(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】フレーム用継手
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20230418BHJP
E04B 1/32 20060101ALI20230418BHJP
F16B 7/20 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
E04B1/58 505H
E04B1/32 102B
F16B7/20 C
(21)【出願番号】P 2019046945
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】518101222
【氏名又は名称】株式会社共和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】河口 治也
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-007856(JP,A)
【文献】特開2002-336099(JP,A)
【文献】実開昭54-173505(JP,U)
【文献】実開昭63-104190(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/19,1/32
E04B 1/58
F16B 7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部(5)と、この本体部から分岐する複数の枝部(6)とを備え、これらの枝部にフレーム(F)のパイプ材(20)が差し込まれる継手(10)であって、
前記本体部は、
底壁(7)と、
この底壁の外周に沿って立ち上げられる環状壁(8)と、
前記底壁および前記環状壁の内側に仕切られて上方に開放する本体空間(R)と、を備える一方、
前記枝部は、
前記環状壁の外側に前記フレームのそれぞれ異なる軸線に沿って形成される枝管(9)と、
前記枝管の内側に貫通するともに、一端が前記枝管の先端側に開放し、他端が前記枝管の根元側で前記本体空間に開放する枝空間(S)と、を備え
ており、
加えて、前記枝管の内周面が、前記枝管の先端側から根元側にかけて前記枝空間がしだいに狭くなるように傾斜するテーパ面(9b)であり、かつ、 前記枝管の外周面が、前記パイプ材の内周面に摺接する円筒面であることを特徴とする、フレーム用継手。
【請求項2】
請求項1記載の継手であって、前記底壁に、前記本体空間から前記底壁の下方の空間に抜ける補助孔(H)が設けられる、フレーム用継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドーム型構造物のフレームを構築するのに適したフレーム用継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イベント会場や展示場といった施設には、企業や個人の専用のブースを確保するためにドーム型構造物が設置されることがある。この種のドーム型構造物は、多面体あるいは球面体形状のフレームを有し、このフレームの内側が個別の空間となる。このような構造物をスペースドームと呼ぶこともある。
【0003】
ドーム型構造物のフレームは、たとえば所定寸法にカットされたパイプ材を専用の継手により立体的に連結することにより組み上げられる。このような継手は、通常、本体部と、この本体部から分岐する複数の枝部とを有しており、この枝部にパイプ材が差し込まれる。これらのパイプ材が継手を中心に立体的な角度を保って固定されることによりドーム形状を保つ。ドーム形状のフレームには、必要に応じて空間を仕切るシートやパネルが取り付けられる。
【0004】
なお、ドーム型構造物のフレームに用いられる継手の先行技術としては特許文献1および2が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-200699号公報
【文献】特開2008-156823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなドーム型構造物では、ブース内で照明器具や電子機器を使用するために配線設備を設ける場合がある。配線設備はフレームに沿って配線を取り回すことが好ましく、特に、フレームのパイプ材(パイプ孔)に配線を通すことで、その見た目を良好にすることができる。
