(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】流体流動管理用の複合材料
(51)【国際特許分類】
A61F 13/00 20060101AFI20230418BHJP
A61F 13/02 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61F13/00 301M
A61F13/00 301J
A61F13/02 345
A61F13/02 310H
A61F13/02 310R
A61F13/02 310M
A61F13/02 390
(21)【出願番号】P 2019553297
(86)(22)【出願日】2018-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2018058477
(87)【国際公開番号】W WO2018185092
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-05
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515126536
【氏名又は名称】メンリッケ ヘルス ケア アーベー
【氏名又は名称原語表記】MOELNLYCKE HEALTH CARE AB
【住所又は居所原語表記】Gamlestadsvaegen 3c S-40252 Goeteborg Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】エリック,カールソン
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/193257(WO,A1)
【文献】特表2013-509978(JP,A)
【文献】特表2017-500167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性繊維材料を含む第1層であって、前記第1層は第1の面及び前記第1の面と反対側の第2の面を有し、前記第1の面は使用時に適用領域に面するようになされた第1層と、
吸収性材料を含む第2層であって、前記第2層は厚さを有し、前記第1層の前記第2の面に配置された第2層と、
を含み、
前記第1層全体を通してその前記第1の面から前記第2の面まで、及びさらに前記第2層の厚さの一部の中へと、複数の流路が延長し、前記複数の流路は前記第2層の全厚さまでは延長しておらず、前記流路は0.01mm~3.00mmの平均直径を有する、複合材料。
【請求項2】
前記繊維材料は水と接触された場合にヒドロゲルを形成することができる、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記第2層は前記第1層の前記第2の面の少なくとも一部と直に物理的に接触している、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記複合材料はさらに、前記第1層と前記第2層との間の境界面に接着性材料を含む、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項5】
吸収性材料を含む前記第2層は親水性発泡体を含むか又はそれである、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
吸収性材料を含む前記第2層はポリウレタンフォームを含むか又はそれである、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記流路は、前記第1層及び前記第2層及びそれら2つの層の間の境界面に対して実質的に直角に配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記第1層の前記第1の面の全面積の少なくとも20%において流路が存在しない、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記流路はパターン状に配置されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項10】
前記第1層は少なくとも50%の流体保持能力を有し、前記流体保持能力は、EN13726-1:2002に従い最初に0.9重量%生理食塩水の最大量を吸収させて40mmHgの圧力に2分間曝した場合に、生理食塩水を保持する能力として定義される、請求項1~9のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項11】
前記流路の少なくとも一部はその長さに沿って変化する直径を有し、及び/又は流路の少なくとも1つのサブセットは流路の別のサブセットの直径とは異なる直径を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項12】
前記第1層の前記第1の面の全面積当たりの流路の面積密度は、1平方センチメートル当たり0.5流路~1平方センチメートル当たり200流路である、請求項1~11のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項13】
前記第1層は不織布材料であるか又はそれを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項14】
前記吸収性繊維材料は、ポリビニルアルコール、ポリ多糖類、及びポリアクリル酸類からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーであるか又はそれを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項15】
前記繊維材料は、架橋ポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースであるか又はそれを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の複合材料を含む、医療用被覆体。
【請求項17】
前記医療用被覆体はさらに、前記第2層を覆うバッキング層、並びに/又は前記医療用被覆体を創傷部位及び/若しくは創傷周辺領域に接着するための接着剤層若しくはコーティングを含む、請求項16に記載の医療用被覆体。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか1項に記載の複合材料を製造するための方法であって、
(i)吸収性繊維材料を含む第1層を提供する工程であって、前記第1層は第1の面及び前記第1の面と反対側の第2の面を有し、前記第1の面は使用時に適用領域に面するようになされる、工程と、
(ii)前記第1層の前記第2の面に、吸収性材料を含む第2層を提供する工程と、
(iii)前記第1層の全体を通って前記第1の面から前記第2の面まで延長し、及び第2層の一部の中へとさらに延長する複数の流路を作製する工程であって、前記流路は0.01mm~3.00mmの平均直径を有する工程と、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
例えば、個人向け衛生用品、清浄システム、空気及び水分の制御、並びに皮膚及び創傷の治療及び処置等の様々な用途において、流体の流れを方向付けすることを含む流体管理が特に重要である。
【0002】
