IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリヒロプランデュ株式会社の特許一覧

特許7264709可食性凍結剤のシャーベット製造における使用方法及び該可食性凍結剤を使用したシャーベットの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】可食性凍結剤のシャーベット製造における使用方法及び該可食性凍結剤を使用したシャーベットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/34 20060101AFI20230418BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20230418BHJP
   A23G 9/04 20060101ALI20230418BHJP
   A23G 9/40 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A23G9/34
A23L29/244
A23G9/04
A23G9/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019079507
(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公開番号】P2020174584
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】506011021
【氏名又は名称】オリヒロプランデュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 織寛
【審査官】山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-065082(JP,U)
【文献】特開平06-245707(JP,A)
【文献】特開2007-202469(JP,A)
【文献】特開2000-023645(JP,A)
【文献】Rakutenレシピ, フローズンゼリー入り☆キャロット烏龍茶♪レシピ・作り方[online], 2013月08月12日, [retrieved on 2022.10.07], Retrieved from the Internet, URL, https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1810010095/
【文献】cookpad, 超、朝食、こんにゃくゼリースムージー[online], 2007年09月26日, [retrieved on 2022.10.07], Retrieved from the Internet, URL, https://cookpad.com/recipe/434885
【文献】cookpad, こんにゃくゼリーシェイク[online], 2018年08月27日, [retrieved on 2022.10.07], Retrieved from the Internet, URL, https://cookpad.com/recipe/5224556
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 9/00-9/52
A23L 2/00-35/00
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装容器に密封充填されたこんにゃくゼリーからなる可食性凍結剤のシャーベット製造における使用方法であって、
前記可食性凍結剤が、包装容器中に密封充填したこんにゃくゼリー形成用材料をゲル化した該包装容器の内表面により成型された外表面を有するこんにゃくゼリーからなり、
前記包装容器内に密封充填されたこんにゃくゼリーを凍結して凍結こんにゃくゼリーを形成し、該凍結こんにゃくゼリーから複数の凍結切断片を用意して、シャーベット形成用の液体材料と接触させてシャーベットを製造することを特徴とする、こんにゃくゼリーからなる可食性凍結剤のシャーベット製造における使用方法であって、
前記凍結切断片の内温が、前記シャーベット形成用の液体材料との接触時において、-4℃~-1℃の範囲に維持可能であり、
前記凍結切断片が、前記包装容器内に密封充填されたこんにゃくゼリーを該包装容器の外部から外力を加えて切断して複数の切断片を形成し、これらの切断片を該包装容器内での密封充填状態を維持して凍結させて得られる凍結切断片を該包装容器内から取り出すことにより調製される、使用方法
【請求項2】
こんにゃくゼリー形成用材料が、少なくとも、水、グルコマンナン及び増粘剤を含み、水とグルコマンナンの割合が、水100質量部に対してグルコマンナン0.01質量部~2質量部の範囲から選択され、水と増粘剤の割合が、水100質量部に対して増粘剤0.01質量部~1質量部の範囲から選択される、請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
前記シャーベット形成用の液体材料の凍結温度が、-1.5℃~0℃である、請求項1又は2に記載の使用方法。
【請求項4】
前記シャーベット形成用の液体材料が飲料である、請求項乃至のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項5】
前記飲料が牛乳である、請求項に記載の使用方法。
【請求項6】
シャーベットを製造する方法であって、
こんにゃくゼリー形成用の材料を包装容器内に密封充填する工程と、
前記こんにゃくゼリー形成用材料を前記包装容器内に密封充填した状態でゲル化して、該包装容器の内表面により成形された外表面を有するこんにゃくゼリーを形成する工程と、
前記包装容器内に密封充填されたこんにゃくゼリーを凍結させて凍結こんにゃくゼリーを調製する工程と、
