特許 7264334 試薬を基板に定量供給するためのマイクロアレイ、及びそのマイクロアレイの動作中に基板の画像を取得するための方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-04-17

(45)【発行日】2023-04-25

(54)【発明の名称】試薬を基板に定量供給するためのマイクロアレイ、及びそのマイクロアレイの動作中に基板の画像を取得するための方法

(51)【国際特許分類】

   G01N 35/10 20060101AFI20230418BHJP

【ＦＩ】

G01N35/10 J

【請求項の数】 8

(21)【出願番号】P 2020511346

(86)(22)【出願日】2018-09-05

(65)【公表番号】

(43)【公表日】2020-12-10

(86)【国際出願番号】 GB2018052505

(87)【国際公開番号】W WO2019048844

(87)【国際公開日】2019-03-14

【審査請求日】2021-07-27

(31)【優先権主張番号】1714266.2

(32)【優先日】2017-09-05

(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB

(73)【特許権者】

【識別番号】503016706

【氏名又は名称】アレイジェット リミテッド

【氏名又は名称原語表記】ＡＲＲＡＹＪＥＴ ＬＩＭＩＴＥＤ

(74)【代理人】

【識別番号】100107456

【弁理士】

【氏名又は名称】池田 成人

(74)【代理人】

【識別番号】100162352

【弁理士】

【氏名又は名称】酒巻 順一郎

(74)【代理人】

【識別番号】100123995

【弁理士】

【氏名又は名称】野田 雅一

(72)【発明者】

【氏名】ミッチェル， ベンジャミン

【審査官】草川 貴史

(56)【参考文献】

【文献】特表２００９－５４３０４２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００６－０６４６９９（ＪＰ，Ａ）

【文献】欧州特許出願公開第０１２７３３４９（ＥＰ，Ａ１）

【文献】特開２００４－２０２９６２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００５－０８８５８４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平１１－０８８７１１（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｇ０１Ｎ ３５／００－３７／００

Ｇ０１Ｎ １／００－ １／４４

Ｇ０１Ｎ ３３／４８－３３／９８

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

基板に試薬を定量供給するためのマイクロアレイヤであって、
試薬を装填するように構成され、少なくとも前記試薬を前記基板に定量供給するために複数のノズルが設けられた定量供給プリントヘッドを備え、
前記定量供給プリントヘッドが、前記マイクロアレイヤに取り付けられて、後続の本質的に平行な印刷パスで前記定量供給プリントヘッドが前記基板に対して移動できるようにし、前記定量供給プリントヘッドが、第１の印刷パス中に、前記基板の第１の端部から前記基板の第２の端部に向けて移動し、後続の印刷パス中に反対方向に移動する、マイクロアレイヤにおいて、
印刷パス中に前記定量供給プリントヘッドの後方で移動するように構成された第１のカメラと、前記印刷パス中に前記定量供給プリントヘッドの前方で移動するように構成された第２のカメラとを備え、前記第１のカメラ及び前記第２のカメラが、前記基板の画像を取得するように構成され、
前記マイクロアレイヤは、前記第１のカメラおよび前記第２のカメラに接続された処理手段が設けられており、前記処理手段が、前記第１のカメラおよび前記第２のカメラによって取得された画像を前記第１の印刷パス中に処理し、処理された前記画像に基づき且つ前記基板に印刷された前記試薬に関するパラメータを計算することを可能にし、
前記マイクロアレイヤは、前記処理手段に接続された制御手段が設けられており、
前記制御手段は、計算された前記パラメータに基づいて、前記後続の印刷パスで前記定量供給プリントヘッドの動作を変更するために、前記定量供給プリントヘッドに対する命令を生成するように構成されていることを特徴とする、マイクロアレイヤ。

【請求項2】

印刷パス中、前記定量供給プリントヘッドの前方の前記第２のカメラが、前記基板への前記試薬の前記定量供給前の前記基板の画像を取得するように構成され、前記定量供給プリントヘッドの後方の前記第１のカメラが、前記基板への前記試薬の前記定量供給後の前記基板の画像を取得するように構成されている、請求項１に記載のマイクロアレイヤ。