特に創傷治療においては、創傷流体を吸収及び保持するために創傷被覆体において親水性物質が日常的に使用され、さらに詳細には親水性オープンセルポリウレタンフォーム等の親水性の発泡体が使用される。親水性セルロース繊維等の親水性繊維もまた、原理上、創傷処置において有用であることが知られており、また、流体管理/液体の取り扱いにおいても使用され得る。以下では、用途の点では創傷治療及び処置に焦点を当てているが、本発明の複合材料は上記に概説した特定の適用領域を含む、他の考えられる全ての適用領域において使用されてよい。
【0003】
液体の取り扱い能力を最適化するために、創傷被覆体における創傷パッドは好ましくは、複合材料、特に、各層が好ましくは異なる材料からなり、よって異なる性能及び機能性を提供する、多層配置を含んでよい。こうした多層配置が当該技術分野で既知である範囲で、各層は典型的に、接着剤を用いて及び/又は機械的積層によって積層される。2つの層を、積層すると、又は単に「接触させる」ことによっても、境界面が作成される。
【0004】
こうした境界面は、例えば、創傷と直に接触している(近接している)繊維層であって、創傷浸出液を創傷から離れるように輸送するために最適化された繊維層と、前記繊維層と直に接触しているが、創傷からより離間している隣接発泡体層との間に、存在し得る。前記発泡体層は典型的に液体を創傷から十分に離して貯蔵するために最適化されている。しかしながら、これら2つの層の間の前記境界面は、流体の流動に対する障害物、及び従って創傷浸出液を創傷(及びそれと直に接触している繊維層)から離間させて発泡貯蔵層に輸送することに対する障害物を作り出す。
【0005】
臨床環境においては、このことは、発泡体層に十分な流体が移動せず、ゲル形成性繊維層がその最大吸収に達したときに、被覆体全体に漏れが発生する原因となることを意味し得る。このことはまた、周囲の皮膚の湿潤に起因した浸軟をもたらす場合もある。
【0006】
積層された境界面を含むこうした多層構造の一例として、特許文献1には特に、創傷接触層及び吸収性コア層を含む多層創傷被覆体が開示され、その中で、前記吸収性コア層上にホットメルト接着剤であるポリアミドウェブの「キーイング層」が提供されて、吸収性コア層を創傷接着剤層へと結合させている。同様に、特許文献2には特に、2層の発泡体層の間に挟まれた不織布層を含む、多層創傷被覆体が開示され、その中では、全ての層が熱活性化接合ウェブを用いて互いに接合可能である。これらの「キーイング」又は「接合層」は、創傷から貯蔵領域への流体の流動を、制限若しくは減少させる、又は少なくとも妨害する傾向を有する。
【0007】
2層間の境界面の存在に伴うこれらの問題は、繊維層が流体、例えば創傷浸出液と接触すると膨潤する繊維を含む場合には深刻である。特に、親水性繊維は創傷に極めて近接して使用される場合に大量の流体を吸い上げる能力を有し、その結果、繊維が最終的にヒドロゲルを形成して、流体を創傷から離間するように導くために使用される内部流路及び空隙構造が部分的に又は完全にブロックされることによってさらに創傷から発泡貯蔵層に向かう流体の流れを妨害し得る程度まで、繊維が膨潤してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第7,759,537号
【文献】欧州特許第2659865号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術の上記の及び他の欠点に鑑み、本発明の1つの目的は、特に創傷の処置における、特に使用ポイントから離間するように流体を輸送することに関する、改善された流体管理性能を有する材料であって、上記に概説した不利益を被らないか又は少なくともこれらの不利益を最小限に抑える材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によると、これらの及び他の目的は、好ましくは医療用被覆体として又は医療用被覆体における使用ための、複合材料によって達成され、前記複合材料は、
吸収性繊維材料を含む第1層であって、前記第1層は第1の面及び前記第1の面と反対側の第2の面を有し、前記第1の面は使用時に適用領域に面するようになされており、好ましくは創傷領域に面するようになされた第1層と、
吸収性材料を含む第2層であって、前記第1層の前記第2の面に配置された第2層と、
を含み、
第1層全体を通ってその前記第1の面から前記第2の面へと、及びさらに前記第2層の少なくとも一部の中へと、複数の流路が延長し、前記流路は0.01mm~3.00mm、好ましくは0.05mm~2.00mm、さらに好ましくは0.10mm~1.00mmの平均直径を有する。
【0011】
特許請求の範囲及び明細書において、用語「含む(comprising)」及び「含む(comprise(s))」は他の要素又は工程を排除せず、及び不定冠詞「a」又は「an」は複数の要素又は工程を排除しない。例えば、2層以上の吸収性材料及び/又は2層以上の吸収性繊維材料が存在してよい。さらに、前記複合材料は異なる機能性を有するさらなる層及び/又は要素を含んでいてもよい。
【0012】
単に互いに異なる従属請求項の中にそれぞれの特定の手段が列挙されているという事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。
【0013】
本発明によると、用語「繊維」は一般に糸又は糸状構造を指すものと理解すべきである。
【0014】
本発明によると、「層」は1つの平面(x及びy方向)及び前記平面に直角な厚み(z方向)において連続した延長を有するものと理解すべきであり、この厚みは典型的にx-y延長よりも小さく、好ましくは少なくとも10倍小さい。
【0015】
本発明によると、用語「複合材料」は、A.D.McNaught及びA.Wilkinsonによって編集されたIUPAC:Compendium of Chemical Terminology、第2版(「ゴールドブック」)、Blackwell Scientific Publications、Oxford(1997)、ISBN0-9678550-9-8において定義される通りに、一般的に少なくとも1種の相ドメインが連続相であり、好ましくは両方の相ドメインが連続相である多数の異なる(非気体)相ドメインを含む多成分材料を指すものとして理解すべきである。本発明によると、複合材料は吸収性繊維材料を含む少なくとも第1層と吸収性材料を含む少なくとも第2層とを含む。例えば、第2層は吸収性発泡材料であるか又はそれを含んでよく、及び/又は吸収性繊維材料であるか又はそれを含んでよい。
【0016】
本発明によると、用語「吸収性の」は、EN13726-1:2002によって測定した場合に、それ自身の重量の少なくとも3倍の量の流体を吸収する材料の性能に対応するものと理解すべきである。
【0017】
本発明の実施形態において、前記吸収性繊維材料は流体を吸収し及び保持することができる。その中で、「流体保持能力」は、EN13726-1:2002に従い0.9重量%生理食塩水の最大量を最初に吸収させて、40mmHgの圧力に2分間曝した場合に、生理食塩水を保持する材料(例えば、吸収性繊維材料)の性能として定義される。パーセンテージ(%)で示される流体保持能力は、EN13726-1:2002に従って決定されるように、残留水分量を最大吸収量で割ったものに対応する。
【0018】
本発明の実施形態において、前記第1層は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%の保持能力を有し、前記流体保持能力は上述されたように定義される。
