(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】被覆管及び複合管
(51)【国際特許分類】
F16L 11/11 20060101AFI20230418BHJP
F16L 11/20 20060101ALI20230418BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
F16L11/11
F16L11/20
F16L57/00 A
(21)【出願番号】P 2019105361
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間▲崎▼ 卓明
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-027262(JP,A)
【文献】特開平11-190475(JP,A)
【文献】実開昭62-020289(JP,U)
【文献】特開2000-272009(JP,A)
【文献】特開平10-311462(JP,A)
【文献】実開平04-105286(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/11
F16L 11/20
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の管体の外周を覆う管状の被覆管であって、
径方向外側へ凸となると共に軸方向に間隔をあけて配置された複数の山部と、
軸方向に隣合う前記山部の間において周方向に沿って形成され、径方向外側が開放された周溝と、
周方向及び軸方向に対して傾斜する方向に沿って形成され、径方向外側が開放された斜め溝と、
を備え
、
複数の前記山部は、複数の前記斜め溝によってそれぞれ周方向に分割され、
複数の前記斜め溝によって周方向に分割された各々の前記山部は、それぞれ矩形状ブロックを構成し、
一の前記矩形状ブロックの端部が、一の前記矩形状ブロックと軸方向に隣り合う他の一対の前記矩形状ブロックの間の前記斜め溝の内部に配置されて、一の前記矩形状ブロックの端部が、一の前記矩形状ブロックと軸方向に隣り合う他の一対の前記矩形状ブロックのうちの一方の前記矩形状ブロックに係止されることで、軸方向への伸縮が制限される被覆管。
【請求項2】
前記周溝は、周方向につながっている請求項1記載の被覆管。
【請求項3】
前記斜め溝が、複数の前記山部の周方向の中間部にそれぞれ形成され、
複数の前記山部にそれぞれ形成された斜め溝が、軸方向に沿って螺旋状に配置されている請求項1又は請求項2記載の被覆管。
【請求項4】
前記斜め溝の幅が、前記周溝の幅よりも広く設定された請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の被覆管。
【請求項5】
前記被覆管の内周面から、径方向内側へ凸となるようなリブが複数設けられている、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の被覆管。
【請求項6】
管状の管体と、
前記管体の外周を覆う請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の被覆管と、
前記管体と前記被覆管との間に配置された中間層と、
を備えた複合管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆管及び複合管に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、内部に水等の流体が流れる管体(内管)と、この管体を覆う被覆管(コルゲート管)と、を備えた複合管が開示されている。この文献に記載された被覆管は、外周側へ突出した複数の凸部が軸方向へ沿って配列されることにより波形(蛇腹状)に形成されている。そして、複合管が曲げられた際に、被覆管の凸部同士が当接することで、当該被覆管内に配置された管体が所定の曲率半径以下に曲げられることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、管体の曲げを制限するために、被覆管の軸方向に隣り合う凸部間の間隔を狭く設定すると、被覆管の管径の大きさによっては、被覆管の軸方向への伸縮性が低下する場合がある。
【0005】
上記事実を考慮し、管体の曲げを制限しつつ軸方向への伸縮性が低下することを抑制することができる被覆管を得ること、及び管体の曲げを制限しつつ軸方向への伸縮性が低下することを抑制することができる被覆管を備えた複合管を得ることを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の被覆管は、管状の管体の外周を覆う管状の被覆管であって、径方向外側へ凸となると共に軸方向に間隔をあけて配置された複数の山部と、軸方向に隣合う前記山部の間において周方向に沿って形成され、径方向外側が開放された周溝と、周方向及び軸方向に対して傾斜する方向に沿って形成され、径方向外側が開放された斜め溝と、を備え、複数の前記山部は、複数の前記斜め溝によってそれぞれ周方向に分割され、複数の前記斜め溝によって周方向に分割された各々の前記山部は、それぞれ矩形状ブロックを構成し、一の前記矩形状ブロックの端部が、一の前記矩形状ブロックと軸方向に隣り合う他の一対の前記矩形状ブロックの間の前記斜め溝の内部に配置されて、一の前記矩形状ブロックの端部が、一の前記矩形状ブロックと軸方向に隣り合う他の一対の前記矩形状ブロックのうちの一方の前記矩形状ブロックに係止されることで、軸方向への伸縮が制限される。
【0007】
請求項1記載の被覆管が曲げられると、当該被覆管の内部に配置された管体も曲げられる。ここで、被覆管が曲げられると、軸方向に隣合う山部どうしが当接する。これにより、被覆管の曲げが制限されて、当該被覆管の内部に配置された管体の曲げも制限される。また、被覆管が周方向へねじられると、斜め溝の幅が変化して、被覆管が軸方向へ収縮又は伸長する。このように、請求項1記載の被覆管では、管体の曲げを制限しつつ軸方向への伸縮性が低下することを抑制することができる。
また、請求項1記載の被覆管によれば、山部の一部を斜め溝の内部に配置させることにより、被覆管の軸方向への収縮状態又は伸長状態を保つことができる。
【0008】
請求項2記載の被覆管は、請求項1記載の被覆管において、前記周溝は、周方向につながっている。
【0009】
請求項2記載の被覆管によれば、周溝が周方向につながっていることにより、被覆管の径方向の全方向への曲げを許容することができる。
【0010】
請求項3記載の被覆管は、請求項1又は請求項2記載の被覆管において、前記斜め溝が、複数の前記山部の周方向の中間部にそれぞれ形成され、複数の前記山部にそれぞれ形成された斜め溝が、軸方向に沿って螺旋状に配置されている。
【0011】
請求項3記載の被覆管によれば、複数の山部にそれぞれ形成された斜め溝が、軸方向に沿って螺旋状に配置されている。これにより、被覆管が周方向へねじられると、複数の山部の周方向の中間部にそれぞれ形成された斜め溝の幅がそれぞれ変化して、被覆管が軸方向へ収縮又は伸長する。これにより、請求項3記載の被覆管では、軸方向への伸縮性が低下することを抑制することができる。
【0014】
請求項4記載の被覆管は、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の被覆管において、前記斜め溝の幅が、前記周溝の幅よりも広く設定されている。
【0015】
請求項4記載の被覆管によれば、斜め溝の幅が周溝の幅よりも広く設定されていることにより、管体の曲げを小さくしつつ被覆管の軸方向への伸縮性が低下することを抑制することができる。
【0016】
請求項5記載の被覆管は、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の被覆管において、前記被覆管の内周面から、径方向内側へ凸となるようなリブが複数設けられている。
【0017】
請求項5記載の被覆管によれば、径方向内側へ凸となるようなリブが複数設けられていることにより、リブの先端(径方向内側の端)が管体を当該管体の外周面から支えることができる。
【0018】
請求項6記載の複合管は、管状の管体と、前記管体の外周を覆う請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の被覆管と、前記管体と前記被覆管との間に配置された中間層と、を備えている。
【0019】
請求項6記載の複合管が曲げられると、被覆管、中間層及び管体が曲げられる。ここで、被覆管が曲げられると、軸方向に隣合う山部どうしが当接する。これにより、被覆管の曲げが制限されて、当該被覆管の内部に配置された管体の曲げも制限される。また、被覆管が周方向へねじられると、山部の周方向の中間部に形成された斜め溝の幅が変化して、被覆管が軸方向へ収縮又は伸長する。このように、請求項6記載の複合管では、管体の曲げを制限しつつ被覆管の軸方向への伸縮性が低下することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る被覆管及び複合管は、管体の曲げを制限しつつ被覆管の軸方向への伸縮性が低下することを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本実施形態の複合管を示す部分断面側面図である。
【
図1B】本実施形態の複合管を示す部分断面側面図であり、管体の端部が露出された状態を示している。
【
図2】
図1Aに示された被覆管の山部を模式的に示す側面図である。
【
図3】他の形態の被覆管の山部を模式的に示す
図2に対応する側面図である。
【
図4】他の形態の被覆管の山部を模式的に示す
図2に対応する側面図である。
【
図5】被覆管がねじられた状態の山部を模式的に示す
図2に対応する側面図である。
【
図6】被覆管が
図5に示された状態よりもさらにねじられた状態の山部を模式的に示す
図2に対応する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1A及び
図2を用いて、本発明の実施形態に係る複合管について説明する。
【0023】
図1Aに示されるように、本実施形態の複合管10は、管状の管体12と、管状とされて管体12の外周を覆う被覆管14と、管体12と被覆管14との間に配置される中間層としての多孔質樹脂層16と、を含んで構成されている。
【0024】
管体12は、管状とされ、樹脂材料を用いて形成される樹脂管である。樹脂材料における樹脂としては、例えば、ポリブテン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられ、樹脂は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。中でも、ポリブテンが好適に用いられ、ポリブテンを主成分として含むことが好ましく、例えば管体を構成する樹脂材料中において85質量%以上含むことがより好ましい。また、管体を構成する樹脂材料には、他の添加剤を含有してもよい。
【0025】
管体12の径(外径)としては、特に限定されるものではないが、例えば10mm以上100mm以下の範囲とすることができ、12mm以上35mm以下の範囲が好ましい。
また、管体12の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば1.0mm以上5.0mm以下が挙げられ、1.4mm以上3.2mm以下が好ましい。
【0026】
被覆管14は、蛇腹状の管状とされ、管体12及び多孔質樹脂層16の外周を覆っている。被覆管14は、樹脂材料で構成される。被覆管14を構成する樹脂材料における樹脂としては、ポリブテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び架橋ポリエチレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられ、樹脂は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。中でも、低密度ポリエチレンが好適に用いられ、低密度ポリエチレンを主成分として含むことが好ましく、例えば被覆管14を構成する樹脂材料中において80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0027】
また、使用する樹脂のMFR(Melt Flow Rate)は、0.25以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.35以上1.2以下であることがさらに好ましい。MFRを0.25以上にすることにより、多孔質樹脂層16の多孔質構造に被覆管14の樹脂が入り込みやすくなり、多孔質樹脂層16と被覆管14との接着度を高めることができる。なお、被覆管14を構成する樹脂材料には、他の添加剤を含有してもよい。
【0028】
多孔質樹脂層16は、本発明における中間層の一例であり、樹脂材料で構成され多孔質構造を有する層である。多孔質樹脂層16を構成する樹脂材料における樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレンプロピレンジエンゴム、並びにこれらの樹脂の混合物が挙げられるが、その中でもポリウレタンが好ましい。
多孔質樹脂層16は、ポリウレタンを主成分として含む層(すなわち、多孔質ウレタン層)であることが好ましい。例えば、多孔質樹脂層の構成成分中においてポリウレタンを80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。なお、多孔質樹脂層には、他の添加剤を含有してもよい。
【0029】
多孔質樹脂層16における孔の存在比率(例えば発泡体の場合であれば発泡率)は、JIS K6400-1(2012年)の付属書1に記載の方法により測定することができ、25個/25mm以上であることが好ましく、45個/25mm以下がより好ましい。また、多孔質樹脂層16は、発泡体であることが好ましい。
【0030】
多孔質樹脂層16の密度は、12kg/m3以上22kg/m3以下であることが好ましい。複合管10では、内部の管体12の端部に継手などを接続するときに、被覆管14の端部を短縮させてずらし、管体12の端部を露出させることが求められる。しかし、被覆管14をずらすときに多孔質樹脂層16が追従せず、管体12の外表面に置き去りになって、管体12が十分に露出できないことがある。一方、多孔質樹脂層16の密度が