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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20230418BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230418BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/41
A61K8/49
A61Q11/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018213737
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2019119729
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2017251505
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智哉
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/008823(WO,A1)
【文献】特開2014-076988(JP,A)
【文献】特公昭50-000898(JP,B1)
【文献】特開2015-028123(JP,A)
【文献】特開2014-167107(JP,A)
【文献】特開2016-035009(JP,A)
【文献】特開2006-347986(JP,A)
【文献】特許第5910354(JP,B2)
【文献】特開2015-027974(JP,A)
【文献】米国特許第05078916(US,A)
【文献】特表2003-524678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、及び(C):
(A)炭素数16以上18以下のオレフィンスルホン酸又はその塩、
(B)炭素数16以上18以下のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩、及び
(C)塩化セチルピリジニウム、及び塩化ベンザルコニウムから選ばれる1種又は2種のカチオン性殺菌剤 0.001質量%以上1質量%以下
を含有し、成分(A)及び成分(B)の合計含有量が0.01質量%以上4質量%以下であり成分(A)の含有量が成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に3質量%以上50質量%以下であり、かつ成分(C)の含有量と、成分(A)及び成分(B)の合計含有量との質量比((C)/{(A)+(B)})が、0.15以上5以下である口腔用組成物。
【請求項2】
成分(A)におけるスルホン酸基がオレフィン鎖の2位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩と、成分(B)におけるスルホン酸基がアルカン鎖の2位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩との合計含有量が、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に5質量%以上30質量%以下である請求項1記載の口腔用組成物。
【請求項3】
成分(A)の炭素数が16以上18以下であり、かつ成分(B)の炭素数が16以上18以下である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
成分(A)及び成分(B)の合計含有量中、炭素数16のオレフィンスルホン酸又はその塩と炭素数16のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩との合計含有量が、50質量%以上100質量%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
水の含有量が、50質量%以上99質量%以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯垢(プラーク)は、口腔内に存在する細菌が産生する菌体外多糖(EPS)によって形成され、歯垢の内部や深部に細菌が増殖している集塊物であって、いわゆるバイオフィルムの1種として知られており、歯面に強固に定着している。かかる歯垢は、口腔内においてネバツキの発生や口臭の原因ともなり、不快感をもたらすだけでなく、う蝕や歯石、歯周病等の原因にもなりかねない。そのため、こうした歯垢やバイオフィルムを除去すべく、洗浄作用を有する各種界面活性剤を用いつつ、口腔内に適用するための剤や組成物が種々開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、α-オレフィンスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤とデキストラナーゼと糖アルコールとを組み合わせた口腔バイオフィルム除去剤が開示されており、口腔バイオフィルムを分散除去する効果を高めている。また、特許文献2には、炭素数14のα-オレフィンスルホン酸塩と、アシルアミノ酸塩及び/又はアルギニンとを含有する口腔用組成物が開示されており、アニオン界面活性剤特有の苦味を抑制しながら口腔バイオフィルムの除去効果の向上を図っている。かかるα-オレフィンスルホン酸は、特許文献1にも記載されるように、副生物として20質量%以下程度のヒドロキシアルキルスルホン酸塩を含み得ることも知られている。
【0004】
一方、カチオン性殺菌剤は、口腔内に存在するむし歯、歯周病、口臭等の原因となる菌に対して殺菌作用をもたらし、バイオフィルムの形成も有効に抑制できるため、特許文献3にも記載されるように、ポリグリセリン脂肪酸エステル等その他の成分と組み合わせた種々の口腔用組成物も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-20970号公報
【文献】特開2013-151474号公報
【文献】特開2006-117574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献に記載されるようなカチオン性殺菌剤とアニオン界面活性剤とを単に組み合わせるのみでは、口腔用組成物そのもの自体の安定性や、口腔内に適用した際における唾液等への溶解性又は拡散性が低下するおそれが高まり、また歯表面へのカチオン性殺菌剤の吸着性が損なわれ、バイオフィルムの形成抑制効果が充分に発揮されないおそれもある。
【0007】
すなわち、本発明は、カチオン性殺菌剤とアニオン界面活性剤とを併用しながらも、歯表面へのカチオン性殺菌剤の吸着性を高めるとともに、組成物の安定性や口腔内における溶解性又は拡散性を有効に確保することのできる口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、種々検討したところ、アニオン界面活性剤であるオレフィンスルホン酸又はその塩の含有量を制御し、従来副生物として認識されていたにすぎないヒドロキシアルキルスルホン酸又はその塩を多量に存在させつつ、これをカチオン性殺菌剤とともに用いることにより、歯表面へのカチオン性殺菌剤の優れた吸着性と、組成物の良好な安定性や口腔内における優れた溶解性又は拡散性を両立させることのできる口腔用組成物が得られることを見出した。
【0009】
したがって、本発明は、次の成分(A)、(B)、及び(C):
(A)炭素数14以上20以下のオレフィンスルホン酸又はその塩、
(B)炭素数14以上20以下のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩、及び
(C)カチオン性殺菌剤
を含有し、成分(A)及び成分(B)の合計含有量が0.01質量%以上4質量%以下であり、かつ成分(A)の含有量が成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に3質量%以上50質量%以下である口腔用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の口腔用組成物によれば、口腔用組成物そのもの自体の安定性のみならず、口腔用組成物を口腔内に適用した際における唾液等への溶解性又は拡散性を良好に確保しながら、歯表面へのカチオン性殺菌剤の吸着性を飛躍的に高め、優れたバイオフィルムの形成抑制効果を発揮することができ、さらにきめの細かい泡による心地よい泡立ち(以下、良好な「泡立ち性」ともいう)を付与したり、低温保存安定性を一層高めたりすることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の口腔用組成物は、次の成分(A)、(B)、及び(C):
(A)炭素数14以上20以下のオレフィンスルホン酸又はその塩、
(B)炭素数14以上20以下のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩、及び
(C)カチオン性殺菌剤
を含有し、成分(A)及び成分(B)の合計含有量が0.01質量%以上4質量%以下であり、かつ成分(A)の含有量が成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に3質量%以上50質量%以下である。
【0012】
本発明の口腔用組成物は、成分(A)として、炭素数14以上20以下のオレフィンスルホン酸又はその塩を含有する。かかるオレフィンスルホン酸又はその塩は、主鎖に二重結合を有するオレフィンを原料とし、これをスルホン化、中和及び加水分解した後、精製することにより得られる。一方、後述する成分(B)のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩は、成分(A)のヒドロキシ体であり、成分(A)を得る際に生成される成分である。
【0013】
