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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】ロボット、集塵装置及び集塵方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20230418BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20230418BHJP
   B25J 9/02 20060101ALI20230418BHJP
   B23C 3/28 20060101ALN20230418BHJP
【FI】
B23Q11/00 M
H05K3/00 L
B25J9/02 A
B23C3/28
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019050135
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020151783
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】小林 明也
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161701(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1446214(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00;
H05K 3/00;
B25J 9/02;
B23C 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース本体に配設され、第1軸方向へ被切削体を移動させる第1移動機構と、
前記ベース本体に支持部を介して支持され、第1軸方向に対して直交する第2軸方向へ切削体を移動させる第2移動機構と、
前記切削体に対向して配置され、前記切削体を用いた前記被切削体の切削により生じる切削屑を集塵する集塵部と、
前記被切削体に近接する第1位置と前記被切削体から遠隔する第2位置との間において前記集塵部を移動させる集塵部移動機構と、
前記被切削体に対する前記切削体の移動に従動させて、前記切削体と対向する位置に前記集塵部を配置させる従動体と、
を備え、
前記従動体の一端部は、前記集塵部移動機構を支持すると共に前記集塵部移動機構を介して前記集塵部を支持し、
前記従動体の一端部に形成された空洞の内部には、
前記集塵部により集塵された切削屑を外部に排出する集塵ホースと、
前記集塵部を移動させるため、前記集塵部移動機構に接続し、流体を供給する流体供給ホースとが、
配策されているロボット。
【請求項2】
前記集塵部移動機構は、
前記切削体による前記被切削体の切削の際に、前記集塵部を前記第1位置へ移動させる
請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記集塵部移動機構は、
前記切削体による前記被切削体の切削の前又は後に、前記集塵部を前記第2位置へ移動させる
請求項1又は請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記集塵部は、第1軸方向、第2軸方向のそれぞれに対して直交する方向を管軸方向とする管状に形成され、
前記切削体には、この切削体を駆動させる駆動源が連結され、
管軸方向から見て、前記集塵部の開口の面積が、前記駆動源の面積に比し小さく、かつ、前記切削体の面積に比し大きい設定とされている
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項5】
前記集塵部移動機構は、
前記集塵部に接続され、第1軸方向、第2軸方向のそれぞれに対して直交する第3軸方向に沿って前記集塵部を往復移動させるアクチュエータにより構成されている
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項6】
前記集塵部は、第3軸方向において前記切削体よりも下側に配設されている
請求項5に記載のロボット。
【請求項7】
前記従動体の中間部は、前記被切削体を迂回する形状に形成されている
請求項に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット、集塵装置及び集塵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、プリント基板分割装置が開示されている。このプリント基板分割装置では、プリント基板を保持する受け治具部にプリント基板と並行な平板が配置されている。プリント基板と平板とにより形成される隙間の片面にはエア吹出口が設けられ、エア吹出口と対向する他の片面の近辺には平板にエア吸引口が穿設されている。
このように構成されるプリント基板分割装置では、エアの吹出しとエアの吸引とが同時に行われ、プリント基板を切断する際に発生する切粉を効果的に除去することができる。さらに、プリント基板の受け治具部への保持力を十分に確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-36182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記プリント基板分割装置では、プリント基板の平面サイズに匹敵するサイズを有する平板が少なくとも含まれるので、切粉の集塵のための装置構成が大型になる。産業用ロボットとして、例えば卓上ロボットにプリント基板分割装置が装着される場合には、卓上ロボットを含む、全体のシステムが大型化されてしまう。このため、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、集塵効率を向上させることができ、かつ、小型化を実現することができるロボット、集塵装置及び集塵方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1実施態様に係るロボットは、ベース本体に配設され、第1軸方向へ被切削体を移動させる第1移動機構と、ベース本体に支持部を介して支持され、第1軸方向に対して直交する第2軸方向へ切削体を移動させる第2移動機構と、切削体に対向して配置され、切削体を用いた被切削体の切削により生じる切削屑を集塵する集塵部と、被切削体に近接する第1位置と被切削体から遠隔する第2位置との間において集塵部を移動させる集塵部移動機構と、前記被切削体に対する前記切削体の移動に従動させて、前記切削体と対向する位置に前記集塵部を配置させる従動体と、を備え、前記従動体の一端部は、前記集塵部移動機構を支持すると共に前記集塵部移動機構を介して前記集塵部を支持し、前記従動体の一端部に形成された空洞の内部には、前記集塵部により集塵された切削屑を外部に排出する集塵ホースと、前記集塵部を移動させるため、前記集塵部移動機構に接続し、流体を供給する流体供給ホースとが、配策されている
