(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】砥石及び砥石の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24D 3/32 20060101AFI20230418BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20230418BHJP
B24B 53/00 20060101ALI20230418BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20230418BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B24D3/32
B24D3/00 320A
B24D3/00 340
B24B53/00 K
B24B53/12 Z
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2019027254
(22)【出願日】2019-02-19
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】595073432
【氏名又は名称】信濃電気製錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】西條 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大崎 浩美
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-223004(JP,A)
【文献】特開2003-181762(JP,A)
【文献】特開昭62-208874(JP,A)
【文献】特開昭59-192459(JP,A)
【文献】特開昭58-223565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/32
B24D 3/00
B24B 53/00
B24B 53/12
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒及び樹脂(メラミン系樹脂を除く)を含む砥粒組成物を硬化した硬化物からなる砥石であって、
前記樹脂は、レゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含む
ダイシングブレードドレッシング用砥石。
【請求項2】
前記砥粒及び前記樹脂の合計100質量部に対する前記樹脂の配合量が10~50質量部である請求項1に記載の
ダイシングブレードドレッシング用砥石。
【請求項3】
前記レゾール型フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)が300~600である請求項1または2に記載の
ダイシングブレードドレッシング用砥石。
【請求項4】
前記樹脂が弾性樹脂をさらに含み、
前記弾性樹脂は、プロピレン・ブタジエンゴム、ポリビニルアルコール及びポリビニルブチラールからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂である請求項1~3のいずれか1項に記載の
ダイシングブレードドレッシング用砥石。
【請求項5】
前記樹脂における前記弾性樹脂の割合が0~50質量%である請求項4に記載の
ダイシングブレードドレッシング用砥石。
【請求項6】
前記砥粒組成物が気孔生成剤をさらに含む請求項1~5のいずれか1項に記載の
ダイシングブレードドレッシング用砥石。
【請求項7】
レーザー回折散乱法により測定した前記気孔生成剤の体積平均一次粒子径が40~150μmである請求項6に記載の
ダイシングブレードドレッシング用砥石。
【請求項8】
前記樹脂100質量部に対する前記気孔生成剤の配合量が25~55質量部である請求項6または7に記載の
ダイシングブレードドレッシング用砥石。
【請求項9】
前記砥粒が、炭化ケイ素、アルミナ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及びジルコンサンドからなる群から選択される少なくとも1種のセラミックの砥粒である請求項1~8のいずれか1項に記載の
ダイシングブレードドレッシング用砥石。
【請求項10】
レーザー回折散乱法により測定した前記砥粒の体積平均一次粒子径が0.2~6.0μmである請求項1~9のいずれか1項に記載の
ダイシングブレードドレッシング用砥石。
【請求項11】
スーパーフィシャル15Yスケールで測定したロックウェル硬度が-35~80である請求項1~10のいずれか1項に記載の
ダイシングブレードドレッシング用砥石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石及び砥石の製造方法に関し、特にカッティングブレード等をドレスするためのドレッシングプレートに用いる砥石及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハ等の板状基材等の被加工物を切断して複数のチップに分割するためには、ダイシングブレードが用いられている。このダイシングブレードは、極薄の円盤の外周部に砥粒を固定した回転ブレードであり、これを高速回転させることで、被加工物を切断しチップ化する。
【0003】
