(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20230418BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230418BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20230418BHJP
H05K 7/06 20060101ALI20230418BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
H02G3/16
H05K7/20 B
H05K5/03 A
H05K7/06 C
B60R16/02 610D
(21)【出願番号】P 2019016733
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】江川 雅利
(72)【発明者】
【氏名】佐野 良則
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-069643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H05K 7/20
H05K 5/03
H05K 7/06
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の電子部品が収容される筐体と、
少なくとも前記電子部品と電気的に接続される導電部材と、
前記筐体に設けられ、開口部を介して前記筐体の外部と連通する挿通空間部と、
前記導電部材を収容し、かつ前記挿通空間部に連通する収容空間部と、
前記開口部を介して前記挿通空間部を挿通し前記収容空間部において前記導電部材と電気的に接続され、かつ前記筐体の外部から前記導電部材を介して前記電子部品に電力供給する端子付き電線と、
熱伝導性を有し、前記収容空間部において前記端子付き電線及び前記導電部材の少なくとも一方と熱的に接続される放熱部材と、
を備え、
前記放熱部材は、
前記収容空間部から前記挿通空間部に突出し前記開口部に向けて延在
し、
前記放熱部材は、
少なくとも1つの屈曲部と、
前記端子付き電線と熱的に接続される熱的接続部と、
前記熱的接続部から屈曲部を介して当該熱的接続部の延在方向と交差する上下方向の下方側に延在する延在部と、を有する
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記熱的接続部は、
前記端子付き電線の端子及び前記導電部材と共に、前記収容空間部に配置された締結部材に対して締結される
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記熱的接続部は、
前記収容空間部に配置された締結部材に前記端子付き電線の端子及び前記導電部材が締結された締結状態において、前記端子付き電線と電気的に接続された前記導電部材の端部から立設された係止片に対して係止機構により係止される
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記放熱部材は、
前記端子付き電線及び前記導電部材の少なくとも一方と熱的に接続された接続状態において、前記延在部の端部が前記端子付き電線の端子の下方側端部と前記開口部との間に位置する
請求項2または3に記載の電気接続箱。
【請求項5】
1以上の電子部品が収容される筐体と、
少なくとも前記電子部品と電気的に接続される導電部材と、
前記筐体に設けられ、開口部を介して前記筐体の外部と連通する挿通空間部と、
前記導電部材を収容し、かつ前記挿通空間部に連通する収容空間部と、
前記開口部を介して前記挿通空間部を挿通し前記収容空間部において前記導電部材と電気的に接続され、かつ前記筐体の外部から前記導電部材を介して前記電子部品に電力供給する端子付き電線と、
熱伝導性を有し、前記収容空間部において前記端子付き電線及び前記導電部材の少なくとも一方と熱的に接続される放熱部材と、
を備え、
前記放熱部材は、
前記収容空間部から前記挿通空間部に突出し前記開口部に向けて延在し、
前記筐体は、
外周面に取り付けられ、下方側に向かって延在するサイドカバーと、
前記サイドカバーを上方側から下方側に向けて案内するガイド部と、
を有し、
前記挿通空間部は、
前記筐体及び前記サイドカバーによって形成され、
前記サイドカバーは、
前記放熱部材を保持する保持部を有する
