(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】生体高分子を認識するハイブリッド型蛍光プローブ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/66 20060101AFI20230418BHJP
C09B 23/14 20060101ALI20230418BHJP
C07F 5/02 20060101ALI20230418BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230418BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230418BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
G01N33/66 Z
C09B23/14 CSP
C07F5/02 D
C09K11/06 660
G01N21/64 F
C09B57/00 L
(21)【出願番号】P 2019034085
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】507157045
【氏名又は名称】公立大学法人福井県立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【氏名又は名称】釜平 双美
(72)【発明者】
【氏名】日▲び▼ 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 凌
(72)【発明者】
【氏名】中 亮太
(72)【発明者】
【氏名】柏▲崎▼ 玄伍
(72)【発明者】
【氏名】北山 隆
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-518261(JP,A)
【文献】国際公開第2015/148915(WO,A1)
【文献】特表2015-512955(JP,A)
【文献】国際公開第2018/217266(WO,A1)
【文献】中尾圭佑,異なる反応活性基をもつ糖のクリックケミストリー,日本農芸化学会大会講演要旨集,日本農芸化学会,2011年03月05日,2011,307
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/66
C09B 23/14
C07F 5/02
C09K 11/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のいずれかの化合物またはその塩を含むプローブで、糖類をターゲットとした蛍光色素であるプローブ。
【化1】
【請求項2】
プローブに含まれる化合物が下記のいずれかの化合物またはその塩である、請求項1のプローブ。
【化2】
【請求項3】
ターゲットの糖類がオリゴ糖である、請求項1または2のプローブ。
【請求項4】
ターゲットの糖類が生体高分子中の糖類である、請求項1~3のいずれかに記載のプローブ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のプローブを用いることを特徴とする、糖類を含む生体高分子の解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖類を含む生体高分子を高感度に蛍光認識できるハイブリッド型蛍光プローブ、それを用いた解析方法、およびそれを調製するための合成中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
糖類は生体関連分子に広く組み込まれる重要な分子単位であり、特に単糖が2~10個結合した糖鎖であるオリゴ糖は、腸内環境の整備など、プレバイオティクスの観点からこれまでに多くの研究が報告されており、生理活性を利用した農薬、医薬品、食品添加物等への応用が期待されている。
【0003】
糖類の定量分析は、従来、(1)フェノール-硫酸法のような、強酸と処理し色素化合物に導く比色定量法(非特許文献1)、(2)Somogyi-Nelson法のような、糖による還元で色素を発色させる比色定量法(非特許文献2および3)、(3)グルコースバイオセンサーとして広く用いられている酵素法、(4)HPLCなどクロマトグラフィー法を示差屈折率(RI)検出法など各種検出法と組み合わせた分離検出法が用いられてきたが、感度や選択的な検出の点で課題があり、いずれもハイスループットアッセイには適していななど問題があった。
【0004】
また、糖を蛍光誘導体化して検出する蛍光検出法として、リン酸-フェニルヒドラジン法やアルギニン試薬法も実施されているが、糖による誘導体化の反応性の違いや反応収率の影響で再現性のある解析が難しいという課題があった。
他に、糖鎖アレイ解析も実施されているが、アレイ解析によく用いられる蛍光色素Cy3を糖類の定量に用いた場合は、定量性には優れるが、量子収率が低く、蛍光色素としては不十分なため、検出感度に難があった。
【0005】
一方、タンパク質の疎水性表面検出用の蛍光プローブとして、N. Dorhらが開発したHydrophobicity (HP) Sensorは、下記の母骨格BODIPYを有する蛍光プローブで、非極性溶媒中で高い量子収率と蛍光強度を示し、水溶液中では十分に消光するという特徴を有していた(非特許文献4)。しかしながら、糖類を解析するにあたっては、溶液中での蛍光の安定性に難があり、精密な蛍光定量には適さず、またプローブとしての選択性も不十分であった。
【化1】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Dubois, M. et al.: Anal. Chem., 28, 350 (1956)
【文献】P. A. Shaffer, M. Somogyi: J. Biol. Chem., 100, 695 (1933)
【文献】Nelson, N.: J. Biol. Chem., 153, 375 (1944)
【文献】N. Dorh, et al., Sci. Reports, 5, 18337 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、糖類、特にオリゴ糖を含む生体高分子を定量的に、且つ高感度に解析できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討したところ、タンパク質の解析に用いる蛍光色素の一種であるBODIPY(boron-dipyrromethene)の母骨格に水溶性を増大する置換基を導入し、更にジピロメテン骨格の5位に置換アリール基を導入することで、水溶液中ではほとんど蛍光を発しないことで知られたBODIPYが、オリゴ糖と結合することで分子周辺で極性低下が生じ、その極性低下に応じて、水溶液中で強く飛躍的に安定な蛍光を発することを発見し、またアリール基の置換基として糖類選択的な官能基を導入することが可能となり、高感度で且つ各種糖類に対して選択的となり得るハイブリッド型蛍光プローブが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[項1]
式(1):
【化2】
[式中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミン、チオール、エポキシ、カルボン酸、カルボン酸エステル、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、-O-C
1-6アルキル、-O-C
2-6アルケニル、-O-C
3-8シクロアルキル、-O-アリール、-O-ヘテロアリール、-O-ヘテロシクリル、-NH-C
1-6アルキル、-N(C
1-6アルキル)
2、-NH-C
2-6アルケニル、-NH-C
3-8シクロアルキル、-NH-アリール、-NH-ヘテロアリール、-NH-ヘテロシクリル、-NHCO-C
1-6アルキル、-NHCO-C
2-6アルケニル、-NHCO-C
3-8シクロアルキル、-NHCO-アリール、-NHCO-ヘテロアリール、-NHCO-ヘテロシクリル、-CONH-C
1-6アルキル、-CONH-C
2-6アルケニル、-CONH-C
3-8シクロアルキル、-CONH-アリール、-CONH-ヘテロアリール、-CONH-ヘテロシクリル、-CO-C
1-6アルキル、-CO-C
2-6アルケニル、-CO-C
3-8シクロアルキル、-CO-アリール、-CO-ヘテロアリール、または-CO-ヘテロシクリルであり、ここでアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミン、-NH-C
1-6アルキル、-N(C
1-6アルキル)
2、カルボン酸、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよく、あるいはR
1とR
2、および/またはR
3とR
4が、それぞれの結合可能ないずれかの部位が結合して環を形成してもよく、および
R
5は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミン、チオール、エポキシ、カルボン酸、カルボン酸エステル、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、-O-C
1-6アルキル、-O-C
2-6アルケニル、-O-C
2-6アルキニル、-O-C
3-8シクロアルキル、-O-アリール、-O-ヘテロアリール、-O-ヘテロシクリル、-NH-C
1-6アルキル、-N(C
1-6アルキル)
2、-NH-C
2-6アルケニル、-NH-C
2-6アルキニル、-NH-C
3-8シクロアルキル、-NH-アリール、-NH-ヘテロアリール、-NH-ヘテロシクリル、-NHCO-C
1-6アルキル、-NHCO-C
2-6アルケニル、-NHCO-C
2-6アルキニル、-NHCO-C
3-8シクロアルキル、-NHCO-アリール、-NHCO-ヘテロアリール、-NHCO-ヘテロシクリル、-CONH-C
1-6アルキル、-CONH-C
2-6アルケニル、-CONH-C
2-6アルキニル、-CONH-C
3-8シクロアルキル、-CONH-アリール、-CONH-ヘテロアリール、-CONH-ヘテロシクリル、-CO-C
1-6アルキル、-CO-C
2-6アルケニル、-CO-C
2-6アルキニル、-CO-C
3-8シクロアルキル、-CO-アリール、-CO-ヘテロアリール、または-CO-ヘテロシクリルであり、ここでアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミン、-NH-C
1-6アルキル、-N(C
1-6アルキル)
2、カルボン酸、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリル(ここで、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、更に適宜置換されていてもよいC
1-12アルキル、適宜置換されていてもよいベンジル、適宜置換されていてもよいアリール、適宜置換されていてもよいヘテロアリール、または適宜置換されていてもよいヘテロシクリルで置換されていてもよい)からなる群から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよく、あるいは
R
5は、下式:
【化3】
(式中、R
6はオリゴ糖認識構造であり、トリアゾール環の1位または3位の窒素原子に結合する)である]
の化合物またはその塩を含むプローブで、糖類をターゲットとした蛍光色素であるプローブ。
