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特許7264450フレキシブルデバイス用のカバーガラスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】フレキシブルデバイス用のカバーガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20230418BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230418BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20230418BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20230418BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
G09F9/00 350A
G09F9/30 308Z
H04M1/02 C
G02F1/1333
H05K5/03 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019070471
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2020170063
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】509154420
【氏名又は名称】株式会社NSC
(72)【発明者】
【氏名】武内 均
(72)【発明者】
【氏名】谷口 信吾
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10020462(US,B1)
【文献】特開2013-137383(JP,A)
【文献】特開2015-069280(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0029212(US,A1)
【文献】特開2019-043795(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109413244(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
G09F 9/30
H04M 1/02
G02F 1/1333
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルデバイス用のカバーガラスであって、
第1の主面と第2の主面とを有しており、
前記第1の主面または前記第2の主面の少なくとも一方の主面において、
前記フレキシブルデバイスの屈曲部に対応する領域に、側面視波状となる複数の溝部を有する波形部を備えカバーガラスを製造するための方法であって、
前記カバーガラスとなるガラス母材の両主面に耐エッチング性を有する保護マスクを被覆する保護工程と、
前記溝部に対応する領域に被覆された保護マスクを除去し、開口部を形成するパターニング工程と、
少なくともフッ酸を含むエッチング液を前記ガラス母材に接触させることで、エッチング処理を行い、凹部を形成する第1のエッチング工程と、
前記ガラス母材から前記保護マスクを除去する剥離工程と、
前記ガラス母材をエッチング液に接触させることで、前記ガラス母材を薄型化しつつ、前記凹部を拡大させ、前記溝部を形成する第2のエッチング工程と
を含むカバーガラス製造方法。
【請求項2】
前記溝部の形成間隔が前記溝部の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のカバーガラス製造方法
【請求項3】
前記溝部に透明弾性部材が充填されることを特徴とする請求項1または2に記載のカバーガラス製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体を屈曲させることが可能なフレキシブルデバイスに適用されるカバーガラスおよびそれを備えたフレキシブルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを利用したスマートフォン等の携帯用電子デバイスは、幅広い分野で利用されている。このような電子デバイスは、タッチパネルだけではなく、画像を表示するためのディスプレイや、タッチパネルとディスプレイを保護するためのカバーガラスを有している。近年では、デザイン面での差別化を図るために、ディスプレイやカバーガラスの形状に特徴のあるデバイスも多く存在する。
【0003】
