(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】静音路面標示、その塗布装置及び塗布方法
(51)【国際特許分類】
E01F 9/518 20160101AFI20230418BHJP
E01C 23/20 20060101ALI20230418BHJP
E01F 9/576 20160101ALI20230418BHJP
【FI】
E01F9/518
E01C23/20
E01F9/576
(21)【出願番号】P 2018164071
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】518313825
【氏名又は名称】アート産業株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100194869
【氏名又は名称】榎本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 正博
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-003842(JP,A)
【文献】特表2003-524713(JP,A)
【文献】特開平04-020605(JP,A)
【文献】特開昭51-024033(JP,A)
【文献】特開平07-082707(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0016415(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/518
E01C 23/20
E01F 9/576
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを有する走行車の進行方向に向かって路面に静音路面標示を塗布成形する静音路面標示の塗布装置であって、
前記静音路面標示が布部と前記布部上に配置されるリブ及び溝とからなり、
前記リブが、前記布部の長手方向に複数列破線条に存在し、前記布部の長手方向に直交する左右直線方向において、前記リブの左右の両方或いは何れか一方に他のリブが配置され、
前記溝が前記静音路面標示の左右端の一方端又は両方端まで到達し、前記溝からの雨水の排水を可能にするとともに、
前記溝が、前記布部の長手方向に直交する方向に平行位置せず、その位置においては連続的かつ直線状でない静音路面標示の塗布装置であって、
前記リブ及び前記溝を形成するローラを備え、前記ローラを回転させつつ前記静音路面標示の溶融した塗布材を押し伸ばして前記静音路面標示を形成することを特徴とする静音路面標示の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、区画線などの道路に塗布形成される路面標示に、雨水を排水する溝を形成しつつ、タイヤの乗り上げで発生する騒音を低減する、静音路面標示、静音路標示の塗布装置、さらに静音路面標の塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
路面標示は、道路における中央、側部の白線或いはオレンジ色のラインで、それらは対向車線の区画線、車線と側道の区画の境界に塗布される区画線などである。
【0003】
区画線としては、特許文献1のように、その表面に凹凸(リブ)が設けられ、一般には、区画線の長手方向に直交する方向に縞状(特許文献1の
図8)に形成される。
【0004】
リブは、雨天、夜間の車載ライトの乱反射を助けてドライバーの区画線の視認性を高め安全走行に寄与するとともに、車が乗り上げた時にタイヤがリブの凹凸に衝突して音(衝突音)を発し、注意喚起、事故防止、居眠り防止に資する。
【0005】
しかしながら、そのタイヤの衝突音が近隣住民にとって騒音であり、民家近くではリブのない非リブ区画線が用いられている。しかし、リブのない平坦な区画線であると、雨の日、区画線表面に雨水の被膜が形成され、鏡効果で区画線からのライトの反射が低減し、区画線の視認性が低下する。
【0006】
タイヤのリブへの衝突音を低減すべく、区画線の長手方向に平行に条を形成する区画線も提案されているが、雨の日には、やなり雨水が区画線から排水されず、雨水の被膜で区画線の視認性は低下する。