【0010】
[項2]
式(1)の化合物が式(2):
【化4】
の化合物である、項1のプローブ。
【0011】
[項3]
R1およびR3が水素原子である、項1または2のプローブ。
【0012】
[項4]
R2およびR4がそれぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ、アミン、カルボン酸、-O-C1-6アルキル、-O-C2-6アルケニル、-NH-C1-6アルキル、-N(C1-6アルキル)2、-NH-C2-6アルケニル、-NHCO-C1-6アルキル、-NHCO-C2-6アルケニル、-CONH-C1-6アルキル、-CONH-C2-6アルケニル、-CO-C1-6アルキル、または-CO-C2-6アルケニルであり、ここでアルキルおよびアルケニルは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミン、-NH-C1-6アルキル、-N(C1-6アルキル)2、カルボン酸、およびC1-6アルコキシからなる群から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい、項1~3のいずれかのプローブ。
【0013】
[項5]
R2およびR4がそれぞれ独立して、-NH-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキルである、項3のプローブ。
【0014】
[項6]
R2およびR4が、-NH-CH2CH2-O-CH3である、項5のプローブ。
【0015】
[項7]
R5が、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミン、チオール、エポキシ、-O-C1-6アルキル、-O-C2-6アルケニル、-O-C2-6アルキニル、-O-C3-8シクロアルキル、-O-アリール、-O-ヘテロアリール、-O-ヘテロシクリル、-NH-C1-6アルキル、-N(C1-6アルキル)2、-NH-C2-6アルケニル、-NH-C2-6アルキニル、-NH-C3-8シクロアルキル、-NH-アリール、-NH-ヘテロアリール、-NH-ヘテロシクリル、-NHCO-C1-6アルキル、-NHCO-C2-6アルケニル、-NHCO-C2-6アルキニル、-NHCO-C3-8シクロアルキル、-NHCO-アリール、-NHCO-ヘテロアリール、または-NHCO-ヘテロシクリル、であり、ここでアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミン、-NH-C1-6アルキル、-N(C1-6アルキル)2、カルボン酸、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリル(ここで、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、更に適宜置換されていてもよいC1-12アルキル、適宜置換されていてもよいベンジル、適宜置換されていてもよいアリール、適宜置換されていてもよいヘテロアリール、または適宜置換されていてもよいヘテロシクリルで置換されていてもよい)からなる群から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい、項1~6のいずれかのプローブ。
【0016】
[項8]
R5が、水素原子、ニトロ、ヒドロキシ、アミン、チオール、エポキシ、-O-C1-6アルキル、-O-C2-6アルケニル、-O-C2-6アルキニル、-O-C3-8シクロアルキル、-O-アリール、-O-ヘテロアリール、-O-ヘテロシクリル、-NHCO-C1-6アルキル、-NHCO-C2-6アルケニル、-NHCO-C2-6アルキニル、-NHCO-C3-8シクロアルキル、-NHCO-アリール、-NHCO-ヘテロアリール、または-NHCO-ヘテロシクリル、であり、ここでアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミン、-NH-C1-6アルキル、-N(C1-6アルキル)2、カルボン酸、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリル(ここで、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、更に適宜置換されていてもよいC1-12アルキル、適宜置換されていてもよいベンジル、適宜置換されていてもよいアリール、適宜置換されていてもよいヘテロアリール、または適宜置換されていてもよいヘテロシクリルで置換されていてもよい)からなる群から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい、項1~7のいずれかのプローブ。
【0017】
[項9]
R5が、C2-6アルキニル、-O-C2-6アルキニル、-NH-C2-6アルキニル、-NHCO-C2-6アルキニル、または-CO-C2-6アルキニルである、項1~6のいずれかのプローブ。
【0018】
[項10]
R
5が下式:
【化5】
(式中、R
6はオリゴ糖認識構造であり、トリアゾール環の1位または3位の窒素原子に結合する)
である、項1~6のいずれかのプローブ。
【0019】
[項11]
R
6が
【化6】
【化7】
のいずれかである、項10のプローブ。
【0020】
[項12]
式(1)の化合物が、下記のいずれかである項1のプローブ。
【化8】
【化9】
【0021】
[項13]
式(1)の化合物が、下記のいずれかである項1のプローブ。
【化10】
【0022】
[項14]
項10または11のいずれかのプローブを製造するために用いる式(3)または式(4):
【化11】
の合成中間体化合物。
【0023】
[項15]
ターゲットの糖類がオリゴ糖である、項1~13のいずれかのプローブ。
【0024】
[項16]
ターゲットの糖類が生体高分子中の糖類である、項1~13のいずれかのプローブ。
【0025】
【0026】
[項18]
項1~13のいずれかに記載のプローブを用いることを特徴とする、糖類を含む生体高分子の解析方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明のプローブを酵素の多糖類分解活性や糖転移活性の高感度アッセイ系に利用することで、これまで困難であった糖代謝酵素のハイスループットアッセイを汎用的に実用化することが期待される。また、本発明の蛍光プローブにアミノ基、チオール基もしくはエポキシ基を導入することで、ガラスプレート上への固定化することで、糖結合タンパク質の特異性を評価するための高感度な糖鎖蛍光アレイを構築することができれば、糖鎖による生体認識機構の基礎的な解明だけでなく、遺伝子やアミノ酸配列に比べて変異が入りにくい糖鎖をバイオマーカーとする、プレシジョン・メディスンへの応用により、がん治療や生活習慣病予防への応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】試験例1の結果を示す。グラフ中exは励起スペクトルの結果を示し、emは蛍光スペクトルの結果を示す。
【
図2】試験例3の結果を示す。x軸の数値は化合物番号を示す。各溶媒溶液の蛍光強度を測定(励起波長 565 nm)し、各蛍光色素濃度=1 μMのときの蛍光強度に補正した上で、アセトン溶液の蛍光強度に対して、エチレングリコール中(黒)および水溶液中(白)の蛍光強度変化を化合物10(後述)のアセトン溶液中の蛍光強度を100として比較した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明において「ハロゲン原子」の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられる。
【0030】
本発明において「C1-6アルキル」は、炭素数1~6個を有する直鎖状もしくは分枝状の飽和炭化水素基を意味する。好ましくは、「C1-4アルキル基」である。「C1-6アルキル基」の具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル等が挙げられる。
【0031】
本発明において「C2-6アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有し、鎖中に含まれる炭素原子数が2~6の脂肪族炭化水素基を意味する。「C2-6アルケニル」の具体例としては、例えば、ビニル、アリル、1-プロペニル、1-ブテニルなどが挙げられる。
【0032】
本発明において「C2-6アルキニル」とは、炭素原子数2~6個を有し、三重結合を1個含む直鎖状又は分枝鎖状の不飽和炭化水素基を意味する。「C2-6アルキニル」として、好ましくは「C2-4アルキニル」が挙げられる。
【0033】
本発明において「C3-8シクロアルキル」は、3員~8員の単環式の飽和または部分不飽和の炭化水素基を意味する。好ましくは、「C3-6シクロアルキル」である。「C3-8シクロアルキル」の具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクチル等が挙げられる。
【0034】
本発明において「C1-6アルコキシ」の「C1-6アルキル」部分は、前記「C1-6アルキル」と同義である。好ましくは、「C1-4アルコキシ」である。「C1-6アルコキシ」の具体例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ等が挙げられる。
【0035】
本発明において「アリール」は、通常炭素数6~10個を有する芳香族炭化水素基を意味する。好ましくは「C6アリール」(フェニル)である。「C6-10アリール」の具体例としては、例えば、フェニル、1-ナフチルまたは2-ナフチル等が挙げられる。
【0036】
本発明において「ヘテロアリール」としては、例えば、5員~10員の単環式もしくは二環式の芳香族ヘテロ環基等が挙げられ、該基は、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選択される同種または異種のヘテロ原子を1個以上(例えば1~4個)含有する。二環式のヘテロアリール基には、前記単環式のへテロアリール基と芳香族環(ベンゼン、ピリジン等)または非芳香族環(シクロヘキサン、ピペリジン等)とが縮環したものも含む。
【0037】
本発明において「ヘテロシクリル」としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同種または異種の原子を1~3個有する4員~10員の単環式もしくは多環式の飽和ヘテロ環基等が挙げられる。前記窒素原子、酸素原子および硫黄原子はいずれも環を構成する原子である。該ヘテロ環基は、飽和または部分不飽和のいずれであってもよい。好ましくは飽和ヘテロ環基であり、さらに好ましくは5員もしくは6員の飽和ヘテロ環基である。具体的には、ピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、アゼパニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジオキソチオモルホリニル、ヘキサメチレンイミニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、オキソオキサゾリジル、ジオキソオキサゾリジニル、ジオキソチアゾリジニル、5-オキソ-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、5-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-3-イル、5-チオキソ-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル等が挙げられる。該基の結合手は、環を構成する炭素原子および窒素原子のいずれであってもよい。
