(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】リベッター
(51)【国際特許分類】
B21J 15/10 20060101AFI20230418BHJP
B21J 15/16 20060101ALI20230418BHJP
B21J 15/20 20060101ALI20230418BHJP
B21J 15/36 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B21J15/10 A
B21J15/16 L
B21J15/20 A
B21J15/36 T
B21J15/16 N
(21)【出願番号】P 2019039476
(22)【出願日】2019-03-05
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000232830
【氏名又は名称】株式会社ロブテックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】林 宗一
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-261466(JP,A)
【文献】特開2010-260064(JP,A)
【文献】特開2012-196702(JP,A)
【文献】実開昭57-097653(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 15/10
B21J 15/16
B21J 15/20
B21J 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラインドリベットを
塑性変形させることで締結対象物に取り付ける際に用いるリベッターにおいて、
一方向に延びる筒状のケーシングと、
前記ケーシング内を先端位置と基端位置との間で往復移動するジョーケースと、
前記ジョーケースの先端部に設けられ
ていて前記ジョーケースと共に往復移動するものであって、前記ブラインドリベットが有する棒状のマンドレルを径方向中心で挟むことのできるジョーと、
前記ケーシングの先端部に設けられ、前記ケーシングの外部から内部に向かうように前記マンドレルを挿入できる空間を有するとともに、基端側で前記ジョーに係合できるノーズピースと、
前記ジョーケースを前記往復移動させる駆動力を発する駆動部と、
前記ジョーケースを基端方向に付勢する仮止用付勢部と、
を備え、
前記ジョーは前記マンドレルを挟む複数の挟持部を有し、
各挟持部は楔形状とされており、
前記複数の挟持部は、前記ジョーの前記往復移動に伴い、互いに径方向に広がることにより前記マンドレルを挟持しない開き状態と、互いに径方向で狭まることにより前記マンドレルを挟持する閉じ状態との間で変化し、前記ジョーケースが前記先端位置にある場合に前記ジョーは前記ノーズピースとの係合により前記開き状態となり、前記ジョーケースが前記基端位置にある場合に前記ジョーは前記閉じ状態となり、
前記仮止用付勢部は、前記駆動部が動作しない
ことで前記ジョーケースを前記基端位置に移動させる駆動力が発せられない場合に、前記ジョーケースに対して、前記先端位置から、前記基端位置まで至らない程度で前記基端側に移動させる
仮止め付勢力を及ぼ
し、前記仮止め付勢力は、前記ジョーが前記基端位置への移動によって前記ブラインドリベットを塑性変形させる力より小さく設定されていることを特徴とするリベッター。
【請求項2】
前記ジョーケースを前記先端位置に移動させることにより前記ジョーを前記開き状態とするジョー開き手段を更に備え、
前記仮止用付勢部は、前記駆動部が動作せず、かつ、前記ジョー開き手段による前記ジョーケースを前記先端位置に移動させる力が解除されている場合に、前記ジョーケースに対し、前記先端位置から、前記基端位置まで至らない程度で前記基端側に移動させる付勢力を及ぼすことを特徴とする請求項1に記載のリベッター。
【請求項3】
前記ジョー開き手段は、外部から高圧空気が導入されるエアシリンダーと、前記ジョーケースに接続されており、前記エアシリンダーへの高圧空気の導入により前記ジョーケースを前記先端位置に移動させるピストンとを備えたことを特徴とする請求項2に記載のリベッター。
【請求項4】
前記仮止用付勢部は、前記ジョーよりも基端側の位置に設けられることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のリベッター。
【請求項5】
前記駆動部は油圧により前記駆動力を生じさせ、
