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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】アンカ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/26 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
B60R22/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019199181
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021070436
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】立和名 祐介
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0132224(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0026238(US,A1)
【文献】特開2018-144541(JP,A)
【文献】特開2018-127031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側及びウェビング側の一方に連結される第1部材と、
車体側及びウェビング側の他方に連結され、前記第1部材に挿入されて前記第1部材への貫通位置に移動されると共に前記第1部材への係止位置に移動されることで前記第1部材に保持される第2部材と、
前記第2部材が係止位置側に移動される際に前記第2部材を貫通位置側に移動させる傾斜面と、
を備えるアンカ装置。
【請求項2】
前記第1部材側に設けられ、前記第2部材が係止位置側に移動される際に前記傾斜面が前記第2部材を貫通位置側に移動させて前記第2部材が一側に移動させると共に、前記第2部材が係止位置に移動された際に他側に移動されることで前記第2部材の係止位置からの離脱を制限して前記第1部材に前記第2部材が保持される制限部を備える請求項1記載のアンカ装置。
【請求項3】
前記第1部材側に設けられ、前記第2部材が挿入されて前記制限部の他側に配置されると共に、前記第1部材への前記第2部材の挿入位置を規制する挿入孔を備える請求項2記載のアンカ装置。
【請求項4】
前記第1部材に取付けられると共に、剛性を有し、前記傾斜面が設けられる取付部材を備える請求項1~請求項3の何れか1項記載のアンカ装置。
【請求項5】
前記第1部材に前記傾斜面が設けられる請求項1~請求項4の何れか1項記載のアンカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側とウェビング側とを連結するアンカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1のアンカー装置では、スタッドがアンカープレートの第2開口に挿入されて、スタッドがアンカープレートへの貫通位置に移動された後にアンカープレートへの係止位置に移動されることで、ストッパーの係止片によってアンカープレートにスタッドが保持される。
【0003】
ところで、このアンカー装置では、アンカープレートにスタッドを容易に保持させることができるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-144541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、第1部材に第2部材を容易に保持させることができるアンカ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のアンカ装置は、車体側及びウェビング側の一方に連結される第1部材と、車体側及びウェビング側の他方に連結され、前記第1部材に挿入されて前記第1部材への貫通位置に移動されると共に前記第1部材への係止位置に移動されることで前記第1部材に保持される第2部材と、前記第2部材が係止位置側に移動される際に前記第2部材を貫通位置側に移動させる傾斜面と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様のアンカ装置は、本発明の第1態様のアンカ装置において、前記第1部材側に設けられ、前記第2部材が係止位置側に移動される際に前記傾斜面が前記第2部材を貫通位置側に移動させて前記第2部材が一側に移動させると共に、前記第2部材が係止位置に移動された際に他側に移動されることで前記第2部材の係止位置からの離脱を制限して前記第1部材に前記第2部材が保持される制限部を備える。