成分(A)のオレフィンスルホン酸又はその塩の炭素数は、歯表面への成分(C)の吸着性を有効に高める観点から、14以上であって、好ましくは16以上である。成分(A)のオレフィンスルホン酸又はその塩の炭素数は、組成物の安定性や口腔内に適用した際における唾液等への溶解性又は拡散性(以下、「組成物の安定性等」とも総称する)を確保する観点から、20以下であって、好ましくは18以下である。なかでも、成分(A)のオレフィンスルホン酸又はその塩の炭素数は、歯表面への成分(C)の吸着性をより一層有効に高める観点からは、16であるのがより好ましく、より良好な泡立ち性を付与する観点からは、18であるのがより好ましい。
なお、かかる炭素数は、原料として用いるオレフィンに由来するものであり、用いる原料に応じて、上記以外の炭素数を有するオレフィンスルホン酸又はその塩が含まれていてもよい。
【0014】
本発明の口腔用組成物は、成分(B)として、炭素数14以上20以下のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩を含有する。成分(B)のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩の炭素数は、歯表面への成分(C)の吸着性を有効に高める観点から、14以上であって、好ましくは16以上である。成分(B)のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩の炭素数は、組成物の安定性等を確保する観点から、20以下であって、好ましくは18以下である。なかでも、成分(B)のオレフィンスルホン酸又はその塩の炭素数は、歯表面への成分(C)の吸着性をより一層有効に高める観点からは、16であるのがより好ましく、より良好な泡立ち性を付与する観点からは、18であるのがより好ましい。
なお、かかる炭素数は、原料として用いるオレフィン(原料オレフィン)に由来するものであり、成分(A)の原料オレフィンとは異なる原料オレフィンを用いてもよく、すなわち成分(A)の炭素数と成分(B)の炭素数とが異なっていてもよい。
【0015】
より具体的には、例えば歯表面への成分(C)の吸着性をより一層効果的に高める観点からは、成分(A)と成分(B)との合計含有量中における、炭素数16のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-1)と炭素数16のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-1)との合計含有量は、好ましくは30~100質量%であり、より好ましくは50~100質量%であり、さらに好ましくは70~100質量%であり、またさらに好ましくは90~100質量%であり、よりさらに好ましくは95~100質量%である。また、組成物により良好な泡立ち性を付与する観点からは、成分(A)と成分(B)との合計含有量中における、炭素数18のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-2)と炭素数18のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-2)との合計含有量は、好ましくは50~100質量%であり、より好ましくは90~100質量%であり、さらに好ましくは95~100質量%である。
なお、これら成分(A)の含有量、及び成分(B)の含有量とは、酸換算量での値を意味し、これらの合計含有量や成分(a-1)、成分(a-2)、成分(b-1)及び成分(b-2)についても同様である。すなわち、例えば成分(A)の含有量は、オレフィンスルホン酸換算量での値を示し、成分(B)の含有量はアルカンスルホン酸換算量での値を示す。
【0016】
本発明の口腔用組成物において、上記成分(A)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計含有量中に3質量%以上50質量%以下である。本発明者は、従来は副生成物として扱われるにすぎず、その含有量も制限されていた成分(B)が、歯表面への成分(C)の吸着性を有効に高めるのに有用な成分でありながらも、成分(C)によって組成物の安定性等が低下するのを効果的に抑制することに着目し、成分(A)を上記含有量とすることによって、成分(B)であるヒドロキシ体の含有量を増大させ、好ましくは成分(A)であるオレフィン体の含有量以上として、バイオフィルム形成抑制効果を飛躍的に高めることを可能とするものである。
【0017】
成分(A)の含有量は、具体的には、歯表面への成分(C)の吸着性を有効に高める観点から、成分(A)と成分(B)との合計含有量中に、50質量%以下であって、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以下である。また、成分(A)の含有量は、組成物の安定性等や生産性を確保する観点から、成分(A)と成分(B)との合計含有量中に、3質量%以上であって、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、さらに好ましくは9質量%以上である。そして、成分(A)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計含有量中に、3質量%以上50質量%以下であって、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは7~45質量%であり、さらに好ましくは9~30質量%であり、よりさらに好ましくは9~25質量%である。
【0018】
なお、成分(A)と成分(B)との合計含有量中における成分(A)の含有量は、高速液体クロマトグラフィー質量分析計(HPLC-MS)を用いて測定することができる。具体的には、有効成分からHPLCによりヒドロキシ体とオレフィン体を分離した後、MSにかけることで成分(A)を同定し、そのHPLC-MSピーク面積から、成分(A)と成分(B)との合計含有量中の成分(A)の含有量を求めることができる。より具体的には、HPLC装置「アジレントテクノロジー1100」(アジレントテクノロジー社製)、カラム「L-columnODS4.6×150mm」(一般財団法人化学物質評価研究機構製)を用い、次の条件で測定することができる。
サンプル調製(メタノールで1000倍希釈)、溶離液A(10mM酢酸アンモニウム添加水)、溶離液B(10mM酢酸アンモニウム添加メタノール)、グラジェント(0min.(A/B=30/70%)→10min.(30/70%)→55min.(0/100%)→65min.(0/100%)→66min.(30/70%)→75min.(30/70%))、MS装置「アジレントテクノロジー1100MS SL(G1946D))」(アジレントテクノロジー社製),MS検出(陰イオン検出 m/z60-1600、UV240nm)。
【0019】
また、組成物の低温保存安定性をより良好に確保する観点からは、成分(A)と成分(B)との合計含有量中における、炭素数16のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-1)と炭素数16のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-1)との合計含有量と、炭素数18のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-2)と炭素数18のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-2)との合計含有量の質量比({(a-1)+(b-1)}/{(a-2)+(b-2)})は、好ましくは0.5以上5以下であり、より好ましくは1.3~4である。
【0020】
さらに、組成物の低温保存安定性をより良好に確保する観点からは、成分(A)と成分(B)との合計含有量中における、炭素数16のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-1)、炭素数18のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-2)、炭素数16のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-1)、並びに炭素数18のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-2)の合計含有量は、好ましくは90~100質量%であり、よりさらに好ましくは95~100質量%である。
【0021】
成分(A)におけるスルホン酸基は、主鎖のオレフィン鎖の1位又は2位、或いはさらにオレフィン鎖の内部にも存在し得るが、歯表面への成分(C)の吸着性を有効に高めつつ組成物の良好な安定性等を確保する観点から、成分(A)には、スルホン酸基がオレフィン鎖の2位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩が含まれていることが好ましい。また、成分(B)におけるスルホン酸基についても同様であり、主鎖のアルカン鎖の1位又は2位、或いはさらにアルカン鎖の内部に存在し得るが、歯表面への成分(C)の優れた吸着性と組成物の良好な安定性等を兼ね備える観点から、成分(B)には、スルホン酸基がアルカン鎖の2位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩が含まれていることが好ましい。
【0022】