前記仮止用付勢部は、前記駆動部における作動油を加圧する部材を付勢することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のリベッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインドリベットを締結対象物に取り付ける際に用いるリベッターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リベッターは、先端部にセットしておいたブラインドリベット(以下、「リベット」)を、締結対象物に設けられた貫通孔に通した上で塑性変形させてかしめることにより、締結対象物に固定できる。リベットは棒状のマンドレルを有する。このマンドレルは、リベットを塑性変形させる際に、リベッターにおけるジョーに掴まれてリベッターの内部に引き込まれる。この際、マンドレルは破断されて一部がリベットに残り、その他の部分がリベットから分離される。
【0003】
施工前には、リベッターにおけるジョーにリベットを位置させておく必要がある。ここで、施工前においてジョーはリベットにおけるマンドレルを掴んでおらず、リベット(マンドレル)はジョーに対して軸方向に移動可能である。リベッター周りに十分にスペースが確保されている施工場所では、リベッターの先端部に作業者が手を添えることでリベットをジョーから離れないように(落下しないように)保持できるので問題ない。しかし例えば、深い溝状の空間の奥にリベットを取り付ける必要がある場合等では、施工場所に作業者の手が入らないことから、リベッターの先端部に作業者が手を添えられない場合がある。この場合、例えばリベッターの先端部が下方を向くと、施工前にジョーからリベットが脱落してしまうため、締結対象物の位置関係によっては施工不能となることから問題である。
【0004】
ここで、特許文献1には、空気吸引によりジョーにリベットを位置させておくことが記載されている(明細書0069段落参照)。このように、リベッターが空気を利用する構成であればリベットを保持することが可能である。また、リベッターの先端部(具体的にはマンドレルが貫通するノーズピース)に、マンドレルに対して付勢力や摩擦力を及ぼす別部品を取り付けることも考えられる。
【0005】
しかし、空気を利用した構成のリベッターとすることが必要であったり、リベットを保持するための別部材が必要であったりすることから、リベッターの設計自由度が制約されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、ジョーにリベットを保持できて設計自由度の高いリベッターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ブラインドリベットを締結対象物に取り付ける際に用いるリベッターにおいて、一方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシング内を先端位置と基端位置との間で往復移動するジョーケースと、前記ジョーケースの先端部に設けられ、前記ブラインドリベットが有する棒状のマンドレルを径方向中心で挟むことのできるジョーと、前記ケーシングの先端部に設けられ、前記ケーシングの外部から内部に向かうように前記マンドレルを挿入できる空間を有するとともに、基端側で前記ジョーに係合できるノーズピースと、前記ジョーケースを前記往復移動させる駆動力を発する駆動部と、前記ジョーケースを基端方向に付勢する仮止用付勢部と、を備え、前記ジョーは前記マンドレルを挟む複数の挟持部を有し、前記複数の挟持部は、前記ジョーの前記往復移動に伴い、互いに径方向に広がることにより前記マンドレルを挟持しない開き状態と、互いに径方向で狭まることにより前記マンドレルを挟持する閉じ状態との間で変化し、前記ジョーケースが前記先端位置にある場合に前記ジョーは前記ノーズピースとの係合により前記開き状態となり、前記ジョーケースが前記基端位置にある場合に前記ジョーは前記閉じ状態となり、前記仮止用付勢部は、前記駆動部が動作しない場合に、前記ジョーケースに対して、前記先端位置から、前記基端位置まで至らない程度で前記基端側に移動させる付勢力を及ぼすことを特徴とするリベッターである。
【0009】
この構成によれば、仮止用付勢部がジョーケースに対して、先端位置から、基端位置まで至らない程度で基端側に移動させる付勢力を及ぼすことにより、ジョーが軽く閉じた状態となるため、例えばリベッターの先端部を下方に向けても、ジョーからリベットが脱落してしまわないように、リベットを保持できる。
【0010】
