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特許7264519交流電源制御方法及び交流電源制御装置システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】交流電源制御方法及び交流電源制御装置システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20230418BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J3/38 130
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021063225
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2022158380
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】302016059
【氏名又は名称】株式会社 ソーラージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】西原 秀次
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175785(JP,A)
【文献】特開2021-097530(JP,A)
【文献】特開2014-217217(JP,A)
【文献】特開2006-280159(JP,A)
【文献】国際公開第2020/022194(WO,A1)
【文献】特開2022-039890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の交流電源と第2の交流電源とが負荷に対して並列に接続され、前記第2の交流電源と前記負荷との間を接続する第2の交流電源側の接続配線に対して電流センサーを取り付けて電気回路を制御する交流電源制御方法であって、
第1の交流電源の出力電力を変化させて信号電力として出力させる信号電力の出力工程と、
前記信号電力に対応して変化する前記第2の交流電源側の接続配線に流れる電流の増減を、前記電流センサーによって計測することで、前記第2の交流電源と前記負荷との間の電力の供給方向を特定する電力方向の特定工程と、
前記電力方向の特定工程によって特定された電力の供給方向に対して反対の方向の電力の供給が増加されるように前記第1の交流電源の出力電力を制御する第1の交流電源の出力制御工程とを含み、
以上の工程を順次繰り返すことによって、前記第1の交流電源からの電力を前記第2の交流電源からの電力の供給に優先して前記負荷に供給するように制御することを特徴とする交流電源制御方法。
【請求項2】
前記信号電力の出力工程において、第1の交流電源の出力電力を増加させることで前記信号電力を出力し、
前記電力方向の特定工程で電流が増加したことを計測した場合は前記第1の交流電源から前記第2の交流電源へ電力が供給されていると判断し、前記第1の交流電源の出力制御工程で前記第1の交流電源の出力電力を減少させ、
前記電力方向の特定工程で電流が減少したことを計測した場合は前記第2の交流電源から電力が供給されていると判断し、前記第1の交流電源の出力制御工程で前記第1の交流電源の出力電力を増加させることを特徴とする請求項1記載の交流電源制御方法。
【請求項3】
前記信号電力の出力工程において、第1の交流電源の出力電力を減少させることで前記信号電力を出力し、
前記電力方向の特定工程で電流が増加したことを計測した場合は前記第2の交流電源から電力が供給されていると判断し、前記第1の交流電源の出力制御工程で前記第1の交流電源の出力電力を増加させ、
前記電力方向の特定工程で電流が減少したことを計測した場合は前記第1の交流電源から前記第2の交流電源へ電力が供給されていると判断し、前記第1の交流電源の出力制御工程で前記第1の交流電源の出力電力を減少させることを特徴とする請求項1記載の交流電源制御方法。
【請求項4】
前記信号電力及び前記出力電力の変化量が、所要の数値を予め複数に分割して一段階が所要の大きさ分となるように設定されたものであって、複数の段階を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の交流電源制御方法。
【請求項5】
前記第1の交流電源が自家用発電源であって、前記第2の交流電源が商用電源であり、前記第1の交流電源から前記第2の交流電源へ供給される電力が余剰電力であって、前記第2の交流電源から供給される電力が受給電力であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の交流電源制御方法。
【請求項6】
