(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20230418BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20230418BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230418BHJP
A61K 8/898 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q5/12
A61K8/41
A61K8/898
(21)【出願番号】P 2019095776
(22)【出願日】2019-05-22
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志村 幸一郎
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-063548(JP,A)
【文献】特開2005-314306(JP,A)
【文献】特開2007-269740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンオキシド(A)を
0.5~
2.5質量%と、
高級アルコール(B)と、
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)を1~7質量%と、
アミノ変性シリコーンエマルション(D)を
4~
6質量%とを含み、
前記高級アルコール(B)と、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)との質量比(B/C)が1~3である、毛髪化粧料。
【請求項2】
25℃における粘度が2~500mm
2/sであるメチルポリシロキサン(E)および25℃における粘度が1万~400万mm
2/sである高重合メチルポリシロキサン(F)から選択される少なくとも一種のポリシロキサン(X)を含む、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
前記メチルポリシロキサン(E)を0.5~6質量%含む、請求項2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
前記高重合メチルポリシロキサン(F)を0.5~2質量%含む、請求項2に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
メチルポリシロキサン(E)を0.5~1.5質量%と、
高重合メチルポリシロキサン(F)を0.5~1.5質量%とを含む、
請求項2に記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
トリートメントである、請求項1~5のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプー後の毛髪の感触を向上させるために、リンス、コンディショナー、トリートメント等の毛髪化粧料が一般的に使用されてきた。しかし、これらの従来の毛髪化粧料は、乾燥後の毛髪を柔らかくし、しっとり感を付与する一方、すすぎ時にべたつきやきしみが生じたり、毛髪に均一に付着しないという問題があった。
【0003】
この問題を解消するための開発が進められており、例えば、特許文献1では、アミノ変性シリコーンを低粘度のシリコーンと一定の比率で組み合わせ、カチオン界面活性剤-ベタイン型両性界面活性剤-高級アルコール系のトリートメントに配合する技術が開示されている。そして、すすぎ時におけるべたつき・キシミを抑えつつ、乾燥後の毛髪に柔らかさとしっとり感を付与することが記載されている。
【0004】
特許文献2では、分岐型アルキル4級アンモニウム塩および特定のリン酸エステル系界面活性剤を含む毛髪化粧料が開示されている。そして、油性感が少なく、平滑性、柔軟性および帯電防止効果に優れ、リンスとして用いた場合、速乾性があることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-010581号公報
【文献】特開昭62-255410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、毛髪の柔らかさ、すすぎはじめの滑らかさはあるものの、すすぎ終了時の滑らかさは充分ではなかった。また、しっとり感も充分ではなかった。
【0007】
また、近年では、毛髪の乾燥時間の短縮が求められるようになり、毛髪化粧料においても、速乾性を有することが求められている。しかし、特許文献2の技術では、速乾性が充分ではなかった。また塗布時、すすぎ時、乾燥時、および仕上がりの毛髪の滑らかさと柔らかさが充分ではなかった。
【0008】
このようなことから、本発明は、塗布時、すすぎ時、乾燥時、および仕上がりの毛髪の滑らかさと柔らかさに優れ、毛髪に均一に付着し、べたつきやきしみがなく、かつ、速乾性にも優れる毛髪化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する毛髪化粧料は前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の[1]~[6]である。
