IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人放射線医学総合研究所の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特許7264389医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム
<>
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図1
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図2
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図3
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図4
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図5
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図6
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図7
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図8
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図9
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図10
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図11
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図12
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図13
  • 特許-医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】医用装置、医用装置の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
A61N5/10 M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017244068
(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2019107392
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】柳川 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆介
(72)【発明者】
【氏名】福島 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】岡屋 慶子
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/125600(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0052623(US,A1)
【文献】特開2019-072393(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002917(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の透視画像を取得する取得部と、
前記被検体の断層画像に基づいて得られた再構成画像又は前記透視画像上における前記被検体のターゲット位置を特定する特定部と、
動画として再生される前記透視画像上に、前記ターゲット位置およびターゲットに対して定められた照射許可範囲を重畳した確認画像を表示する表示部と、
前記ターゲット位置が前記照射許可範囲内にある場合に、前記被検体に治療ビームを照射する治療装置へ照射を指示する照射許可信号を出力する制御部と、
前記確認画像が表示された後にユーザが行った操作に応じて、治療計画に基づいて設定された照射許可の設定範囲に変更を加えることにより前記照射許可範囲を調整する調整部と
を備える医用装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記照射許可範囲を定めた際に加えられたマージン部分を変更することで前記照射許可範囲を調整する、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記照射許可範囲の調整を行った後に、ユーザによる指示に応じて前記照射許可範囲を調整前の状態に戻す、
請求項2に記載の医用装置。
【請求項4】
調整後の前記照射許可範囲を記憶する記憶部を更に備え、
前記調整部は、前記記憶部に記憶されている調整後の前記照射許可範囲を用いることにより、前記照射許可範囲を調整する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項5】
前記被検体の異常を検出する検出部と、
前記検出部により前記被検体の異常が検出された場合に前記照射許可範囲の調整を促す通知を行う第1の通知部と、
を更に備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記照射許可信号による前記治療ビームの照射率が予め定められた閾値より小さい場合に、前記照射許可信号の出力を停止する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項7】
前記表示部は、調整前および調整後の前記照射許可範囲を表示する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項8】
前記表示部は、調整前および調整後で前記照射許可範囲の表示態様を変更する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項9】
前記表示部は、前記照射許可信号が出力されるタイミングにおいて、前記照射許可範囲の表示色を変更する、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項10】
前記表示部は、前記照射許可信号が出力されるタイミングにおいて、前記照射許可範囲の内側又は外側の領域における色彩又は輝度を変更する、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項11】
前記照射許可信号が出力されるタイミングを音又は振動で通知する第2の通知部を更に備える、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項12】
医用装置が行う制御方法であって、
被検体の透視画像を取得する第1のステップと、
前記被検体の断層画像に基づいて得られた再構成画像又は前記透視画像上における前記被検体のターゲット位置を特定する第2のステップと、
動画として再生される前記透視画像上に前記ターゲット位置およびターゲットに対して定められた照射許可範囲を重畳した確認画像を表示する第3のステップと、
前記ターゲット位置が前記照射許可範囲内にある場合に、前記被検体に治療ビームを照射する治療装置へ照射を指示する照射許可信号を出力する第4のステップと、
前記確認画像が表示された後にユーザが行った操作に応じて、治療計画に基づいて設定された照射許可の設定範囲に変更を加えることにより前記照射許可範囲を調整する第5のステップと、
を含む医用装置の制御方法。
【請求項13】
医用装置が備えるコンピュータを、
被検体の透視画像を取得する取得部と、
前記被検体の断層画像に基づいて得られた再構成画像又は前記透視画像上における前記被検体のターゲット位置を特定する特定部と、
動画として再生される前記透視画像上に前記ターゲット位置およびターゲットに対して定められた照射許可範囲を重畳した確認画像を表示する表示部と、
前記ターゲット位置が前記照射許可範囲内にある場合に、前記被検体に治療ビームを照射する治療装置へ照射を指示する照射許可信号を出力する制御部と、
前記確認画像が表示された後にユーザが行った操作に応じて、治療計画に基づいて設定された照射許可の設定範囲に変更を加えることにより前記照射許可範囲を調整する調整部と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用装置、医用装置の制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
重粒子線や放射線などの治療ビームを患者(被検体)に照射する治療装置が知られている。被検体の患部、すなわち治療ビームを照射する箇所は、呼吸や心拍、腸の動きなどによって移動する場合がある。これに対応する治療法として、ゲーテッド照射法や追尾照射法が知られている。
【0003】
呼吸によって移動する患部に治療ビームを照射する場合、被検体の呼吸位相と同期させて照射を行う必要がある。呼吸位相同期の手法として、外部呼吸同期手法と内部呼吸同期手法とがある。外部呼吸同期手法は、被検体の身体に取り付けた各種センサの出力値を利用して呼吸位相を把握する手法である。内部呼吸同期手法は、被検体の透視画像に基づいて呼吸位相を把握する手法である。呼吸位相同期を用いた処理は、治療装置を制御する医用装置が行う。治療装置は、医用装置の制御に応じて、被検体の呼吸位相に同期した治療ビームを患部へ照射する。
【0004】
治療当日の患者の状態や治療装置の状態により治療に時間がかかり被検体への負担が大きくなる場合があり、更なる負担の軽減が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-144000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、内部呼吸同期に基づいた治療における被検体の身体的な負担を軽減することができる医用装置、医用装置の制御方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の医用装置は、取得部と、特定部と、表示部と、制御部と、調整部とを持つ。取得部は、被検体の透視画像を取得する。特定部は、被検体の断層画像に基づいて得られた再構成画像又は透視画像上における被検体のターゲット位置を特定する。表示部は、透視画像又は再構成画像上にターゲット位置およびターゲットに対して定められた照射許可範囲を重畳した確認画像を表示する。制御部は、ターゲット位置が照射許可範囲内にある場合に、被検体に治療ビームを照射する治療装置へ照射を指示する照射許可信号を出力する。調整部は、確認画像に基づいて照射許可範囲を調整する。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、内部呼吸同期に基づいた治療における被検体の身体的な負担を軽減することができる医用装置、医用装置の制御方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】医用装置を含む治療システムの構成図。
図2】医用装置の入力・表示部により表示されるマーカレス追跡モードのインターフェース画像の一例を示す図。
図3】医用装置により実行される処理の流れの一例を示す第1のフローチャート。
図4】医用装置により実行される処理の流れの一例を示す第2のフローチャート。
図5】第1ボタン、第2ボタンおよび第3ボタンの表示態様の変化を示す図。
図6】マーカレス追跡モードにおける第4ボタン、第5ボタン、および第6ボタンの表示例を示す図。
図7】医用装置により実行される処理の流れの一例を示す第3のフローチャート。
図8】医用装置の入力・表示部により表示されるマーカ追跡モードのインターフェース画像IMの一例を示す図。
図9】医用装置により実行される処理の流れの一例を示す第4のフローチャート。
図10】医用装置により実行される処理の流れの一例を示す第5のフローチャート。
図11】マーカ追跡モードにおける第4ボタン、第5ボタンおよび第6ボタンの表示例を示す図。
図12】医用装置により実行される処理の流れの一例を示す第6のフローチャート。
図13】2次元位置と3次元位置とを用いた判定結果を対比する画像例を示す図。
図14】3次元位置を示す3つの座標の変位を示すグラフの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の医用装置、医用装置の制御方法およびプログラムを、図面を参照して説明する。なお、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0011】
<構成>
図1は、医用装置100を含む治療システム1の構成図である。治療システム1は、治療装置10と、医用装置100とを備える。治療装置10は、医用装置100による指示に応じて、治療を受ける被検体に対して治療ビームを照射する。
【0012】
治療装置10は、寝台11と、放射線源12-1、12-2と、検出器13-1、13-2と、照射門14と、センサ15と、治療装置側制御部20とを備える。以下、符号におけるハイフンおよびこれに続く数字は、放射線源および検出器のいずれの組による透視用の放射線、あるいは透視画像であるかを示すものとする。また、適宜、符号におけるハイフンおよびこれに続く数字を省略して説明を行う。
【0013】
寝台11には、治療を受ける被検体Pが固定される。放射線源12-1は、被検体Pに対して放射線r-1を照射する。放射線源12-2は、放射線源12-1とは異なる角度から、被検体Pに対して放射線r-2を照射する。放射線r-1およびr-2は、電磁波の一例であり、例えばX線である。以下、これを前提とする。
【0014】
