(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】容器の検査方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20230418BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
G01N21/90 A
G01N21/88 K
(21)【出願番号】P 2021063372
(22)【出願日】2021-04-02
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390014661
【氏名又は名称】キリンテクノシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】木方 健心
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-281477(JP,A)
【文献】特開2017-042166(JP,A)
【文献】特開2018-191530(JP,A)
【文献】特開2018-013457(JP,A)
【文献】特開2017-020790(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0302540(US,A1)
【文献】特開2004-012294(JP,A)
【文献】特開2005-227183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリスチレンを素材に含んだ透明部を有するフィルムが装着され、かつ紫外光の照射によってチンダル現象が生じるコロイド粒子を含む液体が充填されたポリエチレンテレフタレート樹脂製の容器を検査するための検査方法であって、
前記透明部を含む対象領域に照明手段から前記紫外光を照射して前記対象領域を照明する手順と、
照明された前記対象領域の画像を撮像手段により撮像する手順と、
撮像された前記対象領域の画像に基づいて前記透明部の良否を判別する手順と、
を含み、
前記撮像する手順では、前記紫外光の波長域の通過を、前記紫外光の照射によって生じ
る蛍光の波長域との比較において制限するフィルタ手段により、前記撮像手段への入射光の波長域を調整して前記画像を撮像する容器の検査方法。
【請求項2】
前記照明する手順では、360~380nmの波長域にてピークを示す紫外光を前記照明手段から照射して前記容器を照明し、前記撮像する手順では、前記フィルタ手段により、400nmよりも短波長側の波長域に関して前記撮像手段への入射が制限されるように前記入射光の波長域を調整する請求項1に記載の容器の検査方法。
【請求項3】
前記照明する手順にて照明された前記容器の蛍光発光の輝度が、前記容器に水を充填して前記紫外光を照射したときに生じる蛍光の平均輝度に対して、5.6倍以上となる液種が前記液体として前記容器に充填される請求項1又は2に記載の容器の検査方法。
【請求項4】
二軸延伸ポリスチレンを素材に含んだ透明部を有するフィルムが装着され、かつ紫外光の照射によってチンダル現象が生じるコロイド粒子を含む液体が充填されたポリエチレンテレフタレート樹脂製の容器を検査するための検査装置であって、
前記透明部を含む対象領域に前記紫外光を照射して前記対象領域を照明する照明手段と、
照明された前記対象領域の画像を撮像する撮像手段と、
前記紫外光の波長域の通過が、前記紫外光の照射によって生じ
る蛍光の波長域との比較において制限されるようにして、前記撮像手段への入射光の波長域を調整するフィルタ手段と、
撮像された前記対象領域の画像に基づいて前記透明部の良否を判別する判別手段と、を備えた容器の検査装置。
【請求項5】
前記照明手段は、360~380nmの波長域にてピークを示す紫外光によって前記容器を照明し、
