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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】液封ブッシュ
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/26 20060101AFI20230418BHJP
   F16F 13/14 20060101ALI20230418BHJP
   B60G 7/02 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
F16F13/26 D
F16F13/14 A
B60G7/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019091936
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020186773
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185018(JP,A)
【文献】特開平09-280304(JP,A)
【文献】特開2009-138922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 11/00 - 13/30
B60G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に取付けられる外側部材、および他方に取付けられるとともに、前記外側部材の内側に配設された内側部材と、
前記外側部材と前記内側部材とを連結した弾性体と、を備え、
前記外側部材の内側に、
2つの液室と、
前記2つの液室同士を接続し、一方向に延びる接続路と、
前記接続路の両端部のうち、前記2つの液室のうちの一方の液室側に位置する一端部と、前記2つの液室のうちの他方の液室と、を連通する第1連通路と、
前記接続路の両端部のうち、前記他方の液室側に位置する他端部と、前記一方の液室と、を連通する第2連通路と、
リニアモータと、が設けられ、
前記リニアモータは、
前記接続路に前記一方向に移動可能に設けられ、前記接続路における前記第1連通路、および前記第2連通路の各開口を双方ともに閉塞することが可能であるとともに、当該各開口を双方ともに閉塞した状態から前記一方向に沿う移動をしたときに、前記各開口を各別に開放可能な可動子と、
前記可動子を囲うコイルと、を備える、液封ブッシュ。
【請求項2】
前記可動子は、前記一方向に繋ぎ合わされた複数の永久磁石を備え、
前記可動子の外周面、および前記接続路の内周面のうちの少なくとも一方は、前記永久磁石の外周面の静摩擦係数より静摩擦係数が小さい低摩擦材で形成されている、請求項1に記載の液封ブッシュ。
【請求項3】
前記接続路に、前記可動子が前記一方向のうちのいずれか一方の向きに移動したときに弾性変形し、前記可動子を前記一方向のうちのいずれか他方の向きに付勢する弾性部材が設けられている、請求項1または2に記載の液封ブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液封ブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に取付けられる外側部材、および他方に取付けられるとともに、外側部材の内側に配設された内側部材と、外側部材と内側部材とを連結した弾性体と、外側部材の内側に設けられた2つの液室と、2つの液室同士を接続した接続路と、を備え、車両の走行状態に応じて、接続路を通した2つの液室同士の連通、およびその遮断を切替える液封ブッシュが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-58934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の液封ブッシュでは、入力振動が振動受部に伝播するのを、幅広い周波数範囲にわたって抑えることが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、入力振動が振動受部に伝播するのを、幅広い周波数範囲にわたって抑えることができる液封ブッシュを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る液封ブッシュは、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に取付けられる外側部材、および他方に取付けられるとともに、前記外側部材の内側に配設された内側部材と、前記外側部材