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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/16 20220101AFI20230418BHJP
【FI】
F24H9/16 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019143933
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021025703
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】川田 剛司
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-141309(JP,A)
【文献】実開昭52-043680(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00-15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の底板上に、ドレンを中和するための中和器が設置された給湯器であって、
前記中和器の底面に、ドレン抜き栓が挿脱可能に装着されたドレン抜き口が設けられると共に、前記ドレン抜き栓と前記ドレン抜き口とは、前記ドレン抜き栓の装着状態で中間部が二つ折り状態となる可撓性の連結バンドで連結され、
前記中和器の底面には、前記ドレン抜き栓の装着状態で前記連結バンドの前記中間部を保持する位置決め部が設けられる一方、
前記底板には、前記中和器の設置状態で前記ドレン抜き口と前記位置決め部とを貫通させて前記底板の下側に露出させる開口部が形成されていることを特徴とする給湯器。
【請求項2】
前記位置決め部は、前記ドレン抜き口側に両端部を向けた底面視コ字状であることを特徴とする請求項1に記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中和器を備えた潜熱回収型の給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
潜熱回収型の給湯器には、潜熱を回収する際に生じるドレンを中和して排出するための中和器が設けられる。この中和器は、例えば特許文献1に開示されるように、中和剤が充填される容器内を複数の仕切壁によって複数の領域に区画し、仕切壁の上端又は下端に開口を交互に形成して、最下流の排水口室まで各領域を順番に連通させている。これにより、導入口から導入されたドレンが各領域を上下の開口を介して順に流下することで、容器内に充填された中和剤で中和され、排水口室の排水口から外部に排出されるようになっている。
また、容器の底部には、排水口とは別に、低温時のドレン締結を予防するための水抜き栓(ドレン抜き栓)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-31494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の中和器では、ドレン抜き栓は容器底部のドレン抜き口へ挿脱可能に設けられており、ドレン抜き栓を抜き取ることでドレン抜き口からのドレン排出が可能となっている。このドレン抜き栓は、ドレン排出の際に落下したり紛失したりしないように、ドレン抜き口との間に架設された可撓性の連結バンドによって連結されている。
この場合、給湯器の筐体底面からドレン抜きが行えるように、筐体の底板に設けた開口部を介してドレン抜き栓及び連結バンドを底板から下方へ露出させる必要がある。しかし、連結バンドはドレン抜き口を中心に回転しやすいため、開口部からずれた状態となっている場合がある。これに気づかずに中和器を底板上に固定すると、連結バンドが中和器と底板との間で挟み込まれてドレン抜き栓の抜き取りができなくなってしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、ドレン抜き栓の連結バンドの挟み込みを防止してドレン抜きが確実に行える給湯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、筐体の底板上に、ドレンを中和するための中和器が設置された給湯器であって、
