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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】電池制御装置及び電池システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20230418BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20230418BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230418BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
H02J7/10 L
B60L58/13
H01M10/48 301
H02J7/00 A
H02J7/00 P
H02J7/10 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2016212450
(22)【出願日】2016-10-31
(65)【公開番号】P2018074766
(43)【公開日】2018-05-10
【審査請求日】2019-08-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米元 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】坂部 啓
(72)【発明者】
【氏名】小松 大輝
(72)【発明者】
【氏名】山内 晋
(72)【発明者】
【氏名】中尾 亮平
(72)【発明者】
【氏名】大川 圭一朗
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-140280(JP,A)
【文献】特開平09-163614(JP,A)
【文献】特開2015-154671(JP,A)
【文献】特開2014-105995(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141500(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/10
H02J 7/00
B60L 50/40
H01M 10/48
B60L 58/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電池セルの充放電を制御する電池制御装置において、
前記電池セルの温度と、前記電池セルの環境温度、前記電池セルが収納される筐体内部の温度、または前記電池セルの温度よりも早く前記環境温度に収束する位置における他の前記電池セルの温度と、の温度差分を、前記車両の停止時および再始動時のそれぞれのタイミングで求め、
前記再始動時における処理において、前記停止時および前記再始動時のそれぞれのタイミングにおける前記温度差分に基づいて前記車両の車両休止時間を推定し、推定した前記車両休止時間に応じて、前記電池セルに継続的に掛けられた負荷の大きさと該負荷が前記電池セルに継続的に掛けられた時間を表す電池負荷指標の前記停止時におけるを減衰させ、
前記再始動時の後の期間に、前記再始動時における処理において減衰された後の前記電池負荷指標に基づいて前記電池セルの入出力電力を制限する
ことを特徴とする電池制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池制御装置において、
前記再始動時における前記電池負荷指標の減衰の際に、
オフセット誤差の温度センサ間のバラツキに対するマージン、前記車両休止時間のマージン、および車両休止期間前後の前記温度差分に対する不感マージンのうちの少なくも一つを設けて、前記再始動時における前記電池負荷指標が減衰されにくくする
ことを特徴とする電池制御装置。
【請求項3】
前記電池セルと、
請求項1または2に記載の電池制御装置と
を有することを特徴とする電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御システム、電池パック、及び電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は短期間で継続的に大きな負荷を掛けられると、抵抗が著しく上昇する「高負荷抵抗上昇」が発生することがある。 この「高負荷抵抗上昇」を抑制するため、電池管理システム(Battery Management System、以下BMS)は、直近での電池負荷の大きさと継続性を示す電池負荷指標を常に演算し、演算された電池負荷指標に基づき電池負荷を適切に制限している。しかし、BMS停止中は制御演算の空白期間が生じるため、再始動直後は制御演算の空白期間、即ちBMS停止時間を考慮して演算した電池負荷指標に基づき電池負荷を適切に制限する必要がある。
【0003】
