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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】脳腫瘍の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/497 20060101AFI20230418BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K31/497
A61K31/4188
A61P35/04
A61P25/00
A61P43/00 121
A61N5/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021026411
(22)【出願日】2021-02-22
(62)【分割の表示】P 2017546767の分割
【原出願日】2016-03-02
(65)【公開番号】P2021091695
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】62/249,807
(32)【優先日】2015-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/129,623
(32)【優先日】2015-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517282078
【氏名又は名称】ビヨンドスプリング ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ラン
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-144512(JP,A)
【文献】特表2013-501791(JP,A)
【文献】特表2016-516523(JP,A)
【文献】国際公開第2011/151423(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0131018(US,A1)
【文献】米国特許第05939098(US,A)
【文献】Clin. Cancer Res.,2010年,Vol.16, No.23,p.5892-5899
【文献】Anti-Cancer Drugs,2006年,Vol.17, No.1,p.25-31
【文献】Int. J. Radiat. Biol.,2011年,Vol.87, No.11,p.1126-1134
【文献】Bioorganic and Medicinal Chemistry,2014年,Vol.22,p.5050-5059
【文献】抗悪性腫瘍剤 オンコビン(登録商標)注射用 1mg,2015年02月,p.1-5
【文献】Mol. Cancer Ther.,2015年02月27日,p.1-18,doi:10.1158/1535-7163.MCT-14-0950
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 45/00-45/08
A61P 35/00
A61P 43/00
A61N 5/00- 5/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳腫瘍の治療のための、プリナブリンを含む組成物であって、前記脳腫瘍が転移性脳腫瘍である、組成物。
【請求項2】
追加の治療薬と組み合わせて用いる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記追加の治療薬が、テモゾロミドである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに放射線療法と組み合わせて用いる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記脳腫瘍が、KRASの変異型の発現を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
脳腫瘍細胞の増殖を阻害するための、プリナブリンを含む組成物であって、前記脳腫瘍が転移性脳腫瘍である、組成物。
【請求項7】
脳腫瘍細胞のアポトーシスを誘導するための、プリナブリンを含む組成物であって、前記脳腫瘍が転移性脳腫瘍である、組成物。
【請求項8】
脳腫瘍の進行を阻害するための、プリナブリンを含む組成物であって、前記脳腫瘍が転移性脳腫瘍である、組成物。
【請求項9】
プリナブリンの単回用量が、13.5mg/m (体表面積)~30mg/m (体表面積)である、請求項1の組成物。
【請求項10】
前記放射線療法が、全脳放射線照射、分割放射線療法、放射線手術、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術
本願は、2015年3月6日に出願された米国特許仮出願第62/129,623号および2015年11月2日に出願された米国特許仮出願第62/249,807号(これらの開示は全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとする)の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、化学および医薬の分野に関する。より詳細には、本発明は、プリナブリンを用いた脳腫瘍の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
脳および神経系のがんは、最も治療困難なものに含まれる。これらのがん患者の予後は、その発症段階だけでなく腫瘍のタイプおよび位置に依存する。脳のがんは多くの種類のため、発症後の平均寿命は、数ヶ月または1~2年であり得る。治療は、主に、外科的切除および放射線療法から成る。化学療法も使用されるが、おそらく、ほとんどの治療薬が脳腫瘍の治療に充分な血液脳関門を貫通しないので、適切な化学療法薬の範囲は限られている。手術および放射線に加えて既知の化学療法薬の使用は、手術および放射線単独で得られる生存率を延ばすことはほとんどない。従って、脳腫瘍のための改良された治療の選択肢が必要とされており、この状況で切迫したアンメットメディカルニーズがある。
【0004】
