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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】ケーブル敷設装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/10 20060101AFI20230418BHJP
   H02G 9/02 20060101ALI20230418BHJP
   B63B 35/04 20060101ALI20230418BHJP
   G02B 6/50 20060101ALI20230418BHJP
   G02B 6/54 20060101ALI20230418BHJP
   G02B 6/44 20060101ALN20230418BHJP
【FI】
H02G1/10
H02G9/02
B63B35/04
G02B6/50 311
G02B6/54
G02B6/44 366
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019035433
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020141481
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 平成30年9月19日 集会名 ワークショップ:海底ケーブルの科学利用と関連技術に関する将来展望
(73)【特許権者】
【識別番号】504194878
【氏名又は名称】国立研究開発法人海洋研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】303040585
【氏名又は名称】株式会社オーシーシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】荒木 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊則
(72)【発明者】
【氏名】喜舎場 英吾
(72)【発明者】
【氏名】松枝 義宏
(72)【発明者】
【氏名】西田 孝人
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0248417(US,A1)
【文献】特開2002-084614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/10
H02G 9/02
B63B 35/04
G02B 6/50
G02B 6/54
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルと、前記ケーブルの端部又は中間部に取り付けられた少なくとも1の筐体を有する敷設ケーブルを敷設するケーブル敷設装置において、
前記ケーブルが収納されるケーブル収納部と、前記筐体が収納される筐体収納部とが分離して形成された円柱状の胴部を有するボビンが水中操作機器に取り付けられ
前記胴部には、ケーブルが挿通可能な切り欠きを有する仕切り部材が周方向に沿って設けられ、
前記ケーブル収納部及び前記筐体収納部は前記仕切り部材により分離されている
ケーブル敷設装置。
【請求項2】
前記筐体収納部には、前記胴部に前記筐体を固定するための筐体固定部が設けられている
請求項1に記載のケーブル敷設装置。
【請求項3】
前記仕切り部材には前記切り欠きが複数形成され、 前記複数の切り欠きは周方向に均等に配置されている
請求項に記載のケーブル敷設装置。
【請求項4】
前記ケーブル収納部及び前記筐体収納部との間には、ケーブルが配置可能なケーブル保護部が設けられている
請求項1乃至請求項のいずれかに記載のケーブル敷設装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測機器やセンサー又はこれらをケーブルで接続した観測システムを海底に設置する際に、これらの機器を予定の設置位置に高精度で設置することを可能にするケーブル敷設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブル敷設方法は、ケーブルを船上のタンクに収納し、そのケーブルの端末を船上で観測機器と接続した状態にして、ケーブルを、船上から設置したい地点まで順次海底へ向けて送り出して敷設を行っていた。しかしながら、ケーブルが接続された状態で観測機器を海中に降ろさなければならないことから、ケーブルが抵抗となって、観測機器の設置位置が予定位置からずれてしまい、高精度で観測機器を設置することが難しかった。このことから、観測機器と、これと接続するケーブルを別々に敷設する方法が考案された(下記特許文献1参照)。
