(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】ワンウェイクラッチおよびワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 41/18 20060101AFI20230418BHJP
F16F 9/12 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
F16D41/18 Z
F16F9/12
(21)【出願番号】P 2018111280
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 禎治
(72)【発明者】
【氏名】下西 哲史
(72)【発明者】
【氏名】保富 英雄
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-194796(JP,A)
【文献】特開平07-035165(JP,A)
【文献】実開昭51-017655(JP,U)
【文献】特開2012-241736(JP,A)
【文献】特開平01-105022(JP,A)
【文献】特開平05-231449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/02、41/12-41/18
F16F 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心を中心として回転可能な回転軸と、
前記回転軸に前記回転軸と一体的に回転可能に嵌装される環状部と、前記環状部から径方向外側に突出し弾性変形可能な複数の爪部とを有するインナギアと、
前記回転軸に前記軸心を中心として相対的に回転可能に支持され前記インナギアを収容する円筒状部材と、前記円筒状部材の外周面から径方向外側に突出する複数の外歯と、前記円筒状部材の内周面から径方向内側に突出する複数の内歯とを有するアウタギアと、
前記回転軸が挿入されるハウジングと、
前記ハウジング内に収容され、前記軸心を中心として前記回転軸と一体的に回転可能なロータ翼と、
前記ハウジング内に封入され前記ロータ翼に回転抵抗を付与する粘性流体と、
を備え、
前記回転軸の外周面、および前記アウタギアにおける前記円筒状部材の内周面の一方に溝部が形成され、
前記回転軸の外周面、および前記アウタギアにおける前記円筒状部材の内周面の他方に前記溝部と嵌合可能な突起部が形成され、
前記溝部と前記突起部とが嵌合することにより、前記アウタギアが前記回転軸に支持され、
前記インナギアにおける前記複数の爪部の外周側端部を通り前記軸心を中心とする円の径が、前記アウタギアにおける前記複数の内歯の内周側端部を通り前記軸心を中心とする円の径よりも大きく形成され、
前記爪部は、前記アウタギアが前記回転軸に対して一側へ回転することにより前記内歯に当接する退避面と、前記アウタギアが前記回転軸に対して他側へ回転することにより前記内歯に当接する係合面とを有し、
前記アウタギアが一側へ回転する際に前記内歯と前記退避面とが当接すると、前記爪部が弾性変形して前記内歯から退避し、前記内歯と前記退避面とが係合することなく前記アウタギアが前記回転軸とは独立して回転し、
前記アウタギアが他側へ回転する際に前記内歯と前記係合面とが当接すると、複数の前記内歯と複数の前記係合面とが係合して前記アウタギアと前記回転軸とが一体的に回転し、
前記爪部は、前記環状部の外周面から前記一側への回転方向における下流側へ延出するとともに前記一側への回転方向における下流側へいくに従って径方向外側へ向かう舌片状に形成され、
前記内歯における前記他側へ回転する際に前記係合面と当接する面は、前記他側への回転方向と直交する面に形成され、
前記インナギアの前記係合面は、前記一側への回転方向と直交する面に形成され
る、
ことを特徴とするワンウェイクラッチ
付き回転ダンパ装置。
【請求項2】
前記回転軸は、前記回転軸の先端部から前記軸心方向に沿って形成されるスリットにより周方向に分割された複数の軸片部を有し、
前記溝部は、前記軸片部の外周面に形成され
、
前記スリットは、前記溝部と前記突起部とを嵌合させる際に前記軸片部を撓ませるためのものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のワンウェイクラッチ
付き回転ダンパ装置。
【請求項3】
前記インナギアにおける前記爪部の数と、前記アウタギアにおける前記内歯の数とが同じである、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワンウェイクラッチ
付き回転ダンパ装置。
【請求項4】
前記アウタギアにおける前記内歯の数および前記インナギアにおける前記爪部の数の一方が、他方よりも多い、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワンウェイクラッチ
付き回転ダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンウェイクラッチおよびワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば扉等の開閉部に設けられ、開方向又は閉方向の一方に付勢された扉等をゆっくりと動作させて衝撃を緩和するために用いられる回転ダンパが知られている。このような回転ダンパにおいては、一方向の回転のみに対して減衰力を発生させるために、ワンウェイクラッチと組み合わせてワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置が構成されることがある。