多形性グリオブラストーマ(GBM)は、最もよく見られる成人原発性脳腫瘍であり、その死亡率および現在の治療法に対する反応の欠如で有名である。近年における治療選択肢の実質的な改善がなく、GBM患者の生存見込みの最小の改善のみである。GBMのため、発症後の平均寿命は、およそ6~12ヶ月である。加えて、4~6ヶ月の発症後の平均寿命である転移性脳腫瘍の治療用承認薬はない。従って、脳のがんのための治療の改良に対する緊急のニーズが存在するままである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施形態は、それを必要とする対象にプリナブリンの効果量を投与することを含む脳腫瘍の治療方法に関する。
【0006】
いくつかの実施形態は、脳腫瘍細胞をプリナブリンと接触させることを含む脳腫瘍細胞の増殖阻害方法に関する。
【0007】
いくつかの実施形態は、脳腫瘍細胞をプリナブリンと接触させることを含む脳腫瘍細胞のアポトーシス誘導方法に関する。
【0008】
いくつかの実施形態は、それを必要とする対象にプリナブリンの効果量を投与することを含む脳腫瘍の進行阻害方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1a~1dは、ヒト病態を模倣するグリオブラストーマ(GBM)の前神経遺伝子組み換えマウスモデル(GEMM)を示す。図1aは、腫瘍周囲の浮腫を示すヒトGBMのT2 MRI画像を示し;図1bは、腫瘍周囲の浮腫を示すマウスGBMのT2 MRI画像を示し;図1cは、特徴的な偽柵状ネクローシスおよび微小血管増殖を示すGBMのH&E染色のヒト顕微鏡写真画像を示し;図1dは、特徴的な偽柵状ネクローシスおよび微小血管増殖を示すGBMのH&E染色のマウス顕微鏡写真画像を示す。
図2A図2Aおよび2Bは、T2強調MRI画像を示す。図2Aは、媒体、テモゾロミドまたは分割放射線照射で治療したPDGF誘導グリオーマを有するマウスの腫瘍サイズを示す。
図2B図2Aおよび2Bは、T2強調MRI画像を示す。図2Bは、媒体、テモゾロミドまたは分割放射線照射で治療したPDGF誘導グリオーマを有するマウスの生存率を示す。
図3】コントロールおよびプリナブリンで治療されたグリオブラストーマ腫瘍を有するマウスの生存率を示す。
図4】プリナブリン、テモゾロミド、および放射線の組合せならびにテモゾロミドおよび放射線組合せで治療されたKRAS変異の発現を特徴とするPDGF誘導グリオーマを有するマウスの生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
プリナブリン、(3Z,6Z)-3-ベンジリデン-6-{[5-(2-メチル-2-プロパニル)-1H-イミダゾール-4-イル]メチレン}-2,5-ピペラジンジオンは、天然化合物フェニルアヒスチンの合成類似体である。プリナブリンを、米国特許第7,064,201号および同第7,919,497号(その全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとする)に記載の方法および手順に従って容易に製造できる。いくつかの実施形態は、これに限定されないが、転移性脳腫瘍、未分化星状細胞腫、多形性グリオブラストーマ、乏突起膠腫、上衣腫、および混合膠腫を含む、脳腫瘍治療のためのプリナブリンの使用に関する。いくつかの実施形態は、プリナブリンを用いた脳腫瘍細胞の増殖阻害のためにプリナブリンの使用に関する。いくつかの実施形態は、プリナブリンを用いた脳腫瘍細胞のアポトーシス誘導のためにプリナブリンの使用に関する。いくつかの実施形態は、脳腫瘍の進行阻害のためのプリナブリンの使用に関する。いくつかの実施形態は、脳腫瘍の進行阻害のための追加治療薬または放射線と併用したプリナブリンの使用に関する。
【0011】
定義
特に定義されない限り、本明細書で使用する全技術および科学用語は、本開示に属する分野の当業者により共通に理解されるのと同じ意味を有する。全特許、出願、公開された出願、および他の出版物は、その全文を参照することにより組み入れられる。本明細書の用語の複数の定義がある場合、特に指定されない限り、本節中のものが適用される。
【0012】
本明細書で使用するとき、「対象」は、ヒトまたは非ヒト哺乳類、例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、雌ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、非ヒト霊長類または鳥類、例えば、ニワトリ、ならびにその他の脊椎動物または無脊椎動物を意味する。
【0013】
「哺乳類」という語は、その通常の生物学上の意味で使用される。従って、詳細には、サル(チンパンジー、類人猿、サル)を含む霊長類およびヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、げっ歯類、ラット、マウス、モルモット等が挙げられるが、これに限定されない。
【0014】
本明細書で使用するとき、「効果量」または「治療効果量」は、疾病もしくは病状の1つ以上の症状をある程度軽減する、またはその発症の可能性を減らす効果があり、疾病または病状を治癒させることを含む治療薬の量を表す。
【0015】
本明細書で使用するとき、「治療する」、「治療」、または「治療すること」は、予防および/または治療目的のために対象に化合物または医薬組成物を投与することを表す。
「予防的治療」という語は、疾病もしくは病状の徴候をまだ示していないが特定の疾病もしくは病状に罹患し易い、さもなければそのリスクがある対象を治療して、それにより、治療が、患者が該疾病もしくは病状にかかる可能性を減らすことを表す。「治療処置」という語は、既に疾病または病状に罹患している対象への投与治療を表す。
【0016】