ダイシングブレードの外周部に固定する砥粒には、例えば、ダイヤモンド、炭化ケイ素、アルミナ等が挙げられ、砥粒を固定する結合剤には、レジノイド、メタルボンド、ビトリファイド、電鋳ボンド等が挙げられる。ダイシングブレードを用いて連続的に切断加工を行うと、ダイシングブレードのソー部分に切削屑が付着し、ダイシングブレードが目詰まりしたり、砥粒や砥粒層が磨耗してダイシングブレードの切削力が低下したりしてしまう場合がある。そのため、ダイシングブレードのドレスを定期的に行い、新しい砥粒層を露出させる必要がある。例えば、被加工物の代わりにプレート状の砥石であるドレッシングプレートを、回転したダイシングブレードと接触させることで、ドレスを行ってダイシングブレードの切削力を回復させる。
【0004】
ドレスを行ったすぐ後に、ドレスを行ったダイシングブレードを使用して被加工物をダイシング加工すると、被加工物の切削面が粗くなり、被加工物が割れてしまう場合がある。これは、ドレス後のダイシングブレードのブレード刃面が粗いため、ダイシングブレードが被加工物に馴染んでおらず、このため、切削面が粗くなってしまうためである。そこで、従来は、ダイシングブレードのドレス後にダミーの被加工物を慣らし加工してダイシングブレードを被加工物に馴染ませてから、本番のダイシング加工を行っていた。
【0005】
ドレッシングプレートには、通常、砥粒を結合剤で固定した砥石が用いられる(例えば、特許文献1及び2参照)。また、砥石には、例えば、結合剤としてフェノール樹脂を用いた砥石が従来技術として知られている(例えば、非特許文献1参照)。フェノール樹脂には、ノボラック型とレゾール型とがあり、ノボラック型フェノール樹脂が砥石の主結合剤として用いられている。一方、レゾール型フェノール樹脂は砥粒の湿潤剤として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-15423号公報
【文献】特開2011-11280号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】日本セラミックス協会編,「セラミック工学ハンドブック(第2版)」,p1322~1325(2002年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この慣らし加工には手間がかかり、生産性を悪化させている。そのため、ダイシングブレードのドレス後に行う慣らし加工が省けると大幅な工程改善となる。ドレスを行った直後のダイシングブレードを用いて加工した被加工物の切削面の精度が向上すれば、ダイシングブレードのドレス後の慣らし加工なしでダイシング加工できる可能性がある。しかし、従来のダイシングブレードのドレッシングでは、ドレスを行った直後のダイシングブレードを用いて加工した被加工物の切削面の精度を高くすることが難しい。このため、板状基材等の被加工物を高精度にカッティングできるようにダイシングブレードをドレスできるドレッシングプレート及びその製造方法の開発が求められていた。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来よりもブレード刃を高精度にドレスできるドレッシングプレートに用いることができる砥石及びその砥石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、砥粒と結合剤としてのレゾール型フェノール樹脂とを含む砥石を用いたドレッシングプレートを使用してダイシングブレードをドレスすることにより、板状基材等の被加工物をドレス直後から高精度にダイシング加工できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
したがって、本発明は、下記の砥石及び砥石の製造方法を提供する。
[1]砥粒及び樹脂を含む砥粒組成物を硬化した硬化物からなる砥石であって、樹脂は、レゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含む砥石。
[2]砥粒及び樹脂の合計100質量部に対する樹脂の配合量が10~50質量部である上記[1]に記載の砥石。
[3]レゾール型フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)が300~600である上記[1]または[2]に記載の砥石。
[4]樹脂が弾性樹脂をさらに含み、弾性樹脂は、プロピレン・ブタジエンゴム、ポリビニルアルコール及びポリビニルブチラールからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂である上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の砥石。
[5]樹脂における弾性樹脂の割合が0~50質量%である上記[4]に記載の砥石。
[6]砥粒組成物が気孔生成剤をさらに含む上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の砥石。
[7]レーザー回折散乱法により測定した気孔生成剤の体積平均一次粒子径が40~150μmである上記[6]に記載の砥石。
[8]樹脂100質量部に対する気孔生成剤の配合量が25~55質量部である上記[6]または[7]に記載の砥石。
[9]砥粒が、炭化ケイ素、アルミナ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及びジルコンサンドからなる群から選択される少なくとも1種のセラミックの砥粒である上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の砥石。
[10]レーザー回折散乱法により測定した砥粒の体積平均一次粒子径が0.2~6.0μmである上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の砥石。
