吸着した有機溶剤を脱着し、排出される脱着ガスを凝縮して有機溶剤を回収する有機溶剤回収方法であって、
被処理ガスを吸着材に接触させることで有機溶剤を吸着させ、水蒸気又は加熱ガスを前記吸着材に接触させることで吸着した有機溶剤を脱着させ、
前記吸着材が、請求項10~14のいずれかに記載の活性炭素繊維成形体を含む、有機溶剤回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭素繊維、活性炭素繊維成形体、及びそれらの製造方法、有機溶剤吸脱着処理装置、有機溶剤回収システム、有機溶剤吸脱着処理方法、並びに有機溶剤回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール系繊維は、耐熱性、難燃性及び耐薬品性に優れていることから、産業資材分野をはじめ、幅広い分野で利用されている。また、フェノール系繊維を炭素化及び賦活することにより得られるフェノール系活性炭素繊維は、特定の分野において機能性材料として用いられており、具体的には、有機溶剤回収システムに用いられており、詳しくは、有機溶剤を吸着及び脱着するための吸着材などに用いられている。
【0003】
フェノール系繊維(ノボロイド繊維)は、一般的に、ノボラック型フェノール樹脂を溶融紡糸し、その後、酸性触媒下でアルデヒド類と反応させて三次元架橋して不融化することにより製造されている。
【0004】
また、特許文献1では、フェノール樹脂と脂肪酸アミド類とを混合する原料混合工程と、前記原料混合工程で得られた原料混合物を紡糸して糸條を得る紡糸工程とを有するフェノール系繊維の製造方法により製造されたフェノール系繊維を、炭素化することを特徴とするフェノール系炭素繊維の製造方法、及び前記方法により製造されたフェノール系炭素繊維を賦活することを特徴とするフェノール系活性炭素繊維の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-52283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フェノール系繊維は、活性炭素繊維の前駆体となる有用な物質であるが、フェノール系繊維の製造には有害なアルデヒド類が用いられており、アルデヒド類の使用は人体や環境に悪影響を及ぼすという問題がある。そのため、フェノール系繊維に替わる新たな前駆体の開発が求められる。
【0007】
また、フェノール系活性炭素繊維を吸着材等の用途に使用する場合、圧力損失を低減させるために繊維直径が太い(太径化)フェノール系活性炭素繊維が求められる。しかし、アルデヒド類を用いて硬化(三次元架橋して不融化)したフェノール系繊維は、可とう性に乏しく、極めて脆い。そのため、フェノール系繊維を太径化した場合、織布、不織布、フェルト等の作製や紡績に必要とされる機械的強度(特に繊維強度と繊維伸度)が不足し、加工性が悪くなる。また、たとえ織布、不織布、フェルト等の作製や紡績ができたとしても、これらを炭素化及び賦活して得られるフェノール系活性炭素繊維は、機能性材料として必要とされる機械的強度(特に引張強度)が不足するという問題がある。
【0008】
特許文献1では、フェノール系繊維を太径化した際の機械的強度を向上させるために、フェノール樹脂に脂肪酸アミド類を混合している。
【0009】
しかし、脂肪酸アミド類を含むフェノール系繊維は、炭素化処理時、又は賦活処理時に発生する分解ガスを燃焼処理する過程でHCN及びNOx等の有害な分解ガスが発生するという問題がある。
【0010】
本発明は、耐熱性に優れ、太径化した場合でも機械的強度及び加工性に優れており、製造時に有害な分解ガスが発生することのない活性炭素繊維、前記活性炭素繊維を含む活性炭素繊維成形体、及びそれらの製造方法、前記活性炭素繊維成形体を備えた有機溶剤吸脱着処理装置、及び有機溶剤吸脱着処理方法、並びに前記有機溶剤吸脱着処理装置を備えた有機溶剤回収システム、及び有機溶剤回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維、前記ポリフェニレンエーテル繊維が不融化された不融化ポリフェニレンエーテル繊維、前記ポリフェニレンエーテル繊維又は前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維が耐炎化された耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維、又は前記いずれかのポリフェニレンエーテル繊維が炭素化された炭素繊維を活性炭素繊維の前駆体として用いることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維、前記ポリフェニレンエーテル繊維が不融化された不融化ポリフェニレンエーテル繊維、前記ポリフェニレンエーテル繊維又は前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維が耐炎化された耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維、又は前記いずれかのポリフェニレンエーテル繊維が炭素化された炭素繊維、が賦活された活性炭素繊維、に関する。
【0013】
前記パラ位の結合で連続する繰り返し単位が、下記一般式(1):
【化1】

(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基を表す)
で表される繰り返し単位であり、前記転位構造が、下記一般式(2):
【化2】

(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R3’は、前記Rから水素原子が1個除かれた2価の基を表す)
で表される構造であることが好ましい。
【0014】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分における転位量が、前記ポリフェニレンエーテル成分中の全ポリフェニレンエーテル構造単位に対して、0.01モル%以上であることが好ましい。
【0015】
前記ポリフェニレンエーテル成分の含有量が、前記ポリフェニレンエーテル繊維中に95質量%以上であることが好ましい。
【0016】
前記転位構造が、核磁気共鳴スペクトル(H-NMR)測定において、6.8~7.0ppmの範囲と3.8~4.0ppmの範囲にピークを示すことが好ましい。
【0017】
前記ポリフェニレンエーテル繊維中のラジカル量が、50g-1以上であることが好ましい。
【0018】
前記ポリフェニレンエーテル繊維のガラス転移点温度が、190℃以上210℃以下であることが好ましい。
【0019】
前記活性炭素繊維の繊維径が、10μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0020】
前記活性炭素繊維のBET比表面積が、500m/g以上2500m/g以下であることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、前記活性炭素繊維を含む活性炭素繊維成形体、に関する。
【0022】
前記活性炭素繊維成形体は、活性炭素繊維不織布であることが好ましい。
【0023】
前記活性炭素繊維不織布の引張強度が、4N/cm以上であることが好ましい。
【0024】
前記活性炭素繊維不織布は、短繊維不織布又は長繊維不織布であることが好ましい。
【0025】
また、本発明は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、及び前記ポリフェニレンエーテル繊維を賦活する工程を含む前記活性炭素繊維の製造方法、に関する。
【0026】
賦活する工程の前に、前記ポリフェニレンエーテル繊維を炭素化する工程を含むことが好ましい。
【0027】
また、本発明は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、前記ポリフェニレンエーテル繊維を不融化して不融化ポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、及び前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維を賦活する工程を含む前記活性炭素繊維の製造方法、に関する。
【0028】
賦活する工程の前に、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維を炭素化する工程を含むことが好ましい。
【0029】
また、本発明は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、前記ポリフェニレンエーテル繊維を耐炎化して耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、及び前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維を賦活する工程を含む前記活性炭素繊維の製造方法、に関する。