「薬剤的に許容可能な塩」という語は、化合物の生物学的効果および特性を保持し、生物学的またはその他の意味において医薬品用途に有害でない塩を表す。ほとんどの場合、本明細書で開示された化合物は、アミノ基および/もしくはカルボキシル基またはそれと類似の基の存在によって酸塩および/または塩基塩を形成できる。薬剤的に許容可能な酸付加塩を無機酸および有機酸と生成できる。塩を誘導できる無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。塩を誘導できる有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等が挙げられる。薬剤的に許容可能な塩も、無機塩基および有機塩基を用いて生成できる。塩を誘導できる無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等を含有する塩基が挙げられ;特に好ましいのは、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩である。いくつかの実施形態では、無機塩基との本明細書に開示の化合物の治療は、該化合物の反応活性水素を失って、Li、Na、K、Mg2+およびCa2+等の無機カチオンを含む塩形態を得る。塩を誘導できる有機塩基としては、例えば、第一級、第二級、および第三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂等、特に、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびエタノールアミンが挙げられる。1987年9月11日に公開されたJohnstonらの国際公開第87/05297号(その全文を参照することにより本明細書に組み入れられる)に記載されているように、多くのこのような塩は当技術分野で公知である。
【0017】
いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の薬剤的に許容可能な希釈剤をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、薬剤的に許容可能な希釈剤は、コリフォール(登録商標)(ポリエチレングリコール(15)-ヒドロキシステアレート)を含むことができる。いくつかの実施形態では、薬剤的に許容可能な希釈剤は、プロピレングリコールを含むことができる。いくつかの実施形態では、薬剤的に許容可能な希釈剤は、コリフォールおよびプロピレングリコールを含むことができる。いくつかの実施形態では、薬剤的に許容可能な希釈剤は、コリフォールおよびプロピレングリコールを含むことができ、希釈剤の総重量に対してコリフォールは約40重量%であり、プロピレングリコールは約60重量%である。いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の他の薬剤的に許容可能な賦形剤をさらに含むことができる。
【0018】
標準的製剤処方技術を、Remington's The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott Williams & Wilkins (2005)(その全文を参照することにより本明細書
に組み入れられる)に記載のものなど、本明細書に記載の医薬組成物を製造するために使用できる。従って、いくつかの実施形態は:(a)プリナブリンまたはその薬剤的に許容可能な塩の安全かつ治療効果のある量;および(b)薬剤的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤またはその組合せを含む医薬組成物を含む。
【0019】
他の実施形態は、別々の組成物または同じ組成物で、プリナブリンおよび追加の治療薬の同時投与を含む。従って、いくつかの実施形態は、(a)プリナブリンまたはその薬剤的に許容可能な塩の安全かつ治療効果のある量および(b)薬剤的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤またはその組合せを含む第一医薬組成物;ならびに(a)追加の治療薬の安
全かつ治療効果のある量および(b)薬剤的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤またはその組合せを含む第二医薬組成物を含む。いくつかの実施形態は、(a)プリナブリンまたはその薬剤的に許容可能な塩の安全かつ治療効果のある量;(b)追加の治療薬の安全かつ治療効果のある量;および(c)薬剤的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤またはその組合せを含む医薬組成物を含む。
【0020】
本明細書に記載の医薬組成物の投与は、これに限定されないが、経口、舌下、口腔、皮下、静脈内、鼻腔内、局所、経皮、皮内、腹腔内、筋肉内、肺内、腟内、直腸内、または眼内を含む同様な有用性を果たす薬剤の投与の許容された方法のいずれでもよい。経口および非経口投与は、好ましい実施形態の対象である徴候を治療する際にお決まりのことである。
【0021】
「薬剤的に許容可能な担体」または「薬剤的に許容可能な賦形剤」という語は、いずれかおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を包含する。医薬作用物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は当技術分野で周知である。従来の媒体または薬剤が有効成分と相溶性がない場合を除き、治療組成物での使用が期待される。加えて、当技術分野で共通に使用されるような様々なアジュバントを含有してもよい。医薬組成物中への様々な成分の含有についての考察は、例えば、Gilman et al. (Eds.) (1990); Goodman and Gilman's: The Pharmacological Basis of
Therapeutics, 8th Ed., Pergamon Press(その全文を参照することにより本明細書に組み入れられる)に記載されている。
【0022】
薬剤的に許容可能な担体またはその成分の役割ができる物質のいくつかの例は、ラクトース、グルコースおよびショ糖などの糖類;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン類;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、およびメチルセルロースなどのセルロースおよびその誘導体;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;ステアリン酸およびステアリン酸マグネシウムなどの固形潤滑剤;硫酸カルシウム;ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびカカオ油などの植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール類;アルギン酸;ツイーンなどの乳化剤;ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤;着色剤;香味料;打錠薬剤、安定剤;酸化防止剤;防腐剤;発熱物質なしの水;等張食塩水;およびリン酸緩衝液である。