と前記内側部材とを連結した弾性体と、を備え、前記外側部材の内側に、2つの液室と、前記2つの液室同士を接続し、一方向に延びる接続路と、前記接続路の両端部のうち、前記2つの液室のうちの一方の液室側に位置する一端部と、前記2つの液室のうちの他方の液室と、を連通する第1連通路と、前記接続路の両端部のうち、前記他方の液室側に位置する他端部と、前記一方の液室と、を連通する第2連通路と、リニアモータと、が設けられ、前記リニアモータは、前記接続路に前記一方向に移動可能に設けられ、前記接続路における前記第1連通路、および前記第2連通路の各開口を双方ともに閉塞するとともに、前記一方向に沿う移動に伴い、前記各開口を各別に開放可能な可動子と、前記可動子を囲うコイルと、を備える。
【0007】
この発明によれば、リニアモータの可動子が、接続路に前記一方向に移動可能に設けられ、接続路における第1連通路、および第2連通路の各開口を双方ともに閉塞しているので、小振幅で高周波の振動が入力されたときに、コイルに制御電流を供給して、可動子を、接続路における第1連通路、および第2連通路の各開口を閉塞させたままの状態で、前記一方向に小振幅で振動させることが可能になる。これにより、小振幅で高周波の振動が入力されたときに、コイルに制御電流を供給して、可動子を、外側部材および内側部材の相対変位が規制可能な液圧となるように、前記一方向に振動させることが可能になり、入力振動が振動受部に伝播するのを抑えることができる。
リニアモータの可動子が、前記一方向に沿う移動に伴い、接続路における第1連通路、および第2連通路の各開口を各別に開放可能に設けられているので、大振幅で低周波の振動が入力されたときに、可動子が、2つの液室のうち、容積が縮小した方の液室から、前記一方向に沿って離れる向き(以下、バウンド方向といい、その逆向きをリバウンド方向という)に移動し、接続路における第1連通路、および第2連通路の各開口のうちのいずれか一方が開放され、接続路の液体が、第1連通路、若しくは第2連通路を通して、2つの液室のうち、容積が拡大した方の液室に流入する。
この際、例えば入力振動の加速度等を検出しておくことで、検出値に基づいて得られた大きさの制御電流をコイルに供給し、可動子にリバウンド方向の減衰力を加えつつ、可動子の前記一方向に沿う位置を制御して、接続路における第1連通路、および第2連通路の各開口のうちのいずれか一方の開口面積を調整することが可能になるとともに、可動子が、リバウンド方向に移動するときに、検出値に基づいて得られた大きさの制御電流をコイルに供給し、可動子にバウンド方向の減衰力を加えつつ、可動子の前記一方向に沿う位置を制御して、接続路における第1連通路、および第2連通路の各開口のうちのいずれか他方の開口面積を調整することが可能になり、入力振動を減衰、吸収することができる。
以上より、入力振動が振動受部に伝播するのを、幅広い周波数範囲にわたって抑えることができる。
大振幅で低周波の振動が入力されたときに、可動子に加える前記一方向に沿う減衰力を、コイルに供給した制御電流だけでなく、可動子の前記一方向に沿う位置によって変更可能な、接続路における第1連通路、および第2連通路の各開口の開口面積の大きさによっても制御することが可能になり、コイルに供給する制御電流を低く抑えることができる。
前述の可動子を備えたアクチュエータが、リニアモータとなっているので、動く部材が外側部材の外部に突出しない構成を実現することが可能になり、外側部材の内側の密閉性を容易に確保することができる。
【0008】
ここで、前記可動子は、前記一方向に繋ぎ合わされた複数の永久磁石を備え、前記可動子の外周面、および前記接続路の内周面のうちの少なくとも一方は、前記永久磁石の外周面の静摩擦係数より静摩擦係数が小さい低摩擦材で形成されてもよい。
【0009】
この場合、可動子の外周面、および接続路の内周面のうちの少なくとも一方が、永久磁石の外周面の静摩擦係数より静摩擦係数が小さい低摩擦材で形成されているので、コイルに供給した電流値が低く、可動子が、接続路内で十分に浮遊せず接続路の内周面に当接していても、可動子を円滑に駆動することが可能になり、コイルに供給する制御電流を低く抑えても、可動子の前記一方向に沿う位置を精度よく制御することができる。
【0010】
また、前記接続路に、前記可動子が前記一方向のうちのいずれか一方の向きに移動したときに弾性変形し、前記可動子を前記一方向のうちのいずれか他方の向きに付勢する弾性部材が設けられてもよい。
【0011】