【0038】
本発明において「C1-6アルキレン」は、炭素数1~6個を有する直鎖状もしくは分枝状の二価の飽和炭化水素基、または炭素数3~6個を有する環状構造を含む二価の飽和炭化水素基を意味する。
【0039】
本発明において「カルボン酸エステル」としては、アルキルエステル、アルケニルエステルなど、種々のエステルを意味し、またここでのアルキル基やアルケニル基は更に種々置換されていてもよい。
【0040】
本発明において「塩」とは、式(1)で表される化合物が酸性基を有する場合は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;亜鉛塩等の無機金属塩;トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリヒドロキシメチルアミノメタン、アミノ酸等の有機塩基塩等が挙げられる。
式(1)で表される化合物が塩基性基を有する場合は、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0041】
本発明において「オリゴ糖認識構造」とは、オリゴ糖に選択的に相互作用できる構造であり、本発明のBODIPY骨格からなる蛍光プローブをオリゴ糖と結びつけるはたらきを有する。本発明ではこれらに限定されないが、例えば下記の構造を有する部分構造がオリゴ糖認識構造として挙げられる。
【化13】
【化14】
【0042】
本発明において「糖類」とは、単糖類、二糖類、多糖類など、種々のサイズの糖類を意図し、また構成される各単糖は、これらに限定されないが、グルコース、アロース、マンノース、ガラクトース、フルクトースなどの六炭糖、リボースなどの五炭糖など、種々の単糖が含まれる。
本発明において「オリゴ糖」とは、単糖が2~10個、好ましくは3~10個、または3~6個で構成され、それぞれがα-またはβ-グリコシド結合した糖鎖をいう。なお、構成する単糖に還元糖が必ずしも含まれる必要はない。
【0043】
本発明の化合物の合成は、下記の実施例の方法やそれを一部最適化して変更した方法によって行うことができる。具体的には、各種ベンズアルデヒド誘導体を酸性条件下ピロールと反応させ、適宜クロル化して三フッ化ホウ素と反応させることで得ることができる。
【0044】
また、下記の実施例で得られた下記の式(3)のアセチレン部分を有する本発明化合物(実施例における化合物5d)を製造中間体として、オリゴ糖認識部位が導入されたアジ化物を反応させることで、アセチレン部分とアジド部分が環化してトリアゾール環を形成させ、オリゴ糖認識部位を有した本発明化合物を合成することができる。また、式(3)の化合物の代わりに、式(4)の化合物(実施例における化合物4d)から同様の環化反応を行い、次いで置換基の変換を行い、最終化合物へと合成してもよい。これらの合成方法により、種々のオリゴ糖に選択的なオリゴ糖認識部位を導入することができ、これにより種々のオリゴ糖に適用可能なプローブを調製することが可能である。
【化15】
【実施例】
【0045】
以下に本発明を、実施例および試験例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において示された化合物名は、必ずしもIUPAC命名法に従うものではない。
【0046】
4-プロパルギルオキシベンズアルデヒド:化合物1dの合成
【化16】
500 mLナスフラスコに、化合物1c(3.00 g、24.6 mmol)、炭酸カリウム(13.58 g、98.3 mmol、4.00 eq.)、臭化プロパルギル(11.69 g、98.3 mmol、4.00 eq.)、アセトン(250 mL)を加え、還流下4時間撹拌した。その後室温まで冷却し、水を加えた後、反応液をエバポレーターで濃縮し、残渣をジクロロメタンで3回抽出した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=15/1)で分離精製し、白色固体として化合物1dを得た(2.94 g、収率74.7 %)。
Mp: 85.0-86.0℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 9.91 (1H, s, CHO at C1), 7.86 (2H, d, J = 8.8 Hz, CH at C4 and C6), 7.09 (2H, d, J = 8.8 Hz, CH at C3 and C7), 4.78 (2H, d, J = 2.4 Hz, CH
2 at C8), 2.58 (1H, s, CH at C10).
【0047】
5-フェニルジピロメタン:化合物2aの合成
【化17】
100 mL 三口ナスフラスコに、0.18M HCl水溶液(25 mL)を加え、ピロール(0.98 mL、14.1 mmol、3.0 eq.)および化合物1a(500 mg、4.7 mmol)をそれぞれ滴下で加え、室温で4時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=8/1)で反応終了を確認し、吸引濾過し、水とヘキサンで洗浄した。その後、得られた固体生成物をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=15/1)で分離精製し、黄色固体として化合物2aを得た(555 mg、収率53.0 %)。
Mp: 100.0-101.0℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.91 (2H, brs, NH at N1 and N2), 7.20-7.34 (5H, m, CH at C11, C12, C13, C14 and C15) , 6.70 (2H, m, CH at C1 and C9), 6.17 (2H, dd, J = 5.9, 2.8 Hz, CH at C2 and C8), 5.92 (2H, s, CH at C3 and C7), 5.48 (1H, s, CH at C5).
【0048】
5-(4-メトキシフェニル)ジピロメタン:化合物2bの合成
【化18】
100 mL 三口ナスフラスコに、0.18M HCl水溶液(75 mL)を加え、ピロール(2.29 mL, 33.0 mmol、3.0 eq.)および化合物1b(1.50 g、11.0 mmol)をそれぞれ滴下し、室温で15時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で反応終了を確認し、吸引濾過し、水とヘキサンで洗浄した。その後、得られた固体生成物をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=8/1)で分離精製し、黄色固体として化合物2bを得た(1.54 g、収率55.5 %)。
Mp: 99.0-100.0℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.92 (2H, brs, NH, at N1 and N2), 7.13 (2H, d, J = 8.6 Hz, CH at C12 and C14), 6.85 (2H, d, J = 8.6 Hz, CH at C11 and C15), 6.70 (2H, m, CH at C1 and C9), 6.16 (2H, dd, J = 5.9, 2.8 Hz, CH at C2 and C8), 5.91 (2H, s, CH at C3 and C7), 5.44 (1H, s, CH at C5), 3.80 (3H, s, CH
3 at C16).
【0049】
5-(4-ヒドロキシフェニル)ジピロメタン:化合物2cの合成
【化19】
100 mL 三口ナスフラスコに、0.18 M HCl水溶液(25 mL)、ピロール(0.85 mL、12.3 mmol、3.0 eq.)、EtOH(10 mL)に溶解した化合物1c(500 mg、4.09 mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で反応終了を確認し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で反応停止した。反応液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水溶液で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で分離精製し、橙色固体として化合物2cを得た(250 mg、収率25.6 %)。
Mp: 107.5-109.5℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.92 (2H, brs, NH at N1 and N2), 7.09 (2H, d, J = 8.5 Hz, CH at C12 and C14), 6.78 (2H, d, J = 8.5 Hz, CH at C11 and C15), 6.70 (2H, m, CH at C1 and C9), 6.16 (2H, dd, J = 5.9, 2.8 Hz, CH at C2 and C8), 5.91 (2H, s, CH at C3 and C7), 5.43 (1H, s, CH at C5), 4.66 (1H, s, OH at C13).
HRMS m/z [M+Na]
+ Calcd for C
15H
14N
2NaO
+ 261.0998; Found 261.1003.
【0050】
5-(4-プロパルギルオキシフェニル)ジピロメタン:化合物2dの合成
【化20】
300 mL 三口ナスフラスコに、0.18 M HCl水溶液(100 mL)を加え、ピロール(2.59 mL、37.5 mmol、3.0 eq.)、化合物1d(2.00 g、12.5 mmol)を加え、室温で15時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で反応終了を確認し、飽和NaHCO
3水溶液で反応停止した。反応液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水溶液で洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=8/1)で分離精製し、化合物2d含有の黄色ピロール/酢酸エチル溶液を得た(5.21 g(うち化合物2d 2.19 g)、収率63.4%)。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.89 (2H, brs, NH at N1 and N2), 7.12 (2H, d, J = 8.8 Hz, CH at C12 and C14), 6.91 (2H, d, J = 8.8 Hz, CH at C11 and C15), 6.67 (2H, m, CH at C1 and C9), 6.15 (2H, q, J = 2.8 Hz, CH at C2 and C8), 5.90 (2H, s, CH at C3 and C7), 5.43 (1H, s, CH at C5), 4.66 (2H, d, J = 2.6 Hz, CH
2 at C16), 2.50 (1H, t, J = 2.5 Hz, CH at C18).