【0003】
ワンウェイクラッチは、一対の回転体の一方を他方の回転体に対して一方向へ回転させると、他方の回転体が一方の回転体とともに一方向へ回転し、一対の回転体の一方を他方の回転体に対して他方向へ回転させると、他方の回転体は回転せずに一方の回転体のみが他方向へ回転するように構成されたクラッチである。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されるワンウェイクラッチは、軸心を同一にして各別に回転するように支持した一対の回転体を有し、一対の回転体の一方には、両側端に一方向係合つめを有するクラッチ板を回転軸の軸方向と直交する方向に遊嵌し、一対の回転体の他方には、クラッチ板が遊動の限界位置に移動したときに回転軸から遠い方の一方向係合つめと対応する部分に、一方向係合つめと係合する係合突起を複数突設して構成されている。
【0005】
特許文献1に記載されるワンウェイクラッチにおいては、一方の回転体を一方向へ回転させると、クラッチ板における回転軸から遠い方の一方向係合つめが他方の回転体の係合突起と係合して、他方の回転体が一方の回転体とともに一方向へ回転する。
また、一方の回転体を他方向へ回転させると、クラッチ板の一方向係合つめが他方の回転体の係合突起に接するごとに回転軸の軸方向と直交する方向に逃げて、一方向係合つめと係合突起とが係合することがないため、他方の回転体は回転せずに一方の回転体のみが他方向へ回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の特許文献1に記載のワンウェイクラッチにおいては、一方の回転体を一方向へ回転させた際に、クラッチ板に形成される複数の一方向係合つめのうちの一方の一方向係合つめのみが、他方の回転体における係合突起と係合するように構成されているため、一方向係合つめが係合突起と係合した際に、一方向係合つめに大きな負荷がかかり、一方向係合つめが早期に劣化するおそれがあった。特に、高トルクがかかるワンウェイクラッチや、小型のワンウェイクラッチにおいては、耐久性に優れたワンウェイクラッチを構成することが困難であった。
【0008】
そこで、本発明においては、ワンウェイクラッチに高いトルクがかかる場合であっても耐久性に優れたワンウェイクラッチを構成することができる、ワンウェイクラッチおよびワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するワンウェイクラッチおよびワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置は、以下の特徴を有する。
即ち、ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置は、軸心を中心として回転可能な回転軸と、前記回転軸に前記回転軸と一体的に回転可能に嵌装される環状部と、前記環状部から径方向外側に突出し弾性変形可能な複数の爪部とを有するインナギアと、前記回転軸に前記軸心を中心として相対的に回転可能に支持され前記インナギアを収容する円筒状部材と、前記円筒状部材の外周面から径方向外側に突出する複数の外歯と、前記円筒状部材の内周面から径方向内側に突出する複数の内歯とを有するアウタギアと、前記回転軸が挿入されるハウジングと、前記ハウジング内に収容され、前記軸心を中心として前記回転軸と一体的に回転可能なロータ翼と、前記ハウジング内に封入され前記ロータ翼に回転抵抗を付与する粘性流体と、を備え、前記回転軸の外周面、および前記アウタギアにおける前記円筒状部材の内周面の一方に溝部が形成され、前記回転軸の外周面、および前記アウタギアにおける前記円筒状部材の内周面の他方に前記溝部と嵌合可能な突起部が形成され、前記溝部と前記突起部とが嵌合することにより、前記アウタギアが前記回転軸に支持され、前記インナギアにおける前記複数の爪部の外周側端部を通り前記軸心を中心とする円の径が、前記アウタギアにおける前記複数の内歯の内周側端部を通り前記軸心を中心とする円の径よりも大きく形成され、前記爪部は、前記アウタギアが前記回転軸に対して一側へ回転することにより前記内歯に当接する退避面と、前記アウタギアが前記回転軸に対して他側へ回転することにより前記内歯に当接する係合面とを有し、前記アウタギアが一側へ回転する際に前記内歯と前記退避面とが当接すると、前記爪部が弾性変形して前記内歯から退避し、前記内歯と前記退避面とが係合することなく前記アウタギアが前記回転軸とは独立して回転し、前記アウタギアが他側へ回転する際に前記内歯と前記係合面とが当接すると、複数の前記内歯と複数の前記係合面とが係合して前記アウタギアと前記回転軸とが一体的に回転し、前記爪部は、前記環状部の外周面から前記一側への回転方向における下流側へ延出するとともに前記一側への回転方向における下流側へいくに従って径方向外側へ向かう舌片状に形成され、前記内歯における前記他側へ回転する際に前記係合面と当接する面は、前記他側への回転方向と直交する面に形成され、前記インナギアの前記係合面は、前記一側への回転方向と直交する面に形成される。
【0010】