【0003】
下記特許文献1の海底ケーブルの敷設方法によれば、観測機器とケーブルを別々に敷設し、ついでROV(Remotely Operated Vehicle)(水中ロボット)等の水中操作機器によって観測機器とケーブルの接続を行うことにより観測機器とケーブルを海底に敷設することができる。観測機器を着底させる際に、観測機器のみを海中に降ろすものであるから、その抵抗が少なく、この結果、観測機器を設置予定位置に精度よく設置することができる。
また、ケーブルを収納したボビンを水中操作機器に取り付けて海底付近まで降下させることにより、降下中にケーブルに外力が作用することを防止し、また、ケーブルをボビンから繰り出した直後に海底に着底させることにより、敷設中においてもケーブルに作用する外力を小さく抑えることができる。ケーブルの敷設に際して、ボビンから繰り出されたケーブルを、即座に海底に着底させることにより、敷設中においてケーブルが潮流の影響を受けることを防止し、この結果、設定された敷設ルートに精度よく敷設することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-84614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、海底に複数のセンサー等の観測機器を設置して観測を行うことが求められている。これに対応するために、観測機器を筐体に内蔵した筐体を用い、複数の観測機器を一定の間隔でケーブルで接続することにより、複数の観測機器を海底の所定の場所に設置する観測システムが構築されている。このような筐体とケーブルが接続された観測システムを敷設するために、従来の敷設工法を用いた場合、海上の敷設船から筐体と接続されたケーブルを敷設すると予定した設置場所へ高精度では設置ができないという問題があった。
【0006】
一方、観測機器を内蔵した筐体とケーブルを別々に敷設して、後で筐体とケーブルを接続すれば高精度で予定した設置場所に設置することは可能であるが、海底での接続作業は、観測機器が増える程作業時間が増大して敷設工数が多大になるという問題があった。また、水中操作機器に取り付けるボビンに筐体と接続したケーブルを一連で巻き付けて収納して敷設すれば高精度で予定した設置場所へ敷設できると考えられるが、ケーブルをボビンから正確に繰り出すためにはケーブルがボビンに整列で巻き取られている必要がある。整列に巻かれておらず巻き乱れが生じると正確にケーブルが繰り出されることが出来ないばかりか、ケーブルが巻きの隙間に入り込んでケーブル同士が絡まったり、ケーブルに過大な張力が掛かったり、断線したりする恐れもある。筐体と接続したケーブルを一緒にドラム巻きした場合は、それぞれの外径や重量、強度、剛性も異なることから、上記した不具合が生じる恐れが高くなる。
【0007】
そこで、本発明のケーブル敷設装置は、工数をかけず安全に予定した設置場所に高精度でケーブルを設置することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るケーブル敷設装置は、ケーブルと、前記ケーブルの端部又は中間部に取り付けられた少なくとも1の筐体を有し、前記ケーブルが収納されるケーブル収納部と、前記筐体が収納される筐体収納部とが分離して形成された円柱状の胴部を有するボビンが水中操作機器に取り付けられ、前記胴部には、ケーブルが挿通可能な切り欠きを有する仕切り部材が周方向に沿って設けられ、前記ケーブル収納部及び前記筐体収納部は前記仕切り部材により分離されている。
【0009】
これにより、ケーブルと筐体がボビンにおいて異なる場所に収納される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケーブルとボビンとが分離して収納されたボビンを水中操作機器に取り付けて海底にケーブルを敷設するため、工数をかけず安全に予定した設置場所に高精度でケーブルを設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態の海底ケーブルの敷設方法を示す概略図である。
図2】実施の形態の敷設ケーブルを示した図である。
図3】実施の形態のケーブル断面図である。
図4】実施の形態のボビンの横断面図である。
図5】実施の形態のボビンの縦断面図である。
図6】実施の形態を示すもので、ケーブルが切り欠きを挿通している状態を示す図である。
図7】本発明の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
先ず、図1及び図2を参照して、本発明のケーブル敷設装置により敷設ケーブルを海底に敷設する手順を説明する。
