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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】物体検知装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/02 20060101AFI20230418BHJP
   G01V 8/20 20060101ALI20230418BHJP
   G01S 17/08 20060101ALI20230418BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B25J19/02
G01V8/20 Q
G01S17/08
B25J19/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018087932
(22)【出願日】2018-05-01
(65)【公開番号】P2019193954
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501397920
【氏名又は名称】旭光電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136205
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康
(74)【代理人】
【識別番号】100127166
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 政憲
(72)【発明者】
【氏名】和田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】樫 俊太郎
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-226064(JP,A)
【文献】特開2011-209077(JP,A)
【文献】特表平10-510479(JP,A)
【文献】特開昭59-081090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/416
G01V 8/20
G01S 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象物体に取り付け、動作中の前記取付対象物体のまわりに位置する物体を検知する物体検知装置であって、
検知光を投光する検知光投光部、
前記検知光投光部に対応して配置され、前記検知光を受光する検知光受光部であって、前記検知光を受光すると検知情報を送信する検知光受光部、
を有する複数の物体検知センサ部、
センサ設定処理において、動作中の前記取付対象物体に取り付けられた前記物体検知センサ部から取得した検知情報である設定検知情報、及び、前記設定検知情報を取得した時間である設定検知情報取得時間を用いて、物体検知処理において、動作中の前記取付対象物体に取り付けられた前記物体検知センサ部から前記検知情報を取得したとしても、取得した前記検知情報を無効とする検知調整時間を判断するセンサ設定制御部、
を有する物体検知装置。
【請求項2】
請求項1に係る物体検知装置において、
前記センサ設定制御部は、
前記設定検知情報を送信した前記検知光受光部と前記設定検知情報取得時間とを関連づけて検知調整時間情報に記述し、前記検知調整時間情報を所定の記憶部に記憶保持すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項3】
請求項1、または、請求項2に係る物体検知装置において、
前記センサ設定制御部は、
前記センサ設定処理において、前記設定検知情報を用いて検知した前記物体までの距離を判断できる場合、前記距離が、所定の設定距離以下、または、前記設定距離未満であれば、前記設定検知情報取得時間を、前記検知調整時間と判断すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項4】
請求項3に係る物体検知装置において、さらに、
前記物体検知処理において、前記検知調整時間情報を用いて、動作中の前記取付対象物体のまわりの前記物体を、前記物体検知センサ部を介して検知する物体検知制御部、
を有し、
前記物体検知制御部は、
前記物体検知処理において、前記検知調整時間内に前記検知情報を取得し、取得した前記検知情報を用いて前記物体までの距離を判断できる場合、前記距離が、前記検知情報の取得時間に対応する前記検知調整時間に取得した前記設定検知情報の距離未満であれば、前記物体検知処理において取得した前記検知情報を有効と判断すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項5】
請求項2に係る物体検知装置において、
前記センサ設定制御部は、
前記センサ設定処理において、前記設定検知情報を用いて前記検知光受光部が所定の光量以上の光量を受光したと判断できる場合、前記設定検知情報取得時間を、前記検知調整時間と判断すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項6】
請求項5に係る物体検知装置において、さらに、
前記物体検知処理において、前記検知調整時間情報を用いて、動作中の前記取付対象物体のまわりの前記物体を、前記物体検知センサ部を介して検知する物体検知制御部、
を有し、
前記物体検知制御部は、
前記物体検知処理において、前記検知調整時間内に前記検知情報を取得し、取得した前記検知情報を用いて、前記検知光受光部が所定の光量以上の光量を受光したと判断できる場合、前記物体検知処理において受信した前記検知情報を有効と判断すること、
を特徴とする物体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知装置に関し、特に、物体検知処理において無効とすべき検知情報を容易に判断できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の物体検知装置について、図12に示す物体検知装置100Pを用いて説明する。物体検出装置100Pは、複数の光センサユニットSU及び1つの中央制御部115Pを有している。 各光センサユニットSUは、複数の光センサ部111P及び1つのユニット制御部113Pを有している。各光センサユニットSUでは、複数の光センサ部111Pと1つのユニット制御部113Pとが、光センサ用接続線L111を介してスター型に接続されている。1つのグループラインGLに属するユニット制御部113Pは、ユニット制御部用接続線L113を介してカスケード型に接続される。カスケード型に接続されるユニット制御部113Pの一つは、ユニット制御部用接続線L113を介して中央制御部115Pに接続される。このように、フレキシブル性を有するユニット制御部用接続線L113を用いることによって、設置場所の形状に合わせて、自由に光センサユニットSUを配置することができる。また、設置場所での検知範囲を自由に設定することができる。よって、検知範囲を自由に設定できる、空間での物体検出が可能となる。