【0030】
また、本発明は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、前記ポリフェニレンエーテル繊維を不融化して不融化ポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維を耐炎化して耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維を作製する工程、及び前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維を賦活する工程を含む前記活性炭素繊維の製造方法、に関する。
【0031】
賦活する工程の前に、前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維を炭素化する工程を含むことが好ましい。
【0032】
また、本発明は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を加工してポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、及び前記ポリフェニレンエーテル繊維成形体を賦活する工程を含む前記活性炭素繊維成形体の製造方法、に関する。
【0033】
賦活する工程の前に、前記ポリフェニレンエーテル繊維成形体を炭素化する工程を含むことが好ましい。
【0034】
また、本発明は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を加工してポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、前記ポリフェニレンエーテル繊維成形体を不融化して不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、及び前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を賦活する工程を含む前記活性炭素繊維成形体の製造方法、に関する。
【0035】
賦活する工程の前に、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を炭素化する工程を含むことが好ましい。
【0036】
また、本発明は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を加工してポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、前記ポリフェニレンエーテル繊維成形体を耐炎化して耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、及び前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を賦活する工程を含む前記活性炭素繊維成形体の製造方法、に関する。
【0037】
また、本発明は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転移構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を加工してポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、前記ポリフェニレンエーテル繊維成形体を不融化して不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を耐炎化して耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を作製する工程、及び前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を賦活する工程を含む前記活性炭素繊維成形体の製造方法、に関する。
【0038】
賦活する工程の前に、前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を炭素化する工程を含むことが好ましい。
【0039】
また、本発明は、有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を吸着除去することで当該被処理ガスを清浄化し、さらに吸着した有機溶剤を脱着する有機溶剤吸脱着処理装置であって、
被処理ガスを接触させることで有機溶剤を吸着し、水蒸気又は加熱ガスを接触させることで吸着した有機溶剤を脱着する吸着材を充填した吸着槽を備えており、
前記吸着材が、前記活性炭素繊維成形体を含む、有機溶剤吸脱着処理装置、に関する。
【0040】
また、本発明は、前記溶剤吸脱着処理装置、及び前記有機溶剤吸脱着処理装置から排出される脱着ガスを凝縮して有機溶剤を回収する有機溶剤回収装置を含む有機溶剤回収システム、に関する。
【0041】
また、本発明は、有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を吸着除去することで当該被処理ガスを清浄化し、さらに吸着した有機溶剤を脱着する有機溶剤吸脱着処理方法であって、
被処理ガスを吸着材に接触させることで有機溶剤を吸着させ、水蒸気又は加熱ガスを前記吸着材に接触させることで吸着した有機溶剤を脱着させ、
前記吸着材が、前記活性炭素繊維成形体を含む、有機溶剤吸脱着処理方法、に関する。
【0042】
また、本発明は、有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を吸着除去することで当該被処理ガスを清浄化し、さらに吸着した有機溶剤を脱着し、排出される脱着ガスを凝縮して有機溶剤を回収する有機溶剤回収方法であって、
被処理ガスを吸着材に接触させることで有機溶剤を吸着させ、水蒸気又は加熱ガスを前記吸着材に接触させることで吸着した有機溶剤を脱着させ、
前記吸着材が、前記活性炭素繊維成形体を含む、有機溶剤回収方法、に関する。
【発明の効果】
【0043】
本発明の活性炭素繊維は、転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維等を賦活して得られるものであり、太径化した場合でも機械的強度及び加工性に優れている。また、本発明の活性炭素繊維は、炭素化又は賦活時に発生する分解ガスを燃焼しても有害ガスが発生しないという利点がある。また、本発明の活性炭素繊維は、その製造において、人体や環境に悪影響を及ぼすアルデヒド類等の有害物質を使用する必要がないという利点がある。また、本発明の活性炭素繊維は、フェノール系活性炭素繊維に替わる、優れた吸着性能及び物理特性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明で使用するポリフェニレンエーテル繊維の製造方法の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の有機溶剤回収システムの一実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明で使用するポリフェニレンエーテル繊維は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むことを特徴とする。ここで、「オルト位の結合で接続する転位構造」とは、主鎖のパラ位の結合で連続する繰り返し単位中の一部に、オルト位で結合して、接続する側鎖を形成した構造であり、側鎖は、パラ結合で連続する繰り返し単位から形成されていてもよく、また、その中に部分的にオルト位で結合する部分を有していてもよい。
【0046】
前記パラ位の結合で連続する繰り返し単位としては、下記一般式(1):
【化3】

(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基を表す)
で表される繰り返し単位であることが好ましい。また、前記転位構造は、下記一般式(2):
【化4】

(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R3’は、前記Rから水素原子が1個除かれた2価の基を表す)
で表される転位構造を有することが好ましい。前記一般式(2)中の「~」は、その先の構造は特に限定されないことを示す。「~」の部分は、パラ結合で連続するフェニレンエーテル単位から形成されていてもよく、また、その中に部分的にオルト位で結合する部分を有していてもよい。
【0047】
前記転位反応とは、例えば、以下の式:
【化5】

で示すような反応であり、メチレンブリッジ転位と呼ばれることもある。
【0048】
