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特許7264326ロール巻きリード線用線材、及びリード線の製造方法
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  • 特許-ロール巻きリード線用線材、及びリード線の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】ロール巻きリード線用線材、及びリード線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/18 20060101AFI20230418BHJP
   B65H 75/10 20060101ALI20230418BHJP
   B65H 75/28 20060101ALI20230418BHJP
   B65H 55/00 20060101ALI20230418BHJP
   B65H 65/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B65H75/18 Z
B65H75/10
B65H75/28
B65H55/00
B65H65/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019011222
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020117371
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003414
【氏名又は名称】東京特殊電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】坂 研二
(72)【発明者】
【氏名】山越 光
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特公昭51-010342(JP,B1)
【文献】特開2004-111449(JP,A)
【文献】特開平03-238132(JP,A)
【文献】特開2017-047998(JP,A)
【文献】特開昭56-026402(JP,A)
【文献】特開2000-036513(JP,A)
【文献】特開2003-059964(JP,A)
【文献】特開2005-056899(JP,A)
【文献】実開昭48-090559(JP,U)
【文献】実開昭57-085560(JP,U)
【文献】実開昭56-103562(JP,U)
【文献】特開平07-309537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 55/00-55/04
61/00-63/08
75/00-75/32
H01B 13/00-13/016
13/34
H01L 21/447-21/449
21/60-21/607
H01R 43/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径0.015mm以上0.2mm以下の範囲内のリード線用線材を直径50mm以上1000mm以下の範囲内のロールの外周に巻いたものであって、
前記ロールの外周面には、巻かれた前記リード線用線材を切断するための切断部が少なくとも一箇所設けられており、前記リード線用線材は、前記ロールの外周に整列巻きされており
前記切断部を挟む対向位置には、前記リード線用線材を粘接着するための剥離可能な粘接着テープが、前記外周面の上に貼られている又は前記リード線用線材を覆うように貼られている、ことを特徴とするロール巻きリード線用線材。
【請求項2】
前記リード線用線材は、引張強度が650~1800MPaの範囲内である、請求項1に記載のロール巻きリード線用線材。
【請求項3】
前記リード線用線材が、単層の密着巻き又は単層若しくは多層の定ピッチ巻きされている、請求項1又は2に記載のロール巻きリード線用線材。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載のロール巻きリード線用線材を切断部で切断してなるリード線の製造方法であって、
前記切断部を挟む対向位置には、整列巻きされた前記リード線用線材を粘接着するための剥離可能な粘接着テープが前記外周面の上に貼られている及び/又は前記リード線用線材を覆うように貼られているロール巻きリード線用線材を準備し、前記リード線用線材を前記切断部で切断し、切断された前記リード線の長手方向の両端部が前記粘接着テープに粘接着されている、ことを特徴とするリード線の製造方法。
【請求項5】
前記リード線が、長さ0.15m以上3m以下の範囲内で直径0.015mm以上0.2mm以下の範囲内である、請求項に記載のリード線の製造方法。
【請求項6】
前記リード線は、引張強度が650~1800MPaの範囲内である、請求項4又は5に記載のリード線の製造方法。
【請求項7】