以下、一例として、既設の基幹通信ケーブルに観測システムを追加して接続する場合を例として説明する。即ち、通信システムが、陸上に位置するデータ処理装置と、一端がデータ処理装置と接続され他端が例えば水深数千メートルの海底に設置されている基幹通信ケーブル(海底ケーブル)とを含んでいる場合、この既設の通信システムを構成する基幹通信ケーブルに対し新たな観測システムを海底で接続する場合を例に説明する。なお、観測システムとは、一例として、後述する敷設ケーブル(ケーブル50及び筐体60)、観測装置200を含むものである。このように、既存の通信システムに対し、新たに観測システムを接続することにより、地上にて観測システムから得られた観測データを使用することができる。なお、観測システムのみを使用することにより、海底に設置された観測システムから得られた観測データを地上で使用することもできる。
【0013】
敷設ケーブルを海底に敷設するためには、図1に示されるように、作業船100から水中操作機器110をワイヤ又はケーブルで海底付近まで降下させ、観測システムを設置する予定の場所の近傍に位置させる。次いで、水中操作機器110を曳航しながら水中操作機器110に取り付けられたボビン1から敷設ケーブルを繰り出して延伸させる。即ち、ケーブル50及び筐体60は着底する前はボビン1に巻回された状態であり、ボビン1が観測システムを設置する予定の場所に配置された後にケーブル50及び筐体60がボビン1から取り外されて海底付近に延伸される。このように、水中を降下中は敷設ケーブルがボビン1にしっかりと巻回されており、ボビン1から繰り出されたケーブル50及び筐体60を即座に着底させることにより、敷設作業の過程でケーブル50及び筐体60が潮流の影響を受けることを防止することができ、観測システムを設置する予定の場所に高精度で設置することができる。
【0014】
海底に敷設された敷設ケーブルを図2に示す。この図2は、一例として、図1中のAで示された箇所の拡大図である。敷設ケーブルを構成する各ケーブル50は、例えば数十メートルから数百メートルの長さの範囲内であり、各ケーブル50の端部には筐体60が接続されている。即ち、例えばケーブル50の端部又は中間部に、単数又は複数の筐体60が百メートルから二百メートル間隔で取り付けられている。このような構成により、全体として数百メートルから数キロに亘って海底と陸上の装置同士を敷設ケーブルにて接続することができる。なお、以下の実施の形態では、後述するように、ケーブル50の長さ、筐体60のサイズ及びボビン1の胴部10のサイズを考慮して、敷設ケーブルは8個の筐体60を有するものとして説明する。また、8個の筐体60はそれぞれ第1の筐体61、第2の筐体62、・・・第7の筐体67、第8の筐体68がこの順番で配置されているものとする。なお、筐体毎に区別する必要が無い場合には、筐体60として説明する。
【0015】
敷設ケーブルを構成する筐体60は、一例として、外径φ125mm×450mm程度のサイズを有するものとし、機器収納部71と接続部72を有して構成されている。機器収納部71は、センサー等の観測機器を収納する筒状に形成された部材である。接続部72は、機器収納部71の長手方向の両端部に設けられた円錐状の部材であり、機器収納部71とケーブル50を接続する。筐体60は、例えば金属材料あるいは樹脂材料により形成されており、金属材料の場合には、例えばステンレス等の耐食性の材料が好ましい。
【0016】
ケーブル50の一例を、図3に示す。ここでは、4本の光ファイバ心線51が金属管52内に挿通されている構成を説明する。光ファイバ心線51は、機器収納部71内の観測機器と接続されている。
金属管52の材料としては、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅、チタン、アルミニウム等を用いることができる。また、金属管52は、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ナイロン、ウレタン等で被覆され、金属管52の内部に、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂や炭化水素系ポリマーの合成油を充填しておくことができる。
金属管52の外周には、抗張力体53及び給電体54が撚り巻きされている。抗張力体53は、例えば鉄線や鋼線等を用いることができる。給電体54は、内部に例えば銅等の導体を備え、外周部がフッ素樹脂、ポリエチレン樹脂等で被覆されている。
抗張力体53及び給電体54の外周には、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ナイロン、ウレタン等により形成されている外被55が設けられている。
【0017】
ケーブル50及び筐体60が巻回されるボビン1を図4において説明する。
