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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】ヒンジ
(51)【国際特許分類】
   G03B 27/62 20060101AFI20230418BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20230418BHJP
   E05D 3/06 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
G03B27/62
F16C11/04 F
E05D3/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018190273
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020060625
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 眞一
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕文
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-112632(JP,A)
【文献】特開2016-102879(JP,A)
【文献】特開2011-191728(JP,A)
【文献】特開2013-186277(JP,A)
【文献】特開2003-167303(JP,A)
【文献】特開2001-154287(JP,A)
【文献】特開2013-134395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 27/62
F16C 11/04
E05D 3/06
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一連結対象物に固定される第一ウイング部材と、
前記第一ウイング部材に固定されるカム部材と、
第二連結対象物に固定されるとともに前記第一ウイング部材に第一回動ピンを介して回動可能に連結される第二ウイング部材と、
前記第二ウイング部材に収容されつつ前記カム部材に接近する方向および前記カム部材から離間する方向に移動可能なスライド部材と、
前記スライド部材を前記カム部材に接近する方向に付勢することにより前記スライド部材を前記カム部材に当接させる付勢部材と、を具備し、
前記第二ウイング部材は、前記第一ウイング部材に前記第一回動ピンを介して回動可能に連結される中間部材備え、
前記中間部材は、前記スライド部材に当接することによって、前記スライド部材が移動するときの摺動抵抗を生じさせる凸部を備え、
前記凸部は、前記スライド部材が前記カム部材に離間する方向側部分である前部の幅に比べて前記スライド部材が前記カム部材に接近する方向側部分である後部の幅が広く、前記前部と前記後部との間に後方に行くに従って幅が徐々に広がる部分を有し、かつ、突出方向における高さが一様となるように構成されている、
ヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、例えば事務機器の本体に事務機器の原稿圧着板を開閉可能に連結する等、第一連結対象物に第二連結対象物を開閉可能に連結するヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、スキャナー等、オフィスで使用される事務機器の多くは、その本体の上面に原稿読み取り部(コンタクトガラス)を具備するとともに、当該原稿読み取り部を覆う原稿圧着板を具備する。原稿圧着板は、原稿読み取り部に載置された原稿を原稿読み取り部に密着させるとともに原稿読み取り部に対する原稿の位置を保持するものである。
【0003】
事務機器の本体と原稿圧着板とを連結する器具としては、第一ウイング部材と、第一ウイング部材に固定されるカム部材と、第一ウイング部材に回動軸を介して回動可能に連結される第二ウイング部材と、カム部材に接近する方向およびカム部材から離間する方向に移動可能なスライド部材と、スライド部材をカム部材に接近する方向に付勢することによりスライド部材をカム部材に当接させる付勢部材と、を具備するヒンジが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-191728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ヒンジでは、第一ウイング部材に対して第二ウイング部材が回動したときに緩衝効果(ダンパー効果)を生じさせるために、ダンパーを備えることが考えられるが、既存のヒンジにダンパーを設けるためには全体の設計変更等が必要となり、実現することが困難な場合がある。