前記包装容器内の凍結こんにゃくゼリーから複数の凍結切断片を用意する工程と、
前記複数の凍結切断片を、シャーベット形成用の液体材料と接触させてシャーベットを製造する工程とを有することを特徴とするシャーベットの製造方法であって、
前記凍結こんにゃくゼリーの内温が、前記シャーベット形成用の液体材料との接触時において、-4℃~-1℃の範囲に維持可能であり、
前記凍結切断片が、前記包装容器内に密封充填されたこんにゃくゼリーを該包装容器の外部から外力を加えて切断して複数の切断片を形成し、これらの切断片を該包装容器内での密封充填状態を維持して凍結させて得られる凍結切断片を該包装容器内から取り出すことにより調製される、シャーベットの製造方法
【請求項7】
こんにゃくゼリー形成用材料が、少なくとも、水、グルコマンナン及び増粘剤を含み、水とグルコマンナンの割合が、水100質量部に対してグルコマンナン0.01質量部~2質量部の範囲から選択され、水と増粘剤の割合が、水100質量部に対して増粘剤0.01質量部~1質量部の範囲から選択される、請求項6に記載のシャーベットの製造方法。
【請求項8】
前記シャーベット形成用の液体材料の凍結温度が、-1.5℃~0℃である、請求項6又は7に記載のシャーベットの製造方法。
【請求項9】
前記シャーベット形成用の液体材料が飲料である、請求項乃至のいずれか1項に記載のシャーベットの製造方法。
【請求項10】
前記飲料が牛乳である、請求項に記載のシャーベットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体材料からシャーベットを製造するための、包装容器に密封充填されたこんにゃくゼリーからなる可食性凍結剤に関する。
【背景技術】
【0002】
清涼感を得るための冷飲料、冷菓あるいは氷菓として、冷凍または凍結ゼリー、シャーベット、シャーベット状の飲料(例えば、シェイク、スムージー等)、アイスクリームなどの各種飲食品が提供されている。これらの冷飲料、冷菓あるいは氷菓は、家庭でのおやつや、飲食店でのデザート等として広く利用されている。
また、グルコマンナンをゲル化剤の一成分として利用して製造されるこんにゃくゼリーは、食物繊維としてのグルコマンナンを手軽に摂ることを可能とし、かつ果実味や甘味等の種々の味や風味を付与することができる低カロリーの菓子や食品として、広く提供されている。
特許文献1には、凍結後に牛乳と混合して崩すことで、シェイク状の食感を有する飲食品を提供するための食品素材が開示されている。この食品素材は、糖、粒状の乾燥こんにゃく加工品及び水を含む。
特許文献2には、凍結後に牛乳と混合して、シャーベット様の食感及び口溶けを有する半凍結状の食品を形成するための食品組成物が開示されている。この食品組成物は、牛乳に含まれる二価金属イオンと反応してゲルを形成する成分として、ローメトキシルペクチン及びハイメトキシルペクチンを含む。
特許文献3には、冷菓や氷菓として利用し得る、シャーベット状の凍結ゼリー飲料が開示されている。この凍結ゼリー飲料は、果糖、ブドウ糖、ショ糖及び粉飴からなる水溶性糖類混合物と、エリスリトールと、カラギーナン及びローカストビーンガムからなるゲル化剤と、を含む。
特許文献4には、シャーベット状のドリンクにおける技術課題として、氷、ジュース及び果物をシャーベット状にミックスしたドリンクの場合、これらをシャーベット状に粉砕混合するミキサーなどの専用の機器が必要である点が開示されている。引用文献4では、かかる技術課題を解決するための発明として、氷入りのミルク等の飲料の氷の代わりにシャーベット状の凍結ゼリーを用いた凍結ゼリー含有飲料が開示されている。引用文献4には、飲料と凍結ゼリーを別々に用意して、これらを混合することによる凍結ゼリー含有飲料の調製方法が開示されている。引用文献4には、ゼリー調製用のゲル化剤として、カラギーナン、ローカストビーンガム等が例示されている。
特許文献5には、伸縮自在に使用できる可食の冷菓デザート用シートゼリーが開示されている。このシートゼリーは、予め糖類等の主原料類とゲル化剤を調製し、一定温度以下で1mm~8mmの厚さのシートゼリーになるように冷却トレーなどに流し、冷却固化する方法により調製される。シートゼリーは適当な大きさにカットして使用される。このシートゼリーは、アイスクリームのような冷菓類と組合せて、冷菓類を包んだり、冷菓類を巻いたり、あるいは挟んだりして、冷凍下でも喫食可能なフローズンデザートの形成用として利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-202469号公報
【文献】特開2012-217383号公報
【文献】特開2002-272431号公報
【文献】特開2000-23645号公報
【文献】特開2010-88409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に開示される食品素材または食品組成物は、凍結後に牛乳と混合することで、シェイク状あるいはシャーベット状等の保形性を有する半凍結冷菓を手軽に作ることができるという利点を有している。これらの食品素材または食品組成物は、半凍結した状態での崩壊による口溶けの食感を与えることにより清涼感を提供するという点で優れている。しかしながら、これらの食品素材または食品組成物は、半凍結冷菓中に弾力のある固形ゼリーの食感を与えるものではない。
特許文献3に開示される凍結飲料ゼリーは、細い吸い口よりそのまま飲むことができる流動性を有し、弾力のある固形ゼリーの食感を与えるものではない。
特許文献4に開示される凍結ゼリーは、氷片の代わりに飲料に添加して冷飲料を調製するために使用されるものである。凍結ゼリーを混合する飲料は飲料としての形態は維持される。従って、特許文献4に開示される凍結ゼリーは、シャーベットやシャーベット状の飲料を提供するものではない。