【0003】
物体検出装置100Pの使用先である産業用ロボット50は、7軸の可動軸を有するロボットである。産業用ロボット50は、アームAM1~AM7、可動回転ジョイントJ1~J13、土台B1、及びハンドH1を有している。アームAM1~AM7、ハンドH1、土台B1の各外周面に物体検出装置100Pが配置されている。
【0004】
アームAM1~AM7、土台B1、及びハンドH1には、それぞれ1つのユニット制御部及び複数の光センサ部111が配置されている。図12に示すように、光センサ部111は、アームAM1~AM7、ハンドH1、土台B1等、設置場所の形状にかかわらず、いずれの場所にも配置することができる。このように、物体検出装置100Pを設置対象である装置の外表面に容易に光センサ部111Pを配置することができるので、産業用ロボットの周辺に人等の物体を検出したときに、ロボットを緊急停止させることが可能なる。つまり、設置対象装置、例えば産業用ロボットの安全性を高めることができる。
【0005】
また、光センサ用接続線L111の長さを調整することにより、どのような位置にでも光センサ部111Pを配置することができる。よって、角柱状のアームAM1~AM7、円柱状の土台B1等、設置場所の形状にかかわらず、全周囲に光センサ部111を配置することができる。これにより、ロボットの全周縁で人等の物体を検出することができるので、設置対象装置の安全性を高めることができる。
【0006】
さらに、ハンドH1のような複雑な形状であっても、自由に光センサ部111Pを配置することができる。よって、光センサ部111を配置するにあたって死角の発生を防止できるので、設置対象装置の安全性を高めることができる。
【0007】
さらに、可動回転ジョイントJ1~J13のように、光センサ部111Pを配置するアームAM1~AM7等の間に障害物があったとしても、ユニット制御部用接続線L113の長さを調整することにより、障害物を回避しながら、ユニット制御部113P同士を接続することができる。このように、物体検知装置100Pでは、配置する装置の形状にかかわらず、自由に配置することができる。
【0008】
物体検知装置100Pでは、どのような設置形状であっても、光センサ部111P及びユニット制御部113Pの数、配置位置、また、光センサ用接続線L111、ユニット制御部用接続線L113の長さを調整するだけで、容易に物体検知装置を配置することができる。また、物体検知装置100Pは、検知位置、検知範囲の変更、設置位置の変更、設置対象装置の形状の変更等、設置環境の変化にあわせて、光センサ部111P、ユニット制御部113Pの設置位置を変更したり、設置数を追加、減少させたりすることによって、容易に設置環境の変化に対応することができる(以上、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-83615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の物体検知装置100Pには、以下に示すような改善すべき点がある。物体検知装置100Pでは、産業用ロボット50において、光センサ部111Pが検知した対象物体までの距離が、予め定められた動作停止距離を下回った場合に、対象物が産業用ロボット50の近くに存在すると判断し、産業用ロボット50に対して動作を停止するよう指示する停止情報を送信する。
【0011】
一方、近年の産業用ロボットは、産業用ロボット50 に示すように、多関節を有し、複雑な動作をする。産業用ロボットの動作によっては、光センサ部111Pの近くに、アームAM1~AM7等、産業用ロボットRBTの一部が位置することもある。このとき、光センサ部111Pが産業用ロボットRBTの一部を対象物として検知してしまい、産業用ロボットとしては通常の動作であっても、物体検知装置100Pが、産業用ロボット50に対して動作停止情報を送信し、産業用ロボット50の動作を停止させてしまう、という改善すべき点がある。
【0012】
また、産業用ロボットの動作によっては、異なる光センサ部111Pが対向して位置し、一方の投光素子が投光した検知光を、他方の受光素子が受光してしまい、検知を正常に行えず、産業用ロボットとしては通常の動作であっても、物体検知装置100Pが、産業用ロボット50に対して動作停止情報を送信し、産業用ロボット50の動作を停止させてしまう、という改善すべき点がある。
【0013】
そこで、本発明は、物体検知処理において無効とする検知情報を、センサ設定処理において、事前に、自動的に判断することができる物体検知装置を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0015】
本発明に係る物体検知装置は、取付対象物体に取り付け、動作中の前記取付対象物体のまわりに位置する物体を検知する物体検知装置であって、検知光を投光する検知光投光部、前記検知光投光部に対応して配置され、前記検知光を受光する検知光受光部であって、前記検知光を受光すると検知情報を送信する検知光受光部、を有する複数の物体検知センサ部、センサ設定処理において、動作中の前記取付対象物体に取り付けられた前記物体検知センサ部から取得した検知情報である設定検知情報、及び、前記設定検知情報を取得した時間である設定検知情報取得時間を用いて、物体検知処理において、動作中の前記取付対象物体に取り付けられた前記物体検知センサ部から前記検知情報を取得したとしても、取得した前記検知情報を無効とする検知調整時間を判断するセンサ設定制御部、を有する。
【0016】
これにより、物体検知処理において無効とする検知情報を、センサ設定処理において、事前に、自動的に判断することができる。よって、取付対象物の動作中に、無効とすべき検知情報によって、取付対象物体の動作を制御すること、例えば、動作を停止することを容易に防止できる。
【0017】
本発明に係る物体検知装置では、前記センサ設定制御部は、前記設定検知情報を送信した前記検知光受光部と前記設定検知情報取得時間とを関連づけて検知調整時間情報に記述し、前記検知調整時間情報を所定の記憶部に記憶保持すること、を特徴とする。
【0018】
これにより、容易に検知調整時間情報を生成することができる。
【0019】
本発明に係る物体検知装置では、前記センサ設定制御部は、前記センサ設定処理において、前記設定検知情報を用いて検知した前記物体までの距離を判断できる場合、前記距離が、所定の設定距離以下、または、前記設定距離未満であれば、前記設定検知情報取得時間を、前記検知調整時間と判断すること、を特徴とする。
【0020】
これにより、センサ設定処理において検知した物体までの距離を用いて、容易に、物体検知処理において無効とする検知情報を判断することができる。