【0008】
本発明の第3態様のアンカ装置は、本発明の第2態様のアンカ装置において、前記第1部材側に設けられ、前記第2部材が挿入されて前記制限部の他側に配置されると共に、前記第1部材への前記第2部材の挿入位置を規制する挿入孔を備える。
【0009】
本発明の第4態様のアンカ装置は、本発明の第1態様~第3態様の何れか1つのアンカ装置において、前記第1部材に取付けられると共に、剛性を有し、前記傾斜面が設けられる取付部材を備える。
【0010】
本発明の第5態様のアンカ装置は、本発明の第1態様~第4態様の何れか1つのアンカ装置において、前記第1部材に前記傾斜面が設けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1態様のアンカ装置では、車体側及びウェビング側の一方に第1部材が連結されると共に、車体側及びウェビング側の他方に第2部材が連結されており、第2部材が第1部材に挿入されて、第2部材が第1部材への貫通位置に移動されると共に第1部材への係止位置に移動されることで、第1部材に第2部材が保持される。
【0012】
ここで、第2部材が係止位置側に移動される際に、傾斜面が第2部材を貫通位置側に移動させる。このため、第2部材の係止位置側への移動によって第2部材を貫通位置側に移動させることができ、第1部材に第2部材を容易に保持させることができる。
【0013】
本発明の第2態様のアンカ装置では、第1部材側に制限部が設けられており、第2部材が係止位置側に移動される際に、制限部が一側に移動される。さらに、第2部材が係止位置に移動された際に、制限部が他側に移動されることで、制限部が第2部材の係止位置からの離脱を制限して、第1部材に第2部材が保持される。
【0014】
ここで、傾斜面が第2部材を貫通位置側に移動させて、第2部材が制限部を一側に移動させる。このため、容易に制限部を一側に移動させることができる。
【0015】
本発明の第3態様のアンカ装置では、第1部材側に挿入孔が設けられており、第2部材が挿入孔に挿入されて制限部の他側に配置される。
【0016】
ここで、挿入孔が第1部材への第2部材の挿入位置を規制する。このため、第2部材が挿入孔への挿入により適切に制限部の他側に配置でき、傾斜面が第2部材を貫通位置側に移動させることで、第2部材が適切に制限部を一側に移動させることができる。
【0017】
本発明の第4態様のアンカ装置では、第1部材に取付部材が取付けられると共に、取付部材が剛性を有しており、取付部材に傾斜面が設けられる。このため、傾斜面を容易に設けることができる。
【0018】
本発明の第5態様のアンカ装置では、第1部材に傾斜面が設けられる。このため、傾斜面を容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態に係るアンカ装置のプレートを示す斜視図であり、(A)は、右斜め前方から見た図であり、(B)は、左斜め後方から見た図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るアンカ装置のプレートを示す右斜め前方から見た分解斜視図である。
図3】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態に係るアンカ装置の組付初期を示す図であり、(A)は、前方から見た正面図であり、(B)は、右方から見た断面図((A)の3B-3B線断面図)である。
図4】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態に係るアンカ装置の組付途中を示す図であり、(A)は、前方から見た正面図であり、(B)は、右方から見た断面図((A)の4B-4B線断面図)である。
図5】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態に係るアンカ装置の組付状態を示す図であり、(A)は、前方から見た正面図であり、(B)は、右方から見た断面図((A)の5B-5B線断面図)である。
図6】本発明の第1実施形態に係るアンカ装置の組付け時における組付ピンのプレートに対する下側への移動ストローク(横軸)と組付ピンのプレートに対する下側への移動荷重(縦軸)との関係を示すグラフである。