特許文献5に開示される凍結シートゼリーは、アイスクリーム等の冷菓と伴に用いてフローズンデザートを形成するためのものであり、シャーベットやシャーベット状の飲料を提供するものではない。
本発明の目的は、食物繊維を手軽に摂取することができ、かつ、こんにゃくゼリーの弾力ある固体状の食感と、こんにゃくゼリーの保冷機能を利用して形成したシャーベットの氷菓としての食感と、を融合させた、これまでにないタイプの氷菓(氷菓子ともいう)を提供することにある。
本発明の他の目的は、家庭等において手軽にシャーベット状の氷菓を製造するための可食性の凍結剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、シャーベット形成用の液体材料と、かかる液体材料からシャーベットを製造するための可食性の凍結剤のそれぞれの味のバリエーションを相乗的に利用した新しいタイプのシャーベット状の氷菓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明にかかる包装容器に密封充填されたこんにゃくゼリーからなる可食性凍結剤のシャーベット製造における使用方法は、
前記可食性凍結剤が、包装容器中に密封充填したこんにゃくゼリー形成用材料をゲル化した、該包装容器の内表面により成型された外表面を有するこんにゃくゼリーからなり、
前記包装容器内に密封充填されたこんにゃくゼリーを凍結して凍結こんにゃくゼリーを形成し、該凍結こんにゃくゼリーから複数の凍結切断片を用意して、シャーベット形成用の液体材料と接触させてシャーベットを製造することを特徴とする使用方法であって、
前記凍結切断片の内温が、前記シャーベット形成用の液体材料との接触時において、-4℃~-1℃の範囲に維持可能であり、
前記凍結切断片が、前記包装容器内に密封充填されたこんにゃくゼリーを該包装容器の外部から外力を加えて切断して複数の切断片を形成し、これらの切断片を該包装容器内での密封充填状態を維持して凍結させて得られる凍結切断片を該包装容器内から取り出すことにより調製される、ことを特徴とする
本発明にかかるシャーベットを製造する方法は、
こんにゃくゼリー形成用の材料を包装容器内に密封充填する工程と、
前記こんにゃくゼリー形成用材料を前記包装容器内に密封充填した状態でゲル化して、該包装容器の内表面により成形された外表面を有するこんにゃくゼリーを形成する工程と、
前記包装容器内に密封充填されたこんにゃくゼリーを凍結させて凍結こんにゃくゼリーを調製する工程と、
前記包装容器内の凍結こんにゃくゼリーから複数の凍結切断片を用意する工程と、
前記複数の凍結切断片を、シャーベット形成用の液体材料と接触させてシャーベットを製造する工程とを有することを特徴とする方法であって、
前記凍結切断片の内温が、前記シャーベット形成用の液体材料との接触時において、-4℃~-1℃の範囲に維持可能であり、
前記凍結切断片が、前記包装容器内に密封充填されたこんにゃくゼリーを該包装容器の外部から外力を加えて切断して複数の切断片を形成し、これらの切断片を該包装容器内での密封充填状態を維持して凍結させて得られる凍結切断片を該包装容器内から取り出すことにより調製される、ことを特徴とする
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、食物繊維を手軽に摂取することができ、かつ、こんにゃくゼリーの弾力ある固体状の食感と、こんにゃくゼリーの保冷機能を利用して形成したシャーベットの氷菓としての食感と、を融合させた、これまでにないタイプの氷菓を提供することができる。
本発明によれば、家庭等において手軽に上記のシャーベット状の氷菓を製造するための、こんにゃくゼリーからなる可食性の凍結剤を提供することができる。
また、本発明によれば、シャーベット形成用の液体材料と、かかる液体材料からシャーベットを製造するための、こんにゃくゼリーからなる可食性の凍結剤のそれぞれの味及び食感のバリエーションを相乗的に利用した新しいタイプのシャーベット状の氷菓を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者は、こんにゃくゼリーの用途の更なる拡大についての鋭意検討を行った。その中で、本発明者は、こんにゃくゼリーが極めて有用な保冷機能を有するとの新たな知見を得た。かかる新たな知見に基づいて、家庭用冷蔵庫の冷凍室で凍らせたこんにゃくゼリーを適度なサイズにカットし、その切断片の中心温度を測定した。その結果、凍結切断片の中心温度が25℃の環境下で15分間程度-1℃以下に保たれることが分かった。この結果から、牛乳の凍結点が-0.8℃であることから、牛乳との組み合わせにより、こんにゃくゼリーがシャーベット製造用の凍結剤として利用できるとの斬新なアイデアを得るに至った。
本発明は、本発明者のかかる斬新なアイデアに基づいて成されたものであり、新規なこんにゃくゼリーの利用方法を提供するものである。
こんにゃくゼリーは、ゲル化剤として、少なくともこんにゃく粉に含まれるグルコマンナンを利用したゼリー製品である。
本発明にかかる凍結したこんにゃくゼリーの保冷機能の一形態では、室温(例えば20℃~25℃程度)に放置しても、その形状やサイズに応じて、凍結切断片の内温を-4℃~-1℃程度に、食するに必要な時間の間、維持することができる。このような保冷機能は、新規な知見として本発明者によって見出されたものである。
かかる保冷機能を、シャーベット形成用の液体材料の凍結剤として利用してシャーベットの製造を手軽に行なうことが可能となる。この凍結こんにゃくゼリーによるシャーベットの製造は、家庭の冷凍庫を利用して手軽に行なうことができる。更に、飲食店の冷凍庫を利用した手軽なシャーベットの製造にも利用することができる。更に、製造されたシャーベットを保冷して利用者に届けるサプライチェーンを設けることで、工業的な生産も可能である。
