(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】ケーブルグランド
(51)【国際特許分類】
H02G 15/02 20060101AFI20230418BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20230418BHJP
H05K 7/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
H02G15/02
H02G3/22
H05K7/00 M
(21)【出願番号】P 2020549972
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2019028548
(87)【国際公開番号】W WO2020075361
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2018191695
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 卓
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 彰
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-239530(JP,A)
【文献】特開2007-37364(JP,A)
【文献】特開2017-225255(JP,A)
【文献】特開2018-98829(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/24590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/02
H02G 3/22
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に形成された筐体貫通孔に配置されると共に、その筐体貫通孔を挿通するケーブルの周囲を密封した状態で覆うケーブルグランドであって、
弾性変形可能な樹脂を主成分とすると共に前記ケーブルを挿通させる挿通孔を備える弾性部材と、
筒状に設けられ、前記弾性部材をその外周側から保持すると共に、前記筐体貫通孔の周囲に配置されるケーシングと、
前記弾性部材の端面に対して当接する状態で配置され、弾性変形可能な樹脂を主成分としつつ前記弾性部材よりも容易に弾性変形すると共に、前記ケーブルおよび前記挿通孔よりも小径の第一リング貫通孔を備える第一リング状部材と、
筒状に設けられ、前記ケーシングに対して取り付けられると共に、前記第一リング状部材を前記弾性部材に押し付けるキャップ体と、
を備えることを特徴とするケーブルグランド。
【請求項2】
請求項1記載のケーブルグランドであって、
前記第一リング状部材は膜状に設けられた膜状部材である、
ことを特徴とするケーブルグランド。
【請求項3】
請求項1または2記載のケーブルグランドであって、
前記キャップ体と前記第一リング状部材の間に、第二リング状部材を備えている、
ことを特徴とするケーブルグランド。
【請求項4】
請求項3記載のケーブルグランドであって、
前記第一リング状部材は、前記第二リング状部材に対して貼り付けられている、
ことを特徴とするケーブルグランド。
【請求項5】
請求項4記載のケーブルグランドであって、
前記第一リング状部材は、複数枚設けられている、
ことを特徴とするケーブルグランド。
【請求項6】
請求項2記載のケーブルグランドであって、
前記膜状部材には、前記ケーブルに沿って延伸するスラスト密着部が設けられていて、
前記スラスト密着部は前記弾性部材が配置される側とは反対側に延伸している、
ことを特徴とするケーブルグランド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のケーブルグランドであって、
前記第一リング状部材は、前記弾性部材と比較して耐候性に優れた性能を有する材質から形成されている、
ことを特徴とするケーブルグランド。
【請求項8】
請求項3から5のいずれか1項に記載のケーブルグランドであって、
前記第二リング状部材は、前記第一リング状部材と比較して機械的強度が高く摩擦係数の小さい硬質の部材である、
ことを特徴とするケーブルグランド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルグランドに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電気機器が収納されている接続箱の孔部にケーブルグランドを配置して、そのケーブルグランドにケーブルを挿入しつつ該ケーブルを保持する構成が広く用いられている。このような構成としては、たとえば特許文献1~4に開示構成がある。
【0003】
特許文献1に開示の構成では、グランド本体(2)の挿通孔(24)の途中には、円すいテーパ面(24b)が設けられている。また、キャップ(4)の内面側には、スリーブ(3)を押圧するための円すいテーパ面(42b)が設けられている。したがって、キャップ(4)をグランド本体(2)に対してネジ締めすると、スリーブ(3)が円すいテーパ面(42b)により押し込まれて軸方向に移動し、さらにスリーブ(3)が円すいテーパ面(24b)で径方向に締め付けられることで、気密性・液密性を確保するようにしている。
【0004】