具体的には、成分(A)におけるスルホン酸基がオレフィン鎖の2位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩と、成分(B)におけるスルホン酸基がアルカン鎖の2位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩との合計含有量は、歯表面への成分(C)の吸着性を有効に高める観点から、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、よりさらに好ましくは15質量%以上である。また、成分(A)におけるスルホン酸基がオレフィン鎖の2位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩と、成分(B)におけるスルホン酸基がアルカン鎖の2位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩との合計含有量は、組成物の安定性等及び生産性等の観点から、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下である。そして、成分(A)におけるスルホン酸基がオレフィン鎖の2位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩と、成分(B)におけるスルホン酸基がアルカン鎖の2位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩との合計含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは8~30質量%であり、さらに好ましくは10~25質量%であり、よりさらに好ましくは15~25質量%である。
なお、これらスルホン酸基がオレフィン鎖の2位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩の含有量、及びこれらの合計含有量も、すべて酸換算量での値を意味し、スルホン酸基がアルカン鎖の2位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩の含有量、及びこれらの合計含有量についても同様である。
【0023】
成分(A)におけるスルホン酸基がオレフィン鎖の1位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩と、成分(B)におけるスルホン酸基がアルカン鎖の1位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩との合計含有量は、組成物の安定性等及び生産性等の観点から、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上であり、よりさらに好ましくは2.5質量%以上である。また、成分(A)におけるスルホン酸基がオレフィン鎖の1位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩と、成分(B)におけるスルホン酸基がアルカン鎖の1位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩との合計含有量は、歯表面への成分(C)の吸着性を有効に高める観点から、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。そして、成分(A)におけるスルホン酸基がオレフィン鎖の1位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩と、成分(B)におけるスルホン酸基がアルカン鎖の1位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩との合計含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、好ましくは1~20質量%であり、より好ましくは1.5~10質量%であり、さらに好ましくは2~5質量%であり、よりさらに好ましくは2.5~5質量%である。
【0024】
また、成分(A)及び成分(B)中には、組成物の安定性及び生産性等の観点から、上記スルホン酸基がオレフィン鎖の1位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩、スルホン酸基がアルカン鎖の1位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩、スルホン酸基がオレフィン鎖の2位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩、及びスルホン酸基がアルカン鎖の2位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩以外に、オレフィン鎖の1位及び2位以外の位置にスルホン酸基が存在するオレフィンスルホン酸又はその塩、及びアルカン鎖の1位及び2位以外の位置にスルホン酸基が存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩を含有することが好ましい。
【0025】
なお、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中の、成分(A)におけるスルホン酸基がオレフィン鎖の1位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩と、成分(B)におけるスルホン酸基がアルカン鎖の1位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩との合計含有量、或いは成分(A)におけるスルホン酸基がオレフィン鎖の2位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩と、成分(B)におけるスルホン酸基がアルカン鎖の2位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩との合計含有量は、いずれもガスクロマトグラフィー(GC)を用いて得られる各成分のピーク面積比を元に、求めることができる。
具体的には、成分(A)、(B)に対してトリメチルシリルジアゾメタンを反応させることによりメチルエステル化誘導体とした後、各成分をGCで分離する。各成分のピーク面積比を質量比として、スルホン酸基が2位に存在する内部オレフィンスルホン酸又はその塩の含有量を算出する。測定に使用する装置及び分析条件は、次の通りである。
GC装置「アジレントテクノロジー6850」(アジレントテクノロジー社製)、カラム「HP-1キャピラリーカラム」(30m×320μm×0.25μm,アジレントテクノロジー社製)、検出器(水素炎イオン検出器(FID))、インジェクション温度300℃、ディテクター温度300℃、He流量1.0mL/min.、オーブン(60℃(0min.)→10℃/min.→300℃(10min.)。
【0026】
本発明の口腔用組成物において、有効成分である成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、歯表面への成分(C)の優れた吸着性を確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、0.01質量%以上であって、好ましくは0.03質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.08質量%以上である。また、成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、組成物の安定性等を担保し、かつ口腔内適用時における刺激性、及び苦味や渋味等の為害性の発現を抑制する観点から、本発明の口腔用組成物中に、4質量%以下であって、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下である。そして、成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、本発明の口腔用組成物中に、0.01質量%以上4質量%以下であって、好ましくは0.03~3質量%であり、より好ましくは0.05~1質量%であり、さらに好ましくは0.1~0.3質量%である。
【0027】
成分(A)及び成分(B)は、炭素数14以上20以下の原料オレフィンをスルホン化した後、中和し、次いで加水分解した後、得られた分解物を精製する工程を経ることにより得ることができる。
スルホン化、中和、加水分解の条件には特に制限はなく、例えば、特許第1633184号公報、特許第2625150号公報、Tenside Surf.Det.31(5)299(1994)に記載の条件を参照することができる。また、上記加水分解を経ることにより得られた分解物を精製する工程としては種々の方法を用いることができるが、かかる精製する工程は、非極性溶媒を添加して油相分離した後の水相に含まれる成分(A)及び成分(B)を抽出する工程を備えるのが好ましい。すなわち、具体的には、加水分解により得られた分解物をエタノールに分散させ、そして非極性溶媒を添加する工程、及びその後に油相を分離する工程を備え、さらに分離された後の水相から成分(A)及び成分(B)を抽出する工程を備える。上記非極性溶媒としては、石油エーテル、ヘキサン、トルエン等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。また、油相を分離する工程は、複数回行ってもよい。分離された水相から成分(A)及び成分(B)を抽出する工程としては、水を蒸発させる手段、水相の析出物を除去する手段が挙げられる。
なお、成分(A)の原料オレフィンと成分(B)の原料オレフィンは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
原料オレフィンをスルホン化し、中和し、加水分解した後、非極性溶媒を添加して油相分離した後の水相から抽出することにより、成分(A)及び成分(B)を得る場合、成分(A)及び成分(B)の原料であるオレフィン中における二重結合が2位に存在するオレフィンの含有量は、歯表面への成分(C)の吸着性を有効に高める観点から、成分(A)及び成分(B)の原料オレフィン全量中に、合計で好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。また、成分(A)及び成分(B)の原料オレフィン中における二重結合が2位に存在するオレフィンの含有量は、組成物の安定性等の確保、生産コストの低減、及び生産性向上の観点から、成分(A)及び成分(B)の原料オレフィン全量中に、合計で好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0029】