図7】本発明の第2実施形態に係るアンカ装置のプレートを示す右斜め前方から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図5(A)には、本発明の第1実施形態に係るアンカ装置10が前方から見た正面図にて示されており、図5(B)には、アンカ装置10が右方から見た断面図(図5(A)の5B-5B線断面図)にて示されている。なお、図面では、アンカ装置10の前方を矢印FRにて示し、アンカ装置10の右方を矢印RHにて示し、アンカ装置10の上方を矢印UPにて示している。
【0021】
本実施形態に係るアンカ装置10は、車両のフロントシート(図示省略)に適用されるシートベルト装置を構成しており、アンカ装置10の前方、右方、及び上方は、それぞれ車幅方向外方、車両前方又は車両後方、及び車両上方に向けられている。
【0022】
図5の(A)及び(B)に示す如く、アンカ装置10には、第2部材としての金属製で略円柱状の組付ピン12(アンカピン)が設けられており、組付ピン12は、剛性を有している。組付ピン12は、フロントシートにおけるシートクッションの車両下側部分の車幅方向外側に配置されており、組付ピン12の軸方向は、車幅方向に平行にされている。組付ピン12の後側部分(基端側部分)は、車体側としてのフレーム14に固定されており、フレーム14は、フロントシートのシートクッションを構成している。
【0023】
組付ピン12の前側部分(先端側部分)には、基部としての円板状のベース部12Aが同軸上に設けられており、ベース部12Aは、フレーム14の車幅方向外側に当接されている。
【0024】
組付ピン12の前側部分には、ベース部12Aの前側において、軸部としての円柱状の小径部12Bが同軸上に設けられており、小径部12Bの径寸法は、ベース部12Aの径寸法よりも小さくされている。
【0025】
組付ピン12の前側部分には、小径部12Bの前側において、頭部としての略円柱状の大径部12Cが同軸上に設けられており、大径部12Cの径寸法は、小径部12Bの径寸法よりも大きくされている。大径部12Cは、組付ピン12の前端部を構成しており、大径部12Cの周面は、前後方向(軸方向)において凸状に湾曲されている。
【0026】
アンカ装置10には、組付体としてのプレート16(図1の(A)及び(B)、図2参照)が設けられており、プレート16は、組付ピン12の前側に配置されている。
【0027】
プレート16には、第1部材としての金属製で略矩形板状のプレート本体18(アンカプレート)が設けられており、プレート本体18は、剛性を有すると共に、前後方向に垂直に配置されている。プレート本体18の上下方向寸法は、プレート本体18の左右方向寸法よりも大きくされており、プレート本体18の厚さ寸法(前後方向寸法)は、組付ピン12の小径部12Bの軸方向寸法(前後方向寸法)よりも小さくされている。
【0028】
プレート本体18の下部以外の部分には、貫通孔としての矩形状の連通孔20が貫通形成されており、連通孔20は、上下方向に延伸されている。プレート本体18の下部には、係止孔22が貫通形成されており、係止孔22の上側は、連通孔20の左右方向中央部に連通されている。係止孔22の上部は、矩形状にされており、係止孔22の上部の左右方向寸法は、組付ピン12の小径部12Bの径寸法よりも僅かに大きくされると共に、組付ピン12の大径部12Cの径寸法よりも小さくされている。係止孔22の上部以外の部分は、半円状にされており、係止孔22の上部以外の部分の周面は、係止孔22の上部の左面及び右面に滑らかに連続されている。また、プレート本体18の下端部の左右方向両端部には、円状の取付孔18Aが貫通形成されている。
【0029】
プレート本体18の前側には、取付部材としての外形略直方体状のカバー24(アンカカバー)が設けられており、カバー24は、樹脂製にされると共に、剛性を有している。カバー24は、左右方向寸法がプレート本体18の左右方向寸法と略同一にされると共に、上下方向寸法がプレート本体18の上下方向寸法よりも小さくされており、カバー24は、プレート本体18の左右方向及び上下方向における範囲内に配置されている。
【0030】