その中でも、フレキシブル性を有する電子デバイスが盛んに検討され始めている。フレキシブルデバイスの中には、デバイスの一部に湾曲部を含むものと、折り畳みが可能な程度のフレキシブル性を有するとに大別することができる。後者は、特にフォルダブルデバイスと呼ばれることもある(例えば、特許文献1参照。)。フォルダブルデバイスは、従来のスマートフォンよりも大きな操作領域を有しているため、操作性が向上する。また、持ち運び時には、折り畳むことができるので、携帯性が損なわれることがない。さらに、デバイスの各構成要素も薄型化されているため、デバイス自体も軽量化を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-161009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、フォルダブルデバイスは、各構成要素が湾曲可能な程度に薄型化されている必要があるため、強度が低下するといった問題があった。特に、ディスプレイや筐体を保護するためのカバーガラスは、薄型化による強度の低下の影響を受けやすい。従来のカバーガラスは、板厚が0.5mm程度あったため、落下等の衝撃からディスプレイを保護することができた。しかし、ガラス基板を湾曲させるためには、およそ0.1mm未満まで薄型化する必要がある。ガラス基板の強度は、板厚に大きく依存しているため、湾曲可能なまでに薄型化されたガラス基板は、強度が極端に低下しており、従来のフレキシブルデバイスでは、カバーガラスが破損するおそれが高かった。
【0006】
カバーガラスの代わりに樹脂製の透明カバー部材を配置するという構成もあるが、樹脂材料はガラス基板と比較すると、質感が劣るといった課題もあるため、積極的に採用されることは少なかった。さらに、樹脂材を繰り返し湾曲させると、湾曲部にしわが生じてしまうといった問題点もあった。このため、ガラス製のカバー部材が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、強度の低下を抑制しつつ、フレキシブルデバイスの湾曲や折り畳みといった変形に対応することが可能なカバーガラスおよびそれを備えたフレキシブルデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るカバーガラスは、フレキシブルデバイス用のカバーガラスであり、第1の主面および第2の主面を有している。カバーガラスは、第1の主面または第2の主面の少なくとも一方の主面において、波形部を備えている。波形部は、フレキシブルデバイスの屈曲部に対応する領域において、側面視波状となる複数の溝部を有している。
【0009】
本発明に係るカバーガラスは、筐体を湾曲させたり、折り曲げたりすることが可能なフレキシブルデバイスに適用されるカバーガラスである。フレキシブルデバイスは、ヒンジやジャバラ機構等の屈曲部を有している。カバーガラスは、屈曲部に対応する位置に複数の溝部が形成された波形部を備えることで、フレキシブルデバイスの変形に応じて変形することが可能になる。つまり、溝部が形成された領域の板厚が薄くなることにより、カバーガラスの湾曲性が向上する。さらに、溝部は、側面視波状に形成されることで、強度が向上し、カバーガラスが湾曲した際に破損するおそれが軽減されている。なお、本発明における波状とは、溝部が一定の間隔で形成されることで、滑らかな曲線状の凹部と凸部が繰り返し形成される形状を意味するものとする。
【0010】
また、溝部の幅が溝部の形成間隔よりも大きいことが好ましい。溝部の幅を溝部の形成間隔よりも大きくすることにより、波形部の変形時に隣接する溝部同士が接触することが防止される。
【0011】
また、溝部に透明弾性部材が充填されることが好ましい。透明弾性部材を充填することにより、波形部の強度を向上させることが可能である。また、波形部が変形する際にも、透明弾性部材が弾性変形するため、カバーガラスがフレキシブルデバイスの変形を阻害するおそれも低い。さらに、カバーガラスと同程度の屈折率を有する透明弾性体を使用することで、ディスプレイ等に表示される表示画像の視認性の低下も抑制することが可能である。
【0012】
また、本発明に係るフレキシブルデバイスは、上記カバーガラスが装着されたフレキシブルデバイスである。カバーガラスは、フレキシブルデバイスの最表面に装着される。ここでの最表面とは、例えば、スマートフォンやタブレット等のデバイスにおけるディスプレイ面やディスプレイ面の背面の筐体面等の外部に露出した面である。
【0013】
また、カバーガラスは、フレキシブルデバイスに対して着脱自在であっても良い。粘着層等を介してカバーガラスをフレキシブルデバイスに貼り付けることによって、必要に応じてフレキシブルデバイスを外部の衝撃から保護することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、強度の低下が抑制されたフレキシブルデバイス用カバーガラスおよびそれを備えたフレキシブルデバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るスマートフォンを示す図である。