[11]スーパーフィシャル15Yスケールで測定したロックウェル硬度が-35~80である上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の砥石。
[12]ダイシングブレードドレッシング用砥石である上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の砥石。
[13]砥粒及び樹脂を混合して砥粒組成物を作製する工程、砥粒組成物を型に流し込む工程、及び型に流し込んだ砥粒組成物を硬化させる工程を含み、砥粒組成物における樹脂はレゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含む砥石の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の砥石を用いたドレッシングプレートを使用してドレスしたダイシングブレードであれば、板状基材等の被加工物を高精度にカッティングすることができ、ドレス後の慣らし加工工程なしでダイシング加工ができ、大幅な工程改善、製造工程の高効率化が実現する。また、本発明の砥石の製造方法によれば、得られる砥石を用いたドレッシングプレートの硬度、弾性、消耗度、切削性等がより改善される。
【0013】
また、砥石の結合剤として用いる樹脂が弾性樹脂を含む場合、得られる砥石の弾性特性がさらに改善され、さらに高精度にドレス加工ができる。
【0014】
さらに、砥石が気孔生成剤を含む場合、より好適な気孔が砥石に形成されることで、より高精度にドレス加工ができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
<砥石>
本発明の砥石は、砥粒及び樹脂を含む砥粒組成物を硬化した硬化物からなる。そして、上記樹脂はレゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含む。
(砥粒)
砥粒は、被加工物を削りとる作用を有する物質であり、砥石の中で切れ刃の役目をする。砥粒には適切な粒度、高い硬度、化学耐久性等が要求される。
【0017】
砥粒のレーザー回折・散乱法により測定した体積平均一次粒子径は、ドレス後のブレード刃仕上がり精度又はドレス後に慣らし加工なしでダイシング加工できる観点から、好ましくは0.2~6.0μm、より好ましくは0.3~5.0μm、さらに好ましくは0.5~4.5μmである。
【0018】
砥粒は、レジノイドボンドの砥石に用いられる砥粒であれば、特に限定されない。砥粒としては、例えば、炭化ケイ素、アルミナ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ジルコンサンド等が挙げられ、これらを単独又は二種以上を併せて用いることができる。なかでも炭化ケイ素やアルミナは、硬度が高く、他の材質に比べて切削能力に優れているため好ましい。
【0019】
砥粒にかかる研磨荷重が分散することによる仕上がり粗さや砥石の目詰まりのしやすさ、砥石の硬さと砥粒の自己脱落の生じやすさの観点から、砥粒組成物における砥粒の配合量は、砥粒及び樹脂の配合量の合計100質量部に対して、好ましくは50~90質量部であり、より好ましくは55~90質量部であり、さらに好ましくは58~90質量部である。
【0020】
(樹脂)
上述したように樹脂はレゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含む。すなわち、本発明の砥石はレゾール型フェノール樹脂を主結合剤として用いる。砥石において樹脂は砥粒を保持する役目をする。また、切れ刃の弾性的挙動、砥石全体としての衝撃吸収度等は樹脂に起因する。さらに、樹脂は、砥石の切れ味及び減耗に大きな影響を与える。
【0021】
砥石の切れ味及び減耗の観点から、砥粒組成物における樹脂の配合量は、砥粒及び樹脂の配合量の合計100質量部に対して、好ましくは10~50質量部であり、より好ましくは10~45質量部であり、さらに好ましくは10~42質量部である。
【0022】
(レゾール型フェノール樹脂)
レゾール型フェノール樹脂は、自己硬化性を持ち、加熱によって硬化し硬化物となる。また、レゾール型フェノール樹脂は、機械的衝撃及び熱的衝撃に強い。レゾール型フェノール樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを塩基性触媒の存在下で反応させることにより合成される。一般的に、上記反応後、減圧脱水が行われる。
レゾール型フェノール樹脂の合成に用いるフェノール類には、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、キシレノール、アルキルフェノール類、カテコール、レゾルシン等が挙げられ、これらを単独又は二種以上を併せて用いることができる。
レゾール型フェノール樹脂の合成に用いるアルデヒド類には、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物、及びこれらのアルデヒド化合物の発生源となる物質、あるいはこれらのアルデヒド化合物の溶液等が挙げられ、これらを単独又は二種以上を併せて用いることができる。
レゾール型フェノール樹脂の合成に用いる塩基性触媒には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、炭酸ナトリウム、アンモニア水、トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛等の二価金属塩等が挙げられ、これらを単独又は二種以上を併せて用いることができる。
【0023】
レゾール型フェノール樹脂を加熱すると、ヒドロキシメチル基とフェノール核とによる縮合反応が進行して、レゾール型フェノール樹脂は、三次元網目構造の不融不溶の固体となる。