また、特許文献2に開示の構成では、ニップル(1)とグランドワッシャ(4)との間には、パッキン(3)が配置されている。そして、ロックナット(4)をネジ締めすると、パッキン(3)が円形棒状体(5)に押し付けられるように変形する。それにより、グランド型気密継手の優れた把握力、密封性の機能を果たすようにしている。
【0005】
また、特許文献3に開示の構成では、一対のワッシャ(13a,13b)の間にゴムシール(2)が配置されている。そして、シールナット(14)をコンジットケースに捻じ込むと、ゴムシール(2)が弾性変形することで、ケーブルのシール装置において外部からの油等の進入を防止する機能を果たすようにしている。
【0006】
また、特許文献4に開示の構成では、多層のシール材(16)を用い、ケーブル(32)の径に応じて、用いるシール材(16)を適宜変更することで、ケーブルのシール装置の液密を保つ機能を果たすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-225255号報(
図1、
図4等参照)
【文献】実公昭58-21296号公報(第1図、第7図等参照)
【文献】実開昭60-190125号公報(第3図、第7図等参照)
【文献】特公昭61-22538号公報(第1図、第2図等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1~4に開示の構成は、いずれも、スリーブ(3)、パッキン(3)、ゴムシール(2)およびシール材(16)といった弾性部材に対して、スラスト方向から荷重を付与することで、その弾性部材を変形させて、ケーブルと弾性部材との間の気密性を確保している。しかしながら、このような弾性部材に対して撓み荷重が付与された状態で長期間使用されると、弾性部材の弾性性能が劣化しケーブルとの機密・液密性能が劣化することで雨水等の液体が入り込んだり、塵埃が入り込んでしまう場合がある。特に、屋外で使用される場合には、この傾向が強い。
【0009】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、長期に亘って筐体の内部に雨水等の液体が侵入するのを防止可能なケーブルグランドを提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、筐体に形成された筐体貫通孔に配置されると共に、その筐体貫通孔を挿通するケーブルの周囲を密封した状態で覆うケーブルグランドであって、弾性変形可能な樹脂を主成分とすると共にケーブルを挿通させる挿通孔を備える弾性部材と、筒状に設けられ、弾性部材をその外周側から保持すると共に、筐体貫通孔の周囲に配置されるケーシングと、弾性部材の端面に対して当接する状態で配置され、弾性変形可能な樹脂を主成分としつつ弾性部材よりも容易に弾性変形すると共に、ケーブルおよび挿通孔よりも小径の第一リング貫通孔を備える第一リング状部材と、筒状に設けられ、ケーシングに対して取り付けられると共に、第一リング状部材を弾性部材に押し付けるキャップ体と、を備えることを特徴とするケーブルグランドが提供される。
【0011】
また、上述の発明において、第一リング状部材は膜状部材である、ことが好ましい。
【0012】
また、上述の発明において、キャップ体と第一リング状部材の間に、第二リング体を備えている、ことが好ましい。
【0013】
また、上述の発明において、第一リング状部材は、第二リング状部材に対して貼り付けられている、ことが好ましい。
【0014】
また、上述の発明において、第一リング状部材は、複数枚設けられている、ことが好ましい。
【0015】
また、上述の発明において、膜状部材には、ケーブルに沿って延伸するスラスト密着部が設けられていて、スラスト密着部は弾性部材が配置される側とは反対側に延伸している、ことが好ましい。
【0016】
また、上述の発明において、第一リング状部材は、弾性部材と比較して耐候性に優れた性能を有する材質から形成されている、ことが好ましい。
【0017】
また、上述の発明において、第二リング状部材は、第一リング状部材と比較して機械的強度が高く摩擦係数の小さい硬質の部材である、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、長期に亘って筐体の内部に雨水等の液体が侵入するのを防止可能なケーブルグランドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るケーブルグランドの構成を示す図であり、該ケーブルグランドが組み付けられる前の状態を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係るケーブルグランドが組み付けられると共に接続箱に取り付けられている状態を示す断面図である。
【
図3】
図1に示すケーブルグランドが備える膜付ワッシャの構成を示す平面図であり、膜付ワッシャをリング状部材側から見た状態を示す図である。
【
図4】
図1に示すケーブルグランドが備える膜付ワッシャの構成を示す平面図であり、膜付ワッシャを膜状部材側から見た状態を示す図である。
【
図5】
図2に示すようにケーブルグランドが組み付けられた状態でケーブルが曲げられた状態を示す断面図である。
【
図6】比較例に係り、膜付ワッシャに代えて通常のワッシャを備えるケーブルグランドを示す図であり、該ケーブルグランドが組み付けられる前の状態を示す断面図である。
【
図7】比較例に係るケーブルグランドが組み付けられると共に接続箱に取り付けられている状態を示す断面図である。
【
図8】
