(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】展開型着用物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/56 20060101AFI20230418BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61F13/56 210
A61F13/15 360
A61F13/15 352
A61F13/15 355B
A61F13/15 354
(21)【出願番号】P 2018235882
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤中 知子
(72)【発明者】
【氏名】一萬田 俊明
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-090724(JP,A)
【文献】特開昭64-078821(JP,A)
【文献】登録実用新案第3069885(JP,U)
【文献】特表2009-542486(JP,A)
【文献】特表2016-526401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/56
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、物品本体と、該物品本体の縦方向に沿う両側縁部に設けられたファスニングテープとを具備する展開型着用物品であって、
前記ファスニングテープは、ベース基材と、該ベース基材を他の部材に止着する止着部とを具備し、
前記ベース基材は、平面視で前記物品本体と重なる本体重複部と、該物品本体から延出する延出部とを有し、該延出部に前記止着部が設けられており、
前記本体重複部に、周辺部よりも窪んだ薄肉部が縦方向に複数間欠配置されており、
複数の前記薄肉部それぞれの少なくとも縦方向一方側に、該薄肉部に隣接して、該薄肉部よりも厚みが大きい厚肉部が存在するとともに、該厚肉部の該薄肉部側とは反対側に、該厚肉部に隣接して、該薄肉部よりも厚みが大きく且つ該厚肉部よりも厚みが小さい、中肉部が存在
し、
縦方向に最も近接する2個の前記薄肉部それぞれの横方向中心を通って縦方向に延びる仮想直線を引いた場合に、該仮想直線における該2個の薄肉部間に位置する部分の長さが、該仮想直線における該薄肉部の1個と重複する部分の長さよりも長い展開型着用物品。
【請求項2】
前記薄肉部が、前記ベース基材の押圧により形成された部分であり、前記厚肉部が、その押圧によって該ベース基材の形成材料が延伸されて隆起した部分である
請求項1に記載の展開型着用物品。
【請求項3】
前記厚肉部は、前記薄肉部の横方向の両側には存在しない請求項1又は2に記載の展開型着用物品。
【請求項4】
前記薄肉部は、前記本体重複部の縦方向両端それぞれから所定距離離間した位置に配置されている請求項1
~3の何れか1項に記載の展開型着用物品。
【請求項5】
前記薄肉部は、平面視で横方向に延びる形状を有する請求項1~
4の何れか1項に記載の展開型着用物品。
【請求項6】
前記本体重複部に存在する全ての前記薄肉部を包含する平面視四角形形状の領域のうち、面積が最小のものを薄肉部配置領域とした場合、該薄肉部配置領域の面積に占める、該薄肉部配置領域内の全ての薄肉部の面積の合計値の割合が、30%以上55%未満である請求項1~
5の何れか1項に記載の展開型着用物品。
【請求項7】
前記厚肉部の厚みが、前記薄肉部の厚みの3倍以上である請求項1~
6の何れか1項に記載の展開型着用物品。
【請求項8】
前記本体重複部に、前記薄肉部として、相対的に面積の大きい大薄肉部と、相対的に面積の小さい小薄肉部とが存在し、
前記大薄肉部が、前記本体重複部の横方向中央部に複数間欠配置され、前記小薄肉部が、該本体重複部の横方向両側部それぞれに複数間欠配置され、
前記大薄肉部
の存在する縦方向における位置範囲に前記小薄肉部
が存在しない請求項1~7の何れか1項に記載の展開型着用物品。
【請求項9】
前記本体重複部は、前記薄肉部にて接着剤を介さずに前記物品本体に接合されている請求項1~8の何れか1項に記載の展開型着用物品。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の展開型着用物品の製造方法であって、
前記物品本体における前記本体重複部の形成予定位置にベース基材を配置して被加工体を得、該被加工体の該形成予定位置に押圧延伸を施す押圧延伸工程を有し、
前記押圧延伸工程では、周面に凸部を有する凸ロールと周面が平坦な平坦ロールとからなる一対のロールを用い、両ロールの周速に差を設けた状態で、両ロール間に前記被加工体を導入し、両ロール間を搬送中の該被加工体を該凸部で押圧する、展開型着用物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展開型使い捨ておむつ等の、止着用のファスニングテープを所定の止着領域に止着することで装着するタイプの展開型着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
展開型着用物品は、前身頃と後身頃を一体化させる締結手段を備えており、この締結手段として従来、止着と剥離とが自在に行える機械的な接合を可能とするファスニングテープが用いられている。例えば、展開型着用物品の一種である展開型使い捨ておむつは、着用者の腹側に配される腹側部及び背側に配される背側部並びにそれらの間に位置する股下部を有し、これを着用する際には、背側部のサイドフラップ部を着用者の腹側に引き延ばし、そのサイドフラップ部に設けられたファスニングテープの止着部を腹側部の外面に止着する。これにより、おむつを腰周りで適度に締め付け、ずれ落ちないように固定することができる。ファスニングテープは、典型的には、ファスニングテープの主体をなすベース基材にフック材などからなる止着部が取り付けられた構成を有し、展開型使い捨ておむつにおいては、該ベース基材の一部が該おむつのフラップ部に固定され、該ベース基材の残りの部分が該フラップ部から延出するように取り付けられる(例えば特許文献1の[0048]、[0049]及び
