(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】ポリ塩化ビニルフリーの親油性ポリマーベースの芳香性プラスチゾル
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20230418BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20230418BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20230418BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230418BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20230418BHJP
C08J 3/18 20060101ALI20230418BHJP
C08J 3/21 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C08L67/04
C08L77/00
C08L91/00
C08L101/00
C08L1/02
C08J3/18 CEZ
C08J3/21
(21)【出願番号】P 2021543986
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 US2019054562
(87)【国際公開番号】W WO2020072817
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-04-23
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521141556
【氏名又は名称】アレクサンドラ ファルダノフ
【氏名又は名称原語表記】FARDANOV, Aleksandra
(73)【特許権者】
【識別番号】521141567
【氏名又は名称】オレグ ファルダノフ
【氏名又は名称原語表記】FARDANOV, Oleg
(73)【特許権者】
【識別番号】521141578
【氏名又は名称】ディミトリー ザドリン
【氏名又は名称原語表記】ZADORIN, Dmitry
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ ファルダノフ
(72)【発明者】
【氏名】オレグ ファルダノフ
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリー ザドリン
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531746(JP,A)
【文献】特表2013-522479(JP,A)
【文献】特開2007-326859(JP,A)
【文献】特表2014-512342(JP,A)
【文献】特表2015-518058(JP,A)
【文献】特開平08-127690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08J 3/00 - 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑剤により可塑化され、
ポリ-ε-カプロラクトンを含む、
成形用プラスチゾル
であって、
前記可塑剤が、揮発性芳香剤及び抗菌剤からなる群から選択される、成形用プラスチゾル。
【請求項2】
透明なチキソトロピー物質を更に含む、請求項1に記載の
成形用プラスチゾル。
【請求項3】
フィラーを更に含む、請求項1
又は2に記載の
成形用プラスチゾル。
【請求項4】
合成繊維材料又はセルロース繊維を更に含む、請求項1に記載の
成形用プラスチゾル。
【請求項5】
顔料を更に含む、請求項1に記載の
成形用プラスチゾル。
【請求項6】
成形用プラスチゾルの製造方法であって、
ポリ-ε-カプロラクトンを得ることと、
前記
ポリ-ε-カプロラクトンを
、可塑剤とブレンドして、5~75重量%の前記
ポリ-ε-カプロラクトンと5~85重量%の前記可塑剤とを含むプラスチゾルを生成することと、
を含
み、
前記可塑剤が、揮発性芳香剤及び抗菌剤からなる群から選択される、方法。
【請求項7】
前記
揮発性芳香剤が精油である、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
チキソトロピー添加剤を、前記
ポリ-ε-カプロラクトンとブレンドする工程を更に含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
フィラーを、前記
ポリ-ε-カプロラクトンとブレンドする工程を更に含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項10】
顔料を、前記
ポリ-ε-カプロラクトンとブレンドする工程を更に含む、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年10月4日に出願された米国仮出願第62/741,425号の利益を主張するものである。これら及び他の全ての参照される外部資料は、その全体を参照して本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる本明細書における用語の定義又は使用が、本明細書に規定されたその用語の定義と矛盾するか或いは反する場合には、本明細書に規定されたその用語の定義が優先されるとみなされる。
【0002】
本発明は、成形用ポリマー組成物に関し、特に、殺菌性、芳香化物質、香味化揮発物等の揮発性物質を高い含有量で含む成形用プラスチゾルに関する。このようなプラスチゾルの適用分野は、子供のゲーム用の成形材、試作品、芳香性物品の成形体、殺菌性製品、忌避剤又は誘引剤を含む製品である。このような物品の例としては、教育玩具、スタッコ造形品、化粧品アプリケーター、造花、魚のルアー、靴のパーツ、動物用の玩具等が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