ことを特徴とする電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載され、ワイヤハーネス等の接続処理用部品や、ヒューズ、リレー等の電子部品を集約して収容する電気接続箱(ジャンクションボックス、ヒューズボックス、リレーボックス等とも呼ばれる)が知られている。
【0003】
上記電気接続箱では、収容された接続処理用部品や電子部品の接点等からの発熱によって内部温度が上昇することから、放熱効果を高めるための様々な放熱構造が提案されている。例えば、電気接続箱から外部に突き出した電線の外周に、複数の放熱フィンを備える放熱器が取り付けられている(特許文献1参照)。また、熱伝導率が高い軟質樹脂材料から成り、単純な丸棒の一端に放射状に延びた複数の放熱部を有する熱伝導部材を、筐体内から外部に渡って配置したものがある(特許文献2参照)。また、密封した管状体の中に作動液が封入されたヒートパイプを、筐体内の集熱部から筐体外の放熱部へ配置したものがある(特許文献3参照)。さらに、バスバーの発熱部に絶縁電線を接続し、当該絶縁電線を筐体の内部から外部に引き出したものがある(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-42428号公報
【文献】特開2000-69643号公報
【文献】特開平10-285751号公報
【文献】実公平3-91015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の放熱部材は、樹脂製の絶縁材料で形成され、筐体の内部から外部に引き出された電線に直接取り付けられていたり、当該電線と共に絶縁テープに巻き込まれているものがある。また、バスバーに対して、放熱部材の保持部が形成されていたり、放熱用に電線の導体が接続されているものがある。このように、加工の度合いや組み立てやすさの点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、従来の構造や組み立て方法を変更することなく、通電による温度上昇を抑制することができる電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱は、1以上の電子部品が収容される筐体と、少なくとも前記電子部品と電気的に接続される導電部材と、前記筐体に設けられ、開口部を介して前記筐体の外部と連通する挿通空間部と、前記導電部材を収容し、かつ前記挿通空間部に連通する収容空間部と、前記開口部を介して前記挿通空間部を挿通し前記収容空間部において前記導電部材と電気的に接続され、かつ前記筐体の外部から前記導電部材を介して前記電子部品に電力供給する端子付き電線と、熱伝導性を有し、前記収容空間部において前記端子付き電線及び前記導電部材の少なくとも一方と熱的に接続される放熱部材と、を備え、前記放熱部材は、前記収容空間部から前記挿通空間部に突出し前記開口部に向けて延在し、前記放熱部材は、少なくとも1つの屈曲部と、前記端子付き電線と熱的に接続される熱的接続部と、前記熱的接続部から屈曲部を介して当該熱的接続部の延在方向と交差する上下方向の下方側に延在する延在部と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記電気接続箱において、前記熱的接続部は、前記端子付き電線の端子及び前記導電部材と共に、前記収容空間部に配置された締結部材に対して締結されるものである。
【0009】
上記電気接続箱において、前記熱的接続部は、前記収容空間部に配置された締結部材に前記端子付き電線の端子及び前記導電部材が締結された締結状態において、前記端子付き電線と電気的に接続された前記導電部材の端部から立設された係止片に対して係止機構により係止されるものである。
【0010】
上記電気接続箱において、前記放熱部材は、前記端子付き電線及び前記導電部材の少なくとも一方と熱的に接続された接続状態において、前記延在部の端部が前記端子付き電線の端子の下方側端部と前記開口部との間に位置するものである。