前記粘接着テープから前記リード線一本一本を剥がして取り出す、請求項4~6のいずれか1項に記載のリード線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール巻きリード線用線材、及びリード線の製造方法に関する。さらに詳しくは、例えばリード線の一本一本を、絡まることなく、決められた穴やチューブに挿入したり、決められた順番で端末に接続したりする場合に適用できるロール巻きリード線用線材、及びそのロール巻きリード線用線材を用いたリード線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リード線は、電気回路等において電源や電子部品等を電気的に接続するための電線であり、種々の用途に使用されている。リード線として使用する線材(リード線用線材という。)としては、直径の小さいボビン等のロールに長く巻かれた形態や、一定長さに切断した束状形態等で入手するのが通常である。
【0003】
リード線のなかには、その一本一本を、決められた穴やチューブに挿入したり、決められた順番で端末に接続したりしなければならないものがある。例えば、半導体等の電気検査に使われるプローブに繰り返し接触する検査装置用リード線は、特定のプローブと、その特定のプローブ用回路端子との間を接続しなければならず、一本一本のリード線を決められた順番で決められた位置に接続しなければならない。また、特許文献1で提案される電極カテーテルでは、複数のリング状電極にリード線が接続されるが、そうしたリード線は、一本一本を決められた穴に挿入され、特定のリング状電極と、特定の回路端子との間を接続しなければならない。また、ロボットアーム等の可動部に配線されるリード線も同様、一本一本のリード線を決められた順番で決められた位置に接続しなければならないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-085885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体検査装置用リード線、電極カテーテル用リード線、ロボットアーム配線用リード線として、高強度と高導電性を有し、細径で真直性が高いリード線の需要がある。こうしたリード線を切り出すリード線用線材を、既述のような直径の小さいボビン等のロールに長く巻いたりすると、切り出したリード線に巻癖等が生じてしまったり繰り出し時に下層の線に絡んでねじれや癖等が生じてしまったりすることがある。また、リード線を一定長さに切断して束ねたりすると、搬送時に絡みや折れ等が生じてしまったりすることがある。そうした状態で切り出した一本一本のリード線は、決められた穴やチューブに作業性良く挿入したり、決められた順番で端末に作業性良く接続するには不十分であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、リード線の一本一本を、絡まることなく、決められた穴やチューブに挿入したり、決められた順番で端末に接続したりする場合に好ましく適用できる、ロール巻きリード線用線材、及びそのロール巻きリード線用線材を用いたリード線の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るロール巻きリード線用線材は、直径0.015mm以上0.2mm以下の範囲内のリード線用線材を直径50mm以上1000mm以下の範囲内のロールの外周に巻いたものであって、前記ロールの外周面には、巻かれた前記リード線用線材を切断するための切断部が少なくとも一箇所設けられており、前記リード線用線材は、前記ロールの外周に整列巻きされている、ことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、上記直径のロールの外周に上記線径のリード線用線材が整列巻きされているので、切り出した長さ0.15m以上3m以下の範囲内のリード線に巻癖等が生じてしまったり繰り出し時に下層の線に絡んでねじれや癖等が生じてしまったりすることがない。そうして切り出した一本一本のリード線は、決められた穴やチューブに作業性良く挿入したり、決められた順番で端末に作業性良く接続することができる。
【0009】
本発明に係るロール巻きリード線用線材において、前記リード線用線材は、引張強度が650~1800MPaの範囲内であり、真直度が曲率半径で300以上である、ことが好ましい。この発明によれば、特に近年需要がある細径で高真直性で高強度のリード線の一本一本を、絡まることなく、決められた穴やチューブに挿入したり、決められた順番で端末に接続したりすることができる。
【0010】
本発明に係るロール巻きリード線用線材において、前記切断部を挟む対向位置には、前記リード線用線材を粘接着するための剥離可能な粘接着テープが、前記外周面の上に貼られている又は前記リード線用線材を覆うように貼られていることが好ましい。
【0011】
本発明に係るロール巻きリード線用線材において、前記リード線用線材が、単層の密着巻き又は単層若しくは多層の定ピッチ巻きされている。
【0012】