放射線r-1は検出器13-1によって検出され、放射線r-2は検出器13-2によって検出される。検出器13-1および13-2は、例えばフラット・パネル・ディテクタ(FPD;Flat Panel Detector)、イメージインテンシファイア、カラーイメージインテンシファイアなどである。検出器13-1は、放射線r-1のエネルギーを検出してデジタル変換し、デジタル変換により得られる透視画像TI-1を医用装置100へ出力する。検出器13-2は、放射線r-2のエネルギーを検出してデジタル変換し、デジタル変換により得られる透視画像TI-2を医用装置100へ出力する。図1に示す治療装置10は、2組の放射線源12および検出器13を備えるが、治療装置10は、3組以上の放射線源12および検出器13を備えてもよい。
【0015】
照射門14は、治療段階において、被検体Pに対して治療ビームBを照射する。治療ビームBには、例えば、重粒子線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線などが含まれる。図1に示す治療装置10は1つの照射門14を備えるが、治療装置10は複数の照射門14を備えてもよい。
【0016】
センサ15は、被検体Pの身体に取り付けられ、被検体Pの呼吸による体表の動きを検出する。センサ15は、検出結果を医用装置100へ出力する。センサ15により検出される動きに基づいて、医用装置100は、被検体Pの外部呼吸位相を得る。センサ15は、例えば、圧力センサである。
【0017】
治療装置側制御部20は、医用装置100からの制御信号に応じて、放射線源12-1、12-2、検出器13-1、13-2および照射門14を動作させる。
【0018】
医用装置100は、統括制御部110と、入力・表示部120と、入力操作取得部122と、表示制御部124と、取得部130と、参照画像作成部132と、マーカ検知部134と、画像処理部136と、ターゲット位置特定部140と、出力制御部150と、ゲーティングウインドウ(Gating Window)調整部152と、記憶部160とを備える。統括制御部110、入力操作取得部122、表示制御部124、取得部130、参照画像作成部132、マーカ検知部134、画像処理部136、ターゲット位置特定部140、出力制御部150およびゲーティングウインドウ調整部152のうち一部又は全部は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアプロセッサが記憶部160に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現されてもよい。また、これらの構成要素のうち一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration circuit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0019】
医用装置100の各部の機能について説明する。医用装置100の説明において、透視画像TIに対する処理として説明されたものは、特に注記がない限り、透視画像TI-1、TI-2の双方に対して並行又は順に実行されるものとする。統括制御部110は、医用装置100の機能を統括的に制御する。
【0020】
入力・表示部120は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)表示装置、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイなどの表示装置と、操作者による入力操作を受け付ける入力装置とを含む。入力・表示部120は、表示装置と入力装置が一体に形成されたタッチパネルであってもよいし、マウスやキーボードなどの入力デバイスを備えてもよい。
【0021】
入力操作取得部122は、入力・表示部120に対してなされた操作の内容を取得し、取得した操作の内容を統括制御部110に出力する。表示制御部124は、統括制御部110からの指示に応じて、入力・表示部120に画像を表示させる。統括制御部110からの指示は、参照画像作成部132、マーカ検知部134、画像処理部136、ターゲット位置特定部140、出力制御部150又はゲーティングウインドウ調整部152による処理結果を表示する指示と、入力操作取得部122により取得された操作の内容を表示する指示とを含む。表示制御部124は、治療の準備段階と、治療ビームBの照射段階とのそれぞれの開始指示を受け付けるためのインターフェース画像を入力・表示部120に表示させる。なお、画像を表示させることには、演算結果に基づいて画像の要素を生成することと、予め作成された画像の要素を表示画面に割り当てることとが含まれる。
【0022】
取得部130は、治療装置10から透視画像TIを取得する。また、取得部130は、センサ15の検出結果を取得する。取得部130は、医用検査装置(不図示)から被検体Pの断層画像に基づいた3次元ボリュームデータを取得する。装置画像TIがターゲットの位置特定に参照画像として使用される場合、参照画像作成部132は、取得部130により取得された透視画像TIに基づいて、ターゲット位置特定に使用される参照画像を生成する。マーカ検知部134は、透視画像TIにおいて、マーカ追跡に使用されるマーカの位置を検知する。これらについては後に詳述する。
【0023】
画像処理部136は、デフォーマブルレジストレーション、DRR(Digitally Reconstructed Radiograph)画像生成などの画像処理を行う。デフォーマブルレジストレーションとは、時系列の3次元ボリュームデータに対して、ある時点の3次元ボリュームデータにおいて指定された位置情報を、他の時点の3次元ボリュームデータに展開する処理である。DRR画像(再構成画像)とは、3次元ボリュームデータに対して、仮想的な放射線源から放射線を当てることで生成される仮想的な透視画像である。
【0024】
ターゲット位置特定部140は、透視画像TIにおけるターゲット位置を特定する。ターゲットは、被検体Pの患部、すなわち治療ビームBを照射する位置であってもよいし、マーカあるいは被検体Pの特徴箇所であってもよい。特徴箇所とは、横隔膜や心臓、骨など、透視画像TIにおいて周囲の箇所との差異が比較的鮮明に現れる位置又は領域であり、透視画像TIをコンピュータが解析することで位置を特定しやすい箇所である。ターゲット位置は、一点であってもよいし、2次元又は3次元の広がりを持つ領域であってもよい。
【0025】
出力制御部150は、ターゲット位置特定部140により特定されたターゲット位置に基づいて、治療装置10に照射許可信号を出力する。例えば、ゲーテッド照射法では、出力制御部150は、ターゲット位置がゲーティングウインドウ内に位置する場合に、治療装置10にゲートオン信号を出力する。ゲーティングウインドウは、後述する計画段階において定められる領域であり、2次元平面又は3次元空間において設定される領域である。ゲーティングウインドウは、照射許可範囲の一例である。ゲートオン信号とは、被検体Pに治療ビームBを照射することを指示する信号であり、照射許可信号の一例である。以下、これらを前提として説明する。治療装置10は、ゲートオン信号が医用装置100から出力されている場合、治療ビームBを照射し、ゲートオン信号が医用装置100から出力されていない場合、治療ビームBを照射しない。照射許可範囲(ゲーティングウインドウ)は、固定的に設定されるものに限られず、患部の移動に追従して移動する領域として定められてもよい。
【0026】
ゲーティングウインドウ調整部152は、計画段階において設定されたゲーティングウインドウの位置又は大きさを調整する。ユーザは、被検体Pの透視画像TI上の患部、特徴箇所又はマーカの位置と動きとに基づいて、ゲーティングウインドウの調整の要否を決定する。ユーザが医用装置100を操作することにより、ゲーティングウインドウの調整が行われる。
【0027】
記憶部160は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどにより実現される。記憶部160には、前述したプログラムの他、時系列の3次元CT画像(以下、4DCT画像)、透視画像TI、センサ15の検出結果などが格納される。
【0028】
治療システム1における治療の流れについて説明する。治療システム1は、例えば、内部呼吸同期であるマーカレス追跡およびマーカ追跡と、外部呼吸同期との3つのモードを切り替えて治療を行うことができる。マーカ追跡では、医用装置100が、被検体Pの体内に埋め込まれたマーカの位置を追跡し、患部へ治療ビームBを照射するタイミングを決定する。マーカレス追跡では、医用装置100が、被検体Pの患部又は特徴箇所の位置を追跡し、患部へ治療ビームBを照射するタイミングを決定する。外部呼吸同期では、医用装置100が、被検体Pに取り付けられたセンサ15の検出結果に基づいて、患部へ治療ビームBを照射するタイミングを決定する。以下、マーカレス追跡を用いる処理をマーカレス追跡モード(第1のモード)、マーカ追跡を用いる処理をマーカ追跡モード(第2のモード)、外部呼吸同期を用いる処理を外部呼吸同期モード(第3のモード)と称する。
【0029】
マーカレス追跡にはテンプレートマッチング法や機械学習を用いた手法などがある。以下では、マーカレス追跡にテンプレートマッチング法を採用し、照射方法にゲーテッド照射法を採用した場合について説明する。医用装置100は、テンプレートマッチング法と、機械学習を用いた手法とを切り替え可能であってもよい。
【0030】
<治療の流れ(マーカレス追跡モード)>
以下、マーカレス追跡モード(第1のモード)について説明する。
【0031】
[計画段階]
マーカレス追跡モードの計画段階において、被検体PのCT撮影が行われる。CT撮影では、様々な呼吸位相毎に、様々な方向から被検体Pが撮影される。CT撮影の結果に基づいて4DCT画像が生成される。4DCT画像は、3次元のCT画像(前述した3次元ボリュームデータの一例)を時系列にn個並べたものである。このnと時系列のCT画像の時間間隔とを乗算して求められる期間は、例えば、呼吸位相が1周期分変化する期間をカバーするように設定される。4DCT画像は、記憶部160に格納される。
【0032】
医師や放射線技師など(以下、ユーザという。)が、4DCT画像に含まれるn個のCT画像のうち、少なくとも1つのCT画像において対象の輪郭を定め、医用装置100へ入力する。輪郭が定められる対象は、患部である腫瘍や、患部近傍の特徴箇所、治療ビームBを照射したくない臓器などである。画像処理部136が、対象の輪郭が定められていないCT画像に対してデフォーマブルレジストレーションを行うことにより、各CT画像における対象の輪郭を定める。次に、ユーザによって治療計画が決定される。治療計画とは、設定された輪郭情報に基づいて、患部がどの位置にあるときに、どこに、どの方向から、どれだけの治療ビームBを照射するかを規定するものであり、ゲーテッド照射法や追尾照射法などの治療法に応じて決定される。なお、計画段階の処理の一部又は全部は、外部装置によって実行されてもよい。例えば、4DCT画像を生成する処理は、CT装置によって実行されてもよい。治療計画を表す治療計画情報は、記憶部160に記憶される。
【0033】
ここで、腫瘍の輪郭で区画される領域や、その領域の重心、あるいは被検体Pの特徴箇所の位置などがターゲット位置となる。更に、治療計画において、ターゲット位置がどの位置にあれば治療ビームBを照射してよいのかが決定される。デフォーマブルレジストレーションによって輪郭が設定された際に、ターゲット位置に対してマージンが自動的に、又は手動で設定され、マージンを反映させてゲーティングウインドウが設定される。このマージンは、装置や位置決めの誤差などを吸収するためのものである。
【0034】
腫瘍又は特徴箇所の輪郭で区画される領域、その領域の重心、又は重心を含む近傍の領域などがROI(Region Of Interest:関心領域)となる。デフォーマブルレジストレーションによってROIが設定された際には、マージンがROIに設定されてもよい。このマージンは、治療装置10において生じる誤差や位置決めの誤差などの影響を抑えるために加えられ、ROIが広くなるように領域や重心の外側に付加される。設定されたROIを示す情報は、記憶部160に記憶される。腫瘍の輪郭と特徴箇所の輪郭とがROIとして定められる場合、画像処理部136は、腫瘍と特徴箇所との相対的な位置の時間変化を4DCT画像から抽出し、相対的な位置の時系列とROIを示す情報とを記憶部160に記憶させてもよい。画像処理部136は、ROIに対してマージンを付加して得られる3次元の領域をゲーティングウインドウとして設定する。ゲーティングウインドウを設定する際に、ROIに対して設定されるマージンは、予め定められたサイズであってもよいし、ユーザが入力するサイズであってもよい。
【0035】
ゲーティングウインドウは、CT画像における患部又は特徴箇所の3次元形状に基づいた3次元空間として定められる。3次元空間として定められたゲーティングウインドウは、3次元ゲーティングウインドウ(3次元照射許可範囲)ともいう。例えば、ゲーティングウインドウは、患部又は特徴箇所の3次元形状に所定のマージンを加えた3次元空間として定められる。治療ビームBを照射するときの患部の位置および形状は、4DCT画像のうちいずれかのCT画像における患部の位置および形状である。例えば、呼気位相のCT画像における患部の位置および形状、又は、呼気位相のCT画像における特徴箇所の位置および形状に基づいて、ゲーティングウインドウが定められる。呼気位相とは、被検体Pが息を吐き切った状態を撮影したCT画像の位相をいう。治療計画において、ゲーティングウインドウは患部に基づいたゲーティングウインドウと、特徴箇所に基づいたゲーティングウインドウなど被検体の状態にあわせて適切なものを選定することができる。
【0036】