図1、特許文献2の[0097]、
図9F及び
図9G等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-518107号公報
【文献】特表2015-532185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
展開型着用物品に取り付けられたファスニングテープのベース基材は、一般的に肌触りや着用者の肌に当たった場合の傷付きを考慮し、不織布などの比較的柔らかい素材が用いられる。ベース基材をより柔らかくすることで感触がよくなり、肌への傷付きも防ぐことができる。しかし、ベース基材を柔らかくすると、ファスニングテープの腰(剛度、ファスニングテープに曲げの力を与えたときの抵抗性)が弱くなり、ファスニングテープの操作性が低下するという問題がある。ファスニングテープの感触と操作性とをより高いレベルで両立させ得る技術が要望されている。
【0005】
したがって本発明の課題は、ファスニングテープの素材を問わずその操作性に優れた展開型着用物品を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、着用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、物品本体と、該物品本体の縦方向に沿う両側縁部に設けられたファスニングテープとを具備する展開型着用物品であって、前記ファスニングテープは、ベース基材と、該ベース基材を他の部材に止着する止着部とを具備し、前記ベース基材は、平面視で前記物品本体と重なる本体重複部と、該物品本体から延出する延出部とを有し、該延出部に前記止着部が設けられており、前記本体重複部に、周辺部よりも窪んだ薄肉部が縦方向に複数間欠配置されており、複数の前記薄肉部それぞれの少なくとも縦方向一方側に、該薄肉部に隣接して、該薄肉部よりも厚みが大きい厚肉部が存在し、前記薄肉部が、前記ベース基材の押圧により形成された部分であり、前記厚肉部が、その押圧によって該ベース基材の形成材料が延伸されて隆起した部分である展開型着用物品である。
【0007】
また本発明は、着用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、物品本体と、該物品本体の縦方向に沿う両側縁部に設けられたファスニングテープとを具備する展開型着用物品であって、前記ファスニングテープは、ベース基材と、該ベース基材を他の部材に止着する止着部とを具備し、前記ベース基材は、平面視で前記物品本体と重なる本体重複部と、該物品本体から延出する延出部とを有し、該延出部に前記止着部が設けられており、前記本体重複部に、周辺部よりも窪んだ薄肉部が縦方向に複数間欠配置されており、複数の前記薄肉部それぞれの少なくとも縦方向一方側に、該薄肉部に隣接して、該薄肉部よりも厚みが大きい厚肉部が存在するとともに、該厚肉部の該薄肉部側とは反対側に、該厚肉部に隣接して、該薄肉部よりも厚みが大きく且つ該厚肉部よりも厚みが小さい、中肉部が存在する展開型着用物品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ファスニングテープの素材を問わずその操作性に優れた展開型着用物品が提供される。本発明の展開型着用物品によれば、ファスニングテープのベース基材として、感触や肌への傷付き防止の観点から、不織布のような比較的柔らかい素材を用いた場合でも、そのファスニングテープは腰があって操作性に優れ、ファスニングテープの止着操作や剥離操作をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の展開型着用物品の一実施形態である展開型使い捨ておむつを着用する様子を示す模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すおむつの展開且つ伸長状態における肌対向面側(内面側)を模式的に示す展開平面図である。
【
図3】
図3は、
図2のI-I線断面を模式的に示す横断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すおむつの要部(ファスニングテープ及びその近傍)を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すファスニングテープの本体重複部及びその近傍を拡大して模式的に示す拡大平面図である。
【
図6】
図6は、
図5のII-II線断面を模式的に示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、ベース基材に押圧延伸を施すのに用いられる加工装置の一実施形態を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、一対のロール間でベース基材を押圧延伸する様子を模式的に示す図であり、
図8(a)は押圧直前の状態を示し、
図8(b)は、凸ロールの周速が平坦ロールのそれよりも速く設定された場合の押圧延伸の様子を示し、
図8(c)は、凸ロールの周速が平坦ロールのそれよりも遅く設定された場合の押圧延伸の様子を示す。
【
図9】
図9(a)は、本発明に係るファスニングテープの他の実施形態の模式的な平面図、
図9(b)は、
図9(a)の符号L1で示す矢印での断面を模式的に示す縦断面図、
図9(c)は、
図9(a)の符号L0で示す矢印での断面を模式的に示す縦断面図である。