図7に示すようにケーブルグランドが組み付けられた状態で、ケーブルが曲げられた状態を示す図である。
【
図9】本発明の変形例に係り、2枚の膜状部材が設けられている膜付ワッシャを備えるケーブルグランド10が組み付けられると共に接続箱に取り付けられている状態を示す断面図である。
【
図10】
図9に示す膜付ワッシャの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態に係るケーブルグランド10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、X方向とは、ケーブルグランド10の軸方向を指し、X1側とは接続箱の内部側(
図1における右側;軸方向の一方側とする)を指し、X2側とは接続箱の外部側(
図1における左側;軸方向の他方側とする)を指す。
【0021】
<ケーブルグランド10の構成について>
図1は、本発明の一実施の形態に係るケーブルグランド10の構成を示す図であり、該ケーブルグランド10が組み付けられる前の状態を示す断面図である。
図2は、本発明の一実施の形態に係るケーブルグランド10が組み付けられると共に接続箱100に取り付けられている状態を示す断面図である。本実施の形態のケーブルグランド10は、ケーブルC1を挿入した状態で接続箱100の箱孔101に取り付けられる器具であり、上述の箱孔101から雨水等の液体や塵埃が侵入するのを防止するものである。
【0022】
図1および
図2に示すように、ケーブルグランド10は、ケーシング20と、キャップ体30と、ナット40と、箱側ワッシャ50と、ブッシング60と、膜付ワッシャ70とを備えている。
【0023】
ケーシング20は、たとえば硬質の樹脂を材質とする筒状の部材であり、その内筒側には後述するブッシング60を配置可能な筒孔21が設けられている。このケーシング20の軸方向の一方側(X1側)には挿通筒部22が設けられていて、その挿通筒部22は接続箱100の箱孔101に挿通される部分である。挿通筒部22は、その外周側が一定の直径となるように設けられていると共に、該外周側には雄ネジ部22aが形成されている。そのため、雄ネジ部22aには、ナット40を捻じ込むことが可能となっている。
【0024】
また、挿通筒部22よりも軸方向の他方側(X2側)には、フランジ部23が設けられている。フランジ部23は、接続箱100の外壁面102に当接する部分であり、そのフランジ部23の外壁面102への当接により、ケーシング20が接続箱100に対して位置決めされる。また、フランジ部23よりも軸方向の他方側(X2側)には、大径筒部24が設けられている。大径筒部24は、挿通筒部22よりも大径に設けられている。それにより、大径筒部24の内径側には、テーパ内壁面21aを形成することが可能となっている。また、大径筒部24の外周側には、雄ネジである大径雄ネジ部24aが設けられている。そのため、大径雄ネジ部24aには、キャップ体30の内周ネジ部32aを捻じ込むことが可能となっている。
【0025】
また、筒孔21には、軸方向の一方側(X1側)から軸方向の他方側(X2側)に向かうにつれて徐々に大径となるようなテーパ内壁面21aが設けられている。
図2に示すように、テーパ内壁面21aには、ブッシング60の外周テーパ面が当接する。それにより、ブッシング60の位置決めがなされる。なお、筒孔21のうち軸方向の一方側(X1側)の内壁面は、一定の内径を有するように形成されているが、テーパ内壁面21aと同様の傾斜角度のテーパ状の内壁面としても良く、テーパ内壁面21aの傾斜角度とは異なる内壁面としても良い。
【0026】
また、キャップ体30も、上述したケーシング20と同様に、たとえば硬質の樹脂を材質とする筒状の部材であり、その内筒側には大径筒部24を配置可能なキャップ孔31が設けられている。このキャップ体30は、筒状部32と、端面絞り部33とを有している。筒状部32は、一定の内径および外径を有する筒状の部分である。
【0027】
また、端面絞り部33は、筒状部32の軸方向の他方側(X2側)において、内径側に向かうように突出する部分である。加えて、端面絞り部33には、軸方向の一方側(X1側)から他方側(X2側)に向かうにつれて徐々に小径となるような内径側テーパ面33aも設けられている。なお、内径側テーパ面33aは、後述する膜付ワッシャ70が軸方向の他方側(X2側)に抜けるのを阻止する抜け止めとしての機能を有している。また、内径側テーパ面33aは、適宜の位置に膜付ワッシャ70の外周縁部を当接させることで、該膜付ワッシャ70を保持する。また、内径側テーパ面33aは、上述の保持状態で膜付ワッシャ70をブッシング60に向かって押し付ける機能を有しており、膜付ワッシャ70の側面の大径側(外周側)を小径側(内周側)より強く軸方向(X方向)に押圧する構造となっていて、さらにブッシング60の他方側(X2側)の端面の大径側を強く押圧する機能を有している。
【0028】
また、端面絞り部33の径方向の中央側は、上述したキャップ孔31となっているが、端面絞り部33の径方向中央側のキャップ孔31は、軸方向の一方側(X1側)の径方向中央側のキャップ孔31と比較して小径に設けられている。それにより、上述した内径側テーパ面33aが形成されている。
【0029】
また、ナット40は、接続箱100の内部側に配置される部材である。このナット40は、上述した挿通筒部22の雄ネジ部22aに捻じ込まれる部材である。ナット40が雄ネジ部22aに捻じ込まれると、ナット40とフランジ部23の間で、接続箱100の外壁103を挟み込むことが可能となっている。なお、ナット40は、樹脂を材質としているが、たとえば金属等のように樹脂以外の材質から形成されていても良い。