【0024】
上述したように、一般に、砥石の主結合剤として用いるフェノール樹脂はノボラック型である。ノボラック型フェノール樹脂は、それ自身、熱可塑性樹脂であり、成形条件の幅が広く、寸法安定性もよい。また、ノボラック型フェノール樹脂は、レゾール型フェノール樹脂に比べて保存性もよい。しかし、被加工物をドレス直後から高精度にダイシング加工できるようにするためには、ダイシングブレードをドレスするために使用するドレッシングプレートに用いる砥石の砥粒は細かいことが好ましい。そして、砥粒の粒度が3000番(体積平均一次粒子径が4μm)より細かい(小さい)砥粒を用いる場合、ノボラック型フェノール樹脂を使用すると砥石の製造が難しくなる傾向にある。本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、レゾール型フェノール樹脂を用いることで、砥粒の粒度が3000番(体積平均一次粒子径が4μm)程度の細かい(小さい)砥粒であっても安定して砥石を製造することができることを見出した。
【0025】
細かい砥粒であっても安定して砥石を製造することができるという観点から、レゾール型フェノール樹脂は、室温25℃において液状であることが好ましい。
【0026】
レゾール型フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)は、砥石の摩耗性に関わる樹脂の強度の観点から、好ましくは300~600、より好ましくは350~500、さらに好ましくは350~450である。なお、レゾール型フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)はゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)(分子量測定装置:昭和電工社製、型番:RI-71)により、ポリスチレン換算で算出された値である。また、溶媒には50mM塩化リチウム、2mM塩酸(添加ジメチルホルムアルデヒド)を使用し、カラム温度は23℃とした。
【0027】
砥粒組成物の樹脂全体におけるレゾール型フェノール樹脂の配合量は、50質量%以上である。レゾール型フェノール樹脂の配合量が50質量%未満であると、砥石が機械的衝撃及び熱的衝撃に対して弱くなる場合がある。砥石の硬さや切削性、生産効率の観点から、砥粒組成物の樹脂全体におけるレゾール型フェノール樹脂の配合量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。
【0028】
(弾性樹脂)
砥石には、必要に応じて、樹脂として、レゾール型フェノール樹脂のほかにさらに弾性樹脂を含むことができる。フェノール樹脂を主体とする砥石は剛直で脆い場合がある。このため、砥石の弾性を確保してより高精度ドレス仕上げを行うために、レゾール型フェノール樹脂に弾性樹脂を混合してもよい。これにより、砥石の衝撃吸収度をさらに高くすることができる。弾性樹脂とは、その硬化物がレゾール型フェノール樹脂の硬化物に比べて高弾性を示す樹脂である。砥粒組成物が弾性樹脂を含むことにより砥石の弾性を向上させることができる。なお、弾性樹脂は、硬化したフェノール樹脂マトリックス中に微細な粒子となって均一に分散することが好ましい。
【0029】
弾性樹脂は、その硬化物がレゾール型フェノール樹脂の硬化物に比べて高弾性を示す樹脂であれば、特に限定されない。具体的には、弾性樹脂には、例えば、プロピレン・ブタジエンゴム(PBR)、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等が挙げられ、これらを単独又は二種以上を併せて用いることができる。これらの中で、得られる砥石の硬度、弾性、消耗度、切削性等の観点から、弾性樹脂としてプロピレン・ブタジエンゴムを用いることが好ましい。
【0030】
樹脂中に弾性樹脂を均一に分散させるという観点から、弾性樹脂は溶媒に乳化もしくは分散した状態で配合されることが好ましい。
【0031】
切れ刃の弾性的挙動及び砥石の衝撃吸収度の観点から、砥粒組成物の樹脂全体における弾性樹脂の配合量は、好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは5~50質量%であり、さらに好ましくは10~50質量%である。
【0032】
(気孔生成剤)
砥粒組成物は、必要に応じて、さらに気孔生成剤を含むことができる。気孔生成剤は、砥石に気孔を形成するために添加するものであり、気孔を有することで砥石の弾性を高めると共に、研削中に発生する研削屑の排出を促して目詰まりを抑制する。また、気孔は、砥石の研削抵抗を軽減し、研削焼けを防止する。気孔生成剤としては、中空の球状樹脂類が好ましい。中空の球状樹脂類には、例えば、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、これらを単独又は二種以上を併せて用いることができる。砥石の樹脂として主にフェノール樹脂が用いられることから、これらの中空の球状樹脂類の中で、フェノール系樹脂の中空の球状樹脂が好ましい。
【0033】
気孔生成剤によって砥石中に形成される気孔の大きさは、気孔生成剤の粒子径によって調整できる。気孔径が大きいほど、砥石の弾性と研磨屑の排出性を高めることができるが、大きすぎると砥石のワークへの接触面積が小さくなり切削性が低下する。そのため、気孔生成剤のレーザー回折・散乱法により測定した体積平均一次粒子径は、好ましくは40~150μmであり、より好ましくは50~120μmであり、さらに好ましくは60~100μmである。
【0034】