【0023】
本明細書に記載の組成物を好ましくは単位剤形で提供する。本明細書で使用するとき、「単位剤形」は、適正な医療行為に従って、1回の投与で動物、好ましくは哺乳類対象に投与するのに適切な化合物または組成物の量を含有する組成物である。しかしながら、1回または単位剤形の製剤は、該剤形を1日1回または治療過程当たり1回投与することを意味しない。このような剤形は、1日1回、2回、3回またはそれ以上投与されると考えられ、ある期間(例えば、約30分から約2~6時間まで)にわたって点滴で投与してもよく、または持続点滴として投与してもよく、1回の投与を特に除外しないが、治療過程中に1回より多く与えられてもよい。製剤形態が治療全過程を特に予期せず、このような決定は製剤形態よりむしろ治療の当業者に委ねられると当業者は認識するだろう。
【0024】
上記有用な組成物は、様々な投与経路、例えば、経口、舌下、口腔、鼻腔、直腸、局所(経皮および皮内を含む)、眼、脳内、頭蓋内、くも膜下腔内、動脈内、静脈内、筋肉内、または他の非経口投与経路用に適切な形態のいずれでもよい。経口および鼻腔用組成物は、吸入により投与され、利用可能な方法により製造される組成物を含むと当業者は認識するだろう。所望の特定の投与経路に応じて、当技術分野で周知の様々な薬剤的に許容可能な担体を使用してもよい。薬剤的に許容可能な担体としては、例えば、固形または液体充填剤、希釈剤、ヒドロトロピー剤、界面活性剤、およびカプセル化物質が挙げられる。
必要に応じて、化合物または組成物の活性と実質的に干渉しない医薬活性物質を含有してもよい。化合物または組成物と共に使用する担体の量は、化合物の単位用量当たり投与する物質の実用量を提供するのに充分なものである。本明細書に記載の方法で有用な剤形を製剤するための技術および組成物は、以下の参考文献(全て参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている:Modern Pharmaceutics, 4th Ed., Chapters 9 and 10 (Banker & Rhodes, editors, 2002); Lieberman et al., Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets (1989); and Ansel, Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms 8th Edition (2004)。
【0025】
錠剤、カプセル剤(例えば、液体ゲルカプセルおよび固体ゲルカプセル)、顆粒剤および混合散剤などの固体形態を含む様々な経口用剤形を使用できる。適切な結合剤、潤滑剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、香味料、流動誘導剤、および溶融剤を含み、圧縮錠剤、粉薬錠剤、腸溶錠剤、糖衣錠剤、フィルムコート錠剤、または多重圧縮錠剤であり得る。液体経口用剤形としては、適切な溶媒、防腐剤、乳化剤、懸濁剤、希釈剤、甘味料、溶融剤、着色剤および香味料を含有する、水性液剤、乳剤、懸濁剤、非発泡性顆粒剤から再構成した液剤および/または懸濁剤、ならびに発泡性顆粒剤から再構成した発泡性製剤が挙げられる。
【0026】
経口投与用単位剤形の製剤に適切な薬剤的に許容可能な担体は、当技術分野で周知である。錠剤は、通常、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトースおよびセルロースなどの不活性希釈剤;デンプン、ゼラチンおよびショ糖などの結合剤;デンプン、アルギン酸およびクロスカルメロースなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルクなどの潤滑剤として従来の薬剤的に適合するアジュバントを含む。二酸化ケイ素などの流動促進剤を使用して、粉末混合物の流動特性を改良できる。FD&C染料などの着色剤を外観のために使用できる。アスパルテーム、サッカリン、メントール、ペパーミント、および果実フレーバーなどの甘味料および香料はチュアブル錠用に有用なアジュバントである。カプセル剤は、通常、上記に開示の1つ以上の固体希釈剤を含む。担体成分の選択は、味、費用、および保存性など、重要でない二次的考察に依存し、当業者により容易に製造できる。
【0027】
経口用組成物としては、液剤、乳剤、懸濁剤等も挙げられる。このような組成物の製剤に適切な薬剤的に許容可能な担体は、当技術分野で周知である。シロップ剤、エリキシル剤、乳剤および懸濁剤用担体の典型的成分としては、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液状ショ糖、ソルビトールおよび水が挙げられる。懸濁剤のため、典型的懸濁剤としては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、AVICEL RC-591、トラガントおよびアルギン酸ナトリウムが挙げられ;典型的な湿潤剤としては、レクチンおよびポリソルベート80が挙げられ;典型的防腐剤としては、メチルパラベンおよび安息香酸ナトリウムが挙げられる。経口用液体組成物は、上記開示の甘味料、香料および着色剤などの1つ以上の成分を含有してもよい。
【0028】
このような組成物を、対象組成物が所望の局所用途の近傍の胃腸管内で、または所望の作用が広がる様々な時間において放出されるように、通常、pHまたは時間依存性コーティングを用いた従来方法によりコーティングしてもよい。このような剤形としては、典型的には、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、オイドラギットコーティング、ワックスおよびシェラックの1つ以上が挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