【0030】
また、箱側ワッシャ50は、外壁面102とフランジ部23の間に配置されて封止機能を有するリング状の部材であり、たとえば金属や樹脂を材質として形成されている。なお、箱側ワッシャ50に代えて、Oリングやガスケット等の封止部材を配置するようにしても良い。
【0031】
また、ブッシング60は、ゴムやエラストマーのような弾性変形可能な樹脂を材質として形成されている。なお、ブッシング60は、弾性部材に対応する。このブッシング60には、軸方向(X方向)に沿う挿通孔61が形成されていて、その挿通孔61にはケーブルC1が挿通される。すなわち、挿通孔61は、ケーブルC1に対応した直径を有している。この挿通孔61は、キャップ体30をケーシング20に締め付ける前の状態においては、ケーブルC1を挿通させることができる一方、キャップ体30をケーシング20に締め付けた後の状態においては、挿通孔61の内壁がケーブルC1の外周面に密着して、ケーブルC1が抜けない状態となっている。しかしながら、挿通孔61の内壁とケーブルC1の外周面との密着性が確保されていれば、キャップ体30をケーシング20に締め付けた後の状態においても、外力を付与した際にケーブルC1が挿通孔61から抜けるようにしても良い。なお、上述した密着性が不十分な場合には、たとえば液状の封止部材(たとえば液状のエラストマー等のような液状の樹脂)を充填する等して、密着性を確保するようにしても良い。
【0032】
このブッシング60の外周側にはテーパ外壁面62が設けられている。
図2に示すように、テーパ外壁面62は、上述したテーパ内壁面21aに当接する部分である。その当接状態において、
図2において軸方向の一方側(X1側)にブッシング60が進行すると、挿通孔61が内径側に収縮するように弾性変形する。その弾性変形により、挿通孔61に挿通されているケーブルC1を気密に保持することが可能となっている。
【0033】
なお、弾性変形可能なブッシング60としては、たとえばクロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等のような耐候性に優れた材質を用いることが可能である。しかしながら、これら以外の弾性変形可能な樹脂を用いるようにしても良い。
【0034】
図3は、膜付ワッシャ70の構成を示す平面図であり、膜付ワッシャ70をリング状部材71側から見た状態を示す図である。
図4は、膜付ワッシャ70の構成を示す平面図であり、膜付ワッシャ70を膜状部材72側から見た状態を示す図である。
図3および
図4に示すように、膜付ワッシャ70は、リング状部材71と、膜状部材72とを有している。なお、本実施の形態では、リング状部材71と膜状部材72とが貼り付けられる(接着される)ことで、一体的な膜付ワッシャ70を構成している。しかしながら、リング状部材71と膜状部材72とが別体的に設けられていても良い。リング状部材71と膜状部材72とが別体的に設けられている場合、リング状部材71と膜状部材72とが重ねられた状態で配置されることで、膜付ワッシャ70を構成するものとしても良い。
【0035】
リング状部材71は、金属製などからなるリング状の部材であり、ブッシング60と比較してキャップ体30との摩擦係数が小さい部材からなることを特徴とし、キャップ体30やブッシング60と比較して十分な強度を有している部分である。金属製のリング状部材71の好適な材質としては、鉄系材料、ニッケル系材料、アルミニウム系材料、リン青銅、チタン系材料等、種々の金属を用いることが可能であるが、キャップ体30を捻じ込むことでブッシング60および膜状部材72に必要な押圧力を加えることが可能な強度を有すれば、金属に限定されない。たとえばキャップ体30と同材質でも良い。なお、リング状部材71は、第2リング状部材に対応する。
【0036】
このリング状部材71の径方向の中央側には、リング孔71aが設けられている。リング孔71aは、ブッシング60の挿通孔61よりも大径か、または同等の内径を有する孔である。なお、リング状部材71の外周縁部は、全周に亘って上述した内径側テーパ面33aに密着している。
【0037】
また、膜状部材72は、ブッシング60よりも容易に弾性変形可能な部材であり、リング状部材71の一方側の面(X1側の面)およびブッシング60の他方側(X2側)の端面に密着している。なお、膜状部材72は、第一リング状部材に対応する。この膜状部材72は、ゴムやエラストマーのような弾性変形可能な樹脂を材質として形成されている。しかも、膜状部材72は、ブッシング60よりも軸方向(X方向)の寸法が大幅に小さい(すなわち薄い)部材である。したがって、膜状部材72はブッシング60よりも容易に弾性変形可能となっている。
【0038】
ここで、膜状部材72の材質としては、ブッシング60とは異なる材質であって、ブッシング60よりも弾性変形可能な材質を用いることが好ましい。そのような材質としては、たとえば、エチレン・プロピレンジエンゴム(EPDM; Ethylene Propylene Diene Monomer)、エチレン・プロピレンゴム(EPM; Ethylene Propylene Monomer)、フッ素ゴム、シリコンゴム等が挙げられるが、その他に上述したクロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等のような耐候性に優れた材質を用いることが可能である。