成形(modeling)用及び造形(molding)用のプラスチック材料が知られている。プラスチックゲルの特性を有する彫刻材料は、従来「クレイ」と呼ばれているが、ポリマー材料をベースにする彫刻クレイは、通常、アルミノケイ酸塩クレイ鉱物又はほかの無機フィラーを含まない。クレイ鉱物のこれらと同様の特性を有するプラスチックゲルを作るために、チキソトロピー性物質が高分子プラスチゾルに添加されるのが一般的である(米国特許第2,753,314号で説明されている)。十分な剪断力を加えると、このような材料は可塑性となるが、静止状態では得られた形状を保持する。このようなプラスチックを完全に硬化するまで加熱すると、形状と表面の模様を保持できる。
【0004】
人工皮革、模造木材トリムパネル等のそのようなポリマー製品(典型的にはポリ塩化ビニル又はPVCをベースにしている)は、対応する天然素材の特徴的な香りを欠いており、可塑剤の使用に起因する不快なにおいを有することが多いことが知られている。また、一般的なPVCベースの彫刻材料用の可塑剤として一般的に使用されているフタル酸エステルは、人体全体の様々な系を撹乱させ、特に生殖能力に影響を与える内分泌撹乱物質である。更に、このようなプラスチックゲルを140℃超に加熱すると、PVCの熱破壊が始まり、毒性のあるガス状の塩化水素が材料から放出されることから、このようなプラスチックゲルの硬化時には、加熱時の温度を正確に制御する必要がある。このような正確な温度制御は、このようなプロセスの拡大及び縮小の大きな障害となる。また、このような加熱工程は、揮発性化合物(香りや香味に関連する化合物等)をこのようなプラスチックゲルに組み込む能力を制限し、それらに組み込まれた香り及びにおいの持続時間及び強さを制限することも理解されるべきである。
【0005】
米国特許第2,753,31号及び本明細書で参照される他の全ての刊行物は、個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に参照により組み込まれる。組み込まれた参照における用語の定義又は使用が、本明細書に提供されたその用語の定義と矛盾するか或いは反する場合、本明細書に提供されたその用語の定義が適用され、参照におけるその用語の定義は適用しない。
【0006】
特許文献には、揮発性物質を含むポリマー組成物を調製するための様々な方法が記載されている。プラスチックを、香味添加剤を含む水溶性基剤と混合することにより、香味添加剤を含むプラスチックを製造する方法が知られている。このような方法は、チューインガムを製造するために用いられる(米国特許第5,100,678号)。この方法において、香味添加剤は、口腔内で水溶性基剤を噛んで溶かすことで放出される。この方法は、破壊可能な材料には有効であるものの、材料を破壊せずに香味効果が求められる場合には用途が制限されてしまう。このようなポリマー組成物は、機械的強度が低い。これをベースにした成形用材料は、従来のポリマーに固有の強度、硬度、耐水性が要求されている場合に使用できない。
【0007】
また、親水性相を含むシリコーンブロックコポリマーをベースにした揮発性ポリマー組成物について記載している特許もある(米国特許第5,008,115号)。このようにして得られる材料は、香味を効果的に保持でき、そのなだらかな放出を妨げない。このような材料は、低強度のゴム又は強いゲルに特有の機械的特性を示す。そのため、低強度及び低硬度が重要ではない分野での使用に制限される。シリコーンブロックコポリマーをベースにした成形用材料では、十分な強度の材料を得ることはできない。
【0008】
米国特許出願公開第2010/0,196,732号には、ポリマーを、芳香性物質を含浸させた多孔質又は繊維状の基材、又は天然及び合成繊維、紙、木、哺乳類の毛等と混合することで、芳香性プラスチックを調製することが記載されている。この場合、ポリマーは、高度に充填された木質繊維、セルロース紙、及び同様の材料に用いる接着性バインダーとして知られているように、バインダーの役割を果たす。この既知の方法の欠点は、フィラーを含まない材料を得ることができないことと、その結果、プラスチゾルの可塑性を保持した材料を得ることができないことである。
【0009】
米国特許第4,703,070号、米国特許第6,838,033号、米国特許第5,387,622号及び米国特許第5,387,411号には、架橋熱硬化性ポリマーを用いて芳香性プラスチックを調製する方法が記載されている。この方法は、その反応性の理由から、多くの揮発性物質を使用できない。揮発性の芳香剤は、組成物の硬化剤と様々な反応を起こし、不快なにおいを引き起こすか、或いはその活性が阻害される。更に、エラストマー、ポリオルガノシロキサン、シリコーンゴム、ポリブタジエンゴム、及びそれらのコポリマーは、精油と組み合わせた場合に強い固体材料を形成しない。熱硬化性ポリマーは、キャスト(casting)及び押出等の従来の方法を用いた物品の製造に使用できない。架橋されたポリマーは、溶融又は溶解しないため、物品の製造とそのリサイクの両方が複雑になる。これと同じ理由で、それらをベースにした熱硬化性プラスチゾルの形態で成形用材料の製造は不可能である。
【0010】
また、有機ゲルの形態で芳香性高分子材料を製造することも知られている。ゲル化剤としては、ポリアミド樹脂等の限定的な膨潤性の高分子量ポリマーをベースにした様々なポリマー(米国特許第4,184,099号、米国特許第7,160,337号)が提案されている。このような物質は低い濃度でも、大量の精油を保持できる。このような有機ゲルは、透過性の高い口紅を調製するための基剤、香り付きキャンドルを作るための基剤、又は透明な芳香性顆粒を作るための基剤として適している。
【0011】