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱は、少なくとも前記電子部品と電気的に接続される導電部材と、前記筐体に設けられ、開口部を介して前記筐体の外部と連通する挿通空間部と、前記導電部材を収容し、かつ前記挿通空間部に連通する収容空間部と、前記開口部を介して前記挿通空間部を挿通し前記収容空間部において前記導電部材と電気的に接続され、かつ前記筐体の外部から前記導電部材を介して前記電子部品に電力供給する端子付き電線と、熱伝導性を有し、前記収容空間部において前記端子付き電線及び前記導電部材の少なくとも一方と熱的に接続される放熱部材と、を備え、前記放熱部材は、前記収容空間部から前記挿通空間部に突出し前記開口部に向けて延在し、前記筐体は、外周面に取り付けられ、下方側に向かって延在するサイドカバーと、前記サイドカバーを上方側から下方側に向けて案内するガイド部と、を有し、前記挿通空間部は、前記筐体及び前記サイドカバーによって形成され、前記サイドカバーは、前記放熱部材を保持する保持部を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電気接続箱によれば、従来の構造や組み立て方法を変更することなく、温度上昇を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電気接続箱の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る電気接続箱の概略構成を示す部分分解斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る電気接続箱を構成するサイドカバーの斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る電気接続箱の主要部の概略構成を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る電気接続箱の概略構成を示す部分縦断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る電気接続箱の概略構成を示す部分分解斜視図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る電気接続箱の主要部の概略構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る電気接続箱の概略構成を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る電気接続箱について
図1~
図5を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る電気接続箱の概略構成を示す斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る電気接続箱の概略構成を示す部分分解斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る電気接続箱を構成するサイドカバーの斜視図である。
図4は、第1実施形態に係る電気接続箱の主要部の概略構成を示す斜視図である。
図5は、第1実施形態に係る電気接続箱の概略構成を示す部分縦断面図である。なお、
図3は、放熱部材がサイドカバーに組み付けられた状態を示す。
図4は、筐体2、サイドカバー6、サブブロックが省略されているものとする。
【0016】
ここで、
図1~
図5(
図6~
図8を含む)のX方向は、実施形態における電気接続箱の奥行方向である。特に、X1方向は奥方向、X2方向は手前方向である。Y方向は、実施形態における電気接続箱の幅方向であり、奥行方向と直交する方向である。Z方向は、実施形態における電気接続箱の上下方向であり、奥行方向及び幅方向と直交する方向である。特に、Z1方向は下方向であり、サイドカバーの取付方向である。Z2方向は上方向であり、サイドカバーの取外し方向である。
【0017】
第1実施形態に係る電気接続箱1は、例えば、自動車等の車両における車体に搭載されて、バッテリ等の電源から供給される電力を各種の電子部品等を介して、車体に搭載される各種の電子機器に分配するものである。電気接続箱1は、
図1に示すように、ワイヤハーネスWHに組み込まれ、電線等の接続処理用部品を構成するコネクタ、ヒューズ、リレー、分岐部、電子制御ユニット等の電子部品100を集約して内部に収容するものである。電気接続箱1は、車体のエンジンルーム等、外部環境に曝される場所に設置され、バッテリ等の電源と、車体内に搭載される各種電子機器との間に接続されている。なお、電気接続箱1は、ジャンクションボックス、ヒューズボックス、リレーボックス等とも呼ばれる場合があるが、以下の実施形態ではこれらを総称して電気接続箱と呼ぶ。電気接続箱1は、筐体2と、サイドカバー6と、端子付き電線7と、放熱部材8と、バスバー10とを備える。