【
図11】
図11(a)~
図11(c)は、それぞれ、本発明に係る本体重複部(薄肉部配置領域)の他の実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図12】
図12は、本発明に係る本体重複部(薄肉部配置領域)の更に他の実施形態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
【0011】
図1~
図3には、本発明の展開型着用物品の一実施形態である展開型使い捨ておむつ1が示されている。おむつ1は、着用者の前後方向、すなわち腹側から股間部を介して背側に延びる方向に対応する縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有し、物品本体2と、該物品本体2の縦方向Xに沿う両側縁部2S,2Sに設けられたファスニングテープ5とを具備する。
【0012】
おむつ1(物品本体2)は、
図2に示すように、縦方向中央(縦中心線CLx)を境界として着用時に着用者の前側(腹側)に配される前身頃Fと着用者の背側(後側)に配される後身頃Rとに区分される。縦中心線CLxは、
図2に示す如き展開且つ伸長状態のおむつ1を縦方向Xに二等分して横方向Yに延びる仮想直線である。おむつ1の「展開且つ伸長状態」とは、おむつ1を
図2に示す如き展開状態とし、その展開状態のおむつ1を各部の弾性部材を伸長させて設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで拡げた状態をいう。
【0013】
おむつ1(物品本体2)は、着用者の腹側に配される腹側部A、股下に配される股下部B、及び背側に配される背側部Cを有する。腹側部Aは前身頃Fの一部、背側部Cは後身頃Rの一部であり、股下部Bは、縦中心線CLxを縦方向Xに跨ぎ、前身頃F及び後身頃Rにわたって位置する。股下部Bは、着用時に着用者の陰茎等の排泄部に対向配置される排泄部対向部(図示せず)を含む。
【0014】
物品本体2は、
図2及び
図3に示すように、おむつ1の着用者が排泄した尿等の体液を吸収保持する吸収体33を備えた吸収性本体3と、該吸収性本体3の周縁から外方に延出するフラップ部4とを具備する。
【0015】
吸収性本体3は、肌対向面を形成する液透過性の表面シート31、非肌対向面を形成する液不透過性若しくは液難透過性又は撥水性の裏面シート32、及び両シート31,32間に介在配置された液保持性の吸収体33を具備しており、これらが接着剤等の公知の接合手段により一体化されて構成されている。吸収性本体3は、平面視長方形形状をなし、腹側部Aから背側部Cにわたって縦方向Xに延在し、その長手方向が縦方向Xに一致している。吸収体33は、平面視において、股下部Bに位置する縦方向Xの中央部が内方に括れた砂時計状をなし、縦方向Xに長い縦長の形状を有している。
【0016】
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌から近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
【0017】
表面シート31、裏面シート32及び吸収体33としては、それぞれ、この種の吸収性物品に従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。表面シート31としては、例えば、各種の不織布、開孔フィルムを用いることができる。裏面シート32としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体を用いることができる。吸収体33としては、例えば、木材パルプや吸水性ポリマー等の吸収性材料を積繊してなる積繊体、吸収性材料を含有するシート状の吸収構造体を用いることができる。吸収体33は、典型的には、吸収性材料の集合体からなる吸収性コアと、該吸収性コアの外面を被覆する液透過性のコアラップシートとを含む。
【0018】
フラップ部4は、吸収性本体3の周縁から外方に延出した部材によって構成されており、吸収体の非配置部である。フラップ部4は、
図2に示すように、吸収性本体3の縦方向Xに沿う両側縁3S,3S及びそれらの仮想延長線(図示せず)から横方向Yの外方に延出するサイドフラップ部41と、吸収性本体3の縦方向Xの両端3T,3Tそれぞれから縦方向Xの外方に延出するエンドフラップ部42とを有する。
【0019】
本実施形態では、
図3に示すように、表面シート31は、吸収体33の肌対向面の全域を被覆し、裏面シート32は、吸収体33の非肌対向面の全域を被覆し、両シート31,32は更に、吸収性本体3の両側縁3S,3Sから横方向Yの外方に延出し、後述するサイドシート34とともにサイドフラップ部41を形成している。サイドフラップ部41を構成するこれら複数の部材は、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。
【0020】
図2及び
図3に示すように、吸収性本体3の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、サイドシート34が一対配されている。サイドシート34は、横方向Yの一端側が他の部材に固定されて固定端部、横方向Yの他端側が他の部材に非固定の自由端部とされ、その自由端部に糸状又は帯状の立体ギャザー形成用弾性部材35が縦方向Xに伸長状態で固定されている。おむつ1の着用時には、立体ギャザー形成用弾性部材35の収縮力により、少なくとも股下部Bにおいて、サイドシート34の自由端部側が、他の部材(本実施形態では裏面シート32)との固定部34Fを起立基端として着用者側に起立し、これにより防漏カフが形成され、尿等の排泄物の横方向Yの外方への流出が阻止される。
【0021】