この場合、接続路に、可動子が前記一方向のうちのいずれか一方の向きに移動したときに、可動子を前記一方向のうちのいずれか他方の向きに付勢する弾性部材が設けられているので、小振幅で高周波の振動が入力されたときに、弾性部材を弾性変形させることで、可動子を、外側部材および内側部材の相対変位が規制可能な液圧となるように、前記一方向に小振幅で振動させることが可能になり、コイルに供給する制御電流を低く抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、入力振動が振動受部に伝播するのを、幅広い周波数範囲にわたって抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る液封ブッシュの縦断面図である。
図2図1の液封ブッシュにおいて、内側部材が外側部材に対して右側に変位した状態を示す模式図である。
図3図1の液封ブッシュにおいて、内側部材が外側部材に対して左側に変位した状態を示す模式図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る液封ブッシュの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る液封ブッシュを説明する。
【0015】
図1から図3に示されるように、液封ブッシュ1は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に取付けられる外側部材11、および他方に取付けられるとともに、外側部材11の内側に配設された内側部材12と、外側部材11と内側部材12との間に配設された中間筒23と、内側部材12の外周面と中間筒23の内周面とを連結した弾性体14と、を備えている。
【0016】
外側部材11は、本体部材24、および差込部材25を備え、外側部材11の内側に、リニアモータ18が設けられている。本体部材24、および差込部材25は、非磁性材料で形成されている。
本体部材24には、本体ゴム収容部26、差込凹部27、第1連絡路28、および第2連絡路29が形成されている。
【0017】
本体ゴム収容部26は、正面から見て円形状を呈する。正面視において、この円形状の中央を通る直線を中心軸線Oといい、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
内側部材12は、筒状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0018】
差込凹部27は、中心軸線Oに沿う軸方向、つまり正面から見て、本体ゴム収容部26から離れた位置に配設されている。以下、正面視において、本体ゴム収容部26に対して差込凹部27が位置している側を下側といい、差込凹部27に対して本体ゴム収容部26が位置している側を上側という。
差込凹部27は、軸方向および上下方向の双方向に直交する横方向に延びている。差込凹部27における横方向の両端部のうちのいずれか一方側の端部は、本体部材24の外表面に開口している。差込凹部27、および本体ゴム収容部26それぞれの横方向の位置は、互いにほぼ同等になっている。
【0019】
なお、液封ブッシュ1は、例えば車両のサスペンション装置等に適用され、内側部材12内に、例えばロアアーム等が嵌合され、液封ブッシュ1は、軸方向が車両前後方向と一致し、かつ横方向が車両左右方向と一致した状態で設けられる。
【0020】
第1連絡路28は、本体ゴム収容部26、および差込凹部27それぞれにおける横方向の一方側の端部同士を接続している。第1連絡路28は、上下方向に延び、差込凹部27の内周面に開口している。
第2連絡路29は、本体ゴム収容部26、および差込凹部27それぞれにおける横方向の他方側の端部同士を接続している。第2連絡路29は、本体ゴム収容部26から下方に向けて延びる上部29aと、上部29aの下端部から横方向に延び、差込凹部27の内面のうちの横方向を向く端面に開口した下部29bと、を備えている。
【0021】
差込部材25は、横方向のうちの一方側の端部が閉塞された筒状に形成され、差込凹部27に嵌合されている。差込部材25は、本体部材24の外表面における差込凹部27の開口部を閉塞している。差込部材25において、第1連絡路28と対向する部分に、第1連絡路28と差込部材25の内側とを連通する接続孔25bが形成されている。接続孔25bは、上下方向に延びている。
差込部材25において、本体部材24の外表面から横方向に突出した部分に、電気配線Lが接続されるコネクタが収容されたコネクタ収容部25cが設けられている。
【0022】
差込部材25の内周面は、第2連絡路29の下部29bと同軸に配置され、差込部材25、および第2連絡路29の下部29bそれぞれの内径は、互いに同等になっている。これにより、差込部材25の内側、および第2連絡路29の下部29bが、外側部材11の内側に設けられた横方向(一方向)に延びる接続路15を構成している。接続路15は、第1連絡路28、および第2連絡路29の上部29aを通して、本体ゴム収容部26の横方向の両端部に各別に接続されている。