【0019】
本発明の実施形態において、前記第1層は少なくとも80%の流体保持能力によって特徴付けられる。本発明の実施形態において、前記第1層は、少なくとも90%、又は少なくとも95%の流体保持能力によって特徴付けられる。
【0020】
高い保持能力はとりわけ、複合材料が創傷被覆体として又は創傷被覆体において使用される場合、特に、複合材料が創傷又は創傷部位と直接接触している場合に有用である。一般に、親水性繊維材料の高い保持能力により、外圧に供された場合でもより多くの液体が複合材料内に含有されるため、漏れのリスク及び例えば皮膚の浸軟が低減される。
【0021】
本発明の実施形態において、前記吸収性繊維材料を含む第1層は、EN13726-1:2002により測定した場合にそれ自身の重量の少なくとも2倍、好ましくはEN13726-1:2002により測定した場合にそれ自身の重量の少なくとも3倍、及びより好ましくはEN13726-1:2002により測定した場合に、少なくとも4倍又は少なくとも5倍の最大吸収能力に相当する、自由膨潤吸収能力によって特徴付けられる。
【0022】
本発明の実施形態において、前記吸収性繊維材料は、流体、特に水性液体と接触したときに、ヒドロゲル(「ゲル化繊維」)の形成によって液体を吸収及び保持することが可能である。用語「ヒドロゲル」を形成するとは、本発明によって使用される場合、高分子ネットワーク、特にポリマーを架橋することによって又は非線形重合によって形成されるネットワークの形成に関するものとして理解すべきであり、このネットワークは流体、特に水性液体の組み込みによって、同じ高分子ネットワークが前記流体の存在なしに有するであろう体積に比較して、その体積全体に渡って拡張される。
【0023】
本発明の実施形態において、前記第1層は、ポリビニルアルコール(PVA)、好ましくは架橋PVA、多糖類、例えば特にセルロース及びその誘導体、並びにポリアクリル酸類等から成る群から選択される少なくとも1つのポリマーであるか又はそれを含む、吸収性繊維材料を含む。
【0024】
好ましくは、セルロースポリマーは、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース;キトサン又は脱アセチル化キチン、及び藻類多糖類から成る群から選択されてよい。
【0025】
本発明の実施形態において、吸収性繊維材料を含む前記第1層は、架橋ポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロース(CMC)であるか又はそれを含む。本発明の実施形態において、前記少なくとも1つのポリマーは架橋PVA若しくはCMCであるか又はそれを含む。本発明の実施形態において、前記第1層の吸収性繊維材料は架橋ポリビニルアルコールであるか又はそれを含む。本発明の実施形態において、前記ポリビニルアルコール(PVA)は、好ましくは熱処理によって、架橋されている。本発明の実施形態において、前記親水性繊維材料はカルボキシメチルセルロースであるか又はそれを含む。
【0026】
ポリビニルアルコール(ビニルアルコールは、少なくともPVAへの重合を実行可能にする量及び純度においてでなければ、モノマーとして存在しない)を製造する1つの好適な方法として、酢酸ビニルを重合させた後、得られたポリ酢酸ビニルを加水分解してポリビニルアルコールを得る方法が挙げられる。加水分解度は100%ではない場合もあるが、ポリマー及びポリマーを含む繊維の高い親水性を確保するために、高い加水分解度(例えば少なくとも95mol%)が典型的には好ましい。よって、本発明によると、「ポリビニルアルコール」又は「PVA」はまた、ポリマー骨格においてある程度のアセテート(即ち酢酸ビニル単位)を含むことも理解すべきである。
【0027】
本発明の実施形態において、前記吸収性繊維材料はポリビニルアルコール共重合体を含む。例えば、ポリビニルアルコールは他のモノマーとの共重合によって修飾可能である。好ましくは、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコールスチレン、ポリビニルアルコール酢酸ビニル、ポリビニルアルコールビニルピロリドン、ポリビニルアルコールエチレングリコール及び/又はポリビニルアルコール、特に好ましくはポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール酢酸ビニル、ポリビニルアルコールビニルピロリドン、ポリビニルアルコールビニルアミン、ポリビニルアルコールアクリレート、ポリビニルアルコールアクリルアミド、ポリビニルアルコールエチレングリコールを、ポリビニルアルコール共重合体として使用することができる。ポリビニルアルコール共重合体は、ブロック共重合体及び/又はグラフト共重合体及び/又はブロックグラフト共重合体、統計的系又は交互系及びこれらの互いの混合物の形態で存在することができる。ポリビニルアルコールにおける他のモノマー単位の含有量は、それぞれポリビニルアルコール共重合体中のモノマー単位の総数に対して、最大で30%、好ましくは1%~30%、さらにより好ましくは5%~15%である。
【0028】
本発明の実施形態において、前記吸収性繊維材料は、ヒドロゲルとなり得るようになされた複数の繊維を含み、ここで前記複数の繊維は水溶性ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体、又は水溶性ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコール共重合体から製造され、及びヒドロゲル化は、米国特許出願公開第2013/0323195号及び/又は米国特許出願公開第2013/0274415号に開示された複数の繊維のような前記複数の繊維の熱処理によって達成され、繊維材料に関するそれらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
本発明の実施形態において、前記吸収性繊維材料は、国際公開第2013/041620号に開示されるポリマー繊維のような、ポリエチレングリコール(PEG)及び/又はポリプロピレングリコール官能性を有するポリウレタンポリマーを含む。
【0030】
ポリアクリル酸から形成される吸収性繊維の1つの例としては、Technical Absorbent Limited(英国、グリムズビー)により販売されている市販の繊維である「SAF(商標)」が挙げられる。SAF(商標)は、アクリル酸(AA)メチルアクリレート(MA)と少量の特定のアクリレート/メチルアクリレートモノマー(SAMM)との架橋ポリマーから形成され、前記アクリル酸は部分的に中和されてアクリル酸のナトリウム塩(AANa)となっている。SAF(商標)繊維は様々なステープル長、線密度及び様々な架橋度で入手可能であって、様々な吸収性レベルが得られる。
【0031】
用語「架橋された」は、本明細書において、化学結合、特に共有結合若しくはイオン結合によって、又は熱可塑性エラストマーにおけるような物理的架橋によって、相互連結された複数のポリマー分子を含む材料を記述するために用いられる。
【0032】
本発明は少なくとも部分的に、1つの平面(x-、y-方向)において全体的に連続した延長を有する吸収性繊維層が、前記層の全体的に垂直な方向(z-方向、即ち厚みの延長の方向)において、特に隣接した吸収性層に対して、制限された流体輸送を有し得るという認識に基づく。