米国特許第4,734,278号には、ATO CHIMIE (アルケマグループ)製の熱可塑性エラストマー PEBAX(登録商標)2533 SA 01をベースにした芳香性組成物を調製することが説明されている。このポリマーは、60重量%以下の揮発性芳香物を保持できる。この熱可塑性エラストマーは、優れた機械的特性を有し、且つ、標準的なキャスト法又は押出法で容易に加工できる。しかしながら、このポリマーは、成形材として使用するのに適したプラスチゾルを提供できない。残念ながら、該材料は、揮発性芳香物等の溶剤との混合により形成される材料の結果として、べとついた(tacky)又は粘着質な(sticky)表面を有する。この結果、表面が汚染され、そのような材料の使用は、他のポリマー及びフィラーの混合物の一部分として、或いは、装飾目的(この特性があまり問題にならない)に制限される。更に、教示された方法では、処理温度が高い(180℃~220℃)ため、高い揮発性を有する芳香物の使用が制限される。
【0012】
芳香性プラスチゾルを製造する別の取り組みは、国際特許出願第WO2015/007263号に見られ、これには、芳香化非極性物質を、十分に高い極性を有する既知のPVC可塑剤への添加剤として使用する方法が説明されている。この方法では、可塑剤をベースにした芳香化「オイル」のみを使用でき、得られる材料中の芳香物の含有量が制限される。更に、ポリ塩化ビニルプラスチゲルの硬化は非常に高い温度で実施され、低沸点を有する揮発性芳香物の使用は制限される。
【0013】
ポリカプロラクトン(PCL)をベースにした成形物の塊(mass)の調製に関する1つの取り組みは、ドイツ実用新案番号DE 202009002221 U1に開示されている。説明された方法は、有害なフタル酸エステル可塑剤を、金属石鹸及び脂肪酸エステルに置き換えることにより、PVCベースの成形用材料に対する固有の特定の欠点を克服しようとしている。しかしながら、この実用新案は、芳香性成形材料の製造に関しては言及していない。
【0014】
従って、上記の欠点を有さず、硬化後に低沸点芳香剤を高い含有量で含む強い材料を調製することを提供する成形用材料の製造が必要とされている。同時に、直近の要求事項によれば、防水性があり、表面に芳香剤を滲出(sweating)させず、芳香化物質の移行を妨げず、非粘着質であり、毒性又は発がん性を有する可塑剤を含まず、加熱しても有害物質を放出しないことが求められている。
【発明の概要】
【0015】
以下の説明は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。本明細書で提供される情報のいずれかが先行技術又は本願発明に関連していること、或いは具体的又は暗黙的に参照されている刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0016】
本発明の目的は、先行技術の欠点を解消し、硬化後に揮発性物質の高い含有量を含む強い熱可塑性材料を提供し、且つ、周囲の条件下で環境揮発性物質に耐性がある成形用材料を製造する方法を開発することにある。
【0017】
この目的は、ポリマーと、該ポリマーと共にプラスチゾルを形成する揮発性芳香化物質と、をベースにした複合物を調製する方法によって達成される。ポリマーは、その融点を超える温度では異なる極性の有機液体に可溶であり、より低い温度ではそのような溶剤に不溶であるように選択される。
【0018】
得られる複合物は、従来の有機ゲルとは異なり、ポリマーの融点を超える温度に上昇すると、材料は有機ゲルの特性を示し、融点未満の温度に降下すると、材料は有機液体を保持する硬質ポリマーマトリックスになる。低分子量の有機ゲル又は溶液に特有の従来のゲル相転移とは対照的に、本発明概念の限定的な膨潤性の高分子量化合物は、冷却すると有機ゲルから不活性で耐溶剤性のポリマーマトリックスに転移する。
【0019】
本発明概念の組成物は、液体有機相を効果的に保持する(それにより、加熱時の表面の「滲出」を防ぐ)有機ゲルの特性と、固体ゲルの強度と耐薬品性を示す架橋熱硬化性ポリマー又は不溶性の限定的な膨潤性のブロックコポリマーをベースにしたゲルの特性と、を組み合わせる。得られた材料は、キャスト又は押出等の熱可塑性プラスチックを加工するための標準的な方法を用いて有利に加工できる。
【0020】
驚くべきことに、本発明者らは、融点を超える温度で標準的な条件で溶剤に耐性のある親液性ポリアミド又は親液性複合ポリエステルポリマー(例えば、ポリカプロラクトン)が、異なる極性の芳香剤を含む有機ゲルを形成することを見出した。好ましい実施形態では、芳香剤は、異なる極性の精油であることができる。その融点を超えると、ポリマーは異なる極性の揮発性物質と容易に混合する。硬化後に得られる複合物は、ポリカプロラクトンの機械的性質を維持しつつ、所望のにおい又は芳香を示す。また、他の樹脂をベースにした限定的な膨潤性の熱可塑性エラストマーに固有の粘着性も有さない。
【0021】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様及び利点は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明概念のプラスチックの塊を製造するための方法を模式的に示したものある。成分を粉砕し、混合してプラスチゾルを形成する。
【
図2】
図2は、
図1に示すように生成したプラスチゾルを形成して加熱することにより、固体又は硬質の製品を生成するための、本発明概念の方法を模式的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な記載