【0007】
しかしながら、従来のドーム型構造物のフレームでは、パイプ材(パイプ孔)に配線を通そうとすると、継手部分が障害となってその作業が煩雑になる。つまり、フレームの継手部分は、隣り合うパイプ材が異なる角度で連結されている箇所であるため、配線を曲げてパイプ孔に通す必要があり、その作業に手間と時間がかかる。
あらかじめパイプ材と継手に配線を通してからフレームを組み上げる工法も考えられるが、このような工法ではフレームの組み上げ時に配線が邪魔になりやすく、また、いったんフレームが組み上げられると、パイプ材と継手の内側に配線が隠れてしまい、配線の修理や交換などのメンテナンスが面倒になる。
従来、このようにドーム型構造物のフレームに配線を通すことを考慮したフレーム用継手はほとんど知られていない。
【0008】
本発明者らは、ドーム型構造物におけるフレーム強度や組立ての作業性を向上させるべく、フレーム用継手の材料や形状について検討を重ねた。そして、各種の試作を繰り返す中、開放型の構造をもつ継手に着眼するに至った。つまり、配線を自在に取り回せる開放空間を継手に設けることにより、前述した配線の作業性の問題を解消しうる。
加えて、立体的なフレームの軸線(ゲージライン)が集まる継手部分には、その負荷応力に耐えうる十分な強度を要求される。このため、このような部分に開放型の継手を採用する場合にはフレーム強度の低下を抑制する対策が重要となる。
【0009】
本発明は、このような現状に鑑みなされたものであり、ドーム型構造物のフレームに配線を簡単に通すことができ、しかもフレーム強度を十分に確保することができるフレーム用継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第1発明)
前記課題を解決するために本発明によるフレーム用継手は、下記の構成を備えるものとした。すなわち、
本体部(5)と、この本体部から分岐する複数の枝部(6)とを備え、これらの枝部にフレーム(F)のパイプ材(20)が差し込まれる継手(10)であって、
前記本体部は、
底壁(7)と、
この底壁の外周に沿って立ち上げられる環状壁(8)と、
前記底壁および前記環状壁の内側に仕切られて上方に開放する本体空間(R)と、を備える一方、
前記枝部は、
前記環状壁の外側に前記フレームのそれぞれ異なる軸線に沿って形成される枝管(9)と、
前記枝管の内側に貫通するともに、一端が前記枝管の先端側に開放し、他端が前記枝管の根元側で前記本体空間に開放する枝空間(S)と、を備える構成とした。
【0011】
このようなフレーム用継手の構成によれば、継手の枝部から本体部にかけて一体的に連なる開放空間(本体空間および枝空間)が形成される。このため、ドーム型構造物のフレームを組み上げるとき、この開放空間を利用することでフレームのパイプ材(パイプ孔)に配線を簡単に通すことができる。フレームを組み上げた後でも開放空間を通してパイプ材(パイプ孔)に配線を取り回すことができるため、配線の修理や交換等のメンテナンス作業を簡単に行うことができる。
また、本発明の構成によれば、継手の本体部の形状として、底壁の外周に沿って環状壁が立ち上げられる形状を採用するため、底壁により環状壁を補強しつつ、環状壁にかかる応力集中を緩和することができる。これにより、このような継手形状と高強度の材料とを組み合わせることで、ドーム型構造物のフレーム強度を十分に確保することが可能となる。
【0012】
(第2発明)
本発明のフレーム用継手は、第1発明の構成を備えるものであって、前記枝管の内周面が、前記枝管の先端側から根元側にかけて前記枝空間がしだいに狭くなるように傾斜するテーパ面(9b)であり、かつ、 前記枝管の外周面が、前記パイプ材の内周面に摺接する円筒面である構成とした。
【0013】
このような構成によれば、枝管の内周面が、枝管の先端から根元側にかけて枝空間がしだいに狭くなるように傾斜するテーパ面となっているため、このテーパ面に沿って配線を誘導することができる。たとえばフレーム用継手の枝空間から本体空間に配線を通す際に、枝管のテーパ面に沿って複数の配線を束ねて本体空間に引き込むといった取り回しを行うことができる。