腹側部A及び背側部Cそれぞれの縦方向Xの端部すなわちウエスト端部には、横方向Yに伸長状態の胴周りギャザー形成用弾性部材36が、横方向Yの一方側のサイドフラップ部41からエンドフラップ部42を介して他方側のサイドフラップ部41にわたって横方向Yに延在しており、これによりおむつ1の着用時には、弾性部材36の収縮により、ウエスト端部に胴周りギャザーが形成される。また、一対のサイドフラップ部41,41それぞれにおける、おむつ1の着用時に着用者の脚周りに配されるレッグ部には、縦方向Xに伸長状態のレッグギャザー形成用弾性部材37が、少なくとも股下部Bの縦方向Xの全長にわたって縦方向Xに延在しており、これによりおむつ1の着用時には、弾性部材37の収縮により、レッグ部にレッグギャザーが形成される。
【0022】
本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、ファスニングテープ5は後身頃Rに設けられており、より具体的には、背側部Cにおける物品本体2の両側縁部2S,2Sを構成するサイドフラップ部41に一対設けられている。各ファスニングテープ5は、サイドフラップ部41の非肌対向面に露出するように配置されており、より具体的には、サイドフラップ部41の非肌対向面を形成する裏面シート31の非肌対向面(外面)に固定されている。また、おむつ1の腹側部Aの非肌対向面すなわちおむつ1の外面には、ファスニングテープ5が具備する止着部50が着脱自在に止着可能な止着領域6が設けられている。
【0023】
止着領域6は、ファスニングテープ5が具備する止着部50の素材に応じ、適切な素材のものが選択される。例えば止着部50がメカニカルファスナーのオス材である場合、止着領域6としては、メカニカルファスナーのメス材として、該オス材と係合可能な繊維シート、例えば、編み物地、不織布を用いることができる。また、止着部50が粘着剤である場合、止着領域6としては、例えば、合成樹脂製の平滑なフィルムを用いることができる。本実施形態の止着領域6は、
図1及び
図2に示すように、腹側部Aの非肌対向面を形成する裏面シート32とは別体の止着領域形成用シート61から形成されている。止着領域形成用シート61は平面視長方形形状を有し、その長手方向を横方向Yに一致させて、腹側部Aの非肌対向面の横方向Yの中央部に、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって接合されている。
【0024】
図4及び
図5には、ファスニングテープ5及びその近傍が示されている。
図4及び
図5には、おむつ1が備える一対のファスニングテープ5,5のうちの一方のみが記載されているが、他方も図示のものと同様に構成されており、以下のファスニングテープ5についての説明は、特に断らない限り、一対のファスニングテープ5,5の双方に適用される。
【0025】
ファスニングテープ5は、
図4に示すように、ベース基材51と、該ベース基材51を他の部材(本実施形態では止着領域形成用シート61)に止着する止着部50とを具備する。
【0026】
ベース基材51の素材としては、この種の展開型着用物品においてファスニングテープの主体をなす部分の素材として用いられているものを特に制限無く用いることができ、例えば、不織布、樹脂製フィルム、不織布と樹脂製フィルムとの積層体などを用いることができる。ファスニングテープ5に柔軟性を付与するとともに感触を良好なものとし、ファスニングテープ5が肌に触れたときに肌を傷付けるおそれを防止する観点から、ベース基材51としては不織布が好ましい。ベース基材51に用いる不織布としては、公知の不織布を特に制限無く用いることができ、例えば、スパンボンド不織布を例示できる。ベース基材51の坪量は特に制限されないが、ファスニングテープ5の強度や操作性等の観点から、好ましくは20g/m2以上、より好ましくは25g/m2以上、そして、好ましくは80g/m2以下、より好ましくは75g/m2以下である。
【0027】
ベース基材51は、
図4に示すように、平面視(換言すればベース基材51の厚み方向の投影視)で物品本体2(より具体的にはサイドフラップ部41)と重なる本体重複部52と、該物品本体2から横方向Yの外方に延出する延出部53とを有し、該延出部53の一面(より具体的にはおむつ1の着用時に止着領域6と重ね合わされる被止着面)に止着部50が設けられている。本体重複部52は、主として、ファスニングテープ5の物品本体2に対する固定手段として機能する。延出部53は、主として、ファスニングテープ5を手指で把持する際の把持部として機能し、ファスニングテープ5の操作性に密接に関わる。なお、通常、本体重複部52と延出部53とは素材が同じであるが、両者で互いに素材が異なってもよい。
【0028】
止着部50は、止着領域6(止着領域形成用シート61)と着脱自在な手段であれば、特に限定されるものではなく、例えば、メカニカルファスナーのオス材、粘着剤、剥離紙付き粘着テープなどが挙げられる。ここで、メカニカルファスナーとは、表面に多数の突起状の係合部材が配置されてなるオス材と、表面にループ部、網状部等が配置されてなるメス材とからなり、オス材とメス材とを面接させることにより、両者が接合されるようになされている止着具をいう。メカニカルファスナーとしては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。
【0029】
止着部50のベース基材51への固定方法は特に制限されず、接着剤等の公知の接合手段を採用できるが、ファスニングテープ5を比較的厚みの小さいものとし、柔軟性を高める観点から、接着剤以外の接合手段が好ましく、例えば、融着が好ましい。すなわち、止着部50は、接着剤を用いずにベース基材51に固定されていることが好ましく、より具体的には、融着によりベース基材51に固定されていることが好ましい。