中和器の底面に、ドレン抜き栓が挿脱可能に装着されたドレン抜き口が設けられると共に、ドレン抜き栓とドレン抜き口とは、ドレン抜き栓の装着状態で中間部が二つ折り状態となる可撓性の連結バンドで連結され、
中和器の底面には、ドレン抜き栓の装着状態で連結バンドの中間部を保持する位置決め部が設けられる一方、
底板には、中和器の設置状態でドレン抜き口と位置決め部とを貫通させて底板の下側に露出させる開口部が形成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、位置決め部は、ドレン抜き口側に両端部を向けた底面視コ字状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、中和器の底面に、ドレン抜き栓の装着状態で連結バンドの中間部を保持する位置決め部を設けて、底板に、中和器の設置状態でドレン抜き口と位置決め部とを貫通させて底板の下側に露出させる開口部を形成しているので、中和器の設置時には、ドレン抜き栓の装着状態で連結バンドを位置決め部に保持させておけば、連結バンドが中和器と底板との間に挟み込まれることがなくなる。よって、ドレン抜きが確実に行える。
請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加えて、位置決め部を、ドレン抜き口側に両端部を向けた底面視コ字状としているので、連結バンドの回転を確実に規制できると共に、ドレン抜き口から離れる方向への中間部の突出も効果的に防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】風呂給湯器の概略回路図である。
図2】中和器の斜視図である。
図3図2のA-A線断面斜視図である。
図4】ケース本体の上方からの斜視図である。
図5】(A)は中和器と底板との下方からの分解斜視図、(B)は中和器を底板に取り付けた状態の下方からの斜視図である。
図6】(A)は中和器とドレン排出管との接続部分の正面図、(B)は中和器を取り外す状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(風呂給湯器の概略構成)
図1は、給湯器の一例である風呂給湯器1の概略回路図である。
この風呂給湯器1は、図示しない筐体内に収容される内胴2内に、仕切部材3によって給湯燃焼室4と風呂燃焼室5とを仕切り形成し、各燃焼室4,5の下部に、複数のバーナからなる給湯バーナ6,6・・と風呂バーナ7とを備えている。また、各燃焼室4,5には、点火プラグ8とフレームロッド9とがそれぞれ設けられている。内胴2の下部には、各バーナ6,7へ燃焼用空気を供給する燃焼ファン10が設けられている。
給湯燃焼室4内の上部には、給湯バーナ6の燃焼排気が通過する給湯一次熱交換器11と給湯二次熱交換器12とが設けられ、風呂燃焼室5の上部には、風呂バーナ7の燃焼排気が通過する風呂一次熱交換器13と風呂二次熱交換器14とが設けられている。各二次熱交換器12,14は、内胴2の上部に設けられた排気フード15内に収容されている。排気フード15には、各二次熱交換器12,14を通過した燃焼排気を排出する排気口16が形成されている。
【0010】
筐体の底面に設けたガス入口には、外部からのガス配管が接続されるガス管17が接続されている。各給湯バーナ6と風呂バーナ7とには、ガス管17から分岐するガス分岐管18,18・・がそれぞれ接続されると共に、各ガス分岐管18には、ガス流路を開閉するガス電磁弁19がそれぞれ設けられている。また、分岐前のガス管17には、上流側から元ガス電磁弁20、ガス比例弁21がそれぞれ設けられている。
【0011】
給湯二次熱交換器12の吸熱管の入口には、筐体底面の水入口に接続される給水管22が接続される。給水管22には、上流側から、水抜き栓を備えたストレーナ23と、給水管22を流れる水量を検出する給湯水量センサ24と、入水温度を検出する給湯入水サーミスタ25と、水量制御モータ26とが設けられている。吸熱管の出口は、給湯一次熱交換器11の伝熱管の入口に接続され、伝熱管の出口には、筐体底面の湯出口に接続される出湯管27が接続される。出湯管27には、給湯一次熱交換器11からの出口温度を検出する給湯熱交換器サーミスタ28が設けられ、その下流側で器具からの出湯温度を検出する給湯出湯サーミスタ29とが設けられる。出湯管27における給湯出湯サーミスタ29の上流側と、給水管22における水量制御モータ26の下流側との間には、給湯一次、二次熱交換器11,12をバイパスするバイパス管30が接続され、バイパス管30には、バイパス流量を制御する水分配弁31が設けられている。