また、枝管の外周面が、パイプ材の内周面に摺接する円筒面であるため、枝管の内側のテーパ面と相俟って枝管自体の根元側の肉厚が先端側よりも大きくなる。これにより、枝管の曲げ強度を高めてフレーム強度を向上させることができる。
【0014】
(第3発明)
第3発明のフレーム用継手は、第1発明または第2発明の構成を備えるものであって、前記底壁に、前記本体空間から前記底壁の下方の空間に抜ける補助孔(H)が設けられる構成とした。
【0015】
このような構成によれば、フレーム用継手の本体空間が底壁の下方の空間と繋がるため、本体空間から底壁の裏側に配線を取り出したり、逆に底壁の裏側から本体空間に配線を引き込むことができる。これにより、ドーム型構造物における配線の自由度が増し、ドーム内の空間をより快適にすることができる。
【0016】
(第1~3発明)
第1~3発明は、ドーム型構造物のフレームに適用することが望ましいが、フレームの用途は特に限定されない。イベント会場や展示会場におけるブースを確保するものであってもよいし、居住用であってもよい。その他、施設ゲートやドローン(無人航空機)のガードフレームといった用途であってもよい。このようなドーム型構造物のフレームに配線を通すことによりドーム内の空間に電源を確保したり、照明器具等を取り付けることができる。
フレームの形状は、多面体あるいは球面体形状の他、円錐形状、角錐形状、円筒形状、多角筒形状でもよいし、これらの形状の一部であっても構わない。その他、トンネル状のフレームであってもよい。特に、切頂二十面体形状(サッカーボール形状)のフレームに本発明を採用すると効果的である。
【0017】
さらに、本発明のフレーム用継手による付随的な効果として、配線のために使用可能な空間を、フレーム補強用の空間として使用することができる。たとえば配線に代えて、補強用の芯材(棒ネジやワイヤ)をパイプ材に通して両端の継手部分で締め上げることでドーム型構造物のフレーム強度を向上させることができる。もちろん、配線と補強の両方に本発明のフレーム用継手を使用することも可能である。
第1~3発明には本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の構成要素との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るフレーム用継手を示す斜視図である。
【
図2】同フレーム用継手により構築したドーム形構造物のフレームを示す概略構成図である。
【
図3】同フレーム用継手を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【
図4】同フレーム用継手を示すもので、(A)は底面図、(B)は背面図である。
【
図5】同フレーム用継手を示すもので、(A)は側面図、(B)は断面図である。
【
図6】同フレーム用継手に配線を通した状態を示す断面図である。
【
図7】同フレーム用継手に補強用の芯材を通した状態を示す断面図である。
【
図8】実施形態の変形例によるフレーム用継手を示す部分断面図である。
【
図9】実施形態の他の変形例を示すもので、(A)はフレーム用継手の部分断面図、(B)はドーム形構造物のフレームの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、イベント会場等に設置されるドーム型構造物に本発明を適用したものである。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
図2に示すように、本実施形態のドーム型構造物は、切頂二十面体の形状を有するフレームFを備えている。切頂二十面体は、正五角形と正六角形と立体的に組み合わさったいわゆるサッカーボール形状である。本実施形態では、切頂二十面体の底部を除いた上側の部分がフレームFとなっている。フレームFの正五角形または正六角形の面には必要に応じてシートやパネルが取り付けられる。このフレームFの内側が外部スペースから隔離された個別の空間となる。
【0020】
フレームFは、パイプ材20と継手10とから組み上げられる。切頂二十面体の各辺にパイプ材20が配置され、各頂点に継手10が配置される。フレームFの底部には切頂二十面体を水平方向にカットしたときに生じる辺に沿って専用のパイプ材30と継手(図示省略)が配置される。このように配置した各パイプ材を各継手で連結することにりフレームFがドーム形状に保たれている。
