IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 蛇の目ミシン工業株式会社の特許一覧

特許7264603座標データ作成装置、ミシンおよびプログラム
<>
  • 特許-座標データ作成装置、ミシンおよびプログラム 図1
  • 特許-座標データ作成装置、ミシンおよびプログラム 図2
  • 特許-座標データ作成装置、ミシンおよびプログラム 図3
  • 特許-座標データ作成装置、ミシンおよびプログラム 図4
  • 特許-座標データ作成装置、ミシンおよびプログラム 図5
  • 特許-座標データ作成装置、ミシンおよびプログラム 図6
  • 特許-座標データ作成装置、ミシンおよびプログラム 図7
  • 特許-座標データ作成装置、ミシンおよびプログラム 図8
  • 特許-座標データ作成装置、ミシンおよびプログラム 図9
  • 特許-座標データ作成装置、ミシンおよびプログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】座標データ作成装置、ミシンおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   D05B 69/18 20060101AFI20230418BHJP
   D05B 19/08 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
D05B69/18 Z
D05B19/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018128399
(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公開番号】P2020005797
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-07-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】金剛 猛
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-245092(JP,A)
【文献】特開平04-079982(JP,A)
【文献】特開昭53-015960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 69/18
D05B 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製する模様の針落ち位置のX座標の値とY座標の値とからなる絶対位置の座標データを作成するミシンの座標データ作成装置において、
前記座標データを記憶する座標データ記憶部と、
前記座標データ記憶部で記憶された前記座標データ毎に、前記座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々一定範囲内の乱数を加算して、前記模様を崩した新たな座標データを作成する加算後座標データ作成部と、
を備えた座標データ作成装置。
【請求項2】
縫製順序と該縫製順序に対応する座標データとを有する縫製データにおいて同一の座標データがある場合、
前記同一の座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する一定範囲内の乱数は、
他の縫製順序の前記同一の座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算した値と同じ値であることを特徴とする請求項1に記載の座標データ作成装置。
【請求項3】
前記座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する一定範囲内の乱数は、
前記模様毎に異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の座標データ作成装置。
【請求項4】
前記加算後座標データ作成部で作成された新たな座標データの模様を表示する加算後模様表示部と、
前記加算後模様表示部で表示された模様の座標データを前記模様毎に保存又は編集する座標データ処理部と、
を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の座標データ作成装置。
【請求項5】
前記座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する一定範囲内の乱数は、
一定範囲内の乱数であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の座標データ作成装置。
【請求項6】
前記座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する一定範囲内の乱数は、
一定範囲内の正の値又は負の値であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の座標データ作成装置。
【請求項7】
前記加算後座標データ作成部で作成された座標データのX座標の値と縫製順序において隣接する前記加算後座標データ作成部で作成された座標データのX座標の値との間隔は、前記ミシンにおける機構の制限範囲内の値であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の座標データ作成装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の座標データ作成装置を備えるミシン。
【請求項9】