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明の特定の実施形態を説明及びクレームするために使用される、成分の量、濃度、反応条件等の特性等を表す数値は、「約」という用語によっていくつかの例で変更されると理解されるべきである。それゆえに、いくつかの実施形態では、書面による説明及び添付されたクレームで規定された数値パラメータは、特定の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施形態では、数値パラメータは、報告された有効数字を考慮して、通常の四捨五入の技法を適用して解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を規定する数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体的な例によって規定される数値は、実行可能な限り正確に報告される。本発明のいくつかの実施形態で提示された数値は、それぞれの試験測定で見出された標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を含んでもよい。
【0025】
本明細書での説明及びクレーム全体で使用されているように、「a」、「an」及び「the」の意味は、文脈が明確に別の指示をしない限り、複数の参照を含む。また、本明細書での説明で使用されているように、「in」の意味は、文脈が明確に別の指示をしない限り、「in」及び「on」を含む。
【0026】
本明細書で使用されているように、文脈が別の指示をしない限り、「結合する(coupled to)」という用語は、直接結合(互いに結合された2つの要素が互いに接触する)及び間接結合(少なくとも1つの追加要素が2つの要素の間に配置される)の両方を含むことを意図する。従って、「結合する(coupled to)」及び「結合する(coupled with)」という用語は、同義語として使用される。
【0027】
文脈が反対を指示しない限り、本明細書で規定される全ての範囲は、その終点を含むものと解釈されるべきであり、オープンエンドの範囲(open-ended renges)は、商業的に実用的な値を含むものと解釈されるべきである。同様に、文脈が反対を示さない限り、全ての値のリストは、その間の値を含むものと考えるべきである。
【0028】
本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内にある個々の値を個別に参照するための簡略化された方法としての役割を果たすことを意図している。本明細書に別で示されていない限り、個々の値は、本明細書に個別に列挙されているかのように明細書に組み込まれる。本明細書で説明される全ての方法は、本明細書に別の指示がない限り、或いは文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行できる。本明細書で特定の実施形態に関して提供される任意の及び全ての例、或いは例示的な言語(例えば、「~等(such as)」)の使用は、単に本発明をより容易に理解することを意図しており、他の方法でクレームされた本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書のいかなる言語も、本発明の実施に不可欠なクレームされていない要素を示すものと解されるべきではない。
【0029】
本明細書に開示された本発明の代替要素又は実施形態のグループ化は、限定して解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、又はグループの他のメンバー若しくは本明細書に見られる他の要素との任意の組み合わせで参照し、且つクレームできる。グループの1つ以上のメンバーは、利便性及び/又は特許性の理由から、グループに包含さるか、或いはグループから削除できる。そのような包含又は削除が起きた場合、本明細書は、ここでは、変更されたグループを含むとみなされ、この結果として、添付されたクレームで使用される全てのマーカッシュグループの記載を満たすことになる。
【0030】
ポリ塩化ビニルプラスチゲル、ニトロセルロース、及び極性の不揮発性可塑剤と親和性を有するその他ポリマーをベースにした造形用材料を製造することが知られている。このような材料は、高い可塑性を特徴とする。そのため、これらの材料は容易に造形され、このようにして得られた形態を保持する。低剪断応力では流動しないため、得られた物品の形状は、完全に硬化するまで保持できる。
【0031】
逆に、従来のプラスチゾルは、ゲル化温度まで加熱するとゲル化して固まり、系の均質性を損なうことなく、その体積全体において流動性を失う。しかしながら、中~低極性の液体は、これらのポリマーとの親和性が高い。それゆえに、このような中~低極性の液体を用いて可塑化を試みると、可塑剤の表面への望ましくない移行(即ち、滲出)が生じる。
【0032】
いくつかのポリマーは、中~高極性の有機液体に対して高い親和性を有する。Pearce E.M.ら、Contemporary Topics in Polymer Science、Vol.2、Plenum Press、New York、1977年、271ページには、ドラッグデリバリーのためのポリカプロラクトンコポリマーの使用が説明されている。本発明者らは、意外にも、特定の種類のポリマー(親液性ポリアミド、及び親液性複合ポリエステルポリマー(例えば、カプロラクトン)等)と、中~低極性の物質(例えば、精油等の揮発性の芳香性物質)とを組み合わせることで、極性可塑剤(例えば、フタル酸エステル)の添加を必要とせずに、安定したプラスチゾルを形成できることを見出した。このような材料は、有利なことに、PVC及びその他のポリマーをベースにした従来のプラスチゾルの固有の欠点を有さない。このような親液性ポリアミド及び親液性複合ポリエステルポリマーを選択して、非毒性で生分解性の材料を提供できる。好ましい実施形態では、親液性複合ポリエステルポリマーは、ポリカプロラクトンである。また、得られる複合プラスチゾルは、予備的な熱軟化を必要とし、且つ、薄い造形品を製造できないという、ブロックポリカプロラクトンをベースにした従来の成形用材料の欠点を有さない。親液性ポリアミド又は親液性複合ポリエステルポリマー(ポリカプロラクトン等)粉末、可塑剤、及び適切なゲル化剤を混合することによって得られる組成物は、成形、造形、押出、スタンプが可能であり、完全に硬化するまでその形状を保持する自己保持型の塊である。
