(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】注入監視支援システム及び注入監視支援方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
E02D3/12 101
(21)【出願番号】P 2019104602
(22)【出願日】2019-06-04
【審査請求日】2022-03-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年9月13日にウェブサイト掲載 平成30年9月13日付日刊建設工業新聞,第3面 平成30年9月26日発行のGround-4Dパンフレット 平成30年9月26日~28日開催の地盤技術フォーラムでの展示 平成31年1月25日発行の超多点注入工法カタログ,第6頁
(73)【特許権者】
【識別番号】000230788
【氏名又は名称】日本基礎技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516036113
【氏名又は名称】プロンプト・K株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋本 浩平
(72)【発明者】
【氏名】横井 勉
(72)【発明者】
【氏名】小幡 洋靖
(72)【発明者】
【氏名】橋本 正信
(72)【発明者】
【氏名】天辰 健一
(72)【発明者】
【氏名】上塘 広也
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-257281(JP,A)
【文献】特開2004-245611(JP,A)
【文献】特開2016-117996(JP,A)
【文献】特開平05-239826(JP,A)
【文献】特開2002-256542(JP,A)
【文献】特開2016-166529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良材を注入して行う地盤改良において、前記改良材を注入する複数の注入箇所と、該複数の注入箇所周辺の地盤或いは構造物の変位を計測するための複数の変位計測箇所とに、箇所毎に固有の識別コード及び座標を付与して、前記改良材の注入監視を支援するシステムであって、
受信した各種のデータを保管するサーバと、
クライアントからの要求に応じて、前記クライアントで表示するための表示データを前記クライアントへ送信する表示制御部と、
前記複数の注入箇所の各々における前記改良材の注入圧力、注入速度及び注入量のうちの、少なくとも1つを含む注入データをリアルタイムで取得し、取得した前記注入データにデータ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、各注入箇所に関連付けられる時系列データとして前記サーバへ送信する注入データ取得部と、
前記複数の変位計測箇所の各々における地盤或いは構造物の変位量を含む変位データをリアルタイムで取得し、取得した前記変位データにデータ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、各変位計測箇所に関連付けられる時系列データとして前記サーバへ送信する変位データ取得部と、を含み、
前記表示制御部は、予め設定される前記複数の注入箇所周辺の地形及び/又は構造物形状を示す周辺形状データに基づいて、前記複数の注入箇所周辺の地盤及び/又は構造物の3次元モデルを表示するための表示データと、前記サーバに保管された前記注入データ及び/又は前記変位データに基づいて、前記注入圧力、前記注入速度、前記注入量及び前記変位量のうちの少なくとも1つを、大きさ、色及び形状のうちの少なくとも1つが経時的に変化する3次元イメージにより、前記3次元モデル上の前記座標に対応した位置にリアルタイムで表示するための表示データとを、前記クライアントへ送信
し、
更に前記表示制御部は、前記サーバに保管された前記注入データ及び/又は前記変位データに基づいて、前記注入圧力、前記注入速度、前記注入量及び前記変位量のうちの少なくとも1つを、大きさ、色及び形状のうちの少なくとも1つが経時的に変化する3次元イメージにより、前記3次元モデル上の前記座標に対応した位置に、前記クライアントから要求された過去の時間に遡って表示するための表示データを、前記クライアントへ送信し、
前記サーバがオンラインサーバであり、前記クライアントはネットワークを介して当該注入監視支援システムにアクセスするものであることを特徴とする注入監視支援システム。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記サーバに保管された前記注入データ及び/又は前記変位データに基づいて、前記注入圧力、前記注入速度、前記注入量及び前記変位量のうちの少なくとも1つを、時系列でグラフ表示するための表示データを、前記クライアントへ送信することを特徴とする請求項
1記載の注入監視支援システム。
【請求項3】
前記注入データ取得部は、前記複数の注入箇所の一部でルジオンテストが行われる際に、ルジオンテストの対象の注入箇所に注水される圧力水の、少なくとも注入圧力及び注入速度を含むルジオンテストデータを取得し、取得した前記ルジオンテストデータにデータ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、各注入箇所に関連付けられる時系列データとして前記サーバへ送信し、
前記表示制御部は、前記サーバに保管された前記注入データに基づいて、前記改良材の注入圧力と注入速度との関係をグラフ表示するための表示データを、前記クライアントへ送信すると共に、前記サーバに保管された前記ルジオンテストデータに基づいて、前記圧力水の注入圧力と注入速度との関係をグラフ表示するための表示データを、前記クライアントへ送信することを特徴とする請求項1
又は2記載の注入監視支援システム。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記クライアントへ表示データを送信する際に、表示データの内容に対応した作業状況を示す作業名称が併せて表示されるように、表示データを送信することを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項記載の注入監視支援システム。
【請求項5】
更に、前記複数の注入箇所周辺の地下水の水質を計測するための、箇所毎に固有の識別コード及び座標が付与された複数の水質計測箇所の各々における、地下水のpH値を含む水質データをリアルタイムで取得し、取得した前記水質データにデータ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、各水質計測箇所に関連付けられる時系列データとして前記サーバへ送信する水質データ取得部を含み、
前記表示制御部は、前記サーバに保管された前記水質データに基づいて、前記地下水のpH値を前記3次元イメージで表示するための表示データ、前記地下水のpH値を時系列でグラフ表示するための表示データ、或いは、前記地下水のpH値と前記サーバに保管された他のデータとの関係をグラフ表示するための表示データを、前記クライアントへ送信することを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項記載の注入監視支援システム。
【請求項6】
改良材を注入して行う地盤改良において、前記改良材を注入する複数の注入箇所と、該複数の注入箇所周辺の地盤或いは構造物の変位を計測するための複数の変位計測箇所とに、箇所毎に固有の識別コード及び座標を付与して、前記改良材の注入監視を支援する方法であって、
受信した各種のデータを保管するサーバを用い、
前記複数の注入箇所の各々における前記改良材の注入圧力、注入速度及び注入量のうちの、少なくとも1つを含む注入データをリアルタイムで取得し、取得した前記注入データにデータ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、各注入箇所に関連付けられる時系列データとして前記サーバへ送信し、
前記複数の変位計測箇所の各々における地盤或いは構造物の変位量を含む変位データをリアルタイムで取得し、取得した前記変位データにデータ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、各変位計測箇所に関連付けられる時系列データとして前記サーバへ送信し、
予め設定する前記複数の注入箇所周辺の地形及び/又は構造物形状を示す周辺形状データに基づいて、前記複数の注入箇所周辺の地盤及び/又は構造物の3次元モデルを表示するための表示データと、前記サーバに保管された前記注入データ及び/又は前記変位データに基づいて、前記注入圧力、前記注入速度、前記注入量及び前記変位量のうちの少なくとも1つを、大きさ、色及び形状のうちの少なくとも1つが経時的に変化する3次元イメージにより、前記3次元モデル上の前記座標に対応した位置にリアルタイムで表示するための表示データとを、クライアントからの要求に応じて該クライアントへ送信
し、
前記サーバに保管された前記注入データ及び/又は前記変位データに基づいて、前記注入圧力、前記注入速度、前記注入量及び前記変位量のうちの少なくとも1つを、大きさ、色及び形状のうちの少なくとも1つが経時的に変化する3次元イメージにより、前記3次元モデル上の前記座標に対応した位置に、前記クライアントから要求された過去の時間に遡って表示するための表示データを、前記クライアントからの要求に応じて該クライアントへ送信し、