こうして筐体内には、給水管22からの水が給湯二次熱交換器12、給湯一次熱交換器11の順に通過して給湯バーナ6の燃焼排気と熱交換して加熱された後、出湯管27から出湯される給湯回路Aが形成される。
【0012】
一方、風呂二次熱交換器14の吸熱管の入口には、筐体底面の風呂戻り口に接続された戻り管35が接続される。風呂戻り口は、外部戻り管36を介して浴槽37と接続される。また、戻り管35の下流側にはポンプ38が設けられ、ポンプ38の上流側には、風呂戻り温度を検出する風呂戻りサーミスタ39が設けられて、ポンプ38の下流側には、風呂水流スイッチ40と水位センサ41とが設けられる。
風呂二次熱交換器14の吸熱管の出口は、風呂一次熱交換器13の伝熱管の入口に接続され、伝熱管の出口は、筐体底面の風呂往き口に接続される往き管42が接続される。風呂戻り口は、外部往き管43を介して浴槽37と接続される。往き管42には、風呂往き温度を検出する風呂往きサーミスタ44が設けられている。
こうして筐体内には、ポンプ38の運転によって浴槽37の湯水が戻り管35から風呂二次熱交換器14、風呂一次熱交換器13の順に通過して風呂バーナ7の燃焼排気と熱交換して加熱された後、往き管42から浴槽37に戻る風呂回路B(循環回路)が形成される。
【0013】
また、出湯管27におけるバイパス管30より下流側と、戻り管35におけるポンプ38よりも上流側との間には、落とし込み管45が接続される。この落とし込み管45には、上流側(出湯管27側)から、落とし込み管45を開閉する落とし込み水電磁弁46と、落とし込み管45を流れる水量を検出する風呂水量センサ47とがそれぞれ設けられている。さらに、風呂水量センサ47の上流側と下流側とには、2つの逆止弁48,48がそれぞれ設けられて、上流側の逆止弁48と風呂水量センサ47との間には、縁切弁49が接続されている。この縁切弁49は、筐体底面に設けたオーバーフロー口に接続される排水管50と、給水管22におけるストレーナ23の下流側と接続された導入管51とが接続されて、戻り管35からの逆流で高まった落とし込み管45内の湯水の内圧が導入管51から加わる背圧より高くなると、落とし込み管45から逆流した湯水を排水管50を介してオーバーフロー口へ排出するものである。
【0014】
そして、筐体内には、給湯二次熱交換器12及び風呂二次熱交換器14で生じたドレンを中和するための中和器55が設けられている。この中和器55は、排気フード15の底面に設けたドレン受け56とドレン導入管57を介して接続されると共に、縁切弁49の排水管50とドレン排出管58を介して接続されている。また、中和器55には、水位を検出する水位電極59が設けられると共に、筐体底面からドレンを排出するドレン抜き口60が設けられている。中和器55の詳細については後述する。
65は、各サーミスタやセンサ等の検出信号を受けて各弁等を動作させて出湯温制御や浴槽37への湯張り制御等を行うコントローラ、66は給湯リモコン、67は風呂リモコンである。
【0015】
(風呂給湯器の通常動作)
この風呂給湯器1においては、通常の給湯及び湯張りは以下の如くなされる。
まず、給湯回路Aにおいて、湯出口に接続された外部配管の給湯栓が開栓されて給水管22から器具内に通水され、その通水を給湯水量センサ24で検知すると、コントローラ65は、燃焼ファン10を所定時間回転させて、給湯燃焼室4内に貯留している燃焼排気を排出させる(プリパージ)。その後、ガス管17の元ガス電磁弁20、各ガス電磁弁19を開弁させ、ガス比例弁21を所定開度で開弁させて、給湯バーナ6へガスを供給すると共に、イグナイタを作動させて点火プラグ8で給湯バーナ6に点火する。
これにより、給湯二次熱交換器12では、給水管22から吸熱管に流れる水が給湯バーナ6の燃焼排気と接触して潜熱が回収され、給湯一次熱交換器11では、吸熱管から伝熱管に流れる湯水が給湯バーナ6の燃焼排気と接触して顕熱が回収されて、高い熱効率で加熱された湯が出湯管27及び外部配管を通って給湯栓から出湯される。
【0016】
コントローラ65は、出湯管27の給湯熱交換器サーミスタ28によって出口温度を監視し、水分配弁31を駆動させて、出口温度が、給湯一次熱交換器11でのドレンの発生や過熱を防止できる温度範囲内に維持されるようにバイパス管30への流量(バイパス率)を制御する。