一般的に、ポリフェニレンエーテルを高温の空気雰囲気下で不融化(不融化処理)した後、高温の不活性ガス雰囲気下で炭素化(炭素化処理)することで、炭素質材料が得られる。なお、予めポリフェニレンエーテルを熱硬化性に変性したものや、予めポリフェニレンエーテルと架橋基を持つ成分とを配合したものを使用する場合には不融化する必要はない。本発明者らは、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテルが不融化された不融化ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテル又は不融化ポリフェニレンエーテルが耐炎化された耐炎化ポリフェニレンエーテル、又は前記いずれかのポリフェニレンエーテルが炭素化された炭素質材料、を賦活することにより優れた吸着性能を有する多孔質材料が得られることを見出した。また、従来のポリフェニレンエーテル繊維を積層させた積層体や不織布等に成形したポリフェニレンエーテル繊維成形体に不融化、耐炎化、炭素化、及び賦活からなる群より選択される1以上の処理をした場合、繊維同士が著しく融着したり、繊維が著しく熱収縮する問題があった。繊維同士の著しい融着や繊維の著しい熱収縮は、活性炭素繊維に求められる機械的強度、柔軟性、及び寸法安定性を不足させる原因になる。本発明においては、前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル繊維を使用しているため、前記処理をした際の繊維同士の融着、及び繊維の熱収縮が抑制され、それにより活性炭素繊維の機械的強度、柔軟性、及び寸法安定性が大幅に向上する。また、本発明においては、賦活を行った後の重量収率が大幅に向上した。以下、本発明の各構成について説明する。
【0049】
<ポリフェニレンエーテル成分>
本発明で用いるポリフェニレンエーテル成分は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転位構造を有するポリフェニレンエーテルを含むものである。
【0050】
前記パラ位の結合で連続する繰り返し単位としては、前記一般式(1)で表される繰り返し単位であることが好ましく、前記転位構造は、前記一般式(2)で表される転位構造を有することが好ましい。
【0051】
前記一般式(1)、(2)中のR、Rとしては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素数1~10のアルキル基、フェニル基、4-メチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルエチル基等の炭素数7~10のアラルキル基等も挙げることができる。
【0052】
前記炭素化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基等のアルコキシ基等が挙げられる。置換基を有する炭素化水素基の具体例としては、例えば、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。
【0053】
これらの中でも、R、Rとしては、水素原子、メチル基が好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0054】
前記一般式(1)、(2)中のRとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素数1~10のアルキル基、フェニル基、4-メチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルエチル基等の炭素数7~10のアラルキル基等も挙げることができる。
【0055】
前記炭素化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。置換基を有する炭素化水素基の具体例としては、例えば、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。
【0056】
これらの中でも、Rとしては、メチル基が好ましい。
【0057】
前記R3’は、前記Rから水素原子が1個除かれた2価の基を表し、メチレン基であることが好ましい。
【0058】
前記一般式(1)の繰り返し単位としては、具体的には、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル、2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル、2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル、2,6-ジプロピル-1,4-フェニレンエーテルから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。これらの中でも、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテルから誘導される繰り返し単位が好ましい。
【0059】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分は、前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体、又は異なる2種以上の一般式(1)の繰り返し単位を含有する共重合体中に、前記一般式(2)で表される転位構造を有するものが好ましい。
【0060】
また、前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記一般式(1)以外の繰り返し単位を含むことができ、その場合は、前記一般式(1)の繰り返し単位と一般式(1)以外の繰り返し単位を含む共重合体中に前記一般式(2)で表される転位構造を有するものとすることができる。このような一般式(1)以外の繰り返し単位の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、例えば、前記共重合体中に5モル%以下程度であることが好ましく、含まないことがより好ましい。
【0061】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分の分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量(Mw)が40,000~100,000であることが好ましく、50,000~80,000であることがより好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、7,000~30,000であることが好ましく、8,000~20,000であることがより好ましい。また、分子量分散(Mw/Mn)は、3.5~8.0であることが好ましく、4.0~6.0であることがより好ましい。前記重量平均分子量、数平均分子量は、例えば、東ソー(株)製のHLC-8320GPCを用いて測定することができる。カラムはTSKgel SuperHM-Hを2本、TSKgel SuperH2000を直列につないで使用できる。移動相にはクロロホルムを使用でき、流速は0.6ml/分、カラムオーブンの温度は40℃が好ましい。前記ポリフェニレンエーテル成分を1g/Lの濃度で含むクロロホルム溶液を調製後に1時間静置させてから測定することが好ましい。重量平均分子量と数平均分子量は標準ポリスチレンにより検量線を作成できる。検出器のUV波長は、評価対象物の場合は283nm、標準ポリスチレンの場合は254nmとして評価できる。
【0062】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分における転位量は、前記ポリフェニレンエーテル成分中の全ポリフェニレンエーテル構造単位に対して、0.01モル%以上であることが好ましく、0.05モル%以上であることがより好ましく、0.1モル%以上であることがさらに好ましく、0.15モル%以上であることが特に好ましい。さらに単糸繊度が15dtex以下の細繊度の繊維を得るには2モル%以上が好ましい。また、転位量の上限値は特に限定されないが、20モル%以下であることが好ましく、18モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、4モル%以下であることがよりさらに好ましい。転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分における転位量が前記範囲にあることで、ポリフェニレンエーテル繊維に不融化、耐炎化、炭素化、及び賦活からなる群より選択される1以上の処理をした際の繊維同士の融着、及び繊維の熱収縮が抑制されるため、活性炭素繊維及び活性炭素繊維成形体の機械的強度、柔軟性、及び寸法安定性が向上する傾向にある。また、高温の不活性ガス雰囲気下で炭素化及び/又は賦活した際に発生するタール量が低減するため、炭素化及び/又は賦活した後の重量収率が向上する傾向にある。
【0063】