【0039】
なお、膜状部材72としては、これら以外の弾性変形可能な樹脂を材質としても良い。たとえば、耐薬品性に優れた樹脂、耐熱性に優れた樹脂、および耐寒性に優れた弾性変形可能な樹脂を用いるようにしても良い。また、ケーブルグランド10を組み付ける際、または組み付けた後の部品交換により、膜付ワッシャ70の樹脂の材質の選定により、耐候性、耐薬品性、耐熱性、耐寒性等のような必要とする機能を備えるようにしても良い。
【0040】
また、膜状部材72の径方向の中央部には、この膜状部材72を貫通するように膜貫通孔72a(第一リング貫通孔に対応)が設けられている。膜貫通孔72aは、リング孔71aよりも十分に小径となるように設けられた孔であり、膜状部材72を貫通している。しかも、膜貫通孔72aは、挿通孔61よりも十分に小径となるように設けられている。このため、ケーブルC1を膜貫通孔72aに挿通させた場合には、
図2および
図5に示すようなスラスト密着部73が形成される。このスラスト密着部73は、膜貫通孔72aの周辺の膜状部材72がケーブルC1に沿って引き伸ばされることにより、ケーブルC1に対して密着する部分である。なお、スラスト密着部73は、軸方向の他方側(X2側)に向かうように形成されている。これにより、ケーブルC1が振動してもケーブルC1と膜状部材72の気密・液密性が確保され、雨水等の侵入を防止することができる。
【0041】
このスラスト密着部73は、ケーブルC1に沿って延伸する部分が、膜状部材72の膜厚よりも十分に長く設けられている。しかも、
図2および
図5に示す構成では、スラスト密着部73は、リング孔71aから突出している。さらに、
図2および
図5に示す構成では、スラスト密着部73は、キャップ体30よりも軸方向の他方側(X2側)に突出しているが、キャップ体30よりも軸方向の他方側(X2側)に突出していなくても良い。このように、スラスト密着部73はケーブルC1に沿って延伸することにより、ケーブルC1の湾曲、変形および振動に追従することができる。したがって、ケーブルC1の外周面に沿って雨水等の液体が接続箱100側(X1側)に向かおうとした場合に、スラスト密着部73および膜状部材72により、雨水等の液体が接続箱100に向かって侵入するのが阻止される。
【0042】
なお、接続箱100は、筐体に対応し、たとえばホイストや電気チェーンブロックのような巻上機に設けられている。この接続箱100の内部には、図示を省略する回路基板等のような各種の電気部品が収納されている。かかる電気部品に接続されたケーブルC1が箱孔101に取り付けられたケーブルグランド10を介して、接続箱100の内部から外部に導出されている。なお、箱孔101は、筐体貫通孔に対応する。
【0043】
<ケーブルグランド10の組み付けについて>
以上のような構成のケーブルグランド10を組み付けられる場合、箱孔101にケーブルC1を挿通させた状態で、ブッシング60が接続箱100の外部に位置させつつ、ケーブルC1をブッシング60の挿通孔61に挿入する。また、挿通筒部22を箱側ワッシャ50に挿入した状態で、接続箱100の外側から挿通筒部22を箱孔101に挿入する。その後に、接続箱100の内部からナット40を雄ネジ部22aに捻じ込む。この捻じ込みにより、ケーシング20、箱側ワッシャ50およびナット40が接続箱100に取り付けられる。
【0044】
また、上述した挿通孔61へのケーブルC1の挿入とは別途に、膜付ワッシャ70のリング孔71aおよび膜貫通孔72aにケーブルC1を挿入する。この挿入は、膜付ワッシャ70がブッシング60よりも軸方向の他方側(X2側)に位置する状態で行われる。また、挿入に際しては、ケーブルC1に対して、膜付ワッシャ70が軸方向の一方側(X1側)に進行するように、ケーブルC1を膜付ワッシャ70のリング孔71aおよび膜貫通孔72aにケーブルC1を挿入することで、スラスト密着部73が軸方向の他方側(X2側)に向かって延出する状態とする。そして、膜状部材72がブッシング60の軸方向の他方側(X2側)の端面に密着するか、または近接する位置に膜付ワッシャ70を配置する。
【0045】
また、上述した挿通孔61へのケーブルC1の挿入、および膜付ワッシャ70へのケーブルC1の挿入とは別途に、キャップ体30のキャップ孔31にケーブルC1を挿入する。この挿入がなされたとき、キャップ体30は膜付ワッシャ70よりも軸方向の他方側(X2側)に位置する状態とする。そして、キャップ体30を軸方向の他方側(X2側)に移動させ、内周ネジ部32aを大径雄ネジ部24aに捻じ込む。
【0046】
かかる捻じ込みが進行すると、内径側テーパ面33aにリング状部材71の外周縁部が当接し、その状態でさらに内周ネジ部32aを大径雄ネジ部24aに捻じ込むと、膜付ワッシャ70の膜状部材72がブッシング60の軸方向の他方側(X2側)の端面に密着する。その状態でさらに内周ネジ部32aを大径雄ネジ部24aに捻じ込むと、膜付ワッシャ70を介してブッシング60が軸方向の一方側(X1側)に押圧される。すると、ブッシング60の外周面がテーパ内壁面21aにより押圧されることで、挿通孔61が内径側に収縮するようにブッシング60が弾性変形する。それにより、ケーブルC1の外周側には挿通孔61の内周面が密着する。
【0047】
以上のようにしてケーブルグランド10が組み付けられると、接続箱100の箱孔101は、ケーブルグランド10によって気密に閉塞される。また、