また、給湯出湯サーミスタ29によって出湯温度を監視し、出湯温度が給湯リモコン66又は風呂リモコン67によって指示された設定温度となるように、各ガス電磁弁19の開閉制御と、ガス比例弁21の開度調整とを行うと共に、燃焼ファン10の回転数制御によって空気量を連続的に変化させる。
給湯栓を閉じると、給湯水量センサ24からの信号停止を確認したコントローラ65は、元ガス電磁弁20及びガス電磁弁19を閉じて給湯バーナ6を消火させ、所定時間燃焼ファン10を回転させる(ポストパージ)。
【0017】
一方、給湯リモコン66又は風呂リモコン67の自動スイッチを押すと、コントローラ65は、落とし込み管45の落とし込み水電磁弁46を開弁して給湯一次、二次熱交換器11,12に通水させて給湯バーナ6を燃焼させる。出湯管27からの湯は、落とし込み管45及び戻り管35を通って外部戻り管36から浴槽37に供給される。落とし込み管45に設けた風呂水量センサ47で検出した水量が設定水量に達すると、落とし込み水電磁弁46を閉じて通水を停止し、給湯バーナ6を消火させる。
次に、風呂回路Bでは、ポンプ38を作動させて、風呂一次、二次熱交換器13,14と浴槽37との間で湯水を循環させる。このとき、風呂戻りサーミスタ39と風呂往きサーミスタ44とで循環する湯水の温度を監視し、設定温度からの低下を確認すると、コントローラ65は風呂バーナ7を点火させて燃焼ファン10によって燃焼用空気を供給する。よって、風呂一次、二次熱交換器13,14と浴槽37との間を循環する風呂循環水は、風呂二次熱交換器14の吸熱管を流れる際に風呂バーナ7の燃焼排気と接触して潜熱が回収され、風呂一次熱交換器13の伝熱管を流れる際に燃焼排気と接触して顕熱が回収されて設定温度まで加熱される。設定温度に達すると、コントローラ65は風呂バーナ7の燃焼及びポンプ38の運転を停止させる。
【0018】
(中和器の説明)
そして、図2は、中和器55の斜視図、図3はA-A線断面斜視図である。この中和器55は、上面を開口した上下に縦長のケース本体70と、ケース本体70の上面を閉塞する蓋板71とを備える。ケース本体70は、前後が長くなる平面視矩形状で、後面右寄り位置には、後方へ突出する浅底の張出部72が形成されている。張出部72の底面は、前方へ行くに従って下り傾斜する傾斜面となっている。
蓋板71も張出部72を含むケース本体70と同じ平面視形状で、張出部72の上方位置に、ドレン導入管57が接続されるドレン入口73が設けられている。ドレン入口73の前方には、水位電極59の差込口74,74が設けられている。
【0019】
また、ケース本体70内は、図4にも示すように、平面視倒L字状の第1仕切壁75と、第1仕切壁75の前方で左右方向に形成される第2仕切壁76と、第2仕切壁76の前面とケース本体70の左側内面とに接続される平面視L字状の第3仕切壁77とが上下方向に立設されている。この第1~第3仕切壁75~77により、ケース本体70内は、第1仕切壁75の後方で張出部72内と連通する第1領域78と、その前方で第1仕切壁75と第2仕切壁76との間に形成される第2領域79と、第2領域79の前方で第2仕切壁76と第3仕切壁77の前面及び右側面とケース本体70の内面とに囲まれる右側の第3領域80と、第2領域79の前方で第2仕切壁76と第3仕切壁77の後面及び左側面とケース本体70の内面とに囲まれる左側の第4領域81とに区画される。ドレン抜き口60は、第2領域79の底面に設けられている。ケース本体70において第3領域80の左側と第4領域81とを含む部分は、底面が上側に位置する浅底部82となっており、第4領域81の底面には、ドレン排出管58が接続されるドレン出口83が設けられている。
【0020】
また、第1仕切壁75における前後部分の下端には、第1下連通口84が、第2仕切壁76における右側部分の下端には、第2下連通口85がそれぞれ切欠き形成されている。よって、第1領域78と第2領域79とは、第1下連通口84を介して下端同士で連通し、第2領域79と第3領域80とは、第2下連通口85を介して下端同士で連通することになる。
さらに、各仕切壁75~77は、ケース本体70内の上下全長に亘って立設されて、上端を蓋板71の下面に密着させることで、中和器55内の上部では各領域78~80を閉塞している。但し、第3仕切壁77の前側の左右部分には、上端に複数の上連通口86,86・・が切欠き形成されて、上連通口86を介して第3領域80と第4領域81とを連通させるオーバーフロー壁77Aとなっている。