【0033】
本発明の1つの特定の利点は、吸収性繊維層を通るだけでなく隣接層の少なくとも一部をも通って延長し、それによって界面領域又はその表面を横切るようにも流体経路が提供される流路の提供によって、吸収性繊維層の垂直方向における流体の輸送が顕著に改善されることにある。これらの経路は、繊維質及び/又は多孔質材料中の既存の流体輸送経路を補い又はさらには置換するが、そうした既存の流体輸送経路は使用中に閉鎖又は閉塞される場合もあり、典型的に流体、例えば創傷浸出液の吸い上げに関連し、したがって吸収性材料を膨潤させて流体輸送経路の断面の減少又は消失をもたらす。
【0034】
本発明の実施形態において、前記第2層は、第1層の第2の面の少なくとも一部と物理的に直に接触しており、好ましくはこの際第2層は化学的接合又は物理的接合の少なくとも1つによって第1層の第2の面に接合されている。「化学的接合」とは、化学結合の形成による、即ちその過程で特に共有結合が形成される、化学反応(いずれかの硬化を含む)による、1つの層の別の層へのいずれかの結合を言う。それに対して、「物理的接合」においては、化学結合が形成されるのではなく、2つの層を作製している分子同士が相互作用によって、特に(部分的な)変化、ファンデルワールス力等を介して互いに作用し合う。
【0035】
本発明によると、用語「直の物理的接触」は、流体の流動を(再)構築するために外力を適用する必要なく、重力、毛細管力、拡散等によって、液体が1つの層から他の層へと流動できるような、2層間のいずれかの接触に関するものと理解すべきである。
【0036】
本発明の実施形態において、前記複合材料はさらに、第1層と第2層との間の境界面において接着性材料を含み、それによって2つの層を互いに接着する。例えば、いずれかの好適な接着性材料の層を第1層と第2層との間に提供してもよい。好適な接着性材料の例としては、例えばアクリレート、ホットメルト接着剤、ポリウレタン接着剤、及びシリコーン系接着剤が挙げられる。
【0037】
本発明の実施形態において、前記第2層の吸収性材料は親水性材料、好ましくは親水性発泡材料である。
【0038】
本発明によると、用語「親水性」は、A.D.McNaught及びA.Wilkinsonによって編集されたIUPAC:Compendium of Chemical Terminology、第2版(「ゴールドブック」)、Blackwell Scientific Publications、Oxford(1997)、ISBN0-9678550-9-8において定義される通りに、一般に極性溶媒、特に水と、又は他の極性基と、相互作用する分子実体又は置換基の能力を指すものとして理解すべきである。好ましくは、用語「親水性」は材料の水透過性又は分子の水誘因性を指す。細孔を有する材料(例えば、オープンセルフォーム等)又は貫通穴を有する材料の文脈においては、その材料が水を吸い上げる(wicks up)ならば、こうした材料は「親水性」である。細孔又はいずれの貫通穴も有さない材料の文脈においては、こうした材料は、それが材料中への又は材料を通した水の流れに実質的に抵抗しないならば、「親水性」とみなされる。
【0039】
本発明の実施形態において、吸収性材料を含む前記第2層は、EN13726-1:2002により測定した場合に自身の重量の少なくとも3倍、好ましくはEN13726-1:2002により測定した場合に自身の重量の少なくとも5倍、及びより好ましくはEN13726-1:2002により測定した場合に少なくとも8倍又は少なくとも10倍の最大吸収能力に相当する、自由膨潤吸収能力によって特徴付けられる。
【0040】
本発明の実施形態において、前記第2層は、少なくとも30%、例えば少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、又は少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%又は少なくとも80%の保持能力を有し、前記流体保持能力は、EN13726-1:2002に従い0.9重量%生理食塩水の最大量を最初に吸収し、40mmHgの圧力に2分間曝された場合に、生理食塩水を保持する能力として定義される。
【0041】
本発明の実施形態において、前記吸収性材料を含む第2層は親水性ポリウレタンフォームを含むか又は親水性ポリウレタンフォームである。
【0042】
本発明の実施形態において、前記親水性フォームはポリウレタンポリマーであるか又はそれを含み、好ましくはこのポリウレタンフォーム材料は、イソシアネートでキャッピングされたポリオール又はイソシアネートでキャッピングされたポリウレタンを含むか又はそれであるプレポリマーから得られる。
【0043】
本発明の実施形態において、前記ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオール、及びポリエステルポリカーボネートポリオールから成る群から選択され、中でも、特にジ-又は任意でトリ-及びテトラオールと、ジ-又は任意でトリ-及びテトラカルボン酸又はヒドロキシカルボン酸とのポリ縮合体、又はラクトン類から選択される。
【0044】
代表的な好適なジオールとしては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、及びまた、1,2-プロパンジオール、1、3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びアイソマー、ネオペンチルグリコールまたはネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートが挙げられる。加えて、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼン、又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等のポリオールもまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0045】
本発明の実施形態において、前記ポリオールはポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシド)である。したがって、本発明の実施形態において、前記プレポリマーはイソシアネートでキャッピングされたポリエチレングリコールであるか又はそれを含む。
【0046】
本発明の実施形態において、前記プレポリマーは、前記ポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)、又はそれらのいずれかの混合物から成る群から選択されるジイソシアネート化合物との反応から誘導される。
【0047】
本発明の実施形態において、前記プレポリマーは、前記ポリオールと脂肪族であるジイソシアネート化合物との反応から誘導される。本発明の実施形態において、前記ジイソシアネート化合物はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)であるか又はそれを含む。したがって、本発明の実施形態において、前記プレポリマーはヘキサメチレンイソシアネートでキャッピングされたポリオール又はヘキサメチレンイソシアネートでキャッピングされたポリウレタンであるか又はそれを含む。
【0048】
本発明の実施形態において、前記プレポリマーはヘキサメチレンイソシアネートでキャッピングされたポリエチレングリコールであるか又はそれを含む。