【0051】
5-(4-ニトロフェニル)ジピロメタン:化合物2eの合成
【化21】
300 mLナスフラスコに、0.18 M HCl水溶液(50 mL)を加え、ピロール(1.37 mL, 19.9 mmol、3.0 eq.)、化合物1e(1.00 g、6.62 mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で反応終了を確認し、吸引ろ過し、水とヘキサンで洗浄し、黄色固体として化合物2eを得た(1.73 g、収率98.1 %)。
Mp: 157-160℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 8.16 (2H, d, J = 8.7 Hz, CH at C12 and C14), 8.01 (2H, brs, NH at N1 and N2), 7.36 (2H, d, J = 8.7 Hz, CH at C11 and C15), 6.75 (2H, m, CH at C1 and C9), 6.17 (2H, m, CH at C2 and C8), 5.87 (2H, m, CH at C3 and C7), 5.58 (1H, s, CH at C5).
【0052】
1,9-ジクロロ-5-フェニルジピリン:化合物3aの合成
【化22】
窒素雰囲気下の300 mL 三口ナスフラスコに、化合物2a(400 mg、1.8 mmol)を加え、THF(20 mL)を加えて撹拌し、-78℃に冷却した後、THF(20 mL)中のNCS(577 mg, 4.3 mmol、2.4 eq.)を滴下し、-78℃のまま2時間撹拌した。その後、室温で更に2時間撹拌し、TLC(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で反応終了を確認し、更に、THF(15 mL)中のDDQ(490 mg、2.2 mmol、1.2 eq.)を滴下し、室温で2時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=8/1)で反応終了を確認し、反応停止した。反応液をCH
2Cl
2で3回抽出し、飽和食塩水溶液で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=8/1、ヘキサン/酢酸エチル=15/1)で、2回分離精製し、橙色固体として化合物3aを得た(412.6 mg、収率79.3 %)。
Mp: 157-160℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 12.36 (1H, brs, NH at N1), 7.52-7.41 (5H, m, CH at C11, C12, C13, C14 and C15), 6.52 (2H, d, J = 4.3 Hz, CH at C2 and C8), 6.25 (2H, d, J = 4.3 Hz, CH at C3 and C7).
【0053】
3,7-ジクロロ-5,5-ジフルオロ-10-フェニル-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン:化合物4aの合成
【化23】
窒素雰囲気下の100 mL 三口ナスフラスコに、化合物3a(400 mg、1.4 mmol)を加え、CH
2Cl
2(40 mL)を加えて撹拌し、トリエチルアミン(1.2 mL、8.5 mmol、6.0 eq.)を滴下し、室温で10分間撹拌した。その後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯塩(1.2 mL、8.5 mmol、6.0 eq.)を滴下し、室温で24時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で反応終了を確認し、反応停止した。反応液をCH
2Cl
2で3回抽出し、飽和食塩水溶液で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=15/1)で分離精製し、赤色固体として化合物4aを得た(368 mg、収率78.9 %)。
Mp: 68-71℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.50-7.61 (5H, m, CH at C11, C12, C13, C14 and C15), 6.86 (2H, d, J = 4.4 Hz, CH at C2 and C8), 6.45 (2H, d, J = 4.4 Hz, CH at C3 and C7).
【0054】
3,7-ジクロロ-5,5-ジフルオロ-10-(4-メトキシフェニル)-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン:化合物4bの合成
【化24】
窒素雰囲気下の300 mL 三口ナスフラスコに、化合物2b(1.50 g、5.94 mmol)を加え、THF(30 mL)を加えて撹拌し、-78℃に冷却した後、THF(70 mL)中のN-クロロコハク酸イミド(1.59 g、11.89 mmol、2.0 eq.)を滴下し、-78℃のまま1時間撹拌した。その後、-20℃で更に3時間撹拌し、TLC(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で反応終了を確認し、反応停止した。反応液をCH
2Cl
2で3回抽出し、水で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた残渣を更に窒素雰囲気下の300 mL 三口ナスフラスコに加え、CH
2Cl
2(50 mL)を加えて撹拌し、CH
2Cl
2(150 mL)中の2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(1.62 g、7.13 mmol、1.2 eq.)を滴下し、室温で2時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=6/1)で反応終了を確認した。その後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(10 mL、57.4/1 mmol、9.7 eq.)を滴下し、更に三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯塩(10 mL、79.33 mmol、13.4 eq.)を滴下し、室温で1時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=6/1)で反応終了を確認し、反応停止した。反応液をCH
2Cl
2で3回抽出し、飽和食塩水溶液で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で分離精製し、更にヘキサン/CH
2Cl
2で再結晶し、赤褐色固体として化合物4bを得た(1.49 g、収率 78.9 %)。
Mp: 157-160℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.46 (2H, d, J = 8.8 Hz, CH at C12 and C14), 7.04 (2H, d, J = 8.8 Hz, CH at C11 and C15), 6.89 (2H, d, J = 4.5 Hz, CH at C2 and C8), 6.44 (2H, d, J = 4.5 Hz, CH at C3 and C7), 3.91 (s, 3H, CH
3 at C16).
【0055】
4-(3,7-ジクロロ-5,5-ジフルオロ-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-10-イル)フェノール:化合物4cの合成
【化25】
窒素雰囲気下の300 mL 三口ナスフラスコに、化合物2c(600 mg、5.94 mmol)を加え、THF(15 mL)を加えて撹拌し、-78℃に冷却した後、THF(40 mL)中のN-クロロコハク酸イミド(740 mg、5.54 mmol、2.2 eq.)を滴下し、-78℃のまま2時間撹拌した。その後、室温で更に3時間撹拌し、TLC(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で反応終了を確認し、反応停止した。反応液をCH
2Cl
2で3回抽出した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた残渣を更に窒素雰囲気下の300 mL 一口ナスフラスコに加え、CH
2Cl
2(30 mL)を加えて撹拌し、CH
2Cl
2(50 mL)中の2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(686 mg、3.02 mmol、1.2 eq.)を滴下し、室温で2時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=6/1)で反応終了を確認し、その後N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.3 mL, 25.18 mmol、10.0 eq.)を滴下し、更に、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯塩(4.4 mL, 35.25 mmol、14.0 eq.)を滴下し、室温で24時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で反応終了を確認し、反応停止した。反応液をCH
2Cl
2で3回抽出した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で分離精製し、赤褐色固体として標題化合物を得た(308.4 mg、収率34.7 %)。
Mp: 223-227℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.40 (2H, d, J = 8.6 Hz, CH at C12 and C14), 7.00 (2H, d, J = 8.6 Hz, CH at C11 and C15), 6.89 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C2 and C8), 6.44 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C3 and C7).
HRMS m/z [M+Na]
+ Calcd for C
15H
9BCl
2F
2N
2NaO
+ 375.0045; Found 375.0032.
【0056】
3,7-ジクロロ-5,5-ジフルオロ-10-(4-(プロパ-2-イン-1-イルオキシ)フェニル-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン:化合物4dの合成
【化26】
窒素雰囲気下の300 mL 三口ナスフラスコに、化合物2d溶液(1.58 g、5.72 mmol)を加え、THF(50 mL)を加えて撹拌し、-78℃に冷却した後、THF(100 mL)中のN-クロロコハク酸イミド(1.68 g、12.6 mmol、2.2 eq.)を滴下し、-78℃のまま15分間撹拌した。その後、室温で更に2時間撹拌し、TLC(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で反応終了を確認し、反応停止した。反応液をCH
2Cl
2で3回抽出した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた残渣を更に窒素雰囲気下の500 mL 一口ナスフラスコに加え、CH
2Cl
2(50 mL)を加えて撹拌し、CH
2Cl
2(150 mL)中の2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(1.56 g、6.87 mmol、1.2 eq.)を滴下し、室温で2時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で反応終了を確認しその後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン (7.9 mL、45.8 mmol、8.0 eq.)を滴下し、更に、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯塩(7.3 mL、57.2 mmol、10.0 eq.)を滴下し、室温で24時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で反応終了を確認し、反応停止した。反応液をCH
2Cl
2で3回抽出した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で分離精製し、赤褐色固体として化合物4dを得た(1.78 g、収率79.5 %)。
Mp: 201-204℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.46 (2H, d, J = 8.7 Hz, CH at C12 and C14), 7.12 (2H, d, J = 8.7 Hz, CH at C11 and C15), 6.89 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C2 and C8), 6.44 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C3 and C7), 4.79 (2H, d, J = 2.4 Hz, CH
2 at C16), 2.60 (1H, t, J = 2.4 Hz, CH at C18).