また、歯表面への成分(C)の吸着性をより一層高める観点、及び泡立ち性等の向上を加味する観点から、成分(A)及び成分(B)の原料であるオレフィン中に含まれる二重結合が1位に存在するオレフィン、いわゆるα-オレフィンの含有量は、成分(A)及び成分(B)の原料オレフィン全量中に、合計で好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、下限値としては0.1質量%以上であってもよく、又は0.2質量%以上であってもよい。
【0030】
なお、原料であるオレフィン中における二重結合の分布は、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MSと省略)により測定することができる。具体的には、ガスクロマトグラフ分析計(以下、GCと省略)により炭素鎖長及び二重結合位置の異なる各成分を正確に分離し、それぞれを質量分析計(以下、MSと省略)にかけることで、その二重結合位置を同定することができ、そのGCピーク面積から各々の割合を求めることができる。
【0031】
上記スルホン化反応は、原料であるオレフィン1モルに対し、三酸化硫黄ガスを1.0~1.2モル反応させることにより行うことができる。反応温度は、20~40℃で行うことが好ましい。中和は、スルホン酸基の理論値に対し1.0~1.5モル倍量の水酸化ナトリウム、アンモニア、2-アミノエタノール等のアルカリ水溶液を反応させることにより行なわれる。加水分解反応は、水の存在下90~200℃で3~4時間反応を行えばよい。これらの反応は、連続して行うことができる。加水分解反応終了後、不純物を抽出除去し、適宜洗浄等をすることにより、成分(A)及び成分(B)を各々精製することができる。
【0032】
本発明の口腔用組成物において、成分(A)及び成分(B)を含むアニオン界面活性剤の総含有量は、口腔内適用時における刺激性や為害性の発現を抑制し、使用者が快適に使用できる観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以下である。
【0033】
本発明の口腔用組成物は、成分(C)として、カチオン性殺菌剤を含有する。カチオン性殺菌剤とアニオン界面活性剤とを併用した従来の口腔用組成物であると、組成物の安定性等が低下するおそれが高まり、歯表面へのカチオン性殺菌剤の吸着性も損なわれてしまうところ、本発明では、特定の量的関係を有する上記成分(A)及び成分(B)とともに成分(C)のカチオン性殺菌剤を用いることにより、歯表面への成分(C)の吸着性を有効に高め、組成物の良好な安定性や口腔内における優れた溶解性又は拡散性を確保して、優れたバイオフィルムの形成抑制効果を発揮することができる。
【0034】
成分(C)としては、具体的には、優れたバイオフィルムの形成抑制効果を確保する観点から、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化ベンザルコニウムから選ばれる1種又は2種以上であるのが好ましく、塩化セチルピリジニウム、及び塩化ベンザルコニウムから選ばれる1種又は2種以上であるのがより好ましく、塩化セチルピリジニウムであるのがさらに好ましい。
【0035】
成分(C)の含有量は、歯表面への成分(C)の優れた吸着性を確保して、バイオフィルムの形成抑制効果を向上させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.015質量%以上であり、またさらに好ましくは0.02質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、組成物の安定性等を確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、またさらに好ましくは0.08質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.05質量%以下であり、ことさらに好ましくは0.04質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.001~1質量%であり、より好ましくは0.005~0.5質量%であり、さらに好ましくは0.01~0.1質量%であり、0.015~0.08質量%であり、よりさらに好ましくは0.015~0.05質量%であり、またさらに好ましくは0.02~0.04質量%である。
【0036】
成分(C)の含有量と、成分(A)及び成分(B)の合計含有量との質量比((C)/{(A)+(B)})は、歯表面への成分(C)の優れた吸着性を確保する観点から、好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.01以上であり、さらに好ましくは0.05以上であり、よりさらに好ましくは0.08以上であり、またさらに好ましくは0.1以上であり、ことさらに好ましくは0.15以上であり、ことさらに好ましくは0.2以上である。また、成分(C)の含有量と、成分(A)及び成分(B)の合計含有量との質量比((C)/{(A)+(B)})は、組成物の安定性等を確保する観点から、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは1以下であり、よりさらに好ましくは0.8以下であり、またさらに好ましくは0.5以下であり、ことさらに好ましくは0.4以下である。そして、成分(C)の含有量と、成分(A)及び成分(B)の合計含有量との質量比((C)/{(A)+(B)})は、好ましくは0.001~5であり、より好ましくは0.01~3であり、さらに好ましくは0.05~1であり、よりさらに好ましくは0.08~0.8であり、よりさらに好ましくは0.1~0.5であり、ことさらに好ましくは0.15~0.4であり、ことさらに好ましくは0.2~0.4である。
【0037】
本発明の口腔用組成物の形態としては、口中に適用できるものであれば特に制限されず、洗口剤や液状歯磨剤等の液体口腔用組成物、又は練り歯磨剤や粉歯磨剤等の歯磨組成物として用いることができる。なかでも、組成物の安定性等、すなわち組成物における各成分の優れた溶解性を確保させ、歯表面への成分(C)の吸着性を効果的に高めてバイオフィルムの形成抑制効果を充分に発揮させる観点から、洗口剤、液状歯磨剤から選ばれる液体口腔用組成物であるのが好ましい。
【0038】
本発明の口腔用組成物は、上記成分のほか、水を含有する。これにより、成分(A)~成分(C)を溶解又は分散させつつ口腔内で良好に拡散させ、成分(C)の歯表面への吸着を促進することができる。
【0039】
水の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは97質量%以下であり、さらに好ましくは95質量%以下である。
より具体的には、例えば、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、かかる水の含有量は、本発明の液体口腔用組成物100質量%中に、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。本発明の液体口腔用組成物100質量%中の水の含有量は、他の成分の残部であり、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは97質量%以下であり、さらに好ましくは95質量%未満である。また、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、かかる水の含有量は、本発明の歯磨組成物100質量%中に、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは65質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。
【0040】
本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、その水分量は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業(株))を用いることができる。この装置では、歯磨組成物を5gとり、無水メタノール25gに懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。
【0041】
本発明の口腔用組成物は、組成物の安定性等を確保しつつ、成分(A)、成分(B)、成分(C)による口腔内においてピリピリと感じられるような刺激性や為害性等の不快感の抑制効果をより増強し、良好な風味をもたらす観点から、ソルビトールを含有するのが好ましい。かかるソルビトールの含有量は、不快感の抑制効果を高め、良好な風味をもたらす観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。また、ソルビトールの含有量は、みずみずしい使用感と香味をもたらす観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、よりさらに好ましくは30質量%以下である。さらにソルビトールの含有量は、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合には、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下である。そして、ソルビトールの含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは2~60質量%であり、より好ましくは4~50質量%であり、さらに好ましくは5~40質量%であり、よりさらに好ましくは5~30質量%である。さらにソルビトールの含有量は、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合には、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは2~15質量%であり、より好ましくは4~10質量%であり、さらに好ましくは4~7質量%である。