【請求項3】

前記第１のカメラ及び前記第２のカメラ並びに前記定量供給プリントヘッドが直線上に配置されている、請求項１又は２に記載のマイクロアレイヤ。

【請求項4】

前記第１のカメラ及び／又は前記第２のカメラによる画像の取得前又は取得中に前記基板を照明するために照明手段が設けられている、請求項１～３のいずれか一項に記載のマイクロアレイヤ。

【請求項5】

前記基板の下に配置された反射手段が設けられており、前記照明手段によって透過された光を反射し、以て、前記第１のカメラ及び前記第２のカメラによって取得される前記画像のコントラストを高める、請求項４に記載のマイクロアレイヤ。

【請求項6】

基板に溶液を定量供給するためのマイクロアレイヤの動作中に基板の画像を取得するための方法であって、
前記マイクロアレイヤが、試薬を装填するように構成され、前記試薬を前記基板に定量供給するために複数のノズルが設けられた定量供給プリントヘッドを備え、前記定量供給プリントヘッドが、前記マイクロアレイヤに取り付けられて、後続の本質的に平行な印刷パスで前記定量供給プリントヘッドが前記基板に対して移動できるようにし、前記定量供給プリントヘッドが、第１の印刷パス中に、前記基板の第１の端部から前記基板の第２の端部に向けて移動し、後続の印刷パス中に反対方向に移動し、前記マイクロアレイヤが、印刷パス中に前記定量供給プリントヘッドの後方で移動するように構成された第１のカメラと、前記印刷パス中に前記定量供給プリントヘッドの前方で移動するように構成された第２のカメラとをさらに備え、
前記方法が、
第１の印刷パスで、前記定量供給プリントヘッドを前記基板に対して移動させるステップと、
前記定量供給プリントヘッドを使用することによって前記基板に試薬を定量供給するステップと、
前記第１の印刷パス中に、前記定量供給プリントヘッドの前方で移動する前記第２のカメラを使用して、前記定量供給プリントヘッドによる少なくとも１つの前記試薬の前記定量供給前の前記基板の画像を取得するステップと、
前記第１の印刷パス中に、前記定量供給プリントヘッドの後方で移動する前記第１のカメラを使用して、前記基板への前記試薬の前記定量供給後の基板の画像を取得するステップと
を含んでおり、
前記マイクロアレイヤが処理手段を備え、
前記方法が、
前記処理手段を前記第１のカメラ及び前記第２のカメラに接続するステップと、
前記第１のカメラ及び前記第２のカメラによって取得された画像に関係するデータを前記処理手段に送信するステップと、
前記処理手段を使用して、前記第１のカメラ及び前記第２のカメラから受信された前記データを処理し、以て、処理された前記画像に基づき且つ前記基板に印刷された前記試薬に関係するパラメータを取得するステップと
を含んでおり、
前記マイクロアレイヤには、前記定量供給プリントヘッドの前記動作を制御するための制御手段が設けられており、
前記方法が、
前記制御手段を前記処理手段に接続するステップと、
前記基板に印刷された前記試薬に関係する計算された前記パラメータを前記処理手段から前記制御手段に送信するステップと、
前記制御手段を使用して、前記処理手段から受け取られた計算された前記パラメータに基づいて、前記後続の印刷パスで前記定量供給プリントヘッドの動作を変更するために、前記定量供給プリントヘッドに対する命令を生成するステップと、
前記制御手段を使用して、前記命令を前記定量供給プリントヘッドに送信するステップと
を含む、方法。

【請求項7】

前記マイクロアレイヤには照明手段が設けられており、
前記方法が、
照明手段を使用して、前記第１のカメラ及び／又は前記第２のカメラによる画像の取得前又は取得中に前記基板を照明するステップ
を含む、請求項６に記載の方法。