第1の交流電源と第2の交流電源とが負荷に対して並列に接続された電気回路で、第1の交流電源からの電力を前記第2の交流電源からの電力の供給に優先して前記負荷に供給するように制御する交流電源制御装置システムであって、
前記第2の交流電源と前記負荷との間を接続する第2の交流電源側の接続配線に対して取り付けた電流センサーと、
第1の交流電源の出力電力を変化させて信号電力として出力させ、前記電流センサーによって計測された前記第2の交流電源側の接続配線に流れる電流のデータが入力され、前記信号電力に対応して変化する前記電流のデータの増減に基づいて、前記第2の交流電源と前記負荷との間の電力の供給方向を特定し、特定された前記電力の供給方向に対して反対の方向の電力の供給が増加されるように前記第1の交流電源の出力電力を制御し、以上の操作を順次繰り返すように制御する電源制御装置とを備えることを特徴とする交流電源制御装置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電等の自家用発電装置によって発電された電力を蓄放電する技術分野を含み、例えば、太陽光発電の余剰電力を蓄電し、購入電力(受給電力)のあるときに蓄電した電力を放電して太陽光発電による電力を有効に自家消費しようとする際に好適に利用できる交流電源制御方法及び交流電源制御装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止のため、太陽光、風力や水力の自然エネルギーによる電源と従来の電力会社による電源との共用が必要となってきた。従来、この分野では自然エネルギーによる電力を自家消費し、余剰電力を電力会社に販売する方法が一般的であった。しかしながら、最近では自然エネルギーによる電力価値が認められ、電力会社に供給していた余剰電力を蓄電して自家消費する例が増加するようになってきた。このため、従来には無かった技術が必要となり、自然エネルギーによる電力のほとんどを自家消費するための技術が必要となってきた。
【0003】
これに対して、従来の交流電源制御方法では、図3に示すように、第1の交流電源(1)と第2の交流電源(2)の二つの交流電源を並列に接続した電気回路に負荷(3)を接続し、第2の交流電源(2)と負荷(3)の電気回路に電力計(7)を取り付け、これにより電力量と電力方向を演算して求め、判定基礎電力以上に第2の交流電源(2)からの受給電力(B)があった場合はそれと同等の電力を第1の交流電源(1)から出力電力(A)として増加出力して第2の交流電源(2)からの受給電力(B)を減少させていた。また、判定基礎電力以上に第1の交流電源(1)から第2の交流電源(2)への供給電力である余剰電力(C)があった場合は第1の交流電源(1)からの出力電力(A)を減少出力することにより余剰電力(C)を減少させていた。
【0004】
このように第1の交流電源(1)と第2の交流電源(2)の二つの交流電源を並列に接続した電気回路において電力計(7)を用いて交流電源の出力電力の制御を行うことによれば、例えば、太陽光発電などの自家用発電出力を負荷電力(D)として優先的且つ適切に利用することができ、電力コストを削減することができる(特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特願昭60-210168 インバータの出力電力制御装置
【文献】特願昭63-213425 自家用発電所の電力給電方式
【文献】特願平01-283023 電力制御装置
【文献】特願2004-274981 2次電池制御方法、電源システム及び通信装置
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のような交流電源制御方法及び交流電源制御装置システムに係る従来の技術では、電力計(7)を用いているため、以下の課題があった。
電力計(7)の電流センサー(7a)の取り付け方向を誤ると誤作動し、不良の原因となった。また、電力計(7)では付近に配された電圧結線(7b)からその交流電圧を入手する必要があり、設置工事が大変であった。また、電力計(7)による制御ではON・OFFを繰り返すチャタリング状態を避けるために判定基礎電力として最低100W/時が必要であり、常に無駄な電力を消費して損失していた。さらに、電力計(7)による電力量演算は複雑な計算が必要であり、また、電力(A)・(B)・(C)・(D)の差を計算するため複雑な計算回路が必要であり、それを演算処理する回路も複雑で高額なコスト負担となっていた。このため、本発明の目的は、これらの課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る交流電源制御方法の一形態によれば、第1の交流電源と第2の交流電源とが負荷に対して並列に接続され、前記第2の交流電源と前記負荷との間を接続する第2の交流電源側の接続配線に対して電流センサーを取り付けて電気回路を制御する交流電源制御方法であって、第1の交流電源の出力電力を変化させて信号電力として出力させる信号電力の出力工程と、前記信号電力に対応して変化する前記第2の交流電源側の接続配線に流れる電流の増減を、前記電流センサーによって計測することで、前記第2の交流電源と前記負荷との間の電力の供給方向を特定する電力方向の特定工程と、前記電力方向の特定工程によって特定された電力の供給方向に対して反対の方向の電力の供給が増加されるように前記第1の交流電源の出力電力を制御する第1の交流電源の出力制御工程とを含み、以上の工程を順次繰り返すことによって、前記第1の交流電源からの電力を前記第2の交流電源からの電力の供給に優先して前記負荷に供給するように制御する。