【0021】
本発明に係る物体検知装置では、さらに、前記物体検知処理において、前記検知調整時間情報を用いて、動作中の前記取付対象物体のまわりの前記物体を、前記物体検知センサ部を介して検知する物体検知制御部、を有し、前記物体検知制御部は、前記物体検知処理において、前記検知調整時間内に前記検知情報を取得し、取得した前記検知情報を用いて前記物体までの距離を判断できる場合、前記距離が、前記検知情報の取得時間に対応する前記検知調整時間に取得した前記設定検知情報の距離以下、または、未満であれば、前記物体検知処理において取得した前記検知情報を有効と判断すること、を特徴とする。
【0022】
これにより、センサ設定処理において検知した物体までの距離を用いて無効と判断した検知調整時間における検知情報であっても、物体検知処理における検知情報によって、有効にできる。よって、物体検知処理における物体の検知に応じて、取付対象物体の動作を制御できる。
【0023】
本発明に係る物体検知装置では、前記センサ設定制御部は、前記センサ設定処理において、前記設定検知情報を用いて前記検知光受光部が所定の光量以上の光量の受光したと判断できる場合、前記設定検知情報取得時間を、前記検知調整時間と判断すること、を特徴とする。
【0024】
これにより、センサ設定処理において判断した検知光受光部が所定の光量以上の光量の受光したことを用いて、容易に、物体検知処理において無効とする検知情報を判断することができる。
【0025】
本発明に係る物体検知装置では、さらに、前記物体検知処理において、前記検知調整時間情報を用いて、動作中の前記取付対象物体のまわりの前記物体を、前記物体検知センサ部を介して検知する物体検知制御部、を有し、前記物体検知制御部は、前記物体検知処理において、前記検知調整時間内に前記検知情報を取得し、取得した前記検知情報を用いて、前記検知光受光部が所定の光量以上の光量の受光したと判断できる場合、前記距離が、所定の設定距離以下、または、前記設定距離未満であれば、前記物体検知処理において受信した前記検知情報を有効と判断すること、を特徴とする。
【0026】
これにより、センサ設定処理において判断した検知光受光部が所定の光量以上の光量の受光したことを用いて無効と判断した検知調整時間における検知情報であっても、物体検知処理における検知情報によって、有効にできる。よって、物体検知処理における物体の検知に応じて、取付対象物体の動作を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る物体検知装置の一実施例である物体検知装置100を産業用ロボットRBTに配置した状態を示す図である。
図2】物体検知装置100の構成を示す図である。
図3】物体検知センサ部113のハードウェア構成を示す図である。
図4】制御部117のハードウェア構成を示す図である。
図5】検知調整時間テーブルを示す図である。
図6】物体検知装置100のセンサ設定処理における動作を示すフローチャートである。
図7】物体検知装置100の物体検知処理における動作を示すフローチャートである。
図8】本発明に係る物体検知装置の一実施例である物体検知装置200を産業用ロボットRBTに配置した状態を示す図である。
図9】検知調整時間テーブルを示す図である。
図10】物体検知装置200のセンサ設定処理における動作を示すフローチャートである。
図11】物体検知装置200の物体検知処理における動作を示すフローチャートである。
図12】従来の物体検知装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0029】
本発明に係る物体検知装置について、図1に示す物体検知装置100を例に説明する。物体検知装置100は、取付対象物である産業用ロボットRBTのまわりに物体が存在するか否かを検知し、物体の検知結果に基づき、産業用ロボットRBTの動作を制御するものである。
【0030】
第1 構成
1. 産業用ロボットRBT
物体検知装置100が配置される産業用ロボットRBTについて、図1を用いて説明する。産業用ロボットRBTの外表面に物体検知装置100が配置される。産業用ロボットRBTは、5軸の可動軸を有するロボットである。産業用ロボットRBTは、アームAM1~AM7、回転土台B、及びハンドHを有している。アームAM1~AM7は、それぞれ、一端にアームの長手方向を回転軸とする回転ジョイント、他端にアームの短手方向を回転軸とする回転ジョイントを有している。ハンドH1は、先端で対象物を挟持するための可動挟持部を有している。産業用ロボットRBTは、予め設定されて所定の動作を繰り返し実行する。なお、産業用ロボットRBTが繰り返し実行する単位動作を1シーケンスとする。
【0031】
2.物体検知装置100
図1に示すように、物体検知装置100は、複数の物体検知センサユニット111、制御部117、及び、接続ハーネス119を有している。物体検知センサユニット111は、アームAM1~AM7、回転土台B、及び、ハンドHの各外周面に沿って配置され、周りに存在する検知対象物体を検知する。なお、物体検知センサユニット111は、検知対象物体までの距離を計測することによって、検知対象物体を検知する。
【0032】
物体検知センサユニット111は、接続ハーネス119を介して制御部117に接続されている。また、制御部117は、産業用ロボットRBTの各回転ジョイントを動作させる動力源(図示せず)に接続されている。制御部117は、動力源の動作を制御することによって、アームAM1~AM7、回転土台B、及び、ハンドHの動作を制御する。
【0033】
物体検知装置100の構成について、図2を用いて説明する。物体検知装置100は、複数の物体検知センサユニット111、制御部117、及び、接続ハーネス119を有している。物体検知センサユニット111は、複数の物体検知センサ部113、及び、センサ配置柔軟部材115を有している。
【0034】
物体検知センサ部113は、所定の光を検知光として投光し、検知光の反射を受光することによって、物体までの距離を計測し、物体が存在するか否かを検知する。物体検知センサ部113のハードウェア構成を図3に示す。
【0035】
物体検知センサ部113は、投光素子113a、投光レンズ113b、受光素子113c、及び、センサ用通信回路113dを有している。投光素子113aは、所定の検知光、例えば近赤外線を投光する。投光レンズ113bは、投光素子113aが投光した検知光を所定の範囲(検知領域R113)に拡散する。受光素子113cは、投光素子113aが投光した検知光の物体による反射光を受光する。
【0036】
投光素子113aとしては、例えば近赤外LED(Light Emitting Diode)等を利用することができる。受光素子113cとしては、例えば、SPAD(Single Photon Avaranche Daiode)を用いることができる。
【0037】