前記サーバとしてオンラインサーバを用い、前記クライアントからネットワークを介してアクセスを受けることを特徴とする注入監視支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤へ改良材を注入する地盤改良において、改良材の注入監視を支援する注入監視支援システム及び注入監視支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤の補強や止水等のために、地盤へ改良材を注入する地盤改良では、例えば改良材を注入する箇所が多ければ多いほど、管理の負担が大きくなる。そこで、特許文献1には、改良材の製造及び供給を制御したデータ、改良材の注入記録、それらから得られる作業記録や解析資料等を、施工情報データベース管理装置によって一元管理すると共に、施工情報データベース管理装置に通信媒体を介してアクセス可能なソフト等により、施工情報データベース管理装置で管理されている各データをペーパーレスで参照できる構成としたことで、管理負担の軽減を図った方法及び装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した特許文献1に開示された発明は、数値やグラフによって改良材の注入記録等を確認できるものの、それでは施工状況が直観的に把握し難く、分かりづらいものであった。特に、複数の注入箇所に改良材を同時に注入する場合や、注入箇所周辺の地盤の変位等を同時に監視する場合等は、施工状況だけでなく、複数の注入箇所及び変位監視箇所の位置関係を把握することが困難であった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、改良材を注入して行う地盤改良の施工状況の把握を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)改良材を注入して行う地盤改良において、前記改良材を注入する複数の注入箇所と、該複数の注入箇所周辺の地盤或いは構造物の変位を計測するための複数の変位計測箇所とに、箇所毎に固有の識別コード及び座標を付与して、前記改良材の注入監視を支援するシステムであって、受信した各種のデータを保管するサーバと、クライアントからの要求に応じて、前記クライアントで表示するための表示データを前記クライアントへ送信する表示制御部と、前記複数の注入箇所の各々における前記改良材の注入圧力、注入速度及び注入量のうちの、少なくとも1つを含む注入データをリアルタイムで取得し、取得した前記注入データにデータ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、各注入箇所に関連付けられる時系列データとして前記サーバへ送信する注入データ取得部と、前記複数の変位計測箇所の各々における地盤或いは構造物の変位量を含む変位データをリアルタイムで取得し、取得した前記変位データにデータ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、各変位計測箇所に関連付けられる時系列データとして前記サーバへ送信する変位データ取得部と、を含み、前記表示制御部は、予め設定される前記複数の注入箇所周辺の地形及び/又は構造物形状を示す周辺形状データに基づいて、前記複数の注入箇所周辺の地盤及び/又は構造物の3次元モデルを表示するための表示データと、前記サーバに保管された前記注入データ及び/又は前記変位データに基づいて、前記注入圧力、前記注入速度、前記注入量及び前記変位量のうちの少なくとも1つを、大きさ、色及び形状のうちの少なくとも1つが経時的に変化する3次元イメージにより、前記3次元モデル上の前記座標に対応した位置にリアルタイムで表示するための表示データとを、前記クライアントへ送信する注入監視支援システム。
【0007】
本項に記載の注入監視支援システムは、施工箇所周辺の地盤や構造物の変位を計測しながら、改良材を地盤の複数箇所に注入する地盤改良に用いられるものであり、改良材を注入する複数の注入箇所と、地盤或いは構造物の変位を計測するための複数の変位計測箇所とに、箇所毎に固有の識別コード及び座標を付与して、後述するようにこれらの箇所に係るデータの取り扱いを行う。具体的な構成として、注入監視支援システムは、サーバ、表示制御部、注入データ取得部及び変位データ取得部を含んでおり、サーバは、注入データ取得部や変位データ取得部等から受信する、各種のデータを保管するものである。この際、サーバは、受信したデータが複数の注入箇所や複数の変位計測箇所に関連するデータの場合に、それらと関連付けてデータを保管する。
【0008】
表示制御部は、工事の発注者、管理者、現場作業者等の様々な関係者が所有する、コンピュータや携帯端末といったクライアントからの、注入監視支援システムへの要求に応じて、クライアントで表示するための様々な表示データをクライアントへ送信する。注入データ取得部は、複数の注入箇所の各々における改良材の注入圧力、注入速度及び注入量のうちの、少なくとも1つを含む注入データを、注入量の制御等を行っている別システムからリアルタイムで取得する。そして、取得した注入データに対し、注入圧力や注入速度等のデータ種別毎、かつ、取得した(リアルタイム取得のため「注入された」と同義)時間毎に固有の識別コードを付与して、時系列データとしてサーバへ送信する。サーバは、注入データ取得部から受信した注入データを、その注入データが得られた注入箇所に関連付けて、時系列データとして保管する。
【0009】
変位データ取得部は、複数の変位計測箇所の各々における地盤或いは構造物の変位量を含む変位データを、そのような変位量を監視している別システムからリアルタイムで取得する。そして、取得した変位データに対し、変位量等のデータ種別毎、かつ、取得した(リアルタイム取得のため「計測された」と同義)時間毎に固有の識別コードを付与して、時系列データとしてサーバへ送信する。サーバは、変位データ取得部から受信した変位データを、その変位データが計測された変位計測箇所に関連付けて、時系列データとして保管する。なお、ここでの変位量には、変位方向の成分も含まれるものとする。又、表示制御部は、要求があったクライアントへ送信する表示データとして、注入監視支援システムに予め設定される、複数の注入箇所周辺の地形及び/又は構造物形状を示す周辺形状データに基づいて、複数の注入箇所周辺の地盤及び/又は構造物の3次元モデルを表示するための表示データを送信する。
【0010】
更に、表示制御部は、クライアントからの要求を受けて、サーバに保管されている注入データ及び/又は変位データに基づいて、改良材の注入圧力、注入速度、注入量、及び、地盤や構造物の変位量のうちの少なくとも1つを、3次元イメージによって、上述した3次元モデル上に表示するための表示データを送信する。この際、3次元イメージの基本形状は、各データの種別に応じて、想定される改良体の形状、球体、矢印等が使用され、3次元イメージの表示位置は、各データが関連付けられている注入箇所或いは変位計測箇所に付与されている座標の、3次元モデル上で対応する位置である。又、3次元イメージによって示される各データは、時系列データとしてサーバに保管されているものであるため、各データの経時的な変化を、3次元イメージの大きさ、色及び形状のうちの少なくとも1つを経時的に変化させることで表現する。更に、このような3次元イメージを、各データがサーバへ送信されて保管されるのと略同じタイミング、すなわちリアルタイムで表示させる。又、改良材の注入圧力、注入速度、注入量を3次元イメージで表示させる注入箇所と、地盤や構造物の変位量を3次元イメージで表示させる変位計測箇所とは、クライアントからの要求に応じて、任意の複数箇所又は単数箇所が指定されるものである。
【0011】
上記のような構成により、本項に記載の注入監視支援システムは、改良材の注入量や地盤の変位量等の各データが、大きさや色等が変化する3次元イメージによってリアルタイムに表現されるため、施工状況が直観的にリアルタイムに把握されるものとなる。又、3次元モデル上の各座標に対応する位置に、注入箇所や変位計測箇所に紐付けられた各データの3次元イメージが表示されるため、複数の注入箇所及び複数の変位計測箇所の位置関係が容易に把握されるものとなる。更に、複数の注入箇所や複数の変位計測箇所に関連付けられた複数のデータが、3次元モデル上に3次元イメージにより同時に表示され、それらの大きさ等が同時に変化しても、それらと同じデータが数値やグラフで表示された場合と比較して、複数のデータの変化が遥かに容易に把握されるものとなる。しかも、注入監視支援システムにアクセス可能なクライアントを所有する様々な関係者の間で、リアルタイムにデータが共有され、施工現場へ行かなくても施工状況が把握されるものである。又、各データがサーバに保管されているため、これらのデータが繰り返し利用されて様々な方法で表示されたり、種々の解析に利用されたりするものとなる。
【0012】
(2)上記(1)項において、前記表示制御部は、前記サーバに保管された前記注入データ及び/又は前記変位データに基づいて、前記注入圧力、前記注入速度、前記注入量及び前記変位量のうちの少なくとも1つを、大きさ、色及び形状のうちの少なくとも1つが経時的に変化する3次元イメージにより、前記3次元モデル上の前記座標に対応した位置に、前記クライアントから要求された過去の時間に遡って表示するための表示データを、前記クライアントへ送信し、前記サーバがオンラインサーバであり、前記クライアントはネットワークを介して当該注入監視支援システムにアクセスするものである注入監視支援システム(請求項1)。
本項に記載の注入監視支援システムは、上記(1)項に記載したように3次元モデル上に表示させる3次元イメージを、リアルタイムにだけでなく、クライアントから要求された過去の時間に遡って表示させるものである。このとき、クライアントから要求された過去の時間における3次元イメージを、各時間について断続的に表示してもよく、指定された時間にわたって連続的に表示してもよく、アニメーションのように動画表示してもよい。これにより、過去の施工状況や過去から現在までの施工状況が、容易に把握されるものとなる。更に、本項に記載の注入監視支援システムは、サーバがオンラインサーバであり、クライアントはネットワークを介して注入監視支援システムにアクセスするようになっているものである。
【0013】