図5に示すように、ケーブルC1が曲げられても(撓んでも)、膜状部材72はケーブルC1の外周側に良好に密着した状態を維持できる。このため、雨水等の液体や塵埃等が箱孔101から接続箱100の内部に侵入するのが阻止される。
【0048】
<効果について>
以上のような構成のケーブルグランド10は、接続箱100(筐体)に形成された箱孔101(筐体貫通孔)に配置されると共に、その箱孔101(筐体貫通孔)を挿通するケーブルC1の周囲を密封した状態で覆うものである。このケーブルグランド10は、弾性変形可能な樹脂を主成分とすると共にケーブルC1を挿通させる挿通孔61を備えるブッシング60(弾性部材)と、筒状に設けられ、ブッシング60(弾性部材)をその外周側から保持すると共に、箱孔101(筐体貫通孔)の周囲に配置されるケーシング20と、ブッシング60(弾性部材)の端面に対して当接する状態で配置され、弾性変形可能な樹脂を主成分としつつブッシング60(弾性部材)よりも容易に弾性変形すると共に、ケーブルC1および挿通孔61よりも小径の膜貫通孔72a(第一リング貫通孔)を備える膜状部材72(第一リング状部材)と、筒状に設けられ、ケーシング20に対して取り付けられると共に、膜状部材72(第一リング状部材)を弾性部材に押し付けるキャップ体30と、を備えている。
【0049】
このように、ケーブルグランド10には、ブッシング60(弾性部材)よりも容易に弾性変形する膜状部材72(第一リング貫通孔)が設けられていて、その膜状部材72(第一リング貫通孔)は、ケーブルC1および挿通孔61よりも小径の膜貫通孔72a(第一リング貫通孔)を備えている。そのため、膜貫通孔72a(第一リング貫通孔)にケーブルC1を挿入すると、その膜貫通孔72a(第一リング貫通孔)が押し広げられると共に、ケーブルC1の外周に密着する。しかも、膜状部材72(第一リング状部材)は、ケーブルC1よりも容易に弾性変形するので、ケーブルC1の変形に膜状部材72(第一リング状部材)が追従する。このため、ケーブルグランド10は、長期に亘って接続箱100の内部に雨水等の液体が侵入するのを防止可能となる。特に、
図5に示すように、ブッシング60(弾性部材)に対し、径方向の一方向に向かうような撓み荷重が長期に亘って付与されて、ブッシング60(弾性部材)とケーブルC1との間に隙間が形成されても、膜状部材72(第一リング状部材)の存在により、接続箱100の内部に雨水等の液体が侵入するのを長期に亘って防止可能となる。
【0050】
ここで、比較例として、膜状部材72(第一リング状部材)が存在しない場合について、図面に基づいて説明する。
図6は、比較例に係り、膜付ワッシャ70に代えて通常の金属ワッシャ70Hを備えるケーブルグランド10Aを示す図であり、該ケーブルグランド10Aが組み付けられる前の状態を示す断面図である。
図7は、比較例に係るケーブルグランド10Aが組み付けられると共に接続箱100に取り付けられている状態を示す断面図である。
図8は、
図7に示すようにケーブルグランド10Aが組み付けられた状態で、ケーブルC1が曲げられた状態を示す断面図である。なお、
図6から
図8に示すケーブルグランド10Aにおいては、金属ワッシャ70H以外の構成は、
図1、
図2および
図5に示すケーブルグランド10と同様である。したがって、金属ワッシャ70H以外の構成については、
図1、
図2および
図5に示すケーブルグランド10と同一の符号を用いている。
【0051】
図6から
図8に示すケーブルグランド10Aのように、膜状部材72(第一リング状部材)を備えずに金属ワッシャ70Hを備える場合、ブッシング60のみで雨水等の液体が箱孔101を介して接続箱100の内部に侵入するのを防止することになる。ここで、
図8に示すように、ケーブルC1が曲げられることでブッシング60(弾性部材)に撓み荷重が長期に亘って付与された状態でケーブルグランド10を使用すると、ブッシング60の経年劣化等によりブッシング60の弾性が低下して、ケーブルC1の外周面に対してブッシング60(挿通孔61の内壁面)の追従性が低下する。このため、
図8に示すように、挿通孔61の軸方向の他方側(X2側)が広げられるように挿通孔61が変形してしまい、それによってケーブルC1の外周面と挿通孔61との間に、隙間が形成されてしまう場合がある。そのような隙間が形成されると、ケーブルC1の外周面に沿って雨水等の液体が接続箱100の内部に侵入し、接続箱100の内部に収納されている電気部品にトラブルを引き起こしてしまう虞がある。特に、クレーン等の移動する装置に備えられたケーブルC1は振動を伴う。したがって、ケーブルC1が振動することで、上記のトラブルが発生する可能性が高まる。
【0052】
これに対して、本実施の形態では、
図5に示すように、ブッシング60以外に膜状部材72(第一リング状部材)がケーブルC1の外周面に密着する。ブッシング60はケーブルC1を固定する機能に優れた部材(ある程度の硬さを備えた弾性部材)を選定し、膜状部材72(第一リング状部材)はケーブルC1との密着性と耐候性能を重視し、ケーブルC1が振動してもその振動に追従する弾性変形し易い膜状とすることで、弾性変形し易く、ケーブルC1の振動にフレキシブルに追従可能で密着性を長期に亘って保持する機能を有している。また、膜状部材72(第一リング状部材)により、ブッシング60を雰囲気や太陽光から遮断することでブッシング60の耐候性能の劣化も低減することができる。そのため、ブッシング60の経年劣化等によりブッシング60(弾性部材)の弾性が低下して、ケーブルC1の外周面に対してブッシング60(挿通孔61の内壁面)の追従性が低下しても、ブッシング60(弾性部材)よりも弾性変形し易い膜状部材72(第一リング状部材)がケーブルC1の外周面に密着した状態を維持できる。それにより、ケーブルグランド10は、長期に亘って接続箱100(筐体)の内部に雨水等の液体が侵入するのを防止可能となる。