【0008】
本発明にかかるシャーベット製造用の可食性の凍結剤は、包装容器に密封充填された状態の可食性のこんにゃくゼリーからなる。
このこんにゃくゼリーは、包装容器に密封充填されたこんにゃくゼリー形成用材料を、ゲル化して調製されたものである。こんにゃくゼリー形成用材料のゲル化は、包装容器内に密封充填された状態を維持して行われる。このゲル化によって、こんにゃくゼリーの包装容器の内表面との接触面は、包装容器の内表面により成形された外表面となる。従って、包装容器内でゲル化したこんにゃくゼリーの外表面は、少なくともこの成形された外表面を有する。
包装容器内でゲル化したこんにゃくゼリーは、包装容器外に取り出すことなくそのまま凍結させ、凍結切断片としてから解凍しても、こんにゃくゼリーの風味及び弾力のある固形物としての食感が損なわれることがない。また、こんにゃくゼリーを包装容器内での密封充填状態を維持しつつ凍結することで、凍結時の離水の程度を効果的に抑制し、微妙なこんにゃくゼリーの食感を解凍後にも復元することが可能となる。包装容器内のこんにゃくゼリーが、上述した包装容器の内表面で成形された外表面を有することにより、これらの効果を更に向上させることができる。
【0009】
こんにゃくゼリーとしては、目的とするシャーベット製造用の凍結剤としての機能を有するものであれば特に限定されず、公知のこんにゃくゼリーや、目的に合うように調製されたこんにゃくゼリーから選択して用いることができる。
こんにゃくゼリーの調製用の材料としては、こんにゃくゼリー形成用のゲル化剤を用いることができる。ゲル化剤は、少なくともこんにゃく粉の成分としてのグルコマンナンを含む。グルコマンナンとして、こんにゃく粉そのもの、こんにゃく粉から精製したグルコマンナン等を用いることができる。グルコマンナンは、ゼリー形成用としてのゲル化能を有するものであれば、その形態は限定されない。
こんにゃく粉としては、例えば、通常用いられる特等粉、一等粉、或いは、ティマックマンナン(オリヒロ(株)製)等のこんにゃく精粉を挙げることができる。
こんにゃくゼリーの調製用の材料は、グルコマンナンに加えて、その他のゲル化剤、増粘剤、ショ糖、ブドウ糖、液糖等の甘味料、果汁、酸味料、香料、着色料、その他の各種添加材等のゼリー用として利用されている成分の少なくとも1種を用いてもよい。
グルコマンナン以外のゲル化剤及び増粘剤としては、カラギーナン、ローカストビーンガム、ジェランガム、寒天、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム等を挙げることができる。これらの1種、あるいは2種以上の組合せを用いることができる。
【0010】
こんにゃくゼリー形成用の材料は、少なくとも、水、グルコマンナン及び増粘剤を含むことが好ましい。増粘剤としては増粘多糖類を用いることが好ましい。これらの配合割合は、凍結解凍後においても弾力のある固体ゼリーとしての食感を維持できる範囲で、目的とするシャーベット形成用の液体材料の凍結温度等に応じて適宜調整すればよい。例えば、ゲル化剤及び増粘剤の少なくとも一方の種類及び配合割合を調整することで、凍結切断片による凍結温度を制御することができる。
こんにゃくゼリー形成用の材料における水とグルコマンナンの割合は、例えば、水100質量部に対してグルコマンナン0.01質量部~2質量部の範囲から選択することが好ましい。
増粘剤を追加して用いる場合において、こんにゃくゼリー形成用の材料における水と増粘剤の割合は、例えば、水100質量部に対して増粘剤0.01質量部~1質量部の範囲から選択することが好ましい。
シャーベット製造時の凍結こんにゃくゼリーの切断片の形状やサイズに応じて、シャーベット製造時の凍結切断片の内温度を、-1℃以下に維持可能であるように、こんにゃくゼリーの組成を調整することが好ましい。シャーベット製造時の凍結切断片の内温度は、-15℃以上-1℃以内に調整することができる。この内温度は、好ましくは-8℃以上-1℃以下、より好ましくは-6℃以上-1℃以下、更に好ましくは-4℃以上-1℃以下に調整される。
【0011】
こんにゃくゼリー形成用材料を包装容器に密封充填して、包装容器に密封充填した状態を維持してゲル化することで、本発明にかかるシャーベット製造用の可食性凍結剤を得ることができる。
包装容器内に密封充填されたこんにゃくゼリーの好ましい形状としては、シート状や板状の形状を挙げることができる。また、これらの厚さは、5mm~20mmの範囲が好ましく、10mm~15mmの範囲とすることがさらに好ましい。
【0012】
包装容器の材質及び構造は、こんにゃくゼリー形成用材料の密封充填、密封充填された材料のゲル化、凍結、凍結ゼリーの包装容器内からの取り出しが可能であれば、特に限定されない。包装容器の構成材料としては、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミドなどの樹脂からなる包装用として利用されている公知の可撓性のフィルムやシートを挙げることができる。これらのフィルムやシートは単層構造であっても、複数層構造であってもよい。ヒートシールにより、密封充填を行なう場合は、少なくともヒートシール部の形成に熱可塑性や熱溶融性を有する樹脂層を用いる。
包装容器内へのこんにゃくゼリー形成用の材料の密封充填方法は特に限定されない。この密封充填方法としては、包装容器の構造や材質に応じて公知の方法から選択した方法を用いることができる。
本発明の可食性凍結剤を用いたシャーベットの形成は、以下のようにして行うことができる。
まず、包装容器に密封充填されたこんにゃくゼリーを、包装容器に密封充填された状態を維持して凍結する。こうして得られた凍結こんにゃくゼリーから、複数個の凍結こんにゃくゼリーの切断片、すなわち凍結切断片を用意する。複数の凍結切断片をシャーベット形成用材料と接触させて、凍結切断片による冷却作用によってシャーベットを形成する。