【0018】
筐体2は、内部に形成された内部空間部2aに1以上の電子部品100と、分岐部の一種であるバスバー10とを収容する。筐体2は、絶縁性の合成樹脂によって箱型形状に形成されるものであり、ボックス本体3と、アッパーカバー4と、ロアカバー5とで構成される。筐体2は、下方側からロアカバー5、ボックス本体3、アッパーカバー4の順番に積層して形成される。ボックス本体3、アッパーカバー4、及びロアカバー5は、それぞれに係止機構が設けられる。各係止機構を互いに係合させることで、ボックス本体3とアッパーカバー4が、ボックス本体3とロアカバー5が、それぞれ係止され、かつ防水構造を形成する。筐体2は、ロアカバー5、ボックス本体3、及びアッパーカバー4の積層方向を上下方向と一致させて、車体側に取り付けられる。本実施形態における筐体2は、筐体2の外側に設けられた車体取り付け部を車体側、例えば車体側の取り付けパネル等と接触させ、ボルト等によって車体取り付け部と車体側とを締結させることで、車体に設置される。
【0019】
ボックス本体3は、電気接続箱1を車体側に設置した状態において上下方向から見た場合に、外周形状が略矩形形状に形成されている。ボックス本体3は、下方側端部に下方側開口部が、上方側端部に上方側開口部が形成される。ボックス本体3は、中空形状に形成され、下方側開口部と上方側開口部とが上下方向において内部空間部2aを介して連通する。ボックス本体3は、筐体2の内部空間部2aの一部を形成する周壁33を有する。ボックス本体3は、周壁33の外周面33aにサイドカバー6が取り付けられる。ボックス本体3は、内部空間部2aの一部として、収容空間部2cを有する。
【0020】
収容空間部2cは、筐体2において、挿通空間部2dに隣接して形成され、挿通空間部2dに連通する空間部である。収容空間部2cは、周壁33の一部が奥行方向に沿って切り欠かれる。周壁33の外周面33aは、周壁33が切り欠かれ奥行方向に対向する両端部33b間において、内部空間部2a側に凹んだ位置に形成される。周壁33の両端部33b間は、幅方向及び上下方向に延在するサイドカバー6により閉塞される。収容空間部2cは、スタッドボルトSが配置される。
【0021】
挿通空間部2dは、筐体2に設けられ、開口部2bを介して筐体2の外部と連通する空間部である。挿通空間部2dは、
図2及び
図5に示すように、ボックス本体3とサイドカバー6によって形成される。挿通空間部2dは、上方側端部及び下方側端部がそれぞれ開口される。上方側の開口32は、アッパーカバー4によって閉塞される。挿通空間部2dは、下方側の開口部2bによって、筐体2の外部と連通する。開口部2bは、挿通空間部2d内を挿通された端子付き電線7が外部に突出する部分である。開口部2bは、挿通空間部2dがサイドカバー6の傾斜壁63の傾斜方向に沿って形成されるので、上方側の開口より大きな開口面積を有する。挿通空間部2dは、ナットNにより端子付き電線7の端子71がスタッドボルトSに締結された締結状態において、端子付き電線7が開口部2bを介して外部から収容空間部2cに向けて挿通される。
【0022】
ここで、スタッドボルトSは、締結部材であり、電子部品100等が収容された空間から収容空間部2cに突出したバスバー10と、挿通空間部2dから収容空間部2cに突出した端子付き電線7とを物理的及び電気的に接続する。例えば、車体側の電源から電力が供給された場合、スタッドボルトSによって一箇所で電力の受け渡しが行われ、バスバー10を介して電力を各電子部品100に分配して供給することができる。スタッドボルトSは、例えば、周壁33の内周面と連結したスタッドボルトS用の取り付け部材等に取り付けられ、上方側に立設した状態で収容空間部2cに設置される。本実施形態のスタッドボルトSは、放熱部材8に物理的及び熱的に接続される。スタッドボルトSは、外周に螺子溝が切られており、スタッドボルトSにバスバー10、端子付き電線7、放熱部材8を順に挿入した後、ナットNをスタッドボルトSに挿入し螺合して、これらを締結する。
【0023】