【0053】
また、本実施の形態では、第一リング状部材は膜状に設けられた膜状部材72となっている。このように、膜状の膜状部材72を第一リング状部材として用いているので、ケーブルC1に沿って容易に延伸させることができる。それにより、スラスト密着部73をケーブルC1の外周面に沿って延伸した状態で密着させることができるので、ケーブルC1の外周面に沿って雨水等の液体が接続箱100(筐体)の内部に侵入するのを良好に防止可能となる。
【0054】
また、本実施の形態では、キャップ体30と膜状部材72(第一リング状部材)の間に、リング状部材71(第二リング状部材)を備えている。このため、キャップ体30には、リング状部材71(第二リング状部材)が当接する。このため、キャップ体30をケーシング20に締め付ける際に、膜状部材72(第一リング状部材)に直接締め付け力が加わるのを防止でき、膜状部材72(第一リング状部材)が引きちぎれる等によって破損するのを防止することができる。また、キャップ体30に弾性変形可能な樹脂を材質とする膜状部材72(第一リング状部材)が直接当接する場合と比較して、ケーブルグランド10を組み付ける場合に、膜付ワッシャ70とキャップ体30との間の摩擦を低減することが可能となる。
【0055】
また、本実施の形態では、膜状部材72(第一リング状部材)は、リング状部材71(第二リング状部材)に対して貼り付けられている。このため、ケーブルグランド10を組み付ける際に、リング状部材71(第二リング状部材)と膜状部材72(第一リング状部材)とに対して、別々にケーブルC1を挿入する必要がなくなり、作業を行い易くなる。また、リング状部材71(第二リング状部材)と膜状部材72(第一リング状部材)との間の密着性が高いので、これらの間に異物が挟まることがない。したがって、リング状部材71(第二リング状部材)と膜状部材72(第一リング状部材)の間から雨水等の液体が侵入するのを防止することが可能となる。
【0056】
また、本実施の形態では、膜状部材72(第一リング状部材)には、ケーブルC1に沿って延伸するスラスト密着部73が設けられていて、スラスト密着部73はブッシング60(弾性部材)が配置される側とは反対側に延伸している。このようなスラスト密着部73は、膜状部材72(第一リング状部材)の垂直方向(圧縮や引っ張りの方向)の変形よりも曲げ方向であるケーブルC1の変形・変位に対して柔軟に追従することができる。したがって、膜状部材72のケーブルC1に対する密着性が高くなり、ケーブルC1に沿って雨水等の液体が接続箱100の内部に侵入するのを一層確実に防止することができる。
【0057】
また、本実施の形態では、膜状部材72(第一リング状部材)は、ブッシング60(弾性部材)と比較して耐候性に優れた性能を有する材質から形成されている。このため、ケーブルグランド10を屋外等のような外部雰囲気にさらされる環境で用いても、膜状部材72の弾性等が劣化するのを長期に亘って防止することができる。このため、ブッシング60(第二リング状部材)の経年劣化長期に亘って防止することができる。したがって、ケーブルグランド10の防水性を長期に亘って維持することが可能となる。
【0058】
また、本実施の形態では、リング状部材71(第二リング状部材)は、膜状部材72(第一リング状部材)と比較して機械的強度が高く摩擦係数の小さい硬質の部材である。このため、膜状部材72(第一リング状部材)がキャップ体30に直接接触する場合と比較して、キャップ体30をケーシング20に締め付ける際に、その締め付けの荷重を分散させて膜状部材72(第一リング状部材)側に伝達させることができ、膜状部材72(第一リング状部材)に局所的な荷重が作用するのを防止することができ、膜状部材72(第一リング状部材)が引きちぎれるのを防止することができる。
【0059】
また、上述の締め付け後には、キャップ体30からの荷重は、強度の高い金属製のリング状部材71が受け止める一方、ブッシング60には膜状部材72を弾性的に当接させることができる。それにより、ケーブルC1に沿って雨水等の液体が接続箱100の内部に侵入するのを防止できるのみならず、たとえばブッシング60の軸方向の端面の径方向に沿って雨水等の液体が侵入するのを防止することができる。また、ケーブルグランド10を組み付ける際に、軸方向の一方側(X1側)に向かい、ケーブルC1に沿って膜付ワッシャ70を移動させる際に、膜状部材72は金属製のリング状部材71に向かって押圧される向きの力を受ける。このため、リング状部材71と膜状部材72とが貼り付けられている場合に、これらが剥がれるのを防止することができる。また、キャップ体30に弾性変形可能な樹脂を材質とする膜状部材72が当接する場合と比較して、ケーブルグランド10を組み付ける場合に、膜付ワッシャ70とキャップ体30との間の摩擦を低減することが可能となる。
【0060】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0061】
上述の実施の形態では、膜状部材72は1枚のみ用いられる構成について説明している。しかしながら、膜状部材72は1枚には限られず、2枚以上用いるようにしても良い。このような構成のうち、2枚の膜状部材72を有する膜付ワッシャ(膜付ワッシャ70A)の例を