【0042】
ソルビトールの含有量と、成分(A)及び成分(B)の合計含有量との質量比(ソルビトール/{(A)+(B)})は、歯表面への成分(C)の優れた吸着性を確保する観点から、組成物の安定性等を確保する観点から、好ましくは10以上であり、より好ましくは100以上であり、さらに好ましくは150以上である。また、ソルビトールの含有量と、成分(A)及び成分(B)の合計含有量との質量比((ソルビトール/{(A)+(B)})は、歯表面への成分(C)の優れた吸着性を確保する観点から、好ましくは2000以下であり、より好ましくは800以下であり、さらに好ましくは400以下である。そして、ソルビトールの含有量と、成分(A)及び成分(B)の合計含有量との質量比(ソルビトール/{(A)+(B)})は、好ましくは10以上2000以下であり、より好ましくは100~800であり、さらに好ましくは150~400である。
【0043】
本発明の口腔用組成物は、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム等のフッ素イオン供給化合物、及び/又はモノフルオロリン酸ナトリウム等の含フッ素化合物を含有することができる。
フッ素イオン供給化合物の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、フッ素原子換算で、好ましくは100~20000ppmであり、より好ましくは500~5000ppmであり、さらに好ましくは800~1500ppmである。
【0044】
本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合は、さらにアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体等の粘結剤;増粘性シリカ(JIS K5101-13-2に準ずる方法により測定される吸油量が、200~400mL/100g);リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、研磨性シリカ(JIS K5101-13-2に準ずる方法により測定される吸油量が、50~150mL/100g)等の研磨剤を含有することができる。
【0045】
本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、歯表面への成分(C)の優れた吸着性と組成物の良好な安定性等を保持しつつ良好な使用感をもたらす観点から、好ましくは6以上であり、より好ましくは6.5以上であり、さらに好ましくは7以上である。また、本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、為害性等を防止する観点から、好ましくは11以下であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは9.5以下である。そして、本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、好ましくは6~11であり、より好ましくは6.5~10であり、さらに好ましくは7~9.5である。
なお、本発明の口腔用組成物のpHは、pH電極を用いて25℃で測定した値であり、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合には、イオン交換水又は蒸留水からなる精製水により10質量%の濃度の水溶液に調整した後に測定した値を意味する。
【0046】
本発明の口腔用組成物は、さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、成分(A)及び成分(B)以外の界面活性剤;リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト等の研磨成分;グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の湿潤剤;甘味剤;香料;pH調整剤;その他有効成分等を含有することができる。
【0047】
本発明の口腔用組成物は、歯表面への成分(C)の吸着性を有効に高め、かつ組成物の良好な安定性を保持する観点から、次の成分(A)~(D):
(A)炭素数14以上20以下のオレフィンスルホン酸又はその塩、
(B)炭素数14以上20以下のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩、
(C)カチオン性殺菌剤 0.001~1質量%
(D)水
を含有し、組成物中における成分(A)及び成分(B)の合計含有量が0.03質量%以上3質量%以下であり、かつ成分(A)の含有量が成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に3質量%以上50質量%以下であり、
さらに炭素数16のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-1)と炭素数16のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-1)との合計含有量が成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に90~100質量%であり、かつ成分(C)の含有量と成分(A)及び成分(B)の合計含有量との質量比((C)/{(A)+(B)})が0.05以上1以下である口腔用組成物であることが最も好ましい。
【0048】
本発明の口腔用組成物は、組成物のより良好な泡立ち性を付与する観点から、次の成分(A)~(D):
(A)炭素数14以上20以下のオレフィンスルホン酸又はその塩、
(B)炭素数14以上20以下のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩、
(C)カチオン性殺菌剤 0.001~1質量%
(D)水 70~99質量%
を含有し、組成物中における成分(A)及び成分(B)の合計含有量が0.03質量%以上3質量%以下であり、かつ成分(A)の含有量が成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に3質量%以上50質量%以下であり、
さらに炭素数18のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-2)と炭素数18のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-2)との合計含有量が成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に90~100質量%であり、かつ
成分(C)の含有量と成分(A)及び成分(B)の合計含有量との質量比((C)/{(A)+(B)})が0.05以上1以下である液体口腔用組成物であることが最も好ましい。
【0049】
本発明の口腔用組成物は、組成物の低温保存安定性を一層高める観点から、次の成分(A)~(D):
(A)炭素数14以上20以下のオレフィンスルホン酸又はその塩、
(B)炭素数14以上20以下のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩、
(C)カチオン性殺菌剤 0.001~1質量%
(D)水
を含有し、組成物中における成分(A)及び成分(B)の合計含有量が0.03質量%以上3質量%以下であり、かつ成分(A)の含有量が成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に3質量%以上50質量%以下であり、
さらに成分(A)と成分(B)との合計含有量中における、炭素数16のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-1)、炭素数18のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-2)、炭素数16のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-1)、並びに炭素数18のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-2)の合計含有量が90~100質量%であり、
成分(A)と成分(B)との合計含有量中における、成分(a-1)と成分(b-1)との合計含有量と成分(a-2)と成分(b-2)との合計含有量の質量比({(a-1)+(b-1)}/{(a-2)+(b-2)})が0.5以上5以下であり、かつ
成分(C)の含有量と成分(A)及び成分(B)の合計含有量との質量比((C)/{(A)+(B)})が0.05以上1以下である口腔用組成物であることが最も好ましい。
【0050】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の口腔用組成物を開示する。
[1]次の成分(A)、(B)、及び(C):
(A)炭素数14以上20以下のオレフィンスルホン酸又はその塩、
(B)炭素数14以上20以下のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩、及び
(C)カチオン性殺菌剤
を含有し、成分(A)及び成分(B)の合計含有量が0.01質量%以上4質量%以下であり、かつ成分(A)の含有量が成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に3質量%以上50質量%以下である口腔用組成物。
[2]成分(A)の炭素数は、好ましくは16以上であり、好ましくは18以下であり、或いは16であってもよく、18であってもよい上記[1]の口腔用組成物。
[3]成分(B)の炭素数は、好ましくは16以上であり、好ましくは18以下であり、或いは16であってもよく、18であってもよい上記[1]又は[2]の口腔用組成物。
【0051】