気孔生成剤を配合する場合、砥粒の脱落量及び研削性の観点から、気孔生成剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは25~55質量部であり、より好ましくは30~50質量部である。気孔生成剤を添加しない場合でも、成形時に自然に生成される空隙によって砥石に気孔が形成するが、安定的に目詰まりの抑制を促すために、気孔生成剤を配合した方が好ましい。
【0035】
(ロックウェル硬度)
ダイシングブレードをドレスするのに適切なロックウェル硬度であるという観点から、スーパーフィシャル15Yスケールで測定した砥石のロックウェル硬度は、-35~80であることが好ましく、-35~70であることがより好ましく、-30~60であることがさらに好ましい。スーパーフィシャル15Yスケールで測定したロックウェル硬度とは、JIS K7202-2「ロックウェル硬さ」測定に準じた方法により測定した値である。例えば、(株)マツザワ製ロックウェル硬度計を用い、直径1/2インチ(約12.7mm)の鋼球が先端に付いた圧子を砥石に接触させ基準荷重15kg・fを加えた際に生じた凹み深さから換算して、スーパーフィシャル15Yスケールでロックウェル硬さを測定することができる。ロックウェル硬度の値が、プラス側に大きいほど砥石は硬く、マイナス側が大きいほど砥石は柔らかいことを意味する。
【0036】
<砥石の製造方法>
また、本発明では、砥粒及び樹脂を混合して砥粒組成物を作製する工程、砥粒組成物を型に流し込む工程、及び型に流し込んだ砥粒組成物を硬化させる工程を含む砥石の製造方法を提供する。以下、各工程について詳しく説明する。
【0037】
[砥粒組成物を作製する工程]
この工程では、砥粒及び樹脂を混合して砥粒組成物を作製する。樹脂は、レゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含み、好ましくは60質量%以上含み、より好ましくは70質量%以上含む。レゾール型フェノール樹脂は、そのまま用いてもよいし、水溶液の状態で用いてもよいし、アルコール等の水以外の溶媒で溶解された状態で用いてもよい。
【0038】
砥粒及び樹脂の混合は、ゲージ圧が-0.095MPa以下の減圧下で行うことが好ましい。このようにすれば、砥粒及び樹脂の混合時に砥粒組成物内に気泡が発生する。そして、発生した気泡が砥粒組成物に残ることで、砥粒組成物に大きな気孔が形成されることを抑制することができ、砥石に均一な気泡を形成することができる。
【0039】
なお、砥粒組成物が弾性樹脂、気孔生成剤等を含む場合は、この工程において、砥粒及びレゾール型フェノール樹脂に弾性樹脂、気孔生成剤等を混合して砥粒組成物を作製する。
【0040】
[砥粒組成物を型に流し込む工程]
この工程では、砥粒組成物を型に流し込む。砥粒組成物内の気泡が型に流し込んだ後も砥粒組成物に残るように砥粒組成物を型に流し込むことが好ましい。
【0041】
[砥粒組成物を硬化させる工程]
この工程では、型に流し込んだ砥粒組成物を硬化させる。具体的には、型に流し込んだ砥粒組成物を加熱することにより、砥粒組成物を硬化させる。このとき、自硬化反応を十分に進行させるために、加熱温度は60℃以上が好ましく、70~90℃がより好ましい。また、加熱時間は20時間以上が好ましく、20~40時間がより好ましい。
【0042】
砥粒組成物を硬化させる工程の後、型から取出して、未反応物を取り除くために洗浄、乾燥させることが好ましい。乾燥後、さらに熱処理を施すことがより好ましい。熱処理の条件としては、例えば、110℃~200℃の熱処理温度と10~30時間の熱処理時間が挙げられる。200℃以下の熱処理温度、及び30時間以下の熱処理時間であれば、砥石の弾性が低下する恐れがない。
【0043】
[寸法出し加工工程]
砥粒組成物を硬化させる工程の後に寸法出し加工工程を実施してもよい。上記熱処理を施した後、寸法出し加工によって所望のサイズに加工された砥石を得ることができる。砥石の形状は、円盤状でもボード状でもよく、その他の形状でもよく、装着研磨機の条件によって任意に選ばれる。
【0044】
<ダイシングブレードドレッシング用砥石>
本発明の砥石は、ダイシングブレードドレッシング用砥石として用いることができる。具体的には、本発明の砥石を、高精度ドレス用ドレッシングプレートに用いることができる。
【0045】
このような本発明の砥石を用いた高精度ドレス仕上げ用ドレッシングプレートであれば、ダイシングブレードの刃部分を高精度にドレスすることができ、慣らし加工工程なしでダイシング工程を行うことが可能であり、さらに、慣らし加工工程を省くことで作業性が向上できる。
【0046】
また、本発明の砥石を、グラビア製版ロールの表面を平坦化するための砥石として用いてもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例及び比較例に制限されるものではない。
【0048】
<評価方法>
(樹脂の数平均分子量(Mn))
レゾール型フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)はゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)(分子量測定装置:昭和電工株式会社製、型番:RI-71)により、ポリスチレン換算で算出された値である。なお、溶媒には50mM塩化リチウム、2mM塩酸(添加ジメチルホルムアルデヒド)を使用し、カラム温度は23℃とした。
【0049】
(ロックウェル硬度)
(株)マツザワ製ロックウェル硬度計を用い、直径1/2インチ(約12.7mm)の鋼球が先端に付いた圧子を砥石に接触させ基準荷重15kg・fを加えた際に生じた凹み深さから換算して、スーパーフィシャル15Yスケールでロックウェル硬さを測定した。