【0008】
また、本発明に係る交流電源制御方法の一形態によれば、前記信号電力の出力工程において、第1の交流電源の出力電力を増加させることで前記信号電力を出力し、前記電力方向の特定工程で電流が増加したことを計測した場合は前記第1の交流電源から前記第2の交流電源へ電力が供給されていると判断し、前記第1の交流電源の出力制御工程で前記第1の交流電源の出力電力を減少させ、前記電力方向の特定工程で電流が減少したことを計測した場合は前記第2の交流電源から電力が供給されていると判断し、前記第1の交流電源の出力制御工程で前記第1の交流電源の出力電力を増加させることを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明に係る交流電源制御方法の一形態によれば、前記信号電力の出力工程において、第1の交流電源の出力電力を減少させることで前記信号電力を出力し、前記電力方向の特定工程で電流が増加したことを計測した場合は前記第2の交流電源から電力が供給されていると判断し、前記第1の交流電源の出力制御工程で前記第1の交流電源の出力電力を増加させ、前記電力方向の特定工程で電流が減少したことを計測した場合は前記第1の交流電源から前記第2の交流電源へ電力が供給されていると判断し、前記第1の交流電源の出力制御工程で前記第1の交流電源の出力電力を減少させることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る交流電源制御方法の一形態によれば、前記信号電力及び前記出力電力の変化量が、所要の数値を予め複数に分割して一段階が所要の大きさ分となるように設定されたものであって、複数の段階を備えることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る交流電源制御方法の一形態によれば、前記第1の交流電源が自家用発電源であって、前記第2の交流電源が商用電源であり、前記第1の交流電源から前記第2の交流電源へ供給される電力が余剰電力であって、前記第2の交流電源から供給される電力が受給電力であることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る交流電源制御装置システムの一形態によれば、第1の交流電源と第2の交流電源とが負荷に対して並列に接続された電気回路で、前記第1の交流電源からの電力を前記第2の交流電源からの電力の供給に優先して前記負荷に供給するように制御する交流電源制御装置システムであって、前記第2の交流電源と前記負荷との間を接続する第2の交流電源側の接続配線に対して取り付けた電流センサーと、第1の交流電源の出力電力を変化させて信号電力として出力させ、前記電流センサーによって計測された前記第2の交流電源側の接続配線に流れる電流のデータが入力され、前記信号電力に対応して変化する前記電流のデータの増減に基づいて、前記第2の交流電源と前記負荷との間の電力の供給方向を特定し、特定された前記電力の供給方向に対して反対の方向の電力の供給が増加されるように前記第1の交流電源の出力電力を制御し、以上の操作を順次繰り返すように制御する電源制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の交流電源制御方法及び交流電源制御装置システムによれば、二つの交流電源が負荷に対して並列に接続された電気回路において、一方の交流電源からの電力を優先的に供給できると共に、容易に構成でき、初期及びランニングのコストを削減できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の交流電源制御装置システムに係る形態例を示す単線結線図である。
図2】本発明の交流電源制御方法に係る一例を示すフローチャート図である。
図3】従来の交流電源制御装置システムに係る形態例を示す単線結線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る交流電源制御方法及び交流電源制御装置システムの形態例を添付図面(図1及び2)に基づいて詳細に説明する。
