(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】結合回路
(51)【国際特許分類】
H01P 5/18 20060101AFI20230418BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
H01P5/18 J
H01L31/10
(21)【出願番号】P 2019051061
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-02-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡
(72)【発明者】
【氏名】相葉 孝充
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏訓
(72)【発明者】
【氏名】漆畑 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】安田 裕紀
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-130376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/00- 5/22
H01S 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ定められた間隔で第1の導電体と第2の導電体とが並走する並走部と、
前記第1の導電体で伝送される電気信号のグランドを形成する第3の導電体と、
前記第2の導電体で伝送される電気信号のグランドを形成する、前記第3の導電体と接続される第4の導電体と、を含み、前記並走部において前記第1の導電体と前記第2の導電体の間で電気信号が透過する結合回路において、
前記並走部において、前記第1の導電体で伝送される第1の電気信号は前記第1の導電体の伝送方向と同じ方向に前記第2の導電体に透過し、または、前記第2の導電体で伝送される前記第1の電気信号は前記第2の導電体の伝送方向と同じ方向に前記第1の導電体に透過し、
前記第2の導電体には前記第1の電気信号とは異なる周波数を有する第2の電気信号が印加され
、
前記第1の電気信号が印加される前記第1の導電体の一端部とは反対側に位置する前記第1の導電体の終端部には、前記第1の導電体と前記第3の導電体とで形成される特性インピーダンスの値の±20%以内の値を有する終端抵抗が、前記終端部と前記第3の導電体との間に接続されることを特徴とする結合回路。
【請求項2】
前記第1の導電体と前記第2の導電体の前記並走部が短くなるほど、前記第1の電気信号の結合ピーク周波数は高くなり、前記結合ピーク周波数は前記第1の導電体と前記第2の導電体との間で透過する前記第1の電気信号の振幅の減衰が最も小さい周波数であることを特徴とする請求項1に記載の結合回路。
【請求項3】
前記第1の導電体と前記第2の導電体の前記並走部における前記第1の導電体と前記第2の導電体との間隔が狭くなるほど、前記第1の電気信号の結合ピーク周波数は低くなり、前記結合ピーク周波数は第1の導電体と第2の導電体との間で透過する前記第1の電気信号の振幅の減衰が最も小さい周波数であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の結合回路。
【請求項4】
前記第1の導電体と前記第3の導電体とで形成される特性インピーダンス、前記第2の導電体と前記第3の導電体とで形成される特性インピーダンス、および、前記結合回路と接続される前記第1の電気信号が伝送される外部伝送路の特性インピーダンス間のばらつきは±20%以内であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の結合回路。
【請求項5】
回路基板をさらに含み、
前記第1の導電体および前記第2の導電体は、前記回路基板の表面に構成される配線であり、
前記第3の導電体および前記第4の導電体は、前記回路基板の裏面に構成されるグランド面であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の結合回路。
【請求項6】
前記第2の電気信号が入力される前記第2の導電体の入力部に前記第2の導電体をらせん状にしたインダクタを形成し、前記第1の電気信号の周波数における当該インダクタのインピーダンスは、前記第2の導電体と前記第4の導電体とで形成される特性インピーダンスの±20%以内であることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の結合回路。
【請求項7】
前記第1の導電体の一端部をポート1とし、前記第1の導電体の他端部をポート2とし、前記第2の導電体の一端部をポート3とし、前記第2の導電体の他端部をポート4とすると、前記ポート1に入力された前記第1の電気信号は前記ポート4から出力され、または、前記ポート4に入力された前記第1の電気信号は前記ポート1から出力され、前記第2の電気信号は前記ポート3から前記ポート4に出力され、
前記ポート1、前記ポート3および前記ポート4に外部の装置と前記第1の電気信号および前記第2の電気信号の送受信をするためのコネクタをそれぞれ実装したことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の結合回路。
【請求項8】
前記第1の導電体から前記第2の導電体、または、前記第2の導電体から前記第1の導電体に透過した前記第1の電気信号の透過による結合ピーク周波数の減衰は1dB以内であり、前記結合ピーク周波数は前記第1の導電体と前記第2の導電体との間で透過する前記第1の電気信号の振幅の減衰が最も小さい周波数であることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の結合回路。
【請求項9】
前記第2の電気信号は直流であり、前記第1の電気信号の周波数は6GHz以上であることを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の結合回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギガヘルツクラス以上の高周波信号を扱う光信号伝送用回路において、発光素子または受光素子に使用される直流電流と高周波の交流電流を結合した結合回路に関する。特に、発光素子に印加する必要のある直流電流と高周波の交流電流の各々を回路基板パターン等の導電体と、必要な場合には抵抗をさらに加えた簡素な構成で結合回路を提供するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ギガヘルツクラス以上の高周波電気信号を良好な光信号に変換するためには、レーザ等の発光素子に対し、適切なバイアス電流としての直流電流を印加して一定出力で発光させた上で、さらに高周波の交流電流を重畳させて光の強弱を生み出すことにより光信号を生成する必要がある。