また、前記ヒンジにおいて、ダンパーを備えるものであっても、当該ダンパーによる緩衝効果を第二ウイング部材の回動角度によって調節することが要求される場合があるが、要求される仕様によっては実現することが困難な場合がある。例えば、第二ウイング部材が開く方向に回動するほどダンパーによる緩衝効果が増加する仕様とするとき、ダンパーやカム部材等の設計変更等が必要となる場合があり、実現することが困難な場合がある。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、ダンパー以外の構成でダンパー効果を生じさせることができ、また、第二ウイング部材が開く方向に回動するほどダンパー効果が増加するものを、簡易に実現することができるヒンジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、第一連結対象物に固定される第一ウイング部材と、前記第一ウイング部材に固定されるカム部材と、第二連結対象物に固定されるとともに前記第一ウイング部材に第一回動ピンを介して回動可能に連結される第二ウイング部材と、前記第二ウイング部材に収容されつつ前記カム部材に接近する方向および前記カム部材から離間する方向に移動可能なスライド部材と、前記スライド部材を前記カム部材に接近する方向に付勢することにより前記スライド部材を前記カム部材に当接させる付勢部材と、を具備し、前記第二ウイング部材は、前記第一ウイング部材に前記第一回動ピンを介して回動可能に連結される中間部材備え、前記中間部材は、前記スライド部材に当接することによって、前記スライド部材が移動するときの摺動抵抗を生じさせる凸部を備え、前記凸部は、前記スライド部材が前記カム部材に離間する方向側部分である前部の幅に比べて前記スライド部材が前記カム部材に接近する方向側部分である後部の幅が広く、前記前部と前記後部との間に後方に行くに従って幅が徐々に広がる部分を有し、かつ、突出方向における高さが一様となるように構成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、ダンパー以外の構成でダンパー効果を生じさせることができ、また、第二ウイング部材が開く方向に回動するほどダンパー効果が増加するものを、簡易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るヒンジを具備する複合機を示す右側面図。
図2】同じくヒンジの開放状態を示す右側面図。
図3】同じくヒンジのリフト状態を示す右側面図。
図4】同じくヒンジのリフト状態を示す正面図。
図5】同じくヒンジのリフト状態を示す背面図。
図6】同じくヒンジのリフト状態を示す平面図。
図7】同じくヒンジのリフト状態を示す底面図。
図8】同じくヒンジの閉塞状態を示す右側面図。
図9】同じくヒンジの開放状態を示す断面図。
図10】同じくヒンジの中間部材を示す斜視図。
図11】同じくヒンジの中間部材を示す正面図。
図12】同じくヒンジの中間部材を示す右側面図。
図13】同じくヒンジの中間部材を示す左側面図。
図14】同じくヒンジの中間部材を示す平面図。
図15】同じくヒンジの中間部材を示す底面図。
図16】同じくヒンジの中間部材を示す断面図。
図17】同じくヒンジの中間部材を示す拡大断面図。
図18】同じくヒンジの中間部材を示す拡大平面図。
図19】同じくヒンジの中間部材を示す拡大平面図。
図20】同じくヒンジの中間部材を示す拡大平面図。
図21】同じくヒンジの中間部材を示す拡大平面図。
図22】同じくヒンジの中間部材を示す拡大平面図。
図23】同じくヒンジの中間部材を示す拡大平面図。
図24】同じくヒンジの中間部材を示す拡大平面図。
図25】同じくヒンジの中間部材を示す拡大平面図。
図26】同じくヒンジの中間部材を示す拡大平面図。
図27】同じくヒンジの中間部材を示す拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では図1を用いて事務機器の実施の一形態である複合機1について説明する。
複合機1は本体2および原稿圧着板3を具備する。本実施形態において、複合機1は本発明の第一実施形態に係るヒンジ100を具備する構成とするが、複合機1が後述する他の実施形態に係るヒンジを具備する構成とすることも可能である。
【0012】
本体2は本発明に係る第一連結対象物の実施の一形態である。