【0030】
本体重複部52には、
図4~
図6に示すように、周辺部よりも窪んだ薄肉部54が縦方向Xに複数間欠配置されている。薄肉部54は、ベース基材51におけるその周辺部(厚肉部55及び中肉部56)に比して厚みが小さく、ベース基材51における薄肉部54の形成位置には、一面側から他面側向かって凹状に窪んだ凹部57が形成されている。
【0031】
本実施形態の薄肉部54は、
図5に示すように、平面視で一方向に長い形状を有し、その薄肉部54の長手方向が、縦方向X及び横方向Yの双方に対して直交せずに交差する方向と一致している。本実施形態の本体重複部52には、このような斜めに延びる薄肉部54が縦方向Xに間欠配置されて列を形成し、その薄肉部54の列が、横方向Yに間欠配置されている。横方向Yに隣り合う薄肉部54の列どうしは、薄肉部54の長手方向(延在方向)が異なり、薄肉部54の長手方向が互いに異なる2種類の薄肉部54の列が、横方向Yに交互に配置されている。
【0032】
図5に示す形態の薄肉部54は、平面視で横方向Yに延びる形状を有する。ここでいう「横方向Yに延びる」とは、薄肉部54の長手方向に延びる仮想直線と、横方向Yに延びる仮想直線(縦中心線CLx)とのなす角度が45度未満である場合を意味し、薄肉部54の長手方向が横方向Yと一致する場合、斯かる角度は0度となる。
【0033】
本体重複部52においては、
図6に示すように、複数の薄肉部54それぞれの少なくとも縦方向Xの一方側に、薄肉部54に隣接して、薄肉部54よりも厚みが大きい厚肉部55が存在する。
図6に示す形態では、1個の薄肉部54(凹部57)を挟んでその縦方向Xの両側それぞれに、該薄肉部54に隣接して厚肉部55が存在する。そして、薄肉部54は、ベース基材51の押圧により形成された部分であり、厚肉部55は、その押圧によってベース基材51の形成材料(樹脂等)が延伸されて隆起した部分である。
【0034】
このように、ベース基材51における物品本体2への固定に利用される部分である本体重複部52に、押圧延伸を施してベース基材51の形成材料を移動させ、擬似的に厚みの大きい部分である厚肉部55を複数形成することにより、本体重複部52の剛度が向上し、ファスニングテープ5に腰を持たせることが可能となる。したがって、ベース基材51の素材として、不織布のような、比較的柔らかく剛度の低い素材を使用しても、ファスニングテープ5の操作性が低下し難く、操作性を確保しつつ、斯かる素材を使用した場合のメリット、例えば、ファスニングテープ5の感触が良好で、肌と接触した場合に肌を傷付けにくい、といったメリットを活かすことが可能となる。
【0035】
本体重複部52について更に説明すると、
図6に示すように、複数の薄肉部54それぞれの少なくとも縦方向Xの一方側に、薄肉部54に隣接して、薄肉部54よりも厚みが大きい厚肉部55が存在するとともに、厚肉部55の薄肉部54側とは反対側に、厚肉部55に隣接して、薄肉部54よりも厚みが大きく且つ厚肉部55よりも厚みが小さい、中肉部56が存在する。
図6に示す形態では、本体重複部52において、薄肉部54、厚肉部55及び中肉部56がこの順で縦方向Xに連なる凹凸構造58が、縦方向Xに複数間欠配置され、縦方向Xに隣り合う2個の凹凸構造58どうしの間に、該凹凸構造58における厚肉部55とは別の厚肉部55が存在する。
【0036】
なお、厚肉部55は、薄肉部54の縦方向Xの両側の少なくとも一方に存在するが、薄肉部54の横方向Yの両側には存在しない。薄肉部54の横方向Yの両側にて該薄肉部54に隣接して存在するのは、典型的には、厚みが薄肉部54と厚肉部55との中間にある部分、すなわち中肉部56である。
【0037】
図7には、ベース基材51に押圧延伸を施して薄肉部54及び厚肉部55を形成する様子が示されている。
図7に示す押圧延伸加工では、厚みが均一なベース基材51を、一対のロール90,91間に導入した後、更に一対のロール90,92間に導入し、各ロール間にて一方向に搬送中のベース基材51を押圧延伸する。すなわち、
図7に示す押圧延伸加工では、ベース基材51に対し押圧延伸を2回にわたって施す。3個のロール90,91,92はそれらの周面が相互に対向するように並列に配置され、中央にロール90が配置され、該ロール90の回転軸方向と直交する方向の一方側にロール91、他方側にロール92が配置されている。ロール90は、ベース基材51の搬送用ロールであり、その周面に連続帯状のベース基材51が巻きかけられる。ロール90は、周面に凹凸の無い平坦ロールである。一方、ロール91,92は、それぞれ、周面に押圧用凸部93が複数設けられた凸ロールである。ロール90,91,92はそれぞれ、ヒーター等の加熱手段を内蔵し、該加熱手段により、ロールの周面の温度をベース基材51の形成材料の融点よりも高い温度に設定可能に構成されている。ベース基材51の押圧延伸加工では、必要に応じ斯かる加熱手段を用い、ベース基材51を加熱しつつ押圧延伸する。
【0038】
図7に示す押圧延伸加工では、ベース基材51を、周速に差を設けた一対のロール間に導入する。具体的には、平坦ロール90の周速V0を基準として、凸ロール91は周速V0よりも速い周速V1で回転軸周りに回転し、凸ロール92は周速V0よりも遅い周速V2で回転軸周りに回転する。以下に説明するように、ベース基材51の押圧延伸に用いる一対のロール間の周速差の如何によって、その押圧延伸によってベース基材51に付与される凹凸構造、特に厚肉部55の形成位置が変化する。
【0039】
ベース基材51を一対のロール90,91間に通す工程、すなわち「平坦ロール90の周速V0<凸ロール91の周速V1」に設定された工程では、先ず、一方向MDに搬送中のベース基材51の一面側から、周速V1で回転する凸ロール91の凸部93が、ベース基材51の搬送方向MDと同方向に移動しつつベース基材51に接近し、やがて