(3)上記(1)(2)項において、前記表示制御部は、前記サーバに保管された前記注入データ及び/又は前記変位データに基づいて、前記注入圧力、前記注入速度、前記注入量及び前記変位量のうちの少なくとも1つを、時系列でグラフ表示するための表示データを、前記クライアントへ送信する注入監視支援システム(請求項2)。
本項に記載の注入監視支援システムは、時系列データとしてサーバに保管されている注入データ及び/又は変位データに基づいて、改良材の注入圧力、注入速度、注入量、及び、地盤又は構造物の変位量のうちの少なくとも1つを、時系列でグラフ表示するための表示データを、要求元のクライアントに対して表示制御部が送信するものである。
【0014】
このとき、改良材の注入圧力、注入速度又は注入量に係るグラフを表示させる場合は、複数の注入箇所から任意の注入箇所が指定され、地盤や構造物の変位量に係るグラフを表示させる場合は、複数の変位計測箇所から任意の変位計測箇所が指定される。更に、各グラフで表示する時間の範囲も、過去に遡った任意の範囲が指定される。これにより、クライアント側が所望する任意の時間範囲にわたる任意の注入箇所又は変位計測箇所の、注入に係るデータや変位に係るデータの経時的な変化が確認されるため、局所的な状況の把握や解析が容易に行われるものとなる。なお、クライアントに表示させるグラフの種類は、例えば折れ線グラフ(チャート表示)等の、各データの経時的な変化が示される任意のグラフであってよい。
【0015】
(4)上記(1)から(3)項において、前記注入データ取得部は、前記複数の注入箇所の一部でルジオンテストが行われる際に、ルジオンテストの対象の注入箇所に注水される圧力水の、少なくとも注入圧力及び注入速度を含むルジオンテストデータを取得し、取得した前記ルジオンテストデータにデータ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、各注入箇所に関連付けられる時系列データとして前記サーバへ送信し、前記表示制御部は、前記サーバに保管された前記注入データに基づいて、前記改良材の注入圧力と注入速度との関係をグラフ表示するための表示データを、前記クライアントへ送信すると共に、前記サーバに保管された前記ルジオンテストデータに基づいて、前記圧力水の注入圧力と注入速度との関係をグラフ表示するための表示データを、前記クライアントへ送信する注入監視支援システム(請求項3)。
【0016】
本項に記載の注入監視支援システムは、注入データ取得部が、改良材の注入データに加えて、ルジオンテストが行われる場合のルジオンテストデータを取得するものである。すなわち、注入データ取得部は、改良材が注入される予定の複数の注入箇所の一部でルジオンテストが行われる際に、ルジオンテストの対象の注入箇所に注水される圧力水の、少なくとも注入圧力及び注入速度を含むルジオンテストデータを、ルジオンテストを行うための別システムから取得する。そして、取得したルジオンテストデータに対し、注入圧力や注入速度等のデータ種別毎、かつ、取得した時間毎に固有の識別コードを付与して、時系列データとしてサーバへ送信する。サーバは、注入データ取得部から受信したルジオンテストデータを、そのルジオンテストデータが得られた注入箇所に関連付けて、時系列データとして保管する。
【0017】
一方、表示制御部は、時系列データとしてサーバに保管されている注入データに基づいて、改良材の注入圧力と注入速度との関係(P-Q曲線)をグラフ表示するための表示データを、要求元のクライアントに対して送信する。このとき、表示対象となる改良材の注入箇所は、複数の注入箇所から任意の注入箇所が指定され、更に、表示対象となる時間の範囲や複数のプロット対象時間も、過去を含む任意の範囲や任意の時間が指定される。加えて、表示制御部は、サーバに保管されているルジオンテストデータに基づいて、圧力水の注入圧力と注入速度との関係(P-Q曲線)をグラフ表示するための表示データを、要求元のクライアントに対して送信する。このとき、表示対象となる圧力水の注入箇所は、ルジオンテストの対象の注入箇所から任意の注入箇所が指定され、更に、表示対象となる時間の範囲や複数のプロット対象時間も、過去を含む任意の範囲や任意の時間が指定される。
【0018】
従って、本項に記載の注入監視支援システムは、ルジオンテストの際には、そのテスト結果からルジオン値や限界圧力等を把握するための、圧力水の注入圧力と注入速度との関係を示すグラフを表示させるものであり、その後に行われる改良材の注入の際には、ルジオンテストから得られたルジオン値や限界圧力等が考慮された注入が行われていることを確認するための、改良材の注入圧力と注入速度との関係を示すグラフを表示するものである。これにより、ルジオンテストの結果から必要な情報が容易に抽出されると共に、その結果が加味されて効率よく改良材の注入が行われることとなる。
【0019】
(5)上記(1)から(4)項において、前記表示制御部は、前記クライアントへ表示データを送信する際に、表示データの内容に対応した作業状況を示す作業名称が併せて表示されるように、表示データを送信する注入監視支援システム(請求項4)。
本項に記載の注入監視支援システムは、表示制御部が各種の表示データをクライアントへ送信する際に、表示データの内容に対応した作業状況を示す作業名称が併せて表示されるように、表示データを送信するものである。そのような作業名称としては、例えば、注入監視支援システムがダムグラウチングに用いられていたとすると、「水押」「透水」「注入」「中断」「完了」等が挙げられる。
【0020】
又、作業名称を表示させる実現方法として、例えば、注入データや変位データ等がサーバに保管される際に行われていた作業を示す情報が、それらのデータと紐付けられて同時に保管或いは設定されるものとする。そして、表示制御部は、サーバに保管された注入データや変位データ等から表示データを作成する際に、それらの注入データや変位データ等に紐付けられている作業を示す情報に基づいて、作業状況を示す作業名称が併せて表示されるような表示データを作成して送信すればよい。これにより、3次元イメージやグラフ等で表示されているデータが、何れの作業状況のときのものか一目で分かるため、施工状況の把握がより一層容易になるものである。
【0021】
(6)上記(1)から(5)項において、更に、前記複数の注入箇所周辺の地下水の水質を計測するための、箇所毎に固有の識別コード及び座標が付与された複数の水質計測箇所の各々における、地下水のpH値を含む水質データをリアルタイムで取得し、取得した前記水質データにデータ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、各水質計測箇所に関連付けられる時系列データとして前記サーバへ送信する水質データ取得部を含み、前記表示制御部は、前記サーバに保管された前記水質データに基づいて、前記地下水のpH値を前記3次元イメージで表示するための表示データ、前記地下水のpH値を時系列でグラフ表示するための表示データ、或いは、前記地下水のpH値と前記サーバに保管された他のデータとの関係をグラフ表示するための表示データを、前記クライアントへ送信する注入監視支援システム(請求項5)。
【0022】
本項に記載の注入監視支援システムは、施工箇所周辺の地下水の水質を計測するための、観測井戸等を利用して設けられる複数の水質計測箇所に、箇所毎に固有の識別コード及び座標を付与して、これらの箇所に係るデータの取り扱いを行う。そのための構成として、水質データ取得部を含んでおり、この水質データ取得部は、複数の水質計測箇所の各々における地下水のpH値を含む水質データを、そのような水質を監視している別システムからリアルタイムで取得する。そして、取得した地下水の水質データに対し、pH値等のデータ種別毎、かつ、取得した(リアルタイム取得のため「計測された」と同義)時間毎に固有の識別コードを付与して、時系列データとしてサーバへ送信する。サーバは、水質データ取得部から受信した水質データを、その水質データが計測された水質計測箇所に関連付けて、時系列データとして保管する。
【0023】
一方、表示制御部は、クライアントからの要求を受けて、サーバに保管されている水質データに基づいて、地下水のpH値を、上記(1)項に記載したような3次元イメージやグラフによって表示するための表示データを送信する。すなわち、pH値が3次元イメージで表示される場合は、例えば基本形状が井戸をイメージした円柱等で、pH値の経時的な変化に合わせて色等が変化するように、各pH値が計測された水質計測箇所に付与されている座標の、3次元モデル上で対応する位置に表示される。このようなpH値の3次元イメージが、クライアントからの要求に応じて、リアルタイムや過去の時間に遡って表示される。又、pH値がグラフで表示される場合は、時系列のグラフ表示であったり、改良材の注入量といった他のデータとの関係を示すグラフ表示であったりしてよい。これにより、施工箇所周辺の地下水のpH値が容易に把握され、特に薬液注入を行う場合に必須となる、pH値が特定の閾値を超えないような監視が効率よく行われることになる。
【0024】
(7)改良材を注入して行う地盤改良において、前記改良材を注入する複数の注入箇所と、該複数の注入箇所周辺の地盤或いは構造物の変位を計測するための複数の変位計測箇所とに、箇所毎に固有の識別コード及び座標を付与して、前記改良材の注入監視を支援する方法であって、受信した各種のデータを保管するサーバを用い、前記複数の注入箇所の各々における前記改良材の注入圧力、注入速度及び注入量のうちの、少なくとも1つを含む注入データをリアルタイムで取得し、取得した前記注入データにデータ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、各注入箇所に関連付けられる時系列データとして前記サーバへ送信し、前記複数の変位計測箇所の各々における地盤或いは構造物の変位量を含む変位データをリアルタイムで取得し、取得した前記変位データにデータ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、各変位計測箇所に関連付けられる時系列データとして前記サーバへ送信し、予め設定する前記複数の注入箇所周辺の地形及び/又は構造物形状を示す周辺形状データに基づいて、前記複数の注入箇所周辺の地盤及び/又は構造物の3次元モデルを表示するための表示データと、前記サーバに保管された前記注入データ及び/又は前記変位データに基づいて、前記注入圧力、前記注入速度、前記注入量及び前記変位量のうちの少なくとも1つを、大きさ、色及び形状のうちの少なくとも1つが経時的に変化する3次元イメージにより、前記3次元モデル上の前記座標に対応した位置にリアルタイムで表示するための表示データとを、クライアントからの要求に応じて該クライアントへ送信する注入監視支援方法。