【0007】
本発明の第2実施態様に係るロボットでは、第1実施態様に係るロボットにおいて、集塵部移動機構は、切削体による被切削体の切削の際に、集塵部を第1位置へ移動させる。
【0008】
本発明の第3実施態様に係るロボットでは、第1実施態様又は第2実施態様に係るロボットにおいて、集塵部移動機構は、切削体による被切削体の切削の前又は後に、集塵部を第2位置へ移動させる。
【0009】
本発明の第4実施態様に係るロボットでは、第1実施態様~第3実施の形態のいずれか1つに係るロボットにおいて、集塵部は、第1軸方向、第2軸方向のそれぞれに対して直交する方向を管軸方向とする管状に形成され、切削体には、この切削体を駆動させる駆動源が連結され、管軸方向から見て、集塵部の開口の面積が、駆動源の面積に比し小さく、かつ、切削体の面積に比し大きい設定とされている。
【0010】
本発明の第5実施態様に係るロボットでは、第1実施態様~第4実施態様のいずれか1つに係るロボットにおいて、集塵部移動機構は、集塵部に接続され、第1軸方向、第2軸方向のそれぞれに対して直交する第3軸方向に沿って集塵部を往復移動させるアクチュエータにより構成されている。
【0011】
本発明の第6実施態様に係るロボットでは、第5実施態様に係るロボットにおいて、集塵部は、第3軸方向において切削体よりも下側に配設されている。
【0014】
本発明の第実施態様に係るロボットでは、第実施態様に係るロボットにおいて、従動体の中間部は、被切削体を迂回させる形状に形成されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、集塵効率を向上させることができ、かつ、小型化を実現することができるロボット、集塵装置及び集塵方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態に係るロボットの全体構成並びに集塵装置の主要部の構成を正面側の右斜め上方から見た正面斜視図である。
図2図1に示されるロボット及び集塵装置の構成を右側面から見た右側面図である。
図3図1及び図2に示されるロボットの一部の構成及び集塵装置の主要部の構成を背面側の斜め上方から見た背面斜視図である。
図4図1図3に示される集塵装置の主要部の構成を背面側の左斜め上方から見た拡大背面斜視図である。
図5図1図4に示される集塵装置の主要部である集塵部及び移動機構の遠隔動作状態にある構成を背面側の斜め上方から見た拡大背面斜視図である。
図6図5に示される集塵部及び移動機構の近接状態にある構成を背面側の斜め上方から見た、図5に対応する拡大背面斜視図である。
図7図1及び図2に示されるロボットの切削体と図1図5に示される集塵装置の遠隔動作状態にある集塵部の断面とを更に拡大して示す拡大断面正面図である。
図8図1及び図2に示されるロボットの切削体と図1図4及び図6に示される集塵装置の近接動作状態にある集塵部の断面とを更に拡大して示す、図7に対応する拡大断面正面図である。
図9】(A)は本実施の形態に係る集塵装置の集塵部と被切削体とのクリアランスと集塵効率との関係を示す表図であり、(B)は(A)の表図に示される関係から作成したグラフである。
図10】(A)は本実施の形態に係る集塵装置の集塵部の吸込み口径と集塵効率との関係を示す表図であり、(B)は(A)の表図に示される関係から作成したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1図10を用いて、本発明の一実施の形態に係るロボット、集塵装置及び集塵方法について説明する。
ここで、図中、適宜示されている矢印Xは三次元座標のX軸方向を示し、矢印YはY軸方向を示し、矢印ZはZ軸方向を示している。Y軸方向は水平面においてX軸方向に対して直交し、Z軸方向はX軸方向及びY軸方向に対して直交している。なお、これらの各方向は、実施の形態を説明するために便宜的に使用される方向であって、本発明における方向を限定するものではない。
【0023】
(ロボット1及び集塵装置7の全体構成)
図1に示されるように、本実施の形態に係るロボット1は、3軸仕様であって、基板分割仕様の卓上ロボットとして構成されている。つまり、ロボット1は、第1軸方向としてのX軸方向へ移動する第1移動機構3と、第2軸方向としてのY軸方向へ移動する第2移動機構4と、第3軸方向としてのZ軸方向へ移動する第3移動機構5とを備えている。第1移動機構3、第2移動機構4及び第3移動機構5はベース本体2に配設されている。
そして、ロボット1には集塵装置7が配設されている。この集塵装置7は、ロボット1に組付けられ、固定されている。
以下、各構成要素について詳述する。
【0024】
(ロボット1の構成)
(1)ベース本体2の構成
図1及び図2に示されるように、ロボット1のベース本体2は、平面視において、X軸方向の長さに対してY軸方向の長さを同一か、或いは略同一に設定し、Z軸方向を厚さ方向(ここでは高さ方向)とする矩形直方体状の筐体21により構成されている。筐体21の上面は平坦な水平面を有するベース面21Aとして形成されている。
ここで、図2において、ベース本体2の左側は、操作者がワーク作業を実施するために操作等を行う、ロボット1の正面側とされる。一方、ベース本体2の右側は、ロボット1の背面側とされる。
【0025】
図1及び図2に戻って、筐体21の正面側端部は、ベース面21Aから下方向へ斜めに傾斜した操作面21Bと、この操作面21Bの正面側端から下方向へ延設された信号ポート面21Cとを備えている。
操作面21Bには、正面側から見て、右側に操作部22が配設されている。操作部22はベース本体2内に配設された図示省略の制御部に接続されている。
信号ポート面21Cには制御部に接続される各種の接続ポートが配設されている。接続ポートとして、ここでは、メモリポート、LAN(Local Area Network)ポート、ティーチングペンダント接続ポート、COM(Communication)ポート等が含まれている。接続ポートは、制御部とロボット1の外部装置とを接続する。
なお、筐体21の図示省略の背面側にも信号ポート面が配設され、この信号ポート面にはCOMポート、I/Oポート等の各種の接続ポートが配設されている。
【0026】
(2)第1移動機構3の構成
第1移動機構3はベース本体2のベース面21A上に配設されている。第1移動機構3は、スライドレール31と、スライダ(X軸移動体)32とを含んで構成されている。