また、前記回転軸は、前記回転軸の先端部から前記軸心方向に沿って形成されるスリットにより周方向に分割された複数の軸片部を有し、前記溝部は、前記軸片部の外周面に形成され、前記スリットは、前記溝部と前記突起部とを嵌合させる際に前記軸片部を撓ませるためのものである。
これにより、アウタギアの突起部を回転軸の溝部に嵌合させる際に回転軸の軸片部が撓むこととなり、嵌合作業を容易にすることが可能となる。
【0011】
また、前記インナギアにおける前記爪部の数と、前記アウタギアにおける前記内歯の数とが同じである。
これにより、インナギアが有するすべての爪部を同時に内歯と係合させることができ、各爪部にかかる負荷を効果的に小さくすることができる。
【0012】
また、前記アウタギアにおける前記内歯の数および前記インナギアにおける前記爪部の数の一方が、他方よりも多い。
これにより、アウタギアが回転軸に対して他側へ回転したときに、アウタギアの内歯がインナギアの爪部と係合せずに、アウタギアが空回りする角度を小さくすることができる。従って、ワンウェイクラッチを備えた回転ダンパ装置においては、アウタギアが他側へ回転を開始したときからアウタギアに回転抵抗が付与されるまでのあそび量を減少させることができ、アウタギアが他側へ回転を開始してから速やかに回転抵抗を付与することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各爪部にかかる負荷を相対的に小さくして爪部に劣化が生じることを抑制でき、耐久性に優れたワンウェイクラッチおよびワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置を構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置を示す斜視図である。
【
図2】ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置を示す平面図である。
【
図3】ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置を示す分解斜視図である。
【
図4】ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置を示す側面断面図である。
【
図5】(a)はロータ軸を示す側面断面図であり、(b)はロータ軸を示す正面図である。
【
図6】底面側から見たアウタギアを示す斜視図である。
【
図7】アウタギアがロータ軸に対して一側へ回転する場合におけるワンウェイクラッチの動作を示す図であり、(a)はインナギアの爪部が、周方向においてアウタギアの内歯と内歯との間に位置しており、弾性変形していない状態のワンウェイクラッチを示す図、(b)は爪部よりも一側への回転方向における上流側に位置する内歯の第1面が、当該爪部の退避面に当接した状態のワンウェイクラッチを示す図である。
【
図8】アウタギアがロータ軸に対して一側へ回転する場合におけるワンウェイクラッチの動作を示す図であり、爪部が内歯により径方向内側へ押圧されて弾性変形した状態のワンウェイクラッチを示す図である。
【
図9】ギア部材がロータ軸に対して他側へ回転する場合におけるワンウェイクラッチの動作を示す図であり、(a)はインナギアの爪部が、周方向においてアウタギアの内歯と内歯との間に位置しており、弾性変形していない状態のワンウェイクラッチを示す図であり、(b)は複数の爪部と複数の内歯とが同時に係合した状態のワンウェイクラッチを示す図である。
【
図10】ギア部材がロータ軸に対して他側へ回転する場合におけるワンウェイクラッチの動作を示す図であり、内歯と爪部とが係合した後にアウタギアとロータ軸とが一体的に回転する状態のワンウェイクラッチを示す図である。
【
図11】(a)はインナギアの第2実施形態を示す底面断面図であり、(b)は第2実施形態に係るアウタギアおよび第2実施形態に係るインナギアを用いて構成されたワンウェイクラッチを示す底面断面図である。
【
図12】(a)は第3実施形態に係るアウタギアおよび第2実施形態に係るインナギアを用いて構成されたワンウェイクラッチを示す底面断面図であり、(b)は第2実施形態に係るアウタギアおよび第3実施形態に係るインナギアを用いて構成されたワンウェイクラッチを示す底面断面図である。
【
図13】第2実施形態に係るアウタギアおよび第4実施形態に係るインナギアを用いて構成されたワンウェイクラッチを示す底面断面図である。
【
図14】第5実施形態に係るインナギアを示す底面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0017】
[ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置]
図1~
図4に示すワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置1(以降、単に「回転ダンパ装置1」という)1は、本発明に係るワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置の一実施形態である。
回転ダンパ装置1は、例えば小型プリンタ等のOA機器の本体に回動可能に連結される開閉扉の開閉部に設けられ、開閉扉が開方向または閉方向の一方に回動する際に減衰力を発生するように用いられる。回転ダンパ装置1は、これに限らず、第1部材に回動可能に連結される第2部材の回動部に設けることができる。