【0013】
シャーベット形成用の液体材料としては、家庭用の冷凍庫でのこんにゃくゼリーの凍結温度において手軽にシャーベットが形成できる材料であれば特に限定されない。シャーベット形成用の液体材料としては、シャーベット形成時の氷の形成の核となり得る高分子物質などの成分を含むものが好ましい。
シャーベット形成用の液体材料としては、各種の飲料、ならびに各種の飲料に準じた成分を有する液体材料を好ましく利用することができる。
飲料の具体例としては、緑茶、番茶、ほうじ茶、ウーロン茶、ジャスミン茶、紅茶、麦茶、ミルクティーなどの各種の茶飲料、ブラックコーヒー、カフェオレ、カフェラテ等のコーヒー飲料、果汁入りの各種ジュース、野菜ジュース、牛乳、豆乳、これらの発酵飲料などの乳製品などを挙げることができる。
これらの中では、タンパク質や糖分などが複合的に作用してクリーミーなシャーベットを容易に形成可能な牛乳、豆乳、これらの発酵飲料が好ましく、牛乳がより好ましい。
これらの液体材料として、凍結点が0℃~-2.0℃の範囲、好ましくは0℃~-1.0℃の範囲にある液体材料が好ましい。
【0014】
凍結切断片の複数の適当数をシャーベット形成用の液体材料と接触させ、好ましくは混合して全体を塊とすることで、こんにゃくゼリーの凍結切断片にまとわり付いて形成されたシャーベットを得ることができる。
凍結切断片は、シャーベットの製造に適した低温状態を維持し、凍結切断片の外表面とシャーベット形成用材料が接触して冷やされることで、シャーベットが形成される。凍結切断片の切断面が、シャーベット形成をより促進させる機能を有するものと考えられる。その理由として、切断面がこんにゃくゼリーの内部組織が露出する面として形成され、シャーベットの製造に適した低温状態を維持し、かつ内部に含まれる水分が切断面で凍結している。この切断面において凍結した水分がシャーベット形成の核となっていることが挙げられる。
更に、こんにゃくゼリーの多数の凍結切断片を互いに接触させた、あるいは互いに近接させた塊としてシャーベット形成用の液体材料と混合することが好ましい。このように混合することで、塊の内部の低温状態を、より長時間維持させて、シャーベット形成の促進と維持を効果的に行なうことができる。更に、シャーベットが塊の外側に成長して形成されることで室温からの熱の伝達を防御して内部の保冷状態を更に維持することが可能となる。
また、こんにゃくゼリーの凍結切断片は、凍結後のシャーベット形成用材料との接触時、シャーベット形成後の部分解凍時、あるいは解凍時において切断片からの離水がないか、あるいは、シャーベット形成及びシャーベットを食する際の食感を損なわない程度に離水が少ないか、極めて少ない。その結果、切断片は、こんにゃくゼリーの弾力のある固体状の良好な触感を、半解凍時や、解凍後も維持可能である。
シャーベットの形成時には、複数の凍結切断片を適当にバラけさせ、シャーベット形成用の液体材料と接触させる。複数の切断片とシャーベット形成用の液体とを適当な速度で攪拌することで、シャーベットの形成を促進することができる。
この凍結こんにゃくゼリーの切断片に、シャーベット形成用の液体材料を接触させると、液体材料との接触部において氷粒の形成が始まり、シャーベットが形成される。その際、こんにゃくゼリーの切断によって形成された切断面からのシャーベットの形成がより顕著に進行する。そのため、凍結ゼリーの切断による切断片の形成は、シャーベットの形成に重要なプロセスである。
【0015】
上記のように凍結切断片の切断面でシャーベットの形成がより顕著に進行する点につて、本発明者は以下のように推定している。
包装容器内に充填された状態で凍結されたこんにゃくゼリーでは、水分がこんにゃくゼリー内部のネットワーク構造からなるゼリー組織に閉じ込められた状態で凍結する。包装容器の内表面により成形された表層部分の存在によって、この水分の閉じ込め効果を更に高めることができる。包装容器内に密封充填した状態で凍結して得られた凍結こんにゃくゼリーから調製した凍結切断片の実体顕微鏡での観察によれば、凍結切断片の有する切断面では、ゼリー組織が破壊されて露出した状態となり、この部分でのシャーベット形成用材料の氷晶化が激しく起こっている。すなわち、凍結ゼリーの切断面にある水分が起点となり、あるいは氷結の核となることで、シャーベット形成用材料中での氷粒の形成がより容易となる。
また、本発明にかかるこんにゃくゼリーは、凍結してもゼリーとしての組織が維持され、組織を構成するネットワークで仕切られた各空隙内に水分が凍結した状態で保持されるため、シャーベット形成用の液体と接触した状態でも凍結切断片の内温を目的する低温に維持することができると推定される。更に、凍結切断片を半解凍や解凍した状態でも、切断片内部の組織を構成するネットワークは破壊されずに維持されており、ネットワークで仕切られた各空隙内に水分が保持されるため、離水が起き難く、弾力のある固体状の触感を再度得ることができると推定される。更に、凍結切断片の外表面の少なくとも一部が、包装容器の内壁面で成形された成形面を有すること、並びに、こんにゃくゼリーの凍結を包装容器内に密封充填した状態で行うこと、によって上記の効果がより一層高まるものと推定される。
【0016】
包装容器内に形成した凍結こんにゃくゼリーからの凍結切断片の調製方法は、シャーベットとともに凍結切断片を食する場合に適した形状及び大きさの凍結切断片を用意できる方法であれば特に限定されない。
凍結切断片の形状及び大きさも、シャーベットとともに凍結切断片を食する場合に適した形状及び大きさであれば特に限定されない。例えば、凍結切断片の大きさは、凍結切断片あるいは凍結切断片が溶解した後に喉に詰まらせない程度とすればよい。