本体2は原稿読み取り装置、制御装置、印刷装置、表示装置および入力装置を具備する。
原稿読み取り装置は本体2の上面に配置される。原稿読み取り装置は本体2の上面に載置された原稿を読み取る(原稿の画像情報を生成する)。
制御装置は複合機1の各部の動作、より詳細には原稿読み取り装置、後述する印刷装置および後述するADFの動作を制御する。
また、制御装置は原稿読み取り装置が生成した画像情報および本体2に接続された回線(インターネット回線等)を通じて取得した画像情報を記憶することが可能である。
印刷装置は原稿読み取り装置の下方に配置される。印刷装置は制御装置が記憶した画像情報に基づいて所定の用紙に画像を印刷する。
表示装置は例えば液晶パネルからなり、複合機1の動作状況等に係る情報を表示する。
入力装置は例えばボタン、スイッチ等からなり、作業者が複合機1に対する指示等を入力する際に操作する。表示装置および入力装置は本体2の上面前部に配置される。
【0013】
原稿圧着板3は本発明に係る第二連結対象物の実施の一形態である。
原稿圧着板3は原稿読み取り装置の上に載置された原稿を原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、原稿読み取り装置が原稿を読み取る際に原稿が動く(原稿読み取り装置との相対的な位置が変化する)ことを防止する。
原稿圧着板3は読取前原稿収容トレイ、ADF(Auto Document Feeder)および読取後原稿収容トレイを具備する。
ADFは読取前原稿収容トレイに積層状態で収容された複数枚の原稿を一枚ずつ順に取り出して原稿読み取り装置の上の所定の読取位置に載置する。原稿読み取り装置による原稿の読み取りが終了した後、ADFは読取位置に載置された原稿を読取後原稿収容トレイに搬送する。
【0014】
「事務機器」は、少なくとも原稿を読み取る(原稿の画像情報を取得する)機能を具備する装置を指す。
事務機器の具体例としては、(a)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報を他の機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に送信する機能を具備するスキャナー、(b)原稿を読み取る機能、読み取った原稿に係る画像情報を通信回線を介して他の機器に送信する機能および他の機器から取得した画像情報をプリントアウトする機能を具備するファクス、(c)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報をプリントアウトする機能を具備するコピー機、(d)上記スキャナー、ファクス、およびコピー機としての機能を兼ねる複合機、等が挙げられる。
【0015】
以下で詳述する各実施形態に係るヒンジはいずれも複合機1の本体2に原稿圧着板3を開閉可能(回動可能)に連結する用途に用いられるが、本発明に係るヒンジの用途はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係るヒンジは、「二つの部材のうちの一方の部材(第一連結対象物)に他方の部材(第二連結対象物)を開閉可能に連結する用途」に広く適用可能である。
本発明に係るヒンジが適用される他の用途の具体例としては、事務機器の本体にトナーカートリッジを交換するためのハッチ(蓋)を開閉可能に連結する用途、自動車の車体にボンネットを開閉可能に連結する用途、便器に便座を開閉可能に連結する用途、等が挙げられる。
【0016】
以下の説明では、原稿圧着板3が閉じているとき(原稿圧着板3の下面が本体2の上面に当接しているとき)の原稿圧着板3の回動角度θ(より厳密には、本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θ)を「0度」とし、原稿圧着板3が開く方向に回動した場合に回動角度θが増加する(回動角度θが正になる)ように原稿圧着板3の回動角度θを定義する(図1参照)。本実施形態において、本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θは、後述する第二ウイング部材の第一ウイング部材に対する閉状態からの回動角度とも一致する。このため、本実施形態では双方とも「回動角度θ」と記載する。
【0017】
以下では、図1から図27を用いて本発明に係るヒンジの一実施形態であるヒンジ100について説明する。
図1に示すように、ヒンジ100は複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結する。