SPADでは、検知光の反射光を受光すると、受光した反射光により自らに発生したキャリヤーをアバランシ増幅を用いて電気的パルスに変換して、その受光時間をTDC(Time to Digital Converter)により計測する。SPADは、所定の上限量と下限量との間の反射光を受光した場合、投光素子113aが検知光を投光した時間、及び、計測した反射光の受光時間を用いて、検知光の投光から反射光の受光までの時間である物体検知時間を算出し、検知情報としてセンサ用通信回路113dに送信する。
【0038】
一方、受光素子113cは、所定の上限量よりも多い量の検知光を受光した場合、オーバーフローした旨の検知情報を、また、検知光を受光できなかった場合も含め、予め定められた下限量よりも少ない量の検知光しか受光できなかった場合、物体を検知できなかった旨の検知情報を、それぞれ検知情報として送信する。なお、下限量は、物体までの距離を正確に算出するのに十分な光量(フォトン数)であるか否かによって決定される。
【0039】
なお、受光素子113cが設定範囲内の検知光を受光した場合は、検知光が何らかの物体に反射した反射光を受光した場合に対応する。また、受光素子113cが上限量よりも多い量の検知光を受光した場合は、対向する位置に存在する他の物体検知センサ部113の投光素子113aが投光した検知光を直接的に受光した場合に、つまり、2つの物体検知センサ部113が干渉状態にある場合に対応する。
【0040】
センサ用通信回路113dは、制御部117のセンサ制御用通信回路117gと接続され、物体検知センサ部113と制御部117とが通信できるようにする。なお、各物体検知センサ部113のセンサ用通信回路113dは、直接的に、つまり、パラレルに制御部117に接続される。
【0041】
このように、物体検知センサ部113は、物体までの距離を検知することによって、物体検知センサ部113を配置する産業用ロボットRBTから任意の設定距離内に侵入した物体や人を検知する。これにより、産業用ロボットRBTからの距離に基づき、産業用ロボットRBTの動作を制御できる
【0042】
図2に戻って、センサ配置柔軟部材115は、柔軟性を有する部材であって、取り付ける対象物の表面に沿って配置できる。センサ配置柔軟部材115を形成し得る素材としては、例えば、薄いゴムプレートを用いることができる。物体検知センサ部113は、所定の間隔でセンサ配置柔軟部材115に配置されている。センサ配置柔軟部材115には、所定の固定部材、接着剤、ネジ等、所定の固定手段によって、物体検知センサ部113が固定される。
【0043】
制御部117は、各物体検知センサ部113から、接続ハーネス119を介して検知情報を受信する。制御部117は、各物体検知センサユニット111の各物体検知センサ部113が有する投光素子113aに、所定のタイミングで検知光を投光するように制御し、また、受光素子113cから検知情報を取得する。
【0044】
制御部117のハードウェア構成について図4を用いて説明する。制御部117は、CPU117a、メモリ117b、計時回路117c、センサ制御用通信回路117g、及び、動作制御用通信回路117hを有している。
【0045】
CPU117aは、メモリ117bに記録されているオペレーティング・システム(OS)、センサ制御プログラム等その他のアプリケーションに基づいた処理を行う。メモリ117bは、CPU117aに対して作業領域を提供するとともに、オペレーティング・システム(OS)、センサ制御プログラム等その他のアプリケーションのプログラム、及び、検知調整時間テーブル(後述)、単位動作時間等、各種データを記録保持する。なお、単位動作時間とは、産業用ロボットRBTが単位動作を実行する際に要する時間をいう。具体的には、産業用ロボットRBTが1シーケンスの動作を実行する際に要する時間をいう。
【0046】
計時回路117cは、CPU117aの指示に基づき、時間の計測を開始し、また、計測を終了する。
【0047】
センサ制御用通信回路117gは、物体検知センサ部113のセンサ用通信回路113d(図3参照)と、接続ハーネス119(図2参照)を介して接続され、両者間での情報の送受信を行う。なお、センサ制御用通信回路117gは、物体検知センサ部113のそれぞれと、直接的に、つまり、パラレルに接続される。動作制御用通信回路117hは、物体検知センサユニット111による物体の存在検知に基づき、動作を制御する対象に接続され、両者間での情報の送受信を行う。
【0048】
図2に戻って、接続ハーネス119は、各物体検知センサ部113と制御部117とを直接的に接続する。つまり、接続ハーネス119は、各物体検知センサ部113を制御部117に対してパラレル接続するための接続線である。
【0049】
第2 検知調整時間テーブル
制御部117のメモリ117bに記憶、保持される検知調整時間テーブルについて、図5を用いて説明する。検知調整時間テーブルは、産業用ロボットRBTに設置した物体検知装置100が、産業用ロボットRBTの通常動作時に、動作停止距離(後述)内に物体を検知したとしても、無効な検知として、産業用ロボットRBTの動作を停止させないようにする検知調整時間が記述されているテーブルである。
【0050】
検知調整時間テーブルは、物体検知センサ部識別情報記述領域、受信時間記述領域、及び、検知調整時間開始終了情報記述領域を有している。物体検知センサ部識別情報記述領域には、物体検知センサ部を特定する識別情報が記述される。
【0051】
受信時間記述領域には、センサ設定処理(後述)において、設定検知情報(後述)を取得した時間が記述される。受信時間記述領域に記述された時間については、産業用ロボットRBTの通常動作時において、動作停止距離内に物体を検知したとしても、無効とする時間に対応する。なお、受信時間記述領域に記述される時間は、産業用ロボットRBTの単位動作の開始時からの経過時間が記述される。検知調整時間開始終了情報記述領域には、物体を検知した一連の時間の中で、最初の検知に対応する検知情報を受信した時間に「スタート」が、最後の検知に対応する検知情報を受信した時間に「エンド」が、それぞれ記述される。その他の検知情報に対しては、検知調整時間開始終了情報記述領域には、何も記述されない。
【0052】
例えば、図5の検知調整時間テーブルでは、物体検知センサ部識別情報が「1」の物体検知センサ部113において、産業用ロボットRBTの単位動作の開始時から「2021ms」を「スタート」として、「2101ms」を「エンド」とする検知調整時間に、産業用ロボットRBTの動作を停止させる距離である動作停止距離内に物体を検知したとしても、無効とすることが、記述されている。
【0053】
第3 センサ制御プログラムの動作
センサ制御プログラムに基づくCPU117aの動作について、以下において説明する。CPU117aは、センサ制御プログラムに基づき、物体検知処理、及び、センサ設定処理を実行する。物体検知処理は、産業用ロボットRBTの通常動作時に、産業用ロボットRBTの近くに物体が存在しないかを検知する処理である。一方、センサ設定処理は、産業用ロボットRBTを通常動作させる前のセンサ設定動作時に、産業用ロボットRBTの通常動作時において、物体を検知したとしても無効とする時間を判断するための処理である。