本明細書に記載の組成物は、必要に応じて他の薬効成分を含んでもよい。
【0030】
対象化合物の全身送達を達成するために有用な他の組成物としては、舌下、口腔および
鼻腔用剤形が挙げられる。このような組成物は、典型的には、ショ糖、ソルビトールおよびマンニトールなどの可溶充填物質;およびアカシア、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの結合剤の1つ以上を含む。上記開示の流動促進剤、潤滑剤、甘味料、着色料、酸化防止剤および香料も含んでもよい。
【0031】
局所用眼科用途に処方された液体組成物を、眼に局所投与できるように製剤する。時々、製剤検討(例えば、薬剤安定性)があまり最適な快適さを必要としなくてもよいが、快適さを可能な限り最大化してもよい。快適さが最大化できない場合、局所眼科用途の患者に受け入れられるように液体を製剤してもよい。加えて、眼科的に許容可能な液体を、単回使用用に包装してもよく、あるいは複数回の使用にわたって汚染を防止するために防腐剤を含有してもよい。
【0032】
眼科用途のため、液剤または薬剤を多くの場合主要な媒体として生理食塩水を用いて製剤する。好ましくは、眼科用液剤を適切な緩衝系を用いて快適なpHに維持してもよい。製剤は、従来の薬剤的に許容可能な防腐剤、安定剤および界面活性剤も含有してもよい。
【0033】
本明細書に開示の医薬組成物中に使用してもよい防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、PHMB、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、および硝酸フェニル水銀が挙げられるが、これに限定されない。有用な界面活性剤は、例えば、ツイーン80である。同様に、様々な有用な媒体を、本明細書に開示の眼科用製剤で使用してもよい。これらの媒体としては、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび精製水が挙げられるが、これに限定されない。
【0034】
等張調整剤を必要に応じてまたは都合に応じて添加してもよい。等張調整剤としては、塩、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールおよびグリセリン、または他の適切な眼科的に許容可能な等張調整剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0035】
得られた製剤が眼科的に許容可能である限り、様々な緩衝液およびpHを調節するための手段を使用してもよい。多くの組成物のため、pHは、4~9であるだろう。従って、緩衝液としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液およびホウ酸緩衝液が挙げられる。酸または塩基を使用して、必要に応じて、これらの製剤のpHを調節してもよい。
【0036】
眼科的に許容可能な酸化防止剤としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられるが、これに限定されない。
【0037】
眼科用製剤に含有してもよい他の賦形剤成分は、キレート剤である。他のキレート剤も代わりにまたはこれと共に使用してもよいが、有用なキレート剤はエデト酸二ナトリウム(EDTA)である。
【0038】
局所用途のため、本明細書に開示の組成物を含有するクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、液剤または懸濁剤、他を使用する。局所用製剤は、概して、医薬用担体、共溶媒、乳化剤、浸透促進剤、防腐剤系、および皮膚軟化薬から成り得る。
【0039】
静脈内投与のため、本明細書に記載の組成物を、食塩水またはブドウ糖液などの薬剤的に許容可能な希釈剤中に溶解または分散してもよい。適切な賦形剤を含有して、所望のpHを達成してもよく、NaOH、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、HCl、およびクエ
ン酸が挙げられるが、これに限定されない。様々な実施形態では、最終組成物のpHは、2~8、または好ましくは4~7の範囲である。酸化防止賦形剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、アセトン-重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、チオ尿素、およびEDTAが挙げられ得る。最終静脈内組成物中に見られる適切な賦形剤の他の非限定的な例としては、リン酸ナトリウムまたはカリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、およびブドウ糖、マンニトール、およびデキストランなどの炭水化物が挙げられ得る。さらに許容可能な賦形剤は、Powell, et al., Compendium of Excipients for Parenteral Formulations, PDA J Pharm Sci and Tech 1998, 52 238-311および Nema et al., Excipients and Their Role in Approved Injectable Products: Current Usage and Future Directions, PDA J Pharm Sci and Tech 2011, 65 287-332(これら両方ともその全文を参照することにより本明細書に組み入れられる)に記載されている。抗菌剤を含有して、静菌性または静真菌性溶液を達成してもよく、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、およびクロロブタノールが挙げられるが、これに限定されない。
【0040】