【0018】
回転ダンパ装置1は、ハウジング10と、ロータ翼25と、ロータ軸20と、インナギア30と、アウタギア50と、粘性流体60とを備えている。
回転ダンパ装置1においては、ロータ軸20と、インナギア30と、アウタギア50とでワンウェイクラッチ2が構成されている。つまり、回転ダンパ装置1は、ロータ軸20に回転抵抗を付与する回転ダンパ装置にワンウェイクラッチ2を接続することにより構成されている。ロータ軸20は、軸心を中心として回転可能な回転軸の一例である。
【0019】
ハウジング10は、ハウジング本体10Aと蓋体10Bとを有している。
ハウジング本体10Aは有底の円筒形状に形成されており、底面11を有している。底面11の中心部には、軸心P方向に沿ってハウジング本体10A内に突出する円柱状の支持軸12が形成されている。ハウジング本体10Aの軸心P方向における底面11側とは反対側の端部には、開口部13が形成されている。
蓋体10Bはハウジング本体10Aの開口部13を閉塞している。蓋体10Bの中心部には、軸心P方向に貫通する円形状の貫通孔14が形成されている。
【0020】
ロータ翼25は略円板状に形成されており、ハウジング本体10A内に軸心Pを中心として回転可能に収容されている。ロータ翼25の中心部における底面11と対向する側の面には軸受孔23が形成されている。軸受孔23はハウジング本体10Aの支持軸12に対して嵌合可能に構成されている。軸受孔23が支持軸12に回転可能に嵌合することで、ロータ20がハウジング10に回転可能に支持される。
【0021】
ロータ軸20は、ロータ翼25の中心部から軸心P方向の一側に向けて延出し、軸心Pを中心として回転可能に構成されている。ロータ軸20は、ロータ翼25と一体的に回転可能に構成されている。ロータ軸20は、ハウジング10の内部から蓋体10Bの貫通孔14を通じて、ハウジング10の外部に延出している。
【0022】
ロータ軸20は、ハウジング10内に挿入されている部分と、ハウジング10の外部に突出している部分とを有している。ロータ軸20におけるハウジング10の外部に突出している部分は延出軸21である。延出軸21は、外周面が二面取りされた略円柱形状に形成されており、一対の面取り部211を有している。一対の面取り部211は平面状に形成されており、互いに平行に配置されている。
【0023】
図3~
図5に示すように、延出軸21は、延出軸21の先端部(軸心P方向におけるハウジング10側とは反対側の端部)から軸心P方向におけるハウジング10側へ向かって形成されるスリット213により周方向に分割された複数の軸片部21Aを有している。つまり、延出軸21の先端部は、スリット213によって複数の軸片部21Aに分割されている。本実施形態においては、スリット213は延出軸21の先端部を2つの軸片部21Aに分割している。但し、延出軸21の先端部は、3以上の軸片部21Aに分割することも可能である。
【0024】
延出軸21における軸片部21Aの外周面には、径方向内側へ向かって凹陥する溝部214が形成されている。溝部214は、周方向に沿って延出している。本実施形態においては、溝部214は、軸片部21Aの周方向における全域にわたって形成されている。
【0025】
粘性流体60は、ハウジング10内に封入されている。粘性流体60は、ハウジング本体10A内に収容され軸心Pを中心として回転するロータ翼25、およびロータ翼25と一体的に回転するロータ軸20に回転抵抗を付与する。
粘性流体60は、例えばシリコーンオイル等の粘性を有した流体にて構成されている。ロータ翼25に付与する回転抵抗の大きさは、粘性流体60の粘度やロータ翼25の形状を適宜変更することで、調整することが可能である。
ロータ軸20と蓋体10Bとの間には、O-リングなどのシール部材15が介装されており、ロータ軸20と蓋体10Bとの間から粘性流体60が漏出することを防いでいる。
【0026】
図1~
図4、
図6に示すように、アウタギア50は、軸心Pを中心として一側および一側とは反対側の他側へ回転可能に構成されており、ギア本体51と、外歯ギア52と、内歯53とを有している。
ギア本体51は、ロータ軸20に軸心Pを中心として相対的に回転可能に支持される円筒状部材により形成されている。外歯ギア52は、ギア本体51の外周面から径方向外側に突出し、周方向に沿って配置される複数の外歯52aを有している。内歯53は、ギア本体51の内周面から径方向内側に突出しており、周方向に沿って複数設けられている。
【0027】
ギア本体51は、内歯53が形成され、インナギア30を収容する収容部51aと、収容部51aよりも小径に形成されロータ軸20に支持される支持部51bとを有している。収容部51aは、軸心P方向において支持部51bよりもハウジング10側に配置されている。ギア本体51の支持部51bの内径と、延出軸21の外径とは略同じ寸法に形成されており、支持部51bに延出軸21を挿入可能となっている。
【0028】
支持部51bの内周面には、径方向内側に向かって突出する突起部55が形成されている。突起部55は、周方向に沿って延出している。本実施形態においては、突起部55は、支持部51bの内周面における周方向の全域にわたって形成されている。
突起部55はロータ軸20の溝部214と嵌合可能に構成されており、支持部51bに延出軸21を挿入して突起部55と溝部214とを嵌合させることによって、アウタギア50がロータ軸20に支持される。