前記フィルタ手段は、400nmよりも短波長側の波長域に関して前記撮像手段への入射が制限されるように前記入射光の波長域を調整する請求項4に記載の容器の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル等のフィルムが装着された容器を検査する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に装着された透明なラベルを検査する手法として、二軸延伸ポリスチレン樹脂製の透明ラベルとポリエチレンテレフタレート樹脂製の容器の紫外領域における反射光量の差を利用して、透明ラベルの良否を検査する手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した手法では、ラベルとそれ以外の部分との間で検査に必要な程度の明暗差が得られず、検査の信頼性が必ずも確保できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、フィルムの透明部における欠損部分とそれ以外の部分との間に十分な明暗差を生じさせて検査の信頼性を高めることが可能な容器の検査方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る容器の検査方法は、二軸延伸ポリスチレンを素材に含んだ透明部を有するフィルムが装着され、かつ紫外光の照射によってチンダル現象が生じるコロイド粒子を含む液体が充填されたポリエチレンテレフタレート樹脂製の容器を検査するための検査方法であって、前記透明部を含む対象領域に照明手段から前記紫外光を照射して前記対象領域を照明する手順と、照明された前記対象領域の画像を撮像手段により撮像する手順と、撮像された前記対象領域の画像に基づいて前記透明部の良否を判別する手順と、を含み、前記撮像する手順では、前記紫外光の波長域の通過を、前記紫外光の照射によって生じる前記の蛍光の波長域との比較において制限するフィルタ手段により、前記撮像手段への入射光の波長域を調整して前記画像を撮像するものである。
【0007】
本発明の一態様に係る容器の検査装置は、二軸延伸ポリスチレンを素材に含んだ透明部を有するフィルムが装着され、かつ紫外光の照射によってチンダル現象が生じるコロイド粒子を含む液体が充填されたポリエチレンテレフタレート樹脂製の容器を検査するための検査装置であって、前記透明部を含む対象領域に前記紫外光を照射して前記対象領域を照明する照明手段と、照明された前記対象領域の画像を撮像する撮像手段と、前記紫外光の波長域の通過が、前記紫外光の照射によって生じる前記の蛍光の波長域との比較において制限されるようにして、前記撮像手段への入射光の波長域を調整するフィルタ手段と、撮像された前記対象領域の画像に基づいて前記透明部の良否を判別する判別手段と、を備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一形態にて用いられる容器の検査装置の一例を示す図。
【
図2】ポリエチレンテレフタレート樹脂製のサンプル片に紫外光を照射したときの3次元蛍光スペクトルを測定した結果を示す図。
【
図3】ボトルを照明する紫外光の分光強度と、ボトルの蛍光発光の分光強度と、フィルタの分光感度との関係の一例を示す図。
【
図5】一形態に係る検査方法にて得られる画像の一例を示す図。
【
図6】一形態に係る検査方法にて得られる画像の処理例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の一形態を説明する。本形態は、検査に利用する波長域の選定、及び検査対象の容器に充填される液種の選定の二つの観点で特徴付けられるものである。以下、順に説明する。
【0010】
[検査装置の構成]
まず、
図1を参照して、本発明の一形態で用いる容器の検査装置の概略構成を説明する。検査装置1は、ポリエチレンテレフタレート樹脂製のボトル2を検査対象の容器とする。
図1は、検査装置1の要部をボトル2の軸線方向に沿って平面視した状態で示している。ボトル2には、少なくとも一部に透明部を有するラベル(不図示)が巻かれている。ラベルは、少なくともその透明部において、二軸延伸ポリスチレン樹脂を素材に含む。ここでいう透明部は、可視光に対して透明であることを意味する。なお、以下では、ポリエチレンテレフタレートを「PET」と、二軸延伸ポリスチレンを「OPS」とそれぞれ略称することがある。検査対象のボトル2は、液体が充填されたものである。液体の種類(液種)については後述する。