【0021】
一方、ドレン抜き口60は、図5(A)に示すように、ケース本体70の底面から下方へ突出されて、下方からドレン抜き栓90を差し込むことで閉塞されている。ドレン抜き口60の根元には、樹脂製で帯板状の連結バンド91のリング状の一端部91aが回転可能に外装され、連結バンド91のリング状の他端部91bは、ドレン抜き栓90の中間部に外装されている。よって、ドレン抜き栓90は、ドレン抜き口60から抜き取った際に落下することなく連結バンド91によってドレン抜き口60から吊り下げ支持される。
また、ドレン抜き口60の後側でケース本体70の底面には、ドレン抜き栓90をドレン抜き口60に差し込んだ状態で二つ折り状態となる連結バンド91の中間部91cを嵌合させて左右から保持させるための底面視コ字状の位置決め部92が、ドレン抜き口60に両端部を向けた前向き姿勢で突設されている。
【0022】
そして、図5に示す筐体100の底板101には、中和器55のケース本体70を底板101上に設置した状態でドレン抜き口60と位置決め部92とを貫通させて底板101から下方へ露出させる開口部102が形成されている。
また、ドレン出口83に接続されるドレン排出管58は、図6(A)に示すように、ケース本体70の浅底部82の下側で上下方向に配置されて下端が底板101の下面に設けたオーバーフロー口103に接続される。このドレン排出管58の中間部には、左側へ突出する分岐管61が形成されており、この分岐管61に、縁切弁49に接続される排水管50が接続されるようになっている。
【0023】
以上の如く構成された風呂給湯器1において、中和器55のケース本体70内には、張出部72と第1~第3領域78~80とにおいて所定量の中和剤が充填されて蓋板71で上部開口が閉塞される。そして、ドレン抜き口60にドレン抜き栓90を差し込んで閉栓し、ドレン出口83にドレン排出管58を接続した状態で筐体100の底板101上に載置する。このとき、連結バンド91は、図5(A)に示すように中間部91cを位置決め部92に保持させた状態とすれば、回転が規制されて位置決め部92からはみ出さないため、ケース本体70を底板101に載置する際に連結バンド91をケース本体70と底板101との間に挟み込むおそれがなく、図5(B)に示すようにドレン抜き口60と位置決め部92とを開口部102へスムーズに貫通させることができる。
次に、蓋板71のドレン入口73にドレン導入管57を接続し、ドレン排出管58をオーバーフロー口103に接続し、ドレン排出管58の分岐管61に排水管50を接続すれば、中和器55の設置は完了する。
【0024】
(中和器によるドレンの中和及び排出作用の説明)
給湯回路A或いは風呂回路Bが使用されて排気フード15内で発生したドレンは、ドレン受け56からドレン導入管57を通り、ドレン入口73からケース本体70内に落下する。張出部72及び第1領域78の位置でケース本体70と蓋板71との間には、複数のスリットを備えたフィルタ板93(図3)が設けられている。
よって、フィルタ板93を通ってケース本体70内に落下したドレンは、図4に点線矢印で示すように、張出部72の底面を通って第1領域78に流れ、第1下連通口84を介して第2領域79に流れる。さらに、第2領域79から第2下連通口85を介して第3領域80にも流れる。よって、ケース本体70内のドレンは、第1~第3領域78~80で貯留されて略同じ水位となり、各領域78~80内の中和剤によって中和される。特に、張出部72の底面もドレンの流出経路となるため、張出部72に充填される中和剤によっても中和作用が得られる。
なお、各領域78~80の上部は各仕切壁75~77によって分断されて互いに連通していないため、ドレンと共に酸性ガスがケース本体70内に侵入しても、下端の第1下連通口84及び第2下連通口85を通らないと各領域78~80を通過できない。よって、酸性ガスも確実に中和剤と接触して中和されることになる。
【0025】
そして、実線矢印で示すように、ケース本体70内のドレンの水位が上がり、浅底部82も越えて第3仕切壁77のオーバーフロー壁77Aの上連通口86に達すると、中和されたドレンは、上連通口86からオーバーフロー壁77Aを乗り越えて第4領域81に落下する。よって、第4領域81の底部のドレン出口83からドレン排出管58を介してオーバーフロー口103に至り、器具外部へ排出される。