ゲーティングウインドウは、呼気位相の最呼気部分1箇所だけではなく、複数個所に設置しても良い。例えば、最呼気部分では、治療ビームBを照射する必要がない重要臓器(Organ At Risk:OAR)などに患部が近接する場合、重要臓器への治療ビームBの照射を避ける必要があるときにゲーティングウインドウを複数に分けて設置することが有効である。
また、患部に基づいたゲーティングウインドウと特徴箇所に基づくゲーティングウインドウとの両方が設定されている場合には、2つのゲーティングウインドウを複合的に利用してもよい。例えば、患部と横隔膜との位置の両方がゲーティングウインドウに入った場合に治療ビームBの照射を行うなどの方法が選択出来ても良い。
【0037】
[位置決め段階]
位置決め段階においては、寝台位置の調整が行われる。被検体Pは寝台11に寝かされ、シェル等で寝台11に固定される。作業者が、被検体Pの位置と姿勢とを目視で確認し、照射門14から照射される治療ビームBが患部に当たりそうな位置へ被検体Pを寝台11とともに動かす。作業者により、寝台11の位置が粗く調整される。粗い調整の後に、寝台位置を細かく調整するために利用する画像が撮影される。例えば、3D-2Dレジストレーションが行われる場合、透視画像TIが撮影される。透視画像TIは、例えば被検体Pが息を吐き切ったタイミングで撮影される。寝台11の位置は粗く調整済みであるため、透視画像TIには、被検体Pの患部付近の像が含まれる。得られた透視画像TIは、記憶部160に記憶される。
【0038】
3D-2Dレジストレーションが行われる場合、位置決め段階において、放射線源12-1、12-2および検出器13-1、13-2それぞれの位置と、被検体Pの治療計画とを使用して、3次元ボリュームデータからDRR画像が生成される。DDR画像と透視画像TIとに基づいて寝台11の位置が細かく調整される。透視画像TIの撮影、寝台移動量算出、寝台11の移動を繰り返すことで、寝台11の位置が細かく調整される。
【0039】
[準備段階(その1)]
位置決め段階の後に準備段階が行われる。準備段階では、4DCT画像から各位相のDRR画像が作成される。DRR画像の作成は、4DCT画像が撮影された後であればいつ実施されてもよい。作成されるDRR画像には、治療計画において設定されるゲーティングウインドウを射影した位置又は領域がゲーティングウインドウとして設定される。治療装置10は、参照画像を作成するための透視画像TIを撮影する。治療装置10は、例えば、被検体Pの2呼吸分の期間に亘り、複数の透視画像TIを撮影する。被検体が深呼吸を行う間、被検体Pの外部呼吸波形が透視画像TIと同期して取得される。取得された外部呼吸波形は、表示制御部124により入力・表示部120に表示される。撮影された透視画像TIには、外部呼吸波形から求められる被検体Pの呼吸位相に基づく追跡値が対応付けられる。
【0040】
準備段階(その1)において、DRR画像とDRR画像上のターゲット位置の情報から、透視画像TIとターゲット位置との関係が医用装置100により学習される。更に、ユーザによるターゲット位置の修正が医用装置100により受け付けられる。そして、医用装置100は、ターゲット位置を学習した際に用いた透視画像TIの中から、追跡値に基づいて、一つ以上のテンプレート(参照画像)が選択される。テンプレートは、透視画像TIの特徴的な一部を切り出したものであってよい。ターゲット位置の学習は、計画段階から治療段階までの間の、いずれのタイミングで実施されてもよい。例えば、被検体Pの2呼吸分の透視画像TIうち、前半の1呼吸分の透視画像TIからテンプレートを作成した場合、そのテンプレートを使用して、後半の1呼吸分の透視画像TIでターゲットの追跡ができるか確認してもよい。その際、表示制御部124はDRR画像上に設定されたゲーティングウインドウを透視画像TI上に表示してもよい。
【0041】
患部に加えて特徴箇所にもゲーティングウインドウが定められている場合、ターゲット位置特定部140は、透視画像TIにおける特徴箇所の位置を特定してもよい。ターゲット位置特定部140は、患部又は特徴箇所のいずれをターゲット位置PTに選択するかを示すユーザの操作を取得し、ユーザの操作に応じてターゲット位置PTを決定してもよい。
【0042】
また、準備段階(その1)において、ゲーティングウインドウの調整が行われる。ターゲット位置特定部140は、参照画像作成部132により生成されたテンプレートを用いて、透視画像TIに対してターゲット位置PTを割り付ける。統括制御部110は、透視画像TI上にターゲット位置PTとゲーティングウインドウとを重畳した表示を入力・表示部120に行わせる。また、統括制御部110は、DRR画像上にターゲット位置とゲーティングウインドウとを重畳した表示を入力・表示部120に行わせる。透視画像TI上に重畳されるゲーティングウインドウの位置は、ターゲット位置特定部140により特定されたターゲット位置PT、および、治療計画時におけるターゲット位置とゲーティングウインドウとの相対位置に基づいて算出される。
【0043】
ユーザは、入力・表示部120に表示される確認画像に基づいて、ターゲット位置PTとゲーティングウインドウとの位置および相対位置を確認する。確認画像は、ターゲット位置PTとゲーティングウインドウとが重畳された透視画像TIと、ターゲット位置とゲーティングウインドウとが重畳されたDRR画像とを含む画像である。なお、確認画像は、透視画像TIとDRR画像とのいずれか一方を含む画像であってもよい。ユーザは、確認画像に基づいて、ゲーティングウインドウの調整の要否を決定する。特徴箇所がターゲット位置に選択されている場合、ユーザは、ターゲット位置PTと患部との相対的な位置、呼吸に伴うターゲット位置PTおよび患部の移動量に基づいて、ゲーティングウインドウの調整の要否を決定する。ユーザがゲーティングウインドウの調整を必要と判断した場合、入力操作取得部122は、入力・表示部120からゲーティングウインドウを調整する操作を取得する。ゲーティングウインドウ調整部152は、取得された操作に応じて、ゲーティングウインドウを調整する。
【0044】
入力操作取得部122は、入力・表示部120からゲーティングウインドウの位置又は形状を変更する操作を取得する。ゲーティングウインドウ調整部152は、取得された操作に応じて、透視画像TIおよびDRR画像上におけるゲーティングウインドウの形状を変更する。ゲーティングウインドウ調整部152は、変更後のゲーティングウインドウの形状から、ゲーティングウインドウの3次元形状を算出する。ゲーティングウインドウ調整部152は、算出したゲーティングウインドウの3次元形状を調整後のゲーティングウインドウの3次元形状として記憶部160に記憶させる。医用装置100は、調整後のゲーティングウインドウを以降の処理に用いる。ユーザによるターゲット位置の確認とゲーティングウインドウの調整とにより、ゲーティングウインドウの精度を向上させることができる。ゲーティングウインドウの調整においては、4DCT画像の各スライスに対応するCT画像から生成されるDRR画像上にゲーティングウインドウが重畳され、時系列のDRR画像に重畳表示されてもよい。ユーザは、時系列のDRR画像上のゲーティングウインドウとターゲット位置、透視画像上のゲーティングウインドウとターゲット位置との関係を比較することにより、呼吸に伴うターゲット位置の変化とゲーティングウインドウの関連を確認でき、ゲーティングウインドウの調整の精度を改善できる。
【0045】
[準備段階(その2)]
そして、再度、透視画像TIの撮影が開始される。ターゲット位置特定部140は、時系列で入力される透視画像TIに対してテンプレートとのマッチングを行い、透視画像TIに対してターゲット位置PTを割り付ける。表示制御部124は、透視画像TIを動画として入力・表示部120に表示させながら、ターゲット位置PTが割り付けられた透視画像TIのフレームにターゲット位置PTを重畳表示させる。この結果、医師等によりターゲット位置の追跡結果が確認される。
【0046】
ターゲット位置特定部140は、ターゲット位置PTを2次元位置と3次元位置として特定する。2次元位置は、透視画像TI上の座標を用いて表される。3次元位置は、予め定められた3次元座標系における座標を用いて表される。3次元位置は、例えば、治療ビームBのアイソセンターを原点とする3次元座標系を用いて表される。ターゲット位置特定部140は、透視画像TI-1およびTI-2上の座標と放射線源12および検出器13の位置とに基づいて、ターゲット位置PTの3次元位置の座標を算出する。
【0047】
表示制御部124は、透視画像TI上に特定したターゲット位置PTを重畳した画像を入力・表示部120に表示させる。ターゲット位置PTは、患部の重心位置を示す点や、患部の輪郭を示す線などにより表示される。医用装置100が時系列で入力される透視画像TI上にターゲット位置PTを重畳することにより、ユーザは、被検体Pの呼吸に伴うターゲットの移動を確認し、位置を追跡できる。また、表示制御部124は、DRR画像上に射影されたゲーティングウインドウも透視画像TI上に重畳して入力・表示部120に表示させる。ゲーティングウインドウが示す3次元空間を透視画像TIに射影した領域又は領域の境界線が、透視画像TI上に重畳されるゲーティングウインドウとして表示される。
【0048】
出力制御部150は、ターゲット位置特定部140により特定されるターゲット位置PTを取得する。出力制御部150は、ターゲット位置PTがゲーティングウインドウ内にあるか否かを判定する。後述する治療段階において、出力制御部150は、ターゲット位置PTがゲーティングウインドウ内にある場合にゲートオン信号を治療装置10へ出力する。ターゲット位置PTがゲーティングウインドウ内にあるか否かの判定には、ターゲット位置の2次元位置を用いる判定と、ターゲット位置の3次元位置を用いる判定とがある。2次元位置と3次元位置とのいずれを用いるかは、ユーザが選択する。
【0049】
ターゲット位置の2次元位置を用いてターゲット位置PTがゲーティングウインドウ内にあるか否かを判定する場合(2次元モード)、出力制御部150は、ゲーティングウインドウが示す3次元空間を透視画像TI-1およびTI-2に射影した領域を算出する。算出された領域が2次元ゲーティングウインドウ(2次元照射許可範囲)である。出力制御部150は、例えば、透視画像TI-1に射影した領域に透視画像TI-1上の2次元位置が包含され、かつ、透視画像TI-2に射影した領域に透視画像TI-2上の2次元位置が包含される場合に、ターゲット位置がゲーティング内にあると判定する。すなわち、2次元ゲーティングウインドウ外にターゲット位置で示される箇所が存在しない場合に、出力制御部150は、ターゲット位置がゲーティング内にあると判定する。出力制御部150は、2次元ゲーティングウインドウ外にターゲット位置で示される箇所が存在する場合に、ターゲット位置がゲーティング内にないと判定する。
【0050】
ターゲット位置PTの3次元位置を用いてターゲット位置PTがゲーティングウインドウ内にあるか否かを判定する場合(3次元モード)、出力制御部150は、3次元ゲーティングウインドウにより示される3次元空間に3次元位置が包含されるか否かを判定する。出力制御部150は、ゲーティングウインドウにより示される3次元空間に3次元位置が包含される場合、すなわちゲーティングウインドウが示す3次元空間外にターゲット位置PTで示される箇所が存在しない場合に、ターゲット位置PTがゲーティング内にあると判定する。出力制御部150は、算出した領域外にターゲット位置PTで示される箇所が存在する場合に、ターゲット位置PTがゲーティング内にないと判定する。
【0051】
出力制御部150は、判定結果、すなわちターゲット位置PTがゲーティングウインドウ内にあるか否かを示す情報を表示制御部124へ出力する。表示制御部124は、判定結果に応じて、入力・表示部120に表示させているゲーティングウインドウの表示色を変更させる。具体的には、表示制御部124は、両方の画像においてターゲット位置PTがゲーティング内にある場合、ゲーティングウインドウの表示色を変更させる。表示制御部124は、ゲーティングウインドウの表示色を変化させることに加えて、ターゲット位置PTがゲーティング内にあることを示す情報を入力・表示部120に表示させてもよい。表示制御部124が、出力制御部150による判定結果に応じて、透視画像TIに重畳されるゲーティングウインドウの表示色を変更させることにより、ユーザがゲートオン信号の出力タイミングを確認できる。
【0052】
[治療段階]
治療段階では、出力制御部150が、透視画像TI-1、TI-2の双方に関して、ターゲット位置がゲーティングウインドウ内に収まっている場合にゲートオン信号を治療装置10に出力する。これによって、治療ビームBが被検体Pの患部に照射され、治療が行われる。なお、ターゲット位置が患部の位置である場合には、追跡したターゲット位置がゲーティングウインドウ内に収まっている場合に治療ビームBが照射され、ターゲット位置が被検体Pの特徴箇所の位置である場合には、予め学習されたターゲット位置と患部の位置との関係に基づいて、ターゲット位置から導出された患部の位置がゲーティングウインドウ内に収まっている場合に治療ビームBが照射される。なお、これらの複合手法によって患部の位置に治療ビームBが照射されてもよい。すなわち、ターゲット位置として患部の位置と、特徴箇所の位置とをそれぞれ設定しておき、患部が第1ゲーティングウインドウに収まり、特徴箇所が第2ゲーティングウインドウに収まる場合に治療ビームBを照射するようにしてもよい。
【0053】
[表示画面]
以下、上記説明した治療の流れをサポートするための、医用装置100の処理について説明する。図2は、医用装置100の入力・表示部120により表示されるマーカレス追跡モードのインターフェース画像IMの一例を示す図である。インターフェース画像IMは、領域A1-1、A1-2、A2、A3、A4、A5、A6およびA7を含む。
【0054】