前記転位構造は、核磁気共鳴スペクトル(H-NMR)測定において、3.8~4.0ppmの範囲と6.8~7.0ppmの範囲にピークを示すことが好ましい。通常、ポリフェニレンエーテルは、6.4~6.6ppm付近にピークを示し、これは、ポリフェニレンエーテル主鎖中のベンゼン環の3、5位の水素原子に由来するピークである。前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分は、前記6.4~6.6ppm付近のピークに加え、3.8~4.0ppmの範囲と6.8~7.0ppmの範囲にピークを示す。前記3.8~4.0ppmの化学シフトは、前記転位構造中のR3’で示される2価の基(例えば、メチレン基等)のプロトンに由来するものであり、前記6.8~7.0ppmの化学シフトは、前記転位構造中のポリフェニレンエーテルの3、5位のR、R基のプロトン(例えば、オルト位にメチレン基を介して結合しているベンゼン環の3位と5位の水素原子)に由来するものである。
【0064】
本発明で用いるポリフェニレンエーテル繊維には、転位構造を有さないポリフェニレンエーテルを含んでいてもよい。転位構造を有さないポリフェニレンエーテルとしては、前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体、異なる2種以上の一般式(1)の繰り返し単位を含有する共重合体や、前記一般式(1)の繰り返し単位と一般式(1)以外の繰り返し単位を有する共重合体等を挙げることができる。前記共重合体における一般式(1)以下の繰り返し単位の含有量としては、前述のものを挙げることができる。
【0065】
また、本発明で用いるポリフェニレンエーテル繊維には、低分子量のポリフェニレンエーテルを含んでいてもよい。低分子量のポリフェニレンエーテルの分子量としては、例えば、重量平均分子量が2,000~8,000程度を挙げることができる。
【0066】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分の含有量は、ポリフェニレンエーテル繊維中に95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましく、実質的に前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分のみ(100質量%)からなることがさらに好ましい。ポリフェニレンエーテル繊維における前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分の含有量が前記範囲にあることで、ポリフェニレンエーテル繊維等を賦活して得られる活性炭素繊維及び活性炭素繊維成形体の機械的強度が優れるのみならず、柔軟性、及び寸法安定性に優れるものとなるため好ましい。また、高温の不活性ガス雰囲気下で炭素化及び/又は賦活した際に発生するタール量が低減され、炭素化及び/又は賦活した後の重量収率が向上する傾向にあるため好ましい。
【0067】
<ポリフェニレンエーテル成分以外の成分>
本発明で用いるポリフェニレンエーテル繊維には、前記ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分を含むことができる。ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド66、ポリアミド6T、ポリアミド6T/11等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート等を挙げることができる。但し、その含有量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、含まない(0質量%)ことがさらに好ましい。
【0068】
また、本発明に用いるポリフェニレンエーテル繊維には、本発明の効果を損なわない範囲で、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ダル剤、静電防止剤等の添加剤も添加することができる。
【0069】
<ポリフェニレンエーテル繊維>
本発明で用いるポリフェニレンエーテル繊維は、前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むものであり、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、後述のポリフェニレンエーテル繊維の製造方法により製造することができる。
【0070】
ポリフェニレンエーテル繊維のガラス転移点温度は特に限定されないが、190℃以上210℃以下であることが好ましく、190℃以上209℃以下であることがより好ましく、200℃以上208℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移点温度が前記範囲にあることで、ポリフェニレンエーテル繊維に不融化、耐炎化、炭素化、及び賦活からなる群より選択される1以上の処理をした際の繊維同士の融着を抑制でき、また、ポリフェニレンエーテル繊維等を賦活して得られる活性炭素繊維及び活性炭素繊維成形体の柔軟性と寸法安定性とをバランスよく両立させることができるため好ましい。
【0071】
ポリフェニレンエーテル繊維中のラジカル量は、50g-1以上であることが好ましく、70g-1以上であることがより好ましく、90g-1以上であることがさらに好ましい。ラジカル量が前記範囲にあることで、ポリフェニレンエーテル繊維に不融化、耐炎化、炭素化、及び賦活からなる群より選択される1以上の処理をした際の繊維同士の融着をより抑制でき、またポリフェニレンエーテル繊維等を賦活して得られる活性炭素繊維及び活性炭素繊維成形体の柔軟性及び寸法安定性が向上する傾向にあるため好ましい。さらに、炭素化及び/又は賦活した際に発生するタール量がより低減され、炭素化及び/又は賦活した後の重量収率が向上する傾向にあるため好ましい。また、ポリフェニレンエーテル繊維中のラジカル量の上限値は特に限定されないが、ポリフェニレンエーテル繊維等を賦活して得られる活性炭素繊維及び活性炭素繊維成形体の機械的強度の観点から、6000g-1以下であることが好ましく、5500g-1以下であることがより好ましく、5000g-1以下であることがさらに好ましい。
【0072】
<ポリフェニレンエーテル繊維成形体>
本発明で用いるポリフェニレンエーテル繊維成形体は、前記ポリフェニレンエーテル繊維を含むものであり、その形態としては、例えば、紙、織物、編物、不織布などが挙げられる。これらのうち、汎用性が高いことから不織布が好ましく、短繊維不織布又は長繊維不織布であることがより好ましい。ポリフェニレンエーテル繊維成形体の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、後述のポリフェニレンエーテル繊維成形体の製造方法により製造することができる。
【0073】
<活性炭素繊維>
本発明の活性炭素繊維は、前記ポリフェニレンエーテル繊維、前記ポリフェニレンエーテル繊維を不融化した不融化ポリフェニレンエーテル繊維、前記ポリフェニレンエーテル繊維又は前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維を耐炎化した耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維、又は前記いずれかのポリフェニレンエーテル繊維を炭素化した炭素繊維を賦活(賦活処理)して得られるものであり、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、後述の活性炭素繊維の製造方法により製造することができる。
【0074】
本発明の活性炭素繊維は、前記ポリフェニレンエーテル繊維を不融化した後、賦活して得ることが好ましい。また、不融化したポリフェニレンエーテル繊維を炭素化した後に賦活してもよい。また、前記炭素化と賦活を同時に行ってもよい。ポリフェニレンエーテル繊維を不融化することで、炭素化及び/又は賦活する際の繊維同士の融着をより抑制できるため好ましい。また、賦活して得られる活性炭素繊維及び活性炭素繊維成形体の機械的強度、柔軟性及び寸法安定性が向上する傾向にあるため好ましい。さらに、炭素化及び/又は賦活した際に発生するタール量がより低減され、炭素化及び/又は賦活した後の重量収率が向上する傾向にあるため好ましい。
【0075】
本発明の活性炭素繊維は、繊維径が10μm以上100μm以下であることが好ましく、12μm以上90μm以下であることがより好ましく、15μm以上80μm以下であることがさらに好ましい。繊維径が10μmより小さい場合は、例えば、フィルターとして使用した際に圧力損失が高くなる傾向があり、また繊維径が100μmを超える場合は、フィルターとして十分な吸着性能が得られない上に、繊維としての柔軟性が損なわれる傾向にある。
【0076】