【請求項8】

前記マイクロアレイヤには、前記基板の下に配置された反射手段が設けられており、
前記方法が、
前記反射手段を使用して、前記照明手段によって透過された光を反射し、以て、前記第１のカメラ及び前記第２のカメラによって取得される前記画像のコントラストを高めるステップ
を含む、請求項７に記載の方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、一般に、マイクロアレイを製造するための方法及びデバイスに関する。マイクロアレイは、複数のスポットを含み、各スポットが生体分子を含む材料を含む。マイクロアレイは、定量供給プリントヘッドを使用して上記生体分子を含む適合された試薬を基板に印刷することによって作成され、特に、マイクロアレイを印刷し、印刷されたマイクロアレイの品質を検査して、基板に印刷された個々のスポットの存在、位置、及びサイズを検討することによってマイクロアレイが適正に印刷されているかどうかを決定し、印刷されたマイクロアレイの品質を改善するために補正措置を講じるための手段を提供する、方法及びデバイスを述べる。

【背景技術】

【0002】

マイクロアレイ（バイオチップとしても知られている）は、ゲノムＤＮＡ、ｃＤＮＡ、オリゴヌクレオチド配列、タンパク質、抗体などの生体分子の研究において重要である。適切には、生体分子が、順序が整えられたアレイで基板に提供され、次いで、分析物を基板に提供して、基板の生体分子への結合を決定することができる。これは、例えば遺伝子発現のプロファイリング、治療用分子の発見、又はタンパク質結合の測定のために、生体分子の相互作用又は反応を分析するのに有用であり得る。生体分子を基板に印刷することにより、多数の試料に対してそのような分析を行うことが可能になる。

【0003】

マイクロアレイは、インクジェットアレイプリンタなど、定量供給プリントヘッドを備えるアレイプリンタ又はマイクロアレイヤ（マイクロアレイ製造デバイス）によって印刷される。定量供給プリントヘッドは、プリントヘッドに装填された生体分子を含む試薬をスライドなどの固体基板に印刷するために使用される。通常、プリントヘッドには、複数の試薬が装填され、各試薬が、特定の生体分子を含む。印刷すべきスライドがトレイに装填され、プリントヘッドが、後続の印刷パスでトレイに対して移動されて、印刷ジョブ全体ですべてのスライドを印刷する。すべてのスライドが印刷されると、トレイ及びスライドは、アレイプリンタから取り外される。

【0004】

生体分子の印刷における大きな問題は、基板での生体分子を含むスポットの印刷のばらつきである。例えば、スポットのサイズ、形状、又は位置が、不適正にアレイに提供されることがあり、又は実際にスポットがまったく印刷されないことがある。

【0005】

マイクロアレイを印刷する作業は、極めて少量の多くの異なる試薬を、プリントヘッドにある別個のウェルから基板における間隔の狭い位置に転写することを必要とする。マイクロアレイの印刷は、例えば、インクジェットプリントヘッドなどノズルが設けられたプリントヘッドを使用して、接触せずに、空気を介して印刷液を基板に投射することによって行うことができる。或いは、バブルジェットなど、別のタイプのプリントヘッドを使用することもできる。

【0006】

通常、そのようなインクジェット技術の主な難点は、ノズル内の空気により、ノズルが、位置がずれた若しくは変形したスポットを印刷すること、又はスポットを印刷できないことがあり得ることである。いくつかの要因により、印刷エラーが引き起こされることがある。これらの要因には、ノズルの閉塞若しくは故障、試料沈殿、不適切な試料粘度、又は空の試薬ウェルが含まれる。

【0007】

米国特許第６，５５８，６２３号は、スライドが完成した後に、マイクロアレイを品質チェック又は検査するためのデバイス及び方法を開示している。米国特許第６，５５８，６２３号によるデバイス及び方法は、印刷ジョブ中、スライドに多数のマイクロアレイを印刷し、印刷ジョブの終了時にスライドの全体的な品質を検討して、スライドの合格又は不合格を認定するように特に構成されている。

【0008】

既知の検査及び分析技法では、スポットの印刷が完了している基板でのスポット品質を、手動介入によって又は自動的にチェックする制御システムが論じられているが、これは通常、完了した印刷ジョブの終了時に対話を必要とする。これは、複数のスライドが印刷された印刷実行後に、スライドの品質を分析することができ、補正措置を講じて、印刷されたスライドを補正することができることを意味する。この効果は、印刷されたスライドの補正を可能にするために、プリントヘッドに追加の試薬を提供する必要があることであり得る。これには、費用及び／又は時間がかかることがある。