図9および
図10に示す。
図9は、本発明の変形例に係り、2枚の膜状部材72A,72Bが設けられている膜付ワッシャ70Aを備えるケーブルグランド10が組み付けられると共に接続箱100に取り付けられている状態を示す断面図である。また、
図10は、膜付ワッシャ70Aの構成を示す断面図である。
【0062】
図9および
図10に示すように、膜付ワッシャ70Aは、リング状部材71と、第1膜状部材72Aと、第2膜状部材72Bとを備えている。なお、リング状部材71と、第1膜状部材72Aと、第2膜状部材72Bとは一体的に設けられていても良いが、これらのうちの少なくとも1つが別体的に設けられていても良い。また、第1膜状部材72Aと、第2膜状部材72Bとは、第一リング状部材に対応する。
【0063】
第1膜状部材72Aは、リング状部材71側に存在する部材である。また、第2膜状部材72Bは、第1膜状部材72Aを挟んでリング状部材71とは反対側に存在する部材である。これら第1膜状部材72Aと第2膜状部材72Bとは、上述した膜状部材72と同様の材質から形成されている。
【0064】
ここで、第1膜状部材72Aの径方向の中央部には、膜貫通孔72Aaが設けられていると共に、第2膜状部材72Bの径方向の中央にも、膜貫通孔72Baが設けられている。
図9および
図10に示す構成では、膜貫通孔72Baの方が、膜貫通孔72Aaよりも大径に設けられている。しかしながら、膜貫通孔72Aaと第2膜状部材72Bとが同一の直径に設けられても良く、膜貫通孔72Baの方が、膜貫通孔72Aaよりも小径に設けられても良い。また、第1膜状部材72Aと第2膜状部材72Bは、共に、ケーブルC1に対して密着する第1スラスト密着部73Aおよび第2スラスト密着部73Bが設けられている。
図9に示す構成では、第2スラスト密着部73Bは、第1膜状部材72Aよりも内側(ケーブルC1側)にしている。加えて、第1スラスト密着部73Aが第2スラスト密着部73Bよりも、ブッシング60から離れる側(X2側)に延出している。
【0065】
このような構成とする場合には、第1膜状部材72Aと第2膜状部材72Bの2枚の膜状部材の存在により、接続箱100の内部に雨水等の液体が侵入するのを良好に防止可能となる。特に、第1スラスト密着部73Aは、第2スラスト密着部73BよりもケーブルC1の外径側に位置するので、第1スラスト密着部73Aは第2スラスト密着部73BをケーブルC1側に向けて押し付けることで、第2スラスト密着部73BのケーブルC1に対する密着性を向上させることができる。このため、接続箱100の内部に雨水等の液体が侵入するのを一層確実に防止可能となる。
【0066】
また、上述の実施の形態では、筐体として巻上機に設けられている接続箱100について説明している。しかしながら、筐体は巻上機に設けられている接続箱100に限られるものではない。たとえば、筐体としては、各種の電源装置の筐体、配電盤の筐体、各種の電気機器の制御装置の筐体等が挙げられるが、これら以外であっても良い。
【0067】
また、上述の実施の形態では、弾性部材に対応するブッシング60および膜状部材72の材質は、ゴムやエラストマーのような弾性変形可能な樹脂を材質としている。しかしながら、ブッシング60の材質としては、各種耐性を高めたり、各種の機能を持たせるために、上述のような弾性変形可能な樹脂に、セラミックス系、繊維系、酸化物等のようなフィラーを添加したものであっても良い。
【0068】
また、上述の実施の形態では、膜状部材72の材質は、ブッシング60の材質と同じ材質であっても良い。
【0069】
また、上述の実施の形態では、膜状部材72は、リング状部材71とブッシング60の間に配置されているが、これとは別の構成を採用しても良い。たとえば、リング状部材71が膜状部材72とブッシング60の間に配置される構成を採用しても良い。
【0070】
また、膜付ワッシャ70は、1枚のみ用いる場合には限られず、2枚以上用いるようにしても良い。2枚以上の膜付ワッシャ70を用いる場合、1箇所に2枚以上の膜付ワッシャ70を重ねて配置しても良く、2箇所以上のそれぞれの場所に1枚以上の膜付ワッシャ70を配置しても良い。また、1枚の膜付ワッシャ70が2つ以上の膜状部材72を備える構成を採用しても良い。この場合、リング状部材71の一方の面側にのみ2つ以上の膜状部材72が設けられていても良く、リング状部材71の一方の面側と他方の面側の双方に1つ以上のリング状部材71が設けられていても良い。
【符号の説明】
【0071】
10…ケーブルグランド、20…ケーシング、21…筒孔、21a…テーパ内壁面、22…挿通筒部、22a…雄ネジ部、23…フランジ部、24…大径筒部、24a…大径雄ネジ部、30…キャップ体、31…キャップ孔、32…筒状部、32a…内周ネジ部、33…端面絞り部、33a…内径側テーパ面、40…ナット、50…箱側ワッシャ、60…ブッシング(弾性部材に対応)、61…挿通孔、62…テーパ外壁面、70,70A…膜付ワッシャ、70H…金属ワッシャ、71…リング状部材(第二リング状部材に対応)、71a…リング孔、72…膜状部材(第一リング状部材に対応)、72A…第1膜状部材、72Aa,72Ba…膜貫通孔、72B…第2膜状部材、73A…第1スラスト密着部、73B…第2スラスト密着部、72a,72Aa,72Ba…膜貫通孔(第一リング貫通孔に対応)、73…スラスト密着部、100…接続箱(筐体に対応)、101…箱孔(筐体貫通孔に対応)、102…外壁面、103…外壁、C1…ケーブル