(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】鉄道車両構体
(51)【国際特許分類】
B61D 17/08 20060101AFI20230418BHJP
B61D 17/06 20060101ALI20230418BHJP
B61D 17/12 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B61D17/08
B61D17/06
B61D17/12
(21)【出願番号】P 2019020936
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/021323(WO,A1)
【文献】特開2004-276724(JP,A)
【文献】特許第3955779(JP,B2)
【文献】特開2008-201313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/08
B61D 17/06
B61D 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側構体及び妻構体を接合してなる鉄道車両構体であって、
前記側構体と前記妻構体との間に板材からなる結合部材が架け渡されており、
前記側構体は、前記側構体の前記妻構体の側の最端部である側構体端部から離隔し、上下方向に延在する単数又は複数の側柱を有し、
前記結合部材は、前記側構体端部と、前記妻構体の前記側構体の側の最端部であって前記側構体端部と互いに隔離している妻構体端部との間に架け渡されており、
前記側柱の前記妻構体の側の端部と一体化した側柱フランジが前記側構体端部と縁を揃えた状態で前記側構体に接合されており、
前記側構体端部と、前記側柱フランジと、前記結合部材の側構体の側の端部とが互いに接合されている、鉄道車両構体。
【請求項2】
前記側構体端部の延長線と、前記妻構体端部の延長線と、前記結合部材とによって、前記上下方向に延在する略三角構造が形成されている、請求項1記載の鉄道車両構体。
【請求項3】
前記結合部材、前記側構体端部及び前記妻構体端部の前記鉄道車両構体の外側は、被覆部材により被覆されている、請求項
1又は2記載の鉄道車両構体。
【請求項4】
前記側構体及び前記妻構体にさらに台枠及び屋根構体が接合され、
前記結合部材は、前記台枠及び前記屋根構体まで延在している、請求項1~
3のいずれか1項に記載の鉄道車両構体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両構体に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両構体の前方の妻構体の側端部が障害物に衝突するオフセット衝突時における強度を向上させた鉄道車両構体が提案されている。例えば、特許文献1には、側構体と妻構体とが隅柱を介して接合されている鉄道車両構体が開示されている。隅柱は、横断面視で直角三角形状である。隅柱の横断面視での直角三角形状の直角を挟む2辺の一方は、側構体と接合される側構体接合面である。隅柱の横断面視での直角三角形状の直角を挟む2辺の他方は、妻構体と接合される妻構体接合面である。隅柱の横断面視での直角三角形状の斜辺は、側構体接合面と妻構体接合面との間のリブとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉄道車両構体において、オフセット衝突時における側構体と妻構体との接合の強度の向上がさらに望まれている。
【0005】
そこで本発明は、オフセット衝突時における側構体と妻構体との接合の強度が向上する鉄道車両構体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、側構体及び妻構体を接合してなる鉄道車両構体であって、側構体と妻構体との間に板材からなる結合部材が架け渡されており、側構体は、側構体の妻構体の側の最端部である側構体端部から離隔し、上下方向に延在する単数又は複数の側柱を有し、結合部材は、妻構体に最も近接した側柱よりも妻構体に近接した側構体の部位と、妻構体との間に架け渡されている鉄道車両構体である。
【0007】