本実施形態においては、ロータ軸20に溝部214を形成するとともに、ギア本体51の支持部51bに突起部55を形成しているが、ロータ軸20に径方向外側に向かって突出する突起部を形成するとともに、ギア本体51の支持部51bに径方向外側へ向かって凹陥する溝部を形成して、突起部と溝部とを嵌合させることにより、アウタギア50をロータ軸20に支持させることもできる。
【0029】
内歯53は、アウタギア50の一側への回転方向における下流側に配置される第1面53aと、アウタギア50の一側への回転方向において第1面53aよりも上流側に配置される第2面53bとを有している。第1面53aは、径方向外側へいくに従ってアウタギア50の一側への回転方向における下流側に傾斜する傾斜面に形成されている。第2面53bは、アウタギア50の他側への回転方向と直交する面に形成されている。
【0030】
内歯53は、アウタギア50の周方向に沿って等間隔で配置されている。内歯53は、各内歯53の内周側端部(第1面53aと第2面53bとの境界部)を通る円C1の中心が軸心Pとなるように形成されている(
図6参照)。
【0031】
図3、
図4に示すように、インナギア30は、ロータ軸20の延出軸21に嵌装される環状部31と、環状部31から径方向外側に突出する複数の爪部32とを有している。インナギア30は、例えば樹脂部材にて形成されている。
【0032】
環状部31の内周面は二面取りされており、一対の面取り部31aを有している。一対の面取り部31aは平面状に形成されており、互いに平行に配置されている。環状部31は、面取り部31aと延出軸21の面取り部211とが対向するように延出軸21に嵌装されており、延出軸21に一体的に回転可能に支持されている。つまり、インナギア30は、アウタギア50と同様に、軸心Pを中心として一側および一側とは反対側の他側へ回転可能に構成されている。
【0033】
爪部32は、環状部31の外周面から一側への回転方向における下流側へ延出するとともに、一側への回転方向における下流側へいくに従って径方向外側(軸心Pから離れる方向)へ向かう舌片状に形成されている。爪部32は、径方向へ弾性変形可能に構成されている。
【0034】
図7(a)に示すように、爪部32は、一側への回転方向における上流側に配置される退避面32aと、一側への回転方向において退避面32aよりも下流側に配置される係合面32bとを有している。退避面32aは、一側への回転方向における下流側へいくに従って径方向外側に傾斜する傾斜面に形成されている。係合面32bは、一側への回転方向と直交する面に形成されている。
【0035】
爪部32は、インナギア30の周方向に沿って等間隔で配置されている。爪部32は、各爪部32の外周側端部(退避面32aと係合面32bとの境界部)を通る円C2の中心が軸心Pとなるように形成されている。
インナギア30における円C2の径は、アウタギア50における円C1の径よりも大きく形成されている。つまり、爪部32が弾性変形していない状態では、爪部32の外周側端部が、内歯53の内周側端部よりも径方向外側に位置している。
【0036】
アウタギア50がロータ軸20に対して一側へ回転した場合、インナギア30における爪部32の退避面32aとアウタギア50における内歯53の第1面53aとが当接する。爪部32の退避面32aと内歯53の第1面53aとが当接した後に、アウタギア50がロータ軸20に対してさらに一側へ回転すると、爪部32が内歯53により径方向内側へ押圧されて弾性変形し、爪部32の退避面32aと内歯53の第1面53aとは係合しない。従って、ロータ軸20は回転せずにアウタギア50のみが一側へ回転する。
【0037】
アウタギア50がロータ軸20に対して他側へ回転した場合、インナギア30における爪部32の係合面32bとアウタギア50における内歯53の第2面53bとが当接する。爪部32の係合面32bと内歯53の第2面53bとが当接することにより、爪部32と内歯53とが互いに係合する。
この場合、複数の爪部32と複数の内歯53とが同時に係合するように構成されている。本実施形態の場合、インナギア30は3つの爪部32を有し、アウタギア50は3つの内歯53とを有しており、3つの爪部32と3つの内歯53とが同時に係合するように構成されている。爪部32と内歯53とが係合した後は、アウタギア50とロータ軸20とが一体的に他側へ回転する。
【0038】
[ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置におけるワンウェイクラッチの動作]
このように構成される回転ダンパ装置1におけるワンウェイクラッチ2は、次のように動作する。
【0039】
まず、アウタギア50がロータ軸20に対して一側へ回転する場合のワンウェイクラッチ2の動作について説明する。
図7(a)には、インナギア30の爪部32が、周方向においてアウタギア50の内歯53と内歯53との間に位置しており、弾性変形していない状態のワンウェイクラッチ2を示している。
【0040】
この状態からアウタギア50がロータ軸20に対して一側へ回転すると、
図7(b)に示すように、爪部32よりも一側への回転方向における上流側に位置する内歯53の第1面53aが、当該爪部32の退避面32aに当接する。
【0041】
爪部32の退避面32aと内歯53の第1面53aとが当接した後に、アウタギア50がロータ軸20に対してさらに一側へ回転すると、