【0025】
(8)上記(7)項において、前記サーバに保管された前記注入データ及び/又は前記変位データに基づいて、前記注入圧力、前記注入速度、前記注入量及び前記変位量のうちの少なくとも1つを、大きさ、色及び形状のうちの少なくとも1つが経時的に変化する3次元イメージにより、前記3次元モデル上の前記座標に対応した位置に、前記クライアントから要求された過去の時間に遡って表示するための表示データを、前記クライアントからの要求に応じて該クライアントへ送信し、前記サーバとしてオンラインサーバを用い、前記クライアントからネットワークを介してアクセスを受ける注入監視支援方法(請求項6)。
そして、(7)(8)項に記載の注入監視支援方法は、各々、上記(1)(2)項の注入監視支援システムを用いて実行されることで、上記(1)(2)項の注入監視支援システムに対応する同等の作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明は上記のような構成であるため、改良材を注入して行う地盤改良の施工状況の把握を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態に係る注入監視支援システムの構成の一例を、地盤改良の注入制御システム及び変位監視システムと共に示すブロック図である。
【
図2】多点注入工法に用いられた本発明の実施の形態に係る注入監視支援システムにより表示させる、施工箇所周辺の3次元モデルと監視対象データの3次元イメージとの表示例を示すイメージ図である。
【
図3】
図2と異なる時間及び角度で示した、
図2と共通の3次元モデル及び3次元イメージの表示例である。
【
図4】多点注入工法に用いられた本発明の実施の形態に係る注入監視支援システムにより表示させる、時系列データのグラフの一例である。
【
図5】多点注入工法に用いられた本発明の実施の形態に係る注入監視支援システムにより表示させる、ルジオンテストデータのグラフの一例である。
【
図6】ダムグラウチングに用いられた本発明の実施の形態に係る注入監視支援システムにより表示させる、施工箇所周辺の3次元モデルと監視対象データの3次元イメージとの表示例である。
【
図7】
図6と異なる角度で示した、
図6と共通の3次元モデル及び3次元イメージの表示例である。
【
図8】ダムグラウチングに用いられた本発明の実施の形態に係る注入監視支援システムにより表示させる、改良材の注入圧力と注入速度との関係を示すグラフ及びそれら注入圧力と注入速度との時系列グラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1は、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10の構成の一例を、この注入監視支援システム10が適用される地盤改良において改良材の注入を制御する注入制御システム48と、施工箇所周辺の地盤や構造物の変位を監視する変位監視システム60と共に示している。なお、
図1では、各構成要素間の物理的な接続を実線で示し、各構成要素間の通信可能な接続を破線で示している。
【0029】
まず、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10と共に使用される、注入制御システム48及び変位監視システム60について簡単に説明する。注入制御システム48は、地盤の補強や止水等のために、地盤の複数の注入箇所56に改良材を注入する地盤改良において、複数の注入箇所56の各々における改良材の注入量等を制御するものであり、供給ユニット50、ポンプユニット52、センサユニット54、及び、制御ユニット58を含んでいる。供給ユニット50は、複数の注入箇所56の各々に適した改良材を配合して、接続先のポンプユニット52へ供給するものであり、ポンプユニット52は、供給ユニット50から供給された改良材を、制御ユニット58からの制御による注入圧力や注入速度によって、複数の注入箇所56の各々に注入するものである。
【0030】
センサユニット54は、ポンプユニット52から複数の注入箇所56へ注入される改良材の、注入圧力、注入速度、注入量等を、複数の注入箇所56の各々について計測するためのセンサを備えたものである。制御ユニット58は、センサユニット54による計測結果や、後述する変位監視システム60の変位計測部62による計測結果に基づいて、ポンプユニット52を制御することで、設計値通りの施工が行われるように、複数の注入箇所56の各々への改良材の注入圧力、注入速度、注入量等を制御するものである。制御ユニット58は、供給ユニット50、ポンプユニット52、及び、センサユニット54と通信可能に接続されており、ポンプユニット52の制御の他、供給ユニット50の監視及び制御、センサユニット54の制御及び計測結果の取得等を行っている。なお、複数の注入箇所56には、平面方向や深さ方向に互いに異なる任意の箇所が設定される。
【0031】
更に、本実施例における注入制御システム48は、施工箇所周辺に予め設定される複数の水質計測箇所74の各々における、地下水の水質を計測するための水質計測部72を含んでいる。水質計測部72によって計測される水質には、各水質計測箇所74での地下水のpH値が含まれている。水質計測部72は、制御ユニット58と通信可能に接続されており、制御ユニット58に対して計測結果を送信する。なお、複数の水質計測箇所74は、例えば、施工箇所周辺の地下水脈の上流及び下流に位置するような観測井戸が設けられ、それらの観測井戸の各々において深さ方向に位置が異なる複数箇所に設定される。
【0032】
変位監視システム60は、地盤に対する改良材の注入の影響による、複数の注入箇所56周辺の地盤や構造物の変位を監視するためのものであり、予め設定される複数の変位計測箇所64の各々における変位量を計測する変位計測部62を含んでいる。変位計測部62によって計測される変位量には、各変位計測箇所64での変位方向とその方向への変位値が含まれている。変位計測部62は、注入制御システム48の制御ユニット58と通信可能に接続されており、制御ユニット58に対して計測結果を送信する。なお、複数の変位計測箇所64には、地盤改良の影響による地盤や周辺構造物の変位を効率的に計測するための、任意の計測箇所が設定される。
【0033】
一方、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10は、
図1に示すように、サーバ12、表示制御部14、注入データ取得部18、変位データ取得部22、及び、水質データ取得部24を含んでいる。注入監視支援システム10では、上述した複数の注入箇所56、複数の変位計測箇所64、及び複数の水質計測箇所74に対して、箇所毎に固有の識別コード及び座標が予め付与されており、サーバ12や表示制御部14等では、それらの識別コードや座標を利用して、注入箇所56、変位計測箇所64及び水質計測箇所74に関連するデータを取り扱っている。具体的に、サーバ12は、注入データ取得部18や変位データ取得部22等を介して受信した各種のデータを保管するものであり、例えば受信したデータが特定の注入箇所56に関連するデータであった場合に、その特定の注入箇所56に付与されている識別コード及び座標に紐付けて、受信したデータを保管する。又、サーバ12は、他の構成部位から受信したデータのみではなく、上述した箇所毎に固有の識別コード及び座標を含み、予め入力された様々なデータを保管している。サーバ12は、本実施形態ではクラウドサーバで構成されているが、他のオンラインサーバで構成されていてもよい。
【0034】
注入データ取得部18は、複数の注入箇所56の各々における改良材の注入圧力、注入速度及び注入量のうちの、少なくとも1つを含む注入データを、注入制御システム48の制御ユニット58からリアルタイムで取得する。上述したように、そのような注入データに含まれる各データは、センサユニット54によって計測され、制御ユニット58へ送信されている。そして、注入データ取得部18は、制御ユニット58から取得した注入データに対し、データ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、時系列データとしてサーバ12へ送信する。ここで、データ種別とは、改良材の注入圧力、注入速度及び注入量等の種別であり、時間とは、制御ユニット58から注入データを取得した時間、換言すれば、取得した注入データがセンサユニット54によって計測された時間、或いは、注入箇所56で改良材が注入された時間である。更に、注入データ取得部18は、取得した注入データを送信する際に、送信対象の注入データが計測された注入箇所56に関連付けて注入データを送信する。このとき、各注入箇所56に付与されている識別コードや座標に紐付けて、注入データを送信してもよい。
【0035】