図2から図9に示すように、ヒンジ100は下部固定部材10、中間部材20、第一回動ピン71、上部固定部材30、第二回動ピン72、受圧部73、第一スライダ40、第二スライダ50、バネ60、ダンパー62、カム部材80、及びオイルフェンス90を具備する。
以下では便宜上、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているとき(回動角度θ=0度のとき)の複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向をそれぞれヒンジ100の上下方向、前後方向および左右方向に対応させて)ヒンジ100を構成する各部材の形状を説明する。
【0018】
下部固定部材10は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。下部固定部材10は複合機1の本体2に固定される。
本実施形態の下部固定部材10は一枚の金属板を適宜折り曲げることにより成形される。下部固定部材10は底板11、左右の側板12・12、および背板13を具備する。
【0019】
底板11は下部固定部材10の下部を成す板状の部材である。底板11は上下一対の板面を有する。底板11の形状は平面視で前後方向にやや長い概ね長方形である。
【0020】
側板12は下部固定部材10における左右それぞれの側部を成す板状の部材である。側板12は側面視で概ね前下がりの階段の如き形状を有する。側板12の下端部は底板11の端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板11および側板12・12が形成される)。側板12の後上端部には、第一回動ピン71を挿通するための貫通孔が開口される。
【0021】
背板13は下部固定部材10の後部を成す板状の部材である。背板13は前後一対の板面を有する。背板13の形状は正面視で左右方向にやや長い概ね長方形である。
背板13の下端部は底板11の後端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板11および背板13が形成される)。
【0022】
図10から図17に示すように、中間部材20は、一枚の金属板を適宜折り曲げることにより、天板21及び左右の側板22・22で形成される部材である。
天板21は、中間部材20の上部を成す板状の部材である。天板21は、上下一対の板面を有する。天板21の形状は平面視で前後方向にやや長い概ね長方形である。
側板22は、中間部材20における左右それぞれの側部を成す板状の部材である。側板22の上端部は天板21の端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、天板21および側板22・22が形成される)。側板22の後上端部には、第一回動ピン71を挿通するための貫通孔が開口される。側板22の形状は側面視で前後方向にやや長い概ね長方形である。
中間部材20は後述する如く第一スライダ40、第二スライダ50、バネ60、ダンパー62等を収容した状態で、第一回動ピン71を介して下部固定部材10に回動可能に支持される。側板21・21の後部には、第一回動ピン71を挿通するための貫通孔が左右方向に開口されている。
【0023】
図2から図9に示すように、第一回動ピン71は本発明に係る「第一ウイング部材に対する第二ウイング部材の回動軸(第二ウイング部材を第一ウイング部材に回動可能に連結する回動軸)」の実施の一形態であり、概ね円柱形状の部材である。
【0024】
第一回動ピン71は、中間部材20の側板21・21の貫通孔及び下部固定部材10の側板12の貫通孔に挿通される。中間部材20は第一回動ピン71を介して下部固定部材10に回動可能に連結される。
【0025】
上部固定部材30は本発明に係る固定部材の実施の一形態であり、一枚の金属板を適宜折り曲げることにより、天板及び左右の側板31・31で形成される略筒状の部材である。上部固定部材30は後述する如く第二回動ピン72を介して中間部材20に回動可能に支持される。また、上部固定部材30は原稿圧着板3に固定されている。
【0026】
第二回動ピン72は本発明に係る「中間部材に対する固定部材の回動軸(固定部材を中間部材に回動可能に連結する回動軸)」の実施の一形態であり、上部固定部材30を中間部材20に回動可能に連結する回動軸を成す部材である。第二回動ピン72は概ね円柱形状の部材であり、上部固定部材30及び中間部材20の前部に挿通される。その結果、上部固定部材30は第二回動ピン72を介して中間部材20に回動可能に連結される。
【0027】