本発明の活性炭素繊維のBET比表面積は、500m/g以上2500m/g以下であることが好ましく、650m/g以上2400m/g以下であることがより好ましく、800m/g以上2300m/g以下であることがさらに好ましい。BET比表面積が前記範囲にあることで、少量の活性炭素繊維でも十分な吸着性能を発揮することができる。一方で2500m/gを超えると、活性炭素繊維の機械的強度が低下する傾向にある。
【0077】
<活性炭素繊維成形体>
本発明の活性炭素繊維成形体は、前記活性炭素繊維を含むものである。活性炭素繊維成形体としては、例えば、活性炭素繊維紙、活性炭素繊維織物、活性炭素繊維編物、活性炭素繊維不織布などが挙げられる。これらのうち、汎用性が高いことから活性炭素繊維不織布が好ましい。活性炭素繊維不織布は、例えば、円筒に巻き付けて円筒状の活性炭素繊維不織布エレメントに加工され、有機溶剤吸脱着処理装置の吸着材、及び前記有機溶剤吸脱着処理装置を用いた有機溶剤回収システムの吸着材として用いられる。
【0078】
活性炭素繊維成形体の目付は特に限定されず、用途に応じて適宜決定できるが、加工性、製造する活性炭素繊維の吸着特性及び物理特性の観点から、好ましくは10g/m以上、より好ましくは30g/m以上、さらに好ましくは100g/m以上であり、好ましくは800g/m以下、より好ましくは600g/m以下、さらに好ましくは400g/m以下である。
【0079】
活性炭素繊維成形体(例えば、不織布など)の厚さは特に限定されず、用途に応じて適宜決定できるが、加工性、吸着特性及び物理特性の観点から、好ましくは0.1mm以上12.0mm以下であり、より好ましくは0.2mm以上6.0mm以下である。
【0080】
活性炭素繊維不織布の引張強度は、4N/cm以上であることが好ましく、4.5N/cm以上であることがより好ましく、5N/cm以上であることがさらに好ましい。引張強度が4N/cm以上であれば、活性炭素繊維不織布を円筒に強く巻き付ける際の張力を大きくしても、活性炭素繊維不織布が破損し難いため、嵩密度の高く、形状安定性に優れたエレメントを得ることができる。また、当該引張強度の上限は特に限定されるものではないが、繊維径が10μm以上である場合には、20N/cmを超える引張強度を実現するのは難しい。
【0081】
活性炭素繊維不織布は、短繊維不織布であることが好ましい。短繊維不織布は、例えば、他の繊維と容易に混綿して製造することができるため、前記活性炭素繊維不織布を機能性材料として幅広い分野に適用することができる。
【0082】
活性炭素繊維不織布は、長繊維不織布であることが好ましい。長繊維不織布は、製造工程数を削減できる傾向にあり、また短繊維不織布では加工が困難な太径化も容易に可能である。
【0083】
<ポリフェニレンエーテル繊維の製造方法>
本発明で用いるポリフェニレンエーテル繊維の製造方法は、例えば、原料であるポリフェニレンエーテルを、シリンダー及びスクリューを備えた押出機により溶融押出する工程を有する。
【0084】
原料であるポリフェニレンエーテルとしては、前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体、又は異なる2種以上の一般式(1)の繰り返し単位を含有する共重合体や、前記一般式(1)の繰り返し単位と一般式(1)以外の繰り返し単位を有する共重合体を挙げることができる。前記共重合体における一般式(1)以外の繰り返し単位の含有量としては、前述のものを挙げることができる。これらの中でも、前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体が好ましい。
【0085】
前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体としては、具体的には、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレンエーテル)等を挙げることができるが、これらの中でも、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)が好ましい。
【0086】
前記ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)としては、市販品も好適に用いることができ、具体的は、例えば、SABIC Innovative Plastic製のPPO640、PPO646、PPOSA120、旭化成ケミカルズ(株)製のザイロンS201A、ザイロンS202A等を挙げることができる。
【0087】
前記原料であるポリフェニレンエーテルのガラス転移点温度は、170℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、210℃以上であることさらに好ましい。また、ガラス転移点温度の上限値は特に限定されないが、230℃以下であることが好ましい。原料であるポリフェニレンエーテルのガラス転移点温度が前記範囲にあることで、ポリフェニレンエーテル繊維に不融化、耐炎化、炭素化、及び賦活からなる群より選択される1以上の処理をした際の繊維同士の融着を抑制でき、また、ポリフェニレンエーテル繊維等を賦活して得られる活性炭素繊維及び活性炭素繊維成形体の柔軟性と寸法安定性とをバランスよく両立させることができるため好ましい。
【0088】
また、本発明で用いる原料には、異なるガラス転移点温度を有するポリフェニレンエーテルを2種以上含んでいてもよく、具体的には、前記ガラス転移点温度が170℃以上であるポリフェニレンエーテルに加えて、ガラス転移点温度が170℃未満のポリフェニレンエーテルを含むことができる。ガラス転移点温度が170℃未満のポリフェニレンエーテルを加えることで、溶融粘度が低下して、流動性が向上するものの、ポリフェニレンエーテル中の転位量が低下する傾向にある。
【0089】
原料であるポリフェニレンエーテル中、前記ガラス転移点温度が170℃以上であるポリフェニレンエーテルの含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、ガラス転移点温度が170℃以上であるポリフェニレンエーテルのみからなることが特に好ましい。また、ガラス転移点温度が170℃以上であるポリフェニレンエーテルの含有量の上限値は特に限定されるものではないが、100質量%以下であることが好ましい。本発明においては、ガラス転移点温度が高い(すなわち高分子量の)ポリフェニレンエーテルを前記範囲で含むことで、ポリフェニレンエーテル繊維等を賦活して得られる活性炭素繊維及び活性炭素繊維成形体は、機械的強度が優れるのみならず、柔軟性、寸法安定性が優れるため好ましい。また、炭素化及び/又は賦活した際に発生するタール量が低減され、炭素化及び/又は賦活した後の重量収率が向上する傾向にあるため好ましい。
【0090】
また、原料であるポリフェニレンエーテルと共に、ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分や添加剤を含むことができる。ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分や添加剤としては、前述の通りである。また、ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分の含有量は、原料中に5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、含まない(0質量%)ことがさらに好ましい。
【0091】
前記シリンダー及びスクリューを備えた押出機としては、本分野で通常用いることができる単軸押出機や二軸押出機を用いることができる。本発明においては、二軸押出機を用いることが好ましい。押出機はこれに限定されるものではなく、ポリマーに対してせん断を効果的に行うという目的が達成できるものであればよい。
【0092】
前記スクリューの周速は、原料であるポリフェニレンエーテルの転位反応が起こるスクリューの周速が必要であり、3.6m/min以上であり、3.7m/min以上であることが好ましく、3.8m/min以上であることがより好ましい。また、スクリューの周速の上限値は、特に限定されないが、94.2m/min以下であることが好ましい。本発明においては、スクリュー回転数上げてスクリューの周速を3.6m/min以上とすることで、シリンダー内の原料ポリフェニレンエーテルに高剪断力を付与することができ、その結果、ポリフェニレンエーテルの分子鎖を切断して、転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を形成できる。
【0093】
前記スクリューの形状としては、特に限定されるものではなく、原料であるポリフェニレンエーテルの転位反応が起こる程度に剪断力を加えることができるものであればよい。
【0094】
ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維を製造する場合の一例を、図1を用いて説明する。原料であるポリフェニレンエーテルを図1のホッパー101からシリンダー及びスクリューを備えた押出機102に投入し、溶融したポリフェニレンエーテルはギアポンプ103により吐出速度を計量し、微細なサンドなどで構成された濾材104を通過して紡糸ノズル105から吐出されて、溶融紡糸繊維を得ることができる。また、濾材104上には、金属不織布などで構成されたフィルター106を設置することが好ましい。フィルター106を設置することで、あらかじめ異物を除去することができ、前記濾材104の目詰まり等を防ぐことができるため好ましい。また、紡糸ノズル105の直下には、保温スペース107を設け、当該領域に、窒素等の不活性ガスを導入108して紡糸することができる。また、加熱トーチ109により、加熱した不活性化ガスを導入することもできる。
【0095】
<ポリフェニレンエーテル繊維成形体の製造方法>
本発明で用いるポリフェニレンエーテル繊維成形体の製造方法は特に限定されるものではなく、本分野において通常用いられる方法を適宜採用することができる。本発明の好ましい成形体の一例である不織布の製造方法としては、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法、スパンレース法、ニードルパンチ法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法等を挙げることができる。これらの中でも、短繊維不織布の製造方法であるニードルパンチ法や、長繊維不織布の製造方法であるスパンボンド法が好ましい。
【0096】
<不融化ポリフェニレンエーテル繊維又は不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体の製造方法>
本発明で用いる不融化ポリフェニレンエーテル繊維又は不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体は、前記ポリフェニレンエーテル繊維又はポリフェニレンエーテル繊維成形体を、空気中で、120~230℃で、0.1~100時間熱処理して不融化(不融化処理)することにより製造することができる。ここで、空気中とは、特に調整されていない環境のことである。また、処理温度は、140~220℃であることが好ましく、150~210℃であることがより好ましい。また、処理時間は、0.1~100時間であることが好ましく、0.5~80時間であることがより好ましく、1~50時間であることがさらに好ましい。不融化処理温度及び不融化処理時間を前記範囲とすることで、炭素化及び/又は賦活する際の繊維同士の融着をより抑制できるため好ましい。また、賦活して得られる活性炭素繊維及び活性炭素繊維成形体の機械的強度、柔軟性及び寸法安定性をバランスよく両立させることができるため好ましい。さらに、炭素化及び/又は賦活した際に発生するタール量がより低減され、炭素化及び/又は賦活した後の重量収率が向上する傾向にあるため好ましい。
【0097】
<耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維又は耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体の製造方法>
本発明で用いる耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維又は耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体は、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維又は不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を、空気中で、230~400℃で、0.01~10時間熱処理して耐炎化(耐炎化処理)することにより製造することができる。また、本発明で用いる耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維又は耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体は、前記ポリフェニレンエーテル繊維又はポリフェニレンエーテル繊維成形体を、空気中で、0.05~10℃/分の昇温速度で120~230℃まで昇温し、その後、230~400℃で、0.01~10時間熱処理して耐炎化(耐炎化処理)することにより製造してもよい。空気中とは、特に調整されていない環境のことである。また、処理温度は、240~380℃であることが好ましく、250~360℃であることがより好ましい。また、処理時間は、0.03~4時間であることが好ましく、0.05~3時間であることがより好ましい。耐炎化処理温度及び耐炎化処理時間を前記範囲とすることで、炭素化及び/又は賦活する際の繊維同士の融着をより抑制できるため好ましい。また、賦活して得られる活性炭素繊維及び活性炭素繊維成形体の機械的強度、柔軟性及び寸法安定性をバランスよく両立させることができるため好ましい。さらに、炭素化及び/又は賦活した際に発生するタール量がより低減され、炭素化及び/又は賦活した後の重量収率が向上する傾向にあるため好ましい。
【0098】
<活性炭素繊維又は活性炭素繊維成形体の製造方法>
本発明の活性炭素繊維は、前記ポリフェニレンエーテル繊維、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維、前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維、又は前記いずれかのポリフェニレンエーテル繊維を炭素化(炭素化処理)した炭素繊維、を賦活(賦活処理)することにより製造することができる。また、本発明の活性炭素繊維成形体は、前記ポリフェニレンエーテル繊維成形体、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体、前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体、又は前記いずれかのポリフェニレンエーテル繊維成形体を炭素化した炭素繊維成形体、を賦活することにより製造することができる。また、本発明の活性炭素繊維成形体は、前記ポリフェニレンエーテル繊維、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維、前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維、又は前記いずれかのポリフェニレンエーテル繊維を炭素化した炭素繊維、を賦活し、得られた活性炭素繊維を加工、成形して製造してもよい。
【0099】
前記炭素化(炭素化処理)は、公知の方法で行うことができ、具体的には、不活性ガスの存在下で加熱することにより行われる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、及びアルゴン等が挙げられる。加熱温度は、通常、300~2500℃であり、好ましくは500~1500℃である。加熱時間は、通常、0.1~10時間であり、好ましくは0.5~5時間である。
【0100】
前記賦活(賦活処理)は、公知の方法で行うことができ、具体的には、ガス賦活法、及び薬品賦活法などが挙げられるが、繊維強度及び純度の向上の観点から、ガス賦活法が好ましい。
【0101】
ガス賦活法では、賦活ガスを、前記ポリフェニレンエーテル繊維、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維、前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維、前記炭素繊維、前記ポリフェニレンエーテル繊維成形体、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体、前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体、又は前記炭素繊維成形体に接触させて賦活する。賦活ガスとしては、例えば、水蒸気、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、塩化水素、酸素、又はこれらの混合ガスが挙げられる。ガス賦活する際の温度は、通常、600~1200℃であり、好ましくは800~1000℃である。ガス賦活する際の時間は、通常、0.2~10時間であり、好ましくは0.5~3時間である。
【0102】