【0007】
そこで、区画線の視認性を確保し、騒音を低減させる区画線が開発されている。例えば、特許文献2の発明は、車両の走行時に騒音の発生がなくて、雨天時の排水が速やかで、しかも路面に水が溜まっても凸状頂部が水面上に突出して車のヘッドライトの光を再帰反射するところの雨天・夜間時における視認性を大幅に改善した騒音低減型の路面標示であって、
路面に樹脂を主成分とした溶融型、溶剤型又は無溶剤型や反応硬化型、或いは水溶性型やエマルション型の所望の塗料からなる直径が1~50mmで高さが2~10mmの凸状半球体2や丸に近い凸状不定形体3、又は大きさが1~50mmで高さが2~10mmの尖った形の多い凸状不定形体4を、路面の一定幅内に不定間隔状に塗布固化させて連続するライン状に施工してなる路面標示というものである。
【0008】
しかしながら、特定の大きさの凸状半球体、凸状不定形体など、特殊な形状の材料を準備、混合するため、材料費が高く、製造工程も増え、割高になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平4-131414号公報
【文献】特開平6-330510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、区画線などの道路に塗布形成される路面標示に、雨水を排水する溝を形成しつつ、タイヤの乗り上げで発生する騒音を低減する、静音路面標示、静音路標示の塗布装置、さらに静音路面標の塗布方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明は、上記の課題を解決するために、
(1)
タイヤを有する走行車の進行方向に向かって路面に塗布形成される静音路面標示であって、
布部と前記布部上に配置されるリブ及び溝とからなり、
前記溝が前記静音路面標示の左右端の一方端又は両方端まで到達し、前記溝からの雨水の排水を可能にするとともに、前記溝が前記布部の長手方向に直交する方向に平行に連続的に直線状に位置しないことを特徴とする静音路面標示。
(2)
前記リブ及び前記溝が、前記布部の長手方向に対して、平面視斜めに縞模様を形成することを特徴とする(1)に記載の静音路面標示。
(3)
前記リブが、前記布部の長手方向に複数列破線条に存在し、前記布部の長手方向に直交する左右直線方向において、前記リブの左右の両方或いは何れかれか一方に他のリブが配置されることを特徴とする(1)に記載の静音路面標示。
(4)
道路の区画線であることを特徴とする(1)に記載の静音路面標示。
(5)
(2)に記載の静音路面標示の塗布装置であって、
前記リブを形成する螺旋条、前記溝を形成する螺旋部を有するローラを備え、前記ローラを回転させつつ前記静音路面標示の溶融した塗布材を押し伸ばして前記静音路面標示を形成することを特徴とする静音路面標示の塗布装置。
(6)
前記ローラの回転スピードを可変とすることで、前記縞模様角を可変とすることを特徴とする(5)に記載の静音路面標示の塗布装置。
(7)
(3)に記載の静音路面標示の塗布装置であって、
前記リブ及び前記溝を形成するローラを備え、前記ローラを回転させつつ前記静音路面標示の溶融した塗布材を押し伸ばして前記静音路面標示を形成することを特徴とする静音路面標示の塗布装置。
(8)
(3)に記載の静音路面標示の塗布装置であって、
前記静音路面標示の溶融した塗布材を移動しながら均し或いは吐出して、前記リブの幅と高さを上下動するシャッターで形成する開口を、前記リブの列の数だけ備えることを特徴とする静音路面標示の塗布装置。
(9)
(2)に記載の静音路面標示の塗布方法であって、
前記静音路面標示の溶融した塗布材を、螺旋条を有するローラで押し伸ばし、前記リブ及び前記溝を連続塗布形成することを特徴する静音路面標示の塗布方法。
(10)
(3)に記載の静音路面標示の塗布方法であって、
前記静音路面標示の溶融した塗布材を、前記リブの列の数と同じであって、前記リブの幅と高さを上下動するシャッターで形成する開口で、移動しながら均し、或いは前記開口から吐出して、前記リブを連続塗布形成することを特徴する静音路面標示の塗布方法。