【0003】
このためには、一般的にバイアスティー(Bias―Tee)と呼ばれる、直流成分と交流成分の結合回路が用いられる。一般的にはバイアスティーは多くのインダクタおよびキャパシタで構成されており、コストが高く、体積も大きくなる傾向がある。
【0004】
例えば、特許文献1では、バイアスティー内のハイパスフィルタに必要となるインダクタについて、高域用コイルと中域用コイルのみを使用して低域用コイルを削減した。その代り低域に関しては、新たにローパスフィルタ回路を構成することで、低域成分に応じたバイアスが被駆動素子へ印加される構成を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1によれば、ハイパスフィルタに用いるインダクタを削減するものの、高域用と中域用のインダクタは残ってしまう。また低域に関しては、新たにオペアンプ等を含む検出回路が必要となり、回路の大型化、コスト上昇の懸念がある。
そこで、本発明はこのような課題を解決する手段を提供することを目的とする。
すなわち、本発明はインダクタやキャパシタを必要とせず、回路基板上の伝送路パターン等の導電体と終端抵抗のみで良好に直流電流と高周波交流電流を結合することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
すなわち、請求項1に係る結合回路は、
あらかじめ定められた間隔で第1の導電体と第2の導電体とが並走する並走部と、
前記第1の導電体で伝送される電気信号のグランドを形成する第3の導電体と、
前記第2の導電体で伝送される電気信号のグランドを形成する、前記第3の導電体と接続される第4の導電体と、を含み、前記並走部において前記第1の導電体と前記第2の導電体の間で電気信号が透過する結合回路において、
前記並走部において、前記第1の導電体で伝送される第1の電気信号は前記第1の導電体の伝送方向と同じ方向に前記第2の導電体に透過し、または、前記第2の導電体で伝送される前記第1の電気信号は前記第2の導電体の伝送方向と同じ方向に前記第1の導電体に透過し、
前記第2の導電体には前記第1の電気信号とは異なる周波数を有する第2の電気信号が印加されることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、抵抗、インダクタ、キャパシタ、オペアンプ等の実装部品を削減できるので、部品コストおよび実装コストを削減できるだけではなく、装置を大幅に小型化することが可能となる。また本発明によれば、回路パターンによってインダクタを形成するだけで、低い電源インピーダンスを持つ装置にも対応することが可能になる。
【0009】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の結合回路において、
前記第1の電気信号が印加される前記第1の導電体の一端部とは反対側に位置する前記第1の導電体の終端部には、前記第1の導電体と前記第3の導電体とで形成される特性インピーダンスの値の±20%以内の値を有する終端抵抗が、前記終端部と前記第3の導電体との間に接続されることを特徴とする。
【0010】
第1の導電体の終端部は、第1の電気信号および第2の電気信号の送受信に係わるデバイスが接続されないので通常は開放状態である。しかし上記構成によれば、第1の導電体の終端部は、第1の導電体の特性インピーダンスとマッチングを取ることが可能になる。したがって、第1の導電体で伝送される第1の電気信号の反射の影響が低減され、第1の電気信号が透過する場合の周波数特性が向上する。
【0011】
上記課題を解決するために、請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の結合回路において、前記第1の導電体と前記第2の導電体の前記並走部が短くなるほど、前記第1の電気信号の結合ピーク周波数は高くなり、前記結合ピーク周波数は前記第1の導電体と前記第2の導電体との間で透過する前記第1の電気信号の振幅の減衰が最も小さい周波数であることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、並走部を透過する第1の電気信号の結合ピーク周波数を可変にすることが可能になる。特に、並走部の長さを短くするほど、結合ピーク周波数が高くなるので、高周波数を扱う結合回路では、結合回路の小型化に有効な方法とすることができる。
【0013】
上記課題を解決するために、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の結合回路において、前記第1の導電体と前記第2の導電体の前記並走部における前記第1の導電体と前記第2の導電体との間隔が狭くなるほど、前記第1の電気信号の結合ピーク周波数は低くなり、前記結合ピーク周波数は第1の導電体と第2の導電体との間で透過する前記第1の電気信号の振幅の減衰が最も小さい周波数であることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、並走部を透過する第1の電気信号の結合ピーク周波数を可変にすることが可能になる。特に、並走部の導体間の間隔を狭く維持する必要がある場合には製造ばらつきが大きくなるが、並走部の導体間の間隔が必要以上に狭く維持する必要がないので製造ばらつきによる結合ピーク周波数の変動を低く抑えることができる。
【0015】
上記課題を解決するために、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の結合回路において、前記第1の導電体と前記第3の導電体とで形成される特性インピーダンス、前記第2の導電体と前記第3の導電体とで形成される特性インピーダンス、および、前記結合回路と接続される前記第1の電気信号が伝送される外部伝送路の特性インピーダンス間のばらつきは±20%以内であることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、特性インピーダンスのばらつきが規定されるので、並走部を透過する第1の電気信号の周波数特性を良好に維持することが可能になる。また、結合ピーク周波数の変動を低く抑えることができる。