[1]アミンオキシド(A)を0.1~3質量%と、高級アルコール(B)と、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)を1~7質量%と、アミノ変性シリコーンエマルション(D)を1~8質量%とを含み、前記高級アルコール(B)と、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)との質量比(B/C)が1~3である、毛髪化粧料。
[2]25℃における粘度が2~500mm2/sであるメチルポリシロキサン(E)および25℃における粘度が1万~400万mm2/sである高重合メチルポリシロキサン(F)から選択される少なくとも一種のポリシロキサン(X)を含む、[1]に記載の毛髪化粧料。
[3]前記メチルポリシロキサン(E)を0.5~6質量%含む、[2]に記載の毛髪化粧料。
[4]前記高重合メチルポリシロキサン(F)を0.5~2質量%含む、[2]に記載の毛髪化粧料。
[5]メチルポリシロキサン(E)を0.5~1.5質量%と、高重合メチルポリシロキサン(F)を0.5~1.5質量%とを含む、[2]に記載の毛髪化粧料。
[6]トリートメントである、[1]~[5]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、塗布時、すすぎ時、乾燥時、および仕上がりの毛髪の滑らかさと柔らかさに優れ、毛髪に均一に付着し、べたつきやきしみがなく、かつ、速乾性にも優れる毛髪化粧料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の毛髪化粧料について具体的に説明する。
<毛髪化粧料>
本発明の毛髪化粧料は、アミンオキシド(A)を0.1~3質量%と、高級アルコール(B)と、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)を1~7質量%と、アミノ変性シリコーンエマルション(D)を1~8質量%とを含み、前記高級アルコール(B)と、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)との質量比(B/C)が1~3である。
なお、本発明における各成分の含有量は、毛髪化粧料を100質量%とした場合の含有量を示している。
【0012】
<アミンオキシド(A)>
本発明において、アミンオキシド(A)は、1級、2級、および3級アミンの酸化物を指す。
本発明の毛髪化粧料は、アミンオキシド(A)を0.1~3質量%、好ましくは0.5~3質量%、より好ましくは0.5~2.5質量%、さらに好ましくは1~2.5質量%、最も好ましくは1~2質量%含む。
【0013】
アミンオキシド(A)が前記範囲内にあると、塗布時の柔らかさ、すすぎ時の流しやすさ、均一性、および乾きやすさを付与することができる。
アミンオキシド(A)が前記下限量より少ないと、塗布時の滑らかさおよび柔らかさ、均一性、ならびに乾きやすさが充分ではない。
【0014】
アミンオキシド(A)が前記上限量より多いと、塗布時の滑らかさおよび柔らかさが損なわれ、すすぎ時の均一性も悪く、乾きにくい。
アミンオキシド(A)としては、例えば、アルキルジメチルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルジメチルアミンオキシドが挙げられる。アルキルジメチルアミンオキシドとしては、ラウリルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、オレイルジメチルアミンオキシドが挙げられる。
【0015】
アミンオキシド(A)としては、ラウリルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシドが好ましく、乾きやすさに優れることからラウリルジメチルアミンオキシドがより好ましい。
アミンオキシド(A)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
<高級アルコール(B)>
本発明の毛髪化粧料は、高級アルコール(B)を含む。
本発明の毛髪化粧料は、高級アルコール(B)と、後述する塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)との質量比(B/C)が1~3であり、好ましくは1.5~3であり、より好ましくは2~2.5である。
【0017】
本発明の毛髪化粧料は、高級アルコール(B)が規定の質量比であると、塗布時、すすぎ時、および仕上がりの毛髪の柔らかさを付与することができる。
高級アルコール(B)と、後述する塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)との質量比(B/C)が前記下限値より低いと、塗布時の滑らかさや柔らかさが悪くなる。
【0018】
高級アルコール(B)と、後述する塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)との質量比(B/C)が前記上限値より高いと、乾きにくくなり、ビルドアップしやすくなる。
【0019】
なお、本発明において、ビルドアップとは、シリコーン類が毛髪に付着し、毛髪表面に過剰に蓄積することを指す。シリコーン類が毛髪表面に過剰に蓄積すると、毛髪に硬さやごわつきを感じるようになるため、毛髪はビルドアップしないことが好ましい。