【0033】
本発明概念の組成物は、このようなプラスチゾルを含み、且つ、任意で添加剤を含むことができる。プラスチゾルの必須成分は、適切なポリマー(親液性ポリアミド及び/又は親液性複合ポリエステルポリマー(例えば、ポリカプロラクトン)等)と、低~中極性を有する1つ以上の物質(好ましくは1つ以上の精油)である。適切な精油は、天然材料(例えば、植物の花、根、茎、及び/又は種子部分)からの、揮発性物質の蒸留及び/又は有機可溶性化合物の抽出によって調製できる。本発明概念の実施形態は、そのようなプラスチゾルから製造されたプラスチック、及びそのようなプラスチックを用いて製造された物品を更に含む。
【0034】
本発明概念のプラスチゾル及びプラスチックの製造は、1つ以上の加熱工程を含むことができる。例えば、本発明概念のプラスチゾルは、加熱されるとゲル及び/又は硬質プラスチックを形成できる。それゆえに、好ましい実施形態では、混合によって生成される熱の少なくとも一部を除去するために、プラスチゾル配合物(plastisol formulation)の混合工程中に温度が抑制される。これにより、成分が十分に混合される前のプラスチゾルの早すぎるゲル化及び/又は抑制されないゲル化を避けることができる。ポリカプロラクトンを使用する場合、40℃~50℃で予備ゲル化が始まり、添加された精油がポリマーに強く吸収される。これは、粘度の上昇によって示される。その結果、混合物はゲル化し、流動性が完全に失われる。
【0035】
ポリマー成分を融点を超える温度に更に加熱すると、その体積全体に成分が均一に分布し、且つ、最適な機械的特性を有する均質なプラスチック体が形成される。更に加熱すると、材料はゲルの可塑性を失い、プラスチックの強度及び高度を持つようになる。
【0036】
最適な特性を提供するために、本発明概念の組成物は、粘度を下げる希釈剤、並びに増粘剤、顔料及び保臭剤等の様々な添加剤を含むことができる。
【0037】
ゲル化の前に形状を保持できる製品(いくつかの成形プロセスでは望ましい場合がある)を得るためには、プラスチゾル混合物に増粘剤及び/又はチキソトロピー添加剤を材料組成物に含ませることが必要になることがある。適切な増粘剤/チキソトロピー添加剤としては、脂肪酸と多価金属との塩が挙げられる(ただし、これらに限定されない)。具体的な例としては、ジステアリン酸アルミニウム(Ferro社から市販されている)、ノラック(Norac)(LUMIRA(登録商標)等のエアロゲル粉末、Cabot Corporationから市販されている)、Cab-O-Sil(Cabot社)やAerosil(Degussa社)等のコロイド状シリカ、疎水化ベントナイト、脂肪酸エステル等が挙げられる。このような添加剤は、ポリマーの2~6重量%の量で導入することができる。
【0038】
本発明者らは、過剰量(例えば、6重量%超)のこのような増粘剤又はチキソトロピー添加剤が、硬化後に得られるプラスチック材料の機械的特性を劣化させることを見出した。チキソトロピー添加剤の添加は、十分な剪断力を提供する混合装置(例えば、ディソルバー、ビーズミル等)を用いて、可塑剤(即ち、揮発性臭気付与剤)とそのような添加剤とを予備混合することによって実施できる。透明な材料を製造するためには、ポリアクリル酸(例えば、Noveon社のCarbopol)、又はスルホン酸カルシウム(例えばNoveon社から入手可能なIrcogel 900)等の透明性を阻害しないチキソトロピー添加剤を使用できる。
【0039】
香り付きの物品が望まれる場合、本発明概念の組成物は、1つ以上のにおい固定剤を含むことができる。適切なにおい固定剤としては、植物性レジノイド(例えば、オークモスレジノイド、ピスタチオレジノイド等)、大環状ムスク(例えば、大環状ケトン及び/又はラクトン)、ニトロムスク(例えば、ニトロベンゼン化合物)、アンブロキシド、グルコシドポリオール(例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化メチルグルコシド)、及び同様の化合物が挙げられる。
【0040】
混合及び懸濁を助けるために、本発明概念のプラスチゾルは、米国特許第3,632,669号に教示されているように、分散重合によって調製された、噴霧乾燥した親液性ポリアミド及び/又は親液性複合ポリエステルポリマー(ポリカプロラクトン等)の微粉末をベースとして調製できる。プラスチゾルの安定性、並びに流動性は、ポリマーの平均粒径及び粒度分布によって決定されることを理解すべきである。プラスチゾルの最適な特性は、十分に大きな平均直径を有するポリマー粒子を有するこのような粉末を使用して得られる。適切な平均直径は、約0.05~約1.5μm、好ましくは0.2~1μmの範囲である。このようなポリマーの粒子は、好ましくは、球形で、広い粒度分布を有し、高分散相を含まないものである。本発明者らは、非常に小さいサイズのポリマー粒子が溶解して、望ましくない粘度の上昇をもたらすことを見出した。
【0041】
本発明者らは、いくつかの精油の製品は、最終的なプラスチック製品が望ましい機能特性を有することができるが、プラスチゾルの形成中にポリマー粒子が膨張し過ぎることがあることを見出した。このような場合には、ポリマーに対する熱力学的親和性の低い希釈剤(ジプロピレングリコール、トリアセチン、グリセロール、クエン酸、アジピン酸及び/又は安息香酸エステル等)を添加して、構造的可塑化を高めることができる。
【0042】
次に、本発明概念のプラスチゾルは、5~75重量%の親液性ポリアミド及び/又は親液性複合ポリエステルポリマー(ポリカプロラクトン等)と、5重量%~85重量%の中~低極性の可塑化物質、好ましくは揮発性芳香剤(例えば、精油)とを有することができる。更に、このようなプラスチゾルは、0重量%~20重量%の不揮発性希釈剤及び/又は0重量%~10重量%のチキソトロピー安定剤(thixotropic stabilizer)を含むことができる。本発明概念のプラスチゾルは、0重量%~75重量%の1種以上の無機フィラー、及び/又は0重量%~70重量%(好ましくは5重量%~70重量%)の有機フィラー(エチレン-酢酸ビニル共重合体等)を含むことができる。また、本発明概念のプラスチゾルは、0重量%~5重量%の顔料、及び0重量%~20重量%のその他添加剤(におい固定剤、構造用添加剤、艶消し用添加剤等)を含むことができる。