スライドレール31は、ベース面21AのY軸方向中間部において、ベース面21A上にベース面21Aから突出して配設され、X軸方向を長手方向として延設されている。このスライドレール31はベース面21Aに固定された構造体として形成されている。
【0027】
スライダ32は、スライドレール31の上面及びスライドレール31の両側面に沿って形成され、スライドレール31に摺動自在に配設されている。つまり、スライダ32は、スライドレール31の長手方向に沿って、X軸方向を正方向及び逆方向へ往復移動する構成とされている。スライダ32は、スライドレール31下又は筐体21内に設けられた図示省略の電動モータと、電動モータの回転によりスライダ32を移動させる図示省略のベルト機構とを組み合わせた移動機構により高速移動を可能とする構成とされている。
【0028】
図2に示されるように、ロボット1においてワーク作業が実施される被切削体8は、図示省略の保持用治具を介在させてスライダ32に保持される。つまり、第1移動機構3はX軸方向へ被切削体8を移動させる構成とされている。
ここで、詳細な構成の説明は省略するが、被切削体8として、例えばプリント回路基板(PCB:Print Circuit Board)が使用されている。プリント回路基板は、ガラスエポキシ系樹脂基板を絶縁基板として用い、この絶縁基板に回路間を接続する銅配線を形成している。そして、このプリント回路基板には、集積回路、抵抗、容量等の電子部品が実装されている。
被切削体8としてのプリント回路基板には同一機能を有する複数のプリント回路基板が繰り返しパターンとして形成され、ロボット1では、被切削体8を切削により分割し、細分化するワーク作業が実施される。これにより、被切削体8から複数の細分化されたプリント回路基板を製作することができる。
また、ロボット1では、被切削体8の細分化、つまり基板分割だけに限らず、直線カット、曲線カット、直角カット、コーナの面取り等の切削作業を被切削体8に実施することができる。
【0029】
(3)第2移動機構4の構成
図1及び図2に示されるように、第2移動機構4は、ベース本体2のベース面21Aの上方であって、第1移動機構3の上方に配設されている。詳しく説明すると、第2移動機構4は、一対の支持部41及び支持部42と、スライドレール(水平アーム)43と、スライダ(Y軸移動体)44とを含んで構成されている。
【0030】
一対のうちの一方の支持部41は、正面側から見て、ベース本体2の筐体21の左側面において背面側端部に配設され、ベース本体2からZ軸方向上方側へ向かって立設された矩形柱形状に形成されている。他方の支持部42は、筐体21の右側面において背面側端部に配設され、支持部41と同様に、ベース本体2からZ軸方向上方側へ向かって立設された矩形柱形状に形成されている。
スライドレール43は、Y軸方向を長手方向として延設された矩形柱形状に形成され、一対の一方の支持部41から他方の支持部42へ架設されている。つまり、スライドレール43の一端部は支持部41の上端部に接続され、スライドレール43の他端部は支持部42の上端部に接続されている。
【0031】
左右一対の支持部41及び支持部42と、支持部41の上端部から支持部42の上端部へ架設されたスライドレール43とにより組み立てられた構造は、正面側から見て、ベース本体2側となる下側が解放され、上側が連結されて形成されている。スライドレール43の下端面が第3移動機構5の下方向への移動開始位置とすれば、第3移動機構5のZ軸方向の移動量(ストローク)に相当する分、少なくともスライドレール43の下端面はスライダ32からZ軸方向へ離間された位置に配置されている。
【0032】
スライダ44は、スライドレール43の正面側の側面及び上面に沿って形成され、スライドレール43に沿って摺動自在に配設されている。つまり、スライダ44は、スライドレール43の長手方向に沿って、Y軸方向を正方向及び逆方向へ往復移動する構成とされている。スライダ44は、スライドレール43内に設けられた図示省略の電動モータと、電動モータの回転によりスライダ44を移動させるベルト機構とを組み合わせた移動機構により高速移動を可能とする構成とされている。スライダ44は、第3移動機構5を内部に備えるので、Z軸方向を長手方向とする矩形柱形状に形成されている。
このように構成される第2移動機構4では、スライドレール43が、ベース本体2に一対の支持部41及び支持部42を介して両端支持梁構造により支持されている。さらに、第2移動機構4は、第1移動機構3とは独立に、かつ、分離してベース本体2に配設されている。
【0033】
図1に示されるように、スライダ44の上端部にはケーブルベア(登録商標)45の一端部が連結されている。ケーブルベア45の他端部はスライドレール43上においてY軸方向へ向かって延設されている。詳細な構造は省略するが、ケーブルベア45には、制御部と第2移動機構4、第3移動機構5のそれぞれとを接続する信号配線、図示省略の電源回路と第2移動機構4、第3移動機構5のそれぞれとを接続する電源配線が配策されている。
【0034】
(4)第3移動機構5の構成
第3移動機構5は、第2移動機構4のスライダ44の内部に配設されている。第3移動機構5は、スライダ44の内部に配設された図示省略のスライドレールと、スライダ(Z軸移動体)51とを含んで構成されている。スライダ51は、スライドレールに沿って摺動自在に配設され、Z軸方向を正方向及び逆方向へ往復移動する構成とされている。つまり、スライダ51は、上下方向へ昇降する構成とされている。
【0035】
(5)切削体6の構成
第3移動機構5には、ワーク作業を実施するツールとして、被切削体8を細分化する切削体6が装着されている。切削体6はスライダ51の下部に装着されている。
本実施の形態において、切削体6には切削工具としてのルータビット(Router bits)が使用されている。さらに詳しく説明すると、ここでは、Z軸方向に延設された円柱形状の円周面にZ軸方向へ刃先が形成されたストレートタイプのルータビットが使用されている。切削体6には、図示省略のコレットチャックを介在させて、切削体6を回転駆動させる駆動源62が連結されている。駆動源62としてはルータ(Router)が使用され、ルータは、Z軸方向と平行な方向を軸方向とする電動モータの回転軸を回転させることによって切削体6を回転させる。
切削体6は駆動源62を介在させて保持部61に保持され、切削体6及び駆動源62は保持部61を介在させてスライダ51に装着されている。
【0036】
なお、切削体6は、ルータビットに限定されるものではなく、被切削体8のワーク作業の内容に対応してドリル、バイト等の切削工具であってもよい。例えば、切削体6としてドリルが使用される場合、ワーク作業の内容として穿孔作業を被切削体8に実施することができる。また、切削体6としてバイトが使用される場合、ワーク作業の内容として溝堀り作業を被切削体8に実施することができる。