【0049】
本発明の実施形態において、前記プレポリマーは、前記ポリオールと、芳香族であるジイソシアネート化合物との反応から誘導される。本発明の実施形態において、前記ジイソシアネート化合物はトルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)であるか又はそれを含む。したがって、本発明の実施形態において、前記プレポリマーは、トルエンイソシアネートでキャッピングされたポリオール若しくはメチレンジフェニルイソシアネートでキャッピングされたポリオール、又はトルエンイソシアネートでキャッピングされたポリウレタン若しくはメチレンジフェニルイソシアネートでキャッピングされたポリウレタンであるか又はそれを含む。
【0050】
本発明の実施形態において、前記プレポリマーは、トルエンイソシアネートでキャッピングされたポリエチレングリコールであるか又はそれを含む。本発明の実施形態において、前記プレポリマーはメチレンジフェニルイソシアネートでキャッピングされたポリエチレングリコールであるか又はそれを含む。
【0051】
本発明の実施形態において、前記ポリウレタンフォーム材料は、標準法ISO845:2006に従って測定される場合に60~180kg/m3の密度を有するオープンセル多孔質親水性発泡体であり、好ましくは標準法ISO845:2006に従って測定される場合に好ましくは100~150kg/m3の密度を有するポリウレタンフォーム材料である。
【0052】
本明細書で使用するとき、用語「オープンセル」は、オープンセル細孔構造中の細孔が互いに接続され、相互接続ネットワークを形成している、その発泡体の細孔構造を指す。
【0053】
本発明によると、用語「プレポリマー」はA.D.McNaught及びA.Wilkinsonによって編集されたIUPAC:Compendium of Chemical Terminology、第2版(「ゴールドブック」)、Blackwell Scientific Publications、Oxford(1997)、ISBN0-9678550-9-8において定義される通りに、一般にその分子が反応基によってさらなる重合を行い、それによって2以上の構造単位を最終ポリマーの少なくとも1種の鎖に与えることができるポリマー又はオリゴマーを指すものとして理解すべきである。
【0054】
本発明の重要な態様は、複数の流路が、第1層全体を通ってその前記第1の面から前記第2の面へと延長し、さらに前記第2層の少なくとも一部の中へと延長することである。
【0055】
本発明によると、用語「流路」は、一般的に、オープン構造、即ち流体(液体又は気体)の貫通流動を可能にする構造であって、意図される使用の間に流体で満たされない限り、層を作っている材料、特に吸収性繊維材料によって閉塞されない構造を指すものと理解すべきである。実施形態において、これらの流路は、実質的にそれらの長さ全体に渡って、上述した意味において「オープン」である。
【0056】
特に、これらの流路が意図される使用の間に流体で満たされることはあるものの、これらの流路は、例えば膨潤/ヒドロゲルの形成に起因して、使用中の密度が増大し得る材料の存在下での使用中を含む使用中に、液体流動に対して流路が永久的に閉鎖されないという意味において、オープンな構造を保持する。
【0057】
これらの流路の(平均)直径は使用中に増大又は(より典型的には)減少してもよいが、実質的にすべての流路が実質的にすべての流体流動に対して閉鎖される程度までは減少しないということが理解される。本発明の実施形態において、前記流路は、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも2:1、さらに好ましくは少なくとも5:1のアスペクト比、即ち(平均)開口長さと(平均)開口直径との比によって特徴付けられる。
【0058】
本発明の実施形態において、前記流路は、第1層及び第2層に対して実質的に直角に、及びしたがってこれら2つの層の間の境界面に対しても実質的に直角に配置される。
【0059】
本発明の実施形態において、前記第1層の第1の面の全面積の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%において、流路は存在しない。例えば、本発明の実施形態において、前記第1層の第1の面の全面積は第1の中央部分及び前記第1の部分を取り囲む第2の部分を含み、流路は第1の中央部分中にのみ存在し、及び第2の部分の面積は第1層の第1の面の全面積の少なくとも20%である。
【0060】
本発明の実施形態において前記流路はパターン状に配置される。
【0061】
本発明の実施形態において、前記流路は、第1層の第1の面の領域上に正方形の連続パターンを形成し、又は第1層の第1の面の領域の中央から外に向かって次第に大きくなる円の連続パターンを形成する。
【0062】
他の実施形態において、流路は、波又はメッセージを伝えるテキスト等の、装飾的な又は情報を含むパターンを形成する。
【0063】
本発明の実施形態において、前記流路の少なくとも一部はその長さに沿って変化する直径を有し、及び/又は流路の少なくとも1つのサブセットは流路の別のサブセットの直径とは異なる直径を有する。
【0064】
本発明の実施形態において、前記第1層の前記第1の面の全面積当たりの流路の面積密度は、1平方センチメートル当たり0.5流路~1平方センチメートル当たり200流路、好ましくは1平方センチメートル当たり1流路~1平方センチメートル当たり100流路、より好ましくは1平方センチメートル当たり1流路~1平方センチメートル当たり50流路である。
【0065】
流路の上述の実施形態は、単独又は組み合わせにおいて、流体方向特性を、当面の特定の状況、例えば特定の流体粘度、特定の流量、特定の意図される使用等、に合わせて調節することを可能にする。
【0066】
本発明の実施形態において、前記第1層は0.2mm~3mm、好ましくは0.5mm~2mmの厚みを有する。
【0067】
本発明の実施形態において、前記第2層は250μm~30mm、好ましくは1mm~10mm、さらに好ましくは2mm~7mmの厚みを有する。
【0068】
本発明によって、用語、層の「厚み」はENISO9073-02に従って測定されるものと理解すべきである。
【0069】
本発明の実施形態において、前記第1層及び/又は第2層は第1サブレイヤー及び第2サブレイヤーを含む。
【0070】
本発明の実施形態において、前記第1層の吸収性繊維材料は、全体が不織布材料から成るか又はそれを含む。
【0071】
本発明によると、用語「不織布」は一般的に、織ること又は編むことによるのではなく[特に化学的(溶媒)又は熱的手段]によって連結する又は結合することによって、互いに保持された繊維のいずれかのネットワークを指すものと理解すべきである。
【0072】
本発明の実施形態において、前記第1層は10~600g/m2の坪量を有する。本発明の実施形態において、前記第1層は50~400g/m2の坪量を有する。
【0073】
本発明の実施形態において、前記第1層及び/又は第2層は抗菌剤を含む。
【0074】