【0050】
(慣らし加工なしでの使用及び加工精度)
作製したドレッシングプレートを用いて、厚み30μmの円盤の外周部にダイヤモンド砥粒を電鋳ボンドで固定したダイシングブレードをドレスした。その後、そのダイシングブレードを用いて、6インチ0.6TのSiウエハを、切り込み量0.2mm、ブレード回転数25,000rpm、送り速度30mm/secでダイシングを5ライン行った。そして、以下の基準で作製したドレッシングプレート用いてドレスしたダイシングブレードを評価した。
<慣らし加工で使用>
A:5ラインすべてにおいて、ドレス後に慣らし加工なしでも問題なくSiウエハをダイシングすることができた。
B:1ライン目はドレス後に慣らし加工なしでもSiウエハをダイシングすることができた。しかし、5ライン終了前に、Siウエハが破損し、最後までダイシングすることはできなかった。
C:ドレス後に慣らし加工なしでは、1ライン目の途中でSiウエハが破損し、Siウエハをダイシングすることはできなかった。
<加工精度>
A:切削面が粗くなく良好である。
B:切削面が多少粗い。
C:切削面が非常に粗い。
【0051】
[実施例1]
レゾール型フェノール樹脂(有効分70重量%、数平均分子量400、残部は水、未反応フェノール、ホルムアルデヒド)3kgに、炭化ケイ素から成る砥粒(GC#3000、体積平均一次粒子径4μm)5kgをさらに加えて混合し、均一なスラリーを調製した。なお、これらの混合調製は、ゲージ圧が-0.09MPaの減圧下で行った。
また、炭化ケイ素及びレゾール型フェノール樹脂の合計(砥粒及び樹脂の合計)100質量部に対する有効分換算の炭化ケイ素の配合量は70.4質量部であり、レゾール型フェノール樹脂の配合量は29.6質量部であった。
【0052】
調製したスラリーを型枠に注入して、60℃で24時間保持し、熱硬化化反応を進行させて固化させた。固化したものを型枠から取り出して水洗し、未反応物を除去した。その後、80℃で20時間乾燥させて、さらに150℃で10時間の熱処理を行った。熱処理後のものを所望の形状に加工してドレッシングプレートを完成させた。
【0053】
[実施例2]
実施例2では、レゾール型フェノール樹脂の数平均分子量500とした以外は、実施例1と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0054】
[実施例3]
実施例3では、砥粒をアルミナ(WA、体積平均一次粒子径4μm)とした以外は、実施例1と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0055】
[実施例4]
まず、レゾール型フェノール樹脂(有効分70重量%、数平均分子量400、残部は水、未反応フェノール、ホルムアルデヒド)2kgに、弾性樹脂としてプロピレン・ブタジエンゴム(PBR樹脂 日本エイアンドエル株式会社製、有効分40質量%、残部は水)0.5kgを乳化物としたものを加え、さらに気孔生成剤として中空フェノール球状樹脂0.64kg(巴工業株式会社製 体積平均一次粒子径70μm)を加えた。
なお、有効分換算で、レゾール型フェノール樹脂及びプロピレン・ブタジエンゴムの合計(樹脂の合計)に対するレゾール型フェノール樹脂の配合量は87.5質量%であり、プロピレン・ブタジエンゴムの配合量は12.5質量%であった。また、レゾール型フェノール樹脂及びプロピレン・ブタジエンゴムの合計(樹脂の合計)100質量部に対する中空フェノール球状樹脂の配合量は40質量部であった。
【0056】
炭化ケイ素から成る砥粒(GC#6000、体積平均一次粒子径2μm)7kgをさらに加えて混合し、均一なスラリーを調製した。なお、これらの混合調製は、ゲージ圧が-0.09MPaの減圧下で行った。
また、炭化ケイ素、レゾール型フェノール樹脂及びプロピレン・ブタジエンゴムの合計(砥粒及び樹脂の合計)100質量部に対する有効分換算の炭化ケイ素の配合量は81.4質量部であり、レゾール型フェノール樹脂の配合量は16.3質量部であり、プロピレン・ブタジエンゴムの配合量は12.5質量部であった。
【0057】
調製したスラリーを型枠に注入して、60℃で24時間保持し、熱硬化化反応を進行させて固化させた。固化したものを型枠から取り出して水洗し、未反応物を除去した。その後、80℃で20時間乾燥させて、さらに150℃で10時間の熱処理を行った。熱処理後のものを所望の形状に加工してドレッシングプレートを完成させた。
【0058】
[実施例5]
実施例5では、気孔生成剤を用いない以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0059】
[実施例6]
実施例6では、炭化ケイ素粉末(GC#8000、平均粒径1μm)を砥粒として用いた以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0060】
[実施例7]
実施例7では、炭化ケイ素粉末(GC#3000、平均粒径4μm)を砥粒として用いた以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0061】
[実施例8]
実施例8では、有効分換算で、砥粒とフェノール樹脂と弾性樹脂の合計量100質量部に対して、砥粒の配合量を60.0質量部とし、フェノール樹脂と弾性樹脂の配合量の合計を40.0質量部とした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