静脈内投与用組成物を、投与のすぐ前に滅菌水、食塩水またはブドウ糖水溶液などの適切な希釈剤で再構成するもう1つの固体の形態で医療提供者に提供してもよい。他の実施形態では、組成物をすぐに非経口投与できる液剤で提供する。さらに他の実施形態では、組成物を投与前にさらに希釈する液剤で提供する。本明細書に記載の組成物および別の薬剤の組合せを投与することを含む実施形態では、この組合せを混合物として医療提供者に提供してもよく、または医療提供者が投与前に2つの薬剤を混合してもよく、2つの薬剤を別々に投与してもよい。
【0041】
本明細書に記載の活性化合物の実際の用量は具体的な化合物、および治療する病状に依存し;適切な用量の選択は充分に熟練技術者の知見の範囲内である。いくつかの実施形態では、プリナブリンまたは他の治療薬の単回用量は、体表面積の約5mg/m~約150mg/m、体表面積の約5mg/m~約100mg/m、体表面積の約10mg/m~約100mg/m、体表面積の約10mg/m~約80mg/m、体表面積の約10mg/m~約50mg/m、体表面積の約10mg/m~約40mg/m、体表面積の約10mg/m~約30mg/m、体表面積の約13.5mg/m~約100mg/m、体表面積の約13.5mg/m~約80mg/m、体表面積の約13.5mg/m~約50mg/m、体表面積の約13.5mg/m~約40mg/m、体表面積の約13.5mg/m~約30mg/m、体表面積の約15mg/m~約80mg/m、体表面積の約15mg/m~約50mg/m、体表面積の約15mg/m~約30mg/mであり得る。いくつかの実施形態では、プリナブリンまたは他の治療薬の単回用量は、体表面積の約13.5mg/m~約30mg/mであり得る。いくつかの実施形態では、プリナブリンまたは他の治療薬の単回用量は、体表面積の約5mg/m、約10mg/m、約12.5mg/m、約13.5mg/m、約15mg/m、約17.5mg/m、約20mg/m、約22.5mg/m、約25mg/m、約27.5mg/m、約30mg/m、約40mg/m、約50mg/m、約60mg/m、約70mg/m、約80mg/m、約90mg/m、または約100mg/mであり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、プリナブリンまたは他の治療薬の単回用量は、約5mg~約300mg、約5mg~約200mg、約7.5mg~約200mg、約10mg~約100mg、約15mg~約100mg、約20mg~約100mg、約30mg~約100mg、約40mg~約100mg、約10mg~約80mg、約15mg~約80mg、約20mg~約80mg、約30mg~約80mg、約40mg~約80mg、約10mg~約60mg、約15mg~約60mg、約20mg~約60mg、約30mg~約60mg、または約40mg~約60mgであり得る。いくつかの実施形態では、プリナ
ブリンまたは他の治療薬の単回用量は、約20mg~約60mg、約27mg~約60mg、約20mg~約45mg、約27mg~約45mgであり得る。いくつかの実施形態では、プリナブリンまたは他の治療薬の単回用量は、約5mg、約10mg、約12.5mg、約13.5mg、約15mg、約17.5mg、約20mg、約22.5mg、約25mg、約27mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約125mg、約150mg、または約200mgであり得る。
【0043】
腫瘍が制御下にあり続け、レジメンが臨床的に忍容される限り、投与期間は複数週治療サイクルであり得る。いくつかの実施形態では、プリナブリンまたは他の治療薬の単回投薬量を、週1回、好ましくは3週(21日)治療サイクルの1日目および8日目の各々に1回投与できる。いくつかの実施形態では、プリナブリンまたは他の治療薬の単回投薬量を、週1回、週2回、週3回、週4回、週5回、週6回、または1週間、2週間、3週間、4週間、もしくは5週間治療サイクル中毎日投与できる。治療サイクルの各週の同日または異なる日に投与できる。
【0044】
レジメンが臨床的に忍容される限り、治療サイクルを繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、治療サイクルをn回繰り返し、nは2~30の範囲の整数である。いくつかの実施形態では、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。いくつかの実施形態では、前の治療サイクル完了直後に新しい治療サイクルを起こすことができる。いくつかの実施形態では、前の治療サイクル完了後ある期間で新しい治療サイクルを起こすことができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物を、他の治療薬と併用して使用できる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物を、化学療法、放射線療法、および生物学的療法などの治療と組み合わせて投与または使用できる。
【0046】
治療方法
いくつかの実施形態は、脳腫瘍の治療方法に関し、該方法は、それを必要とする対象にプリナブリンの効果量を投与することを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、脳腫瘍を、転移性脳腫瘍、未分化星状細胞腫、多形性グリオブラストーマ、乏突起膠腫、上衣腫、髄膜腫、混合膠腫、およびその組合せから選択することができる。いくつかの実施形態では、脳腫瘍は、多形性グリオブラストーマである。いくつかの実施形態では、脳腫瘍は、転移性脳腫瘍である。
【0048】
いくつかの実施形態では、脳腫瘍を、未分化星状細胞腫、中枢性神経細胞腫、脈絡叢がん、脈絡叢乳頭腫、脈絡叢腫瘍、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、上衣腫瘍、線維性星細胞腫、巨細胞膠芽腫、多形性グリオブラストーマ、大脳神経膠腫症、神経膠肉腫、血管周囲細胞腫、髄芽腫、髄上皮腫、髄膜癌腫症、神経芽細胞腫、神経細胞腫、乏突起星細胞腫、乏突起膠腫、視神経鞘髄膜腫、小児上衣腫、毛様細胞性星細胞腫、松果体芽細胞腫、松果体細胞腫、多形性未分化神経芽細胞腫、多形性黄色星状膠細胞腫、原発性中枢神経系リンパ腫、蝶形骨翼髄膜腫、上衣下巨細胞星状細胞腫、上衣下腫、中枢神経系骨髄腫、および三側性網膜芽細胞腫から選択できる。
【0049】