本発明に係る交流電源制御装置システムは、第1の交流電源(1)と第2の交流電源(2)とが負荷(3)に対して並列に接続された電気回路で、第1の交流電源(1)からの電力を第2の交流電源(2)からの電力の供給に優先して負荷(3)に供給するように制御できるものである。
【0016】
ここで、本発明に係る第1の交流電源(1)とは、典型例として、自家用発電装置によって出力された直流電力を、直接的に或いは蓄電池を介してパワーコンディショナーで交流電力に変換・調整することで得られる電力電源を挙げることができる。なお、本形態例の第1の交流電源(1)は、自家用発電装置の一例である太陽光発電によって出力された電力を起源とするものとして具体的に想定できる。
【0017】
(4)は電流センサーであり、第2の交流電源(2)と負荷(3)との間を接続する第2の交流電源側の接続配線(8)に対して取り付けている。この電流センサー(4)では、図1に示すように、コイルがセンシング部として第2の交流電源側の接続配線(8)に巻回された状態に配され、電流の増減を検知できるように設けられている。
【0018】
そして、(5)は電源制御装置であり、第1の交流電源(1)の出力電力(A)を変化させて信号電力として出力させ、電流センサー(4)によって計測された第2の交流電源側の接続配線(8)に流れる電流のデータが入力され、前記信号電力に対応して変化する前記電流のデータの増減に基づいて、第2の交流電源(2)と負荷(3)との間の電力の供給方向を特定し、特定された前記電力の供給方向に対して反対の方向の電力の供給が増加されるように第1の交流電源の出力電力(A)を制御し、以上の操作を順次繰り返すように制御できるものになっている。なお、この電源制御装置(5)は、電流のデータが入力されるように電流センサー(4)が接続され、制御信号を出力するように制御信号線(9)を介して第1の交流電源(1)に接続することにより制御回路を構成している。
【0019】
これによれば、二つの交流電源が負荷に対して並列に接続された電気回路において、一方の交流電源(第1の交流電源(1))からの電力を優先的に供給できると共に、以下のような顕著な効果を奏する。
本発明では、電流センサー(4)ではそのセンシング部を構成するコイルに生じる起電力を計測するので方向性は無く、取り付け方向の問題は発生しない。また、本発明では、電流センサー(4)のみの計測であるので電圧計測を必要とせず、電力計(7)が不必要となり、無駄な工事も必要ない。また、判定基礎電力の設定が必要無いため、無駄な電力を消費しなくなる。さらに、本発明では、電力計(7)と複雑な電力演算回路が不要となり、大幅なコスト削減になる。
【0020】
次に、本発明に係る交流電源制御方法について詳細に説明する。
本発明の交流電源制御方法は、第1の交流電源(1)と第2の交流電源(2)とが負荷(3)に対して並列に接続され、第2の交流電源(2)と負荷(3)との間を接続する第2の交流電源側の接続配線(8)に対して電流センサー(4)を取り付けて電気回路を制御するものであり、以下の工程(ステップ)を備える。
【0021】
先ず、信号電力の出力工程として、第1の交流電源(1)の出力電力(A)について所要の大きさ分を変化させて信号電力として出力させる。
【0022】
次に、電力方向の特定工程として、前記信号電力に対応して変化する第2の交流電源側の接続配線(8)に流れる電流の増減を、電流センサー(4)によって計測することで、第2の交流電源(2)と負荷(3)との間の電力の供給方向を特定する。
【0023】
次に、第1の交流電源の出力制御工程として、前記電力方向の特定工程によって特定された電力の供給方向に対して反対の方向の電力の供給が増加されるように前記第1の交流電源(1)の出力電力(A)を制御する。
【0024】
そして、以上の工程を順次繰り返すことによって、前記第2の交流電源側の接続配線に流れる電流を零又は零に近づけることで、第1の交流電源(1)からの電力を第2の交流電源(2)へ極力供給しないと共に、第1の交流電源(1)からの電力を第2の交流電源(2)からの電力の供給に優先して負荷(3)に供給するように制御する。
【0025】
図2のフローチャートに示す実施例では、前記信号電力の出力工程において、第1の交流電源(1)の出力電力(A)を増加させることで前記信号電力を出力し、前記電力方向の特定工程で電流が増加したことを計測した場合は第1の交流電源(1)から第2の交流電源(2)へ電力が供給されていると判断し、前記第1の交流電源の出力制御工程で前記第1の交流電源(1)の出力電力(A)を減少させ、前記電力方向の特定工程で電流が減少したことを計測した場合は第2の交流電源(2)から電力が供給されていると判断し、前記第1の交流電源の出力制御工程で第1の交流電源(1)の出力電力(A)を増加させるように制御している。