図8に示すように、爪部32が内歯53により径方向内側へ押圧されて弾性変形する。
この場合、爪部32は、外周側端部が円C1の範囲内に納まる位置まで径方向内側へ弾性変形することが可能である。従って、アウタギア50が一側へ回転した際には、内歯53と爪部32とは係合することがなく、内歯53が爪部32に対して相対的に一側へ摺動する。一側へ摺動する内歯53は爪部32を通過し、爪部32は再び内歯53と内歯53との間に位置することとなる。
【0042】
このように、アウタギア50がロータ軸20に対して一側へ回転した場合は、内歯53と爪部32とは係合することがなく、ロータ軸20は回転せずにアウタギア50のみが一側へ回転する。
そして、アウタギア50がロータ軸20とは独立して回転し、ロータ軸62は回転しないため、アウタギア50は回転抵抗が付与されることなく回転する。
【0043】
次に、アウタギア50がロータ軸20に対して他側へ回転する場合のワンウェイクラッチ2の動作について説明する。
図9(a)には、インナギア30の爪部32が、周方向においてアウタギア50の内歯53と内歯53との間に位置しており、弾性変形していない状態のワンウェイクラッチ2を示している。
【0044】
この状態からアウタギア50がロータ軸20に対して他側へ回転すると、
図9(b)に示すように、インナギア30における爪部32の係合面32bとアウタギア50における内歯53の第2面53bとが当接して、爪部32と内歯53とが係合する。この場合、複数の爪部32と複数の内歯53とが同時に係合する。
【0045】
図10に示すように、内歯53と爪部32とが係合した後にアウタギア50が他側へ回転すると、内歯53と爪部32との係合状態が維持され、アウタギア50とロータ軸20とが一体的に回転する。ロータ軸20がアウタギア50と一体的に回転すると、ロータ軸62が回転した際にロータ軸62に付与される粘性流体60による回転抵抗がアウタギア50にも伝達される。
【0046】
このように、アウタギア50がロータ軸20に対して他側へ回転した場合、複数の爪部32と複数の内歯53とが同時に係合した状態でアウタギア50とロータ軸20とが一体的に回転するため、各爪部32にかかる負荷を相対的に小さくすることができ、爪部32に劣化が生じることを抑制することが可能となる。これにより、特に、高トルクがかかるワンウェイクラッチや、小型のワンウェイクラッチにおいて、耐久性に優れたワンウェイクラッチを構成することが可能となる。
【0047】
また、ワンウェイクラッチ2においては、アウタギア50およびインナギア30をロータ軸20により支持しているため、アウタギア50およびインナギア30を支持するための別部材が必要でなく、ワンウェイクラッチ2を構成する部品点数を削減するとともに、ワンウェイクラッチ2を小型化することが可能となっている。
特に、アウタギア50は、ロータ軸20の溝部214とアウタギア50の突起部55とを嵌合させることによってロータ軸20に支持されるものであるため、アウタギア50を支持するために別部材を要することがなく、部品点数を削減することができる。
これは、ロータ軸20に突起部を形成するとともに、アウタギア50に前記突起部と嵌合する溝部を形成した場合も同様である。
【0048】
また、ロータ軸20はスリット213によって複数の軸片部21Aに分割されており、溝部214は軸片部21Aの外周面に形成されているため、アウタギア50の突起部55をロータ軸20の溝部214に嵌合させる際にロータ軸20の軸片部21Aが撓むこととなり、嵌合作業を容易にすることが可能となっている。
【0049】
[インナギアおよびアウタギアの第2実施形態]
インナギア30およびアウタギア50は、次に示すように構成することもできる。
例えば、
図11(a)に示すインナギア130は、ロータ軸20の延出軸21に嵌装される環状部131と、環状部131から径方向外側に突出する複数の爪部132とを有している。インナギア130は、例えば弾性変形可能な樹脂部材にて形成されている。本実施形態においては、インナギア130は、4つの爪部132を有している。
【0050】
環状部131の内周面は二面取りされており、一対の面取り部131aを有している。一対の面取り部131aは平面状に形成されており、互いに平行に配置されている。環状部131は、面取り部131aと延出軸21の面取り部211とが対向するように延出軸21に嵌装されており、延出軸21に一体的に回転可能に支持されている。インナギア130は、軸心Pを中心として一側および一側とは反対側の他側へ回転可能に構成されている。
【0051】
爪部132は、環状部131の外周面から径方向外側へ向けて突出する突起形状に形成されており、一側への回転方向における上流側に配置される退避面132aと、一側への回転方向において退避面132aよりも下流側に配置される係合面132bとを有している。退避面132aは、一側への回転方向における下流側へいくに従って径方向外側に傾斜する傾斜面に形成されている。係合面132bは、一側への回転方向と直交する面に形成されている。
【0052】
爪部132は、インナギア130の周方向に沿って等間隔で配置されている。各爪部132の外周側端部(退避面132aと係合面132bとの境界部)は、中心が軸心Pとなる円C2を通るように形成されている。
【0053】