の構成とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上の構成であるので、以下の効果を奏する。すなわち、既存の路面標示の基材料である塗布材に新たな素材の追加をすることなく、既存の路面標示の塗布材をそのまま用いて、リブ及び溝の形状を特定することで、タイヤとリブとの衝突音(騒音)を軽減することができ、雨天、夜の車両搭載ライトの高反射を保持しつつ、騒音を抑制する路面標示を提供することができる。
【0013】
複数のリブ列と同じ数の上下動するシャッターを備える開口によって、前記リブの幅と高さを決定し、路面標示材料を移動しながら均し、吐出することで、リブを連続塗布形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明である静音路面標示の第一実施形態の説明図で、静音路面標示の(A)平面図、(B)長手方向に直交する縦断面B-B‘矢視図、(C)長手方向に直交する縦断面C-C‘矢視図である。
【
図2】本発明である静音路面標示の第二実施形態の説明図で、(A)平面図、(B)長手方向縦断面B-B‘矢視図、(C)長手方向に直交する縦断面C-C‘矢視図、(D)長手方向に直交する縦断面D-D’矢視図である。
【
図3】本発明である静音路面標示の塗布装置の第一実施形態の平面模式図である。
【
図4】本発明である静音路面標示の塗布装置の第二実施形態の斜視模式図である。
【
図5】本発明である静音路面標示の第三実施形態の説明図で、(A)平面図、(B)長手方向縦断面B-B‘矢視図、(C)長手方向縦断面C-C‘矢視図である。
【
図6】本発明である静音路面標示の第四実施形態の説明図で、(A)平面図、(B)長手方向縦断面B-B‘矢視図、(C)長手方向縦断面C-C‘矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づき本発明について詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図1に示すように、本発明の第一実施形態の静音路面標示1は、タイヤを有する走行車の進行方向に向かって路面(図示省略、
図1(B)、(C)の静音路面標示1の下方が路面)に塗布形成され、布部1aと布部1a上に配置されるリブ1b及び溝1cとからなる。溝1cは、特別、溝が穿設されている訳ではなく、布部1aのままで、リブ1bからみた場合、一段低くなっている状態である。以下の溝も同様である。
【0017】
溝1cが静音路面標示の左右端の一方端又は両方端まで到達し、路面に溝1cからの雨水の排水を可能にするとともに、溝1cが布部1aの長手方向に直交する方向に平行に連続的に直線状に位置せず、リブ1bが、タイヤを常にリフトし、タイヤが溝1cに脱落しない。したがって、タイヤが溝に脱落するとき、リブの角に衝突する時に発生する走行音が極めて低減される。
【0018】
具体的には、例えば、
図1(A)に示すように、リブ1b及び溝1cが、布部1aの長手方向に対して、平面視で、斜めに縞模様を形成する。これであれば、前段の作用、効果を奏する。
【実施例2】
【0019】
図2に示すように、本発明の第二実施形態の静音路面標示2は、タイヤを有する走行車の進行方向に向かって路面(図示省略、
図2(B)、(C)、(D)の静音路面標示2の下方が路面)に塗布形成され、布部2aと布部2a上に配置されるリブ2b及び溝2cとからなる。
【0020】
リブ2bが、布部2aの長手方向に複数列破線条に存在し、布部2aの長手方向に直交する左右直線方向においては、リブ2bの左右の両方或いは何れかれか一方に他のリブ2bが配置される。当該構成であっても、路面に溝2cからの雨水の排水を可能にするとともに、いずれかのリブ2bが、タイヤを常にリフトし、タイヤが溝2cに脱落しない。
【実施例3】
【0021】
図3に示すように、本発明の第一実施形態の静音路面標示の塗布装置3は、実施例1の形態の静音路面標示1の塗布用であり、静音路面標示1の溶融した塗布材5を回転で押し伸ばしつつリブ1b及び溝1cを形成するローラ3dと、ローラ3dを回転可能に保持する左右の側壁3a、3aと、ローラ3dの進行方向側(上向き矢印矢視方向側)に位置して、路面からリブ1bの高さのスペースを開けて起立する仕切り3cと、ローラ3dの反進行方向側に路面からリブ1bの高さのスペースをあけて起立する壁3bとからなる。