【0011】
検査装置1は、ボトル2の少なくとも一部に設定された対象領域の画像を取得する画像取得装置10を含む。対象領域はラベルの透明部を含む限りにおいて適宜に設定されてよい。一例として、ボトル2の全体が対象領域として設定されてもよいし、ラベルが巻かれた範囲に限るように対象領域が設定されてもよい。画像取得装置10は、ボトル2の対象領域を照明する照明手段の一例としての照明装置11と、照明された対象領域を撮像する撮像手段の一例としてのカメラ12と、カメラ12への入射光の波長域を調整するフィルタ手段の一例としての光学的なフィルタ13とを備えている。
【0012】
照明装置11は、一対の照明器11aを備えている。各照明器11aは、ボトル2の対象領域に対して紫外光を照射してその対象領域を照明する。照明器11aは、それらの照明方向がボトル2を中心として所定の角度で互いに傾くように配置されている。照明器11aが照射する紫外光の波長域の具体例は後述する。カメラ12は、例えば、CCD、CMOS等の撮像素子を用いて光学像を電気的な画像信号に変換する。照明装置11とカメラ12との位置関係は、照明装置11からの照明光に対するボトル2の反射光が入射するように設定されている。一例として、一対の照明器11aの照明光に対するボトル2の反射光がカメラ12に入射するように、照明器11aの照明方向はカメラ12の撮影方向を挟んで左右に対照的に傾けられている。
【0013】
ボトル2は静止していてもよいし、移動していてもよい。例えば、飲料の充填ラインにカメラ12を設置し、カメラ12の撮像範囲にボトル2が達したタイミングでカメラ12に撮像動作を実行させることにより、移動中のボトル2が逐次撮像されてもよい。ボトル2のラベルが、カメラ12の撮影視野よりも周方向に広く延びている場合には、ボトル2をその中心線の回りに自転させて、ラベルを展開した画像を撮像してもよい。照明装置11は常時点灯でもよいし、カメラ12の撮像動作に同期して照明装置11を点灯させてもよい。フィルタ13は、照明装置11から照射される紫外光の波長域の通過を制限するようにしてカメラ12への入射光の波長域を調整する。フィルタ13の分光特性の具体例は後述する。
【0014】
カメラ12にて撮像された画像に基づいてボトル2のラベルの良否を検査するため、検査装置1には処理ユニット20が設けられている。処理ユニット20は、一例として、CPU及びその動作に必要な内部記憶装置等を含んだコンピュータユニットとして構成されている。処理ユニット20には、画像処理部21と、検査部22とが設けられている。画像処理部21及び検査部22は、例えば処理ユニット20のハードウエアと、ソフトウエアとしてのコンピュータプログラムとの組み合わせによって実現される論理的装置として設けられてもよいし、LSI等の論理回路を組み合わせた物理的装置として設けられてもよい。
【0015】
画像処理部21は、カメラ12から出力される画像信号を受け取り、検査部22の検査に適した画像処理を施す。例えば、画像処理部21は、画像の明度、コントラスト等の補正処理等を実施してよい。検査部22は、画像処理部21にて処理された画像信号を受け取り、その画像信号を所定のアルゴリズムに従って処理することにより、ラベルの良否を判別する。それにより、検査部22は判別手段の一例として機能する。検査のアルゴリズムは、画像中の明暗差を利用してラベルの良否を判別するものである。
【0016】
検査部22における検査結果を出力するための手段として、処理ユニット20には、検査結果を表示するモニタ23、あるいは検査結果を記憶する記憶装置24等が適宜に接続されてよい。出力手段としてプリンタが接続されてもよい。さらに、処理ユニット20には、検査装置1のオペレータが適宜の指示を入力するためのキーボード、ポインティングデバイスといった各種の入力手段が接続されてよい。
図1では、入力手段の図示が省略されている。
【0017】