ヒンジ100では、固定部材10に対して上部固定部材30及び中間部材20が閉じている状態(回動角度θ=0°)を閉塞状態とし、固定部材10に対して上部固定部材30及び中間部材20が開いている状態を開放状態とする。また、ヒンジ100では、ヒンジ100の開放状態において、中間部材20に対して上部固定部材30が開く方向に回動した状態をリフト状態とする。
【0028】
受圧部73は、本発明に係る受圧部の実施の一形態である。受圧部73は、略T字状に形成される一枚の金属製の板状部材を折り曲げて形成された部材であり、上部固定部材30の天板にビス等によって固定される。受圧部73は、背板部73aと、左右の側板部73b・73bと、左右の固定部73c・73cと、曲板部73dと、を備える。
側板部73bは背板部73aから折り曲げられる。側板部73bには、第二回動ピン72が挿通される貫通孔が形成される。
固定部73cは側板部73bの端部から外側に折り曲げられる。固定部73cは、上部固定部材30の天板に固定される部分である。
曲板部73dは、側板部73bの貫通孔よりも背板部73a側(第二回動ピン72と反対方向)に配置される。曲板部73dは背板部73aから後方(第二スライダ50側)に突出するように湾曲して曲面を形成しつつその端部が側板部73b間に位置するように折り曲げられる。曲板部73dの端部は、側板部73bに固定される。曲板部73dの下方に突出する曲面部分の外側の面(第二スライダ50側の面)はカム面として構成され、第二スライダ50のカム当接面52と当接する。曲板部73dのカム面として構成される部分は、異なる曲率が連続する曲面で構成される。
ここで、曲板部73dのカム面として構成される部分が真円の曲率で形成される曲面で構成される場合(例えば、円柱の外面の場合)には、曲板部73d以外の仕様を変更しなければ、中間部材20に対する上部固定部材30の回動角度に応じたトルク制御を行うことは困難であったが、このように曲板部73d(曲板部73dのカム面)が構成されることから、中間部材20に対する上部固定部材30の回動角度に応じたトルク制御を行うことができる。
また、このように受圧部73が一枚の金属製の板状部材を折り曲げて形成されることから、ピン状に構成されるものに比べてコストを低減することができる。
【0029】
第一スライダ40は本発明に係るスライド部材の実施の一形態である。本実施形態の第一スライダ40は樹脂材料からなる。
第一スライダ40は後面にカム当接面41を備える。第一スライダ40にはバネ60の後端部を収容するバネ受け穴が形成されている。第一スライダ40は中間部材20の内部における後部で前後方向に摺動可能に収容される。
【0030】
第二スライダ50は本発明に係るスライド部材の実施の一形態である。本実施形態の第二スライダ50は樹脂材料からなる。
第二スライダ50は前面にカム当接面52を備える。第二スライダ50にはバネ60の前端部を収容するバネ受け穴が形成されている。
第二スライダ50のバネ受け穴の底面には、ダンパー62の先端部62aを押圧する押圧凹部53が第一回動ピン71の側に向かって突出して形成されている。
【0031】
本実施形態では、「中間部材20、上部固定部材30、第二スライダ50、第二回動ピン72および受圧部73を合わせたもの」が本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態に相当する。言い換えれば、本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態は、中間部材20、上部固定部材30、第二スライダ50、第二回動ピン72および受圧部73を具備する。そして、上部固定部材30が原稿圧着板3に固定されることにより、第二ウイング部材は第二連結対象物に固定される。
【0032】
本実施形態においては、第二ウイング部材が第一ウイング部材に最も近接した状態を第二ウイング部材の「閉状態」(原稿圧着板3が本体2に対して閉じている状態)とする。閉状態とは、第二ウイング部材の第一ウイング部材に対する閉状態からの回動角度θが0度となる状態を指す。また、第二ウイング部材が第一ウイング部材から最も離間した状態を第二ウイング部材の「全開状態」とする。全開状態とは、原稿圧着板3が本体2に対して開いている状態であり、回動角度θが90度となる状態を指す。
【0033】
バネ60は、付勢部材の実施の一形態であり、金属製の巻きバネ(圧縮バネ)で構成される。バネ60は中間部材20の内部(第一スライダ40と第二スライダ50とのバネ受け孔)に収容される。
【0034】
バネ60の後端部は第一スライダ40に形成されたバネ受け穴に挿入されてバネ受け穴の底面に当接する。また、バネ60の前端部は第二スライダ50に形成されたバネ受け穴に挿入されてバネ受け穴の底面に当接する。