(2)本発明に係るリード線の製造方法は、上記本発明に係るロール巻きリード線用線材を前記切断部で切断してなるリード線の製造方法であって、前記切断部を挟む対向位置には、整列巻きされた前記リード線用線材を粘接着するための剥離可能な粘接着テープが前記外周面の上に貼られている及び/又は前記リード線用線材を覆うように貼られているロール巻きリード線用線材を準備し、前記リード線用線材を前記切断部で切断し、切断された前記リード線の長手方向の両端部が前記粘接着テープに粘接着されている、ことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、ロール巻きリード線用線材を切断部で切断してなるリード線が得られるので、得られたリード線には、巻癖、ねじれ等が生じていない。得られた一本一本のリード線は、決められた穴やチューブに作業性良く挿入したり、決められた順番で端末に作業性良く接続することができる。
【0014】
本発明に係るリード線の製造方法において、前記リード線が、長さ0.15m以上3m以下の範囲内で直径0.015mm以上0.2mm以下の範囲内である。この発明によれば、巻癖、ねじれ等がない細径で長いリード線を得ることができる。
【0015】
本発明に係るリード線の製造方法において、前記リード線は、引張強度が650~1800MPaの範囲内であり、真直度が曲率半径で300以上である。この発明によれば、特に近年需要がある細径で高真直性で高強度のリード線の一本一本を、絡まることなく、決められた穴やチューブに挿入したり、決められた順番で端末に接続したりする作業効率を高めることができる。
【0016】
本発明に係るリード線の製造方法において、前記粘接着テープから前記リード線一本一本を剥がして取り出す。この発明によれば、剥離可能な粘接着テープから剥がしたリード線一本一本を、決められた穴やチューブに作業性良く挿入したり、決められた順番で端末に作業性良く接続するために使用できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リード線用線材の一本一本を、絡まることなく、決められた穴やチューブに挿入したり、決められた順番で端末に接続したりする場合に好ましく適用できる、ロール巻きリード線用線材及びリード線用線材を提供することができる。
【0018】
こうした態様で使用者に納入されることで、使用者は一度のカットで同じ長さのリード線を得ることができ、工数を大幅に削減することができる。また、リード線同士の絡まりがなく、ハンドリング性を向上させて作業性を高めることができる。また、粘接着テープから先の切断部分が揃っているため、例えば隙間を空けた定ピッチ巻きのすだれ状のリード線では、予備はんだ処理、めっき処理、被膜剥離処理等の端末処理を一度に行うことができる。また、巻きピッチを合わせれば、電極端子との接続を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るロール巻きしたリード線用線材の一例を示す模式図であり、(A)は剥離可能な粘接着テープがロールの外周面に設けられた例であり、(B)は剥離可能な粘接着テープがリード線用線材を覆うように設けられた例である。
図2】リード線用線材が巻かれるロールの一例を示す構成図であり、(A)は切断部が一箇所設けられた例であり、(B)は切断部が二箇所設けられた例である。
図3】切断部で切断されて得られたリード線の例であり、(A)は密着巻きされたリード線の例であり、(B)は定ピッチ巻きされたリード線の例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るロール巻きリード線用線材、及びそのロール巻きリード線用線材を用いたリード線の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
[ロール巻きリード線用線材]
本発明に係るロール巻きリード線用線材10は、図1に示すように、直径0.015mm以上0.2mm以下の範囲内のリード線用線材1を直径50mm以上1000mm以下の範囲内のロール2の外周に巻いたものである。ロール2の外周面Sには、巻かれたリード線用線材1を切断するための切断部3が少なくとも一箇所設けられており、リード線用線材1は、ロール2の外周に整列巻きされている、ことに特徴がある。
【0022】
このロール巻きリード線用線材10は、上記直径のロール2の外周に上記線径のリード線用線材1が整列巻きされているので、切り出したリード線21に巻癖等が生じてしまったり繰り出し時に下層の線に絡んでねじれや癖等が生じてしまったりすることがない。そうして切り出した一本一本のリード線21は、決められた穴やチューブに作業性良く挿入したり、決められた順番で端末に作業性良く接続することができる。
【0023】
以下、各構成要素を詳しく説明する。
【0024】
(リード線用線材)