【0009】

本発明の目的は、マイクロアレイを印刷するための装置をさらに改良すること、及びマイクロアレイをより効率的に製造し、印刷されたマイクロアレイの画像を取得して、マイクロアレイを印刷するための装置の動作中にマイクロアレイの品質をチェックすることを可能にするための方法を提供することである。

【発明の概要】

【0010】

本発明の第１の態様によれば、基板に試薬を定量供給するためのマイクロアレイヤであって、試薬を装填するように構成され、上記少なくとも試薬を基板に定量供給するために複数のノズルが設けられた定量供給プリントヘッドを備え、プリントヘッドが、マイクロアレイヤに取り付けられて、後続の本質的に平行な印刷パスでプリントヘッドが基板に対して移動できるようにし、プリントヘッドが、第１の印刷パス中に、基板の第１の端部から基板の第２の端部に向けて移動し、後続の印刷パス中に反対方向に移動する、マイクロアレイヤにおいて、印刷パス中にプリントヘッドの後方で移動するように構成された第１のカメラと、印刷パス中にプリントヘッドの前方で移動するように構成された第２のカメラとを備え、第１及び第２のカメラが、基板の画像を取得するように構成されている、ことを特徴とするマイクロアレイが提供される。

【0011】

マイクロアレイの印刷中、プリントヘッドは通常、基板にわたって左から右に移動し、その後、後続の印刷パスで右から左に移動して、後続の印刷行を印刷する。印刷パス中に印刷ヘッドの後方で移動する第１のカメラと、上記印刷パス中に印刷ヘッドの前方で移動するように構成された第２のカメラとを有する利点は、左から右又は右から左に移動するとき、基板に印刷されたマイクロアレイの画像を取得するために利用可能なカメラが常にあることである。プリントヘッドの前方及び後方の少なくとも第１及び第２のカメラの位置により、マイクロアレイヤの動作中に、印刷されたアレイの即時検査が可能になる。

【0012】

適切には、印刷パス中、プリントヘッドの前方のカメラが、基板への少なくとも１つの試薬を定量供給するための支持体の画像を取得するように構成され、プリンタヘッドの後方のカメラが、基板への試薬の定量供給後の支持体の画像を取得するように構成されている。

【0013】

適切には、少なくとも第１及び第２のカメラ並びにプリントヘッドが直線上に配置されている。

【0014】

適切には、本マイクロレイヤには、少なくとも第１及び第２のカメラに接続された処理手段が設けられており、処理手段が、上記少なくとも第１及び第２のカメラによって取得された画像を処理することを可能にする。

【0015】

適切には、本マイクロレイヤには、処理手段に接続された制御手段が設けられており、制御手段が、処理手段から受信されたデータに基づいてプリントヘッドを動作させるための命令を生成するように構成されている。

【0016】

適切には、本マイクロレイヤには、少なくとも１つの第１及び／又は第２のカメラによる画像の取得前又は取得中に基板を照明するために照明手段が設けられている。

【0017】

適切には、本マイクロレイヤには、支持体の下に配置された反射手段が設けられており、照明手段によって透過された光を反射して、少なくとも第１及び第２のカメラによって取得される画像のコントラストを高める。

【0018】

本発明の第２の態様によれば、基板に溶液を定量供給するためのマイクロアレイヤの動作中に基板の画像を取得するための方法であって、マイクロアレイヤは、試薬を装填するように構成され、試薬を基板に定量供給するために複数のノズルが設けられた定量供給プリントヘッドを備え、プリントヘッドが、マイクロアレイヤに取り付けられて、後続の本質的に平行な印刷パスでプリントヘッドが基板に対して移動できるようにし、プリントヘッドが、第１の印刷パス中に、基板の第１の端部から基板の第２の端部に向けて移動し、後続の印刷パス中に反対方向に移動し、マイクロアレイヤが、印刷パス中にプリントヘッドの前方で移動するように構成された第１のカメラと、印刷パス中にプリントヘッドの後方で移動するように構成された第２のカメラとをさらに備え、方法が、
第１の印刷パスで、プリントヘッドを基板に対して移動させるステップと、
プリントヘッドを使用することによって基板に試薬を定量供給するステップと、
プリントヘッドの後方で移動するカメラを使用して、基板に印刷された試薬の画像を取得するステップと
を含む、方法が提供される。