【0035】
バネ60が発生する付勢力、すなわち、圧縮される方向に弾性変形したバネ60が元の形状(外力が作用していないときの形状)に戻ろうとする力(弾性力)により、第一スライダ40は中間部材20の長手方向のうち第一回動ピン71に接近する方向に付勢され、第二スライダ50は中間部材20の長手方向のうち受圧部73に接近する方向に付勢される。
【0036】
ダンパー62は、第一スライダ40及び第二スライダ50のバネ受け穴に収容されている。ダンパー62の本体部は、第一スライダ40の底部に固定され、その先端部62aが第二回動ピン72の側に突出する。ダンパー62は、第二スライダ50の押圧凹部53によって先端部62aが押圧力を受けたときに反力を発生させる。このため、当該反力により第一スライダ40が移動する速度が小さくなり、ダンパー62による緩衝効果が発生する。ダンパー62は一般的な流体ダンパーで構成される。
【0037】
カム部材80は樹脂材料からなる。カム部材80は下部固定部材10の背板13にビス等によって固定される。カム部材80の上後部に形成された貫通孔には、第一回動ピンが挿通される。カム部材80の上後部には、第一スライダ40のカム当接面41に当接するカム面81が形成されている。
【0038】
カム部材80を下部固定部材10に取付け、第二ウイング部材を閉状態とした際には、第一スライダ40のカム当接面41はカム部材80のカム面81に当接するとともに、第二スライダ50のカム当接面52が受圧部73の曲板部73dに当接する。
その結果として、バネ60に生じる弾性力により、中間部材20(ひいては本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態)は下部固定部材10に対して開く方向に回動するように付勢され、上部固定部材30は中間部材20に対して閉じる方向に回動するように付勢される。この際、ダンパー62の先端部62aは第二スライダ50の押圧凹部53によって押圧され、本体部の側に押し込まれる。
【0039】
本実施形態では、第二ウイング部材の第一ウイング部材に対する閉状態からの回動角度θが0度から第一の所定角度φ1までの第一領域にあるとき(0度≦θ≦φ1のとき)、バネ60に生じる弾性力により、第二ウイング部材を第一ウイング部材に対して開状態となる方向に回動させる構成としている。例えば、第一の所定角度φ1は70度(回動角度θ=第一の所定角度φ1=70度)に設定されている。なお、第一の所定角度φ1は70度以外の他の角度に設定することも可能である。
【0040】
本実施形態においては、上部固定部材30に固定された原稿圧着板3の自重に起因してヒンジ100を閉じようとする回転力と、バネ60の付勢力に起因してヒンジ100を開こうとする回転力と、が概ね平衡するように、第一スライダ40のカム当接面41またはカム部材80のカム面81の形状等が予め定められる。
このように構成することにより、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θが0度からφ1までの範囲において作業者が原稿圧着板3から手を離した場合には、回動角度θが保持される。
【0041】
オイルフェンス90は、カム部材80のカム面81の近傍において、カム部材80のカム面81及び第一スライダ40のカム当接面41の前方に配置される。オイルフェンス90は、中間部材20の閉状態から開状態まで(中間部材20の回動範囲の全域に亘って)、第一スライダ40及びカム部材80の外側から、第一スライダ40のカム当接面41とカム部材80のカム面81との当接部分側に異物(例えば原稿等)が入り込むことを防止する。オイルフェンス90は、カム部材80のカム面81(第一スライダ40のカム当接面41とカム部材80のカム面81との当接部分)を前方外側から見えないようにして、外側との空間を遮蔽するように構成される。
オイルフェンス90は、第一スライダ40とカム部材80とに支持され、中間部材20の回動動作とともに移動可能に構成される。
【0042】
オイルフェンス90は、本体部91と、一対の第一アーム92と、一対の第二アーム93と、を具備する。
本体部91は、カム部材80(カム面81)よりも左右幅が大きい平板状に構成される。
第一アーム92は、本体部91から第二回動ピン72側に突出し、突出側の端部において左右方向外側にさらに突出する凸部を有するように形成される。
第二アーム93は、本体部91から下部固定部材10側に突出し、突出側の端部において左右方向内側にさらに突出する凸部を有するように形成される。
【0043】
第一スライダ40は、第一案内部42を備える。