【0020】
高級アルコール(B)としては、例えば、炭素数14~24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を有する1価の高級アルコールが挙げられる。高級アルコール(B)において炭素数は、好ましくは16~22、より好ましくは16~18である。
【0021】
また、高級アルコール(B)は、飽和アルコールであっても、不飽和アルコールであってもよいが、剤の安定性を付与する効果に優れることから飽和アルコールが好ましい。
高級アルコール(B)として、具体的には、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、およびオレイルアルコールが挙げられる。これらの中でも、セタノール、ステアリルアルコール、およびベヘニルアルコールが好ましく、仕上がりの柔らかさに優れることから、セタノールがより好ましい。
高級アルコール(B)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
<塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)>
本発明の毛髪化粧料は、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)を1~7質量%、好ましくは1~6質量%、より好ましくは3~5質量%含む。
【0023】
本発明の毛髪化粧料は、高級アルコール(B)と、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)との質量比(B/C)が1~3であり、好ましくは1.5~3であり、より好ましくは2~2.5である。
【0024】
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)が前記範囲内にあると、塗布時、すすぎ時、および仕上がりの柔らかさを付与することができる。
【0025】
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)が前記下限量より少ないと、塗布時の柔らかさが充分ではない。
【0026】
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)が前記上限量より多いと、すすぎ時の均一性および乾きやすさが悪くなる。
【0027】
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)は、すすぎ時の柔らかさに優れることから、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0028】
本発明の毛髪化粧料は、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムがそれぞれ単独で配合されていてもよいし、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムが同時に配合されていてもよい。
【0029】
<アミノ変性シリコーンエマルション(D)>
本発明におけるアミノ変性シリコーンエマルションとは、アミノ基を有するシリコーンを界面活性剤の作用によって水中に分散させたものを指す。前記界面活性剤は、一般的にカチオン界面活性剤またはノニオン性界面活性剤が用いられている。
【0030】
本発明の毛髪化粧料は、アミノ変性シリコーンエマルション(D)を1~8質量%、好ましくは2~8質量%、より好ましくは4~6質量%含む。
アミノ変性シリコーンエマルション(D)が前記範囲内にあると、塗布時およびすすぎ時の柔らかさを付与することができる。
【0031】
アミノ変性シリコーンエマルション(D)が前記下限量より少ないと、塗布時およびすすぎ時の柔らかさが充分ではない。
アミノ変性シリコーンエマルション(D)が前記上限量より多いと、乾燥時および仕上がりの柔らかさが損なわれ、ビルドアップしやすくなる。
【0032】
アミノ変性シリコーンエマルション(D)としては、例えば、アモジメチコンをカチオン界面活性剤によって水中に分散させたものが挙げられる。アミノ変性シリコーンエマルション(D)として、具体的には、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体エマルションが挙げられる。市販品としては、SM8904(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)等が挙げられ、すすぎ時および仕上がりの毛髪の滑らかさと柔らかさに優れることから好ましい。
アミノ変性シリコーンエマルション(D)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0033】
<25℃における粘度が2~500mm2/sであるメチルポリシロキサン(E)および25℃における粘度が1万~400万mm2/sである高重合メチルポリシロキサン(F)から選択される少なくとも一種のポリシロキサン(X)>