【0021】
フレームFの材料は、軽量で強度の高い樹脂や金属を採用することが望ましく、ドーム型構造物の用途に合わせて適宜選定される。たとえばパイプ材20,30には市販の丸パイプを所定の寸法にカットしたものが使用される。継手10には所定の材料を射出や切削により一体的に形成したのものが使用される。
継手10の材料としては、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄鋼、ステンレス鋼、黄銅、インバー等の金属や合金、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等のエンジニアリングプラスチック、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、セルロース繊維強化プラスチック等の繊維複合材料等が挙げられる。
特に、イベント会場等に設置するフレームFの材料としては、軽量で優れた強度をもつ炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を採用するのが望ましい。
【0022】
図1に示すように、継手10は、本体部5と、本体部5から分岐する3本の枝部6とを備えている。各枝部6は本体部5からそれぞれ異なる方向(
図1では斜めやや下向き)に延びている。これらの枝部6にパイプ材20が差し込まれる。
【0023】
なお、本実施形態では、3本の枝部6がほぼ同一の長さになっているが(
図3および
図4参照)、これらの長さに差を付けるようにしてもよい。たとえば、五角形を囲む2本の枝部6(
図2参照)を、残りの枝部6よりも短くすることにより、両者を見分けられるようにする。五角形を囲む2本の枝部6は、残りの枝部6とは本体部5から延びる角度が異なることから、このように枝部6の角度を見分けられるようにすることで、フレームFを組み上げる作業が簡単になる。
【0024】
本体部5は、円形の底壁7と、この底壁7の外周に沿って立ち上げられる環状壁8とを備えている。これらの底壁7および環状壁8の内側に本体空間Rが仕切られている。この本体空間Rは、底壁7および環状壁8の内壁面により囲まれる有底円筒状の空間であり、本体部5の上方(フレーム外側)に開放している。
環状壁8の外側の輪郭は、平面方向からみて各枝部6の根元付近を頂点とする三角形をなすように連なっている。これにより、環状壁8が各枝部6の間でリブとして作用し、継手10の強度を高めている。
【0025】
図5に示すように、底壁7のほぼ中央には補助孔Hが設けられる。この補助孔Hは、本体空間Rから底壁7の下方の空間に抜けるように貫通している(
図5(B)参照)。
【0026】
枝部6は、環状壁8の外側に、フレームFの軸線に沿って枝管9が一体的に形成される。枝管9の内側には枝空間Sが貫通しており(
図5(B)参照)、この枝空間Sは、その一端が枝管9の先端側に開放し、他端が枝管9の根元側で本体空間Rに開放する。つまり、3つの枝空間Sがそれぞれ本体空間Rを通じて他の枝空間Sに繋がっている。また、各枝空間Sは、本体空間Rからさらに前述の補助孔Hを通して底壁7の下方の空間にも繋がることになる。
【0027】
図5(B)に示すように、枝管9の内周面は、その先端から根元側にかけてテーパ状に連なっている。このテーパ面9bは、枝管9の先端から根元側にいくにしたがって枝空間Sがしだいに狭くなるように傾斜している。これにより、枝管9の先端側から枝空間Sに配線を挿入すると、この配線が奥に進むにつれて枝空間Sの中央側に寄せられるようになる。
【0028】
枝管9の主要部(後述の厚肉部9aより先端側部分)の外周面は、パイプ材20の内周面に摺接する円筒面になっている。枝管9にパイプ材20を差し込むとき、枝管9の外側にパイプ材20がスライドしながら嵌まる。なお、このように枝管9に差し込んだパイプ材20を固定する手段としては、接着剤やネジ等を使用することができる。
【0029】
枝管9の根元付近には、その主要部から段差を介してその外径が拡大する厚肉部9aが形成されている。厚肉部9aの外径は、パイプ材20の外径にほぼ一致するようになっており、枝管9にパイプ材20を差し込むと、この厚肉部9aの段差にパイプ材20の先端が当たって止まる(