又、注入データ取得部18は、地盤改良が行なわれるのにあたり、複数の注入箇所56の一部でルジオンテストが行われる場合に、そのルジオンテストの結果データを取得する。本実施例において、ルジオンテストは注入制御システム48によって行われ、ポンプユニット52を介してルジオンテストの対象の注入箇所56に供給される圧力水の、注入圧力や注入速度等がセンサユニット54によって計測される。そして、計測された圧力水のデータは制御ユニット58に送信され、少なくとも注入圧力及び注入速度を含むルジオンテストデータとして、注入データ取得部18により取得される。注入データ取得部18は、制御ユニット58から取得したルジオンテストデータに対し、データ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、時系列データとしてサーバ12へ送信する。ここで、データ種別とは、圧力水の注入圧力や注入速度等の種別であり、時間とは、制御ユニット58からルジオンテストデータを取得した時間、換言すれば、取得したルジオンテストデータがセンサユニット54によって計測された時間、或いは、注入箇所56で圧力水が注水された時間である。更に、注入データ取得部18は、取得したルジオンテストデータを送信する際に、送信対象のルジオンテストデータが計測された注入箇所56に関連付けてルジオンテストデータを送信し、このとき、各注入箇所56に付与されている識別コードや座標に紐付けて送信してもよい。
【0036】
変位データ取得部22は、複数の変位計測箇所64の各々における地盤或いは構造物の変位量を含む変位データを、注入制御システム48の制御ユニット58からリアルタイムで取得する。上述したように、そのような変位データに含まれる変位量等は、変位監視システム60の変位計測部62によって計測され、制御ユニット58へ送信されている。そして、変位データ取得部22は、制御ユニット58から取得した変位データに対し、データ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、時系列データとしてサーバ12へ送信する。ここで、データ種別とは、地盤や構造物の変位量(変位方向を含む)等の種別であり、時間とは、制御ユニット58から変位データを取得した時間、換言すれば、取得した変位データが変位計測部62によって計測された時間である。更に、変位データ取得部22は、取得した変位データを送信する際に、送信対象の変位データが計測された変位計測箇所64に関連付けて変位データを送信する。このとき、各変位計測箇所64に付与されている識別コードや座標に紐付けて、変位データを送信してもよい。
【0037】
水質データ取得部24は、複数の水質計測箇所74の各々における地下水のpH値を含む水質データを、注入制御システム48の制御ユニット58からリアルタイムで取得する。上述したように、そのような水質データに含まれるpH値等は、水質計測部72によって計測され、制御ユニット58へ送信されている。そして、水質データ取得部24は、制御ユニット58から取得した水質データに対し、データ種別毎かつ時間毎に固有の識別コードを付与して、時系列データとしてサーバ12へ送信する。ここで、データ種別とは、pH値等の種別であり、時間とは、制御ユニット58から水質データを取得した時間、換言すれば、取得した水質データが水質計測部72によって計測された時間である。更に、水質データ取得部24は、取得した水質データを送信する際に、送信対象の水質データが計測された水質計測箇所74に関連付けて水質データを送信する。このとき、各水質計測箇所74に付与されている識別コードや座標に紐付けて、水質データを送信してもよい。
【0038】
表示制御部14は、クライアント46の各々からの要求を受けて、主にサーバ12に保管されているデータを利用して、クライアント46の各々で表示するための表示データを各クライアント46へ送信するものである。表示データに用いられるデータの特定は、注入データ、変位データ、ルジオンテストデータ、水質データ、注入箇所56、変位計測箇所64、及び、水質計測箇所74に対して付与されている、識別コードを利用して行われる。詳しくは後述するが、そのような表示データには、複数の注入箇所56周辺の地盤や構造物の3次元モデルを表示するもの、複数の注入箇所56における改良材の注入圧力、注入速度、注入量等を3次元イメージで表示するもの、複数の変位計測箇所64における地盤や構造物の変位量を3次元イメージで表示するもの、複数の水質計測箇所74における地下水のpH値を3次元イメージで表示するもの、改良材の注入圧力、注入速度、注入量、地盤や構造物の変位量、地下水のpH値等を時系列でグラフ表示するもの、改良材の注入圧力と注入速度との関係をグラフ表示するもの、ルジオンテスト時の圧力水の注入圧力と注入速度との関係をグラフ表示するもの等が含まれる。ここで、クライアント46は、地盤改良工事の発注者、管理者、現場作業者といった、工事の様々な関係者が所有するコンピュータや携帯端末等であり、ネットワークを介して注入監視支援システム10にアクセスする権限が付与されたものである。
【0039】
なお、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10は、
図1に示した構成に限定されるものではなく、
図1に示した複数の構成部位の一部が削除又は置換されたものであってもよく、新たな構成部位が追加されたものであってもよい。更に、
図1の各構成部位は、注入監視支援システム10の構成を機能的に分けて示したものであり、注入監視支援システム10を構成する各機器をそのまま示すものではなく、様々なハードウェア、ソフトウェア、或いはそれらの組み合わせで構成される。例えば、注入データ取得部18及び変位データ取得部22は、作業現場の近傍に設置されてサーバ12とネットワーク通信を行うものであってもよく、サーバ12の近傍に設置されて制御ユニット58とネットワーク通信を行うものであってもよく、或いは、それらの双方を併せもった構成であってもよい。又、
図1に破線で示された各構成部位間の通信可能な接続は、各部位を構成している機器やその設置位置の関係に応じた任意の接続方法で実現してよく、その接続方法には無線及び有線の接続も含まれる。
【0040】
次に、
図2~
図5には、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10を多点注入工法に用いた場合に、表示制御部14によって各クライアント46に表示させる表示例を示しており、
図6~
図8には、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10をダムグラウチングに用いた場合に、表示制御部14によって各クライアント46に表示させる表示例を示している。すなわち、
図2~
図8に示されるような表示を、要求元のクライアント46において表示させるための表示データが、表示制御部14からクライアント46へ送信されるものである。なお、
図2~
図8の表示例は白黒の2色を用いて図示されているが、注入監視支援システム10によって表示させる各データは、複数色を用いたカラーで表示させることが好ましい。又、各表示例の説明において用いられる、注入監視支援システム10、注入制御システム48、及び、変位監視システム60の構成については、適宜、
図1を参照のこと。
【0041】
まず、
図2は、多点注入工法の施工箇所周辺の3次元モデル30と、この3次元モデル30上に表示する監視対象データの3次元イメージ34との表示例を、簡略的に示したイメージ図である。3次元モデル30は、注入監視支援システム10に予め設定される複数の注入箇所56周辺の地形及び/又は構造物形状を示す周辺形状データに基づいて、複数の注入箇所56周辺の地盤及び/又は構造物を立体的に可視化したものである。具体的に、
図2に示された3次元モデル30は、地盤内から斜め上方を見上げる角度で表示されており、図中上方には構造物が表示され、図中下方には地盤が表示されている。又、3次元モデル30は、クライアント46側からの操作を受けて、表示の拡大/縮小、表示の回転、表示/非表示の切り替え、透過率の増減等が行えるようになっている。
【0042】
3次元モデル30の地盤内には、改良材の注入量を示す3次元イメージ34Aが複数表示されており、本実施例における注入量の3次元イメージ34Aの各々は、基本形状が球体で示され、経時的な注入量の変化が、球体の大きさ及び色の変化で表されている。すなわち、注入量の3次元イメージ34Aの各々は、複数の注入箇所56の各々に関連付けられて、時系列データとしてサーバ12に保管されている注入データのうちの、改良材の注入量を、注入箇所56毎に表示したものである。3次元モデル30上での3次元イメージ34Aの位置は、各3次元イメージ34Aに関連付けられている注入箇所56の各々に付与された座標の、3次元モデル30上で対応する位置である。
図2で確認できるように、複数の3次元イメージ34Aは、3次元モデル30上の地盤内の、平面方向や深さ方向に間隔を空けた位置に表示されており、それらの表示位置の各々が、複数の注入箇所56の何れかに対応するようになっている。更に、
図2の表示例では、多点注入工法においてパイプ束が挿入される箇所が、直線イメージ36として表示されており、基本的に、注入量の複数の3次元イメージ34Aの全てが、何れかの直線イメージ36上に位置することになる。
【0043】
一方、3次元モデル30における地盤と構造物との間の近傍には、地盤や構造物の変位量を示す3次元イメージ34Bが複数表示されており、本実施例における変位量の3次元イメージ34Bの各々は、基本形状が矢印で示され、経時的な変位量の変化が、矢印の長さの変化で表されている。又、本実施例における変位量の3次元イメージ34Bは、鉛直方向についての変位量を表示するものであり、鉛直方向上側に変位している場合は上向きの矢印が、鉛直方向下側に変位している場合は下向きの矢印が、互いに異なる色で表示されるようになっている。すなわち、変位量の3次元イメージ34Bの各々は、複数の変位計測箇所64の各々に関連付けられて、時系列データとしてサーバ12に保管されている変位データのうちの、地盤や構造物の変位量を、変位計測箇所64毎に表示したものである。3次元モデル30上での3次元イメージ34Bの位置は、各3次元イメージ34Bに関連付けられている変位計測箇所64の各々に付与された座標の、3次元モデル30上で対応する位置である。このため、
図2に示されている複数の3次元イメージ34Bの各々は、複数の変位計測箇所64の何れかに対応するようになっている。
【0044】