この構成によれば、側構体及び妻構体を接合してなる鉄道車両構体において、側構体と妻構体との間に板材からなる結合部材が架け渡されており、側構体は、側構体の妻構体の側の最端部である側構体端部から離隔し、上下方向に延在する単数又は複数の側柱を有するため、オフセット衝突時に側構体において側構体端部を介して側柱に衝撃が加わることになるため、オフセット衝突時における強度が向上する。また、結合部材は、妻構体に最も近接した側柱よりも妻構体に近接した側構体の部位と、妻構体との間に架け渡されているため、結合部材が架け渡される長さを短くすることができ、オフセット衝突時における側構体と妻構体との接合の強度が向上する。
【0008】
この場合、結合部材は、側構体端部と、妻構体の側構体の側の最端部である妻構体端部との間に架け渡されており、側構体端部と妻構体端部とは互いに離隔していることが好適である。
【0009】
この構成によれば、結合部材は、側構体端部と、妻構体の側構体の側の最端部である妻構体端部との間に架け渡されており、側構体端部と妻構体端部とは互いに離隔していて、直接には互いに接合されておらず、結合部材を介して互いに接合されており、オフセット衝突時に側構体端部及び妻構体端部には結合部材を介して衝撃が加わることになるため、オフセット衝突時に妻構体から側構体を剥離させる力が働き難い。そのため、オフセット衝突時における妻構体からの側構体の剥離が低減し、オフセット衝突時における側構体と妻構体との接合の強度がさらに向上する。
【0010】
この場合、側柱の妻構体の側の端部と一体化した側柱フランジが側構体に接合されており、側構体端部と、側柱フランジと、結合部材の側構体の側の端部とが互いに接合されていることが好適である。
【0011】
この構成によれば、側柱の妻構体の側の端部と一体化した側柱フランジが側構体に接合されており、側構体端部と、側柱フランジと、結合部材の側構体の側の端部とが互いに接合されているため、側構体と側柱と結合部材との3つの部材を1つの接合箇所で互いに接合することができ、構造を簡略化することができる。
【0012】
この場合、結合部材、側構体端部及び妻構体端部の鉄道車両構体の外側は、被覆部材により被覆されていることが好適である。
【0013】
この構成によれば、結合部材、側構体端部及び妻構体端部の鉄道車両構体の外側は、被覆部材により被覆されており、オフセット衝突時の初期に結合部材、側構体端部及び妻構体端部には被覆部材を介して衝撃が加わることになるため、オフセット衝突時における側構体と妻構体との接合の強度がさらに向上する。
【0014】
また、側構体及び妻構体にさらに台枠及び屋根構体が接合され、結合部材は、台枠から屋根構体まで延在していることが好適である。
【0015】
この構成によれば、側構体及び妻構体にさらに台枠及び屋根構体が接合された鉄道車両構体において、結合部材は、台枠から屋根構体まで延在しているため、オフセット衝突時における側構体と妻構体との接合の強度がさらに向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鉄道車両構体によれば、オフセット衝突時における側構体と妻構体との接合の強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の鉄道車両構体を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の鉄道車両構体の側構体と妻構体との接合部位を鉄道車両構体の内側から視た斜視図である。
【
図3】第1実施形態の鉄道車両構体の側構体と妻構体との接合部位を鉄道車両構体の外側から視た斜視図である。
【
図4】第1実施形態の鉄道車両構体の側構体と妻構体との接合部位の横断面図である。
【
図5】第2実施形態の鉄道車両構体の側構体と妻構体との接合部位を鉄道車両構体の内側から視た斜視図である。
【
図6】第2実施形態の鉄道車両構体の側構体と妻構体との接合部位を鉄道車両構体の外側から視た斜視図である。
【
図7】第2実施形態の鉄道車両構体の側構体と妻構体との接合部位の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る鉄道車両構体について説明する。