領域A1-1では、透視画像TI-1が表示され、更にゲーティングウインドウGWやターゲット位置PTが透視画像TI-1に重畳表示される。領域A1-2では、透視画像TI-2が表示され、更にゲーティングウインドウGWやターゲット位置PTが透視画像TI-2に重畳表示される。領域A2には、各種グラフなどが表示される。
【0055】
領域A3には、モードなどの選択を受け付けるセレクトウインドウSW、透視画像TIの撮影開始又は撮影停止を指示するための第1ボタンB1、透視画像TIの撮影の一時停止を指示するための第2ボタンB2、治療セッションの終了を指示するための第3ボタンB3、時系列のDRR画像又は透視画像TIを遡って確認するためのスライドバーやコマ送りスイッチなどが設定されたコントロールエリアCA、準備段階が完了したことを確認するためのチェックボックスCBなどが表示される。インターフェース画像IMの各部に対する操作は、タッチ操作、マウスによるクリック、あるいはキーボード操作などにより行われる。例えば、第1ボタンB1は、タッチ操作又はマウスによるクリックによって操作される。
【0056】
領域A4には、モードに応じた治療段階が表示され、各段階へ処理を進めることを指示するための第4ボタンB4、第5ボタンB5および第6ボタンB6が表示される。領域A5には、センサ15の検出結果に基づく外部呼吸波形のグラフなどが表示される。領域A6には、被検体Pの治療計画情報などを示す画像やテキスト情報が表示される。領域A7では、被検体PのCT画像が表示され、X線の照射方向、照射野、治療ビームBの照射方向、ターゲットの輪郭、およびマーカROIなどが重畳表示される。
【0057】
<フローチャート(マーカレス追跡モード)>
以下、インターフェース画像IMの各種機能について、フローチャートを参照しながら説明する。図3および図4は、医用装置100により実行される処理の流れの一例を示す第1および第2のフローチャートである。まず、統括制御部110が、入力操作取得部122から入力される情報を参照し、セレクトウインドウSWにおいてマーカレス追跡が選択されたか否かを判定する(ステップS100)。マーカレス追跡の選択は、ユーザの操作によって行われてもよいし、治療装置10からの信号に応じて行われてもよい。医用装置100が治療計画の内容に基づいて選択を行ってもよい。マーカレス追跡以外のモードが選択された場合の処理については、後に説明する。なお、以降の説明において、医用装置100に対する操作がなされたことを検知する際には、統括制御部110が入力操作取得部122から入力される情報を参照して判断するものとし、都度の説明を省略する。
【0058】
セレクトウインドウSWにおいてマーカレス追跡が選択された場合、統括制御部110は、第1ボタンB1に対する操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS102)。図5は、第1ボタンB1、第2ボタンB2および第3ボタンB3の表示態様の変化を示す図である。図5に示すように、第1ボタンB1は、初期状態で、撮影が「OFF」すなわち撮影していない状態を示すと共に、「撮影開始」の指示を受け付ける態様となっている。第1ボタンB1が操作されると、撮影が「ON」すなわち撮影されている状態を示すと共に、「撮影停止」の指示を受け付ける態様に変化する。第1ボタンB1は、これらの二つの態様の間で状態遷移する。
【0059】
なお、第2ボタンB2は、初期状態で、操作されると撮影の「一時停止」の指示を受け付ける態様となっている。第2ボタンB2は、操作されると、「撮影再開」の指示を受け付ける態様に変化する。また、第3ボタンB3は、初期状態で、インターフェース画像IMを「閉じる」指示を受け付ける態様となっており、操作されるとインターフェース画像IMの表示が停止され、一連の処理が終了する。
【0060】
第1ボタンB1に対する操作によって撮影開始が選択されると、統括制御部110は、出力制御部150を制御し、位置決め段階と準備段階とで用いる透視画像TIの撮影を治療装置10に指示させる(ステップS104)。出力制御部150は、例えば、k回の呼吸分の透視画像TIを撮影するように治療装置10に指示する。なお、出力制御部150は、第1ボタンB1が再度操作されたときに撮影を終了する指示を治療装置10に出力してもよい。このように、出力制御部150は、入力操作取得部122により取得される入力操作の内容に応じて、治療装置10の撮影部(放射線源12-1、12-2、検出器13-1、13-2)への動作指示を出力する。これによって、医用装置100によって治療装置10を含めた治療システム1の動作を一元的に管理することができ、利便性が向上する。
【0061】
統括制御部110は、第4ボタンB4に対する操作によってレジストレーションが指示されたか否かを判定する(ステップS106)。図6は、マーカレス追跡モードにおける第4ボタンB4、第5ボタンB5、および第6ボタンB6の表示例を示す図である。マーカレス追跡モードにおいて、第4ボタンB4は、レジストレーション(透視画像TIにおけるターゲット位置PTの学習)の指示を受け付け、第5ボタンB5は、参照画像の作成指示を受け付け、第6ボタンB6はゲートオン信号の確認指示を受け付ける。また、第6ボタンB6において、ゲートオン信号の出力判定をターゲット位置の2次元位置(2D)又は3次元位置(3D)のいずれで行うかを選択できる。
【0062】
第4ボタンB4に対する操作によってレジストレーションが指示されると、統括制御部110は、画像処理部136に指示してDRR画像におけるターゲット位置PTから透視画像TIにおけるターゲット位置を取得する。統括制御部110は、得られたターゲット位置PTを透視画像TIに重畳させて入力・表示部120に表示させるように表示制御部124に指示する(ステップS108)。前述したように、画像処理部136は、計画段階で撮影されたCT画像から作成したDRR画像や、計画段階以降に撮影された透視画像TIに基づいて、ターゲット位置PTが既知であるDRR画像と、透視画像TIとの間で画像の特徴部位をマッチングする処理などを行って、透視画像TIにおけるターゲット位置PTを決定する。透視画像TIとターゲット位置PTとの関係は、参照画像作成部132に提供される。
【0063】
透視画像TIにターゲット位置PTが重畳された画像は、例えば、インターフェース画像IMの領域A1-1、A1-2に表示される。表示制御部124は、ターゲット位置PTを透視画像TI上に重畳した画像を、入力・表示部120に表示させる。このような画像は、例えば、インターフェース画像IMの領域A1-1、A1-2に表示される。この画像が表示されている状態で、統括制御部110は、ターゲット位置PTを調整するユーザの操作を受け付ける(ステップS110)。ターゲット位置PTの調整は、例えば領域A1-1、A1-2におけるターゲット位置PTへのドラッグ・アンド・ドロップ操作によって行われる。ターゲット位置PTの調整が行われると、統括制御部110は、調整された透視画像TIとターゲット位置PTとの関係を参照画像作成部132に提供する。
【0064】
統括制御部110は、第5ボタンB5に対する操作によって参照画像の作成が指示されたか否かを判定する(ステップS112)。第5ボタンB5に対する操作によって参照画像の作成が指示されると、統括制御部110は、参照画像作成部132に指示し、参照画像として用いる透視画像TIを選択し、リサイズなどの処理を行って、参照画像を作成する(ステップS114)。参照画像作成部132は、ターゲット位置PTが対応付けられた参照画像(テンプレート)を作成し、記憶部160に記憶させる。
【0065】
ターゲット位置特定部140は、作成された参照画像を用いて透視画像TIにおけるターゲット位置PTを特定する。画像処理部136は、ターゲット位置特定部140により特定されたターゲット位置PTに基づいて、ターゲット位置PTおよびゲーティングウインドウを透視画像TI上に重畳させる。入力・表示部120は、ターゲット位置PTおよびゲーティングウインドウを重畳した透視画像TIと、ターゲット位置およびゲーティングウインドウを重畳したDRR画像とを含む確認画像を表示する。ユーザは、確認画像に基づいて、ゲーティングウインドウの調整の要否を決定する。ユーザが調整を必要と判断した場合、入力操作取得部122がゲーティングウインドウの調整の指示を受け付け、ゲーティングウインドウ調整部152が指示に応じてゲーティングウインドウを調整する(ステップS116)。調整されたゲーティングウインドウは、ターゲット位置とともに透視画像TIに重畳され、確認画像として入力・表示部120に表示される。
【0066】
ゲーティングウインドウ調整部152は、取得された操作に応じて、透視画像TIに射影されたゲーティングウインドウを調整するだけでなく、ゲーティングウインドウの3次元形状を調整してもよい。ゲーティングウインドウの調整により、被検体Pの状態に応じたゲーティングウインドウの設定が可能になる。ゲーティングウインドウの確認においては、入力・表示部120は、4DCT画像で示される任意のスライスにおける動画にゲーティングウインドウとターゲット位置とを重畳して表示してもよい。この動画は例えば領域A7に表示される。
【0067】
ゲーティングウインドウの調整は、図2に示す領域AI-1、AI-2に表示されるDRR画像又は透視画像TI上に重畳表示されたゲーティングウインドウGWの領域をユーザがポインティングデバイスで変更することにより行われてもよい。例えば、ゲーティングウインドウGWの境界線に対するドラッグ・アンド・ドロップ操作により、ゲーティングウインドウGWの位置又はマージン量が調整されてもよい。
【0068】
ゲーティングウインドウの調整が行われる際に、入力・表示部120は、治療計画においてROIに加えられたマージン部分と患部又は特徴箇所の領域とを異なる態様で表示してもよい。例えば、入力・表示部120は、ゲーティングウインドウを定める際に加えられたマージン部分と、患部又は特徴箇所の領域とを異なる色で表示したり、異なる彩度又は輝度で表示したりする。ゲーティングウインドウ調整部152は、ゲーティングウインドウの調整として、マージン部分の削減のみを受け付けてもよい。
【0069】
ゲーティングウインドウが調整された場合、入力・表示部120は、調整前のゲーティングウインドウと調整後のゲーティングウインドウとを透視画像TIに重畳して表示してもよい。調整前と調整後とのゲーティングウインドウが表示されることにより、ユーザがゲーティングウインドウの調整量を容易に確認できる。入力・表示部120は、インターフェース画像IMにおいて、調整前のゲーティングウインドウを重畳した透視画像TIを領域A1-1に表示し、調整後のゲーティングウインドウを重畳した透視画像TIを領域A1-2に表示してもよい。
【0070】
ゲーティングウインドウ調整部152は、調整後のゲーティングウインドウを示す情報を記憶部160に記憶させてもよい。ゲーティングウインドウ調整部152は、過去の治療における調整後のゲーティングウインドウを記憶部160から読み出し、読み出したゲーティングウインドウを用いてゲーティングウインドウの調整を行ってもよい。複数の調整後のゲーティングウインドウが記憶部160に記憶されている場合、入力・表示部120は、記憶部160に記憶されている調整後のゲーティングウインドウを表示し、調整後のゲーティングウインドウを選択するユーザの操作を取得してもよい。ゲーティングウインドウ調整部152は、取得された操作に応じて、複数の調整後のゲーティングウインドウからいずれか一つを選択する。
【0071】
ゲーティングウインドウ調整部152は、ターゲット位置の移動量に応じて、ゲーティングウインドウの大きさを調整してもよい。例えば、ゲーティングウインドウ調整部152は、透視画像TI上におけるターゲット位置の移動量が治療計画時点よりも小さく、治療計画で設定したマージン量より小さく設定した方が良い場合には小さな値に変更することができる。また、例えば、ターゲット位置が治療計画時点よりも特定の座標方向に大きく変化する場合等は、その方向のマージン量を治療に支障がない範囲で調整することができる。これらは、特に、治療装置の誤差や患者の呼吸状態による誤差を補正する場合に有効である。
【0072】
ゲーティングウインドウ調整部152は、DRR画像におけるターゲット位置の移動量と確認画像におけるターゲット位置の移動量とを比較し、比較結果に基づいてゲーティングウインドウを変更する軸方向を決定してもよい。例えば、ゲーティングウインドウ調整部152は、4DCT画像と確認画像とにおけるターゲット位置の移動量の比率に応じて、ゲーティングウインドウを変更してもよい。ゲーティングウインドウ調整部152は、ゲーティングウインドウを定める際に加えられたマージン部分を変更することにより、ゲーティングウインドウの大きさを調整してもよい。
【0073】
統括制御部110は、第6ボタンB6に対する操作によってゲートオン信号の確認が指示されたか否かを判定する(ステップS118)。ゲートオン信号の確認が指示されると、統括制御部110は、第6ボタンB6における2次元位置(2D)又は3次元位置(3D)の選択状態に応じて、ゲートオン信号の出力判定をターゲット位置の2次元位置と3次元位置とのいずれで行うかを選択する(ステップS120)。出力制御部150は、第6ボタンB6における選択状態に応じた統括制御部110の選択に応じて、2次元位置を用いた判定と、3次元位置を用いた判定とを切り替える。統括制御部110は、ゲーティングウインドウの調整と、ターゲット位置の調整とを禁止する(ステップS122)。
【0074】
統括制御部110は、表示制御部124に指示し、チェックボックスCBに「レ」(チェック)を入れた状態に変更させ、ゲートオン信号の出力タイミングを入力・表示部120に表示させる(ステップS124)。ゲートオン信号の確認が指示されると、ゲートオン信号の出力タイミングの判定が行われ、判定結果が表示される。しかし、チェックボックスCBに「レ」が入った状態では、ゲートオン信号の出力タイミングは計算されて表示されるが、実際にゲートオン信号は治療装置10に出力されない。