図8(a)に示すように、凸部93の移動方向先端部93aがベース基材51の一面に接触する。ここで、凸ロール91の周速V1は、ベース基材51を搬送する平坦ロール90の周速V0よりも速いことから、凸部93の先端部93aが、
図8(a)に示す状態からベース基材51の一面側を擦りつつ搬送方向MDに移動し、そのベース基材51における擦られた部分は、先端部93aによって搬送方向MDの下流側に押圧されて移動し、すなわち延伸される。そして、
図8(b)に示すように、凸部93に対し搬送方向MDの下流側(
図8(b)では凸部93の右側)に、先端部93aに隣接して、ベース基材51の形成材料が延伸されて隆起した部分である厚肉部55が形成され、また、先端部93aによって形成材料が擦り取られた部分、すなわち厚肉部55に存在する形成材料の供給元は、加工前よりも厚みの小さい薄肉部54となる。また、ベース基材51における厚肉部55よりも搬送方向MDの下流側は、通常、凸部93による押圧延伸の影響を実質的に受けず、加工前と比べて厚みが実質的に変化しない部分であり、中肉部56となる。また、このように、厚肉部55が凸部93による押圧延伸によって形成される、換言すれば、ベース基材51内での形成材料の移動によって形成されることに起因して、ベース基材51における薄肉部54よりも搬送方向MDの下流側は、厚肉部55の分だけ、加工前に比して搬送方向MDの長さが長くなる。
【0040】
また、ベース基材51を一対のロール90,92間に通す工程、すなわち「平坦ロール90の周速V0>凸ロール92の周速V2」に設定された工程では、凸ロール91の周速V2は、ベース基材51を搬送する平坦ロール90の周速V0よりも遅いことから、前記工程とは逆に、
図8(c)に示すように、凸部93に対し搬送方向MDの上流側(
図8(c)では凸部93の左側)に、先端部93aとは搬送方向MDの反対側に位置する移動方向後端部93bに隣接して、ベース基材51の形成材料が延伸されて隆起した部分である厚肉部55が形成され、ベース基材51における薄肉部54よりも搬送方向MDの上流側は、厚肉部55の分だけ、加工前に比して搬送方向MDの長さが長くなる。また、ベース基材51における厚肉部55よりも搬送方向MDの上流側は、通常、凸部93による押圧延伸の影響を実質的に受けず、加工前と比べて厚みが実質的に変化しない部分であり、中肉部56となる。
【0041】
なお、押圧延伸加工におけるベース基材51の搬送方向MDは、おむつ1の縦方向Xに一致する。すなわちベース基材51は、その押圧延伸加工時の搬送方向MDを、おむつ1の縦方向Xに一致させて、おむつ1に組み込まれる。
【0042】
また、薄肉部54及び厚肉部55を含む、ベース基材51の本体重複部52の凹凸構造が、前述の如き押圧延伸によって形成されることに起因して、本体重複部52は、縦方向Xの長さが部分的に異なる。すなわち、
図9を参照して、本体重複部52における、薄肉部54が縦方向Xに間欠配置された部分の縦方向Xの長さL1は、薄肉部54の非配置部すなわち押圧延伸が施されていない部分の縦方向Xの長さL0に比して長い。ここでいう、本体重複部52の縦方向Xの長さL0,L1は、
図9(b)及び
図9(c)に示すように、本体重複部52自体の実際の長さを意味し、平面視(本体重複部52の厚み方向に投影視)における長さではない。このように、本体重複部52で部分的に縦方向Xの長さが異なる理由は、薄肉部54が縦方向Xに間欠配置された部分は、前述の「周速に差を設けた一対のロール間にベース基材51を導入する工程」によって押圧延伸が施された部分であり、前述したように、その押圧延伸によって形成された厚肉部55の分だけ、押圧延伸時のベース基材51の搬送方向MDすなわち縦方向Xの長さが長くなるためである。
【0043】
また、本体重複部52においてこのように、長さL1>長さL0なる大小関係が成立する結果、薄肉部54の非配置部(押圧延伸されていない部分)が、
図9(c)に示すように、皺などが無く平坦であるのに対し、薄肉部54が縦方向Xに間欠配置された部分(押圧延伸された部分)は、
図9(b)に示すように、局所的に縦方向Xに延ばされているために皺などがあって平坦度が低い。したがって、「本体重複部52において、薄肉部54が縦方向Xに間欠配置された部分の縦方向Xの長さL1が、薄肉部54の非配置部の縦方向Xの長さL0に比して長い」というのは、「本体重複部52において、薄肉部54が縦方向Xに間欠配置された部分は、薄肉部54の非配置部に比して平坦度が低い」に言い換えることもできる。
【0044】
図6に示す形態では、複数の薄肉部54それぞれの縦方向Xの両側に厚肉部55が存在するが、本発明において、厚肉部55は複数の薄肉部54それぞれの少なくとも縦方向Xの一方側に存在すればよく、
図10に示すように、複数の薄肉部54それぞれの縦方向Xの一方側のみに厚肉部55が存在してもよい。
図10に示す形態では、本体重複部52において、薄肉部54、厚肉部55及び中肉部56がこの順で縦方向Xに連なる凹凸構造58が、縦方向Xに複数連続的に配置されている。
図10に示す形態は、例えば、ベース基材51に対し、前述した一対のロールを用いた押圧延伸を1回施すことで得られる。
【0045】
薄肉部54は、本体重複部52の縦方向Xの両端それぞれから所定距離離間した位置に配置されていることが好ましい。薄肉部54は、ベース基材51の他の部分よりも強い力で押圧された部分であるため、硬くて柔軟性に乏しい部分であるところ、そのような硬い部分が、おむつ1の着用者の肌に比較的触れやすい部分である、本体重複部52の端部に存在すると、肌を傷付けるおそれがある。斯かる観点から、