座標データを記憶する座標データ記憶部と、加算後座標データ作成部と、を備え、縫製する模様の針落ち位置のX座標の値とY座標の値とからなる絶対位置の前記座標データを作成するミシンの座標データ作成装置における座標データ作成方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記加算後座標データ作成部が、前記座標データ記憶部において記憶された前記座標データ毎に、前記座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々一定範囲内の乱数を加算して、前記模様を崩した新たな座標データを作成する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標データ作成装置、ミシンおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ミシンの縫い目は、針の振幅位置と布の送り量によって位置が決まる。
そのため、各針落ち点を糸でつなぐことにより模様が生成される。
ここで、針を落とす位置は、縫いたい図形に基づいて、一針ずつ針を落とす位置を決めてデータ入力して行く。
つまり、基本的には、元の図形を縫い目に忠実に再現できるよう縫いデータを作ることが多い。
そして、この縫いデータに従って、針落ち点を直線やカーブでつないでいくことにより、縫い目によって、元の図形を描くことができる。
そのため、ミシンを使えば、誰でも忠実に模様を再現できることから、縫製上級者が縫ったように見え、綺麗な模様が布上に形成できる。
ところが、このことが逆に機械的で、冷たい印象を与えていた。
【0003】
こうした問題に対して、ミシンの縫い目制御量のばらつきを1/fゆらぎとして制御量を求め、送り制御用のモータおよび振幅制御用のモータに対して、バラツキの要素を加えて駆動する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、模様の途中では、バラツキによる調整をせず、1サイクル毎に振幅または送りの調整量を制御し、模様が大きく崩れることを回避する技術も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許2852967号公報
【文献】特願2011-245092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、1針毎にばらつきの要素を加える制御であるために、縫製した模様が過度に崩れてしまうという問題があった。
特に、送り方向は相対移動量であるため、影響が強く出てしまい、模様が大きく崩れて、元のデザインがどのようなものであったかわからない程になってしまう虞もあった。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、1サイクルの針数が多い場合、1サイクル毎に模様の幅あるいは模様の長さが変更されるだけであって、1針毎にばらつくことがないため、機械的な模様の変化となり、冷たい印象は、仮に回避できても、温かさのある模様とはならないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、1針ごとに適度なばらつきを与えることにより、縫い模様に手書きの風合いを出して、心地よさや温かさが感じられる縫い目を生成することができる座標データ作成装置、ミシンおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、縫製する模様の針落ち位置のX座標の値とY座標の値とからなる絶対位置の座標データを作成するミシンの座標データ作成装置において、前記座標データを記憶する座標データ記憶部と、前記座標データ記憶部で記憶された前記座標データ毎に、前記座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々独自の値を加算して、前記模様を崩した新たな座標データを作成する加算後座標データ作成部と、を備えた座標データ作成装置を提案している。
【0010】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、縫製順序と該縫製順序に対応する座標データとを有する縫製データにおいて同一の座標データがある場合、前記同一の座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する独自の値は、他の縫製順序の前記同一の座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算した値と同じ値である座標データ作成装置を提案している。
【0011】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する独自の値は、前記模様毎に異なる座標データ作成装置を提案している。
【0012】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記加算後座標データ作成部で作成された新たな座標データの模様を表示する加算後模様表示部と、前記加算後模様表示部で表示された模様の座標データを前記模様毎に保存又は編集する座標データ処理部と、を備える座標データ作成装置を提案している。
【0013】
形態5;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する独自の値は、一定範囲内の乱数である座標データ作成装置を提案している。
【0014】
形態6;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する独自の値は、一定範囲内の正の値又は負の値である座標データ作成装置を提案している。
【0015】
形態7;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記加算後座標データ作成部で作成された座標データのX座標の値と縫製順序において隣接する前記加算後座標データ作成部で作成された座標データのX座標の値との間隔は、前記ミシンにおける機構の制限範囲内の値である座標データ作成装置を提案している。
【0016】
形態8;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、形態1から形態6のいずれか1つに記載の座標データ作成装置を備えるミシンを提案している。
【0017】