【0022】
壁3b、仕切り3cのスペース、螺旋条の深さでリブ1bの高さを調節する。それらの高さも可変とすることで、リブ1bの高さも可変となる。もっとも、リブ1bの高さの調節に影響があるのが、ローラ3dの高さ位置、螺旋条3eの深さである。螺旋条3eの溝を平坦にすれば平坦なリブ1bが、凹凸があればそのように形成できる。
【0023】
ローラ3dは、リブ1bを形成する螺旋条3eと、溝1cを形成する螺旋部(ここでは平坦部3f)を備える。ローラ3dの回転スピードを可変とすることで、リブ1bと溝1cの縞模様角を可変とすることができる。ローラ3dの回転スピードが早ければ長手方向に平行な方向に近づき、回転スピードが遅ければ長手方向に直交する方向に平行な方向に近づく。
【0024】
他方、実施例2の静音路面標示2をローラで塗布する場合、リブ2bに対応する溝を有するローラを回転させ、静音路面標示の溶融した塗布材5を押し伸ばせばよい。
【実施例4】
【0025】
図4に示すように、本発明の第二実施形態の静音路面標示の塗布装置4は、実施例2の形態の静音路面標示2の塗布用であり、静音路面標示2の溶融した塗布材5を移動しながら均し或いは吐出して、リブ2bの幅と高さを上下動するシャッター4dで形成する開口4cを、リブ2bの列の数だけ備える。
【0026】
具体的には、少なくとも、布部2aを形成する隙間4eを底部に備え、隙間4eからリブ2bを形成する開口4cが連設され壁4bと、開口4cを開閉するシャッター4dと、壁4bの左右に側壁4a、4aを備える。
【実施例5】
【0027】
図5に示すように、本発明の第三実施形態の静音路面標示11は、実施例1の静音路面標示1において、中央に縦リブ12が付加されたものである。具体的には、タイヤを有する走行車の進行方向に向かって路面に塗布形成され、布部1aと布部1a上に配置されるリブ1b、溝1d及び長手方向に平行な縦リブ12とからなる。
【0028】
このような構成であっても、溝1dが静音路面標示11の左右端の一方端まで到達し、路面に溝1dからの雨水の排水を可能にするとともに、溝1dが布部1aの長手方向に直交する方向に平行に連続的に直線状に位置せず、リブ1b及び縦リブ12がタイヤを常にリフトし、タイヤが溝1dに脱落しない。このような静音路面標示11であっても、実施例3のローラ3dにおいて、幅方向中央に輪状に一つの溝を設けることで、塗布形成できる。
【実施例6】
【0029】
図6に示すように、本発明の第四実施形態の静音路面標示11aは、実施例1において、縦リブ12が二本追加、実施例5にいて、縦リブが一本追加されたもので、路面に連絡せず、排水できない仕切区画12aが形成されるものである。
【0030】
具体的には、タイヤを有する走行車の進行方向に向かって路面に塗布形成され、布部1aと布部1a上に配置されるリブ1b、溝1e、長手方向に平行な二本の縦リブ12及びリブ1bと縦リブ12で形成された仕切区画12aとからなる。
【0031】
このような構成であっても、溝1eが静音路面標示11aの左右端の一方端まで到達し、路面に溝1eからの雨水の排水を可能にするとともに、溝1eが布部1aの長手方向に直交する方向に平行に連続的に直線状に位置せず、リブ1b及び縦リブ12がタイヤを常にリフトし、タイヤが溝1eに脱落しない。このような静音路面標示11aであっても、実施例3のローラ3dにおいて、幅方向に輪状に二列、溝を設けることで、塗布形成できる。
【0032】
そして、このように一部排水できない仕切区画12aがあったとしても、路面に連設して排水できる溝1eがあれば、視認性はさほど低下しない。
【符号の説明】
【0033】
1 静音路面標示
1a 布部
1b リブ
1c 溝
1d 溝
1e 溝
2 静音路面標示
2a 布部
2b リブ
2c 溝
3 静音路面標示の塗布装置
3a 側壁
3b 壁
3c 仕切り
3d ローラ
3e 螺旋条
3f 平坦部
4 静音路面標示の塗布装置
4a 側壁
4b 壁
4c 開口
4d シャッター
4e 隙間
5 塗布材
11 静音路面標示
11a 静音路面標示
12 縦リブ
12a 仕切区画