他方、3次元モデル30の地盤内における図中左右両側には、地下水のpH値を示す3次元イメージ34Cが表示されており、本実施例におけるpH値の3次元イメージ34Cの各々は、基本形状が円柱で示され、経時的なpH値の変化が色の変化で表されている。すなわち、pH値の3次元イメージ34Cの各々は、複数の水質計測箇所74の各々に関連付けられて、時系列データとしてサーバ12に保管されている水質データのうちの、地下水のpH値を、水質計測箇所74毎に表示したものである。3次元モデル30上での3次元イメージ34Cの位置は、各3次元イメージ34Cに関連付けられている水質計測箇所74の各々に付与された座標の、3次元モデル30上で対応する位置である。このため、
図2に示されている複数の3次元イメージ34Cの各々は、複数の水質計測箇所74の何れかに対応するようになっており、縦方向に連続して表示されている4つの3次元イメージ34Cが、共通の観測井戸で深さ方向に異なる位置に対応することを示している。
【0045】
ここで、3次元モデル30上に表示される改良材の注入量の3次元イメージ34Aは、複数の注入箇所56に対応した位置に表示される複数の3次元イメージ34Aのうち、クライアント46から指定された特定の注入箇所56に対応した位置に表示される、3次元イメージ34Aのみを表示するようにしてもよい。例えば、クライアント46からの指定を受けて、今現在、改良材が注入されている最中の注入箇所56に対応した位置に表示される、3次元イメージ34Aのみを表示するようにしてもよい。更に、クライアント46から指定された特定の注入箇所56に対応した位置に表示される3次元イメージ34Aに対して、フォーカスするように表示してもよい。同様に、3次元モデル30上に表示される地盤や構造物の変位量の3次元イメージ34Bについても、複数の変位計測箇所64に対応した位置に表示される複数の3次元イメージ34Bのうち、クライアント46から指定された特定の変位計測箇所64に対応した位置に表示される、3次元イメージ34Bのみを表示するようにしてもよい。この点は、地下水のpH値の3次元イメージ34Cについても同様である。
【0046】
又、注入量の複数の3次元イメージ34A、変位量の複数の3次元イメージ34B及びpH値の複数の3次元イメージ34Cは、サーバ12に保管されている注入データ、変位データ及び水質データのうち、クライアント46から指定された時間(日時)に対応する注入データ、変位データ及び水質データが参照されて、表示されるようになっている。例えば、クライアント46からリアルタイムでの表示が指定された場合は、現在の改良材の注入量が3次元イメージ34Aとして表示されると共に、現在の地盤や構造物の変位量が3次元イメージ34Bとして表示され、更に現在の地下水のpH値が3次元イメージ34Cとして表示される。又、クライアント46から過去の特定の時間が指定された場合は、その特定の時間における改良材の注入量が3次元イメージ34Aとして表示されると共に、その特定の時間における地盤や構造物の変位量が3次元イメージ34Bとして表示され、更にその特定の時間における地下水のpH値が3次元イメージ34Cとして表示される。クライアント46から指定される表示時間は、例えば、クライアント46に表示されるタイムスライダーのつまみが動かされることで指定されてもよく、特定の日時が入力されることで指定されてもよい。
【0047】
更に、注入量の複数の3次元イメージ34Aは、リアルタイム表示中の時間の経過に伴って、改良材の注入量が増えていく場合や、過去の特定の時間範囲が指定されて、その時間範囲内で改良材の注入量が増えていく場合等は、3次元イメージ34Aの球体が徐々に大きくなっていき、注入量が予め設定された閾値を超えたときに、球体の色が変化するようになっている。同様に、変位量の複数の3次元イメージ34Bは、リアルタイム表示中の時間の経過に伴って、地盤や構造物の変位量が増減する場合や、過去の特定の時間範囲が指定されて、その時間範囲内で地盤や構造物の変位量が増減する場合等は、3次元イメージ34Bの矢印の長さが増減し、その際に変位方向が鉛直方向について反対方向に切り替わる場合には、3次元イメージ34Bの矢印の向き及び色が切り替わるようになっている。同様に、地下水のpH値の複数の3次元イメージ34Cは、リアルタイム表示中の時間の経過に伴って、地下水のpH値が増減する場合や、過去の特定の時間範囲が指定されて、その時間範囲内でpH値が増減する場合等は、3次元イメージ34Cの色が変化するようになっている。
【0048】
なお、注入データに係る3次元イメージ34Aとして、注入データに含まれる改良材の注入圧力や注入速度等を表示してもよい。又、改良材の注入量、注入圧力、注入速度等の経時的な変化を、3次元イメージ34Aの大きさや色の変化に替えて、或いは加えて、3次元イメージ34Aの形状の変化で表現するようにしてもよく、3次元イメージ34Aの色の変化に、3次元イメージ34Aの透過率の変化を加えてもよい。更に、地盤や構造物の変位量を示す3次元イメージ34Bは、方向及び大きさを表現できるものであれば、矢印以外の形状であってもよく、鉛直方向以外の方向の変位量を表示するものであってもよい。又、
図2に示しているように、変位量を示す3次元イメージ34Bと併せて、変位量の数値表示38を表示するようにしてもよい。
【0049】
加えて、地下水のpH値を示す3次元イメージ34Cは、pH値の大きさを表現できるものであれば、円柱以外の形状であってもよく、pH値の経時的な変化が、色ではなく大きさや形状の変化で表現されてもよい。又、pH値を示す3次元イメージ34Cと併せて、pH値の数値表示を表示するようにしてもよく、pH値が特定の閾値を超えたときに表示や音声等で発報を行うようにしてもよい。この場合の特定の閾値として、例えばpH値が8.6以下であることが挙げられ、施工前に計測した地下水のpH値が既に8.6を超えていた場合は、その際の計測値以下(施工前のpH値が9.0であった場合は閾値が9.0以下)であることが挙げられる。
【0050】
図2の3次元モデル30上に示されている、改良材の注入量の3次元イメージ34Aと、地盤や構造物の変位量の3次元イメージ34Bと、地下水のpH値の3次元イメージ34Cとは、多点注入工法が行われている途中段階の状態が示されている。これに対し、
図3には、多点注入工法が行われて地盤改良が終了した状態の、
図2と共通の3次元モデル30及び3次元イメージ34の表示例を、
図2と異なる角度で示している。
図3に示すように、改良材の注入量の3次元イメージ34Aは、複数の注入箇所56の全てについて表示されており、全ての3次元イメージ34Aの球体が、略同じ大きさになっている。このような地盤改良の終了状態が表示できる時点では、地盤改良が開始されてから終了するまでの、全ての注入箇所56についての改良材の注入データが、サーバ12に保管されていることになる。なお、
図3では、地盤や構造物の変位量の3次元イメージ34Bと、地下水のpH値の3次元イメージ34Cとを非表示にしている。又、
図2及び
図3の表示例では図示されていないが、3次元モデル30上に表示されている3次元イメージ34が、地盤改良におけるどの作業状況のときのものであるかを示す作業名称を、3次元モデル30上の任意の位置に表示してもよい。
【0051】
次に、
図4には、サーバ12に時系列データとして保管されている注入データ及び変位データの、経時的な変化を示すグラフの表示例を示している。まず、
図4(a)は、注入データに含まれている改良材の注入速度(瞬時流量)、注入量(累積注入量)、注入圧力(瞬時圧力)の各々を、特定の時間範囲にわたって折れ線グラフで示した例を示している。このようなグラフを表示するにあたり、表示対象の時間範囲や、表示対象の注入データに関連付けられている注入箇所56が、クライアント46によって任意に指定される。なお、改良材の注入速度、注入量、注入圧力を同時に表示する必要はなく、クライアント46から指定された任意のデータ種別のみ表示してもよい。
【0052】
又、
図4(b)は、変位データに含まれている地盤や構造物の変位量を、特定の時間範囲にわたって折れ線グラフで示した例を示している。このようなグラフを表示するにあたり、表示対象の時間範囲や、表示対象の変位データに関連付けられている変位計測箇所64が、クライアント46によって任意に指定される。なお、注入箇所56や変位計測箇所64の指定は、
図2及び
図3に示したような3次元モデル30内の対応する位置が選択されることで実行されてもよく、注入箇所56や変位計測箇所64の一覧表から選択されて実行されてもよい。又、注入データ及び変位データと同じ様に、サーバ12に時系列データとして保管されている水質データを利用して、地下水のpH値の経時的な変化を示すグラフを表示してもよい。
【0053】
更に、
図5には、サーバ12に時系列データとして保管されているルジオンテストデータのグラフの表示例を示している。このグラフは、縦軸がルジオンテストデータに含まれる圧力水の注入圧力、横軸がルジオンテストデータに含まれる圧力水の注入速度であり、圧力水の注入圧力と注入速度との関係、所謂P-Q曲線を示している。このようなグラフの表示対象のルジオンテストデータは、サーバ12に保管されているルジオンテストデータの中から、クライアント46によって所望の注入箇所56及び所望のテストのものが指定される。なお、データ間の関係を示すグラフは、サーバ12に保管されている任意のデータを用いたものであってよく、例えば、地下水のpH値と改良材の注入量との関係を示すグラフや、地盤又は構造物の変位量と改良材の注入量との関係を示すグラフ等を表示してもよい。
【0054】
続いて、
図6及び
図7は、ダムグラウチングの施工箇所周辺の3次元モデル30と、この3次元モデル30上に表示する監視対象データの3次元イメージ34との表示例を示しており、
図6がダム堤体の略全景が表示される角度、
図7が地盤内からダム堤体を見上げる角度で示されている。ここで、
図6及び
図7の表示例の基本的な構成は、
図2及び
図3と同様であるため、
図2及び
図3の表示例と重複する一部の説明は省略することとし、
図2及び
図3の表示例と異なる部分を中心にして説明する。