【0075】
統括制御部110は、第1ボタンB1に対する操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS126)。第1ボタンB1に対する操作によって撮影開始が選択されると、統括制御部110は、透視画像TIの撮影を治療装置10に出力制御部150を介して指示し、撮影された透視画像TIを用いたターゲット位置およびゲーティングウインドウの表示を入力・表示部120に表示制御部124に指示し、撮影された透視画像TIを用いた最終確認画像を入力・表示部120に表示させる(ステップS128)。
【0076】
最終確認画像は、領域AI-1、AI-2に表示される。最終確認画像は、動画として再生される透視画像TIに対して、ターゲット位置PTやゲーティングウインドウGWが重畳された画像である(図2参照)。出力制御部150は、ターゲット位置PTがゲーティングウインドウGW内に位置する場合に、ゲートオン信号を表示制御部124に出力し、ゲートオン信号が出力されていること領域A2に表示させる。ユーザは、この最終確認画像を視認することで、被検体Pの患部などのターゲット位置PTが正しい位置として認識されているか否か、ターゲット位置PTがゲーティングウインドウGWに位置するタイミングが適切か否か、ゲートオン信号の出力タイミング、および、ゲーティングウインドウの調整の要否等を確認できる。最終確認画像は、第1ボタンB1に対する操作によって撮影停止が選択されるまで表示される(ステップS130)。撮影停止が選択された後も、スライドバーやコマ送りスイッチなどが設定されたコントロールエリアCAを操作することで、最終確認画像を遡って確認することができる。
【0077】
ユーザは、入力・表示部120に表示される最終確認画像に基づいて、ゲーティングウインドウの調整が必要か否かを判定する。統括制御部110は、入力・表示部120に入力されたユーザの操作により、ゲーティングウインドウの調整の要否を受け付ける(ステップS132)。ゲーティングウインドウの調整が必要である場合、統括制御部110は、ゲーティングウインドウの調整と、ターゲット位置の調整とを禁止を解除し、処理をステップS100へ戻す。ゲーティングウインドウの調整が不要である場合、統括制御部110は、ステップS134へ処理を進める。
【0078】
第1ボタンB1の操作によって撮影停止が選択されると、統括制御部110は、チェックボックスCBの「レ」が外されているか否かを判定する(ステップS134)。チェックボックスCBの「レ」が外されていない場合、統括制御部110は、第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS136)。撮影開始が選択された場合は、ステップS128に処理が戻され、撮影開始が選択されていない場合は、ステップS134に処理が戻される。チェックボックスCBの「レ」が外されている場合、統括制御部110は、治療装置10から開始信号を受信したか否かを判定する(ステップS138)。この開始信号は、治療装置10のスイッチ(不図示)が操作されることで治療装置10が治療開始可能になったときに出力される信号である。治療装置10から開始信号を受信すると、統括制御部110は、治療を開始するように、表示制御部124、ターゲット位置特定部140および出力制御部150に指示し、出力制御部150は透視画像TIの撮影を治療装置10に指示する(ステップS140)。
【0079】
また、ステップS134でチェックボックスが外されている場合、治療装置10から開始信号を受信していなくても、統括制御部110が第1ボタンB1の操作によって撮影開始されたかどうかを判定してもよい。撮影が開始され、且つターゲット位置特定部140が特定したターゲット位置PTがゲーティングウインドウに収まっていれば、治療装置10へゲートオン信号を出力してもよい(不図示)。チェックボックスが外されていない場合治療装置からビームBが出力されることはない。また、ステップS134でチェックボックスが外されていないが、撮影開始が選択された後にチェックボックスを外された場合、撮影途中からゲートオン信号を出力してもよい(不図示)。
【0080】
このように、出力制御部150は、インターフェース画像IMにおいて、デフォルト状態を解除状態にする入力操作が入力操作取得部122により取得されたことを条件に、治療装置10にゲートオン信号を出力する。これによって、意図せず治療ビームBが被検体Pに照射されるのを抑制し、治療の信頼性を高めることができる。また、テンプレートの作成が完了すると、準備段階の終了操作を要求することなく、入力操作取得部122が治療ビームBの照射段階への開始指示を受け付ける。これによって、医用装置100の操作性を向上させることができる。
【0081】
治療が開始されると、ターゲット位置特定部140は、透視画像TIに対してテンプレートを用いたテンプレートマッチングを行い、ターゲット位置を特定する。出力制御部150は、ターゲット位置がゲーティングウインドウGW内にある場合にゲートオン信号を治療装置10に出力する。出力制御部150は、第6ボタンB6における2次元位置(2D)又は3次元位置(3D)の選択に応じて、ゲートオン信号を出力するか否かの判定を行う。表示制御部124は、透視画像TIにターゲット位置およびゲーティングウインドウGWを重畳した治療画像を、入力・表示部120に表示させる。治療画像は、領域A1-1、A1-2に表示される。
【0082】
統括制御部110は、治療装置10へのゲートオン信号の出力時間を積算する(ステップS142)。出力時間の積算を開始する時点は、治療装置10から開始信号を受信した時点又は、第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択され撮影が開始された時点のいずれかである。統括制御部110は、治療が開始されてから経過した時間に対する積算時間の比が一定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS144)。統括制御部110は、積算時間が閾値以下である場合(照射率が低下した場合)、治療装置10へのゲートオン信号の出力を停止させる。また、統括制御部110は、治療装置10による治療ビームBの照射および撮影を停止させ、治療を終了させる。積算時間が閾値以下でない場合、統括制御部110は、処理をステップS146へ進める。
【0083】
治療は、第1ボタンB1に対する操作によって撮影停止が選択されるまで、又は、照射された治療ビームBの線量が治療計画により規定された線量に達するまで継続する(ステップS146)。医用装置100は、治療装置10から照射完了の信号を受信した場合、又は、治療装置10において照射終了操作がなされたことを示す信号を治療装置10から受信した場合も、治療を終了してよい。
【0084】
表示制御部124は、確認画像、最終確認画像および治療画像において、ゲートオン信号を出力する際(準備段階では出力する条件が成立した際)に、ゲーティングウインドウの色を変更してもよい。例えば、透視画像TI-1とTI-2とのいずれにおいてもターゲット位置PTがゲーティングウインドウGW内にある場合に第1の色、透視画像TI-1とTI-2のいずれか一方のみにおいてターゲット位置PTがゲーティングウインドウGW内にある場合に第2の色、透視画像TI-1、TI-2の双方においてターゲット位置PTがゲーティングウインドウGW内にある場合に(すなわちゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に)第3の色でゲーティングウインドウGWの枠線を表示してもよい。また、透視画像TI-1とTI-2との両方においてターゲット位置PTがゲーティングウインドウGW内にない場合には、表示制御部124は、エラーアイコンを入力・表示部120に表示させてもよい。
【0085】
また、表示制御部124は、ゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に、ゲーティングウインドウGWの内側領域と外側領域のいずれかの色彩又は輝度を変更してもよい。更に、医用装置100は、ゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に、音又は振動で通知する通知部を備えてもよい。
【0086】
医用装置100は、上記のフローチャートにおけるステップS100の処理でマーカレス追跡、マーカ追跡、外部呼吸同期のモードの切り替えを受け付けるだけでなく、準備段階から治療段階までにおける任意のタイミングで切り替えを受け付けてもよい。また、適宜、処理のやり直しが受け付けられる。例えば、最終確認画像を表示している場面において、テンプレートの撮影からやり直すための操作が受け付けられる。これによって、煩雑な操作をユーザに要求することがなくなり、利便性を向上させることができる。なお、透視画像TIの撮影後にモード切り替えが行われた場合、既に撮影された透視画像TIをテンプレートに採用してもよい。
【0087】
治療が複数回行われる場合、医用装置100は、前回以前の治療で作成されたテンプレートを用いてもよい。図7は、医用装置100により実行される処理の流れの一例を示す第3のフローチャートである。図示するように、セレクトウインドウSWにおいてマーカレス追跡が選択された後、統括制御部110は、インターフェース画像IMにおけるいずれかの領域において「前回のテンプレートを使用する」ことが選択されたか否かを判定する(ステップS101)。「前回のテンプレートを使用する」ことが選択された場合、ステップS102~S114の処理がスキップされ、ステップS116に処理が進められる。
【0088】
医用装置100は、複数回に分けて治療が行われる場合、計画段階より後において作成されたDRR画像を記憶部160に記憶させておき、DRR画像の生成に代えてDRR画像を記憶部160から読み出してもよい。医用装置100は、モード切り替えが行われた場合、DRR画像の生成に代えてDRR画像を記憶部160から読み出してもよい。
【0089】
図3に示すフローチャートの処理では、医用装置100は、テンプレートマッチングによってターゲット位置を特定しているが、機械学習によってターゲット位置を特定してもよい。機械学習によってターゲット位置を特定する場合、ステップS108からS114までの処理は、参照画像を入力した場合にターゲット位置を導出する分類器を学習する処理に置換される。
【0090】
参照画像が治療前に作成される場合を説明したが、更に、医用装置100は、治療中に撮影された透視画像TIを並行して参照画像に加えてもよい。また、機械学習を行う場合、医用装置100は、治療中に透視画像TIを利用してリアルタイムに機械学習を行ってもよい。
【0091】
<治療の流れ(マーカ追跡モード)>
以下、マーカ追跡モードについて説明する。マーカ追跡モードでは、マーカを使用して患部の位置を特定する。マーカは、患部の近傍に埋め込まれ、計画段階においてマーカと患部との位置関係が学習される。マーカはターゲット位置として扱われ、マーカがゲーティングウインドウに収まる場合に治療ビームBが照射される。また、マーカ位置から特定した患部の位置がゲーティングウインドウに収まる場合に治療ビームBが照射されても良い。
【0092】
[計画段階]
マーカ追跡モードの計画段階において、被検体PのCT撮影が行われる。マーカレス追跡モードの計画段階と同様に、CT撮影では、様々な呼吸位相毎に、様々な方向から被検体Pが撮影される。CT撮影の結果に基づいて4DCT画像が生成され、4DCT画像が記憶部160に格納される。ユーザが、n個のCT画像のうち、例えば1つのCT画像に対して、対象の輪郭を定め、医用装置100へ入力する。マーカ追跡モードでは、ユーザにより輪郭を定められる対象は、被検体Pの体内に埋め込まれたマーカを含む。画像処理部136が、デフォーマブルレジストレーションによって、対象の輪郭が定められていないCT画像における対象の輪郭を設定する。そして、マーカレス追跡モードと同様に、治療計画が決定される。
【0093】
マーカレス追跡モードと同様に、治療計画が決定され、記憶部160は、決定された治療計画情報を記憶する。腫瘍の輪郭とマーカの位置およびマーカを含む領域とがROIとして定められる場合、画像処理部136は、腫瘍とマーカとの相対的な位置の時間変化を4DCT画像から抽出し、相対的な位置の時系列とROIを示す情報とを記憶部160に記憶させてもよい。マーカ追跡モードでは、画像処理部136が、マーカを含む領域を特徴箇所に指定してゲーティングウインドウを定める。マーカ追跡モードにおいても、マーカレス追跡モードと同様に、ゲーティングウインドウは、マーカのROIに対してマージンを付加して得られる領域として定められる。
【0094】
[位置決め段階]
位置決め段階においては、寝台位置の調整が行われる。マーカ追跡モードにおける位置決め段階の処理は、マーカレス追跡モードにおける位置決め段階の処理と同様である。また、CT撮影前に、被検体Pの身体における患部の近傍に、一以上のマーカが埋め込まれる。マーカは、X線を透過させづらい材質(例えば、金やプラチナ)で形成されている。このため、マーカは、透視画像TIにおいて黒く映る。また、マーカは、例えば、直径2[mm]程度の球や円筒などの形状を有する。
【0095】
[準備段階]
準備段階では、ユーザは、ある呼吸位相のCT画像上、DRR画像上で少なくとも一つの追跡に使用するマーカを選択する。準備段階より前、例えば計画段階でマーカが選択されてもよい。マーカを選択する操作がユーザにより行われると、画像処理部136は、選択されたマーカの位置をCT画像又はDRR画像上又は透視画像TI上に重畳させて入力・表示部120に表示させる。マーカの位置が重畳された画像は、例えば領域A7およびA1-1およびA1-2に表示される。ユーザは、CT画像上又はDRR画像上又は透視画像TI上でマーカを選択し、マーカの位置と患部の位置を必要に応じて調整する。調整された場合、マーカ又は患部の位置に対する調整量が補正量として記憶部160に記憶される。マーカ追跡モードにおけるターゲット位置は、選択されたマーカの位置であり、腫瘍が照射許可範囲の中に含まれる時、マーカがゲーティングウインドウ内に収まるようゲーティングウインドウが調整されてもよい。マーカ追跡モードにおけるゲーティングウインドウの調整は、マーカレス追跡モードと同様に行われる。