これによれば、信号電力を出力する前の出力電力(A)の供給状態を基準として、特定された電力の供給方向に応じて以上のように出力電力(A)を増減することで、前述のように第1の交流電源(1)からの電力を第2の交流電源(2)からの電力の供給に優先して負荷(3)に供給することができる。
【0026】
また、他の実施例としては、前記信号電力の出力工程において、第1の交流電源(1)の出力電力(A)を減少させることで前記信号電力を出力し、前記電力方向の特定工程で電流が増加したことを計測した場合は第2の交流電源(2)から電力が供給されていると判断し、前記第1の交流電源の出力制御工程で第1の交流電源(1)の出力電力(A)を増加させ、前記電力方向の特定工程で電流が減少したことを計測した場合は第1の交流電源(1)から第2の交流電源(2)へ電力が供給されていると判断し、前記第1の交流電源の出力制御工程で第1の交流電源(1)の出力電力(A)を減少させるように制御することができる。
これによっても、信号電力を出力する前の出力電力(A)の供給状態を基準として、特定された電力の供給方向に応じて以上のように出力電力(A)を増減することで、前述のように第1の交流電源(1)からの電力を第2の交流電源(2)からの電力の供給に優先して負荷(3)に供給することができる。
【0027】
また、本形態例では、前記信号電力及び出力電力(A)の変化量が、所要の数値を予め複数に分割して一段階が所要の大きさ分となるように設定されたものであって、複数の段階を備えることを特徴とすることができる。なお、前記信号電力及び出力電力(A)の変化量は、以下の実施例では、信号電力を出力する前の出力電力(A)の供給状態を基準として、上記の一段階の大きさ分としているが、本発明はこれに限定されるものはなく、複数の段階分の大きさ分と設定してもよく、さらに、状況に応じて、段階を1又は複数に変化させて制御してもよい。
これによれば、第1の交流電源(1)の出力電力(A)を段階的に増減させて、前述のように第1の交流電源(1)からの電力を第2の交流電源(2)からの電力の供給に優先して負荷(3)に供給するように適切に制御できる。
【0028】
そして、本形態例では、第1の交流電源(1)が自家用発電源であって、前記第2の交流電源が商用電源であり、第1の交流電源(1)から第2の交流電源(2)へ供給される電力が余剰電力(C)であって、前記第2の交流電源から供給される電力が受給電力(B)とすることができる。
これによれば、第1の交流電源(1)の出力電力(A)を増減して、受給電力(B)と余剰電力(C)を共に最小値になるように制御し、第1の交流電源(1)の出力電力(A)を負荷(3)の負荷電力(D)に優先して供給するように適切に制御できる。
【0029】
ここで、本発明の動作原理について、第1の交流電源(1)が自家用発電源であって、第2の交流電源(2)が商用電源である場合について説明する。
先ず、本発明に係る電力の供給パターンを、数式で説明すると、以下のようになる(図1参照)。受給電力(B)or余剰電力(C)(受給電力(B)と余剰電力(C)は共存しない。)
出力電力(A)=負荷電力(D)+余剰電力(C)
受給電力(B)=負荷電力(D)-出力電力(A)
余剰電力(C)=出力電力(A)-負荷電力(D)
負荷電力(D)=出力電力(A)+受給電力(B)
負荷電力(D)=出力電力(A)-余剰電力(C)
【0030】
本発明に係る電力の供給パターンの特性は、以下のようになる。
受給電力(B)と余剰電力(C)は共存せず、いずれか一方の電力である。
受給電力(B)は出力電力(A)を増加すると減少する。
余剰電力(C)は出力電力(A)を減少すると減少する。
受給電力(B)は出力電力(A)を増加し続けると変化点で余剰電力(C)に変化する。
余剰電力(C)は出力電力(A)を減少し続けると変化点で受給電力(B)に変化する。
つまり、この変化点に制御することが受給電力(B)と供給電力Cを最小限にすることになる。
【0031】
次に、本発明の実施例で計測される電流の特性と、動作原理について説明する。
電流センサー(4)の起電力の計測値は、受給電力(B)または余剰電力(C)の電力量に比例するが、電流センサー(4)だけでは電力方向は特定できない。
そして、本発明に係る電気回路では、第1の交流電源(1)の出力電力(A)を増加させると、受給電力(B)はマイナスし、余剰電力(C)はプラスするという特性がある。
そこで、この特性を利用して第1の交流電源(1)の出力電力(A)を増加させて信号出力を出力し、その出力の前と後との電流センサー(4)の計測値の差を求めることにより、プラスであれば余剰電力(C)と判断して出力電力(A)を一段階下げ、マイナスであれば受給電力(B)と判断して出力電力(A)を一段階上げる制御を行う。
これを周期的に繰り返すことにより、余剰電力(C)と受給電力(B)ともに限りなく0に近づくことになる。
最終的には受給電力(B)と余剰電力(C)が交互に入れ替わる点でバランスがとれる変化点として安定するようになる。