さらに、切削体6だけではなく、被切削体8はプリント回路基板に限定されるものではない。例えば、被切削体8は、絶縁体としての紙にフェノール樹脂を浸透させた紙フェノール基板であってもよい。また、被切削体8は、樹脂製や金属製のブロック形状を有するワーク作業材料であってもよい。
【0037】
本実施の形態では、切削体6(及び駆動源62)は第3移動機構5に装着されているのでZ軸方向へ移動するが、第3移動機構5が第2移動機構4のスライダ44に配設されているので、結果的に、第2移動機構4は切削体6をY軸方向へ移動させる。
【0038】
(集塵装置7の構成)
図1図3に示されるように、ロボット1は集塵装置7を備えている。集塵装置7は切削体6を用いた被切削体8の切削屑を集塵する機能を有する。例えば、前述の通り、被切削体8がプリント回路基板の場合、細分化によってガラスエポキシ系樹脂基板の切削屑及び銅配線の切削屑が生じるので、この切削屑が集塵装置7を用いて集塵される。
集塵装置7は、例えば締結部材を用いてロボット1に一体的に組付けて装着されるが、製品出荷時にロボット1に予め装着される形式、製品出荷後にオプションキットとしてロボット1に後付けされる形式のいずれの形式において構成されてもよい。
【0039】
集塵装置7は、集塵部71と、集塵部移動機構72と、従動体73とを主要な構成要素として備えている。なお、集塵装置7は、集塵ホースを介在させて、吸引機、フィルタ、集塵回収器等を有する、ロボット1とは別体の図示省略の外部集塵装置に接続される構成とされている。この外部集塵装置の説明は省略する。
以下、集塵装置7の構成要素について詳述する。
【0040】
(1)集塵部71の構成
図1及び図2に示されるように、集塵部71は、Z軸方向において、切削体6に対向して切削体6よりも下側に配置され、図2及び図7に示されるように、切削体6に対して被切削体8を介在させて配置されている。すなわち、本実施の形態では、集塵部71は切削体6の直下に配置されている。
図1図4図5及び図7に示されるように、集塵部71は、X軸方向、Y軸方向のそれぞれに対して直交するZ軸方向を管軸方向とする金属製又は樹脂製の管状に形成されている。集塵部71は上端の開口から内部71A(図8参照)へ切削屑を吸引する。
本実施の形態において、集塵部71は円管状に形成されている。このように構成される集塵部71では、被切削体8の切削箇所と集塵部71の上端の開口縁部との距離が、X軸-Y軸水平面において、どの方向でも一定になるので、集塵効率のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0041】
図7に示されるように、集塵部71では、管状の上端開口の開口面積A3が、上端開口と同一平面(便宜的に符号Sを付けて一点鎖線により示されるX軸-Y軸平面と平行な平面)において投影される駆動源62の面積A1に比し小さく設定されている。加えて、集塵部71の開口面積A3が、平面Sにおいて投影される切削体6の面積A2に比し大きく設定されている。つまり、集塵部71の管軸方向から見て、開口面積A3が面積A1に比し小さく、かつ、面積A2に比し大きい設定とされている。言い換えると、側面視において、集塵部71の開口寸法(直径寸法)は、切削体6の外径寸法(直径寸法)から駆動源62の外径寸法(直径寸法)までの範囲内に設定される。
本実施の形態では、集塵部71の開口寸法は、4mm~8mm、好ましくは6mmに設定されている。切削体6として、ここでは直径寸法0.6mm~1.0mmのルータビットが使用されている。従って、被切削体8の全体の平面サイズよりも極めて小さい領域であって、被切削体8の切削箇所よりも若干一回り広い領域において、集塵装置7では、集塵部71を用いてピンポイントにより切削屑を集塵することができる。
【0042】
集塵部71は、図4及び図5に示されるように、金属製又は樹脂製の直方体形状に形成された集塵部ベース711に配設されている。集塵部71は、集塵部ベース711の上端から下端へ集塵部ベース711の内部を貫通して組付けられている。集塵部71の上部は集塵部ベース711の上面から突出され、集塵部71の下部は集塵部ベース711の下面から突出されている。集塵部71の下部には継手712が装着されている。継手712には例えばカプラソケットが使用されている。
また、集塵部ベース711には、X軸方向において、ロボット1の正面側へ突出された連結部710が一体に形成されている。この連結部710は集塵部移動機構72との連結に使用されている。
【0043】
(2)集塵部移動機構72の構成
集塵部移動機構72は、図4図6に示されるように、集塵部71の連結部710の下方に、連結部710に連結されて配設されている。この集塵部移動機構72は、Z軸方向に沿って矢印Z1方向(図6参照)へ、連結部710を介在させて集塵部71を上下方向へ移動させるアクチュエータとして構成されている。
【0044】
図5及び図6に示されるように、本実施の形態において、集塵部移動機構72は、ピストンロッド72Pと、シリンダ72Cとを含んで構成されている。ピストンロッド72PはZ軸方向を軸方向とする円柱形状(丸棒形状)に形成されている。ピストンロッド72Pの上部は連結部710に連結されている。ピストンロッド72Pの下部は図示省略のピストンに連結され、このピストンがシリンダ72Cの内部においてZ軸方向へ摺動可能とされている。ここでは、X軸方向において、複数本、具体的には3本のピストンロッド72Pが配設されている。
【0045】
一方、シリンダ72Cは直方体形状のブロックとして構成されている。このシリンダ72Cの内部には、ピストンを上下方向へ摺動可能とする円筒形状の内部空間が形成されている(図示省略)。シリンダ72Cの一側面の上部にはピストンの上部において内部空間に繋がる第1流体口722Aが配設され、第1流体口722Aには継手723が装着されている。シリンダ72Cの一側面の下部にはピストンの下部において内部空間に繋がる第2流体口722Bが配設されている。第2流体口722Bには継手724が装着されている。継手723、継手724のそれぞれには、例えばカプラソケットが使用されている。
第1流体口722Aから流体がシリンダ72Cの内部空間へ流入されると、ピストンが下方へ押下げられ、ピストンロッド72Pが下降する。また、第2流体口722Bから流体がシリンダ72Cの内部空間へ流入されると、ピストンが上方へ押上げられ、ピストンロッド72Pが上昇する。
ここで、流体としては圧縮空気が使用されている。すなわち、本実施の形態では、集塵部移動機構72は空気シリンダ機構により構成されている。圧縮空気はロボット1の外部に設置された図示省略のコンプレッサから供給される。
第1流体口722Aへの流体の供給と、第2流体口722Bへの流体の供給との切替えには例えば電磁弁が使用されている。図1には、電磁弁を被覆するカバー729しか示していないが、電磁弁は、支持部42に装着され、カバー729により覆われている。