形態9;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、座標データを記憶する座標データ記憶部と、加算後座標データ作成部と、を備え、縫製する模様の針落ち位置のX座標の値とY座標の値とからなる絶対位置の前記座標データを作成するミシンの座標データ作成装置における座標データ作成方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記加算後座標データ作成部が、前記座標データ記憶部において記憶された前記座標データ毎に、前記座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々独自の値を加算して、前記模様を崩した新たな座標データを作成する処理をコンピュータに実行させるプログラムを提案している。
【発明の効果】
【0018】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、1針ごとに適度なばらつきを与えることにより、縫い模様に手書きの風合いを出して、心地よさや温かさが感じられる縫い目を生成することができるという効果がある。
つまり、従来のミシンにより縫製された機械縫製特有のある種の固さや冷たさと言ったものがなくなり、一種の心地よさ、暖かさを感じさせる縫目が得られる。
また、同じミシンで縫っているにもかかわらず、裁縫初心者や子供等が手縫いで縫ったように見せかけることが可能となる。
なお、同じ技術でデータ形式を刺繍形式に変更すれば、暖かみのある模様を刺繍することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る座標データ作成装置の電気的ブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る座標データ作成装置における画面操作時の処理フロー図である。
図3】本発明の実施形態に係る座標データ作成装置における画面操作時の操作画面を例示した図である。
図4】本発明の実施形態に係る座標データ作成装置における手書き風ステッチ変換に関する処理フロー図である。
図5】本発明の実施例1に係るシンプルなステッチの場合の針落ち点の表示を例示した図である。
図6】本発明の実施例1に係るシンプルなステッチの場合の乱数による針落ち点座標の調整前について例示した図(元データ図)である。
図7】本発明の実施例1に係るシンプルなステッチにおける元の縫いイメージと手書き風ステッチの縫いイメージを例示した図である。
図8】本発明の実施例2に係る同一点に針落ち点があるステッチの場合の針落ち点の表示を例示した図である。
図9】本発明の実施例2に係る同一点に針落ち点があるステッチの場合の乱数による針落ち点座標の調整前について例示した図(元データ図)である。
図10】本発明の実施例2に係る同一点に針落ち点があるステッチにおける元の縫いイメージと手書き風ステッチの縫いイメージを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図1から図4を用いて説明する。
【0021】
<座標データ作成装置の電気的構成>
本実施形態に係る座標データ作成装置10の電気的構成について、図1を用いて説明する。
【0022】
本実施形態に係る座標データ作成装置10は、図1に示すように、中央処理演算装置(CPU)101と、ROM102と、作業用メモリ(RAM)103と、表示装置104と、タッチパネル105と、USBコントローラ106と、外部メディア107と、を含んで構成されている。
【0023】
中央処理演算装置(CPU)101は、ROM102に格納された制御プログラムにしたがって、座標データ作成装置10の全体の動作を制御する。
また、外部入出力装置を介して様々なデバイスに接続されている。
ROM102およびRAM103は、機能モジュールを格納する格納部として機能する。
【0024】
ROM102には、手書き風モード選択モジュール、模様の選択モジュール、絶対送り形式変換モジュール、調整値生成モジュール、調整値加算モジュール、機構限界制限モジュール、組合せ模様生成モジュール、組合せ模様編集モジュール、保存/読出しモジュール、ステッチデータ格納エリア等の様々な機能モジュールおよびデータが格納されている。
【0025】
表示装置104は、例えば、図3に示すような操作画面を表示する。
表示装置104は、外部入出力装置を介して、中央処理演算装置(CPU)101に電気的に接続されている。
また、表示装置104には、その表示面の下側に後述するタッチパネルが重ねて配置された多層構造となっており、タッチパネルおよび表示装置104が、「表示部」としてユニット化されている。
そして、表示装置104には、模様や文字、ボタンなどが表示される。
【0026】
タッチパネルは、静電容量方式や抵抗膜方式等のパネルとして構成されており、外部入出力装置を介して、CPU101に電気的に接続されている。
また、使用者の操作の利便性を考慮して、座標データ作成装置10の外部に操作可能に露出されて配置されている。
使用者がタッチパネルを指でタッチすることにより、手書き風モードの選択や模様の選択等を画面で確認しながら操作することができる。
【0027】
本実施形態においては、例えば、ユーザが図3の操作画面上で、「手書き風」ボタンを押下すると、手書き風モード選択モジュールが有効となり、以後選択される模様は手書き風ステッチ変換機能により、ステッチデータが微調整される。
【0028】
具体的には、図3の操作画面上で、「模様選択」ボタンを操作すると模様の選択モジュールが有効となる。
例えば、1番のボタンが押されると、座標データ作成装置10のROM102に内蔵されている模様番号1の模様が選択され、1サイクル分のステッチデータが読み込まれる。
【0029】
中央処理演算装置(CPU)101が、絶対送り形式変換モジュールを有効にすると、相対送り量のステッチデータが送り量を累積した絶対座標のデータ形式に変換される。
なお、処理の詳細については、後述する。
【0030】
中央処理演算装置(CPU)101が、調整値生成モジュールを有効にすると、整数の乱数が生成され、0.1mm単位換算で乱数を長さの単位に変換する。
なお、処理の詳細については、後述する。
【0031】