図1に示すように、本発明の第1実施形態の鉄道車両構体1Aは、その内部に乗客を収容する空間を有する略箱型の形状をなしており、鉄道車両構体1Aの両側に位置し、窓部及びドアを有する側構体2と、鉄道車両構体1Aの前部及び後部に位置する妻構体4と、鉄道車両構体1Aの上部に位置する屋根構体6と、鉄道車両構体1Aの底部に位置する台枠8とを備える。鉄道車両構体1Aは、側構体2及び妻構体4を接合してなる。側構体2及び妻構体4には、さらに台枠8及び屋根構体6が接合されている。
【0019】
台枠8は略矩形状を有し、鉄道車両構体1Aの底部に配置されている。台枠8の周縁には、両側に位置する側構体2と、車両の前側及び後側に位置する妻構体4とが台枠8を囲むように立設されている。鉄道車両構体1Aの上部には、屋根構体6が側構体2と妻構体4とから構成された空間に蓋をするように配置されている。以下、図中でX方向は鉄道車両構体1Aの前後方向を示し、Y方向は鉄道車両構体1Aの前方に向かって幅方向を示し、Z方向は鉄道車両構体1Aの上下方向を示す。
【0020】
図2及び
図4に示すように、側構体2と妻構体4との間には、板材からなる結合部材10が架け渡されている。側構体2は、側構体2の妻構体4の側の最端部である側構体端部2eから離隔し、上下方向に延在する複数の側柱20を有する。なお、側構体2は、単数の側柱20を有していてもよい。結合部材10の側構体2の側の端部で側構体2に沿うように屈曲された結合部材フランジ11が側構体2に接合されている。結合部材10の妻構体4の側の端部で妻構体4に沿うように屈曲された結合部材フランジ12が、妻構体4に接合されている。側柱20の妻構体4の側の端部と一体化した側柱フランジ21と、側柱の妻構体4とは反対側の端部と一体化した側柱フランジ22とが、側構体2に接合されている。
【0021】
各部の接合は溶接により行われる。結合部材10は、妻構体4に最も近接した側柱20よりも妻構体4に近接した側構体2の部位と、妻構体4との間に架け渡されている。本実施形態では、側構体2、側柱フランジ21及び結合部材フランジ11が順次重ねられ、溶接により側構体2、側柱フランジ21及び結合部材フランジ11が互いに接合されている。結合部材10及び側柱20は、台枠8から
図1及び
図3に示す屋根構体6まで延在している。なお、側柱20とは、側構体2の外板から鉄道車両構体1Aの内側に突出した部位を意味し、側柱20を側構体2に接合するための側柱フランジ21,22は含まれない。
【0022】
妻構体4の側構体2の側の最端部である妻構体端部4eは、屈曲部4cで側構体端部2eに沿うように鉄道車両構体1Aの外側に屈曲され、側構体端部2eに溶接により接合されている。
図2、
図3及び
図4に示すように、側構体端部2e及び妻構体端部4eは、さらに被覆部材30が溶接により接合され、被覆されている。
【0023】
本実施形態によれば、側構体2及び妻構体4を接合してなる鉄道車両構体1Aにおいて、側構体2と妻構体4との間に板材からなる結合部材10が架け渡されており、側構体2は、側構体2の妻構体4の側の最端部である側構体端部2eから離隔し、上下方向に延在する単数又は複数の側柱20を有するため、オフセット衝突時に側構体2において側構体端部2eを介して側柱20に衝撃が加わることになるため、オフセット衝突時における強度が向上する。また、結合部材10は、妻構体4に最も近接した側柱20よりも妻構体4に近接した側構体2の部位と、妻構体4との間に架け渡されているため、結合部材10が架け渡される長さを短くすることができ、オフセット衝突時における側構体2と妻構体4との接合の強度が向上する。
【0024】
また、本実施形態によれば、側構体2及び妻構体4にさらに台枠8及び屋根構体6が接合された鉄道車両構体1Aにおいて、結合部材10は、台枠8から屋根構体6まで延在しているため、オフセット衝突時における側構体2と妻構体4との接合の強度がさらに向上する。
【0025】
以下、本発明の第2実施形態に係る鉄道車両構体について説明する。
図5及び