検査部22によるラベルの良否の判別は、以下の特性を利用するものである。PET樹脂に紫外光を照射するとPET樹脂は蛍光発光する。一方、OPS樹脂は紫外光を吸収する特性がある。したがって、上述したボトル2に対して紫外光を照射すると、ラベルが存在しない部分ではボトルが蛍光発光して、その蛍光の波長域の反射光の強度が増加する。一方、ラベルの透明部ではOPS樹脂成分が紫外光を吸収するため、蛍光の強度が減少する。カメラ12が取得する画像には蛍光の強度に応じた明暗差が生じる。ラベルの透明部に破れ等による欠損が生じている場合、その欠損部分では紫外光が吸収されず、画像には欠損部分が明部として現れる。したがって、本来はラベルが存在しているべき部分に蛍光由来の明部が出現していれば、欠損が生じていると判別することができる。
【0018】
ボトル2からの反射光は、ボトル2で生じた蛍光のみならず、ラベル上で反射した紫外光も含まれる。紫外光がカメラ12に入射すると、得られる画像に紫外光の影響が出現し、ラベルの欠損部分とそれ以外の部分との明暗差が縮小することがある。一方、PET樹脂で生じる蛍光の波長域は、照射された紫外光の波長域と一致せず、両者の波長域にはずれが生じる。したがって、フィルタ13の分光特性を、ボトル2で生じた蛍光の波長域は通過し、それとの比較において、照明装置11から照射した紫外光の波長域の通過が制限されるように設定する。それにより、ボトル2上での反射光の影響を抑えて、ラベルの欠損部分とそれ以外の部分との明暗差を確保することができる。
【0019】
なお、紫外光の波長域に関する入射の制限は、蛍光の波長域の入射と比較して、入射光の強度を低下させるものであればよい。したがって、紫外光の波長域の入射を完全に阻止する態様のみならず、入射光量を相対的に減少させる態様も含む。一方、蛍光の波長域に関しては、検査に必要な光量の蛍光がカメラ12に入射すれば足りる。蛍光の全波長域がフィルタ13を通過してカメラ12に入射するようにフィルタ13の分光特性が設定されてもよいし、蛍光の一部の波長域はフィルタ13によりカメラ12への入射が制限されてもよい。例えば、蛍光の波長域のうち、照明光としての紫外光の波長域に比較的近い短波長側の一部の波長域については、フィルタ13にてその通過を制限し、その制限される波長域よりも長波長側の蛍光についてはフィルタ13を通過してカメラ12に入射させるようにフィルタ13の分光特性が設定されてもよい。
【0020】
[波長域の選定]
次に、
図2~
図4を参照して照明装置11の紫外光の波長域等の選定に関する具体的な検討について説明する。
図2は、PET樹脂のサンプル片に紫外光を照射したときの3次元蛍光スペクトルを測定した結果を示している。縦軸は照射した紫外光の波長であり、横軸は蛍光の波長である。図中の等高線の粗密は蛍光強度を示し、密であるほど蛍光強度が高い。
図2によれば、365nm付近の紫外光をPET樹脂に照射した場合、380~430nmの波長域において比較的強度が高い蛍光が生じる。
【0021】
図3は、ボトル2を照明する紫外光の分光強度と、ボトル2の蛍光発光の分光強度と、フィルタ13の分光感度との関係を示している。
図3の横軸は波長を、縦軸は紫外光及び蛍光の分光強度及びフィルタ13の分光感度をそれぞれ示す。
図3から理解されるように、365nm付近にて分光強度がピークを示す紫外光にてPET樹脂製を照明した場合、380nm~430nmの波長域で蛍光が生じる。紫外光の分光強度の分布と、蛍光の分光強度の分布とは一部重複するが、紫外光の波長域が360nm~380nmの範囲であれば、フィルタ13の分光特性を、概ね400nm、好ましくは420nmから長波長側の光を通過させ、それよりも短波長側の波長域の通過を制限するように設定すれば、紫外光のカメラ12への入射を抑えつつ、ボトル2で発生した蛍光を効率よくカメラ12に入射させることができる。
【0022】
図2によれば、紫外光の波長域を320nm付近がピークとなるように設定すれば、より多くの蛍光を得ることが可能である。しかし、その場合は蛍光の波長域も短波長側にシフトする。
図4に示すように、可視光域の画像を撮像する目的で使用される一般的なカメラの分光感度は、550nm付近の感度が最も高い。カメラの感度は、長波長側は1000nm付近で、短波長側では400nm付近で実質的に失われる。したがって、紫外光の波長域を320nm付近に設定すれば、カメラ12が十分な分光感度を示す波長域に対して蛍光の波長域が外れるおそれがある。そのため、照明装置11から照射する紫外光は、上記のように360nm~380nmの範囲に設定することが好ましい。