本発明の毛髪化粧料は、25℃における粘度が2~500mm2/sであるメチルポリシロキサン(E)および25℃における粘度が1万~400万mm2/sである高重合メチルポリシロキサン(F)から選択される少なくとも一種のポリシロキサン(X)を含むことが好ましい。
本発明の毛髪化粧料は、25℃における粘度が2~500mm2/sであるメチルポリシロキサン(E)を好ましくは0.5~6質量%含む。
【0034】
メチルポリシロキサン(E)を任意で加えることによって、乾燥時の滑らかさおよび柔らかさ、ならびに仕上がりの柔らかさを高めることができるため、好ましい。
メチルポリシロキサン(E)としては、25℃における粘度が、好ましくは5~200mm2/s、より好ましくは10~50mm2/sである。
【0035】
メチルポリシロキサン(E)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の毛髪化粧料は、25℃における粘度が1万~400万mm2/sである高重合メチルポリシロキサン(F)を好ましくは0.5~2質量%含む。
【0036】
高重合メチルポリシロキサン(F)を任意で加えることによって、すすぎ時の滑らかさおよび柔らかさ、ならびに仕上がりの滑らかさを高めることができるため、好ましい。
高重合メチルポリシロキサン(F)としては、25℃における粘度が、好ましくは100万~400万mm2/sである。
【0037】
高重合メチルポリシロキサン(F)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の毛髪化粧料は、メチルポリシロキサン(E)と高重合メチルポリシロキサン(F)とを共に配合すると、すすぎ時から仕上がりまで一貫した柔らかさを得られるためより好ましい。
【0038】
本発明の毛髪化粧料は、ポリシロキサン(X)としてメチルポリシロキサン(E)を0.5~1.5質量%と、高重合メチルポリシロキサン(F)を0.5~1.5質量%とを含むことが、さらに好ましい。
【0039】
本発明の毛髪化粧料は、ポリシロキサン(X)としてメチルポリシロキサン(E)を含み、高重合メチルポリシロキサン(F)を実質的に含まない場合には、メチルポリシロキサン(E)を0.5~6質量%含むことが好ましく、0.5~3質量%含むことがより好ましい。なお、高重合メチルポリシロキサン(F)を実質的に含まないとは、毛髪化粧料に含まれる高重合メチルポリシロキサン(F)の量が、0~0.05質量%であることを意味する。
【0040】
また、本発明の毛髪化粧料は、ポリシロキサン(X)として高重合メチルポリシロキサン(F)を含み、メチルポリシロキサン(E)を実質的に含まない場合には、高重合メチルポリシロキサン(F)を、乾きやすさおよびビルドアップの少なさの観点から、0.5~2質量%含むことが好ましく、0.5~1質量%含むことがより好ましい。なお、メチルポリシロキサン(E)を実質的に含まないとは、毛髪化粧料に含まれるメチルポリシロキサン(E)の量が、0~0.05質量%であることを意味する。
【0041】
<任意成分>
本発明の毛髪化粧料は、通常は水を含む。水の含有量は特に限定されず、使用する目的に応じて、適宜調整して用いることができる。水として、具体的には、水道水、イオン交換水、蒸留水、精製水および天然水が挙げられ、殺菌済みのものが好ましい。
【0042】
本発明の毛髪化粧料は、任意で、水を好ましくは65~96質量%含む。
本発明の毛髪化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記成分以外に任意の成分を含有することができる。任意の成分としては、例えば、保湿剤、生薬類、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、ビタミン類、タンパク質、香料、抗菌剤、増粘剤および色素が挙げられる。
【0043】
<製造方法>
本発明の毛髪化粧料は、上述した各成分を上述の量で使用する以外は、例えば公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。製造方法としては各成分を均一に混合するために、加熱条件下で行ってもよい。加熱条件下で製造する場合の温度としては、例えば75~85℃が挙げられる。
【0044】
本発明の毛髪化粧料のpHは、適宜設定することができる。本発明の毛髪化粧料のpHは、好ましくはpH3.0~8.0、より好ましくはpH3.0~6.0である。なお、pHの測定法は特に限定されるものではなく、一般的なpHの測定法(例えばガラス電極法)を用いて、適切な測定条件において測定すればよい。
【0045】
<剤型>
本発明の毛髪化粧料の状態としては、例えば、クリーム状、ミルク状などが挙げられ、毛髪に均一に塗布しやすい観点から、クリーム状が好ましい。
本発明の毛髪化粧料の外観は、例えば、透明または不透明な外観が挙げられる。本発明の毛髪化粧料の各種配合成分を均一に混合する観点から、乳化状態であり、不透明な外観であり、油層と水層が分離していないことが好ましい。
【0046】
<使用方法>
本発明における毛髪化粧料は、毛髪に塗布して使用することができ、シャンプー後の毛髪に塗布して使用することが好ましい。
本発明の毛髪化粧料は、例えば、トリートメント、コンディショナー、リンス、および多剤式トリートメントの一部を構成するトリートメントとしても使用することができる。