中央処理演算装置(CPU)101が、調整値加算モジュールが有効にすると、オリジナルの振幅値および絶対送りデータに乱数による調整長さをそれぞれ加算する。
但し、計算結果が機構の限界値を超える場合には、機構限界制限モジュールが有効となり、加算は行われない。
また、オリジナルのデータに同一の座標がある場合は、同一点処理により、既に調整された座標を使用し、調整後の座標も一致するようにする。
なお、処理の詳細については、後述する。
【0032】
1サイクル分のデータについて手書き風の処理を施すと、中央処理演算装置(CPU)101により、組合せ模様生成モジュールが有効となり、生成された組合せ模様を作業メモリ(RAM)に一時記憶する。
また、図3の操作画面上で、プレビュー画面に手書き風に変換された模様が1サイクル表示される。
再度同じ模様を選択すると、別の乱数により微調整され、プレビュー画面に2サイクル目として描画される。
【0033】
中央処理演算装置(CPU)101が、組合せ模様編集モジュールを有効にすると、模様の削除や追加、組み合わせの変更等が可能になる。
なお、模様を追加したにおいても、別の乱数で微調整される。
【0034】
中央処理演算装置(CPU)101が、保存/読出しモジュールを有効にすると、組み合わされた模様は外部メディア107等に書き込むことができる。
そのため、乱数により調整された模様であっても、再現して縫うことができる。
【0035】
RAM103には、ROM102から読み込まれた、例えば、OSや基本ライブラリ等の様々な機能モジュールが一時的に格納されている。
また、中央処理演算装置(CPU)101において、作業に供するデータも一時的に記憶、保存される。
【0036】
USB(Universal Serial Bus)コントローラ106は、座標データ作成装置10と外部メディア107等の外部機器を接続し、制御する。
外部メディア107は、例えば、ハードディスク、DVDレコーダ等であり、模様データ等をUSBコントローラ106の制御の下、書き込み保存する。
【0037】
中央処理演算装置(CPU)101は、ROM102に記憶されているプログラムモジュールを逐次実行し、例えば、通常縫いデータを手書き風ステッチデータ変換する。
例えば、CPU101は、通常縫いステッチデータの各針落ち点をX方向およびY方向に微小距離だけ移動して、全針落ち点に対して異なる長さ、方向の微調整を行うことによって、縫い模様に手書きの風合いを醸し出す。より具体的には、ステッチデータから縫いイメージの針落ち点の座標列を作成する。
そして、乱数を発生させ、微小長さの補正値(±)を生成し、各針落ち点のX方向、Y方向の座標にその長さを加算する。
さらに、元データの針落ち点が同じ位置の場合、微調整後も重なるように補正し、手縫い風に変換したステッチで組み合わせ模様を作る処理を行う。
なお、処理の詳細については、後述する。
【0038】
<座標データ作成装置の処理>
本実施形態に係る座標データ作成装置10における画面操作処理および手書き風ステッチ変換処理の詳細について、図2から図4を用いて説明する。
【0039】
<画面操作処理>
本実施形態に係る座標データ作成装置10を用いた縫製データの作成は、図3に示すような表示装置104に表示される画面を操作して行う。
そのため、座標データ作成装置10の詳細な処理について説明する前に、図2を用いて、本実施形態に係る座標データ作成装置10における画面操作処理について説明する。
【0040】
ユーザにより、表示装置104に図3に示すような操作画面を表示する表示モードが選択されると、まず、座標データ作成装置10の中央処理演算装置(CPU)101は、キー入力により、操作ボタン、カーソルボタン、模様ボタン等がユーザに押下されるのを待つ待機モードに移行する(ステップS101)。
【0041】
次に、中央処理演算装置(CPU)101は、ユーザにより模様の選択があったか否かを判定する(ステップS102)。
判定の結果、中央処理演算装置(CPU)101が、ユーザによる模様の選択、すなわち、ユーザによる模様番号の入力等があったと判定した場合には、次に、組合せモードの処理であるのか、手書き風モードの処理であるのかを判定する(ステップS113)。
なお、組合せモードの処理あるいは、手書き風モードの処理のいずれであっても、処理を行い、模様を選択された順に記憶していく。
【0042】
ステップS102に戻って、判定の結果、中央処理演算装置(CPU)101が、ユーザによる模様の選択ではない、すなわち、ユーザによる模様番号の入力等がなかったと判定した場合(ステップS102の「No」)に、組合せボタンが押下されると(ステップS103の「Yes」)、組合せモードを設定し、処理をステップS101に戻す(ステップS104)。
【0043】
一方で、中央処理演算装置(CPU)101が、ステップS103において、ユーザが組合せボタンを押下しなかったと判定した場合(ステップS103の「No」)には、ユーザが手書き風ボタンを押下するか否かを判定する(ステップS105)。
【0044】
中央処理演算装置(CPU)101が、ステップS105において、ユーザが手書き風ボタンを押下したと判定した場合(ステップS105の「Yes」)には、手書き風モードを設定し、処理をステップS101に戻す(ステップS106)。
【0045】
一方で、中央処理演算装置(CPU)101が、ステップS105において、ユーザが手書き風ボタンを押下しなかったと判定した場合(ステップS105の「No」)には、ユーザがカーソルボタンを押下したか否かを判定する(ステップS107)。
【0046】
中央処理演算装置(CPU)101が、ステップS107において、ユーザがカーソルボタンを押下したと判定した場合(ステップS107の「Yes」)には、模様選択モジュールで記憶された模様列について、カーソルを前後に移動し、処理をステップS101に戻す(ステップS108)。
【0047】
一方で、中央処理演算装置(CPU)101が、ステップS107において、ユーザがカーソルボタンを押下しなかったと判定した場合(ステップS107の「No」)には、ユーザが削除ボタンを押下したか否かを判定する(ステップS109)。