リード線用線材1は、ロールの外周に整列巻きされている。このリード線用線材1は、半導体検査装置用リード線、電極カテーテル用リード線、ロボットアーム配線用リード線等として一本一本に切断したリード線21を、決められた穴やチューブに作業性良く挿入したり、決められた順番で端末に作業性良く接続するための長尺線材であればよい。特に、高強度と高導電性を有し、細径で真直性が高いリード線の長尺線材であることが好ましい。
【0025】
リード線用線材1は、直径0.015mm以上0.2mm以下の範囲内の細径の長尺線材である。リード線用線材1は特に限定されないが、例えば、銀を2~10質量%含有する銅合金線、錫を0.1~8.0質量%含有する銅合金線、Zr(ジルコニウム)を0.1~3.0質量%含有する銅合金線等を好ましく挙げることができる。リード線用線材1の表面には、導電率の向上、予備はんだ付け性の向上、はんだ細りの抑制等の各目的に応じためっき層が設けられていてもよい。めっき層としては、厚さ0.1~2.0μm程度の銀めっき層、ニッケルめっき層、錫めっき層、及び金めっき層等を任意に選択して使用することができる。
【0026】
リード線用線材1は高強度で高真直性であることが好ましく、引張強度としては、650~1800MPaの範囲内であることが好ましい。真直度としては、曲率半径で300以上であることが好ましい。こうした細径で高真直性で高強度のリード線21は、一本一本を、絡まることなく、決められた穴やチューブに挿入したり、決められた順番で端末に接続したりするための線材として特に近年需要がある。なお、引張強度は、引張試験機、例えば卓上形精密万能試験機(株式会社島津製作所製、AGS-X)等で測定することができる。真直度の曲率半径は、自然放置後の曲率半径をスケールで実測して得ることができる。
【0027】
リード線用線材1は、絶縁被覆されていないいわゆる裸電線であってもよいし、絶縁被覆された絶縁電線(いわゆるマグネットワイヤ)であってもよい。絶縁被覆する場合における絶縁材料は、特に限定されないが、はんだ付け時に分解してはんだ付けを容易にする樹脂が好ましく、例えばポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることが好ましい。絶縁被膜の厚さは特に限定されないが、例えば1.0~10μmの範囲内の厚さで設けることが好ましい。
【0028】
こうしたリード線用線材1の作製は特に限定されないが、例えば、所定太さの銅合金線を準備し、その銅合金線を最終線径まで伸線加工し、必要に応じてめっき等を施し、その後に真直加工し、その後必要に応じて絶縁被膜を設けて、得ることができる。
【0029】
(ロール)
ロール2は、直径50mm以上1000mm以下の範囲内の円形断面形状又は略円形断面形状であり、リード線用線材1を一周長さ0.15m以上3m以下の範囲内でその外周に巻くことができるものである。ロール2の淵には、一般的なボビンのようなつば部(図示しない)が設けられていてもよい。つば部の高さは、ロール巻きリード線用線材10の製造作業や切断部3での切り出し作業等の容易さを考慮して設計され、特に限定されない。ロールの材質も特に限定されないが、例えば、ABS、ポリプロピレン、ポリスチレン等を挙げることができる。こうしたロールは、射出成形、切削加工等で作製することができる。なお、ロール幅L1は任意であり、特に限定されない。
【0030】
ロール2の外周面Sには、図2に示すように、巻かれたリード線用線材1を切断するための切断部3が少なくとも一箇所設けられている。少なくとも一箇所であるので、二箇所以上設けられていてもよいが、好ましくは一箇所又は二箇所である。切断部3が一箇所設けられている場合は、図2(A)に示すように、その切断部3でリード線用線材1を切断することで、ほぼ外周長さのリード線21を得ることができる。一方、切断部3が二箇所設けられている場合は、図2(B)に示すように、一箇所の切断部3でリード線用線材1を切断することでほぼ外周長さのリード線21を得ることができ、二箇所の切断部3でリード線用線材1を切断することで外周長さよりも短いリード線21を得ることができ、長さの異なるリード線21を使用する場合や、長さの異なるリード線21用の共通ロールとして使用する場合等に便利である。切断部3の長手方向の長さL2は特に限定されないが、リード線用線材1の巻き幅L3よりも大きければよく、ロール幅L1と同じであってもよいし、ロール幅L1よりも短くてもよい。
【0031】
切断部3の凹み幅Wは、カッター等の切断具で切断可能な幅であればよく、切断具の種類に応じた幅で設けられる。その凹み幅Wは特に限定されないが、例えば10~30mm程度を挙げることができる。切断部3は、図2に示すように、ロール2の外周に一定幅Wの凹みや切り欠き形態となっているものである。その切断部3の形成方法は特に限定されないが、凹みや切り欠き形態を切削加工して作製したものであってもよいし、その切断部形状を含むロール2を射出成形したものであってもよい。
【0032】
このロール2の外周には、リード線用線材1が整列巻きされている。整列巻きとは、密着巻きと定ピッチ巻きの両方を含んでいる。密着巻きとは、隣り合うリード線用線材1同士が密着しながら巻かれる形態であり、定ピッチ巻きとは、隣り合うリード線用線材1同士が一定間隔を隔てて巻かれる形態である。本発明では、単層の密着巻き又は単層若しくは多層の定ピッチ巻きされている。