包装容器によって凍結こんにゃくゼリーをシート状に成型した場合は、シート状の凍結こんにゃくゼリーを厚さ方向に切断したブロックとして凍結切断片を調製することが好ましい。この凍結切断片の形状としては、シート状の凍結こんにゃくゼリーの厚さ方向に相当する方向に対して直行する方向の断面が、正方形、長方形、多角形、円形、楕円形または不定形などである形状を挙げることができる。
これらの断面の大きさについて、例えば、正方形、長方形、多角形、不定形であれば、これらの最長部分の長さを、5mm~25mmの範囲から選択することが好ましい。
凍結切断片を食するに適当な大きさや形状にしておくことで、そのまま食することができる。また、凍結切断片は、凍結後の解凍状態でも、風味、並びに弾力ある固形物としての食感を有する。
【0017】
凍結切断片の調製方法としては、以下の方法を挙げることができる。
(A)包装容器中に密封充填されたこんにゃくゼリーを凍結させ、包装容器から取り出して切断して凍結こんにゃくゼリーの切断片を調製する方法。
(B)包装容器中に密封充填された状態のこんにゃくゼリーを、包装容器内で予め切断しておく方法。
方法(A)における凍結こんにゃくゼリーの切断には、ナイフ、各種カッターを用いることができる。また、包装容器内での密封状態を維持して凍結させた凍結こんにゃくゼリーを包装容器から取り出して、成型された専用のカット用トレーを利用して凍結切断片を調製する方法も利用できる。専用のカット用トレーを利用する方法は、カット時の手指への怪我を防止する安全性を考慮した優れた方法と言える。
カット用のトレーは、凍結こんにゃくゼリーの大きさに合わせた底面部分と、底面部分を取り囲む側壁(外周)部分と、側壁に設けられたナイフや切断用ブレード等のカッターをガイドする切り込み状の隙間部分とを有する。この隙間部分は、凍結切断片の平面形状に合わせて側壁部分に配置されている。このカット用のトレーは、隙間部分をガイドとして利用して、対向する隙間部分内に隙間部分の内壁に沿ってカッターの先端部分と後端部分を順次挿入することで、側壁内に配置された凍結こんにゃくゼリーを切断して区分できるトレーであればよい。
カット用トレーの形成用の部材は特に限定されない。カット用トレーは、樹脂成型品、金属加工品、またはこれらの複合加工品の形態で提供することができる。
カット用トレーの形状やサイズは、凍結こんにゃくゼリーの目的とする切断が可能であれば特に限定されない。
蓄冷効果を高める上ではサイコロ状に切断するのが良い。サイコロ状に切断する場合には、縦、横、厚みが同サイズ程度の立方体とするのが良いが、長方形となっても、一部が多角形となっても良い。
【0018】
方法(B)では、包装容器の外部からの外力での切断により、包装容器内に複数のこんにゃくゼリーの切断片を形成した後、切断片を包装容器中に密封充封した状態を維持して凍結させてから、包装容器外に取り出して、凍結切断片を調製する。
この包装容器内に密封充填したこんにゃくゼリーを切断する方法は特に限定されない。例えば、特開2015-223166号公報に開示されている方法やこの方法に準じた方法を利用することができる。
方法(B)において、包装容器内で凍結切断片同士が結着している場合は、スプーン、ナイフなどの適当な器具で簡単に切り離すことができるように、こんにゃくゼリーを切断しておくことが好ましい。
【0019】
以上説明した本発明にかかる可食性凍結剤を利用したシャーベットの製造方法は、以下の工程を有する。
(1)こんにゃくゼリー形成用の材料を包装容器内に密封充填する工程。
(2)こんにゃくゼリー形成用材料を包装容器内に密封充填した状態でゲル化して、包装容器の内表面により成形された外表面を有するこんにゃくゼリーを形成する工程。
(3)包装容器内に密封充填されたこんにゃくゼリーを凍結させて凍結こんにゃくゼリーを調製する工程。
(4)包装容器内の凍結こんにゃくゼリーから複数の凍結切断片を用意する工程。
(5)複数の凍結切断片を、シャーベット形成用の液体材料と接触させてシャーベットを製造する工程。
上述のとおり、工程(4)は以下の工程(4-1)及び(4-2)の少なくとも一方を利用することができる。
(4-1)包装容器内から取り出した凍結こんにゃくゼリーの切断により凍結切断片を調製する工程。
(4-2)包装容器内に密封充填されたこんにゃくゼリーを包装容器の外部から外力を加えて切断して複数の切断片を形成し、これらの切断片を包装容器内での密封充填状態を維持して凍結させて得られる凍結切断片を包装容器内から取り出す工程。
【0020】
包装容器に密封充填されたこんにゃくゼリーの凍結処理は、利用者が未凍結状態の包装容器に密封充填されたこんにゃくゼリーを入手して家庭用の冷凍庫等で行なってもよいし、販売店等の利用者への供給側でおこなってもよい。
解凍後においても弾力のある固体状のゼリーとしての食感を有するこんにゃくゼリーでは、こんにゃくゼリーの風味や食感を損なう、凍結時、あるいは凍結保存時におけるこんにゃくゼリーの内部からの水分の滲み出し(離水)や、こんにゃくゼリー表面で氷結や霜の発生を抑制することができる。更に、包装容器内のこんにゃくゼリーの外表面が、少なくとも包装容器の内表面により成形された外表面(成形面)を有することによって、上記の効果の更なる向上を図ることができる。
包装容器内表面での成形によって、上記の効果がより一層向上することの理由の一つとして、ゲル化の際に形成される包装容器の内壁を型とした成形面に、平滑化された外表面を有する密度の高い表層が形成されることを挙げることができる。かかる表層おいて、凍結処理時や凍結保存時に、こんにゃくゼリー内部にある水分の外表面からの滲み出しが、より効果的に防止されるものと考えられる。
このような成形された外表面は、包装容器内の充填用の領域に、こんにゃくゼリー形成用の材料を充満させて充填し、気泡が実質的に入らないように密封し、その状態でゲル化を行なってこんにゃくゼリーを包装容器内で形成する方法により形成することができる。この方法によれば、ゲル化によって硬化するこんにゃくゼリーの外表面が、包装容器の内表面に沿って成形され、上述した表層が形成される。