サイドカバー6は、ボックス本体3の外周面33aに取り付けられ、下方側に向かって延在するものである。サイドカバー6は、周壁33の両端部33b間を、奥行方向に沿って閉塞するように取り付けられる。サイドカバー6は、外周面33aに取り付けられた取付状態において、内部空間部3a側に位置する内側面61が、両端部33b間の外周面33aと幅方向に対向する。サイドカバー6は、絶縁性の合成樹脂によって形成される。サイドカバー6は、周壁33の両端部33bに形成され、サイドカバー6を係止するための係止部34により係止される。係止部34は、幅方向及び奥行方向から見て、外周面33aから突出した係止板が、上方側に延在して形成される。サイドカバー6は、係止部34に係止された状態で、幅方向に対向する端部に沿って、周壁33の上下方向に形成されたガイド部35により上下方向にガイドされる。各ガイド部35は、外周面33aから手前方向に突出して形成される。サイドカバー6は、
図2及び
図3に示すように、サイドカバー本体部62と、傾斜壁63とを有する。
【0024】
サイドカバー本体部62は、幅方向及び奥行方向から見て略矩形形状に形成され、下方向に沿って鉛直に延在して形成される。サイドカバー本体部62は、内側面61と対向する外側面64に、上下方向から見て枠状に形成された係止部65と、内側面61に、奥行方向から見て枠状に形成された保持部66とを有する。係止部65は、サイドカバー6を取付方向からボックス本体3に取り付ける際に、ボックス本体3の係止部34が挿入されて嵌合することにより、サイドカバー6をボックス本体3に係止するものである。保持部66は、サイドカバー6に放熱部材8を保持するものである。保持部66は、
図3に示すように、放熱部材8がサイドカバー本体部62に保持された保持状態において、内側面61と放熱部材8を挟んで対向する位置に形成される。保持部66は、上記取付状態において、挿通空間部2dの幅方向に対向する両面を連結するように形成される。
【0025】
傾斜壁63は、サイドカバー6と端子付き電線7との隙間を確保するために傾斜して形成される。傾斜壁63は、サイドカバー本体部62の下方側端部から突出して形成される。サイドカバー本体部62と傾斜壁63とは、連続して一体に形成される。傾斜壁63は、下方向に向かって延在するとともにボックス本体3と離間する方向に傾斜して形成される。
【0026】
端子付き電線7は、例えば車体に搭載されるバッテリ等、筐体2の外部の電子部品から、スタッドボルトSを介して、複数の電子部品100に電力を供給するものである。端子付き電線7は、端子71と、電線本体72とを有する。
【0027】
端子71は、金属製のLA端子である。端子71は、スタッドボルトSに締結されることでバスバー10と電気的に接続される。端子71は、板状部材であり、長辺を有する略長方形状に延在して形成される。端子71は、延在方向における一方の端部に貫通孔71aを有する。貫通孔71aは、スタッドボルトSが貫通する孔である。端子71は、延在方向における他方の端部側に、圧着部71bを有する。圧着部71bは、延在方向と直交する方向、すなわち短辺方向の両端部が横方向に突出し、端子71に載置した電線本体72の外周を巻き込むように変形して保持する。端子71は、延在方向において、貫通孔71aと圧着部71bとの間で屈曲する。すなわち、端子71は、スタッドボルトSに締結された状態において、収容空間部2cから挿通空間部2dに延在し、かつ挿通空間部2dにおいて屈曲し、下方向に向かって延在して形成される。端子71は、スタッドボルトSに締結された状態において、上記のように屈曲していることにより、電線本体72を載置した面がサイドカバー6と対向する。
【0028】
電線本体72は、導電性を有し、筐体2の外部の電力、つまり車体側の電源等の電子部品と端子71とを電気的に接続するものである。電線本体72は、複数の導線を束ね、束ねた状態の導線の外周を絶縁体で被覆して形成される。電線本体72は、挿通空間部2dに少なくとも端部72aを含む一部が位置する。電線本体72は、端部72aにおいて導線を絶縁体の外部に露出し、端子71が圧着される。電線本体72は、挿通空間部2dの下方側端部の開口部2bを介して、挿通空間部2d内から筐体2の外部に突出して延在する。
【0029】
放熱部材8は、熱伝導性を有する熱伝導部材であり、例えば、板状の金属材料に対するプレス加工によって成形される。放熱部材8は、収容空間部2cにおいて端子付き電線7と熱的に接続される。放熱部材8は、収容空間部2cから挿通空間部2dに突出し開口部2bに向けて延在する。本実施形態の放熱部材8は、2つの屈曲部81と、熱的接続部82と、延在部83とを有する。
【0030】
2つの屈曲部81は、熱的接続部82と延在部83との間を屈曲させる部分である。本実施形態の各屈曲部81は、放熱部材8がスタッドボルトSに締結された状態で、スタッドボルトSに向けて同方向に屈曲して形成されている。