【0054】
なお、産業用ロボットRBTのセンサ動作設定時、つまり、CPU117aのセンサ設定処理実行時においては、物体を検知した際に産業用ロボットRBTの動作を停止させる必要がある距離である動作停止距離には、人をはじめ、産業用ロボットRBT以外のいかなる物体も存在しない状態を維持しておく。これにより、産業用ロボットRBTのセンサ動作設定時において実行されるセンサ設定処理においては、物体検知センサー部113は、動作停止距離内には物体を検知しないはずである。その際、物体を検知したとすれば、検知した物体は産業用ロボットRBTの一部を検知したと判断し、通常動作時においては、無効とする検知であると判断する。
【0055】
1.センサ設定処理
CPU117aが実行するセンサ制御プログラムに基づくセンサ設定処理について図6に示すフローチャートを用いて説明する。CPU117aは、センサ設定処理開始情報を取得し(S601)、産業用ロボットRBTから単位動作、つまり、1シーケンス分だけの動作を開始する設定動作開始情報を取得すると(S603)、センサ設定処理において、全ての物体検知センサ部113の投光素子113aに対して、検知光を投光するとともに、対応する受光素子113cに対して検知光の反射光の受光待機状態とする旨の設定検知開始情報SS1(図7参照)を、センサ制御用通信回路117g(図4参照)、センサ用通信回路113d(図3参照)を介して、一斉に、送信する(S605)。なお、センサ設定処理開始情報は、例えば、物体検知装置100の使用者が、所定のボタンを操作することによって、CPU117aに提供される。
【0056】
CPU117aは、設定動作開始情報を取得すると同時に、計時回路117cにおける時間の計測を開始する(S607)。
【0057】
物体検知センサ部113の投光素子113aは、設定検知開始情報を取得すると、検知光を投光するとともに、受光素子113cは、受光待機状態とする。投光素子113aは、所定の間隔での検知光の投光を繰り返す。受光素子113cは、自らに対応する投光素子113aが投光した検知光の反射光を受光する毎に、自身に対応する物体検知センサー部113を識別する物体検知センサー部識別情報と関連付けて、検知光の投光から反射光の受光までの時間である物体検知時間を内容とする検知情報を、一方、所定時間内に反射光を受光しなかった場合や、物体までの距離を正確に算出するのに不十分な光量(フォトン数)しか捕えられなかった場合には、測定可能圏内に物体を検知できない旨を内容とする検知情報を、センサ用通信回路113d(図3参照)、センサ制御用通信回路117g(図4参照)を介して、CPU117aに送信する。
【0058】
CPU117aは、検知情報を設定検知情報として受信すると(S609)、設定検知情報の内容が物体検知時間であるか否かを判断する(S611)。CPU117aは、設定検知情報の内容が物体検知時間であると判断すると、取得した設定検知情報の物体検知時間から、検知対象物体までの距離を算出する(S613)。検知対象物体までの距離の算出にあたっては、物体検知時間は検知対象物体までの検知光の往復時間に相当することを利用して、検知光の速度を用いて算出する。検知対象物体までの距離の算出に必要なデータについては、予めメモリ117bに記憶保持している。
【0059】
CPU117aは、算出した検知対象物体までの距離が動作停止距離未満であるか否かを判断する(S615)。動作停止距離とは、制御部117が動作を制御する対象である産業用ロボットRBTの動作を停止させる必要があると判断する検知物体までの距離をいう。動作停止距離は、物体検知センサ部113毎に設定されている。なお、動作停止距離は、メモリ117bに記憶保持されている。
【0060】
CPU117aは、算出した検知対象物体までの距離が動作停止距離未満であると判断すると、設定検知情報を取得した設定検知情報取得時間の検知調整時間開始終了情報を判断し、設定する(S617)。なお、設定検知情報取得時間の検知調整時間開始終了情報は、物体を検知した一連の時間の中で、最初の検知に対応する設定検知情報を受信した設定検知情報取得時間に「スタート」を、最後の検知に対応する設定検知情報を受信した設定検知情報取得時間に「エンド」を、それぞれの検知調整時間開始終了情報と判断し、設定する。その他の設定検知情報に対しては、検知調整時間開始終了情報を設定しない。
【0061】
CPU117aは、設定検知情報を送信してきた受光素子113cに対応する物体検知センサー部113を識別する物体検知センサー部識別情報、検知情報を受信した設定検知情報取得時間、及び、検知調整時間開始終了情報を関連付けて、検知調整時間テーブル(図5参照)に記述する(S619)。
【0062】
CPU117aは、ステップS615において算出した検知対象物体までの距離が動作停止距離未満でない、つまり、産業用ロボットRBTの所定の周囲には物体が存在しないと判断すると、1シーケンス分の動作を終了した設定動作終了情報を取得するまで(S621)、ステップS609~S621の処理を実行する。
【0063】
CPU117aは、ステップS621において設定動作終了情報を取得すると、設定動作終了情報を取得した時の計時回路117cの時間を1シーケンス分の単位動作時間としてメモリ117bに記憶し(S623)、その後、計時回路117cにおける計時を終了し(S623)、センサ設定処理を終了する。
【0064】
2.物体検知処理
物体検知装置100は、物体検知センサ部113に検知開始情報を送信し、投光素子113aでの検知光の投光、受光有効期間(後述)における受光素子113cでの反射光受信という物体検知処理を、全ての物体検知センサ部113に対して、順次、実行していく。CPU117aが実行するセンサ制御プログラムに基づく物体検知処理について図7に示すフローチャートを用いて説明する。CPU117aは、一の物体検知センサユニット111を検知対象センサユニットとして選択する(S701)。CPU117aは、検知対象センサユニットに属する一の物体検知センサ部113を検知対象センサ部として選択する(S703)。
【0065】
CPU117aは、検知対象センサ部の投光素子113aに対して、検知光を投光するとともに、対応する受光素子113cに対して、検知光の反射光の受光待機状態とする旨の検知開始情報を送信する(S705)。なお、どの物体検知センサ部113がどの物体検知センサユニット111に属するのかについては、センサ情報として、メモリ117bに記憶保持されている。
【0066】
また、CPU117aは、検知開始情報を送信すると同時に、計時回路117cによる時間計測を開始する。
【0067】
CPUS117aは、メモリ117bから、検知調整時間テーブルを取得する(S707)。