図4に示されるように、ボビン1は、胴部10と、鍔部11と、回転軸12と、各仕切り部材21、22、23、24とを有して構成されている。
胴部10は略円柱状に形成された部材であり、一例として胴径630mm、胴幅1100mm程度のサイズに形成されている。胴部10は、ボビン1において敷設ケーブルが巻回される箇所であり、胴部10及び筐体60のサイズを考慮すると、胴部10の周囲に筐体60が4個ずつ2列に分かれて配置される。
鍔部11は、円板状の部材であり、胴部10の両端部に取り付けられる。なお、鍔部11の鍔径は、一例として1000mm程度である。
胴部10及び鍔部11の軸方向中心部には回転軸12が設けられ、ボビン1は回転軸12を中心に回転可能である。
【0018】
胴部10の軸方向に沿って一方の鍔部11側から他方の鍔部11側に、胴部10に板状の仕切り部材21、22、23、24が周方向に沿って設けられている。即ち、各仕切り部材21、22、23、24は胴部10の外周全体を覆う環状に形成され、第1の仕切り部材21、第2の仕切り部材22、第3の仕切り部材23、第4の仕切り部材24が、胴部10の外周全体に亘りこの順に配置されている。各仕切り部材21、22、23、24は、それぞれ鍔部11の外径とほぼ同じ外径を有しており、胴部10から径方向外側に向けて突出している。なお、仕切り部材毎に区別する必要が無い場合には、単に仕切り部材20として説明する。
【0019】
図4に示されるように、各仕切り部材20同士は並列に、ケーブル50が収納される部分と筐体60が収納される部分を分離するように胴部10に複数配置されている。具体的には、鍔部11と第1の仕切り部材21との間は第1のケーブル収納部31とされ、第2の仕切り部材22と第3の仕切り部材23との間は第2のケーブル収納部32とされる。また、第1の仕切り部材21と第2の仕切り部材22との間は第1の筐体収納部41とされ、第3の仕切り部材23と第4の仕切り部材24との間は第2の筐体収納部42とされる。
このように、胴部10の外周部に、一方の鍔部11側から他方の鍔部11側にかけて複数の仕切り部材20が回転軸12の軸方向に沿って並列に配置されているため、回転軸12が回転してボビン1にケーブル50及び筐体60が巻き取られた際には、ケーブル50はケーブル収納部に、筐体60は筐体収納部に複数の仕切り部材20によりそれぞれ分離して収納される。従って、ケーブル50と筐体60が干渉して接触することを確実に防止することができる。
なお、以下の説明では、第1のケーブル収納部31と第2のケーブル収納部32を区別しない場合には単にケーブル収納部30とし、第1の筐体収納部41と第2の筐体収納部42を区別しない場合には単に筐体収納部40として説明を簡略化する。
【0020】
本実施の形態では、敷設ケーブルを構成する各ケーブル50はケーブル収納部30に収納され、各筐体60は筐体収納部40に収納されることとする。即ち、8個の筐体60のうち、一方側の4個の筐体60(第1の筐体61乃至第4の筐体64)は第1の筐体収納部41に収納され、残りの4個の筐体60(第5の筐体65乃至第8の筐体68)は第2の筐体収納部42に収納されることとする。
また、各筐体60は、ボビン1に巻回された状態では周方向に等間隔に配置されている。即ち、図5に示されるように、第1の筐体61、第2の筐体62、第3の筐体63、第4の筐体64はそれぞれ周方向に90度間隔で配置される。このように、各筐体60が所定の間隔を隔てて配置されるため、ケーブル50に損傷が生じることを防止することができる。
なお、図示は省略するが、第5の筐体65乃至第8の筐体68についても同様に、それぞれ周方向に90度間隔で配置される。
【0021】
図4、5に示されるように、各筐体収納部40には、ボビン1の胴部10に各筐体60を固定するための筐体固定部43が設けられている。本実施の形態では、各筐体固定部43は筐体60が着脱可能な嵌めこみ式とされており、筐体60を嵌めこむだけで筐体60を固定することができる。また、筐体60を繰り出す際には、筐体60に接続されたケーブル50を繰り出すことで筐体60も引き出されるため、構造が簡単で容易に筐体60を固定することができる。なお、筐体固定部43は、筐体60が着脱可能であれば、嵌めこみ式に限定されず他の方式であってもよい。
【0022】
ケーブル50は、胴部10の外周部に、何重にも亘って巻回されている。一方側の4個の筐体60に接続されている各ケーブル50は第1のケーブル収納部31に収納され、残りの4個の筐体60に接続されている各ケーブル50は第2のケーブル収納部32に収納される。一方、各ケーブル50のうち、接続部72に近い部分は、筐体収納部40内に位置している。即ち、ケーブル50の大部分はケーブル収納部30に収納され、一部がケーブル収納部30以外の部分に配置される。