【0019】

適切には、本方法は、プリントヘッドの前方で移動するカメラを使用して、プリントヘッドによる少なくとも１つの試薬の定量供給前の基板の画像を取得するステップと、プリントヘッドの後方で移動するカメラを使用して、基板への試薬の定量供給後の基板の画像を取得するステップとを含む。

【0020】

適切には、マイクロアレイヤが処理手段を備え、方法が、
処理手段を第１及び第２のカメラに接続するステップと、
第１及び第２のカメラによって取得された画像に関係するデータを処理手段に送信するステップと、
処理手段を使用して、第１及び第２のカメラから受信されたデータを処理し、以て、基板に印刷された試薬に関係する情報を取得するステップと
を含む。

【0021】

適切には、マイクロアレイヤには、プリントヘッドの動作を制御するための制御手段が設けられており、方法が、
制御手段を処理手段に接続するステップと、
基板に印刷された試薬に関係する情報を処理手段から制御手段に送信するステップと、
制御手段を使用して、処理手段から受け取られた情報に基づいて、プリントヘッドを操作するための命令を生成するステップと、
制御手段を使用して、命令をプリントヘッドに送信するステップと
を含む。

【0022】

適切には、マイクロアレイヤには照明手段が設けられており、方法が、
照明手段を使用して、第１及び／又は第２のカメラによる画像の取得前又は取得中に基板を照明するステップ
を含む。

【0023】

適切には、マイクロアレイヤには、基板の下に配置された反射手段が設けられており、方法が、
反射手段を使用して、照明手段によって透過された光を反射し、以て、第１及び第２のカメラによって取得される画像のコントラストを高めるステップ
を含む。

【0024】

ここで、本発明の実施形態を、図面を参照して単に例として述べる。

【図面の簡単な説明】

【0025】

【図1】本発明の装置の断面図である。

【図2】本発明の方法の流れ図である。

【発明を実施するための形態】

【0026】

以下の説明では、本発明の様々な例示的実施形態を完全に理解できるように、いくつかの具体的な詳細を述べる。しかし、これらの具体的な詳細の一部又は全部を伴わずに本発明の実施形態を実施することができることが当業者には理解されよう。なお、述べている実施形態の関連の態様を不必要に曖昧にしないように、よく知られているプロセス操作については詳細には述べていない。図面において、同様の参照番号は、いくつかの図を通じて同一若しくは同様の機能又は特徴を表す。

【0027】

本明細書では、試薬に言及する。試薬という語は、印刷によってマイクロアレイを得るために使用されるように適合された任意の生体材料を表すことを意図されている。

【0028】

本明細書では、マイクロアレイという語は、基板の上に定量供給された複数のスポットが設けられた基板を表すために使用され、これらのスポットは、順序を整えて秩序立てて基板に定量供給され、各スポットが所定の量の生体材料を含む。

【0029】

本明細書では、プリントヘッドに言及する。プリントヘッドは、例えば複数のノズルを使用することによって生体材料を基板に定量供給するように構成された装置を表すことを意図されている。

【0030】

図１を参照すると、マイクロアレイプリンタ又はマイクロアレイヤ１０の断面図が示されている。マイクロアレイヤ１０は、プリントヘッド３を備え、プリントヘッド３は、基板に試薬を定量供給するように構成されている。通常、プリントヘッド３は、複数の試薬を装填するように構成され、上記試薬を収容するための各ウェルが、基板に試薬を定量供給するための複数のノズルに接続されている。理解されるように、プリントヘッド３は、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、ナイロン膜、又はガラスなど任意の適切な基板に印刷するように構成することができる。

【0031】

プリントヘッド３は、基板に対するプリントヘッド３の相対運動を可能にするようにマイクロアレイヤに取り付けられている。図１によれば、プリントヘッド３は、複数のスライド４を印刷するために使用され、複数のスライド４は、複数のスライド４が配置されるトレイ５に配置される。図１で見られるように、通常、プリントヘッド３は、第１の印刷パスにおいてトレイ５にわたって左から右に移動し、次いで後続の印刷パスにおいて右から左に移動して戻るように構成されており、第１の印刷パスと各後続の印刷パスとは、本質的に平行である。