また、前記ジョーケースを前記先端位置に移動させることにより前記ジョーを前記開き状態とするジョー開き手段を更に備え、前記仮止用付勢部は、前記駆動部が動作せず、かつ、前記ジョー開き手段による前記ジョーケースを前記先端位置に移動させる力が解除されている場合に、前記ジョーケースに対し、前記先端位置から、前記基端位置まで至らない程度で前記基端側に移動させる付勢力を及ぼすものとできる。
【0011】
この構成によれば、仮止用付勢部を設けたことに伴い、駆動部が動作しない場合には常時、ジョーが軽く閉じた状態となるのに対し、ジョー開き手段を操作することで、ジョーを強制的に開き状態とすることができる。
【0012】
また、前記ジョー開き手段は、外部から高圧空気が導入されるエアシリンダーと、前記ジョーケースに接続されており、前記エアシリンダーへの高圧空気の導入により前記ジョーケースを前記先端位置に移動させるピストンとを備えたものとできる。
【0013】
この構成によれば、高圧空気の導入によりジョー開き手段を操作できるので、ジョー開き手段を一般的なエア工具と同様の手法で設計できる。
【0014】
また、前記仮止用付勢部は、前記ジョーよりも基端側の位置に設けられるものとできる。
【0015】
この構成によれば、仮止用付勢部の付勢力の伝達経路を単純化できる。
【0016】
また、前記駆動部は油圧により前記駆動力を生じさせ、前記仮止用付勢部は、前記駆動部における作動油を加圧する部材を付勢するものとできる。
【0017】
この構成によれば、作動油を介して付勢力をジョーケースに及ぼすことができるので、リベッター内での仮止用付勢部の配置の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、仮止用付勢部の付勢力によりジョーを軽く閉じた状態とできる。また、空気を利用した構成のリベッターとすることが必要でなくなり、リベットを保持するための別部材も不要である。よって、ジョーにリベットを保持できて設計自由度の高いリベッターを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリベッターを示す斜視図である。
【
図3】前記リベッターの動作を示す要部拡大断面図であり、(a)はジョーの挟持部の開き状態を示し、(b)は前記挟持部の閉じ状態であって軽く閉じた状態を示し、(c)は前記挟持部の閉じ状態であって強く閉じた状態を示す。
【
図4】本発明の他の実施形態(その1)に係るリベッターの要部縦断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態(その2)に係るリベッターの要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るリベッター1について、図面を示すと共に説明を行う。以下における方向の表現は、便宜上、
図1及び
図2における左側を「先端側」とし、同右側を「基端側」とする。また、
図1及び
図2における左方を「前方」、右方を「後方」とする。
【0021】
本実施形態のリベッター1のうち、発明を説明する観点で主な部分は、ケーシング2、ジョーケース3、ジョー4、ノーズピース5、駆動部6、仮止用付勢部7、ジョー開き手段(押しピストン部8)である。これらの他、リベッター1の機能の観点で主な部分として、作業者が施工の際に掴むハンドル9と、リベットを塑性変形させてかしめる動作を行わせるために作業者の指により操作されるトリガー10が挙げられる。
【0022】
ケーシング2は前後の一方向に延びる筒状のものである。本実施形態のケーシング2は、前後に接続された3部品21~23からなっている。このため、例えば前後中央における部品22の長さを変更することで、ケーシング2の全体の長さを変更可能である。このため、溝状の空間での施工に適したものとできる等、リベッター1の汎用性を向上できて有利である。
【0023】
ジョーケース3は、ケーシング2内を先端位置と基端位置との間の前後方向における所定区間で往復移動する。本実施形態のジョーケース3は、ケーシング2のうち先端側(前側)の部品21の内部で往復移動する。ジョーケース3が先端位置にある場合に、ジョー4に対して施工前のリベットRがセットされる。ジョーケース3が先端位置から基端位置に移動するに伴い、ジョー4に掴まれたリベットRのマンドレルMがリベッター1に引き込まれ、この引き込みに伴ってリベットR(マンドレルMの外周を取り巻いていた部分)が軸方向に短縮するように塑性変形する(
図3(c)参照)。これによりリベットRが締結対象物に固定される。
【0024】