本発明の実施形態において、前記抗菌剤は銀を含む。本発明の実施形態において、前記銀は金属銀である。本発明の実施形態において、前記銀は銀塩である。本発明の実施形態において、前記銀塩は硫酸銀、塩化銀、硝酸銀、銀スルファジアジン、炭酸銀、リン酸銀、乳酸銀、臭化銀、酢酸銀、クエン酸銀、銀CMC、酸化銀である。本発明の実施形態において、前記銀塩は硫酸銀である。本発明の実施形態において、前記抗菌剤はモノグアニド又はビグアニドを含む。本発明の実施形態において、前記モノグアニド又はビグアニドは、ジグルコン酸クロロヘキシジン、クロロヘキシジン二酢酸塩、クロロヘキシジン二塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)若しくはその塩、又はポリヘキサメチレンモノグアニド(PHMG)若しくはその塩である。本発明の実施形態において、前記ビグアニドはPHMB若しくはその塩である。本発明の実施形態において、前記抗菌剤は四級アンモニウム化合物を含む。本発明の実施形態において、前記四級アンモニウム化合物は塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、又はポリ-DADMACである。本発明の実施形態において、前記抗菌剤はトリクロサン、次亜塩素酸ナトリウム、銅、過酸化水素、キシリトール、ヨウ素、又ははちみつを含む。
【0075】
本発明の実施形態において、前記複合材料は、EN13726-1:2002によって測定される場合に自身の重量の少なくとも3倍、好ましくは自身の重量の少なくとも5倍、例えば自身の重量の少なくとも10倍の最大吸収能力に相当する自由膨潤吸収能力によって特徴付けられる。
【0076】
本発明の第2の態様によると、上述した及び他の目的は、本発明による複合材料を含む医療用被覆体を提供することによって達成される。
【0077】
本発明の実施形態において、(前記複合材料の)前記第1層は、例えば創傷若しくは創傷部位及び/又は創傷周辺領域及び/又は健康な皮膚等の、適用領域と接触するようになされる。本発明の実施形態において、前記第1層は創傷接触層である。本発明の実施形態において、前記第1層の第1の面は創傷部位と接触するようになされる。
【0078】
本発明によると、用語「創傷部位」又は「創傷領域」又は「創傷」は、例えば、とりわけ(しかしそれらに限定されない)慢性の創傷、急性の創傷、及び例えば閉じられた切開部及び傷跡処置等の術後の創傷を含むいずれかの開又は閉創傷として理解すべきである。
【0079】
本発明の実施形態において、前記医療用被覆体は前記複合材料の前記第1層及び第2層を、好ましくは一連の層の形態で、含み、前記医療用被覆体はさらに、少なくとも1つのさらなる層、好ましくは、前記第2層を覆うバッキング層及び/又は創傷部位及び/又は創傷周辺領域に接着するための接着剤層若しくはコーティングを含み、好ましくは2層以上のこれらのさらなる層を含む。
【0080】
本発明の実施形態において、前記医療用被覆体は創傷被覆体である。
【0081】
本発明の第1の態様による複合材料と関連して上述した実施形態、特徴、及び効果は、本発明の第2の態様による上述の医療用被覆体のために、変更すべきところは変更して、適用可能である。
【0082】
本発明の第3の態様によると、上述した及び他の目的は、複合材料の製造方法によって達成され、前記方法は、
(i)流体を吸収し及び保持することが可能な吸収性繊維材料を含む第1層を提供する工程であって、前記第1層は第1の面及び前記第1の面と反対側の第2の面を有し、前記第1の面は使用時に適用領域に面するようになされる、工程と、
(ii)前記第1層の前記第2の面に、吸収性材料を含む第2層を提供する工程と、
(iii)前記第1層全体を通って前記第1の面から前記第2の面まで延長し、及びさらに前記第2層の少なくとも一部の中へと延長する、複数の流路を作製する工程と、
を含み、
前記流路は0.01~3.00mm、好ましくは0.05~2.00mm、さらに好ましくは0.10mm~1.00mmの平均直径を有する。
【0083】
本発明の実施形態において、前記流路は、例えば打ち抜き(例えば回転ダイカット、又は針を使用)、加熱ピン、及び/又はレーザー光照射によって作製される。
【0084】
本発明の実施形態において、前記方法はさらに、前記第1層と第2層とを接合する工程を含む。例えば、前記第1層及び第2層は共有結合によって化学的に接合されるか又は直接の物理的相互作用によって接合される。
【0085】
本発明の実施形態において、前記方法はさらに、第1層の前記第1の面に第2層を提供する工程(ii)の前に、第1層及び第2層のうちの1つに接着剤層を付加し、それによって第1層と第2層とを接合する工程を含む。
【0086】
本発明の実施形態において、上記で特定した工程(ii)は、第2層を前記第1層の第1の面に直に物理接触させた後、第1層と第2層とを接合する工程を含む。例えば、本発明の実施形態において、前記第2層は発泡材料を含み、及びその際、2つの層を接合する工程は、吸収性繊維材料を含む第1層をキャスト成形されたプレポリマー組成物(即ち発泡材料の前駆体)の表面に適用して、前記プレポリマー組成物が第2層の発泡プロセス中に繊維材料(例えばアルコール又はアミン側鎖基)とその場で反応し、それによって化学的(共有)結合が形成されるようにすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0087】
ここで、本発明のこれらの及び他の態様を、本発明の代表的な実施形態を示す添付の図面を参照して詳細に示す。
【
図1】
図1は本発明の基礎となる複合材料及び流体管理の原理の概略図である。
【
図2】
図2(a)~(d)は本発明による医療用被覆体の実施形態の断面図を表している。
【
図3】
図3は本出願人により開発された吸収能力/流体分布試験における60°傾斜平面試験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下の記載において、本発明の実施形態の代表的な例示である添付の図面を部分的に参照しながら、本発明の詳細な実施形態を述べる。
【0089】
図1は本発明による複合材料の代表的な実施形態の斜視図であり、前記複合材料は吸収性繊維を含む第1層1を含む。第1層1は第1の面5及び第1の面5と反対側の第2の面6を有する。複合材料はさらに、例えば吸収性発泡材料等の吸収性材料を含む第2層2を含む。第2層2は第1層1の第2の面6と接触するように配置され、第1層1の全体(L1)を通り及び第2層2の少なくとも一部(L2)中へと複数の流路3が延長している。
【0090】
図1中に模式的に示されているように、前記複数の流路3は、第1層1の第1の面5から、第1層1の厚みを通り、第1層1と第2層2との間の境界面を横切り、第2層2の芯部へと向かう流体の輸送を促進する。
図1に示されるように、複数の流路3は垂直方向(即ちz-方向又は層1の平面とは直角の厚みの方向)に延長する。
【0091】
本発明者は、膨潤しそれによってそうでなければオープンである層1の繊維ネットワークを通る流体輸送経路を閉鎖する可能性に起因して、層1を通した流体輸送が制限される場合があること、及び同様の流体輸送は、層1を通り及び隣接する第2層2の中へと延長する複数の流路3を提供することによって顕著に改善できることを理解してきた。それによって、流体が第1層及び第2層の両方に吸収され及び保持されることができるために、複合材料の完全な吸収能力が利用される。
【0092】
第1層1における膨潤に起因してすでに制限された流体輸送が悪化すると、複合材料10における2層以上の層の間の境界面を横切る流体輸送は、例えば接着剤層の存在又は界面領域における材料構造に起因して、低下し又は制限され得る。しかしながら、この問題もまた、前記複数の流路3が第2層2の少なくとも一部を通り、したがって、層1、2間の境界面も通って延長するため、本発明の複合材料10によって対処される。