図11(b)に示すアウタギア150は、複数の内歯53の代わりに複数の内歯153を有している点がアウタギア50と異なっている。本実施形態においては、アウタギア150は、4つの内歯153を有している。なお、
図11(b)には、アウタギア150およびインナギア130を用いて構成されたワンウェイクラッチ2を示している。
【0054】
内歯153は、アウタギア150の一側への回転方向における下流側に配置される第1面153aと、アウタギア150の一側への回転方向において第1面153aよりも上流側に配置される第2面153bとを有している。第1面153aは、径方向外側へいくに従ってアウタギア150の一側への回転方向における下流側に傾斜する傾斜面に形成されている。第2面153bは、アウタギア50の他側への回転方向と直交する面に形成されている。
【0055】
内歯153は、アウタギア150の周方向に沿って等間隔で配置されている。各内歯153の内周側端部(第1面153aと第2面153bとの境界部)は、中心が軸心Pとなる円C1を通るように形成されている。つまり、爪部132が弾性変形していない状態では、爪部132の外周側端部が、内歯153の内周側端部よりも径方向外側に位置している。
【0056】
アウタギア150がロータ軸20に対して一側へ回転した場合、インナギア130における爪部132の退避面132aとアウタギア150における内歯153の第1面153aとが当接する。爪部132の退避面132aと内歯153の第1面153aとが当接した後に、アウタギア150がロータ軸20に対してさらに一側へ回転すると、爪部132が内歯153により径方向内側へ押圧されて弾性変形し、爪部132の退避面132aと内歯153の第1面153aとは係合しない。従って、ロータ軸20は回転せずにアウタギア150のみが一側へ回転する。
【0057】
アウタギア150がロータ軸120に対して他側へ回転した場合、インナギア130における爪部132の係合面132bとアウタギア150における内歯153の第2面153bとが当接する。爪部132の係合面132bと内歯153の第2面153bとが当接することにより、爪部132と内歯153とが互いに係合する。
この場合、複数の爪部132と複数の内歯153とが同時に係合するように構成されている。本実施形態の場合、4つの爪部132と4つの内歯153とが同時に係合するように構成されている。爪部132と内歯153とが係合した後は、アウタギア150とロータ軸20とが一体的に他側へ回転する。
【0058】
本実施形態においても、アウタギア150がロータ軸20に対して他側へ回転した場合、複数の爪部132と複数の内歯153とが同時に係合した状態でアウタギア150とロータ軸20とが一体的に回転するため、各爪部132にかかる負荷を相対的に小さくして爪部132に劣化が生じることを抑制でき、耐久性に優れたワンウェイクラッチを構成することが可能となる。
特に、アウタギア150は、インナギア130の爪部132と同じ数の内歯153を有しているため、インナギア130が有するすべての爪部132を同時に内歯153と係合させることができ、各爪部132にかかる負荷を効果的に小さくすることができる。
【0059】
[アウタギアの第3実施形態]
また、アウタギア150は、
図12(a)に示すアウタギア250のように構成することもできる。アウタギア250は、アウタギア150が有する内歯153の数よりも多い数の内歯253を有している点で、アウタギア150と異なっている。
図12(a)に示すように、アウタギア250およびインナギア130を用いてワンウェイクラッチ2を構成した場合、アウタギア250における内歯253の数が、インナギア130における爪部132の数よりも多くなっている。内歯253は、内歯153と同様に形成されている。本実施形態においては、アウタギア250は、8つの内歯253を有している。
なお、
図12(a)には、アウタギア250およびインナギア130を用いて構成されたワンウェイクラッチ2を示している。
【0060】
また、アウタギア250が有する内歯253の数は、アウタギア150が有する内歯153の数よりも多く、円C1の周方向において、アウタギア250における内歯253の配置間隔は、アウタギア150における内歯153の配置間隔よりも小さくなっている。
従って、アウタギア250およびインナギア130を用いて構成したワンウェイクラッチ2において、アウタギア250がロータ軸120に対して他側へ回転したときに、アウタギア250の内歯253がインナギア130の爪部132と係合せずに、アウタギア250が空回りする角度は、アウタギア150およびインナギア130を用いて構成したワンウェイクラッチ2の場合に比べて小さくなる。
【0061】
これにより、ワンウェイクラッチ2を備えた回転ダンパ装置1において、アウタギア250が他側へ回転を開始したときからアウタギア250に回転抵抗が付与されるまでのあそび量を減少させることができ、アウタギア250が他側へ回転を開始してから速やかに回転抵抗を付与することが可能になる。
【0062】
また、本実施形態においては、アウタギア250は8つの内歯253を有し、インナギア130は4つの爪部132を有しており、アウタギア250がロータ軸20に対して他側へ回転した場合、4つの内歯253と4つの爪部132とが同時に係合した状態でアウタギア150とロータ軸20とが一体的に回転するため、各爪部132にかかる負荷を相対的に小さくして、耐久性に優れたワンウェイクラッチを構成することが可能である。