【0023】
接続路15に、リニアモータ18の可動子19が、横方向に移動可能に設けられている。可動子19は、横方向に繋ぎ合わされた複数の永久磁石19aを備えている。永久磁石19aは、隣接する永久磁石19a同士の間に反発力が生ずるように、同じ磁極が向き合わされた状態で配設されている。
【0024】
可動子19の外周面と、接続路15の内周面と、の間には、後述の液体が流通せず、かつ可動子19が横方向に移動可能な程度の微小な隙間が設けられている。振動の入力時に、可動子19は接続路15内を横方向に移動する。
可動子19の外周面、および接続路15の内周面のうちの少なくとも一方は、永久磁石19aの外周面の静摩擦係数より静摩擦係数が小さい低摩擦材21で形成されている。図示の例では、低摩擦材21は、例えばポリアセタール等により形成され、複数の永久磁石19aの全体を一体に被覆している。なお、接続路15の内周面が、低摩擦材21で形成されてもよい。
【0025】
差込部材25の外周面に、全周にわたって連続して延び、リニアモータ18のコイル20が収容された環状凹部25aが形成されている。環状凹部25aの横方向の中央部、および中心軸線Oそれぞれの横方向の位置は、互いに同等になっている。コイル20は、横方向に沿って複数設けられている。複数のコイル20は、環状凹部25aにおける横方向の全長にわたって設けられている。コイル20は、図示されない3相の交流電源に電気配線Lを介して接続されている。複数のコイル20全体の横方向の中央部、および可動子19の横方向の中央部それぞれの横方向の位置は、互いに同等になっている。コイル20は可動子19を囲っている。
【0026】
差込部材25の外周面と、差込凹部27の内周面と、の間に、シール材Sが横方向に間隔をあけて複数配設されている。シール材Sは、差込部材25の外周面と、差込凹部27の内周面と、の間において、環状凹部25aを横方向に挟む各位置と、接続孔25bを横方向に挟む各位置と、に設けられている。
図示の例では、シール材Sは3つ設けられ、差込部材25の外周面と、差込凹部27の内周面と、の間において、環状凹部25aと接続孔25bとの間に位置する部分には、1つのシール材Sが設けられている。
【0027】
ここで、外側部材11の本体ゴム収容部26に、内側部材12、中間筒23、および弾性体14が配設されている。
内側部材12および中間筒23は、中心軸線Oと同軸に配設されている。内側部材12は、中間筒23の内側に配設されている。中間筒23の外径は、本体ゴム収容部26の内径より小さくなっている。中間筒23には、周方向に間隔をあけて2つの貫通孔23aが形成されており、これらの貫通孔23aは、径方向で互いに対向している。2つの貫通孔23aは、中間筒23を横方向に貫通している。貫通孔23aは、中間筒23のうち、軸方向の両端部より軸方向の内側に位置する部分の全域に形成されている。
【0028】
弾性体14は、中間筒23の内周面のうち、2つの貫通孔23a同士の間に位置する部分、および貫通孔23aの開口周縁部に連結されている。弾性体14は、中間筒23の内周面における貫通孔23aの開口周縁部の全周にわたって連結されている。弾性体14は、ゴム材料により形成されている。
【0029】
中間筒23の外周面のうち、周方向で互いに隣り合う貫通孔23a同士の間に位置する各部分と、本体ゴム収容部26の内周面と、が、仕切壁31により各別に連結されている。中間筒23の外周面のうち、周方向で互いに隣り合う貫通孔23a同士の間に位置する各部分のうちのいずれか一方は、上端に位置して上方を向き、いずれか他方は、下端に位置して下方を向いている。仕切壁31は、中間筒23の外周面のうち、周方向で互いに隣り合う貫通孔23a同士の間に位置する部分の周方向の中央部に連結されている。仕切壁31、および中心軸線Oそれぞれの横方向の位置は、互いに同等になっている。仕切壁31は、ゴム材料により形成されている。
【0030】
中間筒23の外周面における軸方向の両端部に、全周にわたって連続して延びる不図示の環状突部が配設されている。環状突部は、弾性変形可能に形成され、本体ゴム収容部26の内周面に圧接している。仕切壁31は、軸方向に延び、中間筒23の軸方向の両端部に配設された各環状突部を軸方向に連結している。
【0031】
以上より、外側部材11と内側部材12とが、中間筒23、環状突部、および仕切壁31を介して弾性体14により連結されている。すなわち、外側部材11と内側部材12とが弾性体14により連結されている。