【0017】
上記課題を解決するために、請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の結合回路において、
回路基板をさらに含み、
前記第1の導電体および前記第2の導電体は、前記回路基板の表面に構成される配線であり、
前記第3の導電体および前記第4の導電体は、前記回路基板の裏面に構成されるグランド面であることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、結合回路を回路基板および回路パターンで実現できるので、インダクタ、キャパシタ、オペアンプ等の実装部品を削減でき、部品コストおよび実装コストを削減できるだけではなく、装置を大幅に小型化することが可能となる。
【0019】
上記課題を解決するために、請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の結合回路において、前記第2の電気信号が入力される前記第2の導電体の入力部に前記第2の導電体をらせん状にしたインダクタを形成し、前記第1の電気信号の周波数における当該インダクタのインピーダンスは、前記第2の導電体と前記第4の導電体とで形成される特性インピーダンスの±20%以内であることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、低出力インピーダンスの電源装置等が接続されても、回路パターンによってインダクタを形成するだけで、高周波交流信号に対する周波数特性を良好に維持することが可能になる。
【0021】
上記課題を解決するために、請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の結合回路において、
前記第1の導電体の一端部をポート1とし、前記第1の導電体の他端部をポート2とし、前記第2の導電体の一端部をポート3とし、前記第2の導電体の他端部をポート4とすると、前記ポート1に入力された前記第1の電気信号は前記ポート4から出力され、または、前記ポート4に入力された前記第1の電気信号は前記ポート1から出力され、前記第2の電気信号は前記ポート3から前記ポート4に出力され、
前記ポート1、前記ポート3および前記ポート4に外部の装置と前記第1の電気信号および前記第2の電気信号の送受信をするためのコネクタをそれぞれ実装したことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、結合回路に第1の電気信号および第2の電気信号を送受信するためのコネクタを実装した形態においても、抵抗、インダクタ、キャパシタ、オペアンプ等の実装部品を削減できるので、部品コストおよび実装コストを削減できるだけではなく、装置を大幅に小型化することが可能となる。
【0023】
上記課題を解決するために、請求項9に係る発明は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の結合回路において、前記第1の導電体から前記第2の導電体、または、前記第2の導電体から前記第1の導電体に透過した前記第1の電気信号の透過による結合ピーク周波数の減衰は1dB以内であり、前記結合ピーク周波数は前記第1の導電体と前記第2の導電体との間で透過する前記第1の電気信号の振幅の減衰が最も小さい周波数であることを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、目標とする周波数に対し少なくとも±1GHz程度の範囲において、挿入損失1dB程度でほぼ平坦な特性を得ることができる。
【0025】
上記課題を解決するために、請求項10に係る発明は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の結合回路において、前記第2の電気信号は直流であり、前記第1の電気信号の周波数は6GHz以上であることを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、第5世代無線通信で使用が見込まれている周波数帯域に適合した結合回路の構成を提供することが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、インダクタ、キャパシタ、オペアンプ等の実装部品を削減できるので、部品コストおよび実装コストを削減できるだけではなく、装置を大幅に小型化することが可能となる。また本発明によれば、回路パターンによってインダクタを形成するだけで、低い電源インピーダンスを持つ装置にも対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】回路基板によって実現される結合回路の基本概念を示す図である。
【
図1B】
図1Aの結合回路において、透過信号と反射信号の周波数特性の一例を示す図である。
【
図2A】結合回路のパラメータの一部を示す図である。
【
図2B】
図2Aのパラメータの結合伝送路間隔を変化させた場合の結合ピーク周波数の変化を示す図である。
【
図2C】
図2Aのパラメータの結合伝送路間隔が0.7mmの場合の結合ピーク周波数の変化を示す図である。
【
図2D】
図2Aのパラメータの結合伝送路間隔が1.0mmの場合の結合ピーク周波数の変化を示す図である。
【
図2E】
図2Aのパラメータの結合伝送路間隔が2.0mmの場合の結合ピーク周波数の変化を示す図である。
【
図2F】
図2Aのパラメータの結合伝送路長を変化させた場合の結合ピーク周波数の変化を示す図である。
【
図3A】
図2Aの結合回路に同軸コネクタを実装し、ポート2に終端抵抗を実装した結合回路の一例を示す図である。
【
図3B】
図3Aの結合回路の透過信号と反射信号の周波数特性の一例を示す図である。
【
図4A】
図3Aの結合回路において、ポート3に低出力インピーダンス電源装置が入力される構成の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Aの結合回路の透過信号と反射信号の周波数特性の一例を示す図である。
【
図5A】
図4Aの結合回路において、ポート3の入力部にインダクタを形成した構成の一例を示す図である。
【
図5B】
図5Aの結合回路の透過信号と反射信号の周波数特性の一例を示す図である。
【
図6A】
図5Aの結合回路において、ポート2の終端抵抗を取り除き、ポート2を開放状態にした構成の一例を示す図である。