【0031】
熱的接続部82は、端子付き電線7と熱的に接続され、上方側の屈曲部81から端子付き電線7に向かう延在方向に延在する部分である。本実施形態の熱的接続部82は、端子付き電線7の端子71及びバスバー10と共に、収容空間部2cに配置されたスタッドボルトSに対して締結される。熱的接続部82は、上記保持状態で保持部66から露出するものである。熱的接続部82は、貫通孔8aを有する。貫通孔8aは、スタッドボルトSが貫通する孔である。
【0032】
延在部83は、熱的接続部82から2つの屈曲部81を介して延在方向と交差する上下方向の下方側に延在する部分である。延在部83は、
図5に示すように、放熱部材8が端子付き電線7と熱的に接続された接続状態において、当該延在部83の端部が端子付き電線7の端子71の下方側端部と開口部2bとの間に位置する。
【0033】
バスバー10は、導電性を有する導電部材であり、電気接続箱1を通る電路の一部を構成する。バスバー10は、電路上において、一方を内部空間部2aに収容された複数の電子部品100に電気的に接続され、他方を端子付き電線7に電気的に接続される。バスバー10は、
図4に示すように、金属板に対するプレス加工等によって形成されている。バスバー10は、スタッドボルトSと締結する部分に貫通孔10aを有し、内部空間部2aに収容された状態で、当該貫通孔10aにスタッドボルトSが挿通される。
【0034】
次に、本実施形態に係る電気接続箱1の組立て手順について説明する。まず、作業員は、ボックス本体3の内部空間部2aに収容するサブブロック(不図示)に電線(不図示)や、スタッドボルトSと接続されるバスバー10をそれぞれ組み付け、サブハーネスを作製する。次に、作業員は、ボックス本体3の下方側から上記サブハーネスごと上記サブブロックを内部空間部2aに挿入し、ボックス本体3のブロック取り付け部材等と嵌合して固定させる。次に、作業員は、ボックス本体3の上方側から各ブロックに対し電子部品100を搭載し、電子部品100と電線とを電気的に接続する。次に、作業員は、ボックス本体3の収容空間部2cに設置されたスタッドボルトS用の取り付け部材に、スタッドボルトSを取り付ける。
【0035】
次に、作業員は、被覆部材を剥いて導線を露出させた電線本体72の端部72aを端子71に載置する。次に、作業員は、治具を用い、端子71を、端子71の延在方向における貫通孔71aと圧着部71bとの間で略直角に屈曲させる。端子71の屈曲方向は、端子付き電線7をスタッドボルトSに締結した状態において、電線本体72を載置した面が周壁33と対向する方向である。次に、作業員は、治具を用いて圧着部71bを電線本体72の端部72aを包囲するように変形させ、電線本体72に端子71を圧着する。
【0036】
次に、作業員は、端子付き電線7を挿通空間部2dに挿通させ、収容空間部2cにて、端子71に形成された貫通孔71aにスタッドボルトSを貫通させる。次に、作業員は、サイドカバー6の保持部66に放熱部材8を挿通させる。このとき、貫通孔8aが設けられた熱的接続部82は、上記保持状態で保持部66から露出している。次に、作業員は、放熱部材8が組み付けられたサイドカバー6を、ボックス本体3のガイド部35に沿わせながら上方側から下方側に向けてボックス本体3に取り付ける。このとき、作業員は、サイドカバー6をボックス本体3に取り付ける共に、収容空間部2cにおいて、熱的接続部82に形成された貫通孔8aにスタッドボルトSを貫通させる。
【0037】
次に、作業員は、収容空間部2cにおいて、ナットNに形成され内周面に螺子溝を有する貫通孔をスタッドボルトSに挿入し、ナットNを回転させて、スタッドボルトSに螺合させる。作業員が、ナットNをスタッドボルトSに螺合させ続けることにより、ナットNは、熱的接続部82と接触する。作業員が、スタッドボルトSに対してナットNをそれ以上螺合させることが出来なくなったとき、ナットNとともに端子付き電線7の端子71及び放熱部材8の熱的接続部82がスタッドボルトSに締結される。
【0038】