一方、凍結予防のためにドレン抜きを行う場合、ドレン抜き栓90をドレン抜き口60から抜き取れば、ケース本体70内に貯まったドレンをドレン抜き口60から排出することができる。このとき前述のように各領域78~80は第1、第2下連通口84,85によって互いに繋がっているので、1箇所のドレン抜き口60から全ての領域78~80のドレンを排出することができ、ドレンが残ることがない。
【0026】
また、中和剤を補充するために中和器55を筐体100から取り外す際は、ドレン出口83とドレン排出管58との接続を解除し、図6(B)に示すように、ドレン排出管58を底板101に接続したまま中和器55を上方へ持ち上げれば、中和器55を筐体100から取り出すことができる。よって、ドレン排出管58と縁切弁49の排水管50との接続を解除する必要がなくなる。
【0027】
(中和器の仕切壁に係る発明の効果)
このように、上記形態の中和器55及び風呂給湯器1では、第1、第2仕切壁75,76は、ドレン出口83を含む第4領域81を除いてケース本体70内で隣接する第1~第3領域78~80同士を連通させる第1、第2下連通口84,85を下端に備え、第4領域81を形成する第3仕切壁77は、上端にオーバーフロー用の上連通口86が形成されたオーバーフロー壁77Aを含んでおり、ドレン入口73からケース本体70内に導入されたドレンを、第1、第2下連通口84,85を介して、第4領域81を除く全ての第1~第3領域78~80で貯留可能とする一方、貯留したドレンが上連通口86を介してオーバーフロー壁77Aを乗り越えることでドレン出口83から排出可能としている。
これにより、1箇所に設けたドレン抜き口60から第1~第3領域78~80全てに貯留したドレンを排出でき、ドレン抜きによる凍結予防が確実に行える。
【0028】
特にここでは、各仕切壁75~77の上端は、蓋板71の下面に密着しているので、ドレン入口73から侵入した酸性ガスが直接第4領域81へ流れることがなく、ドレンと同様に下端の第1下連通口84及び第2下連通口85を通って各領域78~80を通過して中和される。よって、各領域78~80の気密性を確保して酸性ガスの排出を効果的に防止可能となる。
また、ケース本体70は、外側へ突出する浅底の張出部72を有し、蓋板71は、張出部72の上方を閉塞する形状を有してドレン入口73を張出部72の上方に配置しているので、ドレン入口73からドレン出口83に至る経路を長く形成して中和剤による中和を確実に行なうことができる。
【0029】
なお、仕切壁に係る発明において、仕切壁の数や形状、領域の区画構造は上記形態に限らず、適宜変更可能である。下連通口も、形状を半円状等に変更したり、上連通口のように複数の切欠き状としたりしてもよい。上連通口も数や形状を変更して差し支えない。
また、ドレン抜き口の位置も上記形態に限らず、他の領域にあってもよい。張出部も別の位置に設けたり省略したりすることができる。
さらに、給湯器においては、風呂回路では風呂二次熱交換器がなくてもよいし、風呂回路がなく給湯回路のみであってもよい。
【0030】
(連結バンドの位置決め部に係る発明の効果)
上記形態の風呂給湯器1では、中和器55の底面に、ドレン抜き栓90が挿脱可能に装着されたドレン抜き口60が設けられると共に、ドレン抜き栓90とドレン抜き口60とは、ドレン抜き栓90の装着状態で中間部91cが二つ折り状態となる可撓性の連結バンド91で連結され、中和器55の底面には、ドレン抜き栓90の装着状態で連結バンド91の中間部91cを保持する位置決め部92が設けられる一方、底板101には、中和器55の設置状態でドレン抜き口60と位置決め部92とを貫通させて底板101の下側に露出させる開口部102が形成されている。
これにより、中和器55の設置時には、ドレン抜き栓90の装着状態で連結バンド91を位置決め部92に保持させておけば、連結バンド91が中和器55と底板101との間に挟み込まれることがなくなる。よって、ドレン抜きが確実に行える。
【0031】
特にここでは、位置決め部92を、ドレン抜き口60側に両端部を向けた底面視コ字状としているので、連結バンド91の回転を確実に規制できると共に、ドレン抜き口60から離れる方向(ここでは後側)への中間部91cの突出も効果的に防止可能となる。
【0032】
なお、位置決め部に係る発明において、位置決め部の形状は上記形態に限らず適宜変更可能で、底面視コ字状に限らず、左右一対の壁部のみとしても回転規制は可能である。