本発明の毛髪化粧料は、トリートメントであることが好ましい。
【実施例】
【0047】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
<実施例1~35、比較例1~14>
表3~表7に示す処方で各成分を混合することにより毛髪化粧料を製造し、官能評価(1)~(15)の試料とした。なお、表3~表7の処方の数値は、毛髪化粧料を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表している。
実施例および比較例では、表1に記載の市販品を使用した。
【0048】
【0049】
<官能評価>
専門パネラー(美容師)10人が1人ずつ、シェルパデザインサプリD-1シャンプー(株式会社アリミノ製)2gを用いて、ダメージ処理した毛束を洗浄後、水洗し、軽く水気を切った。その後、実施例および比較例の各毛髪化粧料を2g塗布し、水洗した。充分に水洗した後、タオルドライし、ドライヤーで乾燥させた。
【0050】
上述の各施術工程について、下記(1)~(15)に記載の評価項目と評価基準に従って官能評価を行った。各項目につき10人の評価点の平均を算出し、以下のとおり評価した。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点未満である。
【0051】
〔ダメージ処理〕
官能評価では、一般の人の毛髪の傷みを再現した、ダメージ処理した毛束を用いた。ダメージ処理は以下の方法で行った。
表2に記載の配合でダメージ処理用水溶液を調製し、60℃に加熱した。そこに毛束(約30cm、10gの人毛)(製品名BS-B3A、ビューラックス社製)を10分間浸漬して、ダメージを与えた。その後、ダメージ処理用水溶液から毛束を取り出し、水洗し、乾燥させた。
【0052】
【0053】
〔評価〕
(1)塗布時の滑らかさ
毛束に各毛髪化粧料を塗布したときの滑らかさを触感で評価した。
4点:毛髪にしっかりとぬめりがでて、非常に滑らかである
3点:毛髪にぬめりがでて、滑らかである
2点:毛髪がややごわつき、ざらざらする
1点:毛髪がごわつき、非常にざらざらする
(2)塗布時の柔らかさ
毛束に各毛髪化粧料を塗布したときの柔らかさを触感で評価した。
4点:毛髪がくたっとし、非常に柔らかい
3点:毛髪が柔らかい
2点:毛髪が硬い
1点:毛髪が非常に硬い
(3)塗布時の均一性
毛束に各毛髪化粧料を塗布したときの毛先と根元の感触について評価した。
4点:毛先と根元では、感触の違いが全くない
3点:毛先と根元では、ほぼ同等の感触である
2点:毛先と根元では、感触が異なる
1点:毛先と根元では、感触が非常に異なる
(4)すすぎ時の流しやすさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすぐ時の流しやすさを触感で評価した。
4点:毛髪が全く絡まず、非常にすすぎやすい
3点:毛髪が絡まず、すすぎやすい
2点:毛髪が絡まり、すすぎにくい
1点:毛髪が絡まり、非常にすすぎにくい
(5)すすぎ時の滑らかさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすぐ時の滑らかさを触感で評価した。
4点:非常に滑らかである
3点:滑らかである
2点:きしみやべたつきを感じる
1点:非常にきしみやべたつきを感じる
(6)すすぎ時の柔らかさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすぐ時の柔らかさを触感で評価した。
4点:非常に柔らかい
3点:柔らかい
2点:硬い
1点:非常に硬い
(7)すすぎ時の均一性
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすぐ時の毛先と根元の感触について評価した。
4点:毛先と根元では、感触の違いが全くない
3点:毛先と根元では、ほぼ同等の感触である
2点:毛先と根元では、感触が異なる
1点:毛先と根元では、感触が非常に異なる
(8)乾燥時の滑らかさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させているときの滑らかさを触感で評価した。
4点:毛髪が全くひっかからず、非常に滑らかである
3点:毛髪があまりひっかからず、滑らかである
2点:毛髪がひっかかり、滑らかではない
1点:毛髪が非常にひっかかり、滑らかではない
(9)乾燥時の柔らかさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させているときの柔らかさを触感で評価した。
4点:非常に柔らかい
3点:柔らかい
2点:硬い
1点:非常に硬い
(10)乾燥時の均一性
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させているときの毛先と根元の感触について評価した。
4点:毛先と根元では、感触の違いが全くない
3点:毛先と根元では、ほぼ同等の感触である
2点:毛先と根元では、感触が異なる
1点:毛先と根元では、感触が非常に異なる
(11)乾きやすさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させる際の乾きやすさを評価した。
4点:毛髪の一本一本がとても離れやすいため絡まらず、非常に早く乾く