【0046】
このように構成される集塵部移動機構72では、図5及び図7に示される被切削体8の下面から遠隔する第2位置と、図6及び図8に示される被切削体8の下面へ近接する第1位置との間において集塵部71の上端面を移動させることができる。
図8に示されるように、第1位置において、被切削体8の下面から集塵部71の上端面までの距離(クリアランス)L1は、本実施の形態において、1mm~2mm、好ましくは1mmに設定されている。また、第1位置から第2位置までの移動距離(集塵部71の上下方向のストローク)L2はここでは10mmに設定されている。
【0047】
(3)従動体73の構成
図1図4に示されるように、従動体73は、一端部731と、他端部732と、中間部733とを含んで構成されている。
【0048】
図4に示されるように、一端部731は、上面が解放された矩形箱状の筐体731Aと、筐体731Aに比し、若干サイズが大きい、下面が解放された矩形箱状の蓋731Bとを重ね合わせて構成されている。筐体731A、蓋731Bのそれぞれは、X軸方向を長手方向とし、Y軸方向を短手方向とし、Z軸方向を厚さ方向として形成されている。筐体731A、蓋731Bは、いずれも機械的強度が高い例えば金属製とされている。
一端部731の正面側の一端部において、蓋731Bには背面側へX軸方向に切り欠いた形状の開口部731Cが形成されている。この開口部731C内(又は開口部731Cと一致する領域)において、一端部731の筐体731Aには集塵部移動機構72が組付けられている。さらに、筐体731Aには、集塵部移動機構72を介在させ、開口部731Cから上方へ突出する集塵部71が支持されている。この集塵部71は、前述の通り、切削体6の直下に配置されている。
【0049】
一端部731は筐体731Aと蓋731Bとを重ね合わせて空洞の内部731Dを形成しているので、内部731Dには集塵ホース713、流体供給ホース725及び流体供給ホース727が配策されている。
集塵ホース713の一端部は集塵部71の下端部に装着された継手712に接続され、集塵ホース713の他端部は一端部731の背面側に配設された継手714に接続されている。継手714は図示省略の集塵ホースを介在させて外部集塵装置に接続可能とされている。
流体供給ホース725の一端部は集塵部移動機構72のシリンダ72Cに装着された継手723に接続され、流体供給ホース725の他端部は一端部731の背面側に配設された継手726に接続されている。流体供給ホース727の一端部はシリンダ72Cに装着された継手724に接続され、流体供給ホース727の他端部は一端部731の背面側に配設された継手728に接続されている。継手726、継手728のそれぞれは、前述の電磁弁を介在させてコンプレッサに接続可能とされている。
【0050】
図1図3に示されるように、他端部732は第2移動機構4のスライダ44に装着されている。他端部732は、スライダ44のY軸方向両端部のそれぞれに一対に配設され、Z軸方向を長手方向とし、Y軸方向を板厚方向とする金属製の板状部材により形成されている。また、更に機械的強度を高めるため、他端部732は、アングル材により形成してもよい。この他端部732は締結部材を用いてスライダ44に組付けられている。
【0051】
中間部733は、上側の一端部を他端部732の下部に一体又は一体的に接続し、下側の他端部を一端部731の背面側に接続して構成されている。中間部733は、一対の他端部732のそれぞれに対応させてY軸方向に離間して一対において配設されている。
ここで、「一体」とは、他端部732と中間部733とが同一材料から連結された状態において形成されているという意味において使用されている。また、「一体的」とは、他端部732と中間部733とが、同一材料又は異なる材料からそれぞれ形成され、溶接等の接合手段やボルトナット等の締結手段を用いて連結されているという意味において使用されている。
【0052】
図2に示されるように、中間部733は、他端部732との接続箇所からロボット1の背面側へ向かってX軸方向へ延設され、この延設された端部から下方へ向かってZ軸方向へ延設された形状に形成されている。この中間部733は、Y軸方向を板厚方向とする金属製の板材により形成されている。すなわち、中間部733は、Y軸方向を回転軸方向として、L字形状の板材を180度回転させた逆L字形状に形成されている。
このように構成される中間部733は、被切削体8の切削体6側の表面(上面)に沿ってロボット1の背面側へ、被切削体8を迂回させる形状に形成されている。
【0053】
図1及び図3に示されるように、一対の中間部733の背面側へ向かって延設された箇所の上部には、双方に跨がって連結部734が配設されている。連結部734は、平面視において矩形状に形成され、Z軸方向を板厚方向とする金属製又は樹脂製の板材により形成されている。連結部734は、一対の中間部733を連結し、機械的強度を向上させている。
【0054】
上記の通り構成される従動体73は、一端部731において集塵部移動機構72及び集塵部71を支持し、他端部732を第2移動機構4に接続している。このため、従動体73では、被切削体8に対する切削体6の移動に従動させて、切削体6と対向する位置に、常時、集塵部71を配置させることができる。
【0055】
(ロボット1の集塵方法)
前述の図1図8を用いて、本実施の形態に係るロボット1の集塵方法について簡単に説明する。
【0056】
まず、第1移動機構3のスライダ32に、図示省略の保持用治具を介在させて、被切削体8が保持される(図1及び図2参照)。第1移動機構3によりスライダ32がX軸方向へ移動されると、スライダ32の移動に従動して被切削体8がX軸方向へ移動する。
一方、第3移動機構5のスライダ51には、保持部61を介在させて、ツールとしての駆動源62が装着されている。駆動源62には切削体6が連結されている。第3移動機構5は第2移動機構4のスライダ44に配設されているので、スライダ44がY軸方向へ移動されると、スライダ44の移動に従動して切削体6がY軸方向へ移動する。
被切削体8のX軸方向への移動前或いは移動後、又は同時に切削体6がY軸方向へ移動されることにより、X軸-Y軸平面上における被切削体8の切削箇所へ切削体6を移動させることができる。
【0057】
被切削体8又は切削体6が移動されているとき、集塵装置7の集塵部移動機構72は、図5及び図7に示されるように、集塵部71の上端面を第2位置に移動させている。つまり、集塵部71は被切削体8の表面から遠隔されている。