図6及び
図7の3次元モデル30には、ダム堤体のモデル30Aと、その周辺の地盤とが含まれており、本実施例では、便宜上、それらを簡略化して図示しているが、
図2や
図3の例と同様に、少なくとも施工箇所周辺のダム堤体や地盤の形状を把握できる程度に、実物と近い形状で表現することが好ましい。又、
図2及び
図3の例と同様に、
図6及び
図7の3次元モデル30は、クライアント46側からの操作を受けて、表示の拡大/縮小、表示の回転、表示/非表示の切り替え、透過率の増減等が行えるようになっている。
【0055】
3次元モデル30の地盤内には、改良材の注入量を示す3次元イメージ34Aが複数表示されており、本実施例における注入量の3次元イメージ34Aの各々は、基本形状が円柱で示され、経時的な注入量の変化が、円柱の大きさ(太さ又は長さ)及び色の変化で表されている。3次元モデル30上での3次元イメージ34Aの位置は、各3次元イメージ34Aに関連付けられている注入箇所56の各々に付与された座標の、3次元モデル30上で対応する位置である。なお、
図6及び
図7では、地盤やダム堤体の変位量を示す3次元イメージ34Bを非表示にしている。
【0056】
改良材の注入量の複数の3次元イメージ34Aは、サーバ12に保管されている注入データのうち、クライアント46から指定された時間(日時)に対応する注入データが参照されて、表示されるようになっている。例えば、クライアント46からは、リアルタイムでの表示や、過去の特定の時間に遡った表示が指定される。更に、注入量の複数の3次元イメージ34Aは、リアルタイム表示中の時間の経過に伴って、改良材の注入量が増えていく場合や、過去の特定の時間範囲が指定されて、その時間範囲内で改良材の注入量が増えていく場合等は、3次元イメージ34Aの円柱が徐々に大きくなっていく。
【0057】
又、例えば、複数の注入箇所56の各々に注入された改良材のルジオン区分、単位注入セメント量、実際に形成される円柱の大きさ等に応じて、閾値を用いて円柱を色分け表示するようにしてもよい。なお、
図6及び
図7に図示された3次元イメージ34Aは、ダムグラウチングが終了した状態のものであり、複数の注入箇所56の全てについての3次元イメージ34Aが表示され、全ての3次元イメージ34Aの円柱が略同じ大きさになっている。更に、注入量の複数の3次元イメージ34Aは、クライアント46からの要求を受けて、例えば、特定の作業状況時の3次元イメージ34A、特定のルジオン値の3次元イメージ34A、特定の単位セメント量の3次元イメージ34A、特定のブロック及び次数に対応する3次元イメージ34A等を表示してもよい。
【0058】
次に、
図8は、注入データに含まれている改良材の注入圧力と注入速度との関係(P-Q曲線)を示すグラフ、及び、改良材の注入速度(注入流速)と注入圧力との経時的な変化を示すグラフが、様々な情報と共に示された表示例を示している。
図8の表示例は、ある特定の注入箇所56における、特定の時間についてのデータが表示されており、表示対象の注入箇所56や時間は、クライアント46から任意に指定される。
図8の左下に位置するグラフは、縦軸が改良材の注入圧力、横軸が改良材の注入速度になっており、ルジオン値の確認等に用いられるものである。
図8の右下に位置するグラフは、改良材の注入流速と注入圧力との経時的な変化を、特定の時間範囲にわたって折れ線グラフ及び面積で示した例である。
【0059】
図8の上方に示されている情報のうち、「上端深度」及び「区間長」は、特定の注入箇所56において改良材が注入される上端の深さ位置及び深さ方向の長さであり、「ルジオン値」及び「限界圧力」は、特定の注入箇所56で確認されたルジオン値及び限界圧力である。又、「単位注入セメント量」及び「セメントの種類」は、特定の注入箇所56に注入された改良材に含まれるセメントの量及びセメントの種類であり、「注入時間」は、特定の注入箇所56に改良材が注入された総時間であり、「注入配合:W/C」は、特定の注入箇所56に注入された改良材の水セメント比である。更に、「積算流量」は、特定の注入箇所56に注入された改良材の総注入量であり、「注入圧力」及び「注入流速」は、特定の注入箇所56に注入された改良材の特定時間の注入圧力及び注入速度である。
【0060】
又、「作業状況」は、
図8に表示されたデータが取得されたときの作業状況や、今現在の作業状況を示す作業名称が表示されるものである。一例として、ダムグラウチングで用いられる作業名称には、ダムグラウチングに先立って行われる水注入試験を示す「水押」、ダムグラウチングに先立って行われるルジオンテストを示す「透水」、改良材が注入されていることを示す「注入(グラウチング)」、地盤等の変位や注入材の漏れによって注入材の注入が中断された状態を示す「中断」、改良材の注入によって当該ステージの作業が完了したことを示す「完了」等がある。なお、表示制御部14によって表示させる情報の種類は、
図8の例に限定されるものではなく、他の情報であってもよい。
【0061】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10は、施工箇所周辺の地盤や構造物の変位を計測しながら、改良材を地盤の複数箇所に注入する地盤改良に用いられるものであり、
図1に示すように、改良材を注入する複数の注入箇所56と、地盤或いは構造物の変位を計測するための複数の変位計測箇所64とに、箇所毎に固有の識別コード及び座標を付与して、後述するようにこれらの箇所に係るデータの取り扱いを行う。具体的な構成として、注入監視支援システム10は、サーバ12、表示制御部14、注入データ取得部18及び変位データ取得部22を含んでおり、サーバ12は、注入データ取得部18や変位データ取得部22等から受信する、各種のデータを保管するものである。この際、サーバ12は、受信したデータが複数の注入箇所56や複数の変位計測箇所64に関連するデータの場合に、それらと関連付けてデータを保管する。
【0062】
表示制御部14は、工事の発注者、管理者、現場作業者等の様々な関係者が所有する、コンピュータや携帯端末といったクライアント46からの、注入監視支援システム10への要求に応じて、クライアント46で表示するための様々な表示データをクライアント46へ送信する。注入データ取得部18は、複数の注入箇所56の各々における改良材の注入圧力、注入速度及び注入量のうちの、少なくとも1つを含む注入データを、
図1の例では注入制御システム48の制御ユニット58からリアルタイムで取得する。そして、取得した注入データに対し、注入圧力や注入速度等のデータ種別毎、かつ、取得した(リアルタイム取得のため「注入された」と同義)時間毎に固有の識別コードを付与して、時系列データとしてサーバ12へ送信する。サーバ12は、注入データ取得部18から受信した注入データを、その注入データが得られた注入箇所56に関連付けて、時系列データとして保管する。
【0063】
変位データ取得部22は、複数の変位計測箇所64の各々における地盤或いは構造物の変位量を含む変位データを、
図1の例では変位監視システム60の変位計測部62から、制御ユニット58経由でリアルタイムに取得する。そして、取得した変位データに対し、変位量等のデータ種別毎、かつ、取得した(リアルタイム取得のため「計測された」と同義)時間毎に固有の識別コードを付与して、時系列データとしてサーバ12へ送信する。サーバ12は、変位データ取得部22から受信した変位データを、その変位データが計測された変位計測箇所64に関連付けて、時系列データとして保管する。又、表示制御部14は、要求があったクライアント46へ送信する表示データとして、注入監視支援システム10に予め設定される、複数の注入箇所56周辺の地形及び/又は構造物形状を示す周辺形状データに基づいて、複数の注入箇所56周辺の地盤及び/又は構造物の3次元モデル30(
図2、
図3、
図6及び
図7参照)を表示するための表示データを送信する。
【0064】
更に、表示制御部14は、クライアント46からの要求を受けて、サーバ12に保管されている注入データ及び/又は変位データに基づいて、改良材の注入圧力、注入速度、注入量、及び、地盤や構造物の変位量のうちの少なくとも1つを、3次元イメージ34(
図2、
図3、
図6及び
図7参照)によって、上述した3次元モデル30上に表示するための表示データを送信する。この際、3次元イメージ34の基本形状は、各データの種別に応じて、想定される改良体の形状、球体、矢印等が使用され、3次元イメージ34の表示位置は、各データが関連付けられている注入箇所56或いは変位計測箇所64に付与されている座標の、3次元モデル30上で対応する位置である。
【0065】
又、3次元イメージ34によって示される各データは、時系列データとしてサーバ12に保管されているものであるため、各データの経時的な変化を、3次元イメージ34の大きさ、色及び形状のうちの少なくとも1つを経時的に変化させることで表現する。更に、このような3次元イメージ34を、各データがサーバ12へ送信されて保管されるのと略同じタイミング、すなわちリアルタイムで表示させる。又、改良材の注入圧力、注入速度、注入量を3次元イメージ34Aで表示させる注入箇所56と、地盤や構造物の変位量を3次元イメージ34Bで表示させる変位計測箇所64とは、クライアント46からの要求に応じて、任意の複数箇所又は単数箇所が指定されるものである。
【0066】
上記のような構成により、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10は、改良材の注入量や地盤の変位量等の各データを、大きさや色等が変化する3次元イメージ34によってリアルタイムに表現することができるため、施工状況を直観的にリアルタイムに把握することができる。又、3次元モデル30上の各座標に対応する位置に、注入箇所56や変位計測箇所64に紐付けられた各データの3次元イメージ34が表示されるため、複数の注入箇所56及び複数の変位計測箇所64の位置関係を容易に把握することができる。更に、複数の注入箇所56や複数の変位計測箇所64に関連付けられた複数のデータが、3次元モデル30上に3次元イメージ34により同時に表示され、それらの大きさ等が同時に変化しても、それらと同じデータが数値やグラフで表示された場合と比較して、複数のデータの変化を遥かに容易に把握することができる。