第一案内部42は、第一スライダ40の左右の側面に形成される溝(貫通溝)であり、オイルフェンス90の第一アーム92の凸部が配置されてオイルフェンスの90の移動を案内する。
第一案内部42は、第一スライダ40の正面側左右において平板が突出し、当該平板に第一スライダ40の移動方向に沿って直線状に形成される。
【0044】
カム部材80は、第二案内部82を備える。
第二案内部82は、カム部材80の左右の側面に形成される溝(凹状の溝)であり、オイルフェンス90の第二アーム93の凸部が配置されてオイルフェンスの90の移動を案内する。
第二案内部82は、カム部材80底部から上方に延び、カム面81の近傍で前上方に屈曲するように形成される。
【0045】
このように、オイルフェンス90は、カム部材80のカム面81近傍においてカム部材80のカム面81及び第一スライダ40のカム当接面41との前方(カム部材80と第一スライダ40の当接部分の前方)に配置され、第一スライダ40及びカム部材80の外側から、第一スライダ40のカム当接面41とカム部材80のカム面81との当接部分側に異物(例えば原稿等)が入り込むことを防止することから、第二ウイング部材の閉状態から開状態まで、例えば、本体2の上面に配置された原稿が第一スライダ40のカム当接面41とカム部材80のカム面81との当接部分側に入り込んで、当該原稿にオイルが付着すること等を確実に防止することができる。
また、オイルフェンス90は、第一スライダ40のカム当接面41とカム部材80のカム面81との当接部分を前方外側から見えないようにして外側との空間を遮蔽するように構成されることから、カム部材80のカム面81が極力露出しないこととなり、カム部材80側からオイルが外側に飛散することを抑制することができる。
また、オイルフェンス90は、第一スライダ40とカム部材80とに支持され、中間部材20の回動動作とともに移動可能に構成されることから、異物が第一スライダ40のカム当接面41とカム部材80のカム面81との当接部分側に入り込むことをより確実に防止することができる。
【0046】
なお、オイルフェンス90が、第一スライダ40とカム部材80とに支持される構成はこのような構成に限定されるものではない。例えば、オイルフェンス90の第一アーム92が凸部を有さずに案内溝を有し、第一スライダ40が第一案内部43を有さずに凸部を有することによって、オイルフェンス90が第一スライダ40に支持される構成とすることもできる。また例えば、オイルフェンス90の第二アーム93が凸部を有さずに案内溝を有し、カム部材80が第二案内部82を有さずに凸部を有することによって、オイルフェンス90がカム部材80に支持される構成とすることもできる。
【0047】
図9から図11、または、図14から図18に示すように、中間部材20は、凸部23を備える。
凸部23は、第一スライダ40に当接して、第二ウイング部材が回動して第一スライダ40が前後方向に移動することによって摺動抵抗(ダンパー効果)を生じさせる。凸部23は、中間部材20の天板21における内側の面(下方側の面)の左右中央且つ後方部に設けられ、中間部材の天板21から下方に突出して第一スライダ40の天板に当接する。凸部23は、中間部材20の天板21の左右中央且つ後方部において、前後方向に沿って左右一対の切込みを形成して、当該部分を天板21の外側(上方)側から内側(下方)に若干押込むようにして形成される。中間部材20の凸部23が形成される部分の外側は、凹状に形成され、平面視で凹部23と略同一の形状とされる。
【0048】
中間部材20の凸部23は、前方の左右方向の幅に比べて後方の左右方向の幅が広く構成される部分を有する。凸部23は、平面視において、前部において比較的左右方向の幅が狭く、中央部において後方に行くに従って左右方向に広がる末広がりとなり、後部において中央部の後端部と同一の幅に構成される。凸部23では、前部に比べて中央部または後部の方が第一スライド部材に当接する部分(左右の幅)が大きく構成される。中間部材20の凸部23は、第一スライダ40がカム部材80に離間する方向側部分(凸部23の前部)におけるカム部材41の移動方向と直交する方向の長さに比べて、第一スライダ40がカム部材80に離間する方向側部分(凸部23の中央部と後部)におけるカム部材41の移動方向と直交する方向の長さが長く構成される。
【0049】
第二ウイング部材が閉塞状態のとき、中間部材20の凸部23の前端部において第一スライダ40に当接し、凸部23の他の部分は第一スライダ40に当接していない。