図7では図示が省略されているが、ここでは被切削体8にプリント回路基板が使用されている。プリント回路基板には、実際には、集積回路、抵抗、容量等の電子部品が実装されている。集塵部71の上端面が被切削体8から遠隔する第2位置に配置されることによって、被切削体8に対して相対的に集塵部71が移動しているとき、上記の電子部品と集塵部71との接触や干渉が効果的に排除される。
【0058】
第3移動機構5のスライダ51を下方へZ軸方向に移動させ、切削体6が被切削体8に向かって移動される。この切削体6の移動開始前或いは移動開始後、又は移動開始と同時に、図6及び図8に示されるように、集塵部71の上端面(開口)を第1位置に移動させ、集塵装置7を用いて集塵が開始される。つまり、集塵部71は、切削体6を用いた被切削体8の切削開始に合わせて、被切削体8に近接させる。
【0059】
切削体6を用いた被切削体8の切削が開始されると、切削により生じた切削屑は、図8に矢印を用いて示されるように、集塵部71の内部71Aへ集塵される。被切削体8の切削箇所が移動しても、集塵装置7では、従動体73によって切削体6の直下にピンポイントにおいて集塵部71が、常時、配置されるので、集塵が継続して行われる。
【0060】
被切削体8の切削作業が終了し、ここでは複数のプリント回路基板に細分化されると、第3移動機構5のスライダ51を上方へZ軸方向に移動させ、被切削体8の切削終了箇所から切削体6が移動する。この切削体6の移動開始前、移動開始後又は移動開始と同時に、集塵装置7の集塵部移動機構72は、図5及び図7に示されるように、集塵部71の上端面を第2位置に移動させる。つまり、集塵部71は被切削体8の表面から遠隔される。この状態において、被切削体8に対して、切削体6及び集塵部71が移動する。これにより、ロボット1の集塵方法は終了する。
【0061】
(作用効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るロボット1は、図1及び図2に示されるように、第1移動機構3と、第2移動機構4とを備える。第1移動機構3は、ベース本体2に配設され、第1軸方向としてX軸方向へ被切削体8(図2参照)を移動させる。第2移動機構4は、ベース本体2に支持部41及び支持部42を介して支持され、X軸方向に対して直交する第2軸方向としてのY軸方向へ切削体6を移動させる。
【0062】
ここで、ロボット1は更に集塵装置7を備える。集塵装置7は、図1図8に示されるように、集塵部71と、集塵部移動機構72とを含んで構成される。集塵部71は、図2図7及び図8に示されるように、切削体6に対向し被切削体8を介在させて配置され、切削体6を用いた被切削体8の切削により生じる切削屑を集塵する。集塵部移動機構72は、図5図8に示されるように、被切削体8に近接する第1位置と被切削体8から遠隔する第2位置との間において集塵部71を移動させる。
【0063】
このように構成されるロボット1では、集塵部移動機構72を用いて、被切削体8に近接した状態において、集塵部71により切削屑が集塵されるので、集塵部71における切削屑の吸引力を向上させ、集塵効率を向上させることができる。
図9(A)には被切削体8の下面から集塵部71の上端面までの距離(クリアランス)L1[mm](図8参照)と切削屑の集塵効率[%]との実測値が示されている。この実測値に基づいて作成したグラフが図9(B)に示されている。図9(B)において、横軸は距離L1[mm]を示し、縦軸は集塵効率[%]を示している。
図9(A)及び図9(B)に示されるように、距離L1が4[mm]のとき集塵効率は82.5[%]であり、距離L1が3[mm]のとき集塵効率は90.1[%]であり、距離L1が2[mm]のとき集塵効率は96.7[%]である。つまり、切削の際に、距離L1が小さくなれば、距離L1に反比例して集塵効率が高くなる。そして、距離L1が1[mm]になると、実測した範囲において、集塵効率は最も高い99.5[%]に達する。
【0064】
上記の通り、ロボット1では、集塵部71を被切削体8に近接させて集塵効率を向上させることができるので、被切削体8の切削箇所にピンポイントに集塵部71が配置されれば、集塵部71を用いて確実に切削屑を集塵することができる。このため、集塵部71のサイズ、つまり集塵装置7のサイズを小さくすることができるので、ロボット1の小型化を実現することができる。
【0065】
また、ロボット1では、集塵部移動機構72を用いて、切削の前或いは後に、被切削体8から遠隔する第2位置へ集塵部71を移動させることができる。仮に、被切削体8の下面に突出部位が存在したとしても、例えばプリント回路基板に電子部品が実装されたとしても、電子部品と集塵部71との接触や干渉を効果的に抑制又は防止することができる。
このため、実装部品を迂回することなく、集塵部71を移動させることができるので、集塵部71の移動時間を含む切削加工に要する時間を短縮することができる。
【0066】
さらに、ロボット1では、被切削体8の切削箇所にピンポイントに集塵部71が配置されるので、被切削体8の全面を吸引する場合に比し、第1移動機構3の駆動に対する負荷を軽減することができる。これにより、第1移動機構3の駆動力を小さくすることができるので、この点でも、ロボット1の小型化を実現することができる。
【0067】
また、ロボット1では、被切削体8の切削箇所にピンポイントに集塵部71が配置されるので、被切削体8の全面を吸引する場合に比し、周囲の余分な空気を吸込む吸引損失を効果的に減少させることができる。このため、外部集塵装置の吸引能力を小さくすることができるので、ロボット1及び外部集塵装置を含む全体システムの小型化を実現することができる。
【0068】
さらに、ロボット1では、被切削体8の切削箇所にピンポイントに集塵部71が配置されるので、被切削体8の全体を囲み密閉度を高める集塵ボックスが必要とされない。このため、ロボット1の小型化をより一層実現することができる。
【0069】
また、本実施の形態に係るロボット1では、図4図8に示されるように、集塵部71は、X軸方向、Y軸方向のそれぞれに対して直交するZ軸方向を管軸方向とする管状に形成される。切削体6には、図1図2及び図7に示されるように、この切削体6を駆動させる駆動源62が連結される。そして、図7に示されるように、管軸方向から見て、集塵部71の開口面積A3が、この開口と便宜的に設定した同一平面Sにおいて投影される、駆動源62の面積A1に比し小さく、かつ、切削体6の面積A2に比し大きい設定とされる。つまり、これらの面積は下記不等式の関係になる。
駆動源62の面積A1>集塵部71の開口面積A3>切削体6の面積A2
【0070】
図10(A)には集塵部71の開口径、つまり吸込み口径[mm](図7において開口面積A3と表記した幅寸法に相当)と切削屑の集塵効率[%]との実測値が示されている。この実測値に基づいて作成したグラフが図10(B)に示されている。図10(B)において、横軸は吸込み口径[mm]を示し、縦軸は集塵効率[%]を示している。