図6参照)。このとき、厚肉部9aの外径がパイプ材20の外径にほぼ一致することから、両者の段差が解消されてフレームFの見た目が良好になる。
【0030】
枝管9の厚肉部9aを含む肉厚は、テーパ面9bの傾斜に伴って枝管9の先端側よりも根元側の方が大きい(
図5(B)参照)。これにより、枝管9の根元部分が頑丈になり、その曲げ強度が高められている。
【0031】
[使用例1]
次に、継手10の使用方法について説明する。
フレームFを組み上げる場合、まず必要な個数のパイプ材20と継手10を準備する。本実施形態のフレームFでは、切頂二十面体形状の各辺および各頂点ですべて同一のパイプ材20および継手10を使用する。切頂二十面体がカットされた底辺およびこれを含む頂点には専用のパイプ材30および継手(図示省略)を使用する。
フレームFを組み上げる手順としては、
図2に示すように、たとえば最初に5本のパイプ材20を5個の継手10で繋ぎ合わせて五角形のパーツを作製する。このように繋ぎ合わせた五角形のパーツを所定数だけ作製し、続いて、これらのパーツ同士を、残りのパイプ材20と継手10を用いて繋ぎ合わせる。このとき、各パーツの継手10に余った枝部6(枝管9)同士をパイプ材20で繋ぎ合わせることにより、各パーツの正五角形の各辺に正六角形が隣り合う格好になる。このように形成したドーム形状のフレームに底部のパイプ材30と継手を繋ぐことにより、フレームFが完成する。
【0032】
フレームFに配線を通す場合には、
図6に示すように、継手10に開放された本体空間Rから枝空間Sを介してパイプ材20に配線Lを通す。隣り合う継手10の本体空間Rに配線Lを引き出しながら、フレームFの必要なパイプ材20に配線Lを通していく。
配線Lを分ける場合には、
図6(A)に示すように、本体空間Rに分岐用のコネクタCを設けてもよい。フレームF内の空間に配線を引き込む場合には、
図6(B)に示すように、本体空間Rから補助孔Hを通して配線Lを底壁7の下方に取り出す。
このように各継手10の開放空間(本体空間Rおよび枝空間S)に順次配線を通していくことで、フレームFの必要な箇所に配線設備を設けることができる。
【0033】
フレームF内に通した配線には必要に応じて照明器具や電子機器を接続する。たとえばフレームFの最上部の継手10から配線を取り出して照明器具に接続したり、フレームFの最下部の継手10から配線を取り出して電源等に接続することができる。
また、LEDなどのイルミネーション用の配線をフレームFに通してもよい。この場合、透明なパイプ材20を使用することにより、フレームF自体を発光させて電飾効果を高めるといったことも可能になる。
【0034】
配線の修理や交換等のメンテナンスを行う場合は、対象となる配線に近い位置の継手10の本体空間Rから配線を取り出して必要な作業を行う。配線をフレームFに戻す際には、前述したように継手10の開放空間(本体空間Rおよび枝空間S)に順次配線を通すことで、フレームFを分解することなくその作業を行うことができる。
【0035】
[実施形態の効果]
このように本実施形態の継手10によれば、継手10の枝部6から本体部5にかけて一体的に連なる開放空間(本体空間Rおよび枝空間S)が形成されるため、この開放空間を利用することでフレームFのパイプ材20に配線を簡単に通すことができる。フレームFを組み上げた後でも開放空間を通してパイプ材20に配線を取り回すことができるため、配線の修理や交換等のメンテナンス作業を簡単に行うことができる。
【0036】
また、継手10の本体空間Rが底壁7の下方の空間と繋がるため、本体空間Rから底壁7の裏側に配線を取り出したり、逆に底壁7の裏側から本体空間Rに配線を引き込むことができる。これにより、ドーム型構造物における配線の自由度が増し、ドーム内の空間をより快適にすることができる。
【0037】
さらに、継手10では、本体部5の形状として、底壁7の外周に沿って環状壁8が立ち上げられる形状を採用するため、底壁7により環状壁8を補強しつつ、環状壁8にかかる応力集中を緩和することができる。これにより、このような継手形状と高強度の材料とを組み合わせることで、フレームFの強度を十分に確保することが可能となる。
【0038】