なお、炭化ケイ素、レゾール型フェノール樹脂及びプロピレン・ブタジエンゴムの合計(砥粒及び樹脂の合計)100質量部に対する有効分換算の炭化ケイ素の配合量は60.0質量部であり、レゾール型フェノール樹脂の配合量は35.0質量部であり、プロピレン・ブタジエンゴムの配合量は5.0質量部であった。
【0062】
[実施例9]
実施例9では、有効分換算で、砥粒とフェノール樹脂と弾性樹脂の合計量100質量部に対して、砥粒の配合量を89.9質量部とし、フェノール樹脂と弾性樹脂の配合量の合計を10.1質量部とした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
なお、炭化ケイ素、レゾール型フェノール樹脂及びプロピレン・ブタジエンゴムの合計(砥粒及び樹脂の合計)100質量部に対する有効分換算の炭化ケイ素の配合量は89.9質量部であり、レゾール型フェノール樹脂の配合量は8.8質量部であり、プロピレン・ブタジエンゴムの配合量は1.3質量部であった。
【0063】
[実施例10]
実施例10では、フェノール樹脂の配合量を、有効分換算で、フェノール樹脂と弾性樹脂の合計量の50質量%とした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
なお、炭化ケイ素、レゾール型フェノール樹脂及びプロピレン・ブタジエンゴムの合計(砥粒及び樹脂の合計)100質量部に対する有効分換算の炭化ケイ素の配合量は81.4質量部であり、レゾール型フェノール樹脂の配合量は9.3質量部であり、プロピレン・ブタジエンゴムの配合量は9.3質量部であった。
【0064】
[実施例11]
実施例11では、フェノール樹脂の配合量を、有効分換算で、フェノール樹脂と弾性樹脂の合計量の80質量%とした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
なお、炭化ケイ素、レゾール型フェノール樹脂及びプロピレン・ブタジエンゴムの合計(砥粒及び樹脂の合計)100質量部に対する有効分換算の炭化ケイ素の配合量は81.4質量部であり、レゾール型フェノール樹脂の配合量は14.9質量部であり、プロピレン・ブタジエンゴムの配合量は3.7質量部であった。
【0065】
[実施例12]
実施例12では、気孔生成剤の体積平均一次粒子径を60μmとした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0066】
[実施例13]
実施例13では、気孔生成剤の体積平均一次粒子径を100μmとした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0067】
[実施例14]
実施例14では、フェノール樹脂と弾性樹脂の合計量100質量部に対して気孔生成剤の配合量を30質量部とした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0068】
[実施例15]
実施例15では、フェノール樹脂と弾性樹脂の合計量100質量部に対して気孔生成剤の配合量を50質量部とした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0069】
[実施例16]
実施例16では、炭化ケイ素粉末(GC#1500、平均粒径7μm)を砥粒として用いた以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0070】
[実施例17]
実施例17では、炭化ケイ素粉末(平均粒径0.1μm)を砥粒として用いた以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0071】
[実施例18]
実施例18では、有効分換算で、砥粒とフェノール樹脂と弾性樹脂の合計量100質量部に対して、砥粒の配合量を95.0質量部とし、フェノール樹脂と弾性樹脂の配合量の合計を5質量部とした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
なお、炭化ケイ素、レゾール型フェノール樹脂及びプロピレン・ブタジエンゴムの合計(砥粒及び樹脂の合計)100質量部に対する有効分換算の炭化ケイ素の配合量は95.0質量部であり、レゾール型フェノール樹脂の配合量は4.4質量部であり、プロピレン・ブタジエンゴムの配合量は0.6質量部であった。
【0072】
[実施例19]
実施例19では、有効分換算で、砥粒とフェノール樹脂と弾性樹脂の合計量100質量部に対して、砥粒の配合量を49.9質量部とし、フェノール樹脂と弾性樹脂の配合量の合計を50.1質量部とした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
なお、炭化ケイ素、レゾール型フェノール樹脂及びプロピレン・ブタジエンゴムの合計(砥粒及び樹脂の合計)100質量部に対する有効分換算の炭化ケイ素の配合量は49.9質量部であり、レゾール型フェノール樹脂の配合量は43.8質量部であり、プロピレン・ブタジエンゴムの配合量は6.3質量部であった。
【0073】
[実施例20]
実施例20では、レゾール型フェノール樹脂の数平均分子量を200とした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0074】
[実施例21]
実施例21では、気孔生成剤の平均粒子径を200μmとした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0075】
[実施例22]
実施例22では、フェノール樹脂と弾性樹脂の合計量100質量部に対して、気孔生成剤の配合量を60質量部とした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