【0048】
中央処理演算装置(CPU)101が、ステップS109において、ユーザが削除ボタンを押下したと判定した場合(ステップS109の「Yes」)には、カーソルが示す位置の模様を削除し、以後の模様を先頭に詰め、処理をステップS101に戻す(ステップS110)。
【0049】
一方で、中央処理演算装置(CPU)101がステップS109において、ユーザが削除ボタンを押下しなかったと判定した場合(ステップS109の「No」)には、ユーザが保存ボタンを押下したか否かを判定する(ステップS111)。
【0050】
中央処理演算装置(CPU)101が、ステップS111において、ユーザが保存ボタンを押下したと判定した場合(ステップS111の「Yes」)には、手書き風に変換された模様や組み合わせ模様を外部メディア等に保存し、再利用できるようにした上で、処理をステップS101に戻す(ステップS112)。
【0051】
一方で、中央処理演算装置(CPU)101が、ステップS111において、ユーザが保存ボタンを押下しなかったと判定した場合(ステップS111の「No」)には、処理をステップS101に戻す。
【0052】
中央処理演算装置(CPU)101が、ステップS113において、ユーザが手書き風モードで模様ボタンを押下したと判定した場合(ステップS113)には、手書き風ステッチ変換処理を呼び出す(ステップS114)。
なお、手書き風ステッチ変換処理の詳細については、後述する。
【0053】
一方で、中央処理演算装置(CPU)101がステップS113において、ユーザが組合せモードボタンを押下したと判定した場合(ステップS113の「Yes」)およびステップS114における手書き風ステッチ変換処理が終了すると、通常の模様の組み合わせと同様に、模様データを組み合わせる(ステップS115)。
【0054】
そして、中央処理演算装置(CPU)101は、ステップS116において、表示装置104にプレビュー画面を表示する。
これにより、ユーザは、変換された状況を確認することができる。
【0055】
なお、手書き風モードで変換された模様も通常の模様と同じ扱いであるため、削除、追加などの編集操作が可能である。
【0056】
<手書き風ステッチ変換処理>
図4を用いて、手書き風ステッチ変換処理の詳細について説明する。
【0057】
手書き風ステッチ変換処理は、「バラツキ処理」と、「同一点処理」と、「組合せ編集処理」とからなる。
以下、図4を用いて、手書き風ステッチ変換処理の詳細を説明する前に、上記3つの処理の概要について説明する。
【0058】
<バラツキ処理>
送り方向のデータが、相対移動量の状態のままでは、針落ち点の座標を調整することができない。
そこで、バラツキ処理では、一旦、相対移動量をステッチデータから針落ち点の位置を示す絶対座標のデータ列に変換する。
これにより、1サイクルあるいは、複数サイクルの直交座標の絶対座標列を生成する。
【0059】
次に、乱数を生成し、針落ち点のX座標およびY座標をずらすための、例えば、±1mm以下の調整量を各針落ち点のために準備する。
なお、乱数は随時生成する場合に限らず、予め生成された調整データをテーブルの形式で持っていてもよい。
針落ち点を示す絶対座標のデータ列に、例えば、±1mmの範囲で生成された乱数による調整量を加算する。
調整された座標データが、振幅方向は機構の幅に収まる様に制限し、送り方向も一針前との距離が所定の距離以下になるように制限する。
そして、絶対座標の針落ち点のデータ列を送り方向を相対移動量に変換し、通常縫いのステッチデータ形式に戻す。
なお、以下では、振幅方向は機構の幅について8.8mmを、送り方向の一針前との距離制限について5mmを例示して説明する。
【0060】
<同一点処理>
模様の形状によっては、複数回同じ点を通って形成するステッチデータがよく作られる。
この場合、すべての針落ち点について、無制限に針落ち点のX座標およびY座標をずらしてしまうと、元の模様形状が失われてしまう。
そこで、同じ位置に複数個の針落ち点がある場合、それらの点は変換処理後も同一点になるように位置の制御を行う。
【0061】
<組合せ編集処理>
模様のサイクル毎に異なる乱数で針落ち点のX座標およびY座標をばらつかせ、複数個の模様を組み合わせる。
組み合わせ内容を記憶するためにユーザが、図3に示す操作画面上の模様ボタンを押下する。
この模様選択操作で新たに乱数を発生させ、元は同じ模様であるが、模様選択の度に、針落ち点のX座標およびY座標に対して、異なるずらし方をして、複数の組み合わせ模様が作られる。
ユーザは、変換したステッチデータの外観をプレビューして、好ましいと思われる針落ち点のX座標およびY座標のずれにより生成される模様を採用する。
なお、ユーザが好ましいと思われる針落ち点のX座標およびY座標のずれにより生成される模様ではないと判断する場合には、削除する等の操作を行い、組み合わせ模様を画面上で編集することもできる。
また、ユーザは、乱数によって針落ち点のX座標およびY座標をばらつかせるのか、テーブルによって、針落ち点のX座標およびY座標をばらつかせるのかを選択することもできる。
【0062】
<手書き風ステッチ変換の処理詳細>
当該処理を実行するために、ユーザは、図3に示すように表示装置104に表示される操作画面において「手書き風」ボタンを押下し、手書き風の組合せモードを設定する。
次に、ユーザは、模様選択ボタンを押し、模様を選択する。
【0063】
まず、座標データ作成装置10の中央処理演算装置(CPU)101は、送り方向が相対移動量となっているユーザにより選択された模様のステッチデータを相対送り量の累積処理によって、絶対座標のデータ列に変換する(ステップS201)。
【0064】
中央処理演算装置(CPU)101は、振幅用と送り用の乱数を2つ取得する。
ここで、得られる乱数は整数であるため、±1.0mm以内の調整長さに換算する(ステップS202)。
【0065】
中央処理演算装置(CPU)101は、振幅方向と送り方向の座標にステップS202において換算した調整長さを加算し、微調整を行う(ステップS203)。
【0066】