【0093】
本発明の実施形態において、前記複数の流路3は少なくとも距離L2だけ第2層2中に延長し、距離L2は第2層の総厚D2の少なくとも5%、好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも25%に相当する。
【0094】
図2a~dは、一連の層1、2の形態で実現された、複合材料10を含む医療用被覆体20、30、40、50の代表的な実施形態を例示している。
図2a~dに示される、創傷被覆体20、30、40、50であってよい医療用被覆体はしたがって、吸収性繊維材料を含む第1層1及び例えば親水性ポリウレタンフォーム材料等の吸収性材料を含む第2層2を含み、複数の流路3が第1層1の全体を通って延長し及び第2層2の少なくとも一部中に延長している。
【0095】
本発明の実施形態において、前記医療用被覆体20、30、40、50はさらに、第2層2の上面22を覆うバッキング層21、23を含み、この上面22は第1層1の第2の面6に面する面7の反対側にある。それにより、第1層1は、直接的又は間接的創傷接触層として機能することができる第1の面5を有し、ここで第1層1は創傷流体の初期吸収及び保持を提供し及び/又は創傷から第1層1中の複数の流路3を通って上部の第2層2へと創傷流体を輸送するようになされている。
【0096】
典型的には、創傷流体を創傷部位から離間するように輸送することが望ましく、特に高滲出性の創傷の場合には、創傷流体(例えば創傷浸出液)をバッキング層21、23に近接した層(例えば第2層2)に輸送し、及びその後バッキング層21、23を通して蒸発させることができることが最重要であり、このバッキング層は典型的に、気体透過性であるが液体不透過性である。医療用被覆体20、30、40、50を使用する場合、適用領域(例えば創傷部位)に面するようになされた第1の面5を有する第1層1に提供された複数の流路3は、創傷部位と流体連通し、それにより創傷から、こちらはバッキング層21、23と接触している第2層2への、創傷浸出液の輸送を促進する。
【0097】
本発明の実施形態において、
図2a~bに示されているように、前記バッキング層21は複合材料10の各層の周囲部分の外側に延長し、こうして複合材料10の層1、2の前記周囲部分を取り囲み、それによりいわゆる島状被覆体を提供するバッキング層21の縁部60を画定する。
【0098】
本発明の実施形態において、前記バッキング層21、23は好ましくは蒸気透過性である。バッキング層21、23は、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、又はポリプロピレンを含むか又はそれから成るプラスチックフィルムであってよい。本発明の実施形態において、前記バッキング層21、23は10~100μm、例えば10~80μm、例えば10~50μmの範囲の厚みを有するポリウレタンフィルムである。
【0099】
図2a、
図2b、及び
図2dに模式的に示されているように、創傷被覆体20、30、50は医療用被覆体20、30、50を創傷及び/又は周囲の皮膚表面に接着するための接着剤層又はコーティング41を含む。本発明の実施形態において、前記接着剤層又はコーティング41はシリコーン系接着剤又はアクリル系接着剤であってよく、好ましくは接着剤層又はコーティングはシリコーン系接着剤である。用語「コーティング」は、本発明によると、表面上の少なくとも1つの連続層、又は表面上の非連続カバー、例えば表面の領域上に分布された複数の粒子であると理解すべきである。
【0100】
本発明の実施形態において
図2cに示されるように、医療用被覆体40は、例えば、医療用テープ等のいずれかの付着手段によって適用の領域(例えば創傷部位又は皮膚)に付着されてよい、及び/又は別の接着性被覆体と共に使用されてよい、非粘着性の被覆体である。
【0101】
図2b及び
図2dに示されるように、創傷被覆体30、50は、例えばポリウレタンフィルム製の、穿孔層44を含んでもよく、この場合穿孔層44の非穿孔部分上に接着剤コーティング42が提供される。穿孔層44はいずれかの所望の大きさ及び形状の複数の開口45(又は貫通穴)を含む。開口45の形状及び大きさは創傷から複合材料10の上部の層への、例えば複数の流路3への所望の液体輸送を達成するようになされ得る。
【0102】
本発明の実施形態において、
図2bに示されるように、接着剤コーティング41を有する前記穿孔層44は第1層1の第1の面5に提供され、この際、穿孔層44は複合材料10の各層の周囲部分の外側に延長し、及びバッキング層21の縁部60に付着される。
【0103】
別の実施形態においては、
図2dに示されるように、穿孔層44の輪郭は複合材料10の輪郭に対応する。本発明の実施形態において、
図2aに示されるように、接着剤コーティング41は連続プラスチックフィルム46、例えば上述したようなポリウレタンフィルムに提供され、この連続プラスチックフィルム46は複合材料10の各層の周囲部分に隣接して配置され、この際連続フィルム46は前記周囲部分から離れるように延長し、バッキング層21の縁部60に付着される。さらなる実施形態(図示せず)においては、接着剤コーティングはバッキング層21の縁部60の皮膚対向表面に直接提供されてもよい。
【0104】
本発明の実施形態において、前記第1層1及び/又は第2層2は第1サブレイヤー及び第2サブレイヤー(図示せず)を含む。例えば、第1層1は不織布吸収剤層の第1サブレイヤー及び吸収性繊維又は粒子を含む第2サブレイヤーを含んでもよい。例えば、前記第1サブレイヤーは、親水性ポリウレタン材料を含んでもよい第2層2に共有結合された不織布層であってもよく、及び前記第2サブレイヤーは超吸収性繊維及び/又は超吸収性粒子及び/又は非吸収性繊維の混合物を含んでもよく、この混合物は、前記第1サブレイヤーの、発泡体層に接合された面と反対側の面に、例えば噴霧、ニードリング、又はカーディングによって、風成されてもよい。
【0105】
用語「超吸収性繊維」又は「超吸収性粒子」は、本発明により使用される場合、一般に、EN13726-1:2002により測定した場合に自身の重量の少なくとも約20倍吸収することができる、水膨潤性の、水不溶性有機又は無機材料であると理解される。超吸収性材料として使用するのに好適な有機材料としては、好ましくは、多糖類(カルボキシメチルセルロース(CMC)等の修飾多糖類を含む)、ポリペプチド等の天然材料、並びに合成ヒドロゲルポリマー等の合成材料が挙げられる。このような合成ヒドロゲルポリマーの例としては、ポリアクリル酸類のアルカリ金属塩、ポリアクリルアミド類、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート類、ポリビニルピリジン類が挙げられる。
【実施例】
【0106】
以下の実施例おいて本発明をさらに例示する。別途特定しない限り、本明細書に記載した全ての実験及び試験は標準的な研究室条件において、特に室温(20℃)及び標準圧力(1気圧)において行った。
【0107】
実施例1
使用材料
Exufiber(登録商標)(サイズ10×10cm;製品コード:REF603301;ロット:16064983;使用期限:2019年5月);Molnlycke Health Careから市販(吸収性繊維材料);