【0023】
[液種の選定]
液体を充填したボトル2に紫外光を照射したときに生じる蛍光の強度は、液体の液種の影響を受ける。表1は各種の液体をボトル2に充填して紫外光を照射したときに測定される蛍光の平均輝度及び相対輝度を測定した結果を示している。相対輝度は、水を充填した場合の平均輝度を1としたときの比率である。紫外光の照明条件及び輝度の測定条件は各液種に対して同一である。
【0024】
【0025】
各種の液種を充填してボトル2を撮像したときの画像の明暗差を比較すると、乳飲料1及び2を充填した場合に、ラベルの欠損部分を判別するために必要十分な明暗差が得られることが確認された。乳飲料1、2はいずれも直径が30~300nmのコロイド粒子を含む飲料である。この種の液体では、紫外光の照射によってチンダル現象が生じ、その影響でボトル2が効率よく蛍光発光する。したがって、検査対象の容器は、紫外光の照射によってチンダル現象が生じるコロイド粒子を含む液体が充填された容器とすることが好適である。より好ましくは、水を充填したときに得られる平均輝度に対して5.6倍以上の相対輝度が得られる液種の液体を充填した容器に対して、本形態の検査方法を適用することが望ましい。
【0026】
以上の形態では、PETボトルに巻かれたラベルの透明部を良否判別の対象としたが、その透明部は、PET樹脂製の容器に装着されたフィルム上のものであればよい。透明部はOPS樹脂のみを素材とする例に限らない。例えば、OPS樹脂とPET樹脂とを組み合わせたハイブリッド材料が透明部の素材として用いられる場合でも、本発明に従ってその良否が判別されてよい。
【0027】
[実験例]
図1の検査装置1を用いて得られた画像の例をその比較例とともに
図5に示す。同図(a)は、OPS樹脂製のラベルが全周に巻かれたPETボトルに上述した波長域の紫外光を照射し、上記の分光特性のフィルタにて入射光の波長域を調整して得られた画像の一例である。ラベルには、これを部分的に矩形状に切除して疑似欠陥を生成した。PETボトルには表1の乳飲料1を充填した。同図(b)は、同一のPETボトルに対し、紫外光に代えて白色光を照明したときに得られた画像、同図(c)は、検査装置1からフィルタ13を取り外した状態で同一のPETボトルを撮影したときに得られた画像である。同図(a)の画像では疑似欠陥に対応する矩形状の欠陥像が明部として出現していることが確認できる。一方、同図(b)では、ボトル全体が明るく映し出されており、疑似欠陥に対応する部分の確認が困難である。同図(c)でも同図(a)と同様に欠陥像が確認できるが、紫外光のカメラへの入射に起因する明部も併せて出現している。それらの明部は、照明装置の光源に対応する像である。このような明部が出現すると、欠陥が存在していないにも関わらず不良と誤判定される可能性がある。同図(a)でも光源に対応する像が幾らか認められるが、その明度は同図(c)の場合よりも明らかに低く、画像処理によって欠陥と識別することが可能である。
【0028】
実験例で使用したPETボトルに各種の液体を充填して疑似欠陥とそれ以外の正常部分との平均輝度を測定した結果を表2に示す。サンプルA~Mは液種が異なるのみである。また表2の平均輝度の比率は、正常部分の平均輝度を1としたときの疑似欠陥の平均輝度の比率を示す。サンプルA~Mに充填した液体は、いずれも直径30~300nmコロイド粒子を含んだ乳飲料であり、水を充填したときの平均輝度に対して5.6倍以上の相対輝度が得られる範囲のものである。
【0029】
【0030】
表2の結果から明らかなように、全てのサンプルにおいて、疑似欠陥の平均輝度が正常部のそれよりも明確に大きく、その差を利用して欠陥を明確に判別できることが確認された。表2のサンプルMを撮影して得られた画像の処理例を
図6に示す。同図(a)は画像処理前の原画像、同図(b)は原画像を二値化処理して得られた画像である。