図7に示すように、本実施形態の鉄道車両構体1Bでは、結合部材10は、側構体端部2eと、妻構体4の側構体2の側の最端部である妻構体端部4eとの間に架け渡されており、側構体端部2eと妻構体端部4eとは互いに離隔している。本実施形態でも、結合部材10の側構体2の側の端部で側構体2に沿うように屈曲された結合部材フランジ11が側構体2に接合されている。結合部材10の妻構体4の側の端部で妻構体4に沿うように屈曲された結合部材フランジ12が、妻構体4に接合されている。側柱20の妻構体4の側の端部と一体化した側柱フランジ21と、側柱の妻構体4とは反対側の端部と一体化した側柱フランジ22とが、側構体2に接合されている。結合部材10及び側柱20は、台枠8から
図6に示す屋根構体6まで延在している。
【0026】
側構体端部2e、側柱フランジ21及び結合部材フランジ11が順次重ねられ、溶接により側構体端部2e、側柱フランジ21及び結合部材フランジ11が互いに接合されている。つまり、本実施形態では、側構体端部2eと、側柱フランジ21と、結合部材10の側構体2の側の端部とが互いに接合されている。妻構体端部4eに結合部材フランジ12が重ねられ、溶接により妻構体端部4e及び結合部材フランジ12が互いに接合されている。側構体2と妻構体4とは、直接には互いに接合されておらず、結合部材10を介して互いに接合されている。
【0027】
図5、
図6及び
図7に示すように、結合部材10、側構体端部2e及び妻構体端部4eの鉄道車両構体1Bの外側は、被覆部材40により被覆されている。被覆部材40は、鉄道車両構体1Bの外側から、側構体端部2e及び妻構体端部4eに溶接により接合されている。被覆部材40は、平面視において、屈曲部43で直角に屈曲した板材である。被覆部材40は、台枠8から屋根構体6まで延在している。被覆部材40は、平面視において、屈曲部43を挟んだ両端の一方に被覆部材接合部41を有し、屈曲部43を挟んだ両端の他方に被覆部材接合部42を有する。被覆部材接合部41は、側構体端部2eに溶接により接合されている。被覆部材接合部42は、妻構体端部4eに溶接により接合されている。
【0028】
本実施形態によれば、結合部材10は、側構体端部2eと、妻構体4の側構体2の側の最端部である妻構体端部4eとの間に架け渡されており、側構体端部2eと妻構体端部4eとは互いに離隔していて、直接には互いに接合されておらず、結合部材10を介して互いに接合されており、オフセット衝突時に側構体端部2e及び妻構体端部4eには結合部材10を介して衝撃が加わることになるため、オフセット衝突時に妻構体4から側構体2を剥離させる力が働き難い。そのため、オフセット衝突時における妻構体4からの側構体2の剥離が低減し、オフセット衝突時における側構体2と妻構体4との接合の強度がさらに向上する。
【0029】
また、本実施形態によれば、側柱20の妻構体4の側の端部と一体化した側柱フランジ21が側構体2に接合されており、側構体端部2eと、側柱フランジ21と、結合部材10の側構体2の側の端部とが互いに接合されているため、側構体2と側柱20と結合部材10との3つの部材を1つの接合箇所で互いに接合することができ、構造を簡略化することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、結合部材10、側構体端部2e及び妻構体端部4eの鉄道車両構体1Bの外側は、被覆部材40により被覆されており、オフセット衝突時の初期に結合部材10、側構体端部2e及び妻構体端部4eには被覆部材40を介して衝撃が加わることになるため、オフセット衝突時における側構体2と妻構体4との接合の強度がさらに向上する。
【0031】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の実施形態の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、結合部材10及び側柱20の形状は適宜変更し得る。また、結合部材10の側構体2及び妻構体4への接合方法及び側柱20の側構体2への接合方法も適宜変更し得る。
【符号の説明】
【0032】
1A,1B…鉄道車両構体、2…側構体、2e…側構体端部、4…妻構体、4e…妻構体端部、4c…屈曲部、6…屋根構体、8…台枠、10…結合部材、11,12…結合部材フランジ、20…側柱、21,22…側柱フランジ、30…被覆部材、40…被覆部材、41…被覆部材接合部、42…被覆部材接合部、43…屈曲部。