【0032】

マイクロアレイヤ１０には、第１のカメラ１及び第２のカメラ２が設けられており、これらのカメラは、プリントヘッド３の反対側に配置されている。図１で見られるように、プリントヘッド３が印刷パスにおいて左から右に移動しているとき、カメラ１は、プリントヘッド３の後方で移動するように構成される。これは、図１で見られるようにプリントヘッド３と第１のカメラ１及び第２のカメラ２とのアセンブリが左から右に移動する間に、カメラ１が基板又はスライド４の画像を取得することができることを意味する。第１の印刷パスが完了すると、プリントヘッド３と第１のカメラ１及び第２のカメラ２とのアセンブリの移動が逆方向にされる。後続の印刷パスでは、カメラ２がプリントヘッド３の後方に配置され、したがって、後続の印刷パスでは、プリントヘッド３による基板４への試薬の印刷の後、カメラ２を使用して基板４の画像を取得することができる。

【0033】

図１によるマイクロアレイヤ１０が適切に機能するために、カメラ１及び２は、プリントヘッド３と一列に取り付けられ、カメラ１及びカメラ２は、プリントヘッド３に対してそれぞれ所定の距離を有する。さらに、カメラ１及び２による基板４の適切な撮像を可能にするために、カメラ１及び２は基板４に対して垂直である。

【0034】

本発明の特定の実施形態では、単一の印刷パス中に、第１のカメラ１と第２のカメラ２との両方を使用して基板４の画像を取得することが可能である。例えば、図１で見られるように、プリントヘッド３が右から左に移動しているとき、プリントヘッド３によって基板４に試薬を定量供給する前に、第１のカメラ１を使用して基板４の画像を取得することができる。その後、プリントヘッド３によって基板４に試薬を定量供給した後、カメラ２を使用して基板４の画像を取得することができる。これは、カメラ１とカメラ２との両方の画像を使用して、基板４への試薬の定量供給後に得られたマイクロアレイを分析することができることを意味する。例えば、カメラ１が印刷前にスライド４の画像を取得している場合、スライドの生じ得る欠陥、位置合わせ不良、又は汚染を観察することができる。この情報は、マイクロアレイが印刷された後の同じスライドの画像の分析を改良するために使用することができる。

【0035】

図１によるマイクロアレイヤ１０では、第１のカメラ１及び第２のカメラ２は、処理手段（図１には図示せず）に接続される。これらの処理手段は、画像処理を実施して、カメラ１及び２によって得られた画像から、基板に作成されたマイクロアレイの品質に関する情報を抽出するように特に構成される。処理手段は、画像処理を可能にするための既知のアルゴリズムを備えている。画像処理の効果は、印刷されたマイクロアレイの品質に関係付けられるパラメータを計算することである。処理手段は、制御手段（図１には図示せず）に接続されており、制御手段は、動作プリントヘッド３の命令を生成するように特に構成されている。これは、処理手段がカメラ１及び２によって取得された画像を処理した後、データを制御手段に転送して、プリントヘッド３に対する命令を生成し、例えば後続の印刷パスでのプリントヘッド３の動作を変更して、それによって、印刷されるマイクロアレイの品質を改善することができることを意味する。

【0036】

本発明の一実施形態によれば、制御手段は、印刷パス中に得られたマイクロアレイにおいて観察される生じ得る印刷欠陥がランダムエラーであるか非ランダムエラーであるかを認識することができる。マイクロアレイにおいて観察されるエラーが非ランダムエラーである場合、印刷されるマイクロアレイの品質を改善するためにプリントヘッド３の特定の修正が可能である。例えば、処理手段が、一連の画像の分析後、プリントヘッドでの特定のノズルを使用することによって得られたスポットが印刷エラーを含むと判断した場合、制御手段は、該当するノズルを使用しないようにプリントヘッドに命令を生成することができる。後続の印刷パスでは、欠陥のあるノズルを使用する代わりに、代替のノズルを使用して印刷エラーの再発を回避することができる。さらに、スポットが印刷されていない場合、代替のノズルを使用して印刷パスを繰り返すことによって、スポットをその場で印刷し直すことができる。