なお、筐体60に接続されるケーブル50の長さに応じて、第1のケーブル収納部31及び第2のケーブル収納部32の幅(軸方向の長さ)は任意に変更可能である。
【0023】
ところで、上述の説明からも理解できるように、連続するケーブル50と筐体60はそれぞれ隣接する異なる収納部に収納されるため、2つの筐体60の間のケーブル50は仕切り部材20を横切る必要がある。即ち、筐体60の間にケーブル50が接続されており、且つケーブル50と筐体60とはそれぞれ隣接する異なる収納部に収納する必要があるため、ケーブル50は必然的に仕切り部材20を横切らざるを得なくなる。
一方、仕切り部材20は胴部10に何重にも巻回されるケーブル50を収容する必要があるため、ある程度の高さ(径方向に突出する高さ)が確保されている。そのため、ケーブル50がケーブル収納部30から筐体収納部40側に引き出される際、仕切り部材20の上部を横切ると、ケーブル50が急角度で屈曲されてしまいケーブル50に損傷が発生する可能性がある。あるいは、鍔部11よりも径方向において外側にケーブル50が位置する場合にも同様にケーブル50に損傷が発生する可能性がある。
そこで、各仕切り部材21、22、23、24には、それぞれケーブルが挿通可能な切り欠きが複数形成され、この切り欠きを各ケーブル50が通過することとした。
【0024】
図6に示されるように、第1の仕切り部材21には切り欠き21aが形成され、第2の仕切り部材22には切り欠き22aが形成され、第3の仕切り部材23には切り欠き23aが形成され、第4の仕切り部材24には切り欠き24aが形成されている。なお、図示及び説明の簡略化のため、第2のケーブル収納部32に収納されるケーブル50及び第2の筐体収納部42に収納される筐体60の図示は省略する。
図5に示されるように、4個の筐体60が第1の筐体収納部41に90度間隔で筐体固定部43により固定して収納されている。また、切り欠き21aは第1の仕切り部材21において90度間隔で、周方向において筐体60と重ならない位置に形成されている。具体的には、4個の筐体60及び4ヶ所の切り欠き21aは周方向に均等に位置し、第1の筐体61、切り欠き21a-1、第2の筐体62、切り欠き21a-2、第3の筐体63、切り欠き21a-3、第4の筐体64、切り欠き21a-4が、それぞれこの順番に配置されている。なお、第1の筐体収納部41に4個の筐体60が配置される場合には、例えば筐体60と切り欠き21aが45度ずつずれて位置していることが望ましい。
以下の説明において、各切り欠きを区別する必要が無い場合には、切り欠き21aとして説明する。
【0025】
筐体60と接続されているケーブル50は、それぞれの接続部72に最も近い切り欠き21aに挿通されている。具体的には、図5に示されるように、第1の筐体61の両側に位置する接続部72に接続されている各ケーブル50は、それぞれ切り欠き21a-1又は切り欠き21a-4を介して第1のケーブル収納部31へ挿通される。同様に、第2の筐体62に接続されているケーブル50はそれぞれ切り欠き21a-1又は切り欠き21a-2に挿通され、第3の筐体63に接続されているケーブル50はそれぞれ切り欠き21a-2又は切り欠き21a-3に挿通され、第4の筐体64に接続されているケーブル50はそれぞれ切り欠き21a-3又は切り欠き21a-4に挿通されている。
なお、図5では、第1の仕切り部材21に形成された4ヶ所の切り欠き21aについて説明したが、第3の仕切り部材23に形成された切り欠き23aについても同様に筐体60の個数・位置に応じて形成されていればよい。
【0026】
図6には、第1の筐体61及びその周辺部が示されている。
第1の筐体61の両側に接続されているケーブル50は、切り欠き21a-1あるいは切り欠き21a-4を介してケーブル収納部30に収納されるため、仕切り部材21の一番高い箇所(最外周)を乗り越える必要が無い。筐体60は、切り欠き21aと周方向において重ならないように、2箇所の切り欠き21aの間に位置するように配置されている。また、各切り欠き21aが形成されている箇所では、仕切り部材21の角部は丸くなるように加工されている。
このように、筐体60と切り欠き21aの位置関係によりケーブル50が仕切り部材20を横切る際はケーブル50の屈曲角度が比較的緩やかになるとともに、切り欠き21aを構成する箇所では仕切り部材21の端部が角張っていないため、ケーブル50に損傷を与えることを防止することができる。
なお、図6において第1の筐体61及びその周辺部を示したが、ケーブル50及び筐体60の収納については、第2の筐体62、・・・第7の筐体67、第8の筐体68についても同様である。
【0027】