【0033】
切断部3を挟む対向位置には、整列巻きされた上記リード線用線材1を粘接着するための剥離可能な粘接着テープ4が、ロール2の外周面Sの上に貼られている、及び
/又は、リード線用線材1を覆うように貼られている、ことが好ましい。すなわち、粘接着テープ4は、外周面上だけに設けられていてもよいし、覆うように設けられていてもよいし、その両方であってもよい。粘接着テープ4でリード線21の両端部21a,21bが粘接着されているので、粘接着テープ4から先の切断部分が揃っており、例えば隙間を空けた定ピッチ巻きのすだれ状のリード線20では、予備はんだやめっき、被膜剥離等の端末処理を一度に行うことができる。なお、粘接着テープ4は、他の箇所、すなわち切断部3を挟む対向位置以外の箇所に設けてもよい。粘接着テープ4を対向位置以外の箇所に設けることにより、リード線21の両端部21a,21b以外の箇所も、粘接着テープ4で仮固定されている。その結果、両端部21a,21b以外の部分でばらけるのを抑制した状態で保持することができ、束ねたときのような絡まり等が発生せず、ハンドリング性がよい。
【0034】
粘接着テープ4としては、粘接着性樹脂層を備えたテープ等を挙げることができる。粘接着性樹脂層は特に限定されないが、この分野で使用されている従来公知のものを任意に採用できる。粘接着テープ4を貼る対向位置は、図1に示すように、切断部3の縁部であることが好ましいが、特に限定されない。粘接着テープ4の幅や長さも特に限定されず、貼り合わせるリード線用線材1が剥離可能に粘接着できればよい。なお、本願において、「粘接着テープ4で粘接着」とは、粘接着テープ4でリード線用線材1又はリード線21が仮固定されているという意味である。
【0035】
リード線用線材1を単層の密着巻き又は定ピッチ巻きする場合は、粘接着テープ4を外周面上又は覆うように設けることが好ましく、図3に示すように、切断後のリード線1をすだれ状にすることができるという利点がある。また、リード線用線材1を多層の定ピッチ巻きする場合は、粘接着テープ4を、外周面上に及び/又は覆うように設けることが好ましく、さらに対向位置以外の箇所にも設けてもよく、切断後のリード線1をできるだけばらけないようにした状態で保持することができる。なお、多層巻きの場合には、一層毎に粘接着テープ4を挿入して巻いてもよい。
【0036】
[リード線の製造方法]
本発明に係るリード線21の製造方法は、上記本発明に係るロール巻きリード線用線材10を切断部3で切断してなるリード線21を製造する方法である。切断部3を挟む対向位置P1,P2には、整列巻きされたリード線用線材1を粘接着するための剥離可能な粘接着テープ4が外周面Sの上に貼られている及び/又はリード線用線材1を覆うように貼られているロール巻きリード線用線材10を準備し、そのリード線用線材10を切断部3で切断し、切断されたリード線21の長手方向Yの両端部21a,21bが粘接着テープ22に粘接着されている。この製造方法により、ロール巻きリード線用線材10を切断部3で切断してなるリード線21が得られるので、得られたリード線21には、巻癖、ねじれ等が生じていない。その結果、得られた一本一本のリード線21は、決められた穴やチューブに作業性良く挿入したり、決められた順番で端末に作業性良く接続することができる。
【0037】
得られたリード線21は、整列されている電極端子のピッチと同じ間隔のすだれ状のリード線とすることも容易であり、電極端子との接続作業を効率よく行うことができる。
【0038】
得られるリード線21としては、巻癖、ねじれ等がない長さ0.15m以上3m以下の範囲内で直径0.015mm以上0.2mm以下の範囲内のものを好ましく挙げることができる。また、リード線21は、引張強度が650~1800MPaの範囲内であり、真直度が曲率半径で300以上であるものが好ましく、こうしたリード線21は、特に近年需要がある細径で高真直性で高強度のリード線である。リード線21は、粘接着テープ4から一本一本を剥がして取り出して使用することができる。
【0039】
以上説明したように、リード線用線材1をこうした態様で使用者に納入することで、使用者は一度のカットで同じ長さのリード線21を得ることができ、工数を大幅に削減することができる。また、リード線同士の絡まりがなく、ハンドリング性を向上させて作業性を高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 リード線用線材
2 ロール
3 切断部
4 粘接着テープ
10 ロール巻きリード線用線材
20 粘接着テープですだれ状にしたリード線
21 リード線
21a,21b 端部
P1,P2 粘接着テープを粘接着する対向位置
S ロール外周面
L1 ロール幅
L2 切断部の長手方向幅
L3 リード線用線材の巻き幅
W 切断部の凹み幅
Y 長手方向

図1
図2
図3