【0057】
3,7-ジクロロ-5,5-ジフルオロ-10-(4-ニトロフェニル)-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン:化合物4eの合成
【化27】
窒素雰囲気下の300 mL三口ナスフラスコに、THF(60 mL)に溶解した化合物2e(2.00 g、7.48 mmol)を加え、-78℃に冷却し、THF(70 mL)中のNCS(2.51 g、18.9 mmol、2.51 eq.)を滴下し、室温で3時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で反応終了を確認し、反応停止した。反応液をジクロロメタンで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた残渣を窒素雰囲気下のフラスコに加え、ジクロロメタン(50 mL)に溶解し、ジクロロメタン(50 mL)中のDDQ(2.04 g、8.98 mmol、1.20 eq.)を滴下し、室温で2時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で反応終了を確認し、更にDIPEA(7.42 mL、44.9 mmol、6.00 eq.)を滴下した後に、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯塩(7.9 mL、74.8 mmol、10.0 eq.)を滴下し、室温で2時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で反応終了を確認し、反応停止した。反応液をジクロロメタンで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=10/1/0.1)で分離精製し、赤紫色固体として化合物4eを得た(1.57 g、収率55.1 %)。
Mp: 202-207℃.
IR (KBr): 3225, 1562, 1452, 1402, 1348, 1267, 1196, 1105 cm
-1.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 8.41 (2H, d, J = 6.8 Hz, CH at C12 and C14), 7.70 (2H, d, J = 6.8 Hz, CH at C11 and C15), 6.76 (2H, d, J = 3.5 Hz, CH at C2 and C8), 6.49 (2H, d, J = 3.5 Hz, CH at C3 and C7).
【0058】
5,5-ジフルオロ-N
3
,N
7
-ビス(2-メトキシエチル)-10-フェニル-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3,7-ジアミン:化合物5aの合成
【化28】
10.2 cmエース高耐圧チューブに、化合物4a(170 mg、0.50 mmol)を加え、CH
3CN(4 mL)を加えて撹拌し、さらに2-メトキシエチルアミン(176 μL、2.02 mmol、4.0 eq.)を加えて100℃で24時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で反応終了を確認後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で分離精製し、青紫色固体として化合物5aを得た(125 mg、収率60.0 %)。
Mp: 129-130℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.38-7.48 (5H, m, CH at C11, C12, C13, C14 and C15), 6.54 (2H, d, J = 4.4 Hz, CH at C2 and C8), 5.74 (2H, d, J = 4.4 Hz, CH at C3 and C7), 5.77-5.70 (2H, brs, NH at N3 and N4), 3.59 (4H, t, J = 5.5 Hz, CH
2 at C17 and C20), 3.44 (4H, q, J = 5.5 Hz, CH
2 at C16 and C19), 3.40 (6H, s, CH
3 at C18 and C21).
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz): δ 156.6 (C1 and C9), 135.0 (C10), 130.4 (CH at C11 and C15), 128.9 (C4 and C6), 131.3 (C5), 128.5 (CH at C13), 128.5 (CH at C2 and C8), 127.9 (CH at C12 and C14), 101.1 (CH at C3 and C7), 71.4 (CH
2 at C17 and C20), 59.1 (CH
3 at C18 and C21), 44.3 (CH
2 at C16 and C19).
HRMS m/z [M+Na]
+ Calcd for C
21H
25BF
2N
4NaO
2
+ 437.1931; Found 437.1931.
【0059】
5,5-ジフルオロ-N
3
,N
7
-ビス(2-メトキシエチル)-10-(4-メトキシフェニル)-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3,7-ジアミン:化合物5bの合成
【化29】
10.2 cmエース高耐圧チューブに、化合物4b(600 mg、1.63 mmol)を加え、CN
3CN(4 mL)を加えて撹拌し、2-メトキシエチルアミン(1.2 mL、13.08 mmol、8.0 eq.)を加えて100℃で24時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で反応終了を確認した。その後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH
2Cl
2/酢酸エチル=3/2/1)で分離精製し、青紫色固体として化合物5bを得た(563 mg、収率77.6 %)。
Mp: 169-170℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.38 (2H, d, J = 8.7 Hz, CH at C12 and C14), 6.94 (2H, d, J = 8.7 Hz, CH at C11 and C15), 6.56 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C2 and C8), 5.74 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C3 and C7), 5.77-5.70 (2H, brs, NH at N3 and N4), 3.86 (3H, s, CH
3 at C22), 3.59 (4H, t, J = 5.5 Hz, CH
2 at C17 and C20), 3.44 (4H, q, J = 5.5 Hz, CH
2 at C16 and C19), 3.40 (s, 6H, CH
3 at C18 and C21).
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz): δ 160.0 (C13), 156.4 (C1 and C9), 131.6 (CH at C12 and C14), 131.2 (C5), 129.0 (C4 and C6), 128.5 (CH at C2 and C8), 127.4 (C10), 113.4 (CH at C11 and C15), 100.9 (CH at C3 and C7), 71.2 (CH
2 at C17 and C20), 59.0 (CH
3 at C18 and C21), 55.3 (CH
3 at C22), 44.3 (CH
2 at C16 and C19).
HRMS m/z [M+Na]
+ Calcd for C
22H
27BN
4O
3F
2Na
+ 467.2036; Found 467.2050.
【0060】
4-(5,5-ジフルオロ-3,7-ビス((2-メトキシエチル)アミン)-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-10-イル)フェノール:化合物5cの合成
【化30】
10.2 cmエース高耐圧チューブに、化合物4c(26.8 mg、0.076 mmol)を加え、CH
3CN(4 mL)を加えて撹拌し、2-メトキシエチルアミン(0.2 mL、2.30 mmol、30.0 eq.)を加えて100℃で24時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で反応終了を確認した。その後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH
2Cl
2/酢酸エチル=1/2/1)で分離精製し、青紫色固体として化合物5cを得た(8.2 mg、収率25.1 %)。
Mp: 129-130℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.29 (2H, d, J = 8.5 Hz, CH at C12 and C14), 6.84 (2H, d, J = 8.5 Hz, CH at C11 and C15), 6.55 (2H, d, J = 4.3 Hz, CH at C2 and C8), 5.73 (2H, d, J = 4.3 Hz, CH at C3 and C7), 5.80-5.64 (2H, brs, NH at N3 and N4), 3.60 (4H, t, J = 5.4 Hz, CH
2 at C17 and C20), 3.44 (4H, m, CH
2 at C16 and C19), 3.40 (6H, s, CH
3 at C18 and C21).
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz): δ 156.4 (C1 and C9), 156.3 (C13), 131.7 (CH at C12 and C14), 131.2 (C5), 129.0 (C4 and C6), 128.4 (CH at C2 and C8), 127.4 (C10), 114.9 (CH at C11 and C15), 101.0 (CH at C3 and C7), 71.2 (CH
2 at C17 and C20), 59.0 (CH
3 at C18 and C21), 44.2 (CH
2 at C16 and C19).
HRMS m/z [M+Na]
+ Calcd for C
21H
25BF
2N
4NaO
3
+ 453.1880; Found 453.1841.