以上説明した通り、上記実施の形態のケーブル敷設装置にあっては、ボビン1においてケーブル収納部30及び筐体収納部40が仕切り部材20により切り分けて設けられているため、ケーブル50はケーブル収納部30に整列巻きすることが可能となり、ケーブル50の正確な繰り出しが確保されると共に、ケーブル50の巻き乱れが生じてケーブル50に損傷を与えることを防止することができる。
また、各仕切り部材20において切り欠きが形成されているため、ケーブル収納部30からケーブルを整列巻きしたままで筐体収納部40へケーブル50を挿通させることができる。更に、仕切り部材20において複数の切り欠きが周方向に均等に形成されているため、筐体60と接続されたケーブル50が筐体収納部40からケーブル収納部30へ挿通される際にケーブル50の動線を均一にすることができ、ケーブル50にかかる負荷を均一にすることができる。
更に、各筐体収納部40には、ボビン1の胴部10に各筐体60を固定するための筐体固定部43が設けられているため、収納状態で重量物である筐体60が移動して筐体60に接続されたケーブル50が損傷することを防止することができる。
【0028】
以上、実施の形態について説明したが、上記実施の形態に限定されず多様な変形例が考えられる。
例えば、上記実施の形態では、ケーブル収納部30と筐体収納部40が交互に配置されている例を説明したが、ケーブル収納部30と筐体収納部40の間にケーブル保護部33が配置されることとしてもよい。例えば、図7に示されるように、第1の仕切り部材21と第2の仕切り部材22との間であって第1の仕切り部材21側に、切り欠き25aが形成された第5の仕切り部材25が配置され、この第5の仕切り部材25と第1の仕切り部材21との間がケーブル保護部33とされる。即ち、第5の仕切り部材25により、ケーブル収納部30と筐体収納部40の間にケーブル保護部33が形成され、第1のケーブル収納部31、ケーブル保護部33、第2のケーブル収納部32がこの順に配置されている。また、このケーブル保護部33には、筐体60は配置されず、1本あるいは数本程度のケーブル50が挿通されためのものである。このケーブル保護部33に配置されるケーブル50とは、例えば筐体60を筐体収納部40に収納するためにケーブル収納部30より引き出されたケーブル50のことをいう。このように、ケーブル収納部30と筐体収納部40との間にケーブル保護部33を設けてこのケーブル保護部33にケーブル50が挿通されると、ケーブル50が筐体60に接触することが回避されるため、ケーブル50に損傷を与える可能性が低くなり、ケーブル50をより適切に保護することができる。
【0029】
また、筐体60と接続されているケーブル50は、それぞれの接続部72に最も近い切り欠き21aに挿通されることとしたが、最も近い切り欠き21aに隣接する切り欠き21aに挿通されることとしてもよい。具体的には、上記実施の形態では、第1の筐体61の接続部72に接続されているケーブル50は切り欠き21a-1あるいは切り欠き21a-4を介して第1のケーブル収納部31へ挿通されることとしたが、接続部72に接続されているケーブル50は、切り欠き21a-2あるいは切り欠き21a-3を介して第1のケーブル収納部31へ挿通されることとしてもよい。即ち、切り欠き21aを1つ飛ばしてケーブル収納部30へ挿通されることとしてもよい。このように、切り欠き21aを1つ飛ばしでケーブル50を挿通する場合、ケーブル50の曲がり角度をより小さくすることができる一方、ケーブル収納部30からはみ出したケーブル50の長さが長くなり筐体60と干渉する可能性が生じる。そこで、図7に示すようなケーブル保護部33にケーブル50を配置すればケーブル50と筐体60との干渉が生じるおそれがなくなるため、ケーブル50をより適切に保護することができる。
また、筐体60の数に比してケーブル50が長すぎる場合には、ケーブル収納部30を連続して2箇所以上配置し、その隣に筐体収納部40が配置されてもよい。このように、ケーブル収納部30と筐体収納部40の個数は、筐体60に接続されているケーブル50の長さに応じて任意に変更することが可能である。換言すれば、上記実施の形態では、胴部10に取り付けられる仕切り部材20の個数は4個としているが、ケーブル50の長さあるいは筐体60のサイズ・個数に応じて自由に変更可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…ボビン
10…胴部
11…鍔部
12…回転軸
20…仕切り部材
21a、22a、23a、24a…切り欠き
30…ケーブル収納部
40…筐体収納部
50…ケーブル
60…筐体
100…作業船
110…水中操作機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7