薬品賦活法では、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;ホウ酸、リン酸、硫酸、及び塩酸等の無機酸類;塩化亜鉛などの無機塩類などを、前記ポリフェニレンエーテル繊維、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維、前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維、前記炭素繊維、前記ポリフェニレンエーテル繊維成形体、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体、前記耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維成形体、又は前記炭素繊維成形体に接触させて賦活する。薬品賦活する際の温度は、通常、400~1000℃であり、好ましくは500~800℃である。薬品賦活する際の時間は、通常、0.2~5時間であり、好ましくは0.5~5時間である。
【0103】
賦活処理した際の活性炭素繊維の幅収縮率の最大値は、加工性、活性炭素繊維の柔軟性や形状安定性の観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下である。また、最小値は通常1%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。
【0104】
賦活処理した際の活性炭素繊維の重量収率の最小値は、製造コストや、分解ガスの排気による環境負荷の観点から、好ましくは15重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上である。また、最大値は通常80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下である。
【0105】
また、本発明においては、前記炭素化(炭素化処理)と前記賦活(賦活処理)を同時に行ってもよい。
【0106】
本発明の活性炭素繊維及び活性炭素繊維成形体は、例えば、ジクロロメタン等の有機溶剤の回収;トリハロメタン等の塩素化合物の除去;悪臭ガス、NOx、及びSOx等の有害ガスの除去;鉛、ヒ素、及びマンガン等の重金属の除去、などに好適に用いられる。
【0107】
<有機溶剤吸脱着処理装置、有機溶剤回収システム、有機溶剤吸脱着処理方法、及び有機溶剤回収方法>
本発明の有機溶剤回収システムの一実施形態を図2にて説明する。有機溶剤回収システム1は、吸着槽2A及び2Bを有する有機溶剤吸脱着処理装置22を備え、吸着槽2A及び2Bの内部には円筒状かご型の巻芯に活性炭素繊維不織布9(吸着材)を層状に巻き付けた中空円筒構造で、その外周面を金網で固定した活性炭素繊維不織布エレメント8を着脱可能に設けている。図2では、2つの吸着槽を有する有機溶剤回収システム1を例示しているが、吸着槽は1つでもよく、3つ以上有していてもよい。なお、活性炭素繊維不織布エレメント8の底部は閉鎖されている。
【0108】
図2の吸着槽2Aが吸着処理中、吸着槽2Bが脱着処理中の場合について説明する。まず吸着工程について説明する。有機溶剤を含有する溶剤混合ガス(被処理ガス)3はプレフィルター4を通り、送風機5により下ダンパー6を経て吸着槽2Aに送られ、活性炭素繊維不織布エレメント8の活性炭素繊維不織布9で被処理ガス中の有機溶剤の吸着が行われ、上ダンパー10を経て清浄空気として吸着槽2Aの排気口12より系外に排出される。この時、水蒸気供給ライン13の自動弁14は閉の状態である。
【0109】
次に脱着工程について説明する。水蒸気供給ライン13より供給された水蒸気は自動弁15を経て吸着槽2Bに供給され、活性炭素繊維不織布エレメント8の活性炭素繊維不織布9に吸着された被処理ガス中の有機溶剤を脱着し再生させる。凝縮液、及び被処理ガス中の有機溶剤成分を含む未凝縮の水蒸気は、脱着ガスライン16を通って、コンデンサー17へ送られ被処理ガス中の有機溶剤成分を含む未凝縮の水蒸気が凝縮される。コンデンサー17より高濃度の有機溶剤を含んだ凝縮液がセパレーター19へ送られる。この時、下ダンパー7及び上ダンパー11は閉の状態である。なお、セパレーター19内に滞留している有機溶剤成分を含むガスは、戻りガスライン20により再度被処理ガス3に戻される。有機溶剤回収システムにおける有機溶剤回収装置は、例えば、図2中のコンデンサー17、冷却水供給ライン18、及びセパレーター19を含むものであるが、これらに限定されない。
【0110】
本発明の有機溶剤吸脱着処理装置、有機溶剤回収システム、有機溶剤吸脱着処理方法、及び有機溶剤回収方法は、吸着材として本発明の活性炭素繊維成形体を用いる以外は、公知の処理装置、システム、処理方法、及び回収方法を採用することができ、例えば、特公平6-55254号、特開2004-105806号、及び特開2013-111552号に記載の処理装置、システム、処理方法、及び回収方法を採用することができる。
【実施例
【0111】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性等の評価方法は以下の通りである。
【0112】
(1)ポリフェニレンエーテル成分の転位構造量
共鳴周波数600MHzのH-NMR測定にて行った。測定装置は、BRUKER社製のNMR装置(装置名:AVANCE-NEO600)を用い、測定は以下の通りに行った。
実施例及び比較例で得られた成形体(試料)10mgを重クロロホルムに溶解後、その溶液を2時間以内にNMRチューブに充填し測定を行った。ロック溶媒には重クロロホルムを用い、待ち時間を1秒、データ取り込み時間を4秒、積算回数を64回とした。
また、溶媒として重ベンゼンを用いても良い。
転位構造量の解析は以下の通り実施した。
ポリフェニレンエーテルの3、5位のR、R基のプロトンに由来するピークと、転位構造中のR3’で示される2価の基(メチレン基等)のプロトンに由来するピークのそれぞれのピーク積分値をA、Bとし、転位構造量は以下の式により求めた。
転位構造量(mol%)=(B/(A+B))×100
【0113】
(2)ポリフェニレンエーテル成分中のラジカル量
日本電子(株)製の電子スピン共鳴装置(ESR装置)(装置名:JES-FA100)を用いて以下の条件でラジカル量を測定した。サンプルは嵩密度が0.1~0.2g/cmになるように約0.1gを詰めた。ただし、サンプル形状によって0.1~0.2g/cmの範囲に入らない場合は0.2g/cm以上となっても良い。また、ラジカル量の定量のため、マンガンマーカーを同時測定した。ラジカル量は次式より求めた。
サンプルの規格化強度C=サンプルのシグナル強度(-)/マンガン強度(-)
ブランクの規格化強D=ブランクのシグナル強度(-)/マンガン強度(-)
ラジカル量(g-1)=(C-D)/サンプル重量(g)
サンプル及びブランクのシグナル強度は322.1~329.3mTの範囲の2回積分値、マンガンマーカーのマンガンのシグナル強度は320~322mTの範囲の2回積分値を用いた。なお、ここでのブランクのシグナル強度とは、ESR装置にサンプルを加えない状態で測定した場合のシグナル強度である。
【0114】
(3)ガラス転移点温度
TAインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量分析計(型式:DSC-Q100)を用いて、成形体(繊維)2mgを、窒素雰囲気下において30℃から250℃まで、昇温速度10℃/分にて測定し、ガラス転移点温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移点温度(Tg)とした。
【0115】
(4)繊維径
走査電子顕微鏡(製品名:SU1510、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて顕微鏡画像を観察し、その顕微鏡画像から100本以上の繊維径を読み取り、読み取った繊維径を平均して求めた。なお、繊維径とは繊維直径を意味する。
【0116】
(5)炭素化及び賦活処理後の幅収縮率
試料を10cm角の正方形に切り出して、炭素化及び賦活処理した後、縦方向及び横方向の寸法から収縮率を測定し、その平均値を計算した。
【0117】
(6)炭素化及び賦活処理後の重量収率
ポリフェニレンエーテル繊維不織布を130℃で12時間真空乾燥して秤量し、炭素化及び賦活処理前の乾燥重量Eを測定した。炭素化及び賦活処理を行った後、再び130℃で12時間真空乾燥して秤量し、炭素化及び賦活処理後の乾燥重量Fを測定した。重量収率は下記の式で求めた。
重量収率(重量%)=(F/E)×100
【0118】
(7)BET比表面積
試料を30mg採取し、130℃で12時間真空乾燥して秤量し、自動比表面積測定装置GEMINI VII2390(Micromeritics社製)を使用して測定した。液体窒素の沸点(-195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02~0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。相対圧が0.02~0.15の範囲での結果をもとに、BET法により重量あたりのBET比表面積(m/g)を求めた。
【0119】
(8)引張強度