【0043】
上述したように、無機フィラー及び有機フィラーを、本発明概念のプラスチゾルに組み込むことができる。フィラーとしては、例えば、カオリン、チョーク、タルク、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素、粉末ベントナイト、木粉、ジュート繊維、及び/又はポリマー粉末を使用できる。本発明概念のプラスチゾルにおけるフィラーとしては、例えば、高い置換度を有するエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)をベースにしたポリマー粉末(USI Corporationから製品名Evatheneとして入手可能)の出品物を使用できる。いくつかの実施形態では、最終製品の導電性を変更するために、導電性フィラー(例えば、金属、グラファイト又はカーボン)を利用できる。十分にきれいな細部を示す均質な材料を得るためには、100μm未満、最も好ましくは50μm未満のサイズの繊維又は粉末を使用することが好ましい。
【0044】
軽量又は中空のフィラーも使用できる。軽量のフィラーとしては、例えば、軽石のような中空の微小球、中空のガラス及びセラミック微小球、並びに中空のポリマー微小球を使用できる。好適な例としては、3M又はOsthoff Petraschから市販されているフライアッシュ、セノスフェア、及び/又は3M又はOsthoff Petraschから市販されている人工微小球が挙げられる。
【0045】
上述したように、本発明概念のプラスチゾルは、所望の色を提供するために顔料を組み込むことができる。着色顔料としては、不溶性ポリマー顔料、有機顔料、及び/又は無機粉末顔料を使用することができ、特別な効果又は珍しい効果(例えば、蛍光、燐光、回折効果等)を提供する顔料も含まれる。耐光性顔料ワニスが好ましい。
【0046】
効果顔料としては、Eckart GmbH & Co.KG.KGから市販されている「metallic」等のフレーク顔料、EMD(Merck KGaA)、BASF、CQVから市販されている真珠光沢顔料、ポリエステルグリッター、蛍光顔料、蓄光顔料、サーモインジケーター顔料等を用いることができる。また、様々な色の材料をランダム又はパターン化して添加して、マーブル模様及びモザイク模様(ミルフィオリ)等の装飾模様を製造できる。
【0047】
上記したように、香り又はにおいが持続する固体プラスチック材料が望まれる場合、中~低極性可塑剤は、精油であるか、或いはそれを含んでよい。精油は、天然資源から調製された揮発性の疎水性物質であり、典型的には強い香りを有する。精油は、植物又はその他の製品から油性物質を直接蒸留するか、或いは様々な溶剤を用いて植物材料やその他の天然材料から香りのある化合物を抽出することによって調製できる。このような精油は、そのままではすぐに蒸発及び拡散してしまうため、常に新しくしないとすぐに失われてしまう。驚くべきことに、本発明者らは、精油を本発明概念の組成物の可塑化剤として利用すると、得られるプラスチック固体が、使用した精油の香りを長時間維持できることを見出した。典型的には、このようにして調製されたプラスチック固体は、補充及び/又は再生の必要なしに、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月、1年、2年、5年、又は5年超にわたって、精油の香りを保持することができる。いくつかの実施形態では、精油は、抽出又は蒸留された状態で使用できる。他の実施形態では、精油は、中~低極性の溶剤で希釈できる。いくつかの実施形態では、より複雑な香り又は香りの組み合わせを再現するために、香り付きプラスチック固体の配合に2種以上の精油を使用できる。本発明概念のいくつかの実施形態では、プラスチゾルに香味を提供する1つ以上の精油を提供でき、これは香りの代わりに加えるか、或いは香りに加えて使用できる。
【0048】
本発明概念の好ましい実施形態では、におい及び/又は香味を付与する精油を組み込むが、低~中極性の溶剤又はその内の溶液として提供できる他の化合物を、望ましい特性を提供するために本発明概念のプラスチゾルに組み込むことができることを理解すべきである。その他の中~低極性可塑剤は、例えば、消臭剤化合物、昆虫/害虫忌避剤化合物、防汚剤化合物、防腐剤化合物、抗ウイルス剤化合物、及び/又は抗生物質化合物を組み込むことができる。このような可塑剤の特性は、製造されたプラスチゾルに付与される。従って、本発明概念のプラスチゾルは、衣類、作業台(work surfaces)、ヘルスケア、バイオメディカルデバイス、及び海上運送に至る幅広い用途がある。
【0049】
本発明概念のプラスチゾルは、固体、繊維、粉末、粘性プラスチゾル、及び/又はその他のポリマー材料に利用される液体分散物又は添加物等の様々な形態で提供できる。このように、本発明概念のプラスチゾルは、スプレー、押出、カレンダー、プレス造形、プレス、スタンピング、及び/又は(例えば、型への)ブロー(例えば、型への)を含む、様々な方法を用いて加工又は形作ることができる。
【0050】
それゆえに、本発明概念のプラスチゾルは、様々な形態又は幾何学的形状を提供できる。例えば、このようなプラスチゾルは、成形用クレイ、顆粒、ブランク等の造形品、及び/又は完成品として提供できる。また、本発明概念のプラスチゾルは、糸又は繊維として押出、或いはフィルム又はシートとしてキャストすることができる。同様に、本発明概念のプラスチゾルは、コーティング又はインクとして、例えば、対象物上、繊維又は織物上、及び/又は多孔質材料上の芳香性プラスチゾルフィルムのコーティングとして適用できる。
【0051】