従来のBMS停止時間を算出する技術として、リアルタイムクロック(Real Time Clock、以下RTC)を用いる方式が一般的である。また、BMS停止期間も定期的に電池状態測定を実施することで、BMS停止期間後の電池の状態指標を演算する内容が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-126412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高負荷抵抗上昇を抑制するためには、BMS停止中における制御演算の空白期間を考慮して、BMS起動後の電池負荷を適切に制限する必要があるが、RTCから車両休止時間を演算する方式や前記の特許文献1に開示された技術は、車両休止中も稼働している素子があるため、待機電流が増加する課題がある。また、RTCを搭載する場合は部品コストが増加してしまう恐れや、RTCが故障した時に適切な電流制限を実施できない恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に記載の電池制御装置は、電池セルの温度情報と、電池セルの温度情報とは異なる温度情報を用いて、電池セルの入出力電力を制限する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、BMS停止時間を、RTCが使用できない状況(例えばRTCが搭載されていない状況、またはRTCが故障した状況)でも入出力電力の制限が可能となる。また、他の目的としてBMS再始動直後の電池負荷指標を、RTCが搭載されていない状況、またはRTCが故障した状況でも演算出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、BMS再始動時の初期値を0に設定した場合の電池負荷指標を示す図である。
図2図2は、BMS再始動時の初期値を前回値に設定した場合の電池負荷指標推移を示す図である。
図3図3は、充放電による電池パックの温度変化を示す図である。
図4図4は、許容電力演算ブロックの概要を示す図である。
図5図5は、第1の実施例におけるBMS停止時間推定結果を示す図である。
図6図6は、第2の実施例におけるBMS停止時間推定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《第1の実施例》
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
第1の実施例について説明する。
【0011】
車両用BMSは、車両停止時(前回車両停止した際の処理時)の電池負荷指標を記憶して車両再始動時(車両を再始動した際の処理時)は電池負荷指標を車両休止時間(車両停止時から車両再始動時までの経過時間)に応じて減衰演算する必要がある。しかしながら、コスト上の制約や待機電力の制約が厳しいBMS基板では時刻情報を取得するRTCを搭載しないため、車両休止時間を取得出来ず、車両再始動後(車両再始動時の後の期間)に正しい電池負荷指標を演算することは非常に困難である。
【0012】
そのため、車両再始動時の電池負荷指標を0リセットするか(図1)、前回の車両停止時の電池負荷指標を代入するか(図2)の対応が考えられる。
【0013】
図1(a)、(b)は車両再始動時の電池負荷指標を0リセットして後のデータ処理を説明する図である。図1(a)及び(b)に示すとおり、BMSでの処理は大きく分けて前回稼動期間A、休止期間B、及び現在稼動期間Cとすることが出来る。図1(a)及び(b)では、現在稼動期間C中の真値は実線で、0リセットして得られる電池負荷指標は見かけ値として二点鎖であらわしている。休止期間Bが長期間となる図1(a)の場合、電池が定常状態になるため、本方法のように0リセットして対策した場合、真の値と見かけ値がほぼ同じ値となる。一方で、休止期間Bが短期間となる図1(b)の場合、電池が定常状態にならないため、本方法のように0リセットして対策した場合、見かけ値が真値よりも大幅に小さくなる方向にずれることとなる。このため、高負荷抵抗上昇抑制のために電力制限しなければならないときも制限が掛からない恐れがある。
【0014】
一方、図2(a)、(b)は車両再停止時の電池負荷指標を代入して後のデータ処理を説明する図である。休止期間Bが短期間となる図2(b)の場合、電池が定常状態にならないため、本方法のように前回の値を代入して対策した場合、真の値と見かけ値がほぼ同じ値となる。一方で、休止期間Bが長期間となる図2(a)の場合、電池が定常状態になるため、本方法のように前回の値を代入して対策した場合、見かけ値が真値よりも大幅に大きくなる方向にずれることとなる。そのため、本方法を採用し、図2 (a)のように長時間の休止となる場合には、車両再始動後の電池負荷指標の見かけ値は真値よりも大きくなるため、必要以上に制限を掛けすぎてしまう場合がある。
【0015】
つまり、車両再始動時の電池負荷指標を0リセットするか、前回の車両停止時の電池負荷指標を代入するか、いずれかの方式を選択しても短時間の休止の場合と長時間の休止の場合の両方に対応して適切に電力を制限出来ない。
【0016】
以上の理由により、本発明では短時間の休止の場合と長時間の休止の場合の両方に対応した新たな方式を考える必要がある。
【0017】
また、電池パックに短期間で継続的に大きな負荷を印加した場合、発熱等により電池パックの中心部温度は環境温度よりも高くなり温度差が生じる。この温度差を示したデータが図3(b)(c)となる。図3(a)は模式的に電池パック100を示したものであり、この電池パック100に電池パック中心部温度センサ200、電池パック端部側温度センサ210、及び電池パック筐体内部温度センサ220を配置して温度測定をしている。図3(b)は充放電時間と電池温度の相関関係を、図3(c)は所定時間充放電した後に充放電を停止し電池パック端部温度及び電池パック中心部温度の時間依存を示した図である。図3(b)に示すように、電池パックの中心部温度と電池パックの端部温度は大きな差が出る。また、図3(c)に示すように電池パックの中心部温度と電池パックの端部温度は時間経過と共に指数関数的に減衰する。本発明ではこれらの温度特性を利用して、BMS停止直前とBMS再始動直後の温度情報に基づきBMS停止時間を演算することで高負荷抵抗上昇を未然に防止することができる。