[4]成分(A)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計含有量中に、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以下であり、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、さらに好ましくは9質量%以上である上記[1]~[3]いずれか1の口腔用組成物。
[5]成分(A)と成分(B)との合計含有量中における、炭素数16のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-1)と炭素数16のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-1)との合計含有量は、好ましくは30~100質量%であり、より好ましくは50~100質量%であり、さらに好ましくは70~100質量%であり、またさらに好ましくは90~100質量%であり、よりさらに好ましくは95~100質量%である上記[1]~[4]いずれか1の口腔用組成物。
[6]成分(A)と成分(B)との合計含有量中における、炭素数18のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-2)と炭素数18のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-2)との合計含有量は、好ましくは50~100質量%であり、より好ましくは90~100質量%であり、さらに好ましくは95~100質量%である上記[1]~[4]いずれか1の口腔用組成物。
【0052】
[7]炭素数16のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-1)と炭素数16のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-1)との合計含有量と、炭素数18のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-2)と炭素数18のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-2)との合計含有量の質量比({(a-1)+(b-1)}/{(a-2)+(b-2)})は、好ましくは0.5以上5以下であり、より好ましくは1.3~4である上記[1]~[6]いずれか1の口腔用組成物。
[8]成分(A)と成分(B)との合計含有量中における、炭素数16のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-1)、炭素数18のオレフィンスルホン酸又はその塩(a-2)、炭素数16のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-1)、並びに炭素数18のヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(b-2)の合計含有量は、好ましくは90~100質量%であり、よりさらに好ましくは95~100質量%である上記[1]~[7]いずれか1の口腔用組成物。
[9]成分(A)におけるスルホン酸基がオレフィン鎖の2位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩と、成分(B)におけるスルホン酸基がアルカン鎖の2位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩との合計含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、よりさらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下である上記[1]~[8]いずれか1の口腔用組成物。
[10]成分(A)におけるスルホン酸基がオレフィン鎖の1位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩と、成分(B)におけるスルホン酸基がアルカン鎖の1位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩との合計含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上であり、よりさらに好ましくは2.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である上記[1]~[9]いずれか1の口腔用組成物。
【0053】
[11]成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、好ましくは0.03質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.08質量%以上であり、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下である上記[1]~[10]いずれか1の口腔用組成物。
[12]成分(A)及び成分(B)の原料であるオレフィン中に含まれる二重結合が1位に存在するオレフィンの含有量は、成分(A)及び成分(B)の原料オレフィン全量中に、合計で好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、下限値としては0.1質量%以上であってもよく、又は0.2質量%以上であってもよい上記[1]~[11]いずれか1の口腔用組成物。
【0054】
[13]成分(C)は、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化ベンザルコニウムから選ばれる1種又は2種以上であるのが好ましく、塩化セチルピリジニウムであるのがより好ましい上記[1]~[12]いずれか1の口腔用組成物。
[14]成分(C)の含有量は、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.015質量%以上であり、またさらに好ましくは0.02質量%以上であり、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、またさらに好ましくは0.08質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.05質量%以下であり、ことさらに好ましくは0.04質量%以下である上記[1]~[13]いずれか1の口腔用組成物。
[15]成分(C)の含有量と、成分(A)及び成分(B)の合計含有量との質量比((C)/{(A)+(B)})は、好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.01以上であり、さらに好ましくは0.05以上であり、よりさらに好ましくは0.08以上であり、またさらに好ましくは0.1以上であり、ことさらに好ましくは0.15以上であり、ことさらに好ましくは0.2以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは1以下であり、よりさらに好ましくは0.8以下であり、またさらに好ましくは0.5以下であり、ことさらに好ましくは0.4以下である上記[1]~[14]いずれか1の口腔用組成物。
[16]水の含有量は、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは97質量%以下であり、さらに好ましくは95質量%以下である上記[1]~[15]いずれか1の口腔用組成物。
【0055】
[17]さらにソルビトールを含有し、その含有量は、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、よりさらに好ましくは30質量%以下である上記[1]~[16]いずれか1の口腔用組成物。
[18]ソルビトールの含有量と、成分(A)及び成分(B)の合計含有量との質量比(ソルビトール/{(A)+(B)})は、好ましくは10以上であり、より好ましくは100以上であり、さらに好ましくは150以上であり、好ましくは2000以下であり、より好ましくは800以下であり、さらに好ましくは400以下である上記[1]~[17]いずれか1の口腔用組成物。
[19]フッ素イオン供給化合物の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、フッ素原子換算で、好ましくは100~20000ppmであり、より好ましくは500~5000ppmであり、さらに好ましくは800~1500ppmである上記[1]~[18]いずれか1の口腔用組成物。
[20]25℃におけるpHは、好ましくは6以上であり、より好ましくは6.5以上であり、さらに好ましくは7以上であり、好ましくは11以下であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは9.5以下である上記[1]~[19]いずれか1の口腔用組成物。
【実施例
【0056】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
なお、各物性については、以下の方法を用いた。
【0057】
《原料オレフィンの二重結合位置の測定方法》
原料オレフィンの二重結合位置は、ガスクロマトグラフィー(以下、GCと省略)により測定した。具体的には、原料オレフィンに対し、ジメチルジスルフィドを反応させることでジチオ化誘導体とした後、各成分をGCで分離した。それぞれのピーク面積より原料オレフィンの二重結合位置を求めた。
なお、測定に使用した装置及び分析条件は次の通りである。GC装置(商品名:HP6890,HEWLETT PACKARD社製)、カラム(商品名:Ultra-Alloy-1HTキャピラリーカラム30m×250μm×0.15μm,フロンティア・ラボ株式会社製)、検出器(水素炎イオン検出器(FID))、インジェクション温度300℃、ディテクター温度350℃、He流量4.6mL/min.