図2】カバーガラスの構成を示す図である。
図3】スマートフォンの湾曲時の構成を示す図である。
図4】スマートフォンの背面にカバーガラスを装着した状態を示す図である。
図5】カバーガラスの他の実施形態を示す図である。
図6】カバーガラスの製造方法の一実施形態を示す図である。
図7】カバーガラスの製造方法の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここから、図面を用いて本発明に係るカバーガラスおよびフレキシブルデバイスの一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るスマートフォン10を示す図である。スマートフォン10は、筐体12、ディスプレイ14およびカバーガラス16を少なくとも備えている。
【0017】
筐体12は、スマートフォン10の構成部品を収容するように構成された箱状部材である。筐体12は、第1の筐体部30、第2の筐体部32およびヒンジ部34を有している。第1の筐体部30および第2の筐体部32は、剛性を有する樹脂材や金属部材で構成される。第1の筐体部30および第2の筐体部32の内部には、バッテリ、プリント基板、通信モジュール、カメラユニット等の電子部材が適宜配置されている。
【0018】
ヒンジ部34は、第1の筐体部30および第2の筐体部32の間に配置されており、第1の筐体部30および第2の筐体部30を接続するように構成される。ヒンジ部34は、第1の筐体部30および第2の筐体部32をそれぞれ係止し、かつ、回転可能に支持するように構成される。フレキシブルデバイス10は、筐体12に力を加えることで、ヒンジ部34が回転し、図1(A)および図1(B)に示すように変形する。また、この実施形態では、ヒンジを利用してフレキシブルデバイスを屈曲させているが、フレキシブルデバイスの変形機構はこれには限定されない。例えば、ジャバラ部材を用いて、フレキシブルデバイスを変形させても良い。
【0019】
ディスプレイ14は、筐体12の上面部に固定されており、ヒンジ部34に対応する領域を含むスマートフォン10の一方の主面全域において画像を表示するように構成される。ディスプレイ14は、可撓性を有していれば、特に制限はない。ディスプレイ14の具体例としては、有機ELディスプレイを挙げることができる。有機ELディスプレイは、ポリイミド等の透明樹脂基板を使用しているため、フレキシブル性を有している。液晶ディスプレイを使用する場合は、あらかじめ0.1mm程度まで薄型化されたもの使用すれば良い。液晶ディスプレイの薄型化は、ウェットエッチング等の薄型化によって行われる。また、ディスプレイ14は、使用者がタッチ操作を行うためのタッチパネル機能も有しており、使用者からのタッチ操作を検出することができる。なお、タッチパネルとディスプレイを一体化する構成以外にも別途タッチパネルを配置しても良い。
【0020】
カバーガラス16は、ディスプレイ14の上部に配置されており、ディスプレイ14を衝撃等から保護するように構成される。カバーガラス16に使用されるガラス基板としてはアルミノシリケートガラスが好ましいが、特に限定はされず、ソーダガラスや無アルカリガラスを使用しても良い。カバーガラス16の板厚は、フレキシブルデバイスの構成によって適宜変更することができるが、0.1~0.3mm程度であることが好ましい。また、必要に応じて、圧縮応力層が形成されても良く、圧縮応力層は公知のイオン交換法によって形成することができ、形成される圧縮応力層の厚みは5~100μmの範囲で調整される。
【0021】
カバーガラス16は、使用者に露出する第1の主面20と、第1の主面20に対向する第2の主面22を有している。第2の主面22には、ヒンジ部34に対応する領域に波形部24が形成されている。カバーガラス16は、透明接着層等を介してフレキシブルデバイス10に装着される。
【0022】
波形部24は、図2(A)および図2(B)に示すようにカバーガラス16の幅方向の全域に沿って複数の溝部26が連続して形成された領域である。溝部26は、第2の主面22から第1の主面20側に向かって凹状の溝が形成された領域である。溝部26は、側面視(カバーガラス16の板厚側を正面から見た方向)した際に、波状を呈する。また、溝部26の側面部261は、第2の主面側22側に向かって広がるテーパ形状を呈しており、外側方向に向かって凸状に湾曲している。
【0023】
溝部26の幅は、50~100μm程度であり、溝部の深さは、50~200μm程度で形成することが好ましい。また、溝部26の形成間隔は、溝部26の幅よりも小さくなるように設けられることが好ましく、例えば10~40μm程度になるように形成される。また、波形部24の両端部に形成された溝部26と第2の主面22との接続部は、湾曲形状を呈している。また、溝部26が一定の間隔で形成されることによって、溝部26の間にはリブ状の凸状部となるが、この凸状部の上面は、第2の主面22と同一平面になるように形成される。