図10(A)及び図10(B)に示されるように、吸込み口径が2[mm]のとき集塵効率は97.3[%]であり、吸込み口径が4[mm]のとき集塵効率は96.7[%]である。吸込み口径が2[mm]から4[mm]に拡大されると、集塵効率が若干低くなる。しかしながら、吸込み口径が6[mm]のときには、集塵効率は99.5[%]と実測した範囲において最も高くなる。吸込み口径が8[mm]になると、集塵効率は98.8[%]となり、吸込み口径が6[mm]のときに比し、若干、低くなる。
このため、被切削体8の全面を吸引する場合に比し、ツールとしての駆動源62、ここではルータよりも小さいサイズにおいて集塵部71を構成することができるので、ロボット1の小型化をより一層実現することができる。
【0071】
さらに、本実施の形態に係るロボット1では、集塵装置7の集塵部移動機構72は、図5及び図6に示されるように、集塵部71に接続され、X軸方向、Y軸方向のそれぞれに対して直交するZ軸方向に沿って集塵部71を往復移動させるアクチュエータにより構成される。
このため、集塵部71をZ軸方向へのみ往復移動させる単純な構造、かつ、小型のアクチュエータにより集塵部移動機構72を構成することができるので、集塵装置7、更にはロボット1の小型化をより一層実現することができる。
詳しく説明すると、本実施の形態では、図6に示されるように、集塵部移動機構72は、図示省略のピストンに連結されたピストンロッド72Pと、流体によりピストンを介してピストンロッド72PをZ軸方向へ摺動させるシリンダ72Cとを備える。つまり、単純な構造、かつ、小型の空圧シリンダ機構により集塵部移動機構72が構成されている。従って、集塵装置7、更にはロボット1の小型化をより一層実現することができる。
【0072】
また、本実施の形態に係るロボット1では、図2図7及び図8に示されるように、第3軸方向は上下方向となるZ軸方向とされ、切削体6はZ軸方向において上側に配設され、集塵装置7の集塵部71はZ軸方向において切削体6よりも下側に配設される。つまり、ロボット1では、切削屑を被切削体8の下側から集塵する下吸い集塵方式が採用される。
このため、被切削体8の切削により生じる切削屑は、重力に逆らわず、重力に従って下方へ落下するので、集塵部71を用いて切削屑を効率良く集塵することができる。
さらに、ロボット1では、前述の通り下吸い集塵方式が採用され、被切削体8の切削箇所の上方側から吸引して切削屑を集塵する上吸い集塵方式を採用しないので、吸引による被切削体8の浮上がりを効果的に抑制又は防止することができる。被切削体8の浮上がりを防止するには、被切削体8を下方へ押付け保持する治具が必要になるが、本実施の形態に係るロボット1では、このような治具は必要としないので、より一層小型化を実現することができる。加えて、ロボット1では、切削屑を上方へ導く、特殊な切削工具は必要とされない。
また、ロボット1では、被切削体8の浮上がりを防止することができるので、被切削体8の曲がりやストレスの発生を効果的に抑制又は防止することができる。
【0073】
さらに、本実施の形態に係るロボット1は、図1図3に示されるように、集塵装置7に従動体73を備える。従動体73は、集塵部移動機構72を支持し、被切削体8に対する切削体6の移動に従動させて、切削体6と対向する位置に集塵部71を配置させる。
このため、被切削体8に対する切削体6の移動に従動させて、切削体6と対向する位置に、常時、集塵部71を配置させることができるので、切削屑の吸引力を安定して高めることができ、集塵効率を向上させることができる。
上記の通り、ロボット1では、被切削体8の切削箇所に、常時、集塵部71を配置させて集塵効率を向上させることができるので、被切削体8の切削箇所にピンポイントに集塵部71が配置されれば、集塵部71を用いて確実に切削屑を集塵することができる。このため、集塵部71のサイズ、つまり集塵装置7のサイズを小さくすることができるので、ロボット1の小型化を実現することができる。
【0074】
また、本実施の形態に係るロボット1では、特に図2に示されるように、従動体73の一端部731は集塵部移動機構72を介して集塵部71を支持し、従動体73の他端部732は第2移動機構4に装着されている。詳しく説明すると、他端部732は、第2移動機構4のスライダ44に装着されている。
このため、従動体73の他端部732が第2移動機構4に装着されているので、第2移動機構4の移動に従動させて集塵部71を移動させることができ、切削体6に対向した位置に、常時、集塵部71を配置することができる。この結果、ロボット1では、集塵効率を向上させることができ、かつ、小型化を実現することができる。
【0075】
さらに、本実施の形態に係るロボット1では、図1図3に示されるように、従動体73の中間部733は、被切削体8の切削体6側の表面に沿って、被切削体8を迂回する形状に形成されている。
このため、被切削体8に対して切削体6が移動しても、被切削体8と従動体73との接触や干渉を避けることができ、切削体6に対向する位置に、常時、集塵部71を配置することができる。
【0076】
また、本実施の形態に係るロボット1は、図1及び図2に示されるように、第1移動機構3と、第2移動機構4とを備える。第1移動機構3は、ベース本体2に配設され、X軸方向へ被切削体8(図2参照)を移動させる。第2移動機構4は、ベース本体2に支持部41及び支持部42を介して支持され、X軸方向に対して直交するY軸方向へ切削体6を移動させる。
ここで、ロボット1は更に集塵装置7を備える。集塵装置7は、図1図8に示されるように、集塵部71と、従動体73とを含んで構成される。集塵部71は、図2図7及び図8に示されるように、切削体6に対して被切削体8を介在させて配置され、切削体6を用いた被切削体8の切削により生じる切削屑を集塵する。従動体73は、図1図3に示されるように、被切削体8に対する切削体6の移動に従動させて、切削体6に対向する位置に集塵部71を配置させる。
このため、被切削体8に対する切削体6の移動に従動させて、切削体6と対向する位置に、常時、集塵部71を配置させることができるので、切削屑の吸引力を安定して高めることができ、集塵効率を向上させることができる。
上記の通り、ロボット1では、被切削体8の切削箇所に、常時、集塵部71を配置させて集塵効率を向上させることができるので、被切削体8の切削箇所にピンポイントに集塵部71が配置されれば、集塵部71を用いて確実に切削屑を集塵することができる。このため、集塵部71のサイズ、つまり集塵装置7のサイズを小さくすることができるので、ロボット1の小型化を実現することができる。
【0077】