但し、機構の限界を超えて微調整はできないため、中央処理演算装置(CPU)101は、微調整後の座標データのY座標の値又は微調整後の座標データのX座標の値と縫製順序において隣接する微調整後の座標データのX座標の値との間隔が、機構の制限以内であるか否かを判断する(ステップS204)。
ここで、微調整後の座標のY座標の値が振幅(Y座標)方向の機構の制限を超える場合には、ステップS203の微調整処理を無効とする(ステップS205)。
また、微調整後の座標データのX座標の値と縫製順序において隣接する微調整後の座標データのX座標の値との間隔が、送り(X座標)方向の機構の制限を超える場合には、ステップS203の微調整処理を無効とする(ステップS205)。
ここで、振幅方向の機構の制限の値としては、例えば、-4.4mmまたは+4.4mmを、送り方向の機構の制限の値としては、例えば、相対移動量が-5.0mmまたは+5.0mmを例示することができる。
上記は、通常縫いにおける制限に関するものだが、刺繍縫いにおいても微調整後の座標データの値と縫製順序において隣接する微調整後の座標データの値との間隔が、X座標方向またはY座標方向の機構の制限を超える場合には、ステップS203の微調整処理を無効とする(ステップS205)。
一方で、微調整後の座標の振幅方向および送り方向が機構の制限に達していない場合には、処理をステップS206に移行する。
【0067】
中央処理演算装置(CPU)101は、ステッチの1サイクルが終了したか否かを判断する(ステップS206)。
中央処理演算装置(CPU)101は、ステッチが、まだ残っていると判断した場合には、処理をステップS202に戻す。
この場合、中央処理演算装置(CPU)101は、次の針落ち点に対して新しい乱数を生成して、ステップS202、203を実行する。
【0068】
一方で、中央処理演算装置(CPU)101は、1サイクル分のステッチについて手書き風の変換処理が終了すると、同一座標を検出し、データ補正を行う(ステップS207)。
具体的には、調整前の元データにおいて、座標が一致する針番号を検索する。
例えば、1針目の座標と一致する座標の針番号をステッチの最後まで探す。
【0069】
中央処理演算装置(CPU)101は、検索の結果(ステップS208)、同一座標を一個あるいは複数個検出した場合には、検出した針位置に調整後の座標をコピーする(ステップS209)。
具体的には、1針目の微調整後の座標を検出した針番号に対して、1針目の微調整後の座標を適用する。
【0070】
中央処理演算装置(CPU)101は、次のステッチについて処理を行うために、処理をステップS207に戻し、2針目以降について、上記と同様の処理を行う。
つまり、元データの座標が一致する針番号については、微調整後も同じ座標になるように補正する。
【0071】
そして、中央処理演算装置(CPU)101は、1サイクルが終了したと判断した場合(ステップS210)には、微調整処理によって絶対座標になっている送りデータを相対移動量に変換し、ステッチデータの形式に戻す(ステップS211)。
【0072】
<実施例1>
以下、図5から図7を用いて、本発明の実施例1について説明する。
なお、本実施例では、シンプルなステッチの場合の処理について説明する。
【0073】
本実施例において、通常縫いの縫いデータは、図6に示すように、横方向を送り、縦方向を振幅とすると、振幅方向の中央を0.0mmとして、針棒を左右に振る-4.4mm~+4.4mmの振幅位置の座標データと、送り歯で布を前後に送る-5.0mm~+5.0mmの相対移動量のデータからなっている。
また、元データの振幅と相対送りとの関係は、図5に示すようになっている。
図5は、振幅、相対送りを要素とする元データおよび相対送りを累積した絶対送りと、一例としての振幅用および送り用の乱数調整長と、一例としての元データに対して手書き処理を行った後の振幅、絶対送り、相対送りの値を示している。
具体的には、2針目の振幅用の乱数調整長は、0.6であって、機構限界を超えるため、当該0.6の値はキャンセルされ、2針目の手書き処理を行った後の振幅の値は、元データの値4.4がそのまま使われる。
また、2針目の手書き処理を行った後の絶対送りの値は、元データの絶対送りの値2.3に対して、送りの乱数調整量が0.2であるため、2.5となる。
また、2針目の手書き処理を行った後の相対送りの値は、2針目の手書き処理を行った後の絶対送りの値が2.5であり、3針目の手書き処理を行った後の絶対送りの値元データの値4.7であるため、2.2となる。
また、5針目の手書き処理を行った後の振幅の値は、元データの値0.8に対して、振幅の乱数調整量が-0.2であるため、0.6となる。
また、5針目の手書き処理を行った後の絶対送りの値は、元データの値7.0に対して、送りの乱数調整量が0.2であるため、7.2となる。
また、5針目の手書き処理を行った後の相対送りの値は、6針目の手書き処理を行った後の絶対送りの値が6.7であり、5針目の手書き処理を行った後の絶対送りの値元データの値7.2であるため、-0.5となる。
以下、図6の具体例に従い、詳細な処理内容について説明する。
【0074】
本実施例において、布は1針ごとに、送り歯で移動され、数ミリから数十ミリメータの単位模様が形成される。
この単位模様の縫製を連続して繰り返すことにより、複数サイクルの長い模様を縫うことができる。
1サイクルの模様は、相対距離の送りデータを累積して、図5に示すような絶対座標のデータ列で表現することができる。
図5の振幅と絶対送りの座標は、図6の針落ち点の座標を示している。
【0075】
本実施例では、手書き風に見せるため、乱数による数値で各針落ち点のX座標およびY座標を微調整する。
そのため、各針位置に対して、振幅方向の調整値と送り方向の調整値用の乱数とを生成する。
ここで、使用する乱数は整数で0から32767の値であり、この数値を長さの調整値として-1.0mm~+1.0mmの値に換算する。
例えば、下記の数1を用いて換算する。
【0076】
【数1】
【0077】
上記の例では、乱数値(random)を21で割った余りから10を減算し、結果を10で割ることにより、-1.0mm~+1.0mmの0.1mm単位の調整値を作ることができる。