【0024】
ここから、スマートフォン10の変形機構について図3(A)~図3(C)を用いて説明する。図3(A)~図3(C)は、スマートフォン10の概略断面図である。スマートフォン10は、第1の筐体部30に対して、図3(B)にて示す矢印方向に外部から力を加えることで、ヒンジ部34を起点に第1の筐体部30を第2の筐体部32の方向に折り曲げることができる。この際、第1の筐体部30および第2の筐体部32は、剛性部材で構成されているため、湾曲することはないが、ディスプレイ14およびカバーガラス16は、ヒンジ部34の回転に応じて湾曲する。なお、第1の筐体部30に加えられた力が取り除かれると、スマートフォン10は、図3(A)に示すような平面形状となる。
【0025】
カバーガラス16は、溝部26が形成された領域の板厚が薄くなっていることにより、スマートフォン10の屈曲に追従して湾曲することが可能になる。また、側面視波状の溝部は、側面視垂直形状に形成された溝部よりも湾曲時に破損しにくく、カバーガラスの強度が向上する。さらに、溝部26の側面部261をテーパ形状とすることで、波形部24を変形させた際に、隣接する溝部26の側面部261と接触するおそれが軽減される。また、仮に接触したとしても、表面が滑らかな波状であるため、破損の起点になるおそれも低い。
【0026】
また、本発明に係るカバーガラスは、ディスプレイ面の保護だけでなく、例えばフレキシブルデバイスの背面の保護にも適用することが可能である。図4は、背面にカバーガラス16が装着されたスマートフォン100を示す図である。スマートフォン100は、第1の筐体部30、第2の筐体部32およびジャバラ部36を備えており、第1の筐体部30および第2の筐体部32の間にジャバラ部36が配置されている。カバーガラス16は、第1の筐体部30、第2の筐体部32およびジャバラ部36を覆うように装着される。なお、カバーガラス16が装着された主面と対向する主面には、フレキシブルディスプレイが設けられている。
【0027】
カバーガラス16は、第2の主面22が第1の筐体部30および第2の筐体部32に接するように配置される。第2の主面22には、スマートフォン100のジャバラ部36に対応する位置に波形部24が設けられている。スマートフォン100は、第1の筐体部30または第2の筐体部32に力を加えることで、ジャバラ部36が変形し、屈曲するように構成される。カバーガラス16は、ジャバラ部36に対応する位置は波形部24が形成されているため、スマートフォン100の変形に対応することが可能になる。
【0028】
ここまでの実施形態では、スマートフォン10の部品としてのカバーガラス16を説明してきたが、本発明に係るカバーガラスはスマートフォン等のフレキシブルデバイスに対して着脱自在に貼り付け可能な構成でも良い。例えば、カバーガラスの波形部が形成される主面には、粘着層が形成され、粘着層をディスプレイ等の被貼付面に当接させることでカバーガラスをフレキシブルデバイスに貼り付けることが可能になる。カバーガラスの粘着層は、公知のアクリル樹脂系粘着剤やシリコーン系粘着剤等を使用することが可能である。
【0029】
ここから、本発明の他の実施形態について図5(A)~図5(C)を用いて説明する。図5(A)に記載のカバーガラス160は、溝部26に透明弾性体40が充填されている。透明弾性体40は、弾性変形可能な樹脂であり、かつ、ディスプレイに表示される画像の視認性に影響を及ぼさない程度の透明性を有する。このため、透明弾性体40は、カバーガラス160と同程度の屈折率を有することが好ましく、例えば、アクリル系樹脂材やポリオレフィン系樹脂材を使用することができる。
【0030】
透明弾性体40を溝部26に充填することで、波形部24の強度が向上し、湾曲時等に破損しにくくなる。透明弾性体40は、カバーガラス16の湾曲時に弾性変形するので、カバーガラス160の変形に及ぼす影響も少ない。さらに、スマートフォンをタッチパネルで操作する際にも、溝部26のような空洞部を樹脂で充填しておくことで、タッチパネルの感度が向上し、誤操作を防止することが可能になる。
【0031】
図5(B)は、本発明の他の実施形態に示すカバーガラス162を示す図である。カバーガラス162は、装着されるフレキシブルデバイスに対応する波形部242が形成される。波形部242が設けられた領域は、カバーガラス162のその他の領域より板厚が薄くなっている。つまり、波形部242が凹状部内に設けられるように構成される。溝部262は、凹状部の底面に形成される。溝部262の形状や形成間隔は、上記実施形態と同様である。
【0032】