以上のように、第1実施形態に係る電気接続箱1は、開口部2bを介して筐体2の外部と連通する挿通空間部2dと、バスバー10を収容し、挿通空間部2dに連通する収容空間部2cと、熱伝導性を有し、収容空間部2cで端子付き電線7と熱的に接続される放熱部材8とを備える。端子付き電線7は、開口部2bを介して挿通空間部2dを挿通し収容空間部2cにおいてバスバー10と電気的に接続される。放熱部材8は、収容空間部2cから挿通空間部2dに突出し開口部2bに向けて延在する。したがって、電気接続箱1は、端子付き電線7とバスバー10との接続部が通電により発熱しても、端子付き電線7に接続された放熱部材8により放熱面が拡大することで、通電による温度上昇を抑制することが可能となる。また、放熱部材8は、収容空間部2cから挿通空間部2dに突出し開口部2bに向けて延在するので、放熱面をより長くとることができ、開口部2bを介して外気と触れることが容易になり、温度上昇抑制の効果をさらに奏することができる。
【0039】
また、電気接続箱1は、放熱部材8が、端子付き電線7と熱的に接続され、屈曲部81から端子付き電線7に向かう延在方向に延在する熱的接続部82を有する。熱的接続部82は、端子付き電線7の端子及びバスバー10と共に、収容空間部2cに配置されたスタッドボルトSに対して締結される。したがって、スタッドボルトSに共締めされる端子付き電線7とバスバー10の構造や組み立て方法を変更することなく、筐体2の外部から電力供給する端子付き電線7に放熱部材8を接続することが可能となる。この結果、通電による温度上昇を抑制することができる。
【0040】
また、電気接続箱1は、放熱部材8が、端子付き電線7と熱的に接続された接続状態において、延在部83の端部が端子付き電線7の端子71の下方側端部と開口部2bとの間に位置する。したがって、延在部83が開口部2bから突出して他の部品と接触による電気回路の短絡(ショート)を防止することが可能となる。また、延在部83の端部が端子付き電線7の端子71の下方側端部よりも延在するので、放熱部材8を開口部2bに近づけることが可能となる。
【0041】
また、電気接続箱1は、筐体2の外周面33aに取り付けられ、下方側に向かって延在するサイドカバー6が、筐体2のガイド部35により上方側から下方側に向けて案内される。サイドカバー6は、保持部66により放熱部材8が保持される。したがって、例えば、作業員が筐体2にサイドカバー6を取り付けると同時に、スタッドボルトSに放熱部材8の貫通孔8aを挿通させることが可能となり、組み立て方法を変更することなく、電気接続箱1を組み立てることが可能となる。
【0042】
なお、上記第1の実施形態では、放熱部材8は、端子付き電線7の端子71とナットNと間に上下方向に挟まれた状態でスタッドボルトSに締結されるが、これに限定されるものではない。例えば、バスバー10と端子付き電線7の端子71との間に上下方向に挟まれた状態でスタッドボルトSに締結されてもよい。
【0043】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る電気接続箱について説明する。
図6は、第2実施形態に係る電気接続箱の概略構成を示す部分分解斜視図である。
図7は、第2実施形態に係る電気接続箱の主要部の概略構成を示す斜視図である。
図8は、第2実施形態に係る電気接続箱の概略構成を示す部分縦断面図である。なお、
図7は、筐体2、サイドカバー6、スタッドボルトS、及び端子付き電線7が省略されているものとする。
【0044】
第2実施形態に係る電気接続箱1Aは、放熱部材8及びバスバー10の一部の形状が異なる点で、上記第1実施形態に係る電気接続箱1と異なる。なお、第2実施形態に係る電気接続箱1Aは、第1実施形態に係る電気接続箱1と比較して、基本的構成及び基本的動作が共通しているので、同一符号部分に関しては、省略あるいは簡略化して説明する。
【0045】
放熱部材8Aは、
図7に示すように、上記第1実施形態の熱的接続部82と形状が異なる熱的接続部82Aを有する。熱的接続部82Aは、収容空間部2cに配置されたスタッドボルトSに端子付き電線7の端子71及びバスバー10Aが締結された締結状態において、端子付き電線7と電気的に接続されたバスバー10Aの端部から立設された係止片10bに対して係止機構91により係止される。係止片10bは、バスバー10Aが筐体2に収容された状態で、バスバー10AからスタッドボルトSと同方向(上方向)に向けて延在している。本実施形態の2つの屈曲部81は、熱的接続部82Aが係止片10bに係止された係止状態で、互いに異なる方向に屈曲して形成されている。
【0046】
熱的接続部82Aは、係止機構91と、基部92と、2つの接続部93,94とを有する。係止機構91及び接続部93,94は、上記係止状態で、下方側に向けて延在する。接続部93,94は、平板状の構成部である。接続部93の平面形状は、例えば、矩形である。接続部93,94は、当該接続部93,94の両面と基部92の両面とが同一面上に位置するように基部92から延在している。つまり、