【
図6B】
図6Aの結合回路の透過信号と反射信号の周波数特性の一例を示す図である。
【
図7B】
図5Aの結合回路のポート4コネクタ、および、ポート2の終端抵抗の実装領域の一例を示す図である。
【
図7C】
図5Aの結合回路のポート1コネクタの実装領域の一例を示す図である。
【
図7D】
図5Aの結合回路のポート3コネクタの実装領域の上部に形成されたインダクタが形成される領域の一例を示す図である。
【
図7E】
図5Aの結合回路のポート3コネクタの実装領域の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(回路基板に形成された結合回路の特徴の概要)
本実施形態の結合回路(1000)の構成としては、
図1Aに示す回路基板300上に並走して設けられた2本の銅箔パターン(銅箔パターン1(100)および銅箔パターン2(200))、回路基板300の裏面にプレーンとして設けられるグランド500、および、ポート2(320)に実装された終端抵抗(図示せず)を基本構成とする。ただし、ポート2(320)に終端抵抗を実装しない構成を基本構成とすることもできる。また、以下の本実施形態の説明ではポート4(340)に接続される発光素子(図示せず)を駆動する結合回路の一例について詳細に記述する。ポート2(320)およびポート4(340)については以下に説明する。
【0030】
ポート1(310)は、銅箔パターン1(100)における高周波交流信号の入力部である。基本的には特性インピーダンスが50Ωの同軸ケーブル等の伝送路が接続される。当該伝送路によって銅箔パターン1(100)に供給される高周波交流信号が伝送される。
【0031】
ポート2(320)は、銅箔パターン1(100)の終端部である。終端部と回路基板300の裏面に設けられるグランド500との間に50Ωの終端抵抗が実装される場合と実装されない場合がある。
図1Aでは基本作用を説明するために、終端抵抗が実装される場合を数値で図示する。
【0032】
ポート3(330)は、銅箔パターン2(200)における、発光素子に供給されるバイアス電流等の直流信号の入力部である。ポート3(330)には基本的には後述する低出力インピーダンスの電源装置等(図示せず)が接続される。
図1Aでは基本作用を説明するために、出力インピーダンスが50Ωの装置(図示せず)が接続される場合を図示する。
【0033】
ポート4(340)は、ポート3(330)から入力された直流信号に、銅箔パターン1(100)から銅箔パターン2(200)に透過した高周波交流信号が重畳されて出力される銅箔パターン2(200)における出力部であり、発光素子等の被駆動デバイスが接続されるポートである。
【0034】
並走部350は、銅箔パターン1(100)と銅箔パターン2(200)があらかじめ定められた距離で並走する区間である。並走部350において、ポート1(310)から銅箔パターン1(100)に入力された高周波交流信号が、銅箔パターン2(100)に透過する。高周波交流信号がポート1(310)からポート2(320)に向かう方向と同一の方向である、ポート3(330)からポート4(340)に向かう方向に当該高周波交流信号が次第に透過する。この透過は、銅箔パターン1(100)から銅箔パターン2(200)へ交流信号成分が結合する現象を利用している。
【0035】
最も効率的に結合する周波数は、並走部350の長さ、並走部350における銅箔パターン1(100)と銅箔パターン2(200)との間の間隔、および、回路基板300内外の伝送路の特性インピーダンス等のパラメータによって変化する。以下、並走部350の長さを結合伝送路長、並走部350における銅箔パターン1(100)と銅箔パターン2(200)との間の間隔を結合伝送路間隔と称する場合がある。
【0036】
図1Bは、ポート1(310)に高周波交流信号を入力した場合に、ポート1(310)からポート4(340)に透過した透過信号と、ポート1(310)からポート1(310)に反射した反射信号の周波数特性を示す。
図1Bの例では、7.2GHz付近において最も効率的に結合し、透過信号の振幅の減衰が最も小さくなる様子を示している。以下、銅箔パターン1(100)と銅箔パターン2(200)との間で透過する高周波交流信号の振幅の減衰が最も小さい周波数を結合ピーク周波数と称する。
【0037】
上述したように、結合ピーク周波数は、結合伝送路間隔および結合伝送路長を含むパラメータを変化させることによって、任意に選択可能である。これらの構成及び作用によれば、別途インダクタやキャパシタを設けなくとも回路パターンと終端抵抗のみでバイアスティーの機能を実現できることが分かる。
【0038】
(結合回路の具体的仕様)
図2Aは、結合回路のパラメータの一部を示す図である。Lは結合伝送路長であり、
図2Aでは銅箔パターン1(100)と銅箔パターン2(200)の長さに対応する。gapは結合伝送路間隔であり、
図2Aでは銅箔パターン1(100)と銅箔パターン2(200)との間隔に対応する。Wは伝送路幅であり、
図2Aでは銅箔パターン1(100)と銅箔パターン2(200)の幅に対応する。
図2Aでは銅箔パターン1(100)と銅箔パターン2(200)の幅は同一である。tは回路基板の厚みである。表1に
図2Aの結合回路のパラメータの具体的な値を示す。
【0039】
【0040】
図2Bは、表1のパラメータ値を有する
図2Aの結合回路において、結合伝送路間隔を変化させた時の、結合ピーク周波数の変化を示した図である。
図2Bの横軸は結合伝送路間隔[mm]を示し、
図2Bの縦軸は結合ピーク周波数[GHz]を示す。
図2Bにおいて、結合伝送路間隔を2mmからに0.2mm変化させた場合には、結合ピーク周波数が約12GHzから約6GHzに変化する。すなわち、結合伝送路間隔が狭くなるにつれて結合ピーク周波数は低くなる。
【0041】
図2Cは、
図2Bの結合伝送路間隔が0.7mmの場合における、ポート1(310)に高周波交流信号を入力した場合に、ポート1(310)からポート4(340)に透過した透過信号と、ポート1(310)からポート1(310)に反射した反射信号の周波数特性を示す。
図2Cの横軸は周波数[GHz]を示し、縦軸は透過信号および反射信号の振幅[dB]を示す。反射信号は約-20dB以下に低減されているので、透過信号に対する影響が小さい様子が示されている。
図2Cの例では、7.0GHz付近に結合ピーク周波数が存在し、結合ピーク周波数が極大値であることを示している。