【0063】
[インナギアの第3実施形態]
インナギア130は、
図12(b)に示すインナギア230のように構成することもできる。インナギア230は、2つの爪部232を有している点で、4つの爪部132を有しているインナギア130と異なっている。なお、
図12(b)には、アウタギア150およびインナギア230を用いて構成されたワンウェイクラッチ2を示している。
このように、インナギア230とアウタギア150とを用いてワンウェイクラッチ2を構成した場合も、アウタギア150における内歯153の数を、インナギア230における爪部232の数よりも多くすることができる。
【0064】
このように、2つの爪部232を有するインナギア230と、4つの内歯153を有するアウタギア150とを用いてワンウェイクラッチ2を構成することで、例えばインナギア230と2つの内歯を有するアウタギアとを用いた場合よりも、アウタギア150が他側へ回転したときのあそび量を減少させることができる。
また、2つの爪部232を有するインナギア230は、4つの爪部132を有するインナギア130よりも爪部の数が少ないため、軽量化を図ることが可能である。
【0065】
なお、2つの爪部232を有するインナギア230と、8つの内歯253を有するアウタギア250とを用いてワンウェイクラッチ2を構成することも可能である。
また、インナギアの爪部の数とアウタギアの内歯の数とは、アウタギアの内歯の数がインナギアの爪部の数よりも多く、複数の爪部と複数の内歯とが同時に係合する構成であれば、本実施形態で示した組み合わせ以外の組み合わせとすることも可能である。
【0066】
[インナギアの第4実施形態]
インナギア130は、
図13に示すインナギア330のように構成することもできる。インナギア330は、8つの爪部332を有している点で、4つの爪部132を有しているインナギア130と異なっている。なお、
図13には、アウタギア150およびインナギア330を用いて構成されたワンウェイクラッチ2を示している。
このように、インナギア330とアウタギア150とを用いてワンウェイクラッチ2を構成した場合、インナギア330における爪部332の数が、アウタギア150における内歯153の数よりも多くなる。
【0067】
インナギア330が有する爪部332の数は、インナギア130が有する爪部132の数よりも多く、円C2の周方向において、インナギア330における爪部332の配置間隔は、インナギア130における爪部132の配置間隔よりも小さくなっている。
従って、インナギア330とアウタギア150とを用いて構成したワンウェイクラッチ2において、アウタギア150がロータ軸120に対して他側へ回転したときに、アウタギア150の内歯153がインナギア330の爪部332と係合せずに、アウタギア150が空回りする角度は、インナギア130およびアウタギア150を用いて構成したワンウェイクラッチ2の場合に比べて小さくなる。
【0068】
これにより、ワンウェイクラッチ2を備えた回転ダンパ装置1において、アウタギア150が他側へ回転を開始したときからアウタギア150に回転抵抗が付与されるまでのあそび量を減少させることができ、アウタギア150が他側へ回転を開始してから速やかに回転抵抗を付与することが可能になる。
このように、インナギア330における爪部332の数が、アウタギア150における内歯153の数よりも多くなるように構成した場合も、アウタギア150のあそび量を低減することができる。
【0069】
[インナギアの第5実施形態]
インナギア30は、次のように構成することもできる。
図14に示すインナギア430は、ロータ軸20の延出軸21に嵌装される環状部431と、環状部431から径方向外側に突出する複数の爪部432とを有している。
環状部431は、環状部431の内周面に互いに平行に配置される一対の面取り部431aを有している。環状部431は、延出軸21に一体的に回転可能に支持されている。
爪部432は、環状部431の外周面から一側への回転方向における下流側へ延出するとともに、一側への回転方向における下流側へいくに従って径方向外側(軸心Pから離れる方向)へ向かう舌片状に形成されている。爪部432は、径方向へ弾性変形可能に構成されている。
【0070】
周方向における爪部432の長さは、
図7(a)等に示したインナギア30の爪部32の長さよりも小さく形成されている。
なお、爪部32および爪部432のように、舌片状に形成される爪部の周方向の長さは、爪部32の長さよりも長く形成したり、爪部432よりも短く形成したり、爪部32の長さと爪部432の長さとの間の長さに形成したりといったように、任意の長さに形成することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置
2 ワンウェイクラッチ
10 ハウジング
10A ハウジング本体
20 ロータ軸
21 延出軸
21A 軸片部
25 ロータ翼
30、130、230、330、430 インナギア
31、131、231、331、431 環状部
32、132、232、332、432 爪部
32a 退避面
32b 係合面
50 アウタギア
51 ギア本体
52 外歯ギア
52a 外歯
53、153、253 内歯
55 突起部
60 粘性流体
211 面取り部
213 スリット
214 溝部
C1 (各内歯の先端を通る)円
C2 (各爪部の先端を通る)円
P 軸心