なお、「気泡が実質的に入らないように密封した状態」とは、気泡が混入しても、凍結後の解凍において目的とする風味及び食感を維持し得る、包装容器の内表面とこんにゃくゼリー形成用材料との接触面の割合が確保できる状態をいう。この状態を得る上で許容できる気泡の混入量は、包装容器内に混入した気泡により、こんにゃくゼリーと包装容器の内表面との接触が遮断された部分の面積と、包装容器内に密封充填した状態で凍結後に解凍して得られるこんにゃくゼリーの風味及び食感との関係を予備実験により予め検討して求めることができる。
【0021】
包装容器の内表面で成形されるこんにゃくゼリーの外表面の割合は、上述した効果を得ることができるように設定すればよく、こんにゃくゼリーをシート状や板状とする場合には、これらの形状の上面及び下面の少なくとも一方が包装容器の内表面で成形されていることが好ましい。
更に、包装容器内のこんにゃくゼリーを、包装容器内に密封充填した状態を維持して外部からの圧力で切断する場合は、包装容器内に大気に曝されることのない密封充填された状態で切断片が形成される。
これに対して、成形されたこんにゃくゼリーを切断して切断片としてから、容器に移して凍結処理した場合、予め切断された面が空気に晒された状態で凍結が始まると、切断面のゼリー組織が凍結時に膨張することにより、ネットワーク構造が壊れる。その結果、その内部に保持されている水が浸出液として外に出ることにより氷の結晶が形成され、風味や食感が低下した凍結こんにゃくゼリーの切断片となる。この凍結こんにゃくゼリーは、解凍後も風味や食感が低下したものとなる。このような凍結切断片を、本発明で目的とするャーベットの製造に利用すると、こんにゃくゼリーの切断片の凍結物の表面に形成された浸出液から形成された氷が、シャーベット中に混入する。その結果、ジャリジャリとした食感となり、滑らかさが損なわれると同時に、氷が溶解してシャーベットを水っぽくする。さらに、凍結こんにゃくゼリー自体の風味や食感が低下し、目的とする美味しさを得ることが難しい。
すなわち、包装容器内に密封充填した状態で成形されたこんにゃくゼリーを凍結する場合には、少なくともこんにゃくを含む増粘剤によって形成された網目状ネットワーク内で水が凍り、氷の結晶が非常に細かくなるので、こんにゃくゼリーのネットワーク構造は破壊される事は無い。従って、こんにゃくゼリーの風味、さらには滑らかで弾力ある食感が維持されるのみならず、外部から加えたシャーベット形成用の液体がこんにゃくゼリー凍結切断片に接触することにより形成されたシャーベットを水っぽくする事も無い。また、このミクロのネットワーク構造により、凍結切断片の中心部から外側に向かって常に保冷効果が働く形となる。例えば、本発明にかかるこんにゃくゼリーの切断片によれば、その外部に形成されたシャーベットを一定温度(-1.0~-2.0℃程度)に冷やし続けることができる。従って、適度に掻き回すことにより、シャーベットを常に一定の食感に維持し続けることができる。これらの効果は、こんにゃくゼリーを包装容器内に密封充填された状態で予め切断する場合にも同様に得ることができる。
【0022】
このこんにゃくゼリーの切断片が入ったシャーベットによれば、こんにゃくゼリーからの風味と食感と、シャーベット形成用材料からの風味と食感が相乗的に作用した新規な風味及び食感と、が融合された新規な食感を得ることができる。種々の風味及び食感のものからこんにゃくゼリーを選択し、種々の風味及び食感を与えるものからシャーベット形成用材料を選択して組み合わせることができ、こんにゃくゼリーの切断片入りのシャーベットの風味及び食感のバリエーションを格段に広げることが可能となる。
【実施例
【0023】
以下、実験例、参考例及び実施例により本発明を更に詳細に説明する。
(実験例1)
サンプルAには、こんにゃく粉(オリヒロ株式会社製「ティマックマンナン」)5g、キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「サンエースNXG-S」)5g、果糖ブドウ糖液糖(群栄化学工業株式会社製)300g、濃縮いちご果汁10g、クエン酸6.6g、クエン酸ナトリウム5g、香料少量、水666.4gを使用した。
こんにゃく粉及びキサンタンガムを果糖ブドウ糖液糖に混合分散させ、水を加え、80℃に加温し、更に、クエン酸、クエン酸ナトリウム、いちご果汁、香料を加えて原料溶液を得た。原料溶液200gを可撓性のプラスチックシートからなる外装袋内に厚さが10mm程度となる様に密封包装し、85℃で加熱殺菌後冷却して長方形となる様に成型した。
サンプルBには、こんにゃく粉(オリヒロ株式会社製「ティマックマンナン」)2g、キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「サンエースNXG-S」)3g、ローカストビーンガム(三晶株式会社製「MC1000」)3g、果糖ブドウ糖液糖(群栄化学工業株式会社製)300g、濃縮いちご果汁10g、クエン酸6.6g、クエン酸ナトリウム5g、香料少量、水668.4gを使用した。
これら原料の調合手順はサンプルAと同様に行い、原料溶液200gを可撓性のガスバリア性三方シール袋(カウパック株式会社製、SPN1727)からなる外装袋内に厚さが10mm程度となる様に密封包装し、85℃で殺菌後冷却して長方形となる様に成型した。
冷却後のこんにゃくゼリーA、B(各内容量200g)を、家庭用冷蔵庫(Natinal NR-E412T-SR)の冷凍室で一晩冷凍した。