なお、中間筒23を配設せず、本体ゴム収容部26の内周面と内側部材12の外周面とを直接、弾性体14により連結してもよい。
【0032】
ここで、外側部材11の内側に、例えばエチレングリコール、水、若しくはシリコーンオイル等の液体が封入されている。図示の例では、液体は、本体ゴム収容部26、第1連絡路28、接続孔25b、差込部材25の内側、および第2連絡路29に満たされている。これにより、外側部材11の内側に、少なくとも本体ゴム収容部26の内周面、中間筒23の外周面、仕切壁31、および環状突部により区画され、横方向に並べられた2つの液室13a、13bが設けられている。
【0033】
そして、横方向の振動の入力に伴い、弾性体14が弾性変形し、外側部材11、および内側部材12が相対変位して、2つの液室13a、13bのうちのいずれか一方の容積が拡大し、かついずれか他方の容積が縮小する。
2つの液室13a、13bのうちのいずれか一方の液室13aは、第1連絡路28および接続孔25bを通して接続路15に接続され、いずれか他方の液室13bは、第2連絡路29の上部29aを通して接続路15に接続されている。つまり、接続路15は、2つの液室13a、13b同士を接続している。
【0034】
2つの液室13a、13bには、径方向の外側に向けて突出し、本体ゴム収容部26の内周面に当接可能なストッパ突部32が各別に配設されている。ストッパ突部32は、内側部材12の外周面から径方向の外側に向けて突出している。ストッパ突部32は、内側部材12および液室13a、13bそれぞれにおける軸方向の中央部に配設されている。ストッパ突部32のうち、少なくとも径方向の外端部は、弾性材料により形成されている。図示の例では、ストッパ突部32の全体が、ゴム材料により形成されている。ストッパ突部32の径方向の外端部と、本体ゴム収容部26の内周面と、の間に径方向の隙間が設けられている。
ストッパ突部32、環状突部、仕切壁31、および弾性体14は、一体に形成されている。
【0035】
外側部材11の内側に、接続路15における横方向の両端部のうち、2つの液室13a、13bのうちの一方の液室13a側に位置する一端部と、他方の液室13bと、を連通する第1連通路16と、接続路15の両端部のうち、他方の液室13b側に位置する他端部と、一方の液室13aと、を連通する第2連通路17と、が設けられている。
第1連通路16は、図2に示されるように、接続路15の一端部と、他方の液室13bと、を直結し、第2連通路17は、図3に示されるように、接続路15の他端部と、一方の液室13aと、を直結している。
【0036】
そして、可動子19は、図1に示されるように、接続路15における第1連通路16、および第2連通路17の各開口16a、17aを双方ともに閉塞するとともに、図2、および図3に示されるように、横方向に沿う移動に伴い、これらの開口16a、17aを各別に開放可能となるように設けられている。
【0037】
以上説明したように、本実施形態による液封ブッシュ1によれば、リニアモータ18の可動子19が、接続路15に横方向に移動可能に設けられ、接続路15における第1連通路16、および第2連通路17の各開口16a、17aを双方ともに閉塞しているので、小振幅で高周波の振動が入力されたときに、コイル20に制御電流を供給して、可動子19を、接続路15における前記各開口16a、17aを閉塞させたままの状態で、横方向に小振幅で振動させることが可能になる。
これにより、小振幅で高周波の振動が入力されたときに、コイル20に制御電流を供給して、可動子19を、外側部材11および内側部材12の相対変位が規制可能な液圧となるように、横方向に振動させることが可能になり、入力振動が振動受部に伝播するのを抑えることができる。
【0038】
リニアモータ18の可動子19が、横方向に沿う移動に伴い、接続路15における前記各開口16a、17aを各別に開放可能に設けられているので、大振幅で低周波の振動が入力されたときに、図2および図3に示されるように、可動子19が、2つの液室13a、13bのうち、容積が縮小した方の液室から、横方向に沿って離れる向き(以下、バウンド方向といい、その逆向きをリバウンド方向という)に移動し、接続路15における前記各開口16a、17aのうちのいずれか一方が開放され、接続路15の液体が、第1連通路16、若しくは第2連通路17を通して、2つの液室13a、13bのうち、容積が拡大した方の液室に流入する。
【0039】