第二ウイング部材が閉塞状態から開く方向に回動すると、第一スライダ40が後方(中間部材20の後方)に移動(第一スライダ40のカム当接面41がカム部材80のカム面81に近接する方向に移動)して、中間部材20の凸部23(凸部23の前部)が第一スライダ40と当接する。そして、第一スライダ40がより後方に移動していくと中間部材20の凸部23が第一スライダ40に当接する部分の面積は次第に大きくなる。ことき、第一スライダ40が後方に移動して中間部材20の凸部23の中央部においても当接すると、当該凸部23の中央部では前部に比べて左右の幅(凸部23における第一スライダ40の移動方向に直交する方向の幅)が大きく構成されることから、凸部23が当接することによって生じさせる第一スライダ40の摺動抵抗はより大きくなる。
【0050】
このように中間部材20の凸部23が前方(凸部23における第一スライダ40がカム部材80に離間する方向側部分)の左右方向の幅(カム部材41の移動方向と直交する方向の長さ)に比べて後方(凸部23における第一スライダ40がカム部材80に離間する方向側部分)の幅(カム部材41の移動方向と直交する方向の長さ)が広く構成される部分を有することによって、第二ウイング部材が閉塞状態から開く方向に回動して回動角度θが大きくなって第一スライダ40が後方に移動するほど、中間部材20の凸部23と第一スライダ40の天板との摺動抵抗を増加させることができる。
したがって、ヒンジ100によれば、ダンパー62の他に(ダンパー62以外の構成で)ダンパー効果を生じさせることができ、また、第二ウイング部材が開く方向に回動するほどダンパー効果が増加するものを、簡易に実現することができる。
【0051】
次に、中間部材20の凸部23の他の実施形態について説明する。
図19に示すように、凸部23は、平面視略V字状に形成され、当該V字の下方が前方を向くように配置されて、前方の左右方向の幅に比べて後方の幅が広く構成される部分を有する構成とすることもできる。
図20に示すように、凸部23は、平面視略錐台状に形成されて、前方の左右方向の幅に比べて後方の幅が広く構成される部分を有する構成とすることもできる。
図21に示すように、凸部23は、平面視略四角形状の前端左右から前方に一対の丸長が突出するように形成されて、前方の左右方向の幅に比べて後方の幅が広く構成される部分を有する構成とすることもできる。
図22に示すように、凸部23は、平面視略四角形状の前左部および前右部の角がそれぞれ切欠かれたように形成されて、前方の左右方向の幅に比べて後方の幅が広く構成される部分を有する構成とすることもできる。
図23に示すように、凸部23は、平面視略四角形状の前端部が半円状に形成されて、前方の左右方向の幅に比べて後方の幅が広く構成される部分を有する構成とすることもできる。
図24に示すように、凸部23は、平面視略M字状に形成され、当該M字の上方が前方を向くように配置されて、前方の左右方向の幅に比べて後方の幅が広く構成される部分を有する構成とすることもできる。
【0052】
なお、中間部材20の凸部23は、ヒンジ100の仕様に応じて、後方の左右方向の幅に比べて前方の左右方向の幅を広く構成される部分を有する構成とすることもでき、また、前後中央部の左右方向の幅に比べて前方の左右方向の幅および後方の左右方向の幅が広く構成される部分を有する構成とすることもできる。
例えば、図25に示すように、凸部23は、平面視略台形に形成され、前後中央部の左右方向の幅に比べて前方の左右方向の幅および後方の左右方向の幅が広く構成される部分を有する構成とすることもできる。
また例えば、図26に示すように、凸部23は、前端部と後端部とにそれぞれ半円を有する平面視長丸状に形成されて、前後中央部の左右方向の幅に比べて前方の左右方向の幅および後方の左右方向の幅が広く構成される部分を有する構成とすることもできる。
【0053】
また、第二ウイング部材が閉状態から開く方向に回動して第一スライダ40が後方に移動しても、中間部材20の凸部23と第一スライダ40の天板との摺動抵抗が一定となるようにしたい場合には、図27に示すように、中間部材20の凸部23は前後方向を長手方向とする平面視略長方形に構成することもできる。
また、中間部材20の凸部23は、点状凸部を複数個並べられた集合体で構成することもでき、また、左右方向の突条を前後方向に複数個並べた集合体で構成することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 複合機
2 本体
3 原稿圧着板
10 下部固定部材
20 中間部材
23 凸部
30 上部固定部材
40 第一スライダ
50 第二スライダ
80 カム部材
90 オイルフェンス
100 ヒンジ
図1
図2
図3
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