活性炭素繊維成形体の場合は、幅25mm、長さ100mmの試験片にサンプリングし、チャック間距離を50mm、引張速度を20mm/minとして破断強度を測定し、当該値を試験片の断面積(幅×厚み)で除することにより算出した(単位N/cm)。なお、厚みは、面積4cmの円盤を用いて、活性炭素繊維成形体にかかる荷重を15gf/cmにして測定した。幅方向に切り取った試験片の引張強度の平均値、及び長さ方向に切り取った試験片の引張強度の平均値のうち、小さい値を、活性炭素繊維不織布の引張強度とした。
【0120】
(9)目付
試料を130℃で12時間真空乾燥した後、単位面積あたりの質量を測定して単位g/mで求めた。
【0121】
(10)圧力損失係数
活性炭素繊維成形体を直径27mmの円形に切り出して、内径27mmの円筒管へ厚み3cm、充填密度100kg/mとなるように荷重を掛けながら充填した。25℃、相対湿度50%RHの空気を線速30cm/秒で円筒管へ供給し、充填した不織布の一次側と二次側の静圧差(mmAq)を測定した。得られた静圧差から次式で不織布の圧力損失係数(mmAq・s/cm)を求めた。
圧力損失係数(mmAq・s/cm)=圧損(mmAq)÷線速(cm/s)÷厚み(cm)
【0122】
(11)燃焼ガス中の有害ガス濃度測定
前記ポリフェニレンエーテル繊維、前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維、ポリフェニレンエーテル繊維成形体、又は前記不融化ポリフェニレンエーテル繊維成形体を炭素化及び賦活処理した時に発生する分解ガスを直接燃焼装置にて700℃で燃焼させ、その燃焼ガスを排出した。燃焼ガス中のシアン化水素(HCN)、窒素酸化物(NO+NO)の濃度をドレーゲル検知管で測定した。
【0123】
(12)スクリューの周速
スクリューの周速は以下の式により求めた。
スクリューの周速(m/min)=スクリュー直径(mm)×0.00314×スクリュー回転数(rpm)
【0124】
実施例1
ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)(PPO(商標登録)640、ガラス転移点温度(Tg):221℃、SABIC Innovative Plas tic製)を、(株)テクノベル製2軸押出機(製品名:KZW15TW-30MG)を用いて300℃で押出した。スクリュー回転数は700rpmに設定してスクリューの周速を33.0m/minとした。押出機の下流には、ギアポンプを設置してポリマーの吐出速度を計量し、320℃に保ったノズル(ノズル幅300mm)へ押し出した。ノズルから吐出したポリマーを幅400mmのコレクターで受けた後、210℃の加熱ローラーで融着させて長繊維シートを得た。長繊維シートの目付は60g/mであった。得られた長繊維シートを5枚重ね、ニードルパンチ機により、針密度75本/cm、針深度12mm(表)、7mm(裏)の条件で表裏処理を行い、長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布を空気中にて200℃で2時間熱処理をしたあと、280℃まで昇温し、空気中にて280℃で0.5時間熱処理をした。続けて窒素中にて900℃で1時間炭素化処理したのち、11vol.%の水蒸気存在下の窒素中にて900℃で1時間賦活処理をして活性炭素繊維不織布を得た。得られた活性炭素繊維不織布の各評価結果を表1に示す。
【0125】
実施例2及び3
スクリュー回転数、スクリューの周速を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして活性炭素繊維不織布を得た。得られた活性炭素繊維不織布の各評価結果を表1に示す。
【0126】
実施例4
ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)(PPO(商標登録)640、ガラス転移点温度(Tg):221℃、SABIC Innovative Plas tic製)を、(株)テクノベル製2軸押出機(製品名:KZW15TW-30MG)を用いて300℃で押出した。スクリュー回転数は700rpmに設定してスクリューの周速を33.0m/minとした。押出機の下流には、ギアポンプを設置してポリマーの吐出速度を計量し、320℃に保ったノズルへ押し出した。ノズルから吐出したポリマーを巻き取ってポリフェニレンエーテル繊維を得た。得られたポリフェニレンエーテル繊維を長さ70mmにカットした後、ニードルパンチ機により、針密度100本/cm、針深度12mm(表)、7mm(裏)の条件で表裏処理を行い、短繊維不織布を得た。得られた短繊維不織布を空気中にて200℃で2時間熱処理をしたあと、280℃まで昇温し、空気中にて280℃で0.5時間熱処理をした。続けて窒素中にて900℃で1時間炭素化処理したのち、11vol.%の水蒸気存在下の窒素中にて900℃で1時間賦活処理をして活性炭素繊維不織布を得た。得られた活性炭素繊維不織布の各評価結果を表1に示す。
【0127】
比較例1
ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)(PPO(商標登録)640、ガラス転移点温度(Tg):221℃、SABIC Innovative Plas tic製)を、N-メチル-2-ピロリドンに溶解させてポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)20質量%の原液を得た。得られた原液を紡糸ノズルから水中に湿式紡糸法によって押し出し、これを巻き取ってポリフェニレンエーテルエーテル繊維を得た。得られたポリフェニレンエーテル繊維を長さ70mmにカットした後、ニードルパンチ機により、針密度100本/cm、針深度12mm(表)、7mm(裏)の条件で表裏処理を行い、短繊維不織布を得た。得られた短繊維不織布を空気中にて200℃で2時間熱処理をしたあと、280℃まで昇温し、空気中にて280℃で0.5時間熱処理をした。続けて窒素中にて900℃で1時間炭素化処理したのち、11vol.%の水蒸気存在下の窒素中にて900℃で1時間賦活処理をして活性炭素繊維不織布を得た。得られた活性炭素繊維不織布は幅収縮率が大きく、変形が著しかった。また、繊維同士の融着が著しく、極めて柔軟性が低かった。さらに、炭素化及び賦活後の重量収率も低かった。
【0128】
比較例2
繊維長70mmのフェノール系繊維(群栄化学工業(株)製、カイノール)を使用し、ニードルパンチ機により、針密度100本/cm、針深度12mm(表)、7mm(裏)の条件で表裏処理を行い、短繊維不織布を得た。使用したカイノールは、ベヘン酸アミドを5質量%含有する。得られた短繊維不織布の各評価結果を表1に示す。さらに、得られた短繊維不織布を窒素中にて900℃で1時間炭素化処理したのち、11vol.%の水蒸気存在下の窒素中にて900℃で1時間賦活処理をして活性炭素繊維不織布を得た。炭素化及び賦活時に発生する燃焼ガスには有害な分解ガス(HCN、NOx)が含まれていた。
【0129】
【表1】
【0130】
実施例1~4の活性炭素繊維は、比較例2の活性炭素繊維に比べて繊維径が大きく、しかも機械的強度が優れていることから加工性に優れる。また、比較例2の活性炭素繊維は、炭素化及び賦活時に発生する燃焼ガスに有害な分解ガス(HCN及びNOx)が含まれているが、実施例1~4の活性炭素繊維は、炭素化及び賦活時に発生する燃焼ガスに有害な分解ガスが含まれない。また、実施例1~4の活性炭素繊維不織布は、比較例2の活性炭素繊維不織布に比べて繊維径が大きく、圧力損失係数が小さいため、フィルター等の用途に好適に使用することができる。比較例1の活性炭素繊維不織布は、ポリフェニレンエーテル繊維中の転位構造量が少ないため、幅収縮率が大きく、変形が著しかった。また、繊維同士の融着が著しく、柔軟性が低かった。さらに、炭素化及び賦活後の重量収率も低かった。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の活性炭素繊維は、フェノール系活性炭素繊維に替わる、優れた吸着性能及び物理特性を有する活性炭素繊維として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0132】
1 :有機溶剤回収システム
2A:吸着槽
2B:吸着槽
3 :有機溶剤を含有した溶剤混合ガス(被処理ガス)
4 :プレフィルター
5 :送風機
6 :下ダンパー
7 :下ダンパー
8 :活性炭素繊維不織布エレメント
9 :活性炭素繊維不織布
10:上ダンパー
11:上ダンパー
12:排気口
13:水蒸気供給ライン
14:自動弁
15:自動弁
16:脱着ガスライン
17:コンデンサー
18:冷却水供給ライン
19:セパレーター
20:戻りガスライン
22:有機溶剤吸脱着処理装置
101:ホッパー
102:押出機
103:ギアポンプ
104:濾材
105:紡糸ノズル
106:フィルター
107:保温スペース
108:不活性ガスの導入
109:加熱トーチ
図1
図2