【0058】
《成分(A)(オレフィン体)と成分(B)(ヒドロキシ体)との合計含有量中における成分(A)の含有量の測定方法》
かかる成分(A)の含有量は、HPLC-MSにより測定した。具体的には、HPLCによりヒドロキシ体とオレフィン体を分離し、オレフィン体をMSにかけることで同定した。そのHPLC-MSピーク面積からオレフィン体の割合を求めた。
なお、測定に使用した装置および条件は次の通りである。HPLC装置(商品名:アジレントテクノロジー1100、アジレントテクノロジー社製)、カラム(商品名:L-columnODS4.6×150mm、一般財団法人化学物質評価研究機構製)、サンプル調製(メタノールで1000倍希釈)、溶離液A(10mM酢酸アンモニウム添加水)、溶離液B(10mM酢酸アンモニウム添加メタノール)、グラジェント(0min.(A/B=30/70%)→10min.(30/70%)→55min.(0/100%)→65min.(0/100%)→66min.(30/70%)→75min.(30/70%))、MS装置(商品名:アジレントテクノロジー1100MS SL(G1946D)),MS検出(陰イオン検出 m/z60-1600、UV240nm)
【0059】
《スルホン酸基が2位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩、及びヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩の含有量の測定方法》
スルホン酸基の結合位置は、GCにより測定した。具体的には、オレフィンスルホン酸塩及びヒドロキシアルカンスルホン酸塩に対し、トリメチルシリルジアゾメタンを反応させることでメチルエステル化誘導体とした後、各成分をGCで分離した。それぞれのピーク面積比を質量比として、スルホン酸基が2位に存在するオレフィンスルホン酸又はその塩、並びにヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩の含有量を算出し、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中における含有量を求めた。
なお、測定に使用した装置および分析条件は次の通りである。GC装置(商品名:アジレントテクノロジー6850,アジレントテクノロジー社製)、カラム(商品名:HP-1キャピラリーカラム30m×320μm×0.25μm,アジレントテクノロジー社製)、検出器(水素炎イオン検出器(FID))、インジェクション温度300℃、ディテクター温度300℃、He流量1.0mL/min.、オーブン(60℃(0min.)→10℃/min.→300℃(10min.)。
【0060】
[製造例A:炭素数16、2重結合2位30.4質量%の原料オレフィンの合成]
攪拌装置付きフラスコに1-ヘキサデカノール(製品名:カルコール6098、花王株式会社製)7000g(28.9モル)、固体酸触媒としてγ―アルミナ(STREM Chemicals,Inc社)700g(原料アルコールに対して10質量%)を仕込み、攪拌下、280℃にて系内に窒素(7000mL/min.)を流通させながら3時間、反応を行った。反応終了後のアルコール転化率は100%、炭素数16(C16)の原料オレフィン純度は99.6%であった。得られた粗原料オレフィンを蒸留用フラスコに移し、136-160℃/4.0mmHgで蒸留することでオレフィン純度100%の精製C16原料オレフィンを得た。得られた原料オレフィンの二重結合分布は、C1位1.8質量%、C2位30.4質量%、C3位23.9質量%、C4位16.8質量%、C5位12.0質量%、C6位7.4質量%、C7、8位の合計が7.8質量%であった。
【0061】
[製造例B:炭素数18、2重結合2位31.3質量%の原料オレフィンの合成]
攪拌装置付きフラスコに1-オクタデカノール(製品名:カルコール8098、花王株式会社製)7000g(25.9モル)、固体酸触媒としてγ―アルミナ(STREM Chemicals,Inc社)700g(原料アルコールに対して10質量%)を仕込み、攪拌下、280℃にて系内に窒素(7000mL/min.)を流通させながら10時間、反応を行った。反応終了後のアルコール転化率は100%、炭素数18(C18)の原料オレフィン純度は98.2%であった。得られた粗原料オレフィンを蒸留用フラスコに移し、148-158℃/0.5mmHgで蒸留することでオレフィン純度100%の精製原料オレフィンを得た。得られた原料オレフィンの二重結合分布は、C1位0.8質量%、C2位31.3質量%、C3位22.9質量%、C4位15.5質量%、C5位10.8質量%、C6位7.2質量%、C7位5.3質量%,C8、9位の合計が6.2質量%であった。
【0062】
[製造例C:炭素数16/18(質量比79.4/20.6)、2重結合2位27.8質量%の原料オレフィンの合成]
製造例Aと同様の方法を用い、適宜反応時間を調整することによって、炭素数16(C16)の原料オレフィン(二重結合分布は、C1位0.5質量%、C2位30.1質量%、C3位25.5質量%、C4位18.9質量%、C5位11.1質量%、C6位7.0質量%、C7、8位の合計が7.0質量%)を得た。
また、製造例Bと同様の方法を用い、適宜反応時間を調整することによって、炭素数18(C18)の原料オレフィン(二重結合分布は、C1位0.3質量%、C2位19.0質量%、C3位17.6質量%、C4位17.4質量%、C5位14.9質量%、C6位12.3質量%、C7位8.8質量%、C8、9位の合計が9.8質量%)を得た。
得られたC16原料オレフィン11.9kgとC18原料オレフィン3.1kgとを混合することでC16/18(質量比79.4/20.6)原料オレフィン15.0kgを得た。この原料オレフィンの二重結合分布は、C1位0.4質量%、C2位27.8質量%、C3位23.9質量%、C4位18.6質量%、C5位11.9質量%、C6位8.1質量%、C7位4.6質量%、C8位3.8質量%、C9位1.0質量%であった。
【0063】
[製造例I:C16の成分(A)及び成分(B)の製造]
製造例Aで得たC16の原料オレフィン(二重結合が2位に存在する原料オレフィンの含有量が30.4質量%)を、外部にジャケットを有する薄膜式スルホン化反応器に入れ、反応器外部ジャケットに20℃の冷却水を通液する条件下で三酸化硫黄ガスを用いてスルホン化反応を行った。スルホン化反応の際のSO3/原料オレフィンのモル比は1.09に設定した。得られたスルホン化物を、理論酸価に対し1.5モル倍量の水酸化ナトリウムで調製したアルカリ水溶液へ添加し、攪拌しながら30℃、1時間中和した。中和物をオートクレーブ中で160℃、3.5時間加熱することで加水分解を行い、C16の粗生成物として成分(A)及び成分(B)を得た。該粗生成物300gを分液漏斗に移し、エタノール300mLを加えた後、1回あたり石油エーテル300mLを加えて油溶性の不純物を抽出除去した。この際、エタノールの添加により油水界面に析出した無機化合物(主成分は芒硝)も、油水分離操作により水相から分離除去した。この抽出除去操作を3回行った。次いで、水相側を蒸発乾固することで、C16の成分(A)及び成分(B)を得た。