【0042】
図2Dは、
図2Bの結合伝送路間隔が1.0mmの場合における、ポート1(310)に高周波交流信号を入力した場合に、ポート1(310)からポート4(340)に透過した透過信号と、ポート1(310)からポート1(310)に反射した反射信号の周波数特性を示す。
図2Dの横軸は周波数[GHz]を示し、縦軸は透過信号および反射信号の振幅[dB]を示す。反射信号は約-20dB以下に低減されているので、透過信号に対する影響が小さい様子が示されている。
図2Dの例では、7.8GHz付近に結合ピーク周波数が存在し、結合ピーク周波数が極大値であることを示している。
【0043】
図2Eは、
図2Bの結合伝送路間隔が2.0mmの場合における、ポート1(310)に高周波交流信号を入力した場合に、ポート1(310)からポート4(340)に透過した透過信号と、ポート1(310)からポート1(310)に反射した反射信号の周波数特性を示す。
図2Eの横軸は周波数[GHz]を示し、縦軸は透過信号および反射信号の振幅[dB]を示す。反射信号は約-20dB以下に低減されているので、透過信号に対する影響が小さい様子が示されている。
図2Eの例では、12.0GHz付近に結合ピーク周波数が存在し、結合ピーク周波数が極大値であることを示している。
【0044】
図2Fは、表1のパラメータ値を有する
図2Aの結合回路において、結合伝送路長を変化させた時の、結合ピーク周波数の変化を示した図である。
図2Fの横軸は結合伝送路長[mm]を示し、
図2Fの縦軸は結合ピーク周波数[GHz]を示す。
図2Fにおいて、結合伝送路長を約175mmから約25mmに変化させた場合には、結合ピーク周波数は約5GHzから約43GHzに変化する。すなわち、結合伝送路長が短くなるほど、結合ピーク周波数は高くなる。
【0045】
上記構成例によれば、一般的なガラエポ系の10cm程度以内の回路パターンの構成を用いることによって10GHz以上の結合回路が簡素に構成可能となる。
【0046】
(同軸コネクタを実装した結合回路の具体例)
図3A、
図4A、
図5Aおよび
図6Aでは、より実際の使用形態に合わせ、回路基板端に同軸コネクタの実装領域を追加し、第5世代無線通信で使用が見込まれている28GHz帯に向けた構成例を示す。
図3A、
図4A、
図5Aおよび
図6Aの回路基板300および結合回路1000のパラメータ値を表2に示す。
【0047】
【0048】
(実施例1)
図3Aは、表1のパラメータ値を有する結合回路に同軸コネクタを実装した形態を示す。
図3Aの銅箔パターン1(100)および銅箔パターン2(200)の特性インピーダンスは約50Ωである。また、ポート1(310)には高周波交流信号を入力するために同軸コネクタ311が実装される。同軸コネクタ311の特性インピーダンスは約50Ωである。同軸コネクタ311には高周波交流信号を伝送する特性インピーダンスが約50Ωの同軸ケーブルが接続される。ポート1の実装領域をエリアA101(360)と称し、エリアA101(360)の詳細を
図7Cに示す。
図7Cに示されるように、同軸コネクタ311はポート1コネクタ実装領域1(361)およびポート1コネクタ実装領域2(362)にまたがって実装される。銅箔パターン1(100)はポート1コネクタ実装領域1(361)とポート1コネクタ実装領域2(362)との間を回路基板300の端部まで延在する。
【0049】
また、ポート2(320)には高周波交流信号の反射を抑制する等の目的のためにインピーダンス50Ωの終端抵抗321が実装される。終端抵抗321は銅箔パターン1(100)と、回路基板300の裏面のグランドとの間を接続するように実装される。終端抵抗321が実装される領域の詳細を
図7Bに示す。
図7Bの終端抵抗実装領域383に終端抵抗321が実装される。
図7Bの終端抵抗実装領域383の右側に隣接する銅箔パターン1(100)の終端であるポート2(320)と終端抵抗321が接続される。また、
図7Bの終端抵抗実装領域383の左側端部は回路基板100の裏面とスルーホール等を介して接続されている。なお、終端抵抗321のインピーダンスは、銅箔パターン1(100)の特性インピーダンスの値の±20%以内の値を有する。
【0050】
ポート3(330)は直流信号を銅箔パターン2(200)に入力するための直流入力部として機能する。直流信号は出力インピーダンスが低い電源装置が接続されることが一般的であるが、
図3Aでは、ポート3に接続される装置の出力インピーダンスを約50Ωと設定した。したがって、銅箔パターン2(200)の特性インピーダンスとマッチングするので、銅箔パターン2(200)に透過する高周波交流信号に対する影響が小さくなる。すなわち、本実施例の場合には、銅箔パターン2(200)に透過した透過信号の周波数変化に対する平坦性が維持される。
【0051】
ポート4(340)には高周波交流信号の透過信号と、ポート3(330)に入力された直流信号が重畳された重畳信号を出力するための同軸コネクタ341が実装される。同軸コネクタ341の特性インピーダンスは約50Ωである。同軸コネクタ341には重畳信号を伝送する特性インピーダンスが約50Ωの同軸ケーブルが接続される。同軸ケーブルの他端にはレーザダイオード等の発光素子が接続される。直流信号は発光素子のバイアスレベルを規定するために使用され、透過信号は情報搬送のための搬送信号または情報信号としても使用されることが可能である。ポート4(340)の実装領域はエリアA103(380)の一部に含まれ、エリアA101(360)の詳細は前述したように
図7Cに示される。
図7Cに示されるように、同軸コネクタ341はポート4コネクタ実装領域1(381)およびポート4コネクタ実装領域2(382)にまたがって実装される。銅箔パターン2(200)はポート4コネクタ実装領域1(381)とポート4コネクタ実装領域2(382)との間を回路基板300の端部まで延在する。
【0052】
なお、
図3A、
図4A、
図5Aおよび
図6Aの銅箔パターン1(100)の特性インピーダンス、銅箔パターン2(200)の特性インピーダンス、および、銅箔パターン1(100)と接続される同軸ケーブルの特性インピーダンス間のばらつきは±20%以内である。
【0053】
さらに、
図1Aおよび
図2Aの銅箔パターン1(100)の特性インピーダンス、銅箔パターン2(200)の特性インピーダンス、および、銅箔パターン1(100)と接続される伝送路の特性インピーダンス間のばらつきは±20%以内である。
【0054】
図3Bは、