図5(a)の例と同様に、(a)の原画像には照明装置の光源に対応する明部が幾らか出現し、二値化処理後の画像にもその明部の影響が幾らか残存する。これに対して、さらに画像中の孤立した白画素をノイズとして除去する処理を適用し、得られた画像を
図6(c)に示す。ノイズ除去後の画像で、光源に対応する明部が認められないことが確認できる。したがって、ノイズ除去後の画像を用いることにより、ラベルの透明部の良否を精度よく判別することが可能である。
【0031】
上述した実施の形態及び変形例のそれぞれから導き出される本発明の各種の態様を以下に記載する。なお、以下の説明では、本発明の各態様の理解を容易にするために添付図面に図示された対応する構成要素を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0032】
本発明の一態様に係る容器の検査方法は、二軸延伸ポリスチレンを素材に含んだ透明部を有するフィルムが装着され、かつ紫外光の照射によってチンダル現象が生じるコロイド粒子を含む液体が充填されたポリエチレンテレフタレート樹脂製の容器(2)を検査するための検査方法であって、前記透明部を含む対象領域に照明手段(11)から前記紫外光を照射して前記対象領域を照明する手順と、照明された前記対象領域の画像を撮像手段(12)により撮像する手順と、撮像された前記対象領域の画像に基づいて前記透明部の良否を判別する手順と、を含み、前記撮像する手順では、前記紫外光の波長域の通過を、前記紫外光の照射によって生じる前記の蛍光の波長域との比較において制限するフィルタ手段(13)により、前記撮像手段への入射光の波長域を調整して前記画像を撮像するものである。
【0033】
本発明の一態様に係る容器の検査装置は、二軸延伸ポリスチレンを素材に含んだ透明部を有するフィルムが装着され、かつ紫外光の照射によってチンダル現象が生じるコロイド粒子を含む液体が充填されたポリエチレンテレフタレート樹脂製の容器(2)を検査するための検査装置(1)であって、前記透明部を含む対象領域に前記紫外光を照射して前記対象領域を照明する照明手段(11)と、照明された前記対象領域の画像を撮像する撮像手段(12)と、前記紫外光の波長域の通過が、前記紫外光の照射によって生じる前記の蛍光の波長域との比較において制限されるようにして、前記撮像手段への入射光の波長域を調整するフィルタ手段(13)と、撮像された前記対象領域の画像に基づいて前記透明部の良否を判別する判別手段(22)と、を備えたものである。
【0034】
上記の態様によれば、紫外光の照射によって容器が蛍光発光する一方で、フィルムの透明部に覆われた部分では紫外光の少なくとも一部が吸収されて蛍光発光が抑えられる。透明部に破れ等の欠損部分が生じて容器自身が露出していれば、その欠損部分では紫外光の吸収作用が損なわれて蛍光発光の強度が高まる。加えて、容器に充填される液体が、紫外光の照射によってチンダル現象が生じるコロイド粒子を含む場合には、その影響で容器が効率よく蛍光発光する。そのため、フィルムの透明部に欠損部分が生じている場合の画像には、欠損部分とそれ以外の部分との間で明確な明暗差が生じる。そのため、欠損部分の有無を正確に判別して検査の信頼性を高めることができる。
【0035】
上記の態様においては、360~380nmの波長域にてピークを示す紫外光を前記照明手段から照射して前記容器を照明し、前記フィルタ手段により、400nmよりも短波長側の波長域に関して前記撮像手段への入射が制限されるように前記入射光の波長域を調整してもよい。また、前記照明する手順にて照明された前記容器の蛍光発光の輝度が、前記容器に水を充填して前記紫外光を照射したときに生じる蛍光の平均輝度に対して、5.6倍以上となる液種が前記液体として前記容器に充填されてもよい。紫外光の波長域及びフィルタ手段の特性を上記のように設定し、あるいは液体の液種を上記の通りに設定すれば、フィルムの透明部の欠損の有無に対応する明暗差をより確実に出現させることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 検査装置
2 ボトル(容器)
10 画像取得装置
11 照明装置(照明手段)
12 カメラ(撮像手段)
13 フィルタ(フィルタ手段)
20 処理ユニット
22 検査部(判別手段)