凍結ゼリーA、Bを開封して平面形状として縦15mm×横15mmに凍結切断片のサイズを揃え、中心温度の継時変化測定用サンプルとした。サンプルの厚みは10mmであった。測定環境を25℃に保つために冷凍機付インキュベーター(パナソニックヘルスケア株式会社製、MIR-154-P)を用い、凍結切断片(ブロック状)中心部温度の継時変化は、データーロガ温度計(株式会社カスタム製、型番:CT-05SD)と、温度センサー(同社製、型式:LK-700、センサーφ1.0mm)によって30秒間隔で、20分間記録した。
測定の結果は、1分毎の記録として以下の表1に示した。
【0024】
【表1】
【0025】
表1によれば、サンプルA、B共に、測定開始時から15分程度は-1℃以下を保持することが明らかとなった。
【0026】
破断応力の測定
上記ゼリーA及びBの凍結前(10℃冷蔵一晩)と、冷凍庫内一晩凍結後のゼリーを上記同様に縦15mm×横15mm、厚み10mmのサイズにカットし、庫内温度25℃とした冷凍機付インキュベーター(パナソニックヘルスケア株式会社製、MIR-154-P)内に30分間置いた。それぞれのゼリーの中心温度が10℃以上となったサンプルの物性について、テクスチュロメーター(タケトモ電機株式会社製、型式:テンシプレッサーMy BoyII)を用い、直径5mmのプランジャー(接触面積0.196cm、圧縮速度1mm/sec.)で、厚み10mmのサンプルを上面から9mm迄圧縮した際の圧縮応力を測定した。
測定の結果は以下の表2に示す通りであった。
【0027】
【表2】
【0028】
表2によれば、凍結前ゼリーの圧縮応力は、サンプルAが1,673gw/cmサンプルBが392gw/cmであった。凍結、解凍後では、サンプルAが826gw/cm、サンプルBが288gw/cmであった。凍結、解凍後は、サンプルAは凍結前の49%に、サンプルBは凍結前の73%まで圧縮応力が低下したが、両サンプル共に固体状のこんにゃくゼリーとしての弾力を維持していた。
【0029】
(参考例1)
特許文献1の実施例1に則って以下の実験を行った。
こんにゃく粉(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「サンスマート400」)1.5質量%、ペクチン(三唱株式会社製)0.5質量%、大豆多糖類(不二製油株式会社製「ソヤファイブS-DN」)0.5質量%、無水結晶ぶどう糖(日本食品化工株式会社製)17質量%、イチゴ果汁10.5質量%、水70質量%、香料少量を用意した。これら粉末原料を混合後水に溶解し、イチゴ果汁を加えた状態はシャバシャバの液状であった。本溶液の粘度を20℃で測定したところ、30.7mPa・s(東機産業株式会社製、TVB―15形粘度計)であった。これをパウチ包装して家庭用冷蔵庫の冷凍庫で一晩凍結させ、90mlの原液に対して冷牛乳50mlを加えてスプーンで混ぜて崩し、シェイク状の食品とした。
試食した印象は、冷(6.5℃)牛乳を加えてスプーンで掻き混ぜると、簡単にゼリーが崩れて牛乳と混ざり、イチゴミルク味のシャーベットとなった(中心温度-4.0℃)。当初は冷たさが程良く、美味しく頂けたが(室温24.5℃の室内)、食している間に(3分程度)どんどん溶解していき、それと共に水っぽく感じられる様になった。
【0030】
(実施例)
実験例1と同じメーカーの原料を用い、コンニャク粉0.5質量%、キサンタンガム0.3質量%、ローカストビーンガム0.2質量%、果糖ブドウ糖液糖30質量%、濃縮いちご果汁1.0質量%、クエン酸0.66質量%、クエン酸ナトリウム0.5質量%、香料0.2質量%、水66.64質量%の割合で使用した。実験例1と同様の製造方法で400Kgのゼリー原液を用意した。これを厚さ10mm、縦150mm、横80mmのサイズになるようにガスバリアフイルムに密封包装し、85℃で加熱殺菌後冷却成型した。
上記凍結前ゼリー(厚み10mm程度)を平面形状として縦15mm×横15mmのサイズにカットした測定用のサンプルを用意した。この試験用サンプルについて、テクスチュロメーター(タケトモ電機株式会社製、型式:テンシプレッサーMy BoyII)を用い、実験例1と同様の条件で直径5mmのプランジャーで上面から9mm迄圧縮した際の圧縮応力を測定した。その結果は555.5gw/cmであった。
この包装されたいちご風味のこんにゃくゼリーを家庭用冷蔵庫(Natinal NR-E412T-SR)の冷凍室で一晩冷凍した。包材を開封して出した冷凍こんにゃくゼリーを、専用のカット用のトレーにセットしてサイの目に切断し、厚み10mm程度、縦、横各10~15mm程度の切断片を得た。専用のカット用のトレーは、底面が90mm×130mm、外周の立ち上がり部(側壁)の高さは20mmで、側壁に囲われた開口部を有する。この開口部に凍結こんにゃくゼリーを載置することができる。側壁部には、外周方向に沿って11~13mmの間隔で、底面に対して直交する方向(鉛直方向)に幅1mm程度の隙間の開いた切り込みが入っており、この切り込みが、凍結こんにゃくゼリーに対してナイフを入れる際のガイドとして機能する。この専用のカット用のトレー内に凍結こんにゃくゼリーを載置し、側壁の切り込みに沿ってナイフを入れることで上記のサイズ及び形状の凍結こんにゃくゼリーの切断片を多数得た。
【0031】
この凍結こんにゃくゼリー切断片100gに対して50gの冷牛乳を加え、スプーンで掻き混ぜたところ、凍結こんにゃくゼリー切断片の周囲に牛乳シャーベットが、まるで真っ白な淡雪がふんわりと降り積もった様に形成した。
これを食品の専門パネル7名に試食させた結果は、「牛乳シャーベット自体は、非常に細やかな雪の結晶かと思われる様な滑らかな食感であり、こんにゃくゼリー切断片と一緒に口に入れると、ひんやりと冷たい感覚と共に弾力のあるイチゴ風味のこんにゃくゼリーに牛乳シャーベットがマッチして美味しく、これまでに無い全く新しい食品として感じられた」との意見であった。
尚、凍結後のゼリーを室温に1時間程度放置し、中心温度が10℃以上となった状態で、上記同様のサイズにカットし、テクスチュロメーターでの圧縮応力を測定した。その結果は440gw/cmであった。