【0061】
5,5-ジフルオロ-N
3
,N
7
-ビス(2-メトキシエチル)-10-(4-(プロパ-2-イン-1-イルオキシ)フェニル)-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3,7-ジアミン:化合物5dの合成
【化31】
10.2 cmエース高耐圧チューブに、化合物4d(140 mg、0.036 mmol)を加え、CH
3CN(3 mL)を加えて撹拌し、2-メトキシエチルアミン(333 μL、2.30 mmol、10.0 eq.)を加えて100℃で24時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で反応終了を確認した。その後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH
2Cl
2/酢酸エチル=3/2/1)で分離精製し、青紫色固体として化合物5dを得た(83 mg、収率49.3 %)。
Mp: 159-162℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.38 (2H, d, J = 8.7 Hz, CH at C12 and C14), 7.01 (2H, d, J = 8.7 Hz, CH at C11 and C15), 6.56 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C2 and C8), 5.74 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C3 and C7), 5.77-5.70 (2H, brs, NH at N3 and N4), 4.74 (2H, d, J = 2.4 Hz, CH
2 at C22), 3.59 (4H, t, J = 5.5 Hz, CH
2 at C17 and C20), 3.44 (4H, q, J = 5.5 Hz, CH
2 at C16 and C19), 3.40 (6H, s, CH
3 at C18 and C21), 2.57 (1H, s, CH at C24).
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz): δ 158.0 (C13), 156.5 (C1 and C9), 131.6 (CH at C12 and C14), 131.5 (C5), 130.9 (C4 and C6), 129.0 (CH at C2 and C8), 128.4 (C10), 114.3 (CH at C11 and C15), 101.0 (CH at C3 and C7), 75.8 (CH
2 at C22), 71.1 (CH
2 at C17 and C20), 59.0 (CH
3 at C18 and C21), 55.9 (CH
3 at C22), 44.3 (CH
2 at C16 and C19), 29.7 (C24).
HRMS m/z [M+Na]
+ Calcd for C
24H
27BF
2N
4NaO
3
+ 491.2036; Found 491.2036.
【0062】
5,5-ジフルオロ-N
3
,N
7
-ビス(2-メトキシエチル)-10-(4-ニトロフェニル)-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3,7-ジアミン:化合物5eの合成
【化32】
10.2 cm エース高耐圧チューブに、CH
3CN(5 mL)に溶解した化合物4e(200 mg、0.524 mmol)を加え、2-メトキシエチルアミン(364 μL、4.19 mmol、8.0 eq.)を滴下し、100℃で24時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル/CH
2Cl
2=1/1/1)で反応終了を確認した。その後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲルオープカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル/CH
2Cl
2=1/1/1)で分離精製し、黒色固体として化合物5eをで得た(149 mg、収率62.1 %)。
Mp: 179-180℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 8.23 (2H, d, J = 8.8 Hz, CH at C12 and C14), 7.62 (2H, d, J = 8.8 Hz, CH at C11 and C15), 6.45 (2H, d, J = 4.4 Hz, CH at C2 and C8), 5.81 (2H, br s, NH at N3 and N4), 5.79 (2H, d, J = 4.4 Hz, CH at C3 and C7), 3.60 (4H, t, J = 5.5 Hz, CH
2 at C17 and C20), 3.45 (4H, q, J = 5.5 Hz, CH
2 at C16 and C19), 3.40 (6H, s, CH
3 at C18 and C21).
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz): δ 156.9 (C at C4 and C6), 148.0 (C at C13), 141.9 (C at C5), 131.2 (CH at C11 and C15), 128.5 (C at C1 and C9), 127.9 (CH at C2 and 8), 127.7 (CH at C10), 123.3 (CH at C12 and C14), 102.1 (CH at C3 and C7), 71.1 (CH
2 at C17 and C20), 59.1 (CH
3 at C18 and C21), 44.3 (CH
2 at C16 and C19).
HRMS m/z: [M+Na]
+ Calcd for C
21H
24BN
5O
4F
2Na
+ 482.1782; Found 482.1787.
【0063】
10-(4-アミノフェニル)-5,5-ジフルオロ-N
3
,N
7
-ビス(2-メトキシエチル)-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3,7-ジアミン:化合物6の合成
【化33】
窒素雰囲気下の25 mLナスフラスコに、EtOH(10 mL)に溶解した化合物5e(57.3 mg、0.125 mmol)を加え、10分間撹拌し、NH
2NH
2・H
2O(72.8 μL、1.50 mmol、12 eq.)を滴下し、10% Pd/C(10 mol%)を加え、還流条件で30分間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル/CH
2Cl
2=1/1/1)で反応終了を確認し、反応停止した。10% Pd/Cをセライトにより除去した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル/CH
2Cl
2=1/1/1)で分離精製し、茶色固体として化合物6を得た(43.2 mg、収率81%)。
Mp: 69-70℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.25 (2H, d, J = 8.4 Hz, CH at C12 and C14), 6.70 (2H, d, J = 8.4 Hz, CH at C11 and C15), 6.61 (2H, d, J = 4.4 Hz, CH at C2 and C8), 5.73 (2H, d, J = 4.3 Hz, CH at C3 and C7), 5.68 (2H, brs, NH at N3 and N4), 3.59 (4H, t, J = 5.4 Hz, CH
2 at C17 and C20), 3.43 (4H, m, CH
2 at C16 and C19), 3.40 (6H, s, CH
3 at C18 and C21).
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz): δ 156.3 (C at C1 and C9), 147.0 (C at C13), 132.0 (C at C5), 131.6 (CH at C12 and C14), 128.9 (C at C4 and C6), 128.4 (CH at C2 and C8), 125.1 (C at C10), 114.4 (CH at C11 and C15), 100.7 (CH at C3 and C7), 71.2 (CH
2 at C17 and C20), 59.0 (CH
3 at C18 and C21), 44.2 (CH
2 at C16 and C19).
HRMS m/z [M+Na]
+ Calcd for C
21H
26BF
2N
5NaO
2
+ 452.2040; Found 452.2045.
【0064】
N-(4-(5,5-ジフルオロ-3,7-ビス((2-メトキシエチル)アミノ)-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-10-イル)フェニル)アセトアミド:化合物7の合成
【化34】
20 mL の二口ナスフラスコに、CH
2Cl
2(20 mL)に溶解した化合物6(70 mg、0.163 mmol)を加えて氷浴にて0℃まで冷却した。溶液に無水酢酸(360 μL、3.26 mmol、20 eq.)、トリエチルアミン(341 μL、2.45 mmol、15 eq.)をそれぞれ滴下し、DMAP(10 mol%、2.0 mg、16.3 μmol)を加えて室温まで昇温し、2.5時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル/CH
2Cl
2=1/2/1)で反応終了を確認し、反応停止した。溶液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水溶液でそれぞれ洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥し、精製操作をせずに黒色固体として化合物7を得た(68.7 mg、収率89 %)。
Mp: 139-140℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.52 (2H, d, J = 8.4 Hz, CH at C12 and C14), 7.35 (2H, d, J = 8.4 Hz, CH at C11 and C15), 7.23 (1H, br s, NH at N5), 6.51 (2H, d, J = 4.4 Hz, CH at C2 and C8), 5.75 (2H, d, J = 4.4 Hz, CH at C3 and C7 ), 5.73 (2H, brs, NH at N3 and N4), 3.58 (4H, t, J = 5.4 Hz, CH
2 at C17 and C20), 3.44 (4H, m, CH
2 at C16 and C19), 3.40 (6H, s, CH
3 at C18 and C20), 2.18 (3H, s, CH
3 at C23).
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz): δ 168.3 (C at C1 and C9), 156.5 (C at C13), 138.3 (C at C5), 131.1 (CH at C12 and C14), 130.9 (C at C4 and C6), 128.9 (CH at C2 and C8), 128.3 (C at C10), 119.2 (CH at C11 and C15), 101.1 (CH at C3 and C7), 71.1 (CH
2 at C17 and C20), 59.0 (CH
3 at C18 and C21), 44.2 (CH
2 at C16 and C19), 24.7 (CH
3 at C23).
HRMS m/z [M+Na]
+ Calcd for C
23H
28BF
2N
5NaO
3
+ 494.2145; Found 494.2151.
【0065】
N-(4-(5,5-ジフルオロ-3,7-ビス((2-メトキシエチル)アミノ)-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-10-イル)フェニル)ヘキサナミド:化合物8の合成
【化35】
200 mLの三口フラスコに、CH
2Cl
2(50 mL)に溶解した化合物6(100 mg、0.233 mmol)を加え、氷浴で0℃まで冷却した。溶液にトリエチルアミン(97.4 μL、0.699 mmol、3.0 eq.)、塩化ヘキサノイル(72.1 μL、0.466 mmol、2.0 eq.)をそれぞれ滴下し、1時間撹拌した。TLC(ヘキサン/CH
2Cl
2/酢酸エチル=2/2/1)で反応終了を確認し、反応停止した。反応液を0.18 M HCl(5 mL)、0.5 M NaOH(2 mL)、飽和食塩水溶液でそれぞれ3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル/CH
2Cl
2=3/1/2)で分離精製し、黒色固体として化合物8を得た(110.7 mg、収率90.1 %)。
Mp: 99-100℃.