【0096】
図8は、医用装置100の入力・表示部120により表示されるマーカ追跡モードのインターフェース画像IMの一例を示す図である。インターフェース画像IMは、マーカレス追跡モードと同様に、領域A1-1、A1-2、A2、A3、A4、A5、A6およびA7を含む。マーカ追跡モードのインターフェース画像IMは、領域A1-1、A1-2およびA7に表示される透視画像TIおよびCT画像にマーカMKとエピポーラ線ELとが含まれる点において、マーカレス追跡モードのインターフェース画像IMと異なる。また、図8に示す領域A1-1、A1-2におけるターゲット位置VPTおよびゲーティングウインドウVGWは、治療計画において指定された患部の位置と患部に対するゲーティングウインドウである。図8に示す画面では、領域A1-1、A1-2にDRR画像が、領域A7にCT画像に基づいた断面画像が表示されている。DRR画像に代えて透視画像TIが表示されてもよい。医用装置100は、以下の三通りの方法でマーカMKの指定を受け付ける。図8には領域A1-1、A1-2にマーカMKが一つずつ表示される例が示されているが、実際には複数のマーカが選択可能に表示される。また、領域A1-1、A1-2には、治療計画で指定された患部のゲーティング領域VGWとDRR画像の場合は患部のターゲット位置VPTも表示すると良い。
【0097】
(1)ユーザは、領域A7においてマーカMKを指定する。これに応じて、透視画像TI上にエピポーラ線ELが表示される。そして、エピポーラ線EL上にあるマーカMKが指定可能となる。エピポーラ線EL上にあるマーカMKが指定されると、マーカの指定が完了する。なお、マーカは治療計画で予め指定されていても良く、マーカが選択された場合は、マーカMKの位置領域A1-1、A1-2上で調整できるようにすると使いやすい。
【0098】
(2)ユーザは、DRR画像上でマーカMKを指定することもできる。この場合、一方のDRR画像(例えば領域A1-1の画像)上でマーカMKが指定されると、もう一方のDRR画像(例えば領域A1-2の画像)上にエピポーラ線ELが表示される。そして、もう一方のDRR画像上のエピポーラ線EL上にあるマーカMKが指定可能となる。エピポーラ線EL上にあるマーカMKが指定されると、マーカMKの指定が完了する。このとき、領域A7におけるCT画像上に、指定されたマーカMKの位置が表示される。
【0099】
(3)ユーザは、計画段階においてマーカ位置をマーカROIとして登録することもできる。この場合、領域A-1、A1-2のDRR画像上、領域A7のCT画像上にマーカ位置が表示され、追跡に使用するマーカMKをユーザが指定してもよい。
【0100】
準備段階では、画像処理部136は、他の呼吸位相に対応する各CT画像における選択されたマーカの位置を取得し、取得した位置を記憶部160に記憶させる(各位相マーカ位置計算)。準備段階で用いる4DCT画像を用いた治療が行われている場合、画像処理部136は、前回の治療において用いたマーカの各CT画像における位置を記憶部160から取得してもよい。過去のマーカの位置を用いることにより、被検体Pが同じ場合にはマーカの選択が不要になる。ゲーティングウインドウGWに設定する位相とマージンとが指定されると、出力制御部150は、各位相のマーカMKの位置にマージンを付加した領域をゲーティングウインドウGWに設定する。ゲーティングウインドウGWとマーカMKの軌跡とは、DRR画像上に表示されてもよい。治療計画を作成した後から治療が行われるまでの期間において、ゲーティングウインドウの設定が行われればよく、設定が行われるタイミングは限定されない。
【0101】
ターゲットとしてのマーカが選択されると、医用装置100は、治療装置10に透視画像TIの撮影を指示する。被検体Pの1呼吸分以上の期間に亘り透視画像TIが撮影される。ターゲット位置特定部140は、マーカを含む特徴箇所と指定されたマーカMKの情報を基に透視画像TIにおいてターゲット位置(マーカ位置)を検知し、検知したターゲット位置を表示制御部124へ出力する。表示制御部124は、ターゲット位置を透視画像TI-1、TI-2それぞれに重畳した画像を入力・表示部120に表示させる。医用装置100が時系列で入力される透視画像TI上にターゲット位置を重畳することにより、ユーザは、被検体Pの呼吸に伴うターゲット位置の移動を確認し、ターゲット位置特定部140により検知されたターゲット位置が、透視画像TI上のマーカの像と一致しているか否かを確認する。医用装置100は、患部の位置も時系列で入力される透視画像TI上に重畳して表示してもよい。また、表示制御部124は、透視画像TI上にゲーティングウインドウも重畳して入力・表示部120に表示させてもよい。
【0102】
ターゲット位置がユーザにより確認されると、ターゲット位置(マーカMKの位置)およびゲーティングウインドウGWが重畳された透視画像TIと、患部の輪郭VPTおよび治療計画時のゲーティングウインドウVGWが重畳されたDRR画像とを含む確認画像が入力・表示部120に表示される。患部の輪郭VPTおよびゲーティングウインドウVGWが透視画像TI上に重畳されてもよい。ユーザは、入力・表示部120に表示される確認画像に基づいて、ターゲット位置、ゲーティングウインドウGWおよび患部の位置を確認し、ゲーティングウインドウGWの調整の要否を決定する。ユーザがゲーティングウインドウGWの調整を必要と判断した場合、入力操作取得部122は、入力・表示部120からゲーティングウインドウGWを調整する操作を取得する。ゲーティングウインドウ調整部152は、取得された操作に応じて、ゲーティングウインドウGWを調整する。
【0103】
ゲーティングウインドウ調整部152は、取得された操作に応じて、透視画像TIに射影されたゲーティングウインドウGWを調整するだけでなく、ゲーティングウインドウの3次元形状を調整してもよい。調整されたゲーティングウインドウは、記憶部160に記憶される。準備段階におけるゲーティングウインドウの調整により、被検体Pの状態に応じたゲーティングウインドウの設定が可能になる。ゲーティングウインドウの確認においては、入力・表示部120は、4DCT画像で示される任意のスライスにおける動画にゲーティングウインドウとターゲット位置とを重畳して表示してもよい。この動画は例えば領域A7に表示される。
【0104】
出力制御部150は、ターゲット位置がゲーティングウインドウ内にあるか否かを判定する。治療段階では、ターゲット位置がゲーティングウインドウ内にある場合、出力制御部150はゲートオン信号を表示制御部124と治療装置10とへ出力する。表示制御部124は、ゲートオン信号の出力の有無を入力・表示部120に表示させる。例えば、ゲートオン信号が出力されている場合、入力・表示部120は、ゲーティングウインドウの表示色を変化させる。ゲーティングウインドウの表示色の変化により、ユーザは、ゲートオン信号の出力タイミングを確認でき、マーカおよび患部の位置とゲートオン信号の出力タイミングとの関係を確認できる。出力制御部150は、マーカレス追跡モードと同様に、2次元モードと3次元モードとを切り替えて、ターゲット位置がゲーティングウインドウ内にあるか否かを判定してもよい。
【0105】
[治療段階]
治療段階では、出力制御部150が、ターゲット位置がゲーティングウインドウ内にある場合にゲートオン信号を治療装置10へ出力する。治療装置10はゲートオン信号に応じて治療ビームBを照射し、治療ビームBが患部に照射されることにより治療が行われる。
【0106】
<フローチャート(マーカ追跡モード)>
マーカ追跡モードにおける治療の流れをサポートするための、医用装置100の処理について説明する。インターフェース画像IMの各種機能について、フローチャートを参照しながら説明する。図9および図10は、医用装置100により実行される処理の流れの一例を示す第4および第5のフローチャートである。
【0107】
統括制御部110は、入力操作取得部122から入力される情報を参照し、セレクトウインドウSWにおいてマーカ追跡が選択されたか否かを判定する(ステップS200)。マーカ追跡以外のモードが選択された場合は、図3に示すフローチャートにおけるステップS100に処理が戻される。
【0108】
セレクトウインドウSWにおいてマーカ追跡が選択された場合、統括制御部110は、マーカの位置の選択および調整を受け付ける(ステップS202)。ステップS202からステップS206までの処理は、セレクトウインドウSWにおいてマーカ追跡が選択される前に行われてもよい。この場合、ステップS202からステップS206までの処理は、手動操作により、又は自動的にスキップされてもよい。
【0109】
統括制御部110は、第4ボタンB4に対する操作によって各位相マーカ位置計算が指示されたか否かを判定する(ステップS204)。図11は、マーカ追跡モードにおける第4ボタンB4、第5ボタンB5および第6ボタンB6の表示例を示す図である。マーカ追跡モードにおいて、第4ボタンB4は、各位相マーカ位置計算の指示を受け付け、第5ボタンB5は、マーカ検知の指示を受け付け、第6ボタンB6はゲートオン信号の確認指示を受け付ける。第4ボタンB4において、ユーザはマーカの形状を指定してもよい。第6ボタンB6において、ゲートオン信号の出力判定をターゲット位置の2次元位置(2D)又は3次元位置(3D)のいずれで行うかを選択できる。
【0110】
第4ボタンB4に対する操作によって各位相マーカ位置計算が指示されると、統括制御部110は、画像処理部136に指示して、各呼吸位相のCT画像におけるターゲット位置(マーカの位置)を展開させる(ステップS206)。表示制御部124は、入力・表示部120に、CT画像においてマーカ位置を示すマーカROIを領域A7などに表示させる。
【0111】
統括制御部110は、第1ボタンB1に対する操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS208)。撮影開始が選択されると、統括制御部110は、出力制御部150に指示し、第1確認画像となる透視画像TIの撮影を治療装置10に指示する(ステップS210)。出力制御部150は、例えば、k回の呼吸分の透視画像TIを撮影するように治療装置10に指示する。出力制御部150は、第1ボタンB1が再度操作されたときに撮影を終了する指示を治療装置10に出力してもよい。
【0112】
統括制御部110は、第5ボタンB5に対する操作によってマーカ検知が指示されたか否かを判定する(ステップS212)。マーカ検知が指示されると、統括制御部110は、マーカ検知部134に指示し、ステップS210で撮影された第1確認画像のそれぞれにおいてターゲット位置(マーカ位置)を検知させる(ステップS214)。マーカ検知部134により検知されたターゲット位置は、例えば、領域A1-1、A1-2において動画として表示される第1確認画像に重畳表示される。
【0113】
画像処理部136は、マーカ検知部134により検知されたターゲット位置に基づいて、ターゲット位置およびゲーティングウインドウを透視画像TI上に重畳させる。入力・表示部120は、ターゲット位置(マーカMKの位置)およびゲーティングウインドウGWを重畳した透視画像TIと、ターゲット位置およびゲーティングウインドウを重畳したDRR画像とを含む第2確認画像を表示する。透視画像TIには、ターゲット位置(マーカMKの位置)に対応する患部の位置VPTおよび患部に対して設定されたゲーティングウインドウVGWが重畳されてもよい。ユーザは、第2確認画像に基づいて、ゲーティングウインドウの調整の要否を決定する。ユーザが調整を必要と判断した場合、入力操作取得部122がゲーティングウインドウの調整の指示を受け付け、ゲーティングウインドウ調整部152が指示に応じてゲーティングウインドウを調整する(ステップS216)。調整されたゲーティングウインドウは、ターゲット位置とともに透視画像TIに重畳された第2確認画像として入力・表示部120に表示される。ゲーティングウインドウ調整部152は、マーカ追跡モードと同様に、ゲーティングウインドウの調整を行う。ゲーティングウインドウVGWが表示されているとき、入力・表示部120がターゲット位置の表示をしない設定ができるようにしても良い。
【0114】
ゲーティングウインドウ調整部152は、取得された操作に応じて、透視画像TIに射影されたゲーティングウインドウを調整するだけでなく、ゲーティングウインドウの3次元形状を調整してもよい。ゲーティングウインドウの調整により、被検体Pの状態に応じたゲーティングウインドウの設定が可能になる。ゲーティングウインドウの確認においては、入力・表示部120は、4DCT画像で示される任意のスライスにおける動画にゲーティングウインドウとターゲット位置とを重畳して表示してもよい。この動画は例えば領域A7に表示される。
【0115】
ゲーティングウインドウの調整は、インターフェース画像IMにおける領域AI-1、AI-2に表示される第2確認画像上のゲーティングウインドウGWの領域をユーザがポインティングデバイスで変更することにより行われてもよい(図8参照)。ゲーティングウインドウGWの境界線に対するドラッグ・アンド・ドロップ操作により、ゲーティングウインドウGWの大きさが調整されてもよい。領域A3のコントロールエリアCAに表示されるスライドバーの操作量に応じて、ゲーティングウインドウGWが相似形に縮小されてもよい。
【0116】