カバー24の上部には、挿通部としての正面視逆U字状の挿通枠26が形成されている。挿通枠26の前部には、逆U字形板状の挿通板26Aが形成されており、挿通板26Aは、プレート本体18の連通孔20上部の周囲の前側を被覆している。挿通板26Aの内周端部の後側には、断面逆U字形板状の嵌合板26Bが一体形成されており、嵌合板26Bは、連通孔20の上部内に嵌合されている。嵌合板26Bの上側部分の後端には、逆U字形板状の対向板26Cが一体形成されており、対向板26Cは、上側に突出されている。対向板26Cは、挿通板26Aと前後方向において対向されており、対向板26Cと挿通板26Aとの間には、プレート本体18が嵌合されている。挿通枠26(挿通板26A、嵌合板26B及び対向板26C)の内周内側には、連結部としての矩形状の挿通孔28が形成されており、挿通孔28は、左右方向に延伸されている。
【0031】
カバー24の上部以外の部分には、被覆部としての逆U字形枠状の被覆枠30が形成されており、被覆枠30は、プレート本体18の前側を被覆している。被覆枠30の左部及び右部は、それぞれ、挿通枠26の挿通板26Aの左部及び右部と一体にされると共に、プレート本体18における連通孔20の上部以外の部分と係止孔22との左側及び右側に配置されている。被覆枠30の左部及び右部の左右方向内側端部には、下部以外の部分において、略矩形板状の被覆板30Aが一体形成されており、左側及び右側の被覆板30Aは、それぞれ、連通孔20の上部以外の部分の左面及び右面を被覆すると共に、挿通枠26の嵌合板26Bの左部及び右部と一体にされている。
【0032】
被覆枠30の左部と右部との間における上部は、屈曲板状にされており、被覆枠30の上部の上側部分及び下側部分は、それぞれ、被覆枠30の左部と右部との上端部及び前端部と一体にされている。被覆枠30上部の上側部分の下側面は、規制部を構成する規制面30Bにされており、規制面30Bは、下方へ向かうに従い前方へ向かう方向に傾斜されている。
【0033】
被覆枠30の各被覆板30Aの下部には、規制部を構成する屈曲板状の規制突起32が一体形成されており、被覆枠30の左右方向内側に突出されている。規制突起32の下側部分は、上下方向に垂直に配置されており、規制突起32の下側部分は、プレート本体18の連通孔20の下面に当接可能にされている。規制突起32の上側部分は、下方へ向かうに従い前方へ向かう方向に傾斜されており、規制突起32の前面は、傾斜面32Aにされて、下方へ向かうに従い前方へ向かう方向に傾斜されている。また、左側の規制突起32の右面及び右側の規制突起32の左面は、それぞれ、プレート本体18の係止孔22上部の左面及び右面と面一にされている。
【0034】
被覆枠30の内側には、挿入孔34が形成されており、挿入孔34は、上下方向範囲が被覆枠30の上部から一対の規制突起32までの範囲にされると共に、左面及び右面がそれぞれ被覆枠30の左部及び右部(それぞれ被覆板30Aを含む)によって構成されている。挿入孔34の上下方向寸法は、組付ピン12の大径部12Cの径寸法よりも大きくされると共に、挿入孔34の左右方向寸法は、大径部12Cの径寸法よりも僅かに大きくされており、挿入孔34には、後側から大径部12Cが挿入可能にされている(図3の(A)及び(B)参照)。挿入孔34の上部の前側には、被覆枠30上部の規制面30Bが配置されると共に、挿入孔34の下部には、一対の規制突起32が侵入しており、挿入孔34に後側から大径部12Cが挿入される際には、大径部12C上部の上側への移動が規制面30Bによって規制されると共に、大径部12C下部の下側への移動が一対の規制突起32によって規制されて、挿入孔34への大径部12Cの挿入位置が上下方向において規制される。
【0035】
プレート本体18及びカバー24の前側には、制限部材(弾性部材)としての金属製で略矩形枠板状のスプリング36(アンカスプリング)が設けられており、スプリング36は、弾性を有すると共に、左右方向寸法がプレート本体18の左右方向寸法よりも僅かに小さくされている。
【0036】
スプリング36の下部の左部及び右部には、円状の固定孔36Aが貫通形成されており、固定孔36A及びプレート本体18の取付孔18Aにリベット38が挿入されて、リベット38によってスプリング36がプレート本体18に固定されている。スプリング36には、各固定孔36Aの上側において、起立部36Bが形成されており、起立部36Bは、上方へ向かうに従い前方へ向かう方向に傾斜されている。
【0037】
スプリング36の下側部分内には、付勢部位としての断面略L字形板状の付勢片40が一体形成されており、付勢片40の下側部分は、スプリング36の下部の左右方向中央部から前側に延出されている。付勢片40の上側部分は、上側に延出されており、付勢片40の上側部分は、付勢片40の下側部分の弾性変形により前後方向に弾性傾動可能にされている。また、付勢片40の上端部は、左右方向両側に拡大されると共に、上下方向において後側に凸状に湾曲されている。