IR (KBr): 3416, 3306, 3177, 3111, 2928, 2868, 1667, 1603, 1555, 1468, 1427, 1427, 1341, 1306, 1244, 1192, 1165, 1094, 1057, 1013, 966, 889, 841, 781, 679, 561, 484, 415 cm
-1.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.57 (2H, d, J = 8.5 Hz, CH at C12 and C14), 7.40 (2H, d, J = 8.5 Hz, CH at C11 and C15), 7.22 (1H, brs, NH at N5), 6.55 (2H, d, J = 4.4 Hz, CH at C2 and C8), 5.75-5.72 (4H, m, CH at C2 and C8, NH at N3 and N4), 3.59 (4H, t, J = 5.4 Hz, CH
2 at C17 and C20), 3.46 (4H, q, J = 5.6 Hz, CH at C16 and C19), 3.40 (6H, s, CH
3 at C18 and C20), 2.39 (2H, t, J = 7.4 Hz, CH
2 at C23), 1.76 (2H, m, CH
2 at C24), 1.40-1.36 (4H, m, CH
2 at C25 and C26), 0.92 (3H, m, CH
3 at C27).
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz): δ 171.5 (C at C1 and C9), 156.5 (C at C13), 138.4 (C at C5), 131.1 (CH at C12 and C14), 130.8 (C at C4 and C6), 128.9 (CH at C2 and C8), 128.3 (C at C10), 119.1 (CH at C11 and C15), 101.1 (CH at C3 and C7), 71.1 (CH
2 at C17 and C20), 59.1 (CH
3 at C18 and C21), 44.2 (CH
2 at C16 and C19), 37.9 (CH
2 at C23), 31.4 (CH
2 at C25), 25.3 (CH
2 at C24), 22.4 (CH
2 at C26), 14.0 (CH
3 at C27).
HRMS m/z [M+Na]
+ Calcd for C
27H
36BF
2N
5NaO
3
+ 550.2771; Found 550.2777.
【0066】
3,7-ジクロロ-5,5-ジフルオロ-10-(4-((ヘプチル-1H-1,2,3-トリアゾル-4-イル)メトキシ)フェニル-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン:化合物9の合成
【化36】
10 mL一口ナスフラスコに、ヘプチルアジド(16 mg、0.12 mmol、1.5 eq.)を加え、化合物4d(30 mg、0.077 mmol、1.50 eq.)、DMSO(4.0 mL)を加え撹拌し、水(1.0 mL)に溶解したCuSO
4・5H
2O(1.0 mg、5 mol%)及びアスコルビン酸ナトリウム(1.5 mg、10 mol%)を滴下し、室温で12時間撹拌した後、同量のCuSO
4・5H
2O、アスコルビン酸ナトリウム混合の水溶液を加え、更に12時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で反応終了を確認し、反応停止した。反応液をAcOEtで3回抽出し、飽和食塩水溶液で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。その後、得られた残渣をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で分離精製し、橙油状物として標題化合物を得た(30 mg、収率72.7 %)。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz): δ 7.68 (1H, s, CH at C17), 7.45 (2H, d, J = 8.4 Hz, CH at C12 and C14), 7.15 (2H, d, J = 8.4 Hz, CH at C11 and C15), 6.87 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C2 and C8), 6.44 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C3 and C7), 5.30 (2H, brs, NH at N3 and N4), 4.38 (2H, t, J = 7.2 Hz, CH
2 at C17), 1.93 (2H, m, CH
2 at C19), 1.35-1.20 (10H, m, (CH
2)
5 at C20-24), 0.90 (3H, m, CH
3 at C25).
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz): δ 160.7 (C13), 144.2 (C1 and C9), 143.8 (C9), 143.2 (C15), 133.6 (C5), 132.3 (CH at C2 and C8), 131.4 (CH at C11 and C15), 125.2 (C10) , 122.7 (CH at C18), 118.6 (CH at C3 and C7), 62.1 (CH
2 at C16), 50.5 (CH
2 at C19), 31.5 (CH
2), 30.2 (CH
2), 28.6 (CH
2 at C20), 26.4 (CH
2), 22.5 (CH
2), 14.0 (CH
3 at C25).
HRMS m/z [M+Na]
+ Calcd for C
25H
26BCl
2F
2N
5NaO
+ 554.1468; Found 554.1453.
【0067】
5,5-ジフルオロ-10-(4-((ヘプチル-1H-1,2,3-トリアゾル-4-イル)メトキシ)フェニル-N
3
,N
7
-ビス(2-メトキシエチル)-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3,7-ジアミン:化合物10の合成
【化37】
10.2 cmエース高耐圧チューブに、化合物9(25 mg、0.047 mmol)を加え、CH
3CN(1 mL)を加えて撹拌し、2-メトキシエチルアミン(41 μL, 0.47 mmol、10.0 eq.)を加えて100℃で24時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で反応終了を確認した。その後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH
2Cl
2/酢酸エチル=1/1/1)で分離精製し、青紫色油状物として化合物10を得た(15 mg、収率53.1 %)。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.63 (1H, s, CH at C17), 7.38 (2H, d, J = 8.4 Hz, CH at C12 and C14), 7.03 (2H, d, J = 8.4 Hz, CH at C11 and C15), 6.55 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C2 and C8), 5.74 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C3 and C7), 5.71 (2H, br s, NH at N3 and N4), 5.26 (2H, s, CH
2 at C22), 4.36 (2H, t, J = 7.2 Hz, CH
2 at C17), 3.59 (4H, t, J = 5.5 Hz, CH
2 at C17 and C20), 3.43 (4H, d, J = 5.5 Hz, CH
2 at C16 and C19), 3.40 (s, 6H, CH
3 at C18 and C21), 1.93 (2H, m, CH
2 at C19), 1.35-1.20 (10H, m, (CH
2)
5 at C20-24), 0.90 (3H, m, CH
3 at C25).
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz): δ 158.7 (C13), 156.5 (C1 and C9), 144.0 (C23), 131.7 (CH at C2 and C8), 131.6 (C12 and C14), 129.0 (C5), 128.9 (CH at C2 and C8), 127.9 (C10), 122.5 (CH at C24), 114.3 (CH at C11 and C15), 101.0 (CH at C3 and C7), 71.1 (CH
2 at C17 and C20), 62.2 (CH
2 at C22), 59.0 (CH
3 at C18 and C21), 50.5 (CH
2 at C25), 31.5 (CH
2), 30.2 (CH
2), 28.6 (CH
2 at C20), 26.4 (CH
2), 22.5 (CH
2), 14.0 (CH
3 at C31).
HRMS m/z [M+Na]
+ Calcd for C
31H
42BF
2N
7NaO
3
+ 632.3302; Found 632.3264.
【0068】
10-(4-((1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾル-4-イル)メトキシ)フェニル)-3,7-ジクロロ-5,5-ジフルオロ-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン:化合物11の合成
【化38】
10 mL一口ナスフラスコに、ジクロロメタン(10 mL)に溶解したヨウ化銅(3.8 mg、2 mol%)、DIPEA(6.9μL、4 mol%)、酢酸(2.3μL、4 mol%)を入れ、化合物4d(391 mg、1.0 mmol)、ベンジルアジド(160 mg、1.2 eq.)を加え、室温で2時間撹拌した。TLCで反応終了を確認し、反応液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。その後、得られた残渣をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で分離精製し、橙固体として標題化合物を得た(381 mg、収率72.6 %)。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.63 (1H, s, CH at C17), 7.45-7.35 (4H, m, CH at C12 and C14), 7.31 (2H, m, CH at C11 and C15), 6.86 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C2 and C8), 6.40 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C3 and C7), 5.56 (2H, brs, NH at N3 and N4).
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz): δ 160.7 (C13), 144.2 (C1 and C9), 143.9 (C5), 143.8 (C17), 134.4 (C13 and C20), 133.6 (C4 and C6), 132.3 (CH at C12 and C14), 131.5 (CH at C2 and C8), 129.2 (CH at C21 and C25), 128.9 (CH at C23), 128.2 (CH at C22 and C24), 125.2 (C10), 122.9 (CH at C18), 118.7 (CH at C3 and C7), 115.0 (CH at C11 and C15), 62.2 (CH
2 at C16), 54.4 (CH
2 at C19).