【0076】
[比較例1]
比較例1では、ノボラック型フェノール樹脂を主結合剤として用いた従来ビトリファイドボンド製のドレッシングプレートを用いた。
【0077】
[比較例2]
比較例2では、フェノール樹脂の配合量を、有効分換算で、フェノール樹脂と弾性樹脂の合計量の40質量%とした以外は、実施例4と同様の方法でドレッシングプレートを作製した。
なお、炭化ケイ素、レゾール型フェノール樹脂及びプロピレン・ブタジエンゴムの合計(砥粒及び樹脂の合計)100質量部に対する有効分換算の炭化ケイ素の配合量は81.4質量部であり、レゾール型フェノール樹脂の配合量は7.4質量部であり、プロピレン・ブタジエンゴムの配合量は11.2質量部であった。
【0078】
【0079】
[評価結果]
(実施例1~4)
ダイシングしたSiウエハは5ラインすべてにおいて、ドレス後に慣らし加工なしでも問題なくダイシングすることができ、加工精度が向上されたことがわかった。
【0080】
(実施例5)
ダイシングしたSiウエハは5ラインすべてにおいて、ドレス後に慣らし加工なしでも問題なくダイシングすることができ、加工精度が向上されたことがわかった。しかし、加工精度は実施例4より若干劣っていた。気孔生成剤が加工精度を向上させていることがわかった。
【0081】
(実施例6~15)
実施例6~15のドレッシングプレートも、慣らし加工なしで使用でき、加工精度が向上されたことがわかった。
【0082】
(実施例16)
実施例16のドレッシングプレートでは、1ライン目はダイシングできたものの、5ライン目終了前にSiウエハが破損してしまい、ダイシング加工できなかった。これは、砥粒の体積平均一次粒子径が6.0μmよりも大きかったため、ドレッシング後のブレード研削面の精度が低下し、ワーク切断面の精度が低下したためと考えられる。
【0083】
(実施例17)
実施例17のドレッシングプレートでは、1ライン目はダイシングできたものの、5ライン目終了前にSiウエハに亀裂が入ってしまい、ダイシング加工できなかった。これは、砥粒の体積平均一次粒子径が0.2μmよりも小さかったため、切削性能が低下し、ドレッシング後のブレード研削面の精度が低下し、ワーク切断面の精度も低下したためと考えられる。
【0084】
(実施例18)
実施例18のドレッシングプレートでは、1ライン目はダイシングできたものの、5ライン目終了前にSiウエハに亀裂が入ってしまい、ダイシング加工できなかった。これは、砥粒及び樹脂の合計100質量部に対する樹脂の配合量が10質量部よりも小さかったため、ドレス中にドレッシングプレートが目詰まりし、ダイシングブレードのドレス精度が低下したためと考えられる。
【0085】
(実施例19)
実施例19のドレッシングプレートでは、1ライン目はダイシングできたものの、5ライン目終了前にSiウエハに亀裂が入ってしまい、ダイシング加工できなかった。これは、砥粒及び樹脂の合計100質量部に対する樹脂の配合量が50質量部よりも大きかったため、砥粒の自生作用が低下したことで切削性能が低下し、ダイシングブレードのドレス精度が低下したためと考えられる。
【0086】
(実施例20)
実施例20のドレッシングプレートでは、1ライン目はダイシングできたものの、5ライン目終了前にSiウエハに亀裂が入ってしまい、ダイシング加工できなかった。これは、ドレッシングプレートのフェノール樹脂の数平均分子量が300よりも小さく、プレートの強度が低下したことでドレス中にプレート摩耗量が増大しブレード研削力が著しく増加したため、ダイシングブレードのドレス精度が低下したためと考えられる。
【0087】
(実施例21)
実施例21のドレッシングプレートでは、1ライン目はダイシングできたものの、5ライン目終了前にSiウエハに亀裂が入ってしまい、ダイシング加工できなかった。これは、配合した気孔生成剤の体積平均一次粒子径が150μmよりも大きかったため、ドレッシングプレートの気孔径が大きすぎるようになり、これによりワークへの砥粒接触面積が小さくなり、ドレッシングの切削性が低下したことでダイシングブレードのドレス精度が低下したためと考えられる。
【0088】
(実施例22)
実施例22のドレッシングプレートでは、1ライン目はダイシングできたものの、5ライン目終了前にSiウエハに亀裂が入ってしまい、ダイシング加工できなかった。これは、樹脂100質量部に対する気孔生成剤の配合量が55質量部よりも大きかったため、ドレッシングプレートの気孔率が大きすぎるようになり、これによりワークへの砥粒接触面積が小さくなり、ドレッシングの切削性が低下したことでダイシングブレードのドレス精度が低下したためと考えられる。
【0089】
(比較例1)
比較例1のダイシングブレードでは、1ライン目でSiウエハが破損して加工できなかった。また、切断面も非常に粗かった。これは、レゾール型フェノール樹脂の代わりにノボラック型フェノール樹脂を主結合剤として用いたためであると考えられる。
【0090】
(比較例2)
比較例2のドレッシングプレートでは、1ライン目でSiウエハに亀裂が入ってしまい、ダイシング加工できなかった。これは、ドレッシングプレートの樹脂中のフェノール樹脂の含有量が50質量%未満となり、プレートの脆性が増し、砥粒の自生作用が増加した事で切削性能が高くなり過ぎ、ダイシングブレードのドレス精度が低下したためと考えられる。
【0091】
以上のことから、本発明はダイシングブレードの様な円盤の外周部にダイヤモンド等の砥粒を各種ボンドで固定したブレードソーを、高精度にドレスすることができるドレッシングプレートを作製できることが明らかになった。
【0092】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。