ゲーティングウインドウ調整部152は、第2確認画像におけるターゲット位置と患部の位置の移動量に応じて、ゲーティングウインドウの大きさを調整してもよい。例えば、第2確認画像におけるターゲット位置の移動量と患部の位置の移動量との比に基づいてゲーティングウインドウの大きさを調整してもよい。計画段階において患部およびマーカの輪郭を定める際に用いたマージンが2mmであり、第2確認画像におけるターゲット位置、患部の位置の移動量がそれぞれ10mm、5mmである場合、ゲーティングウインドウ調整部152は、ゲーティングウインドウの大きさを以下のように調整してもよい。ゲーティングウインドウ調整部152は、患部の位置の移動量(10mm)に対するターゲット位置の移動量(5mm)の比(5mm/10mm)を算出し、算出した比をマーカに対するマージン(2mm)に乗じた結果(1mm)を新たなマージンに定める。ゲーティングウインドウ調整部152は、マーカの輪郭に対するマージンを変更することで、ゲーティングウインドウの調整を行う。ゲーティングウインドウ調整部152は、患部の位置の移動量に対するターゲット位置の移動量の比と、患部の輪郭へのマージンに対するマーカの輪郭へのマージンの比とを一致させるように、ゲーティングウインドウへのマージンを変更する。ゲーティングウインドウ調整部152は、マージンの変更により、ゲーティングウインドウの大きさを調整する。マージンの調整量は自動で計算されると共に、マーカMKの移動量やゲーティングウインドウのマージンを入力・表示部120が表示して、マージンの調整量の変更が可能なようにしてもよい。更に、ゲーティングウインドウの大きさの調整をユーザが手動で変更できるようにすると使いやすい。
【0117】
統括制御部110は、第6ボタンB6に対する操作によってゲートオン信号の確認が指示されたか否かを判定する(ステップS218)。ゲートオン信号の確認が指示されると、統括制御部110は、第6ボタンB6における2次元位置(2D)又は3次元位置(3D)の選択状態に応じて、ゲートオン信号の出力判定をターゲット位置の2次元位置と3次元位置とのいずれで行うかを選択する(ステップS220)。出力制御部150は、第6ボタンB6における選択状態に応じた統括制御部110の選択に応じて、2次元位置を用いた判定と、3次元位置を用いた判定とを切り替える。統括制御部110は、ゲーティングウインドウの調整と、ターゲット位置の調整とを禁止する(ステップS222)。
【0118】
統括制御部110は、表示制御部124に指示し、チェックボックスCBに「レ」(チェック)を入れた状態に変更させ、ゲートオン信号の出力タイミングを入力・表示部120に表示させる(ステップS224)。ゲートオン信号の確認が指示されると、ゲートオン信号の出力タイミングの判定が行われ、判定結果が表示される。しかし、チェックボックスCBに「レ」が入った状態では、ゲートオン信号の出力タイミングは計算されて表示されるが、実際にゲートオン信号は治療装置10に出力されない。
【0119】
統括制御部110は、第1ボタンB1に対する操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS226)。第1ボタンB1に対する操作によって撮影開始が選択されると、統括制御部110は、透視画像TIの撮影を治療装置10に出力制御部150を介して指示する。統括制御部110は、表示制御部124に指示し、撮影された透視画像TIを用いた最終第2確認画像を入力・表示部120に表示させる(ステップS228)。
【0120】
最終第2確認画像は、領域AI-1、AI-2に表示される。最終第2確認画像は、動画として表示される透視画像TIに対して、マーカ位置(ターゲット位置)およびゲーティングウインドウGWが重畳された画像である(図8参照)。ユーザは、最終第2確認画像を視認することで、マーカMKがターゲット位置として認識されているか否か、ターゲット位置がゲーティングウインドウGW内に位置するタイミングが適切か否か、ゲートオン信号の出力タイミング、および、ゲーティングウインドウの調整の要否等を確認することができる。最終第2確認画像は、第1ボタンB1に対する操作によって撮影停止が選択されるまで表示される(ステップS230)。撮影停止が選択された後も、スライドバーやコマ送りスイッチなどが設定されたコントロールエリアCAを操作することで、最終第2確認画像を遡って確認することができる。ユーザは、入力・表示部120に表示される最終第2確認画像に基づいて、ゲーティングウインドウの調整が必要か否かを判定する。統括制御部110は、入力・表示部120に入力されたユーザの操作により、ゲーティングウインドウの調整の要否を受け付ける(ステップS232)。ゲーティングウインドウの調整が必要である場合、統括制御部110は、ゲーティングウインドウの調整と、ターゲット位置の調整とを禁止を解除し、処理をステップS100へ戻す。ゲーティングウインドウの調整が不要である場合、統括制御部110は、ステップS234へ処理を進める。
【0121】
第1ボタンB1の操作によって撮影停止が選択されると、統括制御部110は、チェックボックスCBの「レ」が外されているか否かを判定する(ステップS234)。チェックボックスCBの「レ」が外されていない場合、統括制御部110は、第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS236)。撮影開始が選択された場合は、ステップS222に処理が戻され、撮影開始が選択されていない場合はステップS226に処理が戻される。チェックボックスCBの「レ」が外されている場合、統括制御部110は、治療装置10から開始信号を受信したか否かを判定する(ステップS238)。この開始信号は、治療装置10のスイッチ(不図示)が操作されることで治療装置10が治療開始可能になったときに出力される信号である。治療装置10から開始信号を受信すると、統括制御部110は、治療を開始するように、表示制御部124、マーカ検知部134、ターゲット位置特定部140および出力制御部150に指示し、出力制御部150は透視画像TIの撮影を治療装置10に指示する(ステップS240)。
【0122】
また、ステップS234でチェックボックスが外されている場合、治療装置10から開始信号を受信していなくても、統括制御部110が第1ボタンB1の操作によって撮影開始されたかどうかを判定してもよい。撮影が開始され、且つターゲット位置特定部140が特定したターゲット位置(マーカMKの位置)がゲーティングウインドウに収まっていれば、出力制御部150は治療装置10へゲートオン信号を出力しても良い(不図示)。チェックボックスが外されていない場合、治療装置10から治療ビームBが出力されることはない。また、ステップS234でチェックボックスが外されていないが、撮影開始が選択された後にチェックボックスが外された場合、出力制御部150は撮影途中からゲートオン信号を治療装置10へ出力してもよい(不図示)。
【0123】
治療が開始されると、ターゲット位置特定部140は、マーカ検知部134により検知されたマーカの位置をターゲット位置として特定する。出力制御部150は、ターゲット位置がゲーティングウインドウ内にある場合にゲートオン信号を治療装置10に出力する。出力制御部150は、第6ボタンB6における2次元位置(2D)又は3次元位置(3D)の選択に応じて、ゲートオン信号を出力するか否かの判定を行う。表示制御部124は、透視画像TIにターゲット位置およびゲーティングウインドウGWを重畳させた治療画像を、入力・表示部120に表示させる。治療画像は、領域A1-1、A1-2に表示される。
【0124】
統括制御部110は、治療装置10へのゲートオン信号の出力時間を積算する(ステップS242)。出力時間の積算を開始する時点は、治療装置10から開始信号を受信した時点又は、第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択され撮影が開始された時点のいずれかである。統括制御部110は、治療が開始されてから経過した時間に対する積算時間の比が一定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS244)。統括制御部110は、積算時間が閾値以下である場合(照射率が低下した場合)、治療装置10へのゲートオン信号の出力を停止させる。また、統括制御部110は、治療装置10による治療ビームBの照射および撮影を停止させ、治療を終了させる。積算時間が閾値以下でない場合、統括制御部110は、処理をステップS246に進める。
【0125】
治療は、第1ボタンB1に対する操作によって撮影停止が選択されるまで、又は、照射された治療ビームBの線量が治療計画により規定された線量に達するまで継続する(ステップS246)。
【0126】
医用装置100は、治療装置10から照射完了の信号を受信した場合、又は、治療装置10において照射終了操作がなされたことを示す信号を治療装置10から受信した場合も、治療を終了してよい。
【0127】
表示制御部124は、第2確認画像、最終第2確認画像および治療画像において、ゲートオン信号を出力する際(準備段階では出力する条件が成立した際)に、ゲーティングウインドウの色を変更するようにしてもよい。例えば、透視画像TI-1とTI-2とのいずれにおいてもターゲット位置(マーカMKの位置)がゲーティングウインドウGWに収まっていない場合に第1の色、透視画像TI-1とTI-2のいずれか一方のみにおいてターゲット位置がゲーティングウインドウGWに収まっている場合に第2の色、透視画像TI-1とTI-2の双方においてターゲット位置がゲーティングウインドウGWに収まっている場合に(すなわちゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に)第3の色でゲーティングウインドウGWの枠線を表示してよい。また、透視画像TI-1とTI-2とのいずれにおいてもターゲット位置がゲーティングウインドウGWに収まっていない場合には、エラーアイコンを表示してもよい。ゲーティングウインドウの変更に合わせて患部に対して設定されたゲーティングウインドウVGWも表示を変化させると確認がしやすい。
【0128】
また、表示制御部124は、ゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に、ゲーティングウインドウGWの内側領域と外側領域のいずれかの色彩又は輝度を変更してもよい。更に、医用装置100は、ゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に、音又は振動で通知する通知部を備えてもよい。
【0129】
医用装置100は、上記のフローチャートにおけるステップS200の処理でマーカレス追跡、マーカ追跡、外部呼吸同期のモードの切り替えを受け付けるだけでなく、準備段階から治療段階までにおける任意のタイミングで切り替えを受け付けてもよい。また、適宜、処理のやり直しが受け付けられる。例えば、最終第2確認画像を表示している場面において、テンプレートの撮影からやり直すための操作が受け付けられる。
【0130】
治療が複数回行われる場合、医用装置100は、前回以前の治療に用いたマーカの位置を用いてもよい。図12は、医用装置100により実行される処理の流れの一例を示す第6のフローチャートである。図示するように、セレクトウインドウSWにおいてマーカ追跡が選択された後、統括制御部110は、いずれかの領域において「前回のマーカ位置を使用する」ことが選択されたか否かを判定する(ステップS300)。「前回のマーカ位置を使用する」ことが選択された場合、ステップS202~S214の処理がスキップされ、ステップS216に処理が進められる。
【0131】
マーカ追跡モードにおいても、マーカレス追跡モードと同様に、出力制御部150は、ゲートオン信号を出力するか否かの判定に、ターゲット位置(マーカ位置)に対する3次元位置を用いると良い。
【0132】
<外部呼吸同期モード>
以下、外部呼吸同期モード(第3のモード)について簡単に説明する。
[計画段階]
外部呼吸同期モードの計画段階においても、まず、被検体PのCT撮影が行われる。CT撮影では、様々な呼吸位相毎に、様々な方向から被検体Pが撮影される。次に、CT撮影の結果に基づいて4DCT画像が生成される。4DCT画像は、3次元のCT画像を時系列にn個並べたものである。このnと時系列のCT画像の時間間隔とを乗算して求められる期間は、例えば、呼吸位相が1周期分変化する期間をカバーするように設定される。4DCT画像は、記憶部160に格納される。
【0133】
次に、ユーザが、n個のCT画像のうち、例えば1つのCT画像に対して、輪郭を入力する。この輪郭は、患部である腫瘍の輪郭や治療ビームBを照射したくない臓器の輪郭等である。次に、例えば画像処理部136が、デフォーマブルレジストレーションによって、n個のCT画像のそれぞれについて輪郭を設定する。次に、治療計画が決定される。治療計画とは、設定された輪郭情報に基づいて、患部がどの位置にあるときに、どこに、どの方向から、どれだけの治療ビームBを照射するかを規定するものであり、ゲーテッド照射法や追尾照射法などの治療法に応じて決定される。なお、計画段階の処理の一部または全部は、外部装置によって実行されてもよい。例えば、4DCT画像を生成する処理は、CT装置によって実行されてもよい。そして、治療計画において決定した方向から治療ビームBを照射した場合に、患部に治療ビームBが当たる呼吸位相が求められる。
【0134】
[位置決め段階]
位置決め段階においては、寝台位置の調整が行われる。これについてはマーカレス追跡モードおよびマーカ追跡モードと同様である。
【0135】
[治療段階]
治療段階では、出力制御部150が、センサ15の検出結果に基づいて把握される呼吸位相(外部呼吸位相)が、設定された照射範囲内に入った場合に、治療ビームBが照射される。
【0136】