波形部242が形成される領域の板厚が全体的に薄くなることにより、カバーガラス162がさらに湾曲しやすくなる。さらに、波形部242以外の領域は、板厚が厚くてもフレキシブルデバイスの湾曲性にほとんど影響を及ぼさないため、カバーガラス162の強度を向上させることも可能である。
【0033】
また、図5(C)に示すように、波形部242に透明弾性体40を充填しても良い。透明弾性体40は、カバーガラス162の第2の主面22と透明弾性体40の主面が同一平面になるように充填される。透明弾性体40が充填されることで、波形部242の強度を向上させることが可能になる。
【0034】
なお、本発明に係るカバーガラスに形成される波形部は、エッチング処理によって形成することが好ましい。ここから、図6(A)~図6(D)を用いてカバーガラスの製造方法の一例を説明する。カバーガラスの製造方法は、保護工程、パターニング工程、第1のエッチング工程、剥離工程および第2のエッチング工程を含んでいる。
【0035】
保護工程は、カバーガラスとなるガラス母材50の両主面に耐エッチング性を有する保護マスク52を被覆する工程である。保護マスク52としては、エッチング液に使用されるフッ酸に耐性を有するフィルムやレジスト材を使用することができる。
【0036】
パターニング工程は、溝部26に対応する領域に被覆された保護マスク52を除去し、開口部を形成する工程である(図6(B)参照)。保護マスク52の除去は、例えばレーザ装置を用いて行うことができる。
【0037】
第1のエッチング工程は、少なくともフッ酸を含むエッチング液をガラス母材50に接触させることで、エッチング処理を行い、凹部54を形成する工程である(図6(B)参照)。エッチング処理は、例えば、エッチング液にガラス母材50を浸漬する方式やガラス母材50にエッチング液を噴射する方式を採用することができる。剥離工程は、ガラス母材50から保護マスク52を除去する工程である。保護マスク52の除去は、例えば、物理的な力を保護マスク52に加えることで行うことができる。
【0038】
第2のエッチングステップは、ガラス母材50をエッチング液に接触させることで、ガラス母材50を薄型化しつつ、凹部54を拡大させ、溝部26を形成する工程である。第2のエッチングステップでは、第1のエッチングステップと同様に、フッ酸を含むエッチング液をガラス母材50に接触させることで、凹部54がエッチングされ、その表面が徐々に滑らかになっていき(図6(C)参照)、最終的に図6(D)に示すように、側面視波状の溝部26が複数形成される。なお、必要に応じて、波形部24が形成される主面と対向する主面を保護マスク52等で被覆しても良い。
【0039】
波形部24をエッチング処理で形成することにより、機械加工で形成した場合と比較して、溝部26に細かな傷が発生することはなく、溝部26の強度が向上する。また、第2のエッチング処理により、凹部54を拡大させることで、溝部26が全体的に曲面形状を呈し、滑らかな波形状を形成することが可能になる。また、溝部26とガラス母材50の主面との接続部にも湾曲面が形成される。
【0040】
カバーガラスの製造効率を上げるために、複数のカバーガラスが面取された大型のガラス母材を使用する場合、第2のエッチングステップ後に適宜カバーガラスの寸法に応じて、ガラス母材50をカットすれば良い。また、溝部26に透明弾性体40を充填する際は、シリンジ等の塗布装置を利用して溝部26内に樹脂剤を充填すれば良い。
【0041】
また、本実施形態では、凹部54をエッチング処理にて形成したが、凹部54は、例えばレーザビームや機械的な切削加工等を利用して形成しても良い。この場合、保護マスクやパターニング処理等を行う必要はない。レーザや切削で凹部54を形成時に、凹部54の表面に細かい傷が形成されたり、表面粗度が悪化したりしたとしても、後工程ではエッチング処理によって凹部54が拡大されるので、滑らかな波状の溝部26を形成することが可能となる。
【0042】
図7(A)~図7(C)は、波形部の板厚を薄くしたカバーガラスの製造方法の一例を示す図である。図5(B)のように波形部242の板厚を薄くする場合、第2のエッチングステップの前に、波形部24が形成される主面において、波形部24に対応する領域以外に保護マスク52を被覆すれば良い(図7(A)参照)。この状態で第2のエッチングステップを実行すると、図7(B)および図7(C)に示すように、波形部242自体の板厚を薄くしつつ、溝部262を形成することが可能になる。
【0043】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
10‐スマートフォン
12‐筐体
14‐ディスプレイ
16‐カバーガラス
20‐第1の主面
22‐第2の主面
24‐波形部
26‐溝部
34‐ヒンジ部
40‐透明弾性体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7