【0068】
検知光を投光した投光素子113aに対応する受光素子113cは、検知光の反射光を受光すると、検知光の投光から反射光の受光までの時間である物体検知時間を内容とする検知情報を、一方、所定時間内に反射光を受光しなかった場合や、物体までの距離を正確に算出するのに不十分な光量(フォトン数)しか捕えられなかった場合には、測定可能圏内に物体を検知できない旨を内容とする検知情報を、センサ用通信回路113d(図3参照)、センサ制御用通信回路117g(図4参照)を介して、CPU117aに送信する。
【0069】
CPU117aは、検知情報を受信すると(S709)、検知情報の内容が物体検知時間であるか否かを判断する(S711)。CPU117aは、検知情報の内容が物体検知時間であると判断すると、取得した物体検知時間から、検知対象物体までの距離を算出する(S713)。検知対象物体までの距離の算出にあたっては、物体検知時間は検知対象物体までの検知光の往復時間に相当することを利用して、検知光の速度を用いて算出する。検知対象物体までの距離の算出に必要なデータについては、予めメモリ117bに記憶保持している。
【0070】
CPU177aは、検知調整時間テーブルを用いて、受信した検知情報が、検知情報を送信した受光素子117cに対応する物体検知センサ部の検知調整時間内での受信か否かを判断する(S715)。CPU117aは、受信した検知情報が検知調整時間内の受信でないと判断すると、ステップS713で算出した検知対象物体までの距離が、動作停止距離未満であるか否かを判断する(S717)。動作停止距離とは、制御部117が動作を制御する対象である産業用ロボットRBTの動作を停止させる必要があると判断する検知物体までの距離をいう。動作停止距離は、物体検知センサ部113毎に設定されている。なお、動作停止距離は、メモリ117bに記憶保持されている。
【0071】
CPU117aは、算出した検知対象物体までの距離が動作停止距離未満であると判断すると、産業用ロボットRBTを動作させる駆動装置に対して、動作を停止させる動作停止情報を送信する(S719)。CPU117aは、産業用ロボットRBTの動作を停止させた後、動作再開情報を取得すると(S721)、検知処理を終了しなければ(S733)、検知処理を再開する。なお、動作再開情報は、使用者による産業用ロボットRBTのリセット操作後、産業用ロボットRBTから送信される。
【0072】
一方、CPU117aは、ステップS711において、受信した検知情報が検知調整時間内の受信であると判断した場合、及び、ステップS715において、算出した検知対象物体までの距離が動作停止距離未満でないと判断した場合、ステップS709で受信した検知情報による産業用ロボットRBTの動作停止処理を実行せず、所定のインターバル時間が経過しているか否かを判断する(S723)。なお、インターバル時間とは、次の測定を開始するまでに必要な時間であり、物体検知センサ部113の性能、物体検知センサユニット111と制御部117までの距離、物体検知センサユニット111と制御部117との間の通信方式、通信環境等を勘案して予め決定し、メモリ117bに記憶保持しておく。
【0073】
CPU117aは、所定のインターバル時間が経過したと判断すると、検知対象ユニットの全ての検知対象センサ部に対してステップS709~S721の処理を実行したか否か判断する(S725)。CPU117aは、全ての物体検知センサ部113を検知対象センサ部としてステップS709~S721の処理を実行していないと判断すると、残りの物体検知センサ部113に対してステップS709~S721の処理を実行する。
【0074】
一方、CPU117aは、ステップS725において、全ての物体検知センサ部113を検知対象センサ部としてステップS709~S721の処理を実行したと判断すると、全ての物体検知センサユニット111を検知対象センサユニットとしてステップS703~S725の処理を実行したか否か判断する(S727)。CPU117aは、全ての物体検知センサ部113を検知対象センサ部としてステップS703~S725の処理を実行していないと判断すると、残りの物体検知センサ部113に対してステップS703~S725の処理を実行する。
【0075】
一方、CPU117aは、ステップS727において、全ての物体検知センサユニット111を検知対象センサユニットとしてステップS703~S725の処理を実行したと判断すると、計時回路117cによる計測時間が、メモリ117bに記憶保持している単位動作時間になったか否かを判断する(S729)。CPU117aは、単位動作時間になったと判断すると、計時回路117cをリセットし、時間計測を終了する(S731)。CPU117aは、検知処理を終了しなければ(S733)、産業用ロボットRBTに配置されている全ての物体検知センサユニット111について検知処理を実行した、つまり、物体検知センサユニット111における検知処理を1シーケンス分終了したとして、次の1シーケンスの検知処理を実行する。
【実施例2】
【0076】
前述の実施例1にかかる物体検知装置100においては、物体検知処理において、検知調整時間内に対応する時間に取得した所定の検知情報については、無効とすることとした。一方、本実施例にかかる物体検知装置200は、物体検知処理において、検知調整時間内に取得した検知情報であっても無効とせずに、検知情報の内容によっては有効とするものである。なお、以下においては、実施例1と同様の構成については、同様の符号を付し、また、詳細な説明を省略する。
【0077】
第1 構成
物体検知装置200の構成について図8を用いて説明する。図8は、物体検知装置200を産業用ロボットRBTに配置した状態を示す。物体検知装置200は、複数の物体検知センサユニット111、制御部117、及び、接続ハーネス119を有している。物体検知装置200の各構成については、実施例1における構成と同様である(図1図4参照)。
【0078】
第2 検知調整時間テーブル
制御部117のメモリ117bに記憶、保持される検知調整時間テーブルについて、図9を用いて説明する。
【0079】
検知調整時間テーブルは、物体検知センサ部識別情報記述領域、受信時間記述領域、ステータス情報記述領域、及び、検知調整時間開始終了情報記述領域を有している。
【0080】
ステータス情報記述領域には、受光素子113cが検知情報として送信する内容が記述される。例えば、検知情報の内容が、所定量の検知光を受光した場合に送信する物体検知時間であれば、物体検知時間が記述される。また、検知情報の内容が、「オーバーフロー」であれば、「オーバーフロー」が記述される。
【0081】