そして、負荷(3)の負荷電力(D)が変化すると追従して新しい変化点で安定するようになる。
【0032】
次に、交流電源制御方法の具体的な実施例について詳細に説明する。
制御回路(電源制御装置(5))の初期設定をする。
1)計測および制御周期を任意の間隔で設定するがここでは1秒と設定する。
2)各数値のメモリー(M1、M2、M3)は0としておく。
3)電流センサー(4)の電圧はAD(アナログ・デジタル)変換して0~3Vを100分割して段階的に記録できるようにしておく。
4)出力制御信号はDA(デジタル・アナログ)変換して0~3Vを100分割して段階的に出力電源(第1の交流電源(1))に出力できるようにしておく。
【0033】
以上の設定がなされた上で、以下のように制御プログラムを実行する。
1)計測を開始(Start)する。
2)電流センサー(4)の起電力を計測する。
3)AD変換して計測値をM1に保存する。
4)出力制御信号M3の値にプラス1する。
5)M3に上書きする。
6)M3の値でDA変換し、第1の交流電源(1)に出力する。
7)1秒間待機する。
8)電流センサー(4)の起電力を計測する。
9)AD変換して計測値をM2に保存する。
10-)M2-M1を演算してM2-M1<0(マイナス)の場合、受給電力(B)と判断する。Go to 1(Startへ戻る)
10+)M2-M1を演算してM2-M1>0(プラス)の場合、余剰電力(C)と判断する。
11)出力制御信号M3をマイナス2減算する。
12)M3に上書きする。(2段階下げる。)
13)M3の値でDA変換し、第1の交流電源(1)に出力する。
14)1秒間待機する。
15)Go to 1(Startへ戻る)
【0034】
前述の具体的な実施例の動作原理について具体的に説明する。
先ず、電流センサー(4)の起電力は通過電力と比例して交流として増減する。安定した計測値を得るためには起電力を全波整流してコンデンサーと抵抗で変換した電圧を計測値として求める。ただし、電流センサー(4)の起電力だけでは電力の絶対値は計測できるがこの電力方向は特定できない。
本回路では第1の交流電源(1)の出力電力(A)を一段階増加して出力すると、受給電力(B)であれば減少し、余剰電力(C)であれば増加するという特性があり、この方法で電力方向を決めることができる。
【0035】
また、本回路で第1の交流電源(1)の出力電力(A)を段階的に増加して出力することを繰り返すことにより受給電力(B)は減少し、出力電力(A)が受給電力(B)を超えた変化点で余剰電力(C)に電力方向が反転して余剰電力(C)が増加するという特性がある。
逆に、本回路で第1の交流電源(1)の出力電力(A)を段階的に減少して出力することを繰り返すことにより余剰電力(C)は減少し、出力電力(A)が受給電力(B)を下回った変化点で受給電力(B)に電力方向が反転し受給電力(B)が増加するという特性がある。
これを利用して第1の交流電源(1)の出力電力(A)を1段階増加する前の電力センサー(4)の計測値をM1に記録し、出力増加してから1秒後の電力センサー(4)の計測値をM2に記録し、このM2からM1を差し引いた値がマイナスであれば受給電力(B)がマイナスしたことになる。この動作を連続して繰り返すことにより、受給電力(B)が0に近づき、M2からM1を差し引いた値がプラスになった変化点で反転するようになる。
【0036】
また、第1の交流電源(1)の出力電力(A)を1段階増加する前の電流センサー(4)の計測値をM1に記録し、出力増加してから1秒後の電流センサー(4)の計測値をM2に記録し、このM2からM1を差し引いた値がプラスであれば余剰電力(C)がプラスしたことになる。この計測ではすでに第1の交流電源(1)の出力電力(A)が1段階増加しているので、電源1の出力電力(A)を2段階減少して出力することにより、第1の交流電源(1)の出力電力(A)を1段階減少させたことになるため、この方法で出力前の電流センサー(4)の計測値をM1に記録し、出力してから1秒後に電流センサー(4)の計測値をM2に記録して、連続して繰り返すことにより、余剰電力(C)が0に近づき、M2からM1を差し引いた値がマイナスになった変化点で反転するようになる。
【0037】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0038】
1 第1の交流電源
2 第2の交流電源
3 負荷
4 電流センサー
5 電源制御装置(制御回路)
6 従来の電源制御装置
7 電力計
7a 電流センサー
7b 電圧結線
8 第2の交流電源側の接続配線
9 制御信号線
A (第1の交流電源からの)出力電力
B (第2の交流電源からの)受給電力
C (第1の交流電源から第2の交流電源への)余剰電力
D (負荷3への)負荷電力
図1
図2
図3