連結バンドも、両端をリング状とせずにC字状としたり、ベルト状として巻回させたりしてもよい。帯板状に限らず、可撓性があれば棒状であってもよい。
中和器の内部構造も上記形態に限らず、仕切壁はなくてもよい。
また、給湯器も、風呂回路では風呂二次熱交換器がなくてもよいし、風呂回路自体がなくてもよい。
【0033】
(ドレン排出管に係る発明の効果)
上記形態の風呂給湯器1では、中和器55の底面に設けたドレン出口83に、ドレン排出管58の上端が着脱可能に接続されると共に、ドレン排出管58の下端は、底板101に設けたオーバーフロー口103に接続され、ドレン排出管58の上端と下端との間には、分岐管61(分岐部)が形成されて、分岐管61に、縁切弁49から湯水が排出される排水管50が接続されている。
これにより、中和剤の補充等のために中和器55を筐体100から取り出す際、ドレン出口83をドレン排出管58から取り外せばそのまま中和器55を取り出すことができ、中和器55の出し入れ作業の際にいちいち排水管50をドレン排出管58に着脱する作業が不要となる。よって、縁切弁49から排出される湯水をドレンと共に排出可能としても、中和器55の出し入れに係る作業性の低下を防止しつつ、排水管50に残留した湯水が筐体100内へ流れ落ちることも防止することができる。
【0034】
特にここでは、中和器55の底面に、底板101への設置状態で底板101から上方へ離間する浅底部82が部分的に形成され、ドレン出口83は、浅底部82に形成されて、浅底部82の下方にドレン排出管58が配置されているので、ドレン排出管58の設置及び排水管50との接続が筐体100内でスムーズに行え、底板101上へ中和器55が省スペースで設置可能となる。
【0035】
なお、ドレン排出管に係る発明において、ドレン排出管の形状や位置等は上記形態に限らず、ドレン排出管を上下方向でなく傾斜状に配設したり、中和器の後側や横側に配置したり等、適宜変更可能である。分岐管及び排水管の接続形態も、ドレン排出管の位置によっては分岐管を前側に設けたりすることもできる。
また、分岐部としては分岐管に限らず、ドレン排出管に分岐部となる差込口を設けて、その差込口に排水管を差込接続する構成としても差し支えない。
さらに、浅底部も上記形態の前側左部でなく前側右部であったり、後側或いは側面側に設けたりしてもよい。浅底部を省略して底板の下方でドレン排出管と排水管とを接続することも可能である。内部構造も上記形態に限らず、仕切壁はなくてもよい。
そして、給湯器も、風呂回路では風呂二次熱交換器がなくてもよいし、風呂回路以外の循環加熱回路(暖房回路等)であってもよい。
【0036】
その他、各発明に共通して、中和器の位置は筐体内の右側に限らず、左側や中央であってもよいし、中和器自体の大きさや形状も上記形態に限らず、左右に長い平面視矩形状や平面視正方形状、平面視円形状等であってもよい。また、蓋板とケース本体との2部品からなる構造に限らず、蓋板をケース本体と一体化した上で、他の位置で分割される複数の部品を組み合わせて中和器を形成することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1・・風呂給湯器、2・・内胴、4・・給湯燃焼室、5・・風呂燃焼室、6・・給湯バーナ、7・・風呂バーナ、11・・給湯一次熱交換器、12・・給湯二次熱交換器、13・・風呂一次熱交換器、14・・風呂二次熱交換器、15・・排気フード、17・・ガス管、22・・給水管、27・・出湯管、30・・バイパス管、35・・戻り管、37・・浴槽、42・・往き管、45・・落とし込み管、49・・縁切弁、50・・排水管、55・・中和器、57・・ドレン導入管、58・・ドレン排出管、60・・ドレン抜き口、61・・分岐管、65・・コントローラ、70・・ケース本体、71・・蓋板、72・・張出部、73・・ドレン入口、75・・第1仕切壁、76・・第2仕切壁、77・・第3仕切壁、77A・・オーバーフロー壁、78・・第1領域、79・・第2領域、80・・第3領域、81・・第4領域、82・・浅底部、83・・ドレン出口、84・・第1下連通口、85・・第2下連通口、86・・上連通口、90・・ドレン抜き栓、91・・連結バンド、92・・位置決め部、100・・筐体、101・・底板、102・・開口部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6