ジョーケース3の先端部における内周面31は、先端に向かうにつれ径寸法が縮小したテーパ面となっている。また、ジョーケース3の内部には、ジョーケース3に対して前後方向に移動するジョープッシャー32と、ジョープッシャー32を先端側に付勢するジョープッシャースプリング33とが設けられている。ジョープッシャースプリング33はコイルばね(押しばね)であって、ばね力を常時発している。
【0025】
本実施形態におけるジョーケース3の基端には前後方向に延びる延長軸11が一体的に接続されている。延長軸11の先端はケーシング2のうち先端側(前側)の部品21の内部に位置し、基端はケーシング2のうち基端側(後側)の部品23の内部に位置する。延長軸11は、後述する駆動部6の駆動により前後に往復移動する。これに伴い、延長軸11に接続されたジョーケース3も前後に往復移動する。
【0026】
ジョー4は、ジョーケース3の先端部であって、ジョープッシャー32の先端側に設けられており、ジョーケース3と共に往復移動する。ジョー4はリベットRにおけるマンドレルMを挟む複数の挟持部41を有している。各挟持部41は楔形状とされており、径方向における外周面411がジョーケース3の先端部における内周面31(テーパ面)に沿うように移動する。このため、ジョー4は、リベットRが有するマンドレルMを径方向中心で挟むことができる。
【0027】
複数の挟持部41は、ジョーケース3に対するジョー4の往復移動に伴い、互いに径方向に広がることによりマンドレルMを挟持しない開き状態と、互いに径方向で狭まることによりマンドレルMを挟持する閉じ状態との間で変化する。なお、本実施形態における複数の挟持部41は、開き状態か閉じ状態の2状態いずれかに必ずなり、中間的な開度の状態にはならない。ただし、閉じ状態においてマンドレルMを挟持する挟持力には強弱が設定されている。挟持力が弱い場合にマンドレルMはジョー4に仮止めされる。この際の挟持力は、リベットRを塑性変形させる力よりは弱い力であるが、例えばリベッター1の先端部が下方を向いたとしても、マンドレルMをジョーに保持できる力である。一方、挟持力が強い場合にマンドレルMは、リベットRを塑性変形させる力に対抗できる強さでジョー4に保持される(本止めされる)。
【0028】
ジョープッシャースプリング33に付勢されたジョープッシャー32に押されて複数の挟持部41はジョーケース3に対し、先端方向に移動する。ジョーケース3の先端側の内周面31はテーパ面であることから、内周面31に沿う移動に伴って複数の挟持部41は互いに閉じるように変化する。しかし、ケーシング2に対してジョーケース3がある程度先端方向に移動すると、ノーズピース5が複数の挟持部41の先端部分に係合(具体的には当接)する(
図3(a)参照)。このため、ジョーケース3に対して複数の挟持部41がそれ以上先端方向に移動できなくなる。よって、複数の挟持部41は結果的に開き状態となる。一方、ジョーケース3が基端方向(後方)に移動すると、複数の挟持部41の先端部分はノーズピース5から離れ、ノーズピース5による移動の阻止がされなくなることから、ジョープッシャー32に押されている複数の挟持部41は、移動が阻止されていた状態よりも先端方向に移動して閉じ状態となる(
図3(c)参照)。このように、ジョーケース3が先端位置にある場合にジョー4の挟持部41は、ノーズピース5との当接により開き状態となる。そして、ジョーケース3が基端位置にある場合にジョー4の挟持部41は閉じ状態となる。なお、
図3(b)に示した状態は、複数の挟持部41の先端部分がノーズピース5からまさに離れようとする瞬間を示しており、この場合、ジョー4の挟持部41は閉じ状態となっている。
【0029】
ノーズピース5は、ケーシング2の先端部に固定されており、基端側がケーシング2の先端側における内部空間に突出している。このノーズピース5は、ケーシング2の外部から内部に向かうようにマンドレルMを挿入できる空間を有する。そして、ノーズピース5の基端側(本実施形態では、
図3(a)~(c)に示すように斜面が形成されている)でジョー4の先端側に当接することにより、ジョー4(具体的には複数の挟持部41)の径方向中心の空間の縮小を阻止して、ジョー4の挟持部41を開き状態とできる。
【0030】
駆動部6は、ジョーケース3を往復移動させる駆動力を発する部分である。本実施形態における駆動部6は、油圧により駆動力を生じさせるものであって、ハンドル9の下方に設けられたオイルピストン部として構成される。駆動部6としてのオイルピストン部は、ハンドル9内に上下に延び、作動油を保持する筒状のオイルタンク61と、オイルタンク61内を往復動することでオイルタンク61の容積を変化させる軸状のピストンロッド(第1ピストンロッド62)と、オイルタンク61の下方に設けられたエアシリンダー(第1エアシリンダー63)と、第1ピストンロッド62に接続されていて第1エアシリンダー63内を上下に移動するピストン(第1ピストン64)とを備える。なお、