外部呼吸同期モードにおいて、医用装置100がインターフェース画像IMの表示することで、治療ビームBが照射されたときの患部の位置を確認することができるため、センサ15の検出結果に基づいて適切なタイミングで治療が行われているか、視覚的に確認できるようになり、治療精度が向上する。
【0137】
以上説明した実施形態の医用装置100は、マーカ追跡モードおよびマーカレス追跡モードにおいて、ターゲット位置の2次元位置を用いたゲートオン信号出力の可否の判定に加えて、3次元位置を用いたゲートオン信号出力の可否の判定を行える。治療計画において定められるゲーティングウインドウの3次元形状が柱および直方体に比べ複雑な形状を有している場合、透視画像TI上に射影されたゲーティングウインドウで示される3次元の領域が、ゲーティングウインドウの3次元形状より大きくなることがある。このような場合、医用装置100が、3次元位置を用いた判定を行うことにより、治療ビームBの照射をより高い精度で治療装置10へ指示できる。高い精度で治療ビームBが照射されることにより、治療時間を短縮できるので被検体の身体的な負担を軽減することができる。
【0138】
医用装置100は、マーカ追跡モードおよびマーカレス追跡モードが選択された場合、計画段階において定められたゲーティングウインドウを、準備段階又は治療段階において調整できる。準備段階において、ユーザが透視画像TI上のターゲット位置およびゲーティングウインドウを確認した際に、ゲーティングウインドウの調整ができるので、治療計画を再度定めずとも治療を行うことができる。治療を計画に従い進められるので、治療の延期などを避けることができ、治療期間を短縮できるので被検体の身体的な負担を軽減することができる。
【0139】
<その他>
上記実施形態の医用装置100は、常時起動しているデーモンプログラムを備えてもよい。医用装置100は、前述した治療計画の結果を他装置から受信する。デーモンプログラムは、治療計画の結果が受信されるのに応じて、治療計画が内部呼吸同期又は外部呼吸同期の計画であれば、医用装置100の各部の機能を自動的に起動させるようにしてもよい。この場合において、デーモンプログラムは、内部呼吸同期の計画である場合はデフォーマブルレジストレーションなどのターゲット位置追跡のための準備処理を開始し、外部呼吸同期の計画である場合は、インターフェース画像IMの表示のみ行ってよい。
【0140】
また、図3、4、7、9、10、12などで例示したフローチャートの各処理は、位置決め承認通知を受けないと進行しないようにインターロックが掛けられてもよい。位置決め承認通知は、入力・表示部120に対してなされた入力操作によって行われてもよいし、他装置から受信してもよい。また、図3、4、7、9、10、12などで例示したフローチャートの各処理は、位置決め承認キャンセル通知を受けた場合に、位置決め承認通知を受けた時点まで戻るように制御されてもよい。
【0141】
また、複数回に亘り治療が行われる場合、統括制御部110は、前回以前の治療時の各種データ(テンプレート、追跡結果、位置決め承認履歴)など記憶部160に保持しておき、表示制御部124は、当日の治療状況との比較を入力・表示部120に表示させてもよい。
【0142】
ステップS128において最終確認画像が表示されている間、表示制御部124は、2次元位置を用いた判定結果と、3次元位置を用いた判定結果とを対比した画像を入力・表示部120に表示させてもよい。図13は、2次元位置と3次元位置とを用いた判定結果を対比する画像例を示す図である。図13において、横軸は時間を示し、縦軸はゲートオン信号の出力の有無を示す。図13に示す画像は、例えば、インターフェース画像IMにおける領域A2に表示される。2次元位置を用いた判定結果(G2)と3次元位置を用いた判定結果(G3)とが同じ時間軸にて示される。2つの判定結果の表示、すなわちゲートオン信号G2、G3の波形図の表示により、ユーザは2つの判定結果の差を確認することができる。2つの判定結果の差に基づいて、ユーザは、2次元位置と3次元位置とのいずれを用いて治療を行うかを決定することができる。2つの判定結果の表示は、逐次入力される透視画像TI-1およびTI-2に基づいて行われてもよいし、過去に入力された透視画像TI-1およびTI-2に基づいて行われてもよい。
【0143】
ステップS128において最終確認画像が表示されている間、表示制御部124は、ターゲット位置の3次元位置を示す3つの座標それぞれの変位を示すグラフを入力・表示部120に表示させてもよい。図14は、3次元位置を示す3つの座標の変位を示すグラフの一例を示す図である。図14において、横軸は時間を示し、縦軸は各座標の変位を示す。ターゲット位置の3次元位置の変位を時系列に示すことにより、ユーザは、被検体の呼吸によるターゲット位置の変位を容易に確認することができる。3次元位置の変位の表示は、逐次入力される透視画像TI-1およびTI-2に基づいて行われてもよいし、過去に入力された透視画像TI-1およびTI-2に基づいて行われてもよい。
【0144】
3次元位置を示す3つの座標の変位は、図13において示した3次元位置を用いたゲートオン信号の波形図と対比できるように表示されてもよい。すなわち、ゲートオン信号の波形図と3次元座標の変位とを同じ時間軸にて表示してもよい。3次元位置の変位とゲートオン信号とが対比可能に表示されることにより、ユーザは、ゲートオン信号の出力タイミングを呼吸によるターゲット位置の変位と対比して確認できる。3次元位置の変位とゲートオン信号との対比は、逐次入力される透視画像TI-1およびTI-2に基づいて行われてもよいし、過去に入力された透視画像TI-1およびTI-2に基づいて行われてもよい。
【0145】
表示制御部124は、ターゲット位置の3次元位置を示す3つの座標それぞれの変位を示すグラフのうち、最も変位が大きいグラフを他の2つのグラフより強調して表示させてもよい。例えば、表示制御部124は、最も変位が大きいグラフを示す線又は破線の太さを他の2つのグラフより太く表示させてもよいし、輝度又は彩度を高く表示させてもよいし、最も変位が大きいグラフのみを表示させてもよい。3つの座標それぞれの変位は、被検体Pの呼吸位相に同期しているので、最も変位の大きいグラフが強調して表示されることにより、ユーザは被検体Pの呼吸位相を容易に確認できる。
【0146】
表示制御部124は、2次元位置を用いた判定が行われる場合と、3次元位置を用いた判定が行われる場合とにおいて、インターフェース画像IMにおける各領域A1-1、A1-2、A2、A3、A4、A5、A6およびA7のレイアウトやサイズを変更してもよい。例えば、3次元位置を用いた判定が行われる場合、表示制御部124は、領域A1-1およびA1-2と領域A2との配置を変更し、領域A2を画面上側に配置し、領域A1-1およびA1-2を画面下側に配置してもよい。インターフェース画像IMのレイアウト又はサイズを変更することにより、2次元位置と3次元位置とのいずれを用いた判定が行われているかをユーザが容易に識別できる。
【0147】
ゲーティングウインドウ調整部152は、ゲーティングウインドウを調整した後に、ユーザの操作に応じてゲーティングウインドウの位置および大きさを計画段階において定めたゲーティングウインドウの位置および大きさに戻してもよい。ゲーティングウインドウの調整が行われた場合、表示制御部124は、調整前のゲートオン信号の波形と、調整後のゲートオン信号の波形とを対比する画像を入力・表示部120に表示させてもよい。この画像は、例えば、図13に示す画像と同様に、インターフェース画像IMにおける領域A2に表示されてもよい。ユーザは、調整前後のゲートオン信号の波形を比較することにより、ゲーティングウインドウの調整がゲートオン信号に与える影響を容易に確認できる。
【0148】
表示制御部124は、ゲーティングウインドウの調整が行われた場合と、ゲーティングウインドウの調整が行われない場合とで、異なる表示態様でゲーティングウインドウを入力・表示部120に表示させてもよい。例えば、表示制御部124は、調整が行われた場合と調整が行われない場合とでゲーティングウインドウの表示色を変えてもよい。表示制御部124は、調整が行われない場合にゲーティングウインドウを常時表示させ、調整が行われた場合にゲーティングウインドウを点滅表示させてもよい。表示制御部124は、ゲーティングウインドウの調整が行われた場合に、調整が行われたことを示すアイコン又はメッセージを表示させてもよい。
【0149】
ゲーティングウインドウ調整部152は、治療時にターゲット位置の移動速度に変化が生じた場合に、ゲーティングウインドウを小さくしてもよい。被検体Pの呼吸が荒くなったり、被検体Pが咳き込んだりしたときに、ターゲット位置の移動速度は、安静時に比べ速くなる。検出部としての統括制御部110は、ターゲット位置の移動速度が一定値を超えた場合、又は、ターゲット位置の過去の移動速度の平均値と現在の移動速度との差が予め定められた閾値を超えた場合、被検体Pに異常が生じたと判定し、ゲーティングウインドウ調整部152にゲーティングウインドウを小さくするように指示してもよい。ゲーティングウインドウ調整部152は、例えば、ゲーティングウインドウに含まれるマージンを削減することによりゲーティングウインドウを小さくしてもよいし、予め定められた削減量でゲーティングウインドウを小さくしてもよい。統括制御部110は、被検体Pに異常が検出されなくなったとき、ゲーティングウインドウ調整部152にゲーティングウインドウを元の位置および大きさに戻すように指示してもよい。統括制御部110は、センサ15から出力される検出結果を用いて、被検体Pに異常が生じたか否かを判定してもよい。
【0150】
統括制御部110は、被検体Pに異常が生じたと判定した場合、ゲーティングウインドウの調整をユーザに促す通知を行ってもよい。ゲーティングウインドウの調整をユーザに促す通知として、アイコンやメッセージが入力・表示部120に表示されたり、音や振動が通知部により発せられたりしてもよい。医用装置100がゲーティングウインドウの調整や通知を行うことにより、被検体Pの変化に応じた治療が行える。
【0151】
統括制御部110は、被検体Pに異常が生じたと判定した場合、インターフェース画像IMの表示態様の変更を入力・表示部120に指示してもよい。例えば、統括制御部110は、インターフェース画像IMにおけるゲーティングウインドウGWの表示を停止させてもよい。統括制御部110は、インターフェース画像IMの表示をカラー表示から白黒表示に変更してもよい。統括制御部110は、被検体Pの異常を示すアイコン又はメッセージを表示させてもよい。統括制御部110は、インターフェース画像IMの表示態様を変更させることにより、ゲーティングウインドウの調整をユーザに促すことができる。治療時にゲーティングウインドウの調整が行われる場合、統括制御部110は、実行中の処理を、図3に示すステップS100又は図9に示すステップS200に戻す。
【0152】
統括制御部110は、ゲーティングウインドウ調整部152によりゲーティングウインドウの位置又は大きさが調整された後に、治療ビームBの照射率が予め定められた閾値より小さくなった場合、入力・表示部120に照射率の低下を示すアイコン又はメッセージを表示させてもよい。治療ビームBの照射率は、例えば、治療開始から経過した時間に対する治療ビームBが照射された時間の比である。統括制御部110は、入力・表示部120に照射率の低下を示すアイコン又はメッセージを表示させることにより、ユーザにゲーティングウインドウの調整又は治療中断の検討を促すことができる。統括制御部110は、照射率が閾値より小さい場合、出力制御部150にゲートオン信号の出力を停止させてもよい。
【0153】
医用装置100は、DRR画像のみによる学習結果、DRR画像と1日目の治療時に撮影された透視画像TIによる学習結果、DRR画像と2日目の治療時に撮影された透視画像TIによる学習結果などをそれぞれ保持しておき、治療当日に、保持した学習結果のうち一つを自動的に、あるいは手動で選択してターゲット位置の特定に用いてもよい。
【0154】
また、医用装置100は、1日目の治療に使用したテンプレート、2日目の治療に使用したテンプレートなどをそれぞれ保持しておき、治療当日に、保持したテンプレートのうち一つを自動的に、あるは手動で選択してターゲット位置の特定に用いてもよい。
【0155】
また、医用装置100は、上記した学習結果、又はテンプレートを自動的に選択する場合、治療当日の追跡値の軌跡と最も近い軌跡を示した日の情報を選択するようにしてもよい。
【0156】
実施形態では、医用装置100がマーカ検知部134を備える構成を説明した。マーカ追跡を行わず、かつマーカレス追跡を行う医用装置100は、マーカ検知部134を備えずともよい。
【0157】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、確認画像に基づいてゲーティングウインドウを調整する調整部を持つことにより、治療計画を定めた後でも、治療時における状態に基づいてゲーティングウインドウを調整できる。被検体の状態に基づいて調整されたゲーティングウインドウが治療ビームの照射タイミングの判定に用いられることにより、精度の高い治療ビームの照射や治療時間の短縮が可能になり、被検体の身体的な負担を軽減することができる。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0159】
1…治療システム、10…治療装置、11…寝台、12…放射線源、13…検出器、14…照射門、15…センサ、20…治療装置側制御部、100…医用装置、110…統括制御部、120…入力・表示部、122…入力操作取得部、124…表示制御部、130…取得部、132…参照画像作成部、134…マーカ検知部、136…画像処理部、140…ターゲット位置特定部、150…出力制御部、152…ゲーティングウインドウ調整部、160…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14