【0018】
図4は、本発明に係る電池管理システムの第1の実施の形態を説明する図である。図4(a)は電池システム10を示す図である。電池システム10は電池パック100と、電池パック100に繋がり電池パックの制御を行うBMS110からなる。この電池システム10はインバータ120と繋がり、このインバータ120がモータ130と繋がり車両駆動システムを構成する。
図4(b)はBMS110を拡大して、制御ブロック図として表したものである。電池パック100の電池セルからセルコントローラ(不図示)を介して取得された電流情報、電圧情報、温度情報、充電率情報、及び抵抗率情報が、BMS110に入力される。このBMS110は制限前許容電力演算部111、電池負荷指標演算部112、制限率演算部113、制限後許容電力演算部114から構成される。制限前許容電力演算部111は、電池の上下限電圧設定値範囲内で充放電可能な許容電力を演算するブロックである。電池負荷指標演算部112は、電池負荷の大きさと継続性を表す電池負荷指標を演算するブロックである。制限率演算部113は、電池負荷指標に基づき制限率を演算するブロックである。制限後許容電力演算部114は、制限前許容電力に制限率を乗じて制限後許容電力を演算するブロックである。制限前許容電力演算部111、電池負荷指標演算部112はそれぞれセルコントローラ(不図示)を介して取得された電流情報、電圧情報、温度情報、充電率情報、及び抵抗率情報が入力され、それぞれ前述の制御パラメータを演算する。電池負荷指標演算部112で演算された電池負荷指標と、電圧情報、温度情報、充電率情報から、制限率演算部113は制限率を計算する。そして、制限後許容電力演算部114は、制限前許容電力演算部111で演算されたパラメータと制限率から、制御後許容電力値を演算する。
【0019】
続いて、本発明の具体的な演算方法について説明する。図3(c)に記載のように充放電休止直後(t)のパック中心温度(Tcenter)と環境温度(Tamb)の温度差(ΔT)は時定数τで減衰する指数関数的に収束するため、充放電休止直後(t)における温度差(ΔT(t) = Tcenter(t) - Tamb(t))と、充放電休止直後からtrest経過した時点(t = t + trest)における温度差(ΔT(t) = Tcenter(t) - Tamb(t))の関係は式(1)のように表される。
【0020】
【数1】
【0021】
式(1)を変形すると、経過時間(trest)は式(2)のように求めることが出来る。
【0022】
【数2】
【0023】
式(2)を本発明における車両休止時間推定の基本式とした。ただし、車両休止時間の推定値が異常値とならないために、式(2)の温度入力は温度センサの誤差(ドリフト誤差、オフセット誤差のセンサ間バラツキ)や、温度センサの分解能、車両休止中の環境温度(Tamb)の変化等を考慮し、以下の制約条件を満たす必要がある。
(A)log関数内の分母成分が正の値であること
(B)log関数内の分子成分が正の値であること
(C)log関数内の分母成分よりも分子成分が大きいこと
(D)経過時間(trest)が0以上となること
そのため、上記(2)式に対して上記制約条件を満たして計算することが好ましい。
【0024】
本発明を用いて精度を検証した結果、つまりBMS110が環境温度(Tamb)を取得可能な場合の車両休止時間推定アルゴリズムの精度検証結果を述べる。この時、tは0sec固定とした。
【0025】
図5(a)より、車両休止時間の推定値は10000sec以下の区間においてほぼ真値線上で推移することを確認した。この結果から、温度情報から車両休止時間を定量的に推定出来る。次に、図5(b)より、時刻tと時刻tにおける電池パックの温度差が大きい1000sec以上の区間では、車両休止時間の推定値比率は基準線上で推移することを確認した。さらに、時刻tと時刻tにおける電池パックの温度差が小さい1000sec以下の区間では、車両休止時間の推定値比率の変動幅が大きく基準線を超えた。この計算は電池負荷指標演算部112で行われる。このように本発明を用いることによって、RTCが使用できない状況で高精度に車両停止時からの経過時間を推定できるため高精度に電池負荷指標を演算することが出来る。特に1000sec以上の領域においては高精度に車両停止時からの時間を推定出来、特に高精度に電池負荷指標を演算することが出来る。
【0026】
本実施例では車両停止時の電池セルの温度と環境温度との差を用いて車両停止時からの時間を推定することとしたが、別の温度を用いることも可能である。例えば、車両停止時からの経過時間を推定するのに車両停止時の電池セルの温度と車両起動時の電池セルの温度を使用することしても良い。このような構成にすることによって、環境温度を測定する温度センサが不要になるため、電池パックとしてシンプルにすることが出来る。また、他の例としては車両停止時からの経過時間を推定するのに車両停止時の電池セルの温度と電池セルが収納される電池パック筐体内部の温度情報を使用しても良い。このような構成にすることによって、一つの電池パックの製品として本制御を完結させることが出来る。
【0027】
また、本実施例に車両起動時の電池セルの温度情報と電池セルが収納される筐体内部の温度情報を用いる場合、車両起動時の電池セルの温度情報と電池セルが収納される筐体内部の温度情報との差が所定値よりも大きい場合であって、かつ電池セルの温度情報の方が電池セルが収納される筐体内部の温度情報よりも高い場合に電池セルの入出力電力を制限する。このような構成にすることによって、仮に筐体内部の温度と電池セルの温度に大きな差があった場合でも、確実に許容電力を制限することができ、安全な電池パックを提供することが可能となる。
【0028】
なお、オフセット誤差のセンサ間バラツキに対するマージン(ΔToffset、margin)、車両休止時間マージン(trest、margin)、車両休止期間前後のセル温度差に対する不感マージン(ΔTdrift、margin)を(2)式で考慮しても良い。
【0029】
制限率演算部113は、RTCが使用出来ない状態で高精度に演算された電池負荷指標、電圧情報、温度情報、充電率情報から高精度に制限率を演算する。この制限率を用いて制限後許容電力演算部114で許容電力を演算できるため、RTCを使用しなかったとしても高精度に入出力電力の制限が可能となる。
以上、第1の実施例について簡単にまとめる。本実施例に記載の電池制御装置は、電池セルの温度情報と、電池セルの温度情報とは異なる温度情報(例えば環境温度)を用いて車両停止時からの経過時間を推定し、電池セルの入出力電力を制限することとした。このような構成にすることによって、RTCが使用できない状況(例えばRTCが搭載されていない状況、またはRTCが故障した状況)でも高精度に電池負荷指標を演算することが出来るため、より正確な入出力電力の制限が可能となるRTCが使用できない状況(例えばRTCが搭載されていない状況、またはRTCが故障した状況)でも入出力電力の制限が可能となる。
【0030】
また、本実施例に記載の電池制御装置は、電池セルの温度情報に車両起動時の電池セルの温度情報を使用することとした。このような構成にすることによって、環境温度を測定する温度センサが不要になるため、電池パックとしてシンプルにすることが出来る。
【0031】
また、本実施例に記載の電池制御装置は、電池セルの温度とは異なる温度情報に電池セルが収納される筐体内部の温度情報を使用することとした。このような構成にすることによって、一つの電池パックの製品として本制御を完結させることが出来る。
【0032】
また、本実施例に記載の電池制御装置は、車両起動時の電池セルの温度情報と電池セルが収納される筐体内部の温度情報との差が所定値よりも大きい場合であって、かつ電池セルの温度情報の方が電池セルが収納される筐体内部の温度情報よりも高い場合に前記電池セルの入出力電力を制限する。このような構成にすることによって、仮に筐体内部の温度と電池セルの温度に大きな差があった場合でも、確実に許容電力を制限することができ、安全な電池パックを提供することが可能となる。
【0033】
また、本実施例に記載の電池制御装置は、電池セルの温度情報とは異なる温度情報に車両停止時の電池セルの温度情報を使用することとした。このような構成にすることによって、
また、本実施例に記載の電池制御装置は、電池セルが収納される筐体内部の温度情報と前記車両停止時の電池セルの温度情報との差が所定値よりも大きい場合に前記電池セルの入出力電力を制限する。
【0034】
《第2の実施例》
次に、第2の実施例について説明する。実際のBMS110において電池の充放電に伴う発熱の影響を受けない環境温度情報を取得することが出来ない場合があるため、本実施例では上位システムから環境温度情報を取得するようにした。つまり、本実施例ではBMSが環境温度(Tamb)を取得するのでははく、環境温度(Tamb)の代わりに電池パック端部の温度情報を用いる。計算条件としては第1の実施例と同様のものとした。
【0035】
本実施例を用いて推定した車両休止時間の真値と推定値の比較を図6(a)、車両休止時間推定値の真値に対する比率を図6(b)にそれぞれ示す。図6(a)より、パック端部温度(Tend)を用いた車両休止時間の推定値は、環境部温度(Tamb)を用いた車両休止時間の推定値と同様に真値線近傍を推移している。このような構成にすることによって、一つの電池パック内に2つの温度センサを設けるだけで高精度に入出力電力を制限することが出来る。
【0036】
以上の結果より、電池パック中央部温度(Tcenter)と電池パック端部温度(Tend)を用いて車両休止時間を推定することで、RTCのような時刻情報を取得する素子が無くても確実な高負荷抵抗上昇抑制を実現出来る。
【0037】
最後に各実施例の共通する概念をまとめる。電池パックに短期間で継続的に大きな負荷を印加した場合、発熱等により電池パックの中心部が周囲温度よりも高くなり温度差が生じる。充放電停止後、周囲温度が急激に変化しない場合、この温度差は時間経過と共に指数関数的に減衰する。本発明ではこの特性を利用して、BMS停止直前とBMS再始動直後の温度情報に基づき演算したBMS停止時間を用いて適切に電力制限する。このような制御をすることによって、コスト制約や故障によりリアルタイムクロック(RTC)から時刻情報を直接入手出来ない場合に、 電池制御システム(BMS)停止期間を推定し、高負荷抵抗上昇抑制アルゴリズムの冗長性を確保する電池制御装置を提供することができる。
【0038】
上記の通り、種々の実施の形態について説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
10 電池システム
100 電池パック
110 BMS
111 制限前許容電力演算部
112 電池負荷指標演算部
113 制限率演算部
114 制限後許容電力演算部
120 インバータ
130 モータ
200 電池パック中央部温度センサ
210 電池パック端部温度センサ
220 電池パック筐体内部温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6