図5を参照して、本体重複部52の縦方向Xの一端と該一端に最も近接する薄肉部54(後述する薄肉部配置領域54Tの縦方向Xの一端)との縦方向Xにおける離間距離Dxは、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2.0mm以上である。離間距離Dxの上限については、厚肉部55による作用効果(ベース基材51の押圧延伸による作用効果)を確保する観点から、好ましくは6.5mm以下、より好ましくは6.0mm以下である。
【0046】
同様の観点から、
図5を参照して、本体重複部52の横方向Yの一端と該一端に最も近接する薄肉部54(後述する薄肉部配置領域54Tの横方向Yの一端)との横方向Yにおける離間距離Dyは、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは2.0mm以上、そして、好ましくは7.0mm以下、より好ましくは6.0mm以下である。
【0047】
また、前述した厚肉部55による作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、
図5を参照して、本体重複部52に存在する全ての薄肉部54を包含する平面視四角形形状の領域のうち、面積が最小のものを薄肉部配置領域54Tとした場合、薄肉部配置領域54Tの面積に占める、薄肉部配置領域54T内の全ての薄肉部54の面積の合計値の割合は、好ましくは30%以上、より好ましくは31%以上、そして、好ましくは55%未満、より好ましくは50%未満であり、具体的には、好ましくは30%以上55%未満、より好ましく31%以上50%未満である。
【0048】
同様の観点から、
図6を参照して、厚肉部55の厚みT2は、薄肉部54の厚みT1に比して十分に大きいことが好ましく、両者の比率は、厚みT2>厚みT1を前提として、厚みT2/厚みT1として、好ましくは3以上、より好ましくは3.2以上である。斯かる厚みの比率の上限については、圧肉部55と薄肉部54との厚み差による感触、並びに視覚的な違和感をなくす観点から、好ましくは8.5以下、より好ましくは8以下である。
【0049】
中肉部56の厚みT3(
図6参照)と薄肉部54の厚みT1との比率は、厚みT3>厚みT1を前提として、厚みT3/厚みT1として、好ましくは2以上、より好ましくは2.2以上、そして、好ましくは7以下、より好ましくは6.5以下である。
厚肉部55の厚みT2と中肉部56の厚みT3との比率は、厚みT2>厚みT3を前提として、厚みT2/厚みT3として、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、そして、好ましくは2.2以下、より好ましくは2以下である。
【0050】
薄肉部54の厚みT1は、好ましくは0.03mm以上、より好ましくは0.05mm以上、そして、好ましくは0.33mm以下、より好ましくは0.3mm以下である。
厚肉部55の厚みT2は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.35mm以上、そして、好ましくは1.8mm以下、より好ましくは1.6mm以下である。
中肉部56の厚みT3は、好ましくは0.15mm以上、より好ましくは0.18mm以上、そして、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.9mm以下である。
【0051】
また、前述した厚肉部55による作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、
図5を参照して、縦方向Xに最も近接する2個の薄肉部54,54それぞれの横方向Yの中心を通って縦方向Xに延びる仮想直線を引いた場合に、該仮想直線におけるその2個の薄肉部54,54間に位置する部分の長さLbが、該仮想直線における該薄肉部54と重複する部分の長さLaよりも長いことが好ましい。長さLb>長さLaなる大小関係が成立することで、長さLbを有する部分に厚肉部55がより一層確実に存在するようになるため、厚肉部55による作用効果がより一層確実に奏されるようになる。
【0052】
長さLaと長さLbとの比率は、長さLa<長さLbを前提として、長さLa/長さLbとして、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、そして、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下である。
長さLaは、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.2mm以上、そして、好ましくは4.0mm以下、より好ましくは3.5mm以下である。
長さLbは、好ましくは3.0mm以上、より好ましくは3.5mm以上、そして、好ましくは7.0mm以下、より好ましくは6.0mm以下である。
薄肉部54の横方向Yの長さすなわち幅W(
図5参照)は、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、そして、好ましくは12mm以下、より好ましくは11mm以下である。
【0053】
前述したように、
図5に示す形態の薄肉部54は、平面視で横方向Yに延びる形状を有し、この「横方向Yに延びる」の意味については前述したとおりである。本体重複部52に存在する薄肉部54が平面視でこのような横長形状であると、薄肉部54が平面視で縦方向Xに延びる縦長形状である場合に比して、本体重複部52に腰が発現しやすくなり、ファスニングテープ5の操作性一層向上し得る。前述したベース基材51の押圧延伸加工において、押圧用凸部93(