Lyofoam(登録商標)Max(サイズ10×10cm;REF603201-00;ロット15108622;使用期限:2018年09月);Molnlycke Health Careから市販;(吸収性発泡体);
Display Mount(商標)接着剤(スプレー接着剤;140A02PL6;有効期限2017年5月;MSDSNo.27-7170-7/16.06.2014);3Mから市販。
【0108】
実施形態の調製
スプレー接着剤をLyofoam(登録商標)Max製品の発泡体側に、2回の適用工程において20cmの距離から適用した。この接着剤スプレーコーティングを30秒間休ませてから、Exufiber(登録商標)製品を接着剤コーティング上に手で適用した。
【0109】
接着剤量を評価するための1つのアプローチは、薄いプラスチックフィルム(予め秤量)をLyofoam(登録商標)Max製品と同様にスプレーすることによってなされ、その後コーティングされたフィルムを秤量し、接着剤コーティング重量は約2.2グラムと計算された。このことは単に接着剤の使用量の合理的な推定として理解すべきであるが、比較的少量の接着剤が適用されたことを明確に示している。プラスチックフィルムは透明であるため、接着剤コーティングが表面を完全に覆うのではなく開放構造を与えているということも(視覚的に)観察された。
【0110】
その後、レーザープラットフォーム(V-460;Universal Laser System、システム設定:レーザーテンプレートパワー100%及びスピード3.5%)を用いて、前記材料に流路を導入した。繊維層全体を通して及び発泡体層の厚みのおよそ50%まで延長する流路が作製されるように、複合材実施形態の繊維側にレーザーを適用した。こうして、それぞれ異なる平均直径:0.25mm(実施形態A)及び0.75mm(実施形態B)を有する流路を有する、本発明の2つの実施形態を調製した。
【0111】
平均流路直径0.25mmの実施形態Aは、流路密度が17.3流路/cm2(108(9×12)流路/6.25cm2)となるように設計され、平均流路直径0.75mmの実施形態Bは、流路密度が4.8流路/cm2(120(10×12)流路/25cm2)となるように設計された。
【0112】
上述したのと同じ(流路を導入する工程は除く)材料及び方法を使用して、流路を有さない参考実施形態Cもまた調製した。
【0113】
実施例2-吸収能力/液体の分布の試験
以下に詳述する試験方法に従い、60°の傾斜を有する傾斜平面を用いて吸収能力を試験した。試験方法の目的は、試験液体が一定の流速で加えられた場合に、収縮及び重力に曝された材料の吸収能力、及びそうした材料における液体分布を決定することであり、例えば試験の1つの意図は創傷処置の状況を模することである。
【0114】
試験方法の概説
60度傾斜で固定された傾斜試験板11(典型的にはプレキシガラス製)を有する、
図3に例示された傾斜平面試験装置を用いた。試験開始前に、以下の準備を行う:1)出口穴16まで繋がる管を有するシリンジポンプに試験液体(EN13726-1による溶液A)を充てんする;2)サイズ100×100mmの試験片を切り取る;3)厚さ計を用いて、4mmHgの(試験片への)適用圧力に対応する厚みを測定する(100×100mmの試験片上へのこの圧力に対応する重量は全体で544gである);4)試験片(即ち調製した実施形態のうちの1つ;100×100mm)を傾斜試験板11上に、繊維(Exufiber(登録商標))側が試験板に面するように適用する。
図3に示されるように、傾斜試験板11には液体出口16を覆って中心に置かれた100×100mm正方形17の印を付けて、試験片を配置すべき位置を示す;5)測定された厚み(厚さ計によって測定)に対応するスペーサ13をネジ12に挿入して、(試験片上の)4mmHgの圧力を達成するための正確な距離を確保する;及び6)ネジ12をカバープレート15の穴14内に挿入しネジ上の雌ネジで締め付けることによって、カバープレート15(典型的にプレキシガラス製)を傾斜試験板11上に付着させる(それにより試験片を2枚のプレート11と15の間に挟む)。
【0115】
試験液体(EN13726-1で規定される溶液A)を出口16を通して下から試験片の中心へと(即ち繊維側に)、5ml/hの一定流量で(Dosimat/シリンジポンプを用いて)加える。2時間に渡り試験を行う(漏れが起こらない限り。起こった場合には試験を中止する)。
【0116】
結果
実施形態A及び参考実施形態Cを上述した試験方法において試験した。3ml、7ml、及び10mlの溶液Aを添加して溶液Aの吸収を、実施形態の両側(例えばExufiber(登録商標)側及び発泡体側)における湿潤/吸収面積を測定することによって、経時でモニタリングした。透明なオーバーヘッドフィルム上に湿潤領域に対応する線を引くことによって、この面積を視覚的に検査し、記録し、及び測定した。その後フィルム上の線を引いた領域を切り取り、及び秤量して吸収の面積を得た(対照としてフィルム1cm2当たりの重量を使用する)。各測定についての測定された吸収面積の比率(Exufiber(登録商標)側/Lyofoam(登録商標)Max側)を以下の表1に示す。なお、各実施形態(A及び参考C)につき3枚の試験片を用い、ここに示された結果(太字で強調)は算出された平均値である。
【0117】
【0118】
上述の試験方法において、前記試験液体は複合材料の繊維側に添加される。表1で分かるように、試験した2つの実施形態間に、吸収において、特に液体分布及び繊維層から上部の発泡体層への試験液体の輸送に関して、明確な違いがある。3mlの試験溶液が添加された後、参考実施形態Cでは添加した試験液体のうちの全体ではないとしてもほとんどが繊維層によって吸収され、相当な量の試験液体が発泡体層へと輸送された実施形態Aとは対照的であった。7ml及び10mlの試験液体をそれぞれ添加した後も、実施形態Aは、参考実施形態Cと比較して、発泡体層における試験液体の分布がより大きくなっていることが分かる。このことは、液体獲得繊維層から2層の境界面を横切って発泡体層へと向かう試験液体の輸送を促進するように働く実施形態Aに存在する流路の技術的効果を明確に示している。これに対し、参考実施形態Cはいずれの流路も有さず、したがってゲル化繊維層を通ってより少ない試験液体しか輸送できない。
【0119】
上記で提示したのと同様の試験において、試験の終わりに(即ち溶液Aを10ml添加したところで)、複合材料の2つの層(Exufiber(登録商標)及びLyofoam(登録商標)Max)を分離して秤量した。下記の表2は対応する重量及び重量比を示す。表2で分かる通り、実施形態Aは、参考実施形態Cと比較して、発泡体層中における試験液体の分布がより大きくなっている。
【0120】
【0121】
なお、特にExufiber(登録商標)繊維層はLyofoam(登録商標)Max発泡体層と比較して高い液体保持能力を有するため、発泡体層に輸送され及び吸収された少なくとも幾らかの試験液体は時間とともに繊維層に戻るように輸送される(発泡体層に面する繊維側を湿潤させる)場合がある。理論に拘束されるものではないが、このことは、試験の初期において(例えば3mlにおいて)、実施形態Aと参考実施形態Cとの間で液体分布により大きな違いが観察される理由を説明し得る。
【符号の説明】
【0122】
1 第1層
2 第2層
3 流路
5 第1層の第1の面
6 第1層の第2の面
10 複合材料
20、30、40、50 医療用被覆体