図3Aの結合回路のポート1(310)に高周波交流信号を入力し、ポート3(330)に直流信号を入力し、ポート4(340)から重畳信号を出力した場合の透過信号および反射信号の周波数特性を示した図である。透過信号はポート4(340)において測定した高周波交流信号の透過成分であり、反射信号はポート1(310)において測定した高周波交流信号の反射成分である。
図3Bの横軸は周波数[GHz]であり、縦軸は透過信号および反射信号の振幅[dB]である。透過信号の結合ピーク周波数は28.0GHz付近であり、目標とする28.0GHzで最も効率よく透過信号が得られている。また、透過信号は約1dB減衰しているが構造体の最適化および構造体の製造時のばらつきを抑制することで、減衰量は約1dB未満となる。
【0055】
上記構成例によれば、一般的な同軸コネクタをガラエポ系の回路基板に実装した場合であっても、5cm程度以内の回路パターンの構成を用いることによって第5世代無線通信で使用が見込まれている28.0GHz付近での結合回路が簡素に構成可能となる。
【0056】
(実施例2)
図4Aも、表1のパラメータ値を有する結合回路に同軸コネクタを実装した形態を示す。
図4Aの銅箔パターン1(100)および銅箔パターン2(200)の特性インピーダンスは約50Ωである。また、ポート1(310)、ポート2(320)およびポート4(340)は
図3Aと同じ構成である。ポート1(310)には同軸コネクタ311が接続され、ポート2(320)には終端抵抗321が接続され、ポート4(340)には同軸コネクタ341が実装される。説明の重複を避けるために、ポート1(310)、ポート2(320)およびポート4(340)については
図3Aの説明を参照されたい。
【0057】
図3Aの構成と異なるポート3(330)について以下に説明する。ポート3(330)は直流信号を入力するための直流入力部として機能する。直流信号は出力インピーダンスが低い電源装置が接続されることが一般的である。そのために、ポート3(330)に接続される装置の出力インピーダンスを1Ωと低くした構成が
図4Aの構成である。この場合には、交流成分に対してインピーダンス不整合を与えることとなるので、周波数特性の平坦性が劣化する。周波数特性の平坦性が劣化した様子を
図4Bに示す。
【0058】
図4Bは、
図4Aの結合回路のポート1(310)に高周波交流信号を入力し、ポート3(330)に直流信号を入力し、ポート4(340)から重畳信号を出力した場合の透過信号および反射信号の周波数特性を示した図である。透過信号はポート4(340)において測定した高周波交流信号の透過成分であり、反射信号はポート1(310)において測定した高周波交流信号の反射成分である。
図4Bの横軸は周波数[GHz]であり、縦軸は透過信号および反射信号の振幅[dB]である。透過信号の結合ピーク周波数は28.0GHz付近であり、目標とする28.0GHzで最も効率よく透過信号が得られている。また、透過信号は約1dB減衰しているがこれは最適化して約1dB未満とすることができる。
図3Bの透過信号と比較すると、約20GHz以下の透過信号と約40GHz以上の透過信号で周波数特性の平坦性が劣化しているが、目標とする28.0GHzの近辺では周波数特性の平坦性が維持されている。
【0059】
上記構成例によれば、直流信号を一般的に出力インピーダンスが低い電源装置で供給しても、5cm程度以内の回路パターンの構成を用いることによって第5世代無線通信で使用が見込まれている28.0GHz付近での結合回路が簡素に構成可能となる。
【0060】
(実施例3)
図5Aも、表1のパラメータを有する結合回路に同軸コネクタを実装した形態を示す。
図5Aの銅箔パターン1(100)および銅箔パターン2(200)の特性インピーダンスは約50Ωである。また、ポート1(310)、ポート2(320)およびポート4(340)は
図3Aと同じ構成である。ポート1(310)には同軸コネクタ311が接続され、ポート2(320)には終端抵抗321が接続され、ポート4(340)には同軸コネクタ341が実装される。説明の重複を避けるために、ポート1(310)、ポート2(320)およびポート4(340)については
図3Aの説明を参照されたい。
【0061】
図3Aおよび
図4Aの構成と異なるポート3(330)について以下に説明する。ポート3(330)は直流信号を入力するための直流入力部として機能する。直流信号は出力インピーダンスが低い電源装置が接続されることが一般的である。そのために、ポート3(330)に接続される装置の出力インピーダンスを1Ωと、
図4Aと同様に低くした構成が
図5Aの構成である。この場合には、
図4Aで説明したように交流成分に対してインピーダンス不整合を与えることとなるので、周波数特性の平坦性が劣化する。しかし、
図5Aでは、周波数特性の平坦性の劣化を改善するために、ポート3(330)の直流入力部にインダクタ400を形成し、周波数特性の平坦性を改善している。
【0062】
ポート3(330)の直流入力部にインダクタ400を形成した領域をエリアC101(390)と称し、エリアC101(390)の詳細を
図7Dに示す。
図7Dに示されるように、らせん状の回路パターンによるインダクタ400の形成により、高周波領域のインピーダンスを上昇させる。この結果、銅箔パターン2(200)において直流成分には影響なく、高周波成分のインピーダンス不整合だけが改善され、周波数応答特性の平坦性が改善される。
【0063】
図7Dに示されるインダクタ400の半径は約5mmであり、回路パターンの巻き始めから巻き終わりまでの距離は約4mmである。目標とする28.0GHz付近でのインピーダンスは約50Ωであり、自己インダクタンス0.37nH程度の値を形成することが可能になっている。また、エリアC101(390)のインダクタ400が形成されている領域に対応する回路基板300の裏面にはグランド面が形成されていない。また、銅箔パターン1(100)を伝送する高周波交流信号の周波数におけるインダクタ400のインピーダンスは、銅箔パターン2(200)の特性インピーダンスの±20%以内である。
【0064】
図5Bは、
図5Aの結合回路のポート1(310)に高周波交流信号を入力し、ポート3(330)に直流信号を入力し、ポート4(340)から重畳信号を出力した場合の透過信号および反射信号の周波数特性を示した図である。透過信号はポート4(340)において測定した高周波交流信号の透過成分であり、反射信号はポート1(310)において測定した高周波交流信号の反射成分である。