例えば、図9の検知調整時間テーブルでは、物体検知センサ部識別情報が「1」の物体検知センサ部113において、産業用ロボットRBTの単位動作の開始時から「2021ms」の検知調整時間に、産業用ロボットRBTの一部が、物体検知時間が「0.01μs」の位置に存在することが、記述されている。なお、物体検知時間は、検知した物体までの検知光の往復時間として計測されるため、検知された物体は、検知光で物体検知時間の半分の時間を要する距離に存在する。物体検知時間が「0.01μs」であれば、物体を検知した物体検知センサ部113から約1.5メートルの位置に、検知した物体が存在する。
【0082】
また、物体検知センサ部識別情報が「25」の物体検知センサ部113において、産業用ロボットRBTの単位動作の開始時から「13781ms」~「13881ms」の検知調整時間に、受光素子113cが所定以上の光量の検知光を受光した「オーバーフロー」であることが、記述されている。なお、受光素子113cが、所定以上の光量の検知光を受光する場合としては、ある物体検知センサー部113に属する受光素子113cが、産業用ロボットRBTの動作によって、他の物体検知センサー部113に属する投光素子113aが対向して位置し、他の物体検知センサー部113に属する投光素子113aが投光する検知光を、直接的に、受光する場合がある。
【0083】
第3 センサ制御プログラムの動作
物体検知装置200におけるセンサ制御プログラムに基づくCPU117aの動作について、以下において説明する。CPU117aは、センサ制御プログラムに基づき、物体検知処理、及び、センサ設定処理を実行する。
【0084】
1.センサ設定処理
CPU117aが実行するセンサ制御プログラムに基づくセンサ設定処理について図10に示すフローチャートを用いて説明する。CPU117aは、ステップS611において、設定検知情報の内容が物体検知時間でないと判断すると、設定検知情報の内容をステータス情報と判断し(S1001)、設定検知情報を送信してきた受光素子113cに対応する物体検知センサー部113を識別する物体検知センサー部識別情報、検知情報を受信した時間、及び、判断したステータス情報を関連付けて、検知調整時間テーブル(図5参照)に記述する(S619)。
【0085】
2.物体検知処理
CPU117aが実行するセンサ制御プログラムに基づく物体検知処理について図11に示すフローチャートを用いて説明する。CPU117aは、ステップS715において、受信した検知情報が検知調整時間内の受信であると判断すると、検知情報を送信した受光素子113cに対応する物体検知センサー部113であって、検知情報を受信した時間が含まれる検知調整時間のステータス情報を取得する(S1101)。
【0086】
CPU117aは、取得したステータス情報が「オーバーフロー」であるか否かを判断する(S1103)。CPU117aは、取得したステータス情報が「オーバーフロー」であると判断すると、算出した検知対象物体までの距離が動作停止距離未満であるか否かを判断する(S717)。CPU117aは、算出した検知対象物体までの距離が動作停止距離未満であると判断すると、産業用ロボットRBTを動作させる駆動装置に対して、動作を停止させる動作停止情報を送信する(S719)。
【0087】
このように、センサ設定処理において、「オーバーフロー」であった、つまり、異なる物体検知センサ部113が対向して位置していると判断した一方、物体検知処理において、距離が検知されたということは、対向して位置する異なる物体検知センサ部113の間に、なんらかの物体が位置していると考えられる。よって、検知した物体との距離に応じて、産業用ロボットRBTを停止させる。
【0088】
一方、CPU117aは、ステップS1101で取得したステータス情報が「オーバーフロー」でないと判断すると、ステップS713で算出した距離が、検知調整時間テーブルにおいて、ステップS709で取得した検知情報を送信した受光素子113cに対応する物体検知センサ部113に関して、ステップS709で取得した検知情報の受信時間に最も近い受信時間に対応するステータス情報に記述されている距離未満であるか否かを判断する(S1105)。CPU117aは、ステップS713で算出した距離がステータス情報に記述されている距離未満であると判断すると、産業用ロボットRBTを動作させる駆動装置に対して、動作を停止させる動作停止情報を送信する(S719)。
【0089】
このように、センサ設定処理において、ある物体検知センサ部113に対して動作停止距離内に産業用ロボットRBTのアームAM1~AM7等、産業用ロボットRBTの一部が位置していると判断した一方、物体検知処理において、産業用ロボットRBTの一部が位置していると判断した距離未満の距離に物体が検知されたということは、産業用ロボットRBT以外のなんらかの物体が位置していると考えられる。よって、産業用ロボットRBTを停止させる。
【0090】
一方、CPU117aは、ステップS713で算出した距離がステータス情報に記述されている距離未満でないと判断すると、ステップS709で受信した検知情報による産業用ロボットRBTの動作停止処理を実行せず、所定のインターバル時間が経過しているか否かを判断する(S723)。
【0091】
[その他の実施形態]
(1)単位動作時間:前述の実施例1、実施例2においては、産業用ロボットRBTに関する単位動作時間を1シーケンスとしたが、ある動作からある動作まで等、産業用ロボットRBTの動作の一部であれば、例示のものに限定されない。
【0092】
また、産業用ロボットRBTの動作開始からの相対時間を用いて単位動作時間を判断したが、動作開始の時刻等、時刻を用いて単位時間を判断するようにしてもよい。なお、時刻を用いて単位動作時間を判断する場合は、例えば、定時に所定の動作を実行する産業用ロボットRBT等において利用できる。
【0093】
(2)制御部117の機能:前述の実施例1、実施例2においては、制御部117は、センサ設定制御部としての機能(図6図10参照)と物体検知制御部としての機能(図7図11参照)を有するとしたが、センサ設定制御部と物体検知制御部とを異なる制御部として、別の装置として、または、一体の装置として、配置するようにしてもよい。
【0094】
(3)検知調整時間開始終了情報:前述の実施例1、実施例2においては、検知調整時間開始終了情報が「スタート」、「エンド」と判断した検知情報についてのみ、検知調整時間テーブルに記述するようにしてもよい。なお、「スタート」、「エンド」の検知調整時間開始終了情報があれば、その間については、検知調整時間に含まれると判断できる。
【0095】
(4):前述の実施例2においては、ステータス情報に距離が記述されているものと、ステータス情報に「オーバーフロー」が記述されているものについて、無効と判断する検知情報に対して、さらに、有効とするか否かの判断をしたが、いずれか一方のみについて判断するようにしてもよい。
【0096】
また、ステータス情報に距離が記述されているものと、ステータス情報に「オーバーフロー」が記述されているもの以外の情報をステータス情報に記述し、無効と判断する検知情報に対して、さらに、有効とするか否かの判断に用いるようにしてもよい。
【0097】