【0078】
また、各針落ち点の振幅と送り用に、乱数を生成し、上記数1で調整長さに換算したものを、一例として、図5の「乱数調整長の振幅用、送り用」欄に記載している。
これらの調整値を「元データの振幅、絶対送り」のそれぞれの座標に加えて、座標を調整する。
但し、加算の結果が機構の限界値を超える場合(図5の塗りつぶし箇所)は無効とし、加算しない。
調整の結果を、一例として、図5の「手書き処理の振幅、絶対送り」に記載する。
更に、絶対送りから相対送り量を求めて、図5に示すように、リスト形式で登録すると、「手書き処理の振幅、相対送り」のデータ列が通常縫いの模様データとなる。
なお、手書き風模様の崩れ方の再現性を重視するならば、乱数ではなく、バラツキのある数値をテーブルとして持っていてもよい。
図7に、通常縫いのステッチ模様(図7(A))と、処理後のステッチ模様(図7(B))と、を示す。
【0079】
<実施例2>
以下、図8から図10を用いて、本発明の実施例2について説明する。
なお、本実施例では、同一点に針落ちがあるステッチの場合の処理について説明する。
ここで、図8は、振幅、相対送りを要素とする元データおよび相対送りを累積した絶対送りと、一例としての振幅用および送り用の乱数調整長と、一例としての元データに対して手書き処理を行った後の振幅、絶対送り、相対送りの値を示している。
具体的には、2針目の手書き処理を行った後の振幅の値は、元データの値-1.6に対して、振幅の乱数調整量が0.0であるため、そのまま-1.6となる。
また、2針目の手書き処理を行った後の絶対送りの値は、元データの値3.2に対して、送りの乱数調整量が0.1であるため、3.3となる。
また、2針目の手書き処理を行った後の相対送りの値は、2針目の手書き処理を行った後の絶対送りの値が3.3であり、3針目の手書き処理を行った後の絶対送りの値元データの値6.3であるため、3.0となる。
また、7針目の振幅用の乱数調整長は、0.4であって、機構限界を超えるため、当該0.4の値はキャンセルされ、7針目の手書き処理を行った後の振幅の値は、元データの値4.4がそのまま使われる。
以下、図9の具体例に従い、詳細な処理内容について説明する。
【0080】
縫いデータを作成する時、デザインの形状によっては、同じ点を複数回経由したい場合がある。
図10に示す星の模様の場合、オリジナルのステッチデータでは、4カ所の針落ち点が重複して縫われている。
重複した点を特別に処理しないと、図10(C)のような縫いイメージとなってしまい、美しくない縫い目ができてしまう。
そこで、本実施例では、上記の問題を解決するため、以下のように、処理を行う。
【0081】
まず、1サイクルの模様は、相対距離の送りデータを累積して、図8に示す「元データの振幅と絶対送り」のような絶対座標のデータ列で表現することができる。
このデータ列から重複する針落ち点を探すと、図8の「元データ」から、1針目と12針目(図9では、この点を「12」と示す)が同じ座標であるため、重複する針落ち点となる。
同様に、2針目と13針目(図9では、この点を「23」と示す)、3針目と14針目(図9では、この点を「34」と示す)、4針目と15針目(図9では、この点を「45」と示す)は同じ点に2回縫い目が形成されることが分かる。
【0082】
次に、乱数による調整長さを求め、一例として、図8の「乱数調整長の振幅用、送り用」に記載する。
手書き処理のため、この調整値を図8の「元データの振幅と絶対送り」に加算する。但し、機構限界を超える場合(図8の塗りつぶし箇所)は、無効とし、加算しない。
【0083】
調整後の振幅と絶対送りを針毎に、一例として、図8の「手書き処理の振幅と絶対送り」に記録し、図8の「元データ」において同一点がある場合は、いずれか1つの調整値を用いて、調整後も同じ座標になるように処理をする。
【0084】
図8の場合、元々、1針目と12針目が同じ針落ち点であるため、調整後の座標も一致するように、例えば、1針目の調整結果を12針目にも適用する。
2針目と13針目、3針目と14針目、4針目と15針目も同様に調整後の座標も一致するように処理する。
この処理により、図10(B)に示すように、星の形状を保ったまま、形状を手書き風に変形することができる。
更に、絶対送りから相対送り量を求めて、図8に示すように、リスト形式で登録すると、一例として、図8の「手書き処理の振幅、相対送り」に示すようなデータ列が通常縫いの模様データとなる。
【0085】
以上、説明したように、本実施形態および本実施例によれば、座標データ作成装置は、座標データを記憶する座標データ記憶部と、座標データ記憶部で記憶された座標データ毎に、座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々独自の値を加算して、模様を崩した新たな座標データを作成する加算後座標データ作成部と、を備え、縫製する模様の針落ち位置のX座標の値とY座標の値とからなる絶対位置の座標データを作成する。
つまり、加算後座標データ作成部により、座標データ記憶部において記憶された座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々独自の値を加算して、模様を崩した新たな座標データを作成する機能を有する。
そのため、1針ごとに適度なばらつきを与えることにより、縫い模様に手書きの風合いを出して、心地よさや温かさが感じられる縫い目を生成することができる。
なお、座標データは、通常縫いあるいは刺繍縫いのいずれの座標データも含む。
また、座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々独自の値を加算する処理は、座標データのX座標の値とY座標の値に対して、夫々独自の値を加算するものであり、独自の値がゼロの場合を考慮すると、例えば、座標データのX座標の値あるいはY座標のいずれか一方に、当該独自の値を加算する処理も含む。
【0086】