図2は構造を簡略化して示していて、Oリングや高圧空気の導入及び放出のための機構等、詳細構造の図示は省略している。ちなみに、高圧空気は第1エアシリンダー63の下部(第1ピストン64の下方)において導入及び放出される。
【0031】
ハンドル9の上方には、前後方向に移動する上部オイルピストン65が設けられている。上部オイルピストン65の先端側からは上部ピストンロッド66が先端方向に延びていて、延長軸11に接続されている。上部オイルピストン65と上部ピストンロッド66とは一体に形成されている。このため、ジョーケース3、延長軸11、上部ピストンロッド66、上部オイルピストン65は一体で前後に移動する。
【0032】
第1ピストンロッド62は、例えば外周にOリング(図示しない)が設けられたことで、往復動しても作動油がオイルタンク61から漏れないようにされている。オイルタンク61は、下端が第1ピストンロッド62に往復動できるように開放されており、上端がケーシング2の内部に接続されていて、油圧が延長軸11にかかるように構成されている。第1エアシリンダー63は、第1ピストン64の上方及び下方において、コンプレッサー等からの高圧空気を出し入れできるように構成されている。
【0033】
第1エアシリンダー63において、第1ピストン64の下方に高圧空気が導入されると、第1ピストン64が上方に移動する。これに伴い第1ピストンロッド62が上方に移動し、オイルタンク61から押し出された作動油の油圧により、上部オイルピストン65が基端側に移動し、これに伴って延長軸11も基端側に移動する。これにより、ジョーケース3が基端側に移動する。この際、ジョー4にはリベットRのマンドレルMが保持されているため、マンドレルMがリベッター1の内部へと引き込まれることになる。そして、ジョー4の挟持部41は、ジョーケース3における先すぼまり形状の内周面31により先端側に誘導されることで、マンドレルMを強固に掴む。
【0034】
また、第1エアシリンダー63において、第1ピストン64の下方に導入されていた高圧空気が駆動部6の外部に放出された後、押しピストン部8への高圧空気の導入により上部オイルピストン65が先端方向に移動する。これに伴ってオイルタンク61には下方へ向かう油圧がかかることで、第1ピストンロッド62及び第1ピストン64が下方に移動する。その結果として、オイルタンク61から押し出されていた作動油がオイルタンク61に押し返されて、これによる油圧を受けた第1ピストンロッド62が下方に移動する。これに伴い第1ピストン64が下方に移動する。同時に、延長軸11と共にジョーケース3が先端側に移動する。この際、ジョー4はノーズピース5に当接することで開き状態となる。
【0035】
仮止用付勢部7は、ジョーケース3を基端方向に付勢する部分である。この仮止用付勢部7は、少なくとも駆動部6が動作しない場合に、ジョーケース3に対して、先端位置から基端側に移動させる付勢力(仮止め付勢力F)を及ぼす。ただし、この仮止め付勢力Fは、ジョーケース3の移動範囲の一部であって、ジョーケース3が基端位置まで至らない程度のものである。具体的には、仮止用付勢部7の発するばね力は、上部オイルピストン65及び油圧を介して連動する第1ピストン64を移動させることができる大きさに設定されている。仮止用付勢部7と上部オイルピストン65の抵抗力(摩擦抵抗)の差が、ジョーケース3に及ぶ仮止め付勢力Fとなる。
【0036】
この仮止め付勢力Fによりジョーケース3が基端方向(後方)に移動する。このため、ノーズピース5の基端からジョー4の先端が離れる。これにより、ジョー4における複数の挟持部41が互いに径方向で狭まる。しかし、ジョーケース3に及ぶ仮止め付勢力FはリベットRを塑性変形させる力より小さく設定されているため、リベットRの締結動作に至らない。よって、ジョー4に対してマンドレルMが抜けない程度(具体的には、ケーシング2の延長方向を略上下方向にして、ケーシング2の先端を下方に位置させた場合に、ジョー4により止められたリベットRが重力で落下しない程度)に仮止めできる。このため、リベッター1の先端に作業者が手を添えたり、リベットRを空気吸引したり、マンドレルMを保持するための別部材をノーズピース5に設けたりする必要がない。
【0037】