さらに、本実施の形態に係る集塵装置7は、図1及び図2に示される第1移動機構3及び第2移動機構4を備えたロボット1の集塵装置として使用される。表現を代えれば、集塵装置7はロボット1に装着可能とされる集塵装置として構成される。ロボット1において、第1移動機構3は、ベース本体2に配設され、X軸方向へ被切削体8(図2参照)を移動させる。第2移動機構4は、ベース本体2に支持部41及び支持部42を介して支持され、X軸方向に対して直交するY軸方向へ切削体6を移動させる。
【0078】
集塵装置7は、図1図8に示されるように、集塵部71と、集塵部移動機構72とを含んで構成される。集塵部71は、図2図7及び図8に示されるように、切削体6に対向し被切削体8を介在させて配置され、切削体6を用いた被切削体8の切削により生じる切削屑を集塵する。集塵部移動機構72は、図5図8に示されるように、被切削体8に近接する第1位置と被切削体8から遠隔する第2位置との間において集塵部71を移動させる。
このように構成される集塵装置7では、集塵部移動機構72を用いて、被切削体8に近接した状態において、集塵部71により切削屑が集塵されるので、集塵部71における切削屑の吸引力を向上させ、集塵効率を向上させることができる。
上記の通り、集塵装置7では、集塵部71を被切削体8に近接させて集塵効率を向上させることができるので、被切削体8の切削箇所にピンポイントに集塵部71が配置されれば、集塵部71を用いて確実に切削屑を集塵することができる。このため、集塵部71のサイズ、つまり集塵装置7のサイズを小さくすることができる。この集塵装置7がロボット1に使用されることにより、ロボット1の小型化を実現することができる。
【0079】
また、集塵装置7では、集塵部移動機構72を用いて、被切削体8から遠隔する第2位置へ集塵部71を移動させることができるので、集塵部71と被切削体8の突出部位との接触や干渉を効果的に抑制又は防止することができる。
【0080】
さらに、本実施の形態に係る集塵装置7では、図1図3に示されるように、集塵装置7に従動体73を備える。従動体73は、集塵部移動機構72を支持し、被切削体8に対する切削体6の移動に従動させて、切削体6と対向する位置に集塵部71を配置させる。
このため、被切削体8に対する切削体6の移動に従動させて、切削体6と対向する位置に、常時、集塵部71を配置させることができるので、切削屑の吸引力を安定して高めることができ、集塵効率を向上させることができる。
上記の通り、集塵装置7では、被切削体8の切削箇所に、常時、集塵部71を配置させて集塵効率を向上させることができるので、被切削体8の切削箇所にピンポイントに集塵部71が配置されれば、集塵部71を用いて確実に切削屑を集塵することができる。このため、集塵部71のサイズ、つまり集塵装置7のサイズを小さくすることができる。この集塵装置7がロボット1に使用されることにより、ロボット1の小型化を実現することができる。
【0081】
また、本実施の形態に係る集塵方法は、図1及び図2に示される第1移動機構3によりX軸方向へ被切削体8を移動させ、第2移動機構4によりX軸方向に対して直交するY軸方向へ切削体6を移動させる。そして、切削体6を用いて被切削体8が切削される。
ここで、集塵方法では、図2に示されるように、切削体6に対して被切削体8を介在させて集塵部71が配置され、図7及び図8に示されるように、被切削体8に近接する第1位置に集塵部71を移動させ、集塵部71を用いて切削により生じる切削屑が集塵される。そして、被切削体8から遠隔する第2位置へ集塵部71が移動される。
このような集塵方法によれば、集塵装置7の集塵部移動機構72を用いて、被切削体8に近接した状態において、集塵部71により切削屑が集塵されるので、集塵部71における切削屑の吸引力を向上させ、集塵効率を向上させることができる。
【0082】
さらに、本実施の形態に係る集塵方法では、図1図2図7及び図8に示されるように、被切削体8に対する切削体6の移動に従動させて、切削体6と対向する位置に集塵部71を配置させて、この集塵部71を用いて切削屑が集塵される。
このような集塵方法によれば、被切削体8に対する切削体6の移動に従動させて、切削体6と対向する位置に、常時、集塵部71を配置させることができるので、切削屑の吸引力を安定して高めることができ、集塵効率を向上させることができる。
【0083】
[その他の実施の形態]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
例えば、本発明は、4軸以上の仕様のロボットに適用してもよい。4軸仕様のロボットは、第3移動機構のスライダに、Z軸方向と同一方向を回転軸方向とする回転軸によりツール(切削体)を回転させる回転機構を備えている。また、5軸仕様のロボットは、上記回転機構に、X軸方向と同一方向を傾斜軸方向とする傾斜軸によりツールを傾斜させる傾斜機構を備えている。
また、本発明は、第2移動機構のスライドレールが1本の支持部により支持される片持ち支持梁構造のロボットに適用してもよい。
【0084】
さらに、本発明は、開口形状が矩形状の角管状、開口形状が五角形形状以上の多角管状、開口形状が楕円形状の楕円管状に集塵装置の集塵部を形成してもよい。
また、本発明は、油圧シリンダ機構、電動シリンダ機構、電磁ソレノイド等のアクチュエータを用いて、集塵装置の集塵部移動機構を構成してもよい。
さらに、本発明は、集塵装置の従動体を、Y軸方向に沿って迂回する形状に形成してもよい。
また、本発明は、X軸方向及びY軸方向の水平面方向(第1軸方向)へ被切削体を移動させる水平面移動機構(第1移動機構)と、Z軸方向(第2軸方向)へ切削体を移動させる垂直移動機構(第2移動機構)とを備えたロボットの集塵装置に適用可能である。加えて、本発明は、上記水平面移動機構と垂直移動機構とを備えたロボットと同様の機構を有する工作機械の集塵装置に適用可能である。
さらに、本発明は、X軸方向及びZ軸方向の垂直面方向(第1軸方向)へ被切削体を移動させる垂直面移動機構(第1移動機構)と、Y軸方向(第2軸方向)へ切削体を移動させる水平移動機構(第2移動機構)とを備えたロボットの集塵装置に適用可能である。同様に、本発明は、上記垂直面移動機構と水平移動機構とを備えたロボットと同様の機構を有する工作機械の集塵装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 ロボット
2 ベース本体
21 筐体
21A ベース面
3 第1移動機構
31、43 スライドレール
32、44、51 スライダ
4 第2移動機構
41、42 支持部
5 第3移動機構
6 切削体
62 駆動源
7 集塵装置
71 集塵部
72 集塵部移動機構
72P ピストンロッド
72C シリンダ
73 従動体
731 一端部
732 他端部
733 中間部
8 被切削体
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10