【0067】
しかも、注入監視支援システム10にアクセス可能なクライアント46を所有する様々な関係者の間で、リアルタイムにデータを共有することができ、施工現場へ行かなくても施工状況を把握することが可能となる。又、各データがサーバ12に保管されているため、これらのデータを繰り返し利用して様々な方法で表示したり、種々の解析に利用したりすることができる。更に、複数の注入箇所56及び複数の変位計測箇所64と、これらに紐付けて保管される注入データ及び変位データとに、固有の識別コードが付与されているため、これらのデータ量が大量であっても、識別コードを利用して管理や取り扱いを容易に行うことができる。
【0068】
又、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10は、上述したように3次元モデル30上に表示させる3次元イメージ34を、リアルタイムにだけでなく、クライアント46から要求された過去の時間に遡って表示させるものである。このとき、クライアント46から要求された過去の時間における3次元イメージ34を、各時間について断続的に表示してもよく、指定された時間にわたって連続的に表示してもよく、アニメーションのように動画表示してもよい。これにより、過去の施工状況や過去から現在までの施工状況を、容易に把握することが可能となる。
【0069】
更に、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10は、時系列データとしてサーバ12に保管されている注入データ及び/又は変位データに基づいて、改良材の注入圧力、注入速度、注入量、及び、地盤又は構造物の変位量のうちの少なくとも1つを、時系列でグラフ表示するための表示データを、要求元のクライアント46に対して表示制御部14が送信するものである。このとき、
図4(a)や
図8の右下に示すような、改良材の注入圧力、注入速度又は注入量に係るグラフを表示させる場合は、複数の注入箇所56から任意の注入箇所56が指定され、
図4(b)に示すような、地盤や構造物の変位量に係るグラフを表示させる場合は、複数の変位計測箇所64から任意の変位計測箇所64が指定される。更に、各グラフで表示する時間の範囲も、過去に遡った任意の範囲が指定される。これにより、クライアント46側が所望する任意の時間範囲にわたる任意の注入箇所56又は変位計測箇所64の、注入に係るデータや変位に係るデータの経時的な変化を確認することができるため、局所的な状況の把握や解析を容易に行うことが可能となる。
【0070】
又、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10は、注入データ取得部18が、改良材の注入データに加えて、ルジオンテストが行われる場合のルジオンテストデータを取得してもよい。この場合、注入データ取得部18は、改良材が注入される予定の複数の注入箇所56の一部でルジオンテストが行われる際に、ルジオンテストの対象の注入箇所56に注水される圧力水の、少なくとも注入圧力及び注入速度を含むルジオンテストデータを、
図1の例では注入制御システム48の制御ユニット58から取得する。そして、取得したルジオンテストデータに対し、注入圧力や注入速度等のデータ種別毎、かつ、取得した時間毎に固有の識別コードを付与して、時系列データとしてサーバ12へ送信する。サーバ12は、注入データ取得部18から受信したルジオンテストデータを、そのルジオンテストデータが得られた注入箇所56に関連付けて、時系列データとして保管する。
【0071】
一方、表示制御部14は、時系列データとしてサーバ12に保管されている注入データに基づいて、
図8の左下に示されているような、改良材の注入圧力と注入速度との関係(P-Q曲線)をグラフ表示するための表示データを、要求元のクライアント46に対して送信する。このとき、表示対象となる改良材の注入箇所56は、複数の注入箇所56から任意の注入箇所56が指定され、更に、表示対象となる時間の範囲や複数のプロット対象時間も、過去を含む任意の範囲や任意の時間が指定される。加えて、表示制御部14は、サーバ12に保管されているルジオンテストデータに基づいて、
図5に示されているような、圧力水の注入圧力と注入速度との関係(P-Q曲線)をグラフ表示するための表示データを、要求元のクライアント46に対して送信する。このとき、表示対象となる圧力水の注入箇所56は、ルジオンテストの対象の注入箇所56から任意の注入箇所56が指定され、更に、表示対象となる時間の範囲や複数のプロット対象時間も、過去を含む任意の範囲や任意の時間が指定される。
【0072】
従って、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10は、ルジオンテストの際には、そのテスト結果からルジオン値や限界圧力等を把握するための、圧力水の注入圧力と注入速度との関係を示すグラフを表示させることができ、その後に行われる改良材の注入の際には、ルジオンテストから得られたルジオン値や限界圧力等が考慮された注入が行われていることを確認するための、改良材の注入圧力と注入速度との関係を示すグラフを表示させることができる。これにより、ルジオンテストの結果から必要な情報を容易に抽出することができると共に、その結果を加味して効率よく改良材の注入を行うことが可能となる。
【0073】
加えて、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10は、表示制御部14が各種の表示データをクライアント46へ送信する際に、例えば
図8に示されるように、表示データの内容に対応した作業状況を示す作業名称が併せて表示されるように、表示データを送信するものである。そのような作業名称としては、例えば、注入監視支援システム10がダムグラウチングに用いられていたとすると、「水押」「透水」「注入」「中断」「完了」等が挙げられる。又、作業名称を表示させる実現方法として、例えば、注入データや変位データ等がサーバ12に保管される際に行われていた作業を示す情報が、それらのデータと紐付けられて同時に保管或いは設定されるものとする。そして、表示制御部14は、サーバ12に保管された注入データや変位データ等から表示データを作成する際に、それらの注入データや変位データ等に紐付けられている作業を示す情報に基づいて、作業状況を示す作業名称が併せて表示されるような表示データを作成して送信すればよい。これにより、3次元イメージ34やグラフ等で表示されているデータが、何れの作業状況のときのものか一目で分かるため、施工状況の把握をより一層容易にすることができる。
【0074】
又、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10は、
図1に示すように、施工箇所周辺の地下水の水質を計測するための、観測井戸等を利用して設けられる複数の水質計測箇所74に、箇所毎に固有の識別コード及び座標を付与して、これらの箇所に係るデータの取り扱いを行う。そのための構成として、水質データ取得部24を含んでおり、この水質データ取得部24は、複数の水質計測箇所74の各々における地下水のpH値を含む水質データを、
図1の例では水質計測部72から制御ユニット58経由で、リアルタイムに取得する。そして、取得した地下水の水質データに対し、pH値等のデータ種別毎、かつ、取得した(リアルタイム取得のため「計測された」と同義)時間毎に固有の識別コードを付与して、時系列データとしてサーバ12へ送信する。サーバ12は、水質データ取得部24から受信した水質データを、その水質データが計測された水質計測箇所74に関連付けて、時系列データとして保管する。
【0075】
一方、表示制御部14は、クライアント46からの要求を受けて、サーバ12に保管されている水質データに基づいて、地下水のpH値を、
図2に示すような3次元イメージ34Cやグラフによって表示するための表示データを送信する。すなわち、pH値を3次元イメージ34Cで表示する場合は、例えば基本形状が井戸をイメージした円柱等で、pH値の経時的な変化に合わせて色等が変化するように、各pH値が計測された水質計測箇所74に付与されている座標の、3次元モデル30上で対応する位置に表示することができる。このようなpH値の3次元イメージ34Cを、クライアント46からの要求に応じて、リアルタイムや過去の時間に遡って表示する。又、pH値をグラフで表示する場合は、時系列のグラフ表示であったり、改良材の注入量といった他のデータとの関係を示すグラフ表示であったりしてよい。これにより、施工箇所周辺の地下水のpH値を容易に把握することができ、特に薬液注入を行う場合に必須となる、pH値が特定の閾値を超えないような監視を効率よく行うことが可能となる。
【0076】
他方、本発明の実施の形態に係る注入監視支援方法は、上述したような本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10を用いて実行されることで、注入監視支援システム10に対応する同等の作用効果を奏することができる。
なお、本発明の実施の形態に係る注入監視支援システム10及び注入監視支援方法は、多点注入工法及びダムグラウチングへの適用に限定されるものではなく、改良材を複数の注入箇所56に注入すると共に、施工箇所周辺の地盤や構造物の変位を複数の変位計測箇所64において計測するものであれば、他の地盤改良に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10:注入監視支援システム、12:サーバ、14:表示制御部、18:注入データ取得部、22:変位データ取得部、24:水質データ取得部、30:3次元モデル、34:3次元イメージ、46:クライアント、56:注入箇所、64:変異計測箇所、74:水質計測箇所