本実施形態では、駆動部6が動作せず、かつ、後述のジョー開き手段(押しピストン部8)によるジョーケース3を前記先端位置に移動させる力が解除されている場合、つまり、ジョーケース3に対して先端方向(前方)に向かわせる積極的な力がかかっていない場合に、仮止用付勢部7がジョーケース3に対して、前記仮止め付勢力Fを及ぼすものとされている。駆動部6が動作しない状態では、ジョーケース3は先端位置にとどまっている。ただし、この状態のジョーケース3は、外力が与えられることで基端方向(後方)に移動可能となっている。
【0038】
仮止用付勢部7は、ジョー4よりも基端側の位置に設けられていて、ジョーケース3の基端側に接続された延長軸11を付勢する。具体的には、
図2に示すように、延長軸11の基端部周辺に一体的に設けられ、延長軸11を取り巻くように固定されたカラー71と、ケーシング2のうち基端側(後側)の部品23の、先端側内壁231との間に設けられたコイルばね72である。このコイルばね72は押しばねであって、伸び方向のばね力を常時発している。このばね力が延長軸11を介して先端方向に伝達され、上部オイルピストン65の抵抗力(摩擦抵抗)、つまり、外力を受けて上部オイルピストン65が移動し始めるのに必要な力を超えた力が、ジョーケース3に仮止め付勢力Fとして働くことになる。
【0039】
このように仮止用付勢部7を設けたことにより、仮止用付勢部7がジョーケース3に対して、先端位置から、基端位置まで至らない程度で基端側に移動させる仮止め付勢力Fを及ぼすことにより、
図3(b)に示すように、ジョー4(複数の挟持部41)が軽く(駆動部6の油圧により、
図3(c)に示すようにマンドレルMがリベッター1の内部へと引き込まれる際に比べると軽い力で)閉じた状態となるため、例えばリベッター1の先端部を下方に向けても、ジョー4からリベットRが脱落してしまわないように、リベットRを保持できる。
【0040】
本実施形態では、仮止用付勢部7が延長軸11を直接的に付勢する構成とされている。このように、仮止用付勢部7がジョー4よりも基端側の位置に設けられているため、仮止用付勢部7の発したばね力の伝達経路を単純化できて有利である。
【0041】
なお、ジョーケース3に設けられたジョープッシャースプリング33も、ジョー4がノーズピース5に当接している状態でジョーケース3を基端方向に付勢している点については、コイルばね72と共通する。しかしジョープッシャースプリング33は、ジョー4をノーズピース5に押し付けるためのばね力が発せられれば十分であって、そのばね力は、上部オイルピストン65の抵抗力(摩擦抵抗)を超える力ではない。つまり、本実施形態における仮止用付勢部7を構成するコイルばね72は、ジョープッシャースプリング33とは別に設けられたばねであって、両者の目的及び奏する作用は全く異なる。
【0042】
ジョー開き手段としての押しピストン部8は、ジョーケース3を先端位置に移動させることによりジョー4をノーズピース5に当接させることで、ジョー4を開き状態とする。
【0043】
押しピストン部8は、外部から高圧空気が導入されるエアシリンダー(第2エアシリンダー81)と、ジョーケース3に接続されており、第2エアシリンダー81への高圧空気の導入によりジョーケース3を先端位置に移動させるピストン(第2ピストン82)と、第2ピストン82から先端側に延びる軸状のピストンロッド(第2ピストンロッド83)とを備える。第2ピストンロッド83の先端は、上部オイルピストン65の基端に当接するように位置している。本実施形態の第2ピストンロッド83は、一部が上部オイルピストン65に嵌め込まれて固定されている。
【0044】
高圧空気は第2エアシリンダー81における第2ピストン82よりも基端側に導入される。高圧空気が第2エアシリンダー81に導入されると、第2ピストン82及び第2ピストンロッド83が先端方向(前方)に移動する(
図2参照)。これに伴い、第2ピストンロッド83に延長軸11が押されることから、ジョーケース3も先端方向(前方)に移動する。これに伴い、ジョー4の先端がノーズピース5に当接して、
図3(a)に示すように、ジョー4は開き状態となる。このように、押しピストン部8に高圧空気が導入されることで、ジョー4を強制的に開き状態とできる。
【0045】
ここで、従来のリベッターにおいて、リベットをかしめる際にマンドレルに対する引き込み力(油圧等)がかけられた場合を除き、リベッター内部に設けられた押しばねにより、ジョーケースは常時先端側に付勢されており、ジョーがノーズピースに当接させられて開き状態となっていた。つまり、引き込み力がかけられていない場合、ジョーは常に開き状態であった。これに対して本実施形態では、押しピストン部8を操作した場合にのみジョー4を開き状態とできる。このため、押しピストン部8から高圧空気を抜くことにより、仮止用付勢部7がジョーケース3及びジョー4に対し、有効に仮止め付勢力Fを及ぼすことができる。また、本実施形態では、高圧空気の導入により押しピストン部8を操作できるので、押しピストン部8を一般的なエア工具と同様の手法で設計できる点で有利である。