この際、例えば入力振動の加速度等を検出しておくことで、検出値に基づいて得られた大きさの制御電流をコイル20に供給し、可動子19にリバウンド方向の減衰力を加えつつ、可動子19の横方向に沿う位置を制御して、接続路15における前記各開口16a、17aのうちのいずれか一方の開口面積を調整することが可能になるとともに、可動子19が、リバウンド方向に移動するときに、検出値に基づいて得られた大きさの制御電流をコイル20に供給し、可動子19にバウンド方向の減衰力を加えつつ、可動子19の横方向に沿う位置を制御して、接続路15における前記各開口16a、17aのうちのいずれか他方の開口面積を調整することが可能になり、入力振動を減衰、吸収することができる。
【0040】
以上より、入力振動が振動受部に伝播するのを、幅広い周波数範囲にわたって抑えることができる。
【0041】
大振幅で低周波の振動が入力されたときに、可動子19に加える横方向に沿う減衰力を、コイル20に供給した制御電流だけでなく、可動子19の横方向に沿う位置によって変更可能な、接続路15における前記各開口16a、17aの開口面積の大きさによっても制御することが可能になり、コイル20に供給する制御電流を低く抑えることができる。
前述の可動子19を備えたアクチュエータが、リニアモータ18となっているので、動く部材が外側部材11の外部に突出しない構成を実現することが可能になり、外側部材11の内側の密閉性を容易に確保することができる。
【0042】
可動子19の外周面、および接続路15の内周面のうちの少なくとも一方が、永久磁石19aの外周面の静摩擦係数より静摩擦係数が小さい低摩擦材21で形成されているので、コイル20に供給した電流値が低く、可動子19が、接続路15内で十分に浮遊せず接続路15の内周面に当接していても、可動子19を円滑に駆動することが可能になり、コイル20に供給する制御電流を低く抑えても、可動子19の横方向に沿う位置を精度よく制御することができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態に係る液封ブッシュ2を、図4を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0044】
本実施形態では、接続路15に、可動子19が横方向のうちのいずれか一方の向きに移動したときに弾性変形し、可動子19を横方向のうちのいずれか他方の向きに付勢する弾性部材22が設けられている。
弾性部材22は、可動子19を横方向に挟む両側に1つずつ設けられている。各弾性部材22のばね定数は同じになっている。弾性部材22の両端部のうちの一方側の端部は、可動子19における横方向の端面に形成された窪み部19bに嵌合され、他方側の端部は、接続路15の内面のうち、横方向を向く端面に支持されている。窪み部19bは、可動子19のうち、低摩擦材21の部分に限って形成され、永久磁石19aには形成されていない。弾性部材22は、コイルスプリングとなっている。
【0045】
なお例えば、各弾性部材22のばね定数を互いに異ならせてもよく、弾性部材22は、可動子19を横方向に挟む両側のうちのいずれか一方にだけ設けられてもよく、弾性部材22は、コイルスプリングに限らず適宜変更してもよい。
【0046】
以上説明したように、本実施形態による液封ブッシュ2によれば、接続路15に、可動子19が横方向のうちのいずれか一方の向きに移動したときに、可動子19を横方向のうちのいずれか他方の向きに付勢する弾性部材22が設けられているので、小振幅で高周波の振動が入力されたときに、弾性部材22を弾性変形させることで、可動子19を、外側部材11および内側部材12の相対変位が規制可能な液圧となるように、横方向に小振幅で振動させることが可能になり、コイル20に供給する制御電流を低く抑えることができる。
【0047】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0048】
例えば、前記実施形態では、可動子19の外周面、および接続路15の内周面のうちの少なくとも一方が、前述の低摩擦材21で形成された構成を示したが、可動子19の外周面、および接続路15の内周面のうちの少なくとも一方を、永久磁石19aの外周面の静摩擦係数以上の静摩擦係数の材質で形成してもよい。
【0049】
液封ブッシュ1、2は、トーションビーム式リアサスペンション、車両のエンジンマウント、建設機械に搭載された発電機のマウント、および工場等に設置される機械のマウントなどに適用してもよい。
【0050】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1、2 液封ブッシュ
11 外側部材
12 内側部材
13a、13b 液室
14 弾性体
15 接続路
16 第1連通路
16a 接続路における第1連通路の開口
17 第2連通路
17a 接続路における第2連通路の開口
18 リニアモータ
19 可動子
19a 永久磁石
20 コイル
21 低摩擦材
22 弾性部材
図1
図2
図3
図4