(5)物体検知センサユニット111:前述の実施例1、実施例2における物体検知センサユニット111では、センサ配置柔軟部材115を用いて複数の物体検知センサ部113を有する産業用ロボットRBTに配置したが、物体検知センサ部113を配置できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、物体検知センサ部113を直接的に産業用ロボットRBTに配置するようにしてもよい。
【0098】
(6)産業用ロボットRBT:前述の実施例1、実施例2においては、単独の産業用ロボットRBTに物体検知装置100の物体検知センサ部113を配置するとしたが、複数の産業用ロボットに渡って、物体検知センサ部113を配置するようにしてもよい。
【0099】
また、前述の実施例1、実施例2においては、センサ設定処理においては、取付対象物体である産業用ロボットRBTの一部の検出に相当する場合を無効とすることとしたが、動作停止距離内等、所定の範囲内に存在する産業用ロボットRBT以外の物体、例えば、柵等の固定物や運搬台等の移動物の検出についても、無効とするようにしてもよい。
【0100】
(7)物体検知センサ部113の機能:前述の実施例1、実施例2においては、物体検知センサ部113は、物体までの距離を検知することによって、物体の存在を検知するものとしたが、物体の存在のみや物体の方向を検知するものであってもよい。
【0101】
また、物体検知センサ部113は、所定の検知光を用いて物体の存在を検知するものとしたが、物体の存在を検知できるものであれば、赤外線、音波等その他の検知波を用いるようにしてもよい。
【0102】
(8)制御部117の構成:前述の実施例1、実施例2においては、CPU117aを用いて制御部117の動作を実現したが、制御部117の動作を実現できる構成であれば、例示のものに限定されない。例えば、専用のロジック回路を設計して用いるようにしてもよい。
【0103】
(9)物体検知センサ部113の接続:前述の実施例1、実施例2においては、各物体検知センサ部113を制御部117にパラレルに接続するとしたが、各物体検知センサ部113同士をカスケード接続し、端部の物体検知センサ部113を制御部117へ接続するようにしてもよい。
【0104】
また、物体検知装置100、200では、各物体検知センサユニット111と制御部117とを接続ハーネス119で接続するとしたが、無線によって、接続するようにしてもよい。
【0105】
さらに、物体検知装置100、200では、物体検知センサ部113と制御部117とを接続ハーネス119を用いて接続するとしたが、複数の物体検知センサ部113を1つの中間インターフェイス部に接続し、中間インターフェイス部を制御部117に接続するように、つまり、中間インターフェイス部を介して、物体検知センサ部113と制御部117とを接続するようにしてもよい。実施例2、実施例3についても同様である。
【0106】
(10)光用フィルタの使用:前述の実施例において、さらに、光用フィルタを用いて、所定の光のみを用いて、物体を検知するようにしてもよい。
【0107】
(11)センサ接続情報:前述の実施例1、実施例2において、センサ接続情報は、予め、メモリ117bに記憶保持しておくとしたが、物体検知装置100を使用する段階でセンサ接続情報を取得するようにしてもよい。例えば、制御部117の起動時に、制御部117がセンサ用通信回路113dを介して各物体検知センサ部113と情報を送受信し、物体検知センサ部113が接続されているか否かを判断し、センサ接続情報を生成するようにしてもよい。また、センサ用通信回路113dの接続位置(例えば、接続ポート)を判断するようにしてもよい。
【0108】
(12)受光素子113c:前述の実施例1、実施例2において、受光素子113cは、SPADを用いるとしたが、その他のフォトトランジスタやフォトダイオード、増幅回路内蔵受光素子等を用いることができる。なお、フォトダイオードを使用する場合は、増幅回路やフィルタ回路を、受光素子113cと合わせて配置するようにしてもよい。実施例3についても同様である。
【0109】
(13)物体検知センサ部113の検知制御:前述の実施例1、実施例2においては、CPU117aは、物体検知センサ部113に対して、順次、検知開始情報を送信することとしたが、全ての物体検知センサ部113に対して、一斉に、検知開始情報を送信し、各物体検知センサ部113のタイミングによって検知情報を送信するようにしてもよい。
【0110】
(14)受光素子113c:前述に実施例1、実施例2においては、受光素子113cは、予め定められた上限量よりも多い量の検知光を受光した場合、オーバーフローした旨の検知情報を、検知光を受光できなかった場合も含め、予め定められた下限量よりも少ない量の検知光しか受光できなかった場合、物体を検知できなかった旨の検知情報を、上限量から下限量までの設定範囲内の検知光を受光した場合、物体検知時間を、それぞれ検知情報として送信するとしたが、検知の状態を送信できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、検知した物体検知時間(オーバーフロー等、検知が正常に行われなかった場合には設定されなかったり、0を設定したりする場合を含む)と、検知が正常に行われたか否かを示すステータス(例えば、オーバーフローの場合は、異常を設定する)とを1組として送信するようにしてもよい。
【0111】
また、前述の実施例1、実施例2においては、受光素子113cは、SPADを用いる直接TOF(Time Of Flight)法を用いて、物体までに距離を検知するものであったが、物体までの距離を検知できるもの、または、物体の存在を検知できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、間接TOF法を用いて、物体までに距離を検知するものであってもよい。
【0112】
(15)動作停止距離:前述の実施例1、実施例2においては、動作停止距離は、物体検知センサ部113毎に設定されるとしたが、物体検知センサユニット111毎に設定してもよい。また、全ての物体検知センサユニット111で同一の動作停止距離を用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に係る物体検知装置は、例えば、産業用ロボットに用いることができる。
【符号の説明】
【0114】
100 物体検知装置
111 物体検知センサユニット
113 物体検知センサ部
113a 投光素子
113b 投光レンズ
113c 受光素子
113d センサ用通信回路
115 センサ配置柔軟部材
117 制御部
117a CPU
117b メモリ
117c 計時回路
117g センサ制御用通信回路
117h 動作制御用通信回路
119 接続ハーネス
200 物体検知装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12