いくつかの実施形態では、上記方法は、追加の治療薬を投与することを含むことができる。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、テモゾロミド、ベバシズマブ(bevicizumab)、エベロリムス、カルムスチン、ロムスチン、プロカルバジン、ビンクリスチン、イリノテカン、シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキサート(methatrexate)、エトポシド、ビンブラスチン(vinblasatine)、ブレ
オマイシン、アクチノマイシン、シクロホスファミド、またはイホスファミドであり得る。いくつかの実施形態では、追加の治療薬はテモゾロミドであり得る。いくつかの実施形態では、追加の治療薬はロムスチンであり得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、上記方法は、対象を放射線療法に付すことをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、放射線療法は、全脳放射線照射、分割放射線療法、および放射線手術であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、脳腫瘍は、KRASの変異型の発現を特徴とする。いくつかの実施形態では、脳腫瘍は、KRASでない変異遺伝子の発現を特徴とする。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、KRASの変異型を発現することを特徴とするがんを有する患者を同定することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、KRASの野生型を発現することを特徴とするがんを有する患者を同定することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、患者の同定は、該患者がKRAS変異を有するかどうかを決定することを含むことができる。いくつかの実施形態は、KRAS変異を有すると確認された患者のがんの治療方法に関し、該方法は、プリナブリンの薬剤的に効果のある量を患者に投与することを含み、該患者は、(i)患者から試料を集め;(ii)試料からDNAを単離し;(iii)単離DNAのKRAS遺伝子またはそのフラグメントを増幅し;および(iv)増幅したKRAS遺伝子中に変異があるかどうか検出することにより患者がKRAS変異を特徴とするがんを有するかどうかを決定することにより同定される。
【0053】
いくつかの実施形態は、脳腫瘍細胞の増殖阻害方法に関し、該方法は、脳腫瘍細胞をプリナブリンと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触が、脳腫瘍細胞を有する対象にプリナブリンの効果量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、脳腫瘍は、多形性グリオブラストーマである。
【0054】
いくつかの実施形態は、脳腫瘍細胞のアポトーシス誘導方法に関し、該方法は、脳腫瘍細胞をプリナブリンと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触が、脳腫瘍細胞を有する対象にプリナブリンの効果量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、脳腫瘍は、多形性グリオブラストーマである。
【0055】
いくつかの実施形態は、脳腫瘍の進行阻害方法に関し、該方法は、それを必要とする対象にプリナブリンの効果量を投与することを含む。
【0056】
本発明をさらに例証するため、以下の実施例を記載する。もちろん、実施例は、本発明を具体的に限定するものと解釈すべきでない。請求の範囲内のこれらの実施例の変化形は、当業者の範囲内であり、本明細書の記載、および請求された本発明の範囲内であると見なされる。読者は、本開示を用いた熟練者、および当業者は、包括的実施例なしで本発明を準備および使用できる。
【実施例
【0057】
実施例1
使用したグリオーマのマウスモデルは、グリオブラストーマ(GBM)の前神経分子サブグループを模倣するグリオーマのPDGF誘導GEMMであった。このモデルは、体細胞特異性遺伝子導入に基づき;複製可能なALVスプライスアクセプター(RCAS)レトロウイルスシステムは、細胞型特異的に分化の厳密に調節されたウインドウ内の特定の遺伝子変異の点滴を可能とした。RCAS/tv-aシステムは、RCASレトロウイルスベクターを使用して、特定の細胞集団においてRCAS受容体(tv-a)を発現する
ように遺伝子組換えしたマウスを感染させた。ここで、脳内のネスチン発現細胞にPDGFをRCAS媒介導入することにより、グリオーマを生成した。脳内の幹細胞/前駆細胞集団においてネスチンを発現し、ヒトおよびマウス脳腫瘍の両方において血管周辺部(PVN)にあるがん幹細胞のマーカーであることを示した。PDGF誘導グリオーマは、感染後4~5週間までにInk4a-arf-/-欠失と組み合わせた場合、完全な浸透率を有して発生した。これらの腫瘍は、CDKN2A(p16INK4Aおよびp14ARFの両方をコードする)欠失が「前神経」ヒトグリオーマの56%で観察されたGBMの「前神経」サブタイプを密接に模倣した。シェーレル構造、微小血管増殖および偽柵状ネクローシスなどのヒトグリオーマを規定する腫瘍細胞構造を、図1a~1dに示すようにこのGEMMにおいて再形成した。詳細には、図1aは、ヒトGBMのT2 MRI画像が腫瘍周囲の浮腫を示すことを示し;図1bは、マウスGBMのT2 MRI画像が腫瘍周囲の浮腫を示すことを示し;図1cは、特徴的な偽柵状ネクローシスおよび微小血管増殖を有するGBMのH&E染色のヒト顕微鏡写真画像を示し;図1dは、特徴的な偽柵状ネクローシスおよび微小血管増殖を有するGBMのH&E染色のマウス顕微鏡写真画像を示す。
【0058】
グリオーマ細胞は白質トラックに沿って遊走し、ニューロンおよび血管を囲み、軟膜下の空間内の脳の縁に蓄積した。これに関して、グリオーマのPDGF誘導GEMMは、PVN-GBMに酷似し、腫瘍内微小環境において腫瘍細胞と非新生細胞との間の相互作用を規定する優れた実験システムを示す。
【0059】