【0038】
組付ピン12の小径部12Bは、プレート本体18の係止孔22の下側面に嵌合されている。このため、組付ピン12がプレート本体18への貫通位置に配置されて、小径部12Bがプレート本体18に貫通されている。さらに、組付ピン12がプレート本体18への係止位置に配置されて、プレート本体18の前側への移動が組付ピン12の大径部12Cによって係止されている。大径部12Cの前面には、付勢片40の上端部が当接されており、付勢片40の上側部分は、前側に弾性傾動されている。このため、付勢片40の付勢力によって付勢片40の上端部とプレート本体18との間に大径部12Cが挟持されることで、プレート本体18の前面が大径部12Cの後面に圧接されて、プレート本体18の前後方向への傾動が制限されている。
【0039】
スプリング36の起立部36Bより上側部分は、本体部36Cにされており、本体部36Cは、起立部36Bから上方に延出されると共に、起立部36Bの弾性変形により前後方向に弾性傾動可能にされている。本体部36Cとプレート本体18との間には、カバー24の被覆枠30が挟持されており、カバー24の前側への移動が本体部36Cによって制限されて、プレート本体18とスプリング36との間にカバー24が取付けられている。
【0040】
本体部36Cの上側部分内には、制限部位としての略矩形板状の制限片42が一体形成されており、制限片42の上側部分は、本体部36Cの上部の左右方向中央部から下方に延出されている。制限片42の下側部分には、制限部42Aが形成されており、制限部42Aは、下方へ向かうに従い後方へ向かう方向に延出されて、カバー24(被覆枠30)の挿入孔34に挿入されている。制限部42Aの下側には、組付ピン12の大径部12Cが配置されており、制限部42Aの下側への移動が大径部12Cによって制限されることで、プレート16(プレート本体18、カバー24及びスプリング36)の下側への移動が制限されて、プレート16に組付ピン12が保持されている(組付けられている)。制限部42Aの上下方向位置は、カバー24の規制突起32の上下方向位置と少なくとも一部において一致されており、挿入孔34に後側から大径部12Cが挿入される際には、制限部42Aの後側に大径部12Cの前面が当接される(図3の(A)及び(B)参照)。
【0041】
カバー24(挿通枠26)の挿通孔28には、シートベルト装置における長尺帯状のウェビング44(図1参照)の長手方向先端部が挿通されており、ウェビング44の長手方向先端部が、環状に形成されて、挿通孔28からの離脱を係止されることで、ウェビング44の長手方向先端部がプレート本体18及びカバー24に連結されている。
【0042】
シートベルト装置には、巻取装置(図示省略)が設けられており、巻取装置には、ウェビング44が長手方向基端側から巻取られている。フロントシートの車幅方向内側には、バックル(図示省略)が設けられると共に、ウェビング44の長手方向中間部は、タング(図示省略)に移動可能に挿通されており、ウェビング44が巻取装置から引出されて、バックルにタングが係合されることで、ウェビング44が、フロントシートに着座した乗員に装着されて、当該乗員を拘束可能にされる。
【0043】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0044】
以上の構成のアンカ装置10において、プレート16に組付ピン12が組付けられる際には、プレート16において、プレート本体18にカバー24及びスプリング36が取付けられると共に、プレート本体18及びカバー24にウェビング44の長手方向先端部が連結されている。
【0045】
そして、カバー24(被覆枠30)の挿入孔34に後側から組付ピン12の大径部12Cが挿入されて、スプリング36(制限片42)の制限部42Aの後側に大径部12Cの前面が当接される(図3の(A)及び(B)参照)。
【0046】
さらに、プレート16が上側に移動(スライド)されて、組付ピン12の小径部12Bがカバー24(被覆枠30)の一対の規制突起32間を介してプレート本体18の係止孔22に移動されることで、大径部12Cの後面がカバー24(規制突起32)の傾斜面32Aに案内されて、プレート16が上側に移動されつつ後側に移動される(図4の(A)及び(B)参照)。このため、大径部12Cによってスプリング36の本体部36Cが前側に弾性傾動されて(スプリング36の制限片42が前側に弾性傾動されてもよい)、制限片42の制限部42Aが前側(一側)に移動される。しかも、付勢片40の上端部とプレート本体18との間に大径部12Cが挿入されて、付勢片40の上側部分が前側に弾性傾動される。