得られた成分(A)及び成分(B)全量中における成分(A)の含有量は、10質量%であった。また、得られた成分(A)及び成分(B)全量中に残存する原料オレフィンの含有量は100ppm未満(GC検出下限未満)、無機化合物は1.9質量%であった。また、成分(A)及び成分(B)全量中における、スルホン酸基が2位に存在するオレフィンスルホン酸塩、及びスルホン酸基が2位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸塩の合計含有量は、20.3質量%であった。
【0064】
[製造例II:C18の成分(A)及び成分(B)の製造]
製造例Bで得たC18の内部オレフィン(二重結合が2位に存在する原料オレフィンの含有量が31.3質量%)から、製造例Iと同様の条件でC18の成分(A)及び成分(B)を得た。
得られた成分(A)及び成分(B)全量中の成分(A)の含有量は、20質量%であった。また、成分(A)及び成分(B)全量中に残存する原料内部オレフィンの含有量は100ppm未満(GC検出下限未満)、無機化合物は0.9質量%であった。また、成分(A)及び成分(B)全量中における、スルホン酸基が2位に存在するオレフィンスルホン酸塩、及びスルホン酸基が2位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸塩の合計含有量は、21.4質量%であった。
【0065】
[製造例III:C16/18の成分(A)及び成分(B)の製造]
製造例Cで得たC16/18の原料オレフィン(二重結合が2位に存在する原料オレフィンの含有量が27.8質量%)を出発原料とし、製造例Iと同様の方法によりC16/18の成分(A)及び成分(B)を得た。得られた成分(A)及び成分(B)全量中の成分(A)の含有量は、14質量%であった。また、成分(A)及び成分(B)全量中に残存する原料オレフィンの含有量は100ppm未満(GC検出下限未満)、無機化合物は1.2質量%であった。また、成分(A)及び成分(B)全量中における、スルホン酸基が2位に存在するオレフィンスルホン酸塩、及びスルホン酸基が2位に存在するヒドロキシアルカンスルホン酸塩の合計含有量は、17.6質量%であった。
【0066】
[製造例IV:C16/18の成分(A)及び成分(B)の製造]
製造例Iで得た成分(A)及び成分(B)と製造例IIで得た成分(A)及び成分(B)とを59.6/40.4(質量比)で混合した。
【0067】
[製造例V:C16/18の成分(A)及び成分(B)の製造]
製造例Iで得た成分(A)及び成分(B)と製造例IIで得た成分(A)及び成分(B)とを36.3/63.7(質量比)で混合した。
【0068】
上記製造例I~Vで得られた各成分(A)及び成分(B)の物性を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
[実施例1~9、比較例1~3]
表2に示す処方にしたがい、各組成物を調製した。次いで、得られた各組成物を用い、下記試験方法にしたがって各評価を行った。
結果を表2に示す。
【0071】
《安定性試験》
表2に示す各組成物を調製後、50℃にて2週間放置したときの液(組成物)の性状を肉眼により下記に示す判断基準にて評価した。
A:透明
B:やや透明
C:分離
【0072】
《成分(C)の歯表面への吸着試験》
歯表面のモデルとしてエナメル質の主成分であるハイドロキシアパタイト(HA)粉末(太平化学産業;以下、HAと略す)を用いた。10mgのHAを表2に示す各組成物1mLに30秒間浸漬後、イオン交換水2mLにて洗浄し、HAに吸着した殺菌剤を65%アセトニトリル溶液で抽出したものを高速液体クロマトグラフィ(ODSカラム:Superspher100(関東化学製)、流速:1mL/min、測定波長:210nm)にて定量し、吸着量(μmol/cm2)を算出した。なお、組成物が歯磨剤の場合は、精製水にて4倍に希釈したものを試験に用いる。
【0073】
《バイオフィルム形成抑制効果の評価》
1)組成物による処理
HAp基板(コスモ・バイオ製、1cm角)の片面を40μm、12μm、3μmの研磨紙を用いて鏡面研磨した後、1N HClに1分間浸漬して酸脱灰処理を施した。処理後のHAp板をイオン交換水で洗浄して乾燥し、24穴プレートに入れ、実施例及び比較例で得られた各組成物1mLを添加して5分間振盪した。振盪は、振盪機(BioShake iQ(ワケンビーテック株式会社))を用い、室温(25℃)、500rpmの条件で行った。その後、各組成物を吸い取り、イオン交換水1mLを添加して5分間振盪した後、水を吸い取り処理基板とした。なお、組成物が歯磨剤の場合は、精製水にて4倍に希釈したものを試験に用いる。
【0074】
2)刺激唾液の採取
20~30代の健常男性を対象に、デントバフ ストリップ(株式会社オーラルケア OralCare Inc.)に含まれているガムペレットを噛んでもらい、その都度口の中に溜まった唾液をファルコンチューブに吐き出してもらうことにより、かかるファルコンチューブに唾液を採取した。なお、唾液中の細菌には個人差があるため、1名の健常男性の唾液により、全ての実施例と比較例についてバイオフィルム形成抑制試験を行った。
【0075】
3)モデル歯垢の形成
ファルコンチューブに採取した唾液を、3000rpm/rt(25℃)/10minにて遠心分離した。分離された上澄み唾液を用い、スクロースを5質量%溶液となるように添加した後、撹拌機器(voltex、日本ジェネティクス(株)製)を用いて撹拌し、歯垢モデル試験液を調製した。
次に、1)にて処理を施したHAp基板に上記調製した歯垢モデル試験液を1mLずつ添加した後、これをCO2パックとともにプラスチックケースに格納して嫌気条件下とし、37℃で48時間培養した。
【0076】
4)バイオフィルム形成抑制効果の評価
減圧ポンプを用い、プレート中の唾液を吸い取り、イオン交換水1mLを添加して5分間振とうした。次にポンプを用いて水を吸い取り、0.1質量%クリスタルバイオレット(CV)溶液を750μL添加して15分間振盪した。
さらにポンプでCV染色液を吸い取り、イオン交換水1mLを添加して5分間振盪し、これを2回繰り返した。次いで、水をポンプで吸い取り、エタノール500μLを添加してピペッティングした後、抽出液をイオン交換水で10倍希釈し、マイクロプレートレコーダー(TECAN社製 波長可変型吸光マイクロプレートリーダー サンライズレインボーサーモ)で吸光度OD595nmを測定した。
また、上記得られた組成物を用いることなく、イオン交換水で洗浄したのみの吸光度OD595nm(初期値)を基準とし、下記式にしたがって歯垢形成率(%)を算出した。
なお、得られた歯垢形成率の値が小さいほど、バイオフィルム形成抑制効果が高いことを意味する。
歯垢形成率(%)={上記得られた組成物にて処理した基板のOD595nm/未処理基板のOD595nm}×100
【0079】
【表2】