図7に示すように、熱的接続部82Aは、奥行方向に沿って見た場合に基部92と接続部93,94とが連続した平板となるように構成されている。接続部93,94は、奥行方向に沿って隙間を設けて配置されている。
【0047】
係止機構91は、2つの接続部93,94の間から延出している。係止機構91と2つの接続部93,94との間には、それぞれスリットが形成されている。スリットは、上下方向に沿って延在している。係止機構91は、接続部93,94と協働して係止片10bを挟み込む。係止機構91は、係止片10bに当接する当接部が熱的接続部82Aを係止片10b側に向けて押圧するように構成されている。係止機構91は、接続部93,94と当接部との間に係止片10bが挿入されることにより、当接部が係止片10bから離間するように弾性変形する。係止機構91は、弾性復元力により、接続部93,94との間に係止片10bを挟み込み、接続部93,94と協働して係止片10bを保持する。
【0048】
次に、本実施形態に係る電気接続箱1Aの組立て手順について説明する。
【0049】
本実施形態では、作業員は、収容空間部2cにて、端子71に形成された貫通孔71aにスタッドボルトSを貫通させる前に、サイドカバー6の保持部66に放熱部材8Aを挿通させる。このとき、係止機構91を有する熱的接続部82Aは、上記保持状態で保持部66から露出している。次に、作業員は、放熱部材8が組み付けられたサイドカバー6を、ボックス本体3のガイド部35に沿わせながら上方側から下方側に向けてボックス本体3に取り付ける。このとき、作業員は、サイドカバー6をボックス本体3に組み付ける共に、係止機構91と接続部93,94との間に係止片10bを挟み込むようにして、収容空間部2cにおいて、係止片10bに熱的接続部82Aを係止させる。
【0050】
次に、作業員は、収容空間部2cにおいて、ナットNに形成され内周面に螺子溝を有する貫通孔をスタッドボルトSに挿入し、ナットNを回転させて、スタッドボルトSに螺合させる。作業員が、ナットNをスタッドボルトSに螺合させ続けることにより、ナットNは、端子付き電線7の端子71と接触する。作業員が、スタッドボルトSに対してナットNをそれ以上螺合させることが出来なくなったとき、ナットNとともに端子付き電線7の端子71がスタッドボルトSに締結される。
【0051】
以上のように、第2実施形態に係る電気接続箱1Aは、上記第1実施形態に係る電気接続箱1と同様の効果を奏すると共に、バスバー10Aに対して放熱部材8Aを容易に組み付けることができる。
【0052】
また、電気接続箱1Aは、放熱部材8Aの熱的接続部82Aが、収容空間部2cに配置されたスタッドボルトSに端子付き電線7の端子及びバスバー10Aが締結された締結状態で、係止機構91によりバスバー10Aの端部から立設された係止片10bに係止される。したがって、スタッドボルトSに共締めされる端子付き電線7とバスバー10Aの構造や組み立て方法を変更することなく、筐体2の外部から電力供給する端子付き電線7に放熱部材8Aを接続することが可能となる。この結果、通電による温度上昇を抑制することができる。
【0053】
また、電気接続箱1Aは、放熱部材8Aが、バスバー10Aと熱的に接続された接続状態において、延在部83の端部が端子付き電線7の端子71の下方側端部と開口部2bとの間に位置する。したがって、上記第1実施形態に係る電気接続箱1と同様の効果を奏する。
【0054】
なお、上記第1及び第2実施形態では、放熱部材8,8Aは、2つの屈曲部81を有するが、これに限定されるものではない。例えば、屈曲部81は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,1A 電気接続箱
2 筐体
2a 内部空間部
2b 開口部
2c 収容空間部
2d 挿通空間部
3 ボックス本体
33 周壁
33a 外周面
34 係止部
35 ガイド部
4 アッパーカバー
5 ロアカバー
6 サイドカバー
62 サイドカバー本体部
63 傾斜壁
64 外側面
7 端子付き電線
71 端子
72 電線本体
8,8A 放熱部材
81 屈曲部
82 熱的接続部
83 延在部
8a 貫通孔
91 係止機構
92 基部
93,94 接続部
10,10A バスバー
10a 貫通孔
10b 係止片
100 電子部品
N ナット
S スタッドボルト
WH ワイヤハーネス