【0047】
その後、プレート16が更に上側に移動されて、組付ピン12の小径部12Bがプレート本体18の係止孔22の下側面に嵌合されることで(図5の(A)及び(B)参照)、組付ピン12がプレート本体18への貫通位置に配置される(小径部12Bがプレート本体18に貫通される)と共に、組付ピン12がプレート本体18への係止位置に配置される(プレート本体18の前側への移動が組付ピン12の大径部12Cによって係止される)。また、スプリング36(制限片42)の制限部42Aが大径部12Cを上側に通過することで、スプリング36の本体部36Cが後側に弾性傾動(弾性復元)されて、制限部42Aが後側(他側)に移動される。このため、制限部42Aが大径部12Cの上側に配置されることで、制限部42Aの下側への移動が大径部12Cによって制限されて、プレート16に組付ピン12が組付けられる(保持される)。
【0048】
ここで、組付ピン12がプレート16に対し下側(係止位置側)に移動される際に、カバー24(規制突起32)の傾斜面32Aが組付ピン12をプレート16に対し前側(貫通位置側)に移動させる。このため、組付ピン12のプレート16に対する下側への移動によって組付ピン12をプレート16に対し前側に移動させることができ、組付ピン12の小径部12Bをプレート本体18に容易に貫通させることができて、プレート16に組付ピン12を容易に組付けることができる。
【0049】
また、傾斜面32Aが組付ピン12をプレート16に対し前側に移動させて、組付ピン12の大径部12Cがスプリング36(制限片42)の制限部42Aを前側に移動させる。このため、容易に制限部42Aを前側に移動させることができる。
【0050】
しかも、カバー24(被覆枠30)の挿入孔34に後側から組付ピン12の大径部12Cが挿入される際には、被覆枠30の規制面30B及び一対の規制突起32によって、挿入孔34への大径部12Cの挿入位置が上下方向において規制される。このため、大径部12Cが挿入孔34への挿入により適切に制限部42Aの後側に配置でき、傾斜面32Aが組付ピン12をプレート16に対し前側に移動させることで、大径部12Cが適切に制限部42Aを前側に移動させることができる。
【0051】
これにより、本実施形態(図6の実線X参照)では、組付ピン12をプレート16に対し下側に移動させる際に、組付ピン12のプレート16に対する移動荷重が上昇して最大値(図6のF1参照)になった後に、組付ピン12(大径部12C)が制限部42Aを通過して(図6のP1参照)、組付ピン12のプレート16に対する移動荷重が下降することで、プレート16に対する組付ピン12の組付けが終了する。
【0052】
一方、例えば上記特許文献1と同様に、組付ピン12が制限部42Aより上側に挿入される比較例の場合(図6の破線Y参照)には、制限部42Aが大径部12Cの下側から大径部12Cの前側に乗上げる際(図6のQ参照)に、組付ピン12のプレート16に対する移動荷重が最大値(図6のF2参照)になり、大径部12Cの下側から前側への制限部42Aの乗上げが終了して、組付ピン12のプレート16に対する移動荷重が下降する。そして、組付ピン12(大径部12C)が制限部42Aを通過して(図6のP2参照)、組付ピン12のプレート16に対する移動荷重が下降することで、プレート16に対する組付ピン12の組付けが終了する。
【0053】
このため、比較例の場合には、組付ピン12のプレート16に対する挿入位置から係止位置への移動ストロークが大きくなる(図6のS2参照)。一方、本実施形態では、組付ピン12のプレート16に対する挿入位置から係止位置への移動ストロークを小さくでき(図6のS1参照)、プレート16に組付ピン12を容易に組付けることができる。
【0054】
さらに、比較例の場合には、組付ピン12のプレート16に対する移動荷重の最大値が、制限部42Aが大径部12Cの下側から大径部12Cの前側に乗上げる際(図6のQ参照)の移動荷重になって、大きくなる(図6のF2参照)。一方、本実施形態では、制限部42Aが大径部12Cの下側から大径部12Cの前側に乗上げないため、組付ピン12のプレート16に対する移動荷重の最大値を小さくでき(図6のF1参照)、プレート16に組付ピン12を一層容易に組付けることができる。