【0037】

プリントヘッド３並びにカメラ１及び２のアセンブリには、カメラ１及び２による画像の取得前又は取得中に基板の照明を可能にするための照明手段が設けられる。通常、照明手段は、基板に光が当たる方向が基板の表面に垂直である基板をなくすように構成される。基板に印刷される試薬及び基板に使用される材料に応じて、基板に当たる光を試薬及び基板が反射できる能力に差がある。この反射の差により、基板に作成されたマイクロアレイを表す画像を取得することが可能である。

【0038】

本発明の例示的実施形態によれば、カメラ１及び２は、電荷結合素子（ＣＣＤ）デジタルカメラの形態を有することがある。或いは、カメラは、ＩＲ又はＵＶカメラのタイプのものでもよい。

【0039】

本発明の例示的実施形態によれば、画像の取得前又は取得中に基板を照明するために使用される照明手段は、発光ダイオード（ＬＥＤ）を備える。

【0040】

図２は、本発明による方法の流れ図を示し、この方法は、基板に溶液を定量供給するためのマイクロアレイヤの動作中に基板の画像を取得することに関し、マイクロアレイヤには、試薬を装填するように構成され、上記試薬を基板に定量供給するために複数のノズルが設けられた定量供給プリントヘッドを備え、プリントヘッドは、マイクロアレイヤに取り付けられて、後続の本質的に平行な印刷パスでプリントヘッドが基板に対して移動できるようにし、プリントヘッドは、第１の印刷パス中に、基板の第１の端部から基板の第２の端部に向けて移動し、後続の印刷パス中に反対方向に移動し、マイクロアレイヤは、印刷パス中にプリントヘッドの後方で移動するように構成された第１のカメラと、上記印刷パス中にプリントヘッドの前方で移動するように構成された第２のカメラとをさらに備える。