さらに、枝管9の内周面が、枝管9の先端から根元側にかけて枝空間Sがしだいに狭くなるように傾斜するテーパ面9bとなっているため、このテーパ面9bに沿って配線を誘導することができる。たとえば枝空間Sから本体空間Rに配線を通す際に、枝管9のテーパ面9bに沿って複数の配線を束ねて本体空間Rに引き込むこともできる。
さらに、枝管9の外周面が、パイプ材20の内周面に摺接する円筒面であるため、枝管9の内側のテーパ面9bと相俟って枝管9の根元側の肉厚が先端側よりも大きくなる。これにより、枝管9の曲げ強度を高めてフレームFの強度を向上させることができる。
【0039】
[使用例2]
前述した実施形態1では、ドーム型構造物のフレームFに配線を通す使用例を説明したが、他の使用方法としては、配線に代えて補強用の芯材をフレームFに通してもよい。
図7に示すように、使用例2のフレームFは、パイプ材20に棒ネジ12が通される。パイプ材20の両端に実施形態1と同様の継手10が連結されている。この継手10の本体空間Rに棒ネジ12の両端が突き出しており、この棒ネジ12の両端にワッシャ13とナット14が嵌まる。なお、
図7にはフレームFの一箇所のパイプ材20を示しているが、他のパイプ材20にも同様に棒ネジ12が通される。
【0040】
棒ネジ12の両端でナット14を締め付けると、環状壁8に向けて棒ネジ12が引っ張られてパイプ材20と継手10の固定強度が増す。つまり、棒ネジ12の引っ張り力によりフレームFが締め上げられてフレーム強度が大幅に向上する。
【0041】
このような使用方法では、フレームFを組み上げた後で、継手10の本体空間Rを通してパイプ材20に棒ネジ12を通すことができる。このため、フレームFを補強する作業を簡単に行うことができる。また、棒ネジ12やナット14の点検などのメンテナンスを行う際にも、フレームFを解体することなく、その作業を簡単に行うことができる。
なお、
図7の使用例では、フレーム補強用の芯材として、棒ネジ12を使用しているが、これに代えてワイヤ等を使用することももちろん可能である。
【0042】
[変形例]
本発明の実施形態として継手10の構成を説明したが、実施形態は、これに限られることなく種々の変形を伴ってもよい。
図8に示す変形例1は、継手10に着脱可能な蓋を設けたものである。蓋15は、環状壁8の上側で本体空間Rを塞ぐように取り付けられる。蓋16は、底壁7の下側で補助孔Hを塞ぐように取り付けられる。
このように継手10に蓋15,16を取り付けることにより、本体空間Rを外部から隠すことが可能になる。これにより、配線や芯材が継手10の外側に露出することを防止することができ、フレームFの見た目を良好にすることができる。
【0043】
図9に示す変形例2は、継手40の本体空間RがフレームFの内側に開放するように構成したものである。
図9(A)に示すように、継手40は、底壁7の外周に沿って環状壁8が立ち上げられ、この環状壁8の外側に斜め上向きに枝管9が形成されている。これらの枝管9は、フレームFの軸線に沿って延びており、前述した実施形態の継手10と比較すると、枝管9の向きが上下対称の位置関係になる。なお、
図9では、底壁7の補助孔Hが省略されているが、必要に応じて底壁7に補助孔Hを設けてもよい。
【0044】
変形例2の継手40によりフレームFを組み上げると、継手40の本体空間Rがフレーム内側に開放され、フレーム外側には見えなくなる(
図9(B)参照)。フレームFに配線を通す際には、フレームF内の空間で作業を行うことができ、配線の取り回しがさらに容易になる。また、フレームFの内側に本体空間Rが隠れるため、フレームFの外観がシンプルになる。
【0045】
フレームFの形状については、切頂二十面体形状に限ることなく、その他の多面体形状や、球面体形状、円錐形状、角錐形状、円筒形状、多角筒形状、トンネル形状としてもよい。継手10における枝管6の本数や角度は、フレーム形状に応じて変更することが可能である。トラス構造のフレームFに合わせて継手10を形成してもよい。フレーム形状に応じて継手10の枝管9を曲線形状にしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
5・・・本体部
6・・・枝部
7・・・底壁
8・・・環状壁
9・・・枝管
9a・・・厚肉部
9b・・・テーパ面
10・・・継手
20,30・・・パイプ材
F・・・フレーム
H・・・補助孔
L・・・配線
R・・・本体空間
S・・・枝空間