3点:毛髪の一本一本が離れやすいため絡まらず、早く乾く
2点:毛髪の一本一本がやや絡まり、乾きにくい
1点:毛髪の一本一本が絡まり、非常に乾きにくい
(12)仕上がりの滑らかさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させた後の滑らかさを触感で評価した。
4点:毛髪が全くひっかからず、非常に滑らかである
3点:毛髪があまりひっかからず、滑らかである
2点:毛髪がひっかかり、滑らかではない
1点:毛髪が非常にひっかかり、滑らかではない
(13)仕上がりの柔らかさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させた後の柔らかさを触感で評価した。
4点:非常に柔らかい
3点:柔らかい
2点:硬い
1点:非常に硬い
(14)艶
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させる一連の施術を7回繰り返し行った後の艶を目視で評価した。
4点:非常に艶がある
3点:艶がある
2点:やや艶がない
1点:全く艶がない
(15)ビルドアップの少なさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させる一連の施術を7回繰り返し行った後の触感について、一連の施術を1回行った後の触感との違いを評価した。
4点:全く硬さを感じない
3点:あまり硬さを感じない
2点:硬さを感じる
1点:非常に硬さを感じる
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
実施例1~35で製造した毛髪化粧料は、(1)~(15)の評価項目において良好な結果となった。実施例34および35は、特に良好な結果となった。
本発明の毛髪化粧料は、塗布時、すすぎ時、乾燥時、および仕上がりの毛髪の滑らかさと柔らかさに優れ、毛髪に均一に付着し、べたつきやきしみがなく、かつ、速乾性にも優れることがわかる。
【0060】
比較例1で製造した毛髪化粧料は、アミンオキシド(A)が規定量より少ないため、塗布時の滑らかさおよび柔らかさ、乾きやすさ、艶、ならびにビルドアップの少なさの評価が悪かった。また、塗布時、すすぎ時、および乾燥時の均一性の評価も悪かった。
【0061】
比較例2で製造した毛髪化粧料は、アミンオキシド(A)が規定量より多いため、塗布時の滑らかさおよび柔らかさ、ならびに乾きやすさの評価が悪かった。また、すすぎ時、および乾燥時の均一性の評価も悪かった。
【0062】
比較例3、4、および5で製造した毛髪化粧料は、アミンオキシド(A)を配合していないため、全ての評価が悪かった。
比較例6で製造した毛髪化粧料は、高級アルコール(B)と、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)との質量比(B/C)が、規定値よりも低いため、塗布時の滑らかさおよび柔らかさの評価が悪かった。
【0063】
比較例7で製造した毛髪化粧料は、高級アルコール(B)と、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)との質量比(B/C)が、規定値よりも高いため、乾きやすさ、およびビルドアップの少なさの評価が悪かった。
【0064】
比較例8で製造した毛髪化粧料は、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)が規定量より少ないため、塗布時の柔らかさの評価が悪かった。
【0065】
比較例9で製造した毛髪化粧料は、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)が規定量より多いため、すすぎ時の均一性、および乾きやすさの評価が悪かった。
【0066】
比較例10で製造した毛髪化粧料は、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)を配合していないため、乾燥時の滑らかさおよび柔らかさの評価が悪かった。また、仕上がりの滑らかさおよび柔らかさ、ならびに艶の評価も悪かった。
【0067】
比較例11で製造した毛髪化粧料は、アミノ変性シリコーンエマルション(D)が規定量より少ないため、塗布時の柔らかさ、およびすすぎ時の均一性の評価が悪かった。
比較例12で製造した毛髪化粧料は、アミノ変性シリコーンエマルション(D)が規定量より多いため、乾燥時および仕上がりの柔らかさ、ならびにビルドアップの少なさの評価が悪かった。
【0068】
比較例13で製造した毛髪化粧料は、アミノ変性シリコーンエマルション(D)を配合していないため、すすぎ時の流しやすさおよび滑らかさ、乾燥時の均一性、乾きやすさ、ならびにビルドアップの少なさの評価が悪かった。
【0069】
比較例14で製造した毛髪化粧料は、すすぎ時におけるべたつき・キシミを抑えつつ、乾燥後の毛髪に柔らかさとしっとり感を付与することを目的とした既存の毛髪化粧料の処方である。本発明の毛髪化粧料に規定された成分が規定量配合されていないため、塗布時、すすぎ時、乾燥時、および仕上がりの毛髪の滑らかさと柔らかさの評価が悪く、すすぎ時の流しやすさも悪かった。また、塗布時、すすぎ時、乾燥時、および仕上がりの均一性の評価、および艶の評価も悪かった。