図7参照)によってベース基材51を押圧延伸して薄肉部54を形成するとともに、該薄肉部54に対してベース基材51の搬送方向MD(すなわちおむつ1の縦方向X)の一方側又は両側に厚肉部55を形成する過程で、その形成する薄肉部54の平面視形状が、搬送方向MDと直交する方向に延びる形状すなわち横長形状であると、搬送方向MDに延びる形状すなわち縦長形状である場合に比して、ベース基材51における凸部93によって擦られた部分の形成材料が搬送方向MDに押し出されやすく、そのため、薄肉部54に対して搬送方向MDの一方側又は両側に厚肉部55が形成されやすい。したがって、薄肉部54は、
図5に示す如くに、平面視で横方向Yに延びる形状を有することが好ましい。
【0054】
本体重複部52の薄肉部配置領域54Tにおける薄肉部54のパターン(平面視形状及び配置)は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々のものを選択できる。
図11には、本発明で採用可能な薄肉部54のパターンが示されている。
図11(a)~
図11(c)に示す形態は何れも、薄肉部54が平面視で横方向Yに延びる形状を有している。
【0055】
図12には、薄肉部54の別のパターンが示されている。
図12に示す形態では、薄肉部配置領域54Tにおいて、薄肉部54として、相対的に面積の大きい大薄肉部540と、相対的に面積の小さい小薄肉部541とが存在する。大薄肉部540は、薄肉部配置領域54T(本体重複部52)の横方向Yの中央部に複数間欠配置され、小薄肉部541は、薄肉部配置領域54T(本体重複部52)の横方向Yの両側部それぞれに複数間欠配置されている。そして、大薄肉部540と小薄肉部541とは、縦方向Xにおいて重複しない。
図12に示す形態では、大薄肉部540は平面視で横方向Yに長い形状を有し、小薄肉部541は平面視で正方形形状を有している。本体重複部52において大薄肉部540と小薄肉部541とがこのように配置されていることで、大薄肉部540と小薄肉部541に囲まれた領域に厚肉部55が形成されやすくなる。
【0056】
本体重複部52は、薄肉部54にて接着剤を介さずに物品本体2(本実施形態ではサイドフラップ部41)に接合されていることが好ましい。接着剤を介在させずに本体重複部52と物品本体2とを接合することで、接着剤を介在させた場合に比して、本体重複部52の厚みが薄くなり柔軟性が向上し得る。例えば、本体重複部52は、接着剤を介さずに、薄肉部54にて物品本体2に融着されていることが好ましい。薄肉部54にて本体重複部52と物品本体2とを融着させる方法としては、例えば、前述したベース基材51の押圧延伸加工をベース基材51単体に対して実施せずに、ベース基材51を物品本体2の所定位置(本体重複部52の形成予定位置)に重ね、その両者の重なり部に対して、押圧延伸加工を実施する方法が挙げられる。
【0057】
本発明の展開型着用物品の製造方法として、例えば、物品本体2における本体重複部52の形成予定位置にベース基材51(凹凸構造を有しない厚みの均一なベース基材)を配置して被加工体を得、該被加工体の該形成予定位置に押圧延伸を施す押圧延伸工程を有する方法が挙げられる。前記押圧延伸工程では、前述したよう、に
図7及び
図8に示す如くに、周面に凸部(凸部93)を有する凸ロール(凸ロール91又は凸ロール92)と周面が平坦な平坦ロール(平坦ロール90)とからなる一対のロールを用い、両ロールの周速に差を設けた状態で、両ロール間に前記被加工体を導入し、両ロール間を搬送中の該被加工体を該凸部で押圧する。これにより前述したとおり、前記被加工体における前記凸部で押圧された部分に、薄肉部54が形成されるとともに、該薄肉部54に対して少なくとも該被加工体の搬送方向の一方側に、該薄肉部54に隣接して、厚肉部55が形成される。斯かる展開型着用物品の製造方法は、特に、本体重複部52が接着剤を介さずに薄肉部54にて物品本体2に融着された展開型着用物品の製造に好適である。
【0058】
本発明は、展開型使い捨ておむつ以外の他の展開型着用物品、例えば、おむつカバー(パッドホルダー)や胴回りで着脱する帯状体に適用可能であり、乳幼児用のものであっても、成人用のものであってもよい。本発明は、典型的には、使い捨ておむつ等の吸収性物品に適用され、この吸収性物品は、人体から排出される体液(尿、経血、軟便、汗等)の吸収に用いられる物品を広く包含し、使い捨ておむつ以外に例えば、生理用ナプキン、生理用ショーツが包含される。
【0059】
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
例えば
図9に示す形態では、ファスニングテープ5の本体重複部52が、サイドフラップ部41の非肌対向面に露出するように配置されているが、これに代えて、サイドフラップ部41の肌対向面(図示の形態ではサイドシート34の外面すなわち肌対向面)に露出するように配置されてもよく、あるいはサイドフラップ部41を構成する複数枚のシート間(図示の形態ではシート32,34間)に介在配置され、本体重複部52が露出しない構成であってもよい。
また、物品本体2においてファスニングテープ5が取り付けられる部分は特に制限されず、例えば、背側部Cにおいて吸収性本体3又はサイドフラップ部41の縦方向Xに沿う両側縁から一対のサイドパネルが延出し、その一対のサイドパネルそれぞれにファスニングテープ5が取り付けられてもよい。前記サイドパネルは、典型的には、横方向に伸縮性を有する。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 パンツ型使い捨ておむつ(展開型着用物品)
2 物品本体
3 吸収性本体
31 表面シート
32 裏面シート
33 吸収体
34 サイドシート
4 フラップ部
5 ファスニングテープ
50 止着部
51 ベース基材
52 本体重複部
53 延出部
54 薄肉部
54T 薄肉部配置領域
540 大薄肉部
541 小薄肉部
55 厚肉部
56 中肉部
57 凹部
58 凹凸構造
6 止着領域
A 腹側部
B 股下部
C 背側部
X 縦方向
Y 横方向