プラスチゾルがキャストされる形態及び低~中極性可塑剤の含有量に応じて、本発明概念のプラスチゾルを使用して、多種多様な機能性物品を製造できる。精油を可塑剤として組み込むことにより、このような物品への香り及び/又は香味の組み込みを提供する。香り及び/又は香味を組み込むことができるキャスト品又は造形品の例としては、装飾品、子供のおもちゃ、ペットのおもちゃ、狩猟や釣りのルアー、香りの送達システム(scent delivery systems)等が挙げられる。このような特性は、本発明概念のプラスチゾルインクの実施形態(物品の表面に適用し、続いて硬化させることができる)によって同様に提供でき、いくつかの実施形態では、3D印刷で利用される材料に組み込むことができる。
【0052】
本発明概念のプラスチゾルに使用される可塑剤に抗菌性化合物を組み込むことにより、様々な家庭用品も抗菌性及び/又は抗ウイルス性を付与できる。繊維に形成される場合、そのようなプラスチゾルは、医療用途に適した防護服、ドレープ及び包帯として布地に織ることができる。キャスト又は造形される場合、そのようなプラスチゾルは、抗菌性表面(例えば、おむつ交換台、まな板等)、又は医療機器(例えば、スプリント、装具、手術器具等)を提供するために使用できる。同様に、このような抗菌性表面は、抗菌剤及び/又は耐ウイルス剤を組み込み、フィルム、スプレー、又はインクとして提供された本発明概念のプラスチゾルを適用し、続いて硬化させることによって生成できる。
【0053】
本発明概念のプラスチゾルの製造に使用される可塑剤への海洋生物の付着を防止する防汚化合物又はその他の化合物を組み込むことにより、海洋生物の望ましくない付着及び成長を防止するために海洋船舶の露出面に適用することができる、防汚コーティング(例えば、プラスチゾルの微粒子の懸濁物による)、フィルム、及びシートを提供できる。同様に、害虫忌避性の精油又は化合物を用いてプラスチゾルを製造でき、これを繊維として形成すると、屋外で着用する衣類及び同様の物品を提供するために使用できる。また、このような害虫忌避性は、このようなプラスチゾルをスプレー又はインクとして衣料品に適用し、その後硬化させることによっても提供できる。
【0054】
図1は、形成(例えば、造形、押出、カレンダー等)に適した本発明概念であるプラスチゾルを製造するための典型的なプロセスを示す。最初に、親液性ポリアミド樹脂及び/又は親液性複合ポリエステルポリマー樹脂(好ましくは粒子形状)と、低~中極性可塑剤(精油等)の一部とを、冷却されたミキサー又はボールミルでブレンドして、可塑剤中のポリマー樹脂の懸濁物を形成する。任意で、この段階で安定剤を添加できる。これらの成分がブレンドされて均質になったら、品質管理試験のために一部を採取できる。最初の混合に続いて、フィラー及びその他の乾燥成分等の追加の材料をブレンドし、続いて、ゲル化剤、顔料等の他の成分を添加できる。次いで、残りの可塑剤をブレンドして、選択した形成プロセスに十分な流動性のあるプラスチゾルを形成できる。
【0055】
一旦形成されると、このようなプラスチゾルは、すぐに利用することも、或いは将来的な使用のために保存することもできる。ゲル化を防止又は低減するために、保存は周囲温度、又はそれ以下の温度で行うべきである。最初のポリマー原料の粒子サイズ及びサイズ分布が貯蔵安定性に影響を与える可能性があり、非常に大きな粒子はすぐに沈殿し、非常に小さな粒子は溶媒和しやすいことを理解すべきである。いくつかの実施形態(印刷インク、成形用クレイ等)においては、プラスチゾルは消費者に提供される最終製品とすることができる。安定したプラスチック固体を形成するために加熱は(例えば、印刷された布地又は他の表面の熱硬化を通して)消費者が行うことができる。
【0056】
図2は、本発明概念のプラスチック固体製品を形成するための典型的なプロセスを示す。
図1に示すように製造されたプラスチゾルは、形成のための十分な流動性を有する。材料は、造形、キャスト、ブロー、押し出し、及び/又はカレンダーを含む任意の適切なプロセスによって形成できる。形成後、材料はそのゲル化温度まで加熱され、その結果、柔らかい及び/又は柔軟な中間製品が形成される。いくつかの実施形態では、この特性を利用して、中間製品を型から最小限の損傷で取り出すことができる。次いで、中間製品を、親液性ポリアミド樹脂及び/又は親液性複合ポリエステルポリマー樹脂の少なくとも一部が、低~中極性可塑剤の少なくとも一部に溶解する温度まで加熱し、次いで冷却して、安定した固体の最終製品を形成する。驚くべきことに、本発明概念の組成物は、最終的なプラスチック製品の表面に可塑剤を「滲出」又は放出せず、長時間にわたって可塑剤の特性(例えば、香り、香味、抗菌性等)を示すことを本発明者らは見出した。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明概念のプラスチゾルをそのゲル化温度以上に昇温することによって得られるゲル状製品は、最終製品であるか、或いは消費者による追加の処理(例えば、追加の切断及び/又は成形)のために購入される中間製品とすることができる。他の実施形態では、本発明概念のプラスチゾルから調製された固体の比較的硬いプラスチック物品又は材料を最終製品とすることができる。
【実施例】
【0058】
<実施例>
本発明の適切なポリカプロラクトン粒子は、米国特許第3,632,669号に開示されている方法に従って製造できる。得られる噴霧乾燥された粉末は、フィラー及び顔料と混合され、可塑化芳香性物質(例えば、精油)の一部が添加され、次いで、チキソトロピーゲル化剤と事前に混合した残りの芳香性物質を添加する。得られた塊は、ブロックやシートに成形できる。
【0059】
プラスチゾルの成分を分散するためには、十分な剪断力が必要である。同時に、サイクル継続時間と剪断速度を抑制し、ゲル化反応を早期に引き起こす可能性がある過剰な熱の発生を防ぐ必要がある。温度を20℃以下に維持することが望ましい(例えば、冷却ジャケットの使用、短い混合サイクル、及び/又は混合速度の制限等)。剪断速度の増加に伴い粘度が低下した組成物は、より高い速度で効率的に調製できる。しかしながら、これにより、サイクルタイムに大きな制約が生じる可能性がある。この問題に対処するために、分散のために非常に高い剪断力を必要とするチキソトロピー性物質及び顔料を、完成したペーストの形態で別々に添加できる。