HRMS m/z [M+Na]
+ Calcd for C
25H
18BCl
2F
2N
5NaO
+ 546.0842; Found 546.0847.
【0069】
10-(4-((1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾル-4-イル)メトキシ)フェニル)-5,5-ジフルオロ-N
3
,N
7
-ビス(2-メトキシエチル)-5H-4λ
4
,5λ
4
-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3,7-ジアミン:化合物12の合成
【化39】
10.2 cmエース高耐圧チューブに、化合物11(200 mg、0.38 mmol)を加え、CH
3CN(3 mL)を加えて撹拌し、2-メトキシエチルアミン(332 μL、3.82 mmol、10.0 eq.)を加えて100℃で24時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で反応終了を確認した。その後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH
2Cl
2/酢酸エチル=3/2/1)で分離精製し、青紫色固体として化合物12を得た(124 mg、収率54.0 %)。
Mp: 47-48℃.
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): δ 7.56 (1H, s, CH at C17), 7.38-7.34 (5H, m, CH at C27-C31), 7.29 (2H, m, CH at C12 and C14), 7.00 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C11 and C15), 6.53 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C2 and C8), 5.72 (2H, d, J = 4.2 Hz, CH at C3 and C7), 5.73-5.70 (2H, brs, NH at N3 and N4), 5.22 (2H, s, CH
2 at C22), 3.58 (4H, t, J = 5.5 Hz, CH
2 at C17 and C20), 3.41 (4H, q, J = 5.5 Hz, CH
2 at C16 and C19), 3.39 (6H, s, CH
3 at C18 and C21).
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz): δ 158.7 (C13), 156.5 (C1 and C9), 144.4 (C23), 134.4 (C26), 131.6 (CH at C2 and C8), 130.9 (C5), 129.2 (CH at C27 and C31), 128.9 (CH at C29), 128.9 (C4 and C6), 128.9 (C5), 128.4 (CH at C28 and C30), 128.1 (CH at C12 and C14) , 127.9 (C10), 122.7 (CH at C24), 114.3 (CH at C11 and C15), 101.0 (CH at C3 and C7), 71.1 (CH
2 at C17 and C20), 62.1 (CH
2 at C22), 59.0 (CH
3 at C18 and C21), 54.3 (CH
2 at C25), 44.2 (CH
2 at C16 and C19).
HRMS m/z [M+Na]
+ Calcd for C
31H
34BF
2N
7NaO
3
+ 624.2676; Found 624.2759.
【0070】
試験例1.蛍光スペクトルの測定
化合物7、8、12を吸光度が0.05以下となるように、アセトンまたは10 mM HEPES/NaOH(pH 7.4)、および100 mM NaClを用いて適宜希釈し、蛍光測定に用いた。蛍光測定には、日立分光蛍光光度計FL-7000を使用した。測定は全て25℃で行い、励起スペクトルについては、蛍光波長を578 nmとし、励起波長400-700 nmを掃引して測定を行い、一方、蛍光スペクトルについては、励起波長を564 nmとして蛍光波長570-700 nmを掃引して測定した。結果を
図1に示す。
【0071】
試験例2.相対量子収率の測定
化合物5a、5b、5c、5d、5e、6、7、8、10、12の相対量子収率を測定した。
化合物5a、5b、5c、5d、5e、6、7、8、10、12をそれぞれ10-20 mgずつ精秤し、アセトンに溶解し、50 ml溶液を調製した。さらに、100倍希釈液を調製し、日立ダブルビーム分光光度計UV-2900を用い吸収スペクトルを測定し、各吸収極大波長におけるモル吸光係数を求めた。以降の測定に使用する各溶液の濃度は、本モル吸光係数に基づいて決定した。
化合物5a、5b、5c、5d、5e、6、7、8、10、12を吸光度が0.05以下となるようにアセトンを用いて適宜希釈し、蛍光測定に用いた。蛍光測定には、日立分光蛍光光度計FL-7000を使用した。測定は全て25℃で行い蛍光スペクトルについては、励起波長を543 nmとして蛍光波長550-700 nmを掃引して測定した。量子収率既知の蛍光物質としてはローダミンBのエタノール溶液を用い、蛍光スペクトル測定を行った。量子収率φは次式に従って算出した。結果を下表に示す。
φ=φ
標準×(A
標準/A)×(F/F
標準)×(n
アセトン
2/n
エタノール
2)×(D/D
標準)
ここで、φ
標準、A
標準、F
標準、D
標準はそれぞれローダミンBの量子収率、543 nmにおける吸光度、蛍光スペクトルのピーク半値幅の面積および希釈率を、A、F、Dはそれぞれ各色素の吸光度、蛍光スペクトルのピーク半値幅の面積および希釈率を、n
アセトンとn
エタノールはアセトンとエタノールの屈折率を表す。
【表1】
【0072】
試験例3.溶媒極性の効果
予め50μMの化合物5d、5e、6、7、8、10、12のアセトン溶液を用意した。1 mlのアセトン、エチレングリコールまたは10 mM HEPES/NaOH (pH 7.4)、および100 mM NaClを25℃でインキュベートし、各アセトン溶液10μlを加え、蛍光測定に用いた。蛍光測定は、日立分光蛍光光度計FL-7000を使用し25℃で行い、励起波長を564 nmとする蛍光スペクトルを蛍光波長570-700 nmで掃引して測定し、各蛍光スペクトルに基づいて極大蛍光強度を求めた。予め測定しておいた溶液の吸光度から各濃度を求め、1μMの濃度の時の蛍光強度に補正し、アセトン溶媒中の蛍光強度を100%とした場合の、各溶媒中での相対蛍光強度を評価した。結果を
図2に示す。
化合物10と化合物12は、黒バーと白バーが表す蛍光強度の差が最も大きく、極性変化に対する応答が鋭敏なことを示した。また、白バーが大きな負の値を示し、背景ノイズとなる水系での蛍光強度が小さいことを示した。
【0073】
試験例4.化合物6によるオリゴ糖定量
予め6μMの化合物6のアセトン溶液を用意した。各濃度のβシクロデキストリンまたはグルコースを含む10 mM HEPES/NaOH (pH 7.4)、100 mM NaCl 1 mlを25℃でインキュベートし、化合物6のアセトン溶液10μlを加え、蛍光測定に用いた。蛍光測定は、日立分光蛍光光度計FL-7000を使用し25℃で行い、励起波長を564 nmとする蛍光スペクトルを蛍光波長570-700 nmで掃引して測定し、各蛍光スペクトルに基づいて極大蛍光強度を求め、検量線を作成した。βシクロデキストリンについては良好な検量線が得られたが、グルコースについては得られなかった。
【0074】
試験例5.化合物10によるオリゴ糖定量
予め17μMの化合物10アセトン溶液を用意した。各濃度のβシクロデキストリンまたはグルコースを含む10 mM HEPES/NaOH (pH 7.4), 100 mM NaCl 1 mlを25℃でインキュベートし、化合物10アセトン溶液10μlを加え、蛍光測定に用いた。蛍光測定は、日立分光蛍光光度計FL-7000を使用し25℃で行い、励起波長を564 nmとする蛍光スペクトルを蛍光波長570-700 nmで掃引して測定し、各蛍光スペクトルに基づいて極大蛍光強度を求め、検量線を作成した。βシクロデキストリンについては良好な検量線が得られたが、グルコースについては得られなかった。
【0075】
試験例6.化合物12によるオリゴ糖定量
予め5μMの化合物12アセトン溶液を用意した。各濃度のβシクロデキストリン(ナカライテスク)、マルトデキストリン(メルク)またはグルコース(和光純薬)を含む10 mM HEPES/NaOH (pH 7.4)、100 mM NaCl 1mlを25℃でインキュベートし、化合物12アセトン溶液10μlを加え、蛍光測定に用いた。蛍光測定は、日立分光蛍光光度計FL-7000を使用し25℃で行い、励起波長を564 nmとする蛍光スペクトルを蛍光波長570-700 nmで掃引して測定し、各蛍光スペクトルに基づいて極大蛍光強度を求めた。また、タンパク質による蛍光強度への影響を確かめるため、塩化リゾチーム(ナカライテスク)を用い、同様の実験を行った。βシクロデキストリンについては良好な検量線が得られたが、グルコースについては得られなかった。リゾチームの影響は2 mg/mlでは無視できることを確認した。