【0055】
しかも、比較例の場合には、大径部12Cの下側から前側への制限部42Aの乗上げが終了して(図6のQ参照)、組付ピン12のプレート16に対する移動荷重が下降した後に、組付ピン12(大径部12C)が制限部42Aを通過して(図6のP2参照)、組付ピン12のプレート16に対する移動荷重が下降することで、プレート16に対する組付ピン12の組付けが終了する。一方、本実施形態では、制限部42Aが組付ピン12(大径部12C)を通過して(図6のP1参照)、組付ピン12のプレート16に対する移動荷重が下降する前に、組付ピン12のプレート16に対する移動荷重が下降しないため、プレート16に対する組付ピン12の組付けが終了する前に組付ピン12のプレート16に対する移動を終了させることを抑制できる。
【0056】
また、カバー24に傾斜面32Aが設けられている。このため、スプリング36に傾斜面32Aを設けるために、例えば上記特許文献1の第2実施形態と同様にスプリング36を断面U字状にして、スプリング36の前側部分に制限部42Aを設けると共にスプリング36の後側部分に傾斜面32Aを設け、かつ、スプリング36の後側部分にプレート本体18への取付部をスプリング36の前側部分に対向しない状態で設ける場合とは異なり、スプリング36を小型化できる。しかも、カバー24が樹脂製であるため、カバー24を複雑な形状に容易に成形でき、傾斜面32Aを容易に設けることができると共に、組付ピン12の形状の変更に傾斜面32Aを容易に対応させることができる。
【0057】
[第2実施形態]
図7には、本発明の第2実施形態に係るアンカ装置50のプレート16が右斜め前方から見た分解斜視図にて示されている。
【0058】
本実施形態に係るアンカ装置50は、上記第1実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0059】
図7に示す如く、本実施形態に係るアンカ装置50では、カバー24に規制突起32(傾斜面32Aを含む)が設けられていない。
【0060】
プレート本体18の連通孔20下部の左部及び右部には、三角柱状の規制突起32(傾斜面32Aを含む)が一体形成されており、規制突起32は、下面が連通孔20の下面と一体にされると共に、左右方向外側面が連通孔20の左右方向外側面と一体にされている。
【0061】
ここで、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0062】
特に、プレート本体18に傾斜面32Aが設けられている。このため、プレート本体18が剛性を有する金属製であるため、プレート本体18を複雑な形状に容易に成形でき、傾斜面32Aを容易に設けることができると共に、組付ピン12の形状の変更に傾斜面32Aを容易に対応させることができる。しかも、傾斜面32Aの剛性を効果的に高くでき、プレート16に組付ピン12を組付ける際に、傾斜面32Aの変形を効果的に抑制できて、組付ピン12のプレート16に対する下側への移動荷重を安定させることができる。
【0063】
なお、上記第1実施形態及び第2実施形態では、プレート本体18にウェビング44の長手方向先端部が連結される。しかしながら、プレート本体18にバックルを介してウェビング44の長手方向中間部が連結されてもよい。
【0064】
さらに、上記第1実施形態及び第2実施形態では、組付ピン12がフレーム14に連結されると共に、プレート本体18がウェビング44に連結される。しかしながら、組付ピン12がウェビング44に連結されると共に、プレート本体18がフレーム14に連結されてもよい。
【0065】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、シートベルト装置が車両のフロントシートに適用される。しかしながら、シートベルト装置は車両のあらゆるシート(例えばリアシート)に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10・・・アンカ装置、12・・・組付ピン(第2部材)、14・・・フレーム(車体側)、18・・・プレート本体(第1部材)、24・・・カバー(取付部材)、32A・・・傾斜面、42A・・・制限部、44・・・ウェビング、50・・・アンカ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7