【0060】
プラネタリーミキサーを使用して、高粘度及び中粘度の均質なプラスチゾルを調製できる。プラネタリーミキサー(Charles Ross & Sonから入手可能なHV Blades等)を使用して、600万センチポアズ以下の粘度を有するプラスチゾルを提供できる。このようなプラネタリーミキサーは、溶剤再生部と、密閉型モーターと、蒸発制御手段とを備えることができる。
【0061】
ミキサーには、典型的には、全量の60%~80%の可塑剤(例えば、中~低極性の芳香剤)が添加される。冷却を開始し(例えば、ミキサーの冷却ジャケットを通る水流を開始することによって)、撹拌機をオンにした後、プラスチック又は樹脂を迅速に入れて分散させる。必要に応じて安定剤を添加できる。組成物は、入れた材料が均質化されるまで撹拌される。この時点で、品質管理のために試料を採取することが可能である。いくつかの実施形態では、次いで、追加の成分(フィラー及び/又はその他の乾燥成分等)を添加できる。フィラーを入れた後、ゲル化剤の分散物及び顔料ペーストを添加できる。この後、追加の可塑剤(例えば、中~低極性芳香剤、希釈剤等)を入れることができる。
【0062】
上記したように、得られたプラスチゾルは、成形、スタンピング、及び/又は造形による製造品のための有用なブリケット又はシートに、押出、粉砕、カレンダーによって加工できる。
【0063】
製造された物品は、プラスチック又は樹脂(例えば、親液性ポリアミド又は親液性複合ポリエステル)と、可塑剤との溶媒和によって硬化され、プラスゾルを形成する。これは加熱によって行うことができる。この目的のために、対流加熱、放射加熱(例えば、赤外線又はIR加熱)、及び/又は加熱された液体への浸漬等の様々な加熱方法を用いることができる。IR照射は、熱風の循環中及び/又は高温の液体への浸漬中に発生する可能性がある揮発性物質の放出を低減又は防止するので好ましい。
【0064】
<配合物(formulation)>
(殺菌性の揮発性物質をベースにした成形用の塊)
・ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)粉末 - 20重量%
・エアロゲル粉末(LUMIRA(登録商標)、Cabot Corporation) - 10重量%
・テルピネン-4-オール - 30重量%
・カルバクロール - 20重量%
・パチュロール(pachurol) - 10重量%
・オークモスの樹脂酸塩 - 10重量%
【0065】
(強いにおいを有する持続性香料をベースにした成形用の塊)
・PCL粉末 - 60重量%
・エアロゲル粉末(LUMIRA(登録商標)、Cabot Corporation) - 4重量%
・l-ムスコン(高砂香料工業株式会社) - 30重量%
・テサロン(高砂香料工業株式会社) - 10重量%
【0066】
(染色された成形用の塊)
・PCL粉末 - 20重量%
・EVA粉末(Evathene、USI Corporation) - 25重量%
・エアロゲル粉末(LUMIRA(登録商標)、Cabot Corporation) - 4重量%
・スルホン酸カルシウム(Noveon社のIrcogel 900) - 1
・顔料ラバレッド(Merck KGaA社) - 5重量%
・テサロン(高砂香料工業株式会社) - 45重量%
【0067】
(高揮発性の非持続性芳香性物質をベースにした成形用の塊)
・PCL粉末 - 30重量%
・EVA粉末(Evathene、USI Corporation) - 10重量%
・ジステアリン酸アルミニウム - 4重量%
・オークモスの樹脂酸塩 -15重量%
・プロポキシル化メチルグルコシド - 1重量%
・オレンジの花の精油 - 40重量%。
【0068】
(「カプチーノ」のにおいを有する、染色された成形用の塊)
・PCL粉末 - 75重量%
・エアロゲル粉末(LUMIRA(登録商標)、Cabot Corporation) - 1重量%
・コーヒー精油(蒸気抽出) - 5重量%
・シナモン精油(蒸気抽出) - 0.5重量%
・グリセロール - 2.5重量%
・オークモスラバー 6重量%
・顔料マースブラウン - 10重量%
【0069】
(親液性複合ポリエステルポリマーとエステル終端化ポリアミドとの混合物をベースにした成形用の塊)
・PCL粉末 - 25重量%
・ポリアミド UNICLEAR(商標) 100 粉末(Arizona Chemical Company) - 25重量%
・ジステアリン酸アルミニウム - 4重量%
・オークモスの樹脂酸塩 - 5重量%
・プロポキシル化メチルグルコシド - 1重量%
・ネロリエッセンシャル(ポメラニアンの花の油) - 40重量%
【0070】
本明細書の発明概念から逸脱することなく、既に説明したもの以外にも多くの変更が可能であることは当業者に明らかである。従って、本発明の主題は、添付されたクレームの範囲を除いて制限されるものではない。更に、明細書及びクレームの両方を解釈する際には、全ての用語は、文脈と一致する可能な限り広い方法で解釈されるべきである。特に、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」という用語は、排他的な方法で要素、成分又は工程を参照していると解釈すべきであり、参照されている要素、成分又は工程が、明示的に参照されていない他の要素、成分又は工程と存在するか、或いは利用されるか、或いは組み合わされる可能性があることを示している。本明細書のクレームにおいて、A、B、C・・・及びNからなる群から選択されるものの少なくとも1つに言及している場合、本文はその群から1つの要素のみを必要としていると解釈すべきであり、A+NやB+N等を必要としているわけではない。