図5Bの横軸は周波数[GHz]であり、縦軸は透過信号および反射信号の振幅[dB]である。透過信号の結合ピーク周波数は28.0GHz付近であり、目標とする28.0GHzで最も効率よく透過信号が得られている。また、透過信号は約2dB減衰しているがこれは上述した最適化によって1dB未満とすることができる。
図4Bの透過信号と比較すると、約20GHz以下の透過信号と約40GHz以上の透過信号で周波数特性の平坦性が改善されており、目標とする28.0GHzの近辺での周波数特性の平坦性も改善されている。
【0065】
上記構成例によれば、直流信号を一般的に出力インピーダンスが低い電源装置で供給しても、回路パターンで形成したインダクタ400を含む5cm程度以内の回路パターンの構成を用いることによって28.0GHz付近での結合回路が簡素に構成可能となる。すなわち、実際の使用に向けた形状や接続先のインピーダンス等を鑑みた上でも、インダクタやキャパシタ等の追加の実装部品を必要とせずに安定した結合特性を実現することができる。このように、目標とする周波数28GHzに対し少なくとも±1GHz程度の範囲において、挿入損失1dB程度でほぼ平坦な周波数特性を得ることができる。
【0066】
(実施例4)
図6Aも、表1のパラメータを有する結合回路に同軸コネクタを実装した形態を示す。
図6Aの銅箔パターン1(100)および銅箔パターン2(200)の特性インピーダンスは約50Ωである。また、ポート1(310)、ポート3(330)およびポート4(340)は
図5Aと同じ構成である。ポート1(310)には同軸コネクタ311が接続され、ポート4(340)には同軸コネクタ341が実装される。ポート3(330)には同軸コネクタ331が接続され、インダクタ400が形成される。ポート2(320)には終端抵抗321が接続されない。したがって、ポート2(320)は開放状態となる。すなわち、
図6Aの結合回路は、
図5Aの結合回路とは、ポート2(320)が開放状態となる点で異なる。なお、説明の重複を避けるために、ポート1(310)、ポート3(330)およびポート4(340)については
図3Aおよび
図5Aの説明を参照されたい。
【0067】
図6Bは、
図6Aの結合回路のポート1(310)に高周波交流信号を入力し、ポート3(330)に直流信号を入力し、ポート4(340)から重畳信号を出力した場合の透過信号および反射信号の周波数特性を示した図である。透過信号はポート4(340)において測定した高周波交流信号の透過成分であり、反射信号はポート1(310)において測定した高周波交流信号の反射成分である。
図5Bの横軸は周波数[GHz]であり、縦軸は透過信号および反射信号の振幅[dB]である。透過信号の結合ピーク周波数は28.0GHz付近であり、目標とする28.0GHzで最も効率よく透過信号が得られている。ただし、ポート2(320)が開放状態となっているために、反射信号のレベルが全体的に上昇している。しかし、目標とする周波数である28GHzに対しては、少なくとも±1GHz程度の範囲において、挿入損失2.5dB程度でほぼ平坦な特性を得ることができる。また、挿入損失は製造ばらつきや並走部350の結合伝送路間隔等の基本形状の最適化をすることで1dB未満に収めることが可能である。
【0068】
上記構成例によれば、ポート2(320)の終端抵抗321を削除しても、高周波成分の透過特性には劣化等の影響はほぼ無く、5cm程度以内の回路パターンの構成を用いることによって28.0GHz付近での結合回路が簡素に構成可能となる。すなわち、実際の使用に向けた形状や接続先のインピーダンス等を鑑みた上でも、抵抗、インダクタおよびキャパシタ等の追加の実装部品を必要とせずに安定した結合特性を実現することができる。このように、目標とする周波数28GHzに対し少なくとも±1GHz程度の範囲において、挿入損失1dB程度でほぼ平坦な周波数特性を得ることができる。
【0069】
(同軸コネクタ等の実装領域)
図7Aは
図5Aの結合回路の平面図である。
図7Aの平面図では、ポート1(310)に同軸コネクタ311が実装されるエリアA101(360)、ポート3(330)に同軸コネクタ331が実装されるエリアA102(370)、および、インダクタ400が形成されるエリアC101(390)が含まれる。さらに、
図7Aの平面図では、ポート4(340)に同軸コネクタ341が実装され、ポート2(320)に終端抵抗321が実装されるエリアA103(380)が含まれる。エリアA101(360)とエリアA103(380)との間には並走部350が長さ37mmにわたって延在する。並走部350は幅0.2mmの銅箔パターン1(100)と銅箔パターン2(200)とが結合伝送路間隔0.2mmで並走する。
【0070】
図7Bは、エリアA103(380)を拡大した図である。エリアA103(380)において、ポート4(340)に実装される同軸コネクタ341はポート4コネクタ実装領域1(381)およびポート4コネクタ実装領域2(382)にまたがって実装される。銅箔パターン2(200)はポート4コネクタ実装領域1(381)とポート4コネクタ実装領域2(382)との間を回路基板100の端部まで延在する。また、ポート2(320)とグランド500との間を接続する終端抵抗321は終端抵抗実装領域383に実装される。
【0071】
図7Cは、エリアA101(360)を拡大した図である。エリアA101(360)において、ポート1(310)に実装される同軸コネクタ311はポート1コネクタ実装領域1(361)およびポート1コネクタ実装領域2(362)にまたがって実装される。銅箔パターン1(100)はポート1コネクタ実装領域1(361)とポート1コネクタ実装領域2(362)との間を回路基板100の端部まで延在する。銅箔パターン2(200)は、インダクタ400が形成されるエリアC101(390)に向かうように折れ曲がる。
図7Cでは、銅箔パターン2(200)は、ほぼ直角に折れ曲がり、エリアC101(390)に向かう。
【0072】
図7Dは、インダクタ400が形成されるエリアC101(390)を拡大した図である。インダクタ400は、銅箔パターン2(200)がらせん状に配線されて形成される。
図7Dに示されるインダクタ400の半径は約5mmであり、銅箔パターン2(200)の巻き始めから巻き終わりまでの距離は約4mmである。目標とする28.0GHz付近でのインピーダンスは約50Ωであり、自己インダクタンス0.37nH程度の値を形成することが可能になっている。また、エリアC101(390)のインダクタ400が形成されている領域に対応する回路基板300の裏面にはグランド面が形成されていない。したがって、銅箔パターン2(200)の巻き始めと巻き終わりにはスルーホールが形成され、回路基板300の裏面に回路パターンを設けることで銅箔パターン2(200)の巻き始めと巻き終わりが接続されている。