【0046】
なお、この押しピストン部8は、仮止用付勢部7を設けたことに伴い、駆動部6が動作しない場合には常時、ジョー4がマンドレルMを仮止めできる程度に閉じた状態となることから、ジョー4を強制的に開き状態とするために設けられている。このため、押しピストン部8を操作することにより、ジョー4にリベットRをセットする作業が、ジョー4から抵抗を受けることなく容易にできる。ただし、例えばマンドレルMをジョー4に作業者の人力で押し込むことで、マンドレルMをジョー4に取り付けることが問題とならない場合には、必ずしも押しピストン部8を設けなくてもよい。
【0047】
ここまで、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、前記実施形態では、仮止用付勢部7はケーシング2内に設けられており、延長軸11を付勢するよう構成されていた。しかし、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0049】
例えば、仮止用付勢部7が、駆動部6における作動油を加圧する部材を付勢するよう構成されることもできる。具体的には、他の実施形態(その1)として、前記実施形態における延長軸11を付勢するコイルばね72を設けず、
図4に示すように、駆動部6であるオイルピストン部における第1ピストン64の下方に一部が突出し、第1ピストンロッド62の軸方向に沿って出没可能に設けられた出没軸73と、第1ピストンロッド62の内部に設けられ、出没軸73を下方に付勢するコイルばね74を設けることが考えられる。このコイルばねは押しばねであって、伸び方向のばね力を発する。この構成により、前記実施形態と同様に、押しピストン部8への高圧空気の導入により上部オイルピストン65が先端方向に移動されると、オイルタンク61に下方への油圧がかかることで、第1ピストンロッド62及び第1ピストン64が下方に移動する。この移動に伴い、出没軸73が第1ピストンロッド62に対して上方に移動することで第1ピストン64に没入する。この結果、オイルピストン部において第1ピストン64が下端まで移動する。このように出没軸73が没入した長さ分、第1ピストンロッド62も下方に移動することから、オイルタンク61の容積が拡大する。この拡大した容積分の作動油の量に応じた油圧で、ジョーケース3に対して基端側に移動させる仮止め付勢力Fを及ぼすことができる。
【0050】
また、他の実施形態(その2)として、
図5に示すように、駆動部6であるオイルピストン部における第1ピストンロッド62に軸方向に延びる空間を設けておき、この空間に沿って往復動する小ピストン76と、小ピストン76を付勢するコイルばね75を設けることも考えられる。コイルばね75は押しばねであって、伸び方向のばね力を発する。この構成により、少量の作動油を第1ピストンロッド62の内部から押し出すことができ、この作動油の量に応じた油圧で、ジョーケース3に対して基端側に移動させる仮止め付勢力Fを及ぼすことができる。
【0051】
このように例示した二つの構成では、作動油を介して仮止め付勢力Fをジョーケース3に及ぼすことができるので、リベッター1内での仮止用付勢部7の配置の自由度を高めることができる点で有利である。なお、例示した以外に種々の構成とすることが可能であって、明示の構成に限定されるものではない。
【0052】
また、前記実施形態のように仮止用付勢部7がケーシング2内に設けられていた場合であっても、例えばジョーケース3を直接的に付勢するよう構成されていてもよい。つまり、仮止用付勢部7は、ジョー4よりも基端側の位置に設けられていればよい。
【0053】
また、前記実施形態の駆動部6は、作動油を高圧空気により加圧するオイルピストン部として構成されていた。しかしこれに限定されず、油圧単独または空気圧単独で駆動力を発する構成であってもよいし、モータとギア等の伝達手段とが組み合わされた電動の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 リベッター
2 ケーシング
3 ジョーケース
4 ジョー
5 ノーズピース
6 駆動部
7 仮止用付勢部
8 ジョー開き手段、押しピストン部
11 延長軸
41 挟持部
62 作動油を加圧する部材、第1ピストンロッド
R (ブラインド)リベット
M マンドレル
F 付勢力、仮止め付勢力