グリオーマのPDGF誘導モデルを使用して、図2Aおよび2Bに示すように、放射線およびテモゾロミドに対する応答を決定した。図2Aは、媒体、テモゾロミドまたは分割放射線照射で治療したPDGF誘導グリオーマを有するマウスの腫瘍サイズを示し;図2Bは、媒体、テモゾロミドまたは分割放射線照射で治療したPDGF誘導グリオーマを有するマウスの生存率を示す。
【0060】
グリオーマ保持マウスを症状により同定して、T2強調MRIにより確認した。媒体、12日間の毎日25mg/kgのテモゾロミド、または2週間毎週5日で1日2Gy(グレイ)の線量で分割放射線照射(合計20Gy)のいずれかでこれらのマウスを治療した。図2Aの2つの上の画像は、未治療(媒体)の腫瘍増殖を示し;対照的に、テモゾロミド治療および放射線照射した腫瘍はその同じ期間にわたって体積縮小した。これらの腫瘍は治療後に再発し、これらの対応するマウスのコホートの生存率曲線で示すように再発腫瘍で全動物は死んだ。データは:1)このマウスモデルで試験を行った、2)マウス生存に対するこれらの治療効果はヒト状態に酷似していた、3)全マウスは病気で死んだ、および4)これらのマウスコホートの比較的同じ結果は、本試験における生存差を検出するためにこの実験的パラダイムの使用を支持したことを例証した。
【0061】
RCAS/tv-aを用いたPDGF誘導グリオーマを有するマウスを生成した。マウスは、ネスチンプロモーターからのRCAS受容体(tv-a)の発現およびink4a/arf-/-のバックグラウンドおよびlox-stop-loxルシフェラーゼを有するトランスジェニックであり、RCAS-PDGF、またはRCAS-PDGFとG12D変異KRASを発現するRCAS-KRASとの組合せで感染させた。得られた腫瘍は、PDGF単独については、このバックグラウンドにおいて最初の4~5週間内に発生し、PDGFとRCASとの組合せから生じた腫瘍については約1週間早かった。腫瘍はGBMの組織学的特徴を有し、嗜眠の症状および不充分なグルーミング、T2強調シークエンスを用いたMRIスキャン、またはIVISシステムを用いたバイオルミネセンスイメージングを用いて同定することができる。放射線療法のため、マウスを、1回の線量について頭側に1日10Gyで治療した。この治療は、図2Bに示すように、GBM保持マウスのコホートの生存メジアンを約3週間延ばした。これらの治療したマウスは重量増加
し始め、数日内に症状の改善を示し、そのMRI画像の特徴は腫瘍サイズの安定化または縮小を示し、その後、再発および死亡した。
【0062】
G12D変異KRASを発現するPDGF誘導グリオーマを有するマウスに対してプリナブリンを試験した。4~6週齢ネスチン-tv-a/ink4a-arf-/-マウスをイソフルランで麻酔し、Df-1細胞にトランスフェクトしたRCAS-PDGF-B-HA、RCAS-KRASを注射した。ハミルトンシリンジに装着した26ゲージニードルにより定位フレームを用いて、2×10RCAS-PDGF-B-HA/RCAS-KRASの1:1混合物1マイクロリットルをマウスに注射した。細胞を右前頭葉内に注射したが、十字縫合1.75mm、側方-0.5mm、および深さ2mmに調整する。マウスを重量減少に対して注意深くモニターし、合計2連続日にわたって>0.3グラム減少した場合または腫瘍の外的徴候を示した場合試験を供した。KRAS群では、10週間週2回、マウスにプリナブリン7.5mg/kgを腹腔内注射した。コントロール群では、プリナブリン希釈剤のみ(40重量%コリフォールおよび60重量%プロピレングリコール)をマウスに注射した。マウスを、嗜眠、猫背姿勢、食欲喪失、腫瘍増殖の外的徴候、興奮、重量減少および全体的な成長障害についてモニターした。体重の20%より多く減少、移動性、摂食の無力さまたは雄で14グラム/雌で12グラム未満の重量になった場合、マウスを殺処分した。マウスを、COを用いて殺処分した;脳を回収し、10%中性緩衝ホルマリンに一夜貯蔵してから、Flex80と入れ換えて4℃で貯蔵した。
【0063】
図3は、G12D Kras変異を含むグリオブラストーマを有するマウスの生存率を示す。図3に示すように、グリオブラストーマのPDGF誘導モデルを有するマウスは、概して、コントロール群と比較したとき、プリナブリン治療群において有意により良好な生存率を有した(p=0.001)。
【0064】
実施例2
G12D変異KRASを発現するPDGF誘導グリオーマを有するマウスを、実施例1に記載の手順を用いて準備してこの実験で使用した。4~6週齢ネスチン-tv-a/ink4a-arf-/-マウスをイソフルランで麻酔し、Df-1細胞にトランスフェクトしたRCAS-PDGF-B-HA、RCAS-KRASを注射した。ハミルトンシリンジに装着した26ゲージニードルにより定位フレームを用いて、2×10RCAS-PDGF-B-HA/RCAS-KRASの1:1混合物1マイクロリットルをマウスに注射した。細胞を右前頭葉内に注射したが、十字縫合1.75mm、側方-0.5mm、および深さ2mmに調整する。マウスを重量減少に対して注意深くモニターし、合計2連続日にわたって>0.3グラム減少した場合または腫瘍の外的徴候を示した場合試験を供した。
【0065】
マウスを2つの試験群に入れた。1つの群を、テモゾロミド(TMZ)、放射線およびプリナブリンの組合せで治療した:10gy×1で照射し、TMZおよびプリナブリン希釈液中プリナブリン7.5mg/kgを10週間月曜日と木曜日の週2回腹腔内投与した。他の群、コントロール群を、TMZおよび放射線の組合せで治療した:10gy×1で照射し、TMZを10週間月曜日と木曜日の週2回腹腔内投与した。マウスを、嗜眠、猫背姿勢、食欲喪失、腫瘍増殖の外的徴候、興奮、重量減少および全体的な成長障害についてモニターした。体重の20%より多く減少、移動性、摂食の無力さまたは雄で14グラム/雌で12グラム未満の重量になった場合、マウスを殺処分した。マウスをCOを用いて殺処分した;脳を回収し、10%中性緩衝ホルマリンにO/N貯蔵してから、Flex80と入れ換えて4℃で貯蔵した。図4に示すように、グリオブラストーマのPDGF誘導モデルを有するマウスは、概して、プリナブリン+TMZ+放射線を受けるコントロール群と比較したとき、TMZ+放射線治療群において有意により良好な生存率を有した(p=0.0149)。
図1
図2A
図2B
図3
図4