【0041】

図２に表されるように、この方法は、第１の印刷パスで基板に対してプリントヘッドを移動させるための第１のステップ（１００）を含む。

【0042】

この方法は、プリントヘッドを使用することによって基板に試薬を定量供給するためのさらなるステップ（１２０）をさらに含む。

【0043】

この方法は、プリントヘッドの後方で移動するカメラを使用して、基板に印刷された試薬の画像を取得するさらなるステップを含む。
［発明の項目］
［項目１］
基板に試薬を定量供給するためのマイクロアレイヤであって、
試薬を装填するように構成され、少なくとも前記試薬を前記基板に定量供給するために複数のノズルが設けられた定量供給プリントヘッドを備え、
前記プリントヘッドが、前記マイクロアレイヤに取り付けられて、後続の本質的に平行な印刷パスで前記プリントヘッドが前記基板に対して移動できるようにし、前記プリントヘッドが、第１の印刷パス中に、前記基板の第１の端部から前記基板の第２の端部に向けて移動し、後続の印刷パス中に反対方向に移動する、マイクロアレイヤにおいて、
印刷パス中に前記プリントヘッドの後方で移動するように構成された第１のカメラと、前記印刷パス中に前記プリントヘッドの前方で移動するように構成された第２のカメラとを備え、前記第１のカメラ及び前記第２のカメラが、前記基板の画像を取得するように構成されていることを特徴とする、マイクロアレイ。
［項目２］
印刷パス中、前記プリントヘッドの前方の前記カメラが、前記基板への前記試薬の前記定量供給前の前記基板の画像を取得するように構成され、前記プリントヘッドの後方の前記カメラが、前記基板への前記試薬の前記定量供給後の前記基板の画像を取得するように構成されている、項目１に記載のマイクロアレイヤ。
［項目３］
前記第１のカメラ及び前記第２のカメラ並びに前記プリントヘッドが直線上に配置されている、項目１又は３に記載のマイクロアレイヤ。
［項目４］
前記第１のカメラ及び前記第２のカメラに接続された処理手段が設けられており、前記処理手段が、前記第１のカメラ及び前記第２のカメラによって取得された画像を処理することを可能にする、項目１又は２に記載のマイクロアレイヤ。
［項目５］
前記処理手段に接続された制御手段が設けられており、前記制御手段が、前記処理手段から受信されたデータに基づいて前記プリントヘッドを動作させるための命令を生成するように構成されている、項目４に記載のマイクロアレイヤ。
［項目６］
前記第１のカメラ及び／又は前記第２のカメラによる画像の前記取得前又は取得中に前記基板を照明するために照明手段が設けられている、項目１～５のいずれか一項に記載のマイクロアレイヤ。
［項目７］
前記基板の下に配置された反射手段が設けられており、前記照明手段によって透過された光を反射し、以て、前記第１のカメラ及び前記第２のカメラによって取得される前記画像のコントラストを高める、項目６に記載のマイクロアレイヤ。
［項目８］
基板に溶液を定量供給するためのマイクロアレイヤの動作中に基板の画像を取得するための方法であって、
前記マイクロアレイヤが、試薬を装填するように構成され、前記試薬を前記基板に定量供給するために複数のノズルが設けられた定量供給プリントヘッドを備え、前記プリントヘッドが、前記マイクロアレイヤに取り付けられて、後続の本質的に平行な印刷パスで前記プリントヘッドが前記基板に対して移動できるようにし、前記プリントヘッドが、第１の印刷パス中に、前記基板の第１の端部から前記基板の第２の端部に向けて移動し、後続の印刷パス中に反対方向に移動し、前記マイクロアレイヤが、印刷パス中に前記プリントヘッドの前方で移動するように構成された第１のカメラと、前記印刷パス中に前記プリントヘッドの後方で移動するように構成された第２のカメラとをさらに備え、
前記方法が、
第１の印刷パスで、前記プリントヘッドを前記基板に対して移動させるステップと、
前記プリントヘッドを使用することによって前記基板に試薬を定量供給するステップと、
前記プリントヘッドの後方で移動する前記カメラを使用して、前記基板に印刷された試薬の画像を取得するステップと
を含む、方法。
［項目９］
印刷パス中に、前記プリントヘッドの前方で移動する前記カメラを使用して、前記プリントヘッドによる少なくとも１つの前記試薬の前記定量供給前の前記基板の画像を取得するステップと、
前記印刷パス中に、前記プリントヘッドの後方で移動するカメラを使用して、前記基板への前記試薬の前記定量供給後の基板の画像を取得するステップと
を含む、項目８に記載の方法。
［項目１０］
前記マイクロアレイヤが処理手段を備え、
前記方法が、
前記処理手段を前記第１のカメラ及び前記第２のカメラに接続するステップと、
前記第１のカメラ及び前記第２のカメラによって取得された画像に関係するデータを前記処理手段に送信するステップと、
前記処理手段を使用して、前記第１のカメラ及び前記第２のカメラから受信された前記データを処理し、以て、前記基板に印刷された前記試薬に関係する情報を取得するステップと
を含む、項目８又は９に記載の方法。
［項目１１］
前記マイクロアレイヤには、前記プリントヘッドの前記動作を制御するための制御手段が設けられており、
前記方法が、
前記制御手段を前記処理手段に接続するステップと、
前記基板に印刷された前記試薬に関係する前記情報を前記処理手段から前記制御手段に送信するステップと、
前記制御手段を使用して、前記処理手段から受け取られた情報に基づいて、前記プリントヘッドを操作するための命令を生成するステップと、
前記制御手段を使用して、前記命令を前記プリントヘッドに送信するステップと
を含む、項目１０に記載の方法。
［項目１２］
前記マイクロアレイヤには照明手段が設けられており、
前記方法が、
照明手段を使用して、前記第１のカメラ及び／又は前記第２のカメラによる画像の前記取得前又は取得中に前記基板を照明するステップ
を含む、項目８～１１のいずれか一項に記載の方法。
［項目１３］
前記マイクロアレイヤには、前記基板の下に配置された反射手段が設けられており、
前記方法が、
前記反射手段を使用して、前記照明手段によって透過された光を反射し、以て、前記第１のカメラ及び前記第２のカメラによって取得される前記画像のコントラストを高めるステップ
を含む、項目１２に記載の方法。

【図1】

【図2】