【0073】
図7Eは、エリアA102(370)を拡大した図である。エリアA102(370)において、ポート3(330)に実装される同軸コネクタ331はポート3コネクタ実装領域1(371)およびポート3コネクタ実装領域2(372)にまたがって実装される。銅箔パターン2(200)はポート3コネクタ実装領域1(371)とポート3コネクタ実装領域2(372)との間を回路基板100の端部まで延在する。
【0074】
なお、以上の実施形態において、各構成要素の特性インピーダンスのばらつきは±20%以内である。また、銅箔パターン1(100)を伝送する高周波交流信号の周波数または結合ピーク周波数における終端抵抗321およびインダクタ400のインピーダンスは、各構成要素の特性インピーダンスのばらつき±20%以内に含まれる。
【0075】
以上のように同軸コネクタ311、331、341および終端抵抗321が実装された
図5Aの結合回路は、実際の使用に向けた形状や接続先のインピーダンス等を鑑みた上でも、インダクタやキャパシタ等の追加の実装部品を必要とせずに安定した結合特性を実現することができる。すなわち、目標とする周波数28GHzに対し少なくとも±1GHz程度の範囲において、挿入損失1dB程度でほぼ平坦な周波数特性を得ることができる。
【0076】
(変形例1)
上述した実施例においては、回路基板300のポート4(340)に接続されるデバイスとして発光素子を想定して説明したが、ポート4(340)に接続されるデバイスが受光素子の場合にも上述した実施例の原理を適用できる。すなわち、ポート4(340)に受光素子が接続される場合には、高周波交流信号は、受光素子の出力信号としてポート4(340)に入力され、並走部350において透過し、透過信号がポート1(310)から出力される。この場合の並走部350における透過信号と反射信号の特性は、
図3B、
図4B、
図5Bおよび
図6Bであらわされる。また、ポート3(330)に入力される直流信号は受光素子のバイアスを規定する信号に使用されるので、直流信号はポート4(340)から出力される。
【0077】
(変形例2)
上述した実施例においては、回路基板300に銅箔パターン1(100)および銅箔パターン2(200)を配線した構成について説明した。しかし、銅箔パターン同士が近接する基板材または基板形態であれば、プリント回路基板に限定されない、例えば、電線、成形樹脂回路部品(MID:Molded Interconnect Device)等に適用してもよい。電線の場合には、並走する2本の電線を銅箔パターン1(100)および銅箔パターン2(200)の並走部350に対応させ、2本の電線の外側にグランドとなる電線をさらに2本配置することもできる。
【0078】
(変形例3)
上述した実施例においては、並走部350を1つだけ設ける構成について説明した。しかし、複数の並走部350を設けて、それぞれの並走部350において異なる周波数の信号を透過信号としてもよい。
図2Bにおいて説明したように、それぞれの並走部350において結合伝送路間隔が異なれば、結合ピーク周波数も異なる。また、
図2Fにおいて説明したように、それぞれの並走部350において結合伝送路長が異なれば、結合ピーク周波数も異なる。また、表1の結合伝送路間隔および結合伝送路長とは異なる他のパラメータの値を変化させても結合ピーク周波数は変化する。これらのパラメータを変化させた並走部350を複数設ける構成を結合回路1000に採用することも可能である。
【0079】
(変形例4)
上述した実施例においては、ポート2(320)に終端抵抗321を実装する場合を主に説明したが、
図6Aに示したようにポート2(320)に終端抵抗321を実装しない構成を基本構成とすることも可能である。すなわち、
図3Aおよび
図4の結合回路において、ポート2(320)に終端抵抗321を実装しない構成とすることも可能である。この場合であっても、実際の使用に向けた形状や接続先のインピーダンス等を鑑みた上で、抵抗、インダクタおよびキャパシタ等の追加の実装部品を必要とせずに安定した結合特性を実現することができる。すなわち、ポート2(320)に終端抵抗321を実装しない構成であっても、目標とする周波数28GHzに対し少なくとも±1GHz程度の範囲において、挿入損失1dB程度でほぼ平坦な周波数特性を得ることができる。
【0080】
(変形例5)
上述した実施例においては、ポート3(330)に印加される電気信号を直流として説明したが、本実施形態においては、ポート3(330)に印加される電気信号は直流に限定されない。すなわち、ポート1(310)またはポート4(340)に印加される高周波交流信号の周波数と異なる周波数であれば、ポート3(330)に印加される電気信号の周波数として設定することが可能である。
【0081】
実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明したが、以上の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、ギガヘルツクラス以上の高周波信号を扱う光信号伝送用回路において、発光素子または受光素子に使用される直流電流と高周波の交流電流の結合回路に用いて極めて有用である。
【符号の説明】
【0083】
100・・・銅箔パターン1(第1の導電体)
200・・・銅箔パターン2(第2の導電体)
300・・・回路基板
310・・・ポート1
311・・・ポート1コネクタ
320・・・ポート2
321・・・終端抵抗
330・・・ポート3
331・・・ポート3コネクタ
340・・・ポート4
341・・・ポート4コネクタ
350・・・並走部
360・・・エリアA101
361・・・ポート1コネクタ実装領域1
362・・・ポート1コネクタ実装領域2
370・・・エリアA102
371・・・ポート3コネクタ実装領域1
372・・・ポート3コネクタ実装領域2
380・・・エリアA103
381・・・ポート4コネクタ実装領域1
382・・・ポート4コネクタ実装領域2
383・・・終端抵抗実装領域
390・・・エリアC101
400・・・インダクタ
500・・・グランド(第3の導電体、第4の導電体)
1000・・・結合回路