また、縫製順序と該縫製順序に対応する座標データとを有する縫製データにおいて同一の座標データがある場合、同一の座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する独自の値は、他の縫製順序の前記同一の座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算した値と同じ値である。
つまり、縫製順序と該縫製順序に対応する座標データとを有する縫製データにおいて同一の座標データがある場合、その同一の座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々同じ値を加算する。
そのため、本来の形状を保ちつつ、手書き風に模様を変形することができる。
また、縫製順序が異なっていても、座標データが同じであれば、付加する値を同じにすることにより、同一点のずれを防止することができる。
さらに、異なる模様の重なり部分のずれを防止することができる。
【0087】
また、座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する独自の値は、模様毎に異なる。
つまり、同じ座標データであっても、模様が異なれば、加算する独自の値が異なる。
そのため、座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する独自の値が、異なるため、模様に応じた複数の縫製データを生成することができる。
また、模様に応じた複数の縫製データを生成できることから、ユーザが好む模様の選択範囲を広げることができる。
【0088】
また、座標データ作成装置は、加算後座標データ作成部で作成された新たな座標データの模様を表示する加算後模様表示部と、加算後模様表示部で表示された模様の座標データを模様毎に保存又は編集する座標データ処理部と、を備える。
つまり、加算後座標データ作成部で作成された新たな座標データの模様を表示する加算後模様表示部を備えることから、新たな座標データの模様を見ながら、その出来栄えを評価することができる。
また、加算後模様表示部で表示された模様の座標データを模様毎に保存又は編集する座標データ処理部を備えることから、加算後模様表示部に表示される新たな座標データの模様を見ながら、ユーザが好みの模様については、その座標データを保存することができる。
また、一方で、加算後模様表示部に表示される新たな座標データの模様が、ユーザの好みとは異なる場合には、座標データの編集(例えば、削除、移動、改変等)を行うことにより、ユーザの好みの模様を見つけて、その座標データを保存することができる。
【0089】
また、座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する独自の値は、一定範囲内の乱数である。
つまり、座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する独自の値として、一定範囲内の乱数を用いることにより、規則性のない複数の模様を作成することができる。
また、任意の値は、模様の成分方向長さに対して、任意の割合以内の値である。
具体的には、規則性のない複数の模様を作成することができることから、ユーザの好みの模様を選択できる範囲が広がる。
【0090】
また、座標データのX座標の値又はY座標の値に夫々加算する独自の値は、一定範囲内の正の値又は負の値である。
そのため、元の模様形状を維持しつつ、手書き風の模様を縫製することができる。
【0091】
また、加算後座標データ作成部で作成された座標データのX座標の値と縫製順序において隣接する加算後座標データ作成部で作成された座標データのX座標の値との間隔は、ミシンにおける機構の制限範囲内の値である。
つまり、加算後座標データ作成部で作成された座標データのX座標の値と縫製順序において隣接する加算後座標データ作成部で作成された座標データのX座標の値との間隔が、ミシンにおける機構の制限範囲を超える場合であっても、絶対的な制約であるミシンにおける機構の制限範囲を厳守するために、当該ミシンにおける機構の制限範囲を超える場合には、例えば、加算後座標データ作成部における加算を無効とする。
そのため、絶対的な制約であるミシンにおける機構の制限範囲を厳守しながら、元の模様形状を維持しつつ、手書き風の模様を縫製することができる。
【0092】
なお、座標データ作成装置の処理をコンピュータシステムあるいはコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを座標データ作成装置に読み込ませ、実行することによって本発明の座標データ作成装置を実現することができる。ここでいうコンピュータシステムあるいはコンピュータとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0093】
また、「コンピュータシステムあるいはコンピュータ」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムあるいはコンピュータから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムあるいはコンピュータに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0094】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムあるいはコンピュータにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0095】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
例えば、座標データ作成装置は、パソコン等の別体の装置であってもよいし、ミシン等に内蔵された装置であってもよい。
【符号の説明】
【0096】
10;座標データ作成装置
101;中央処理演算装置(CPU)
102;ROM
103;作業用メモリ(RAM)
104;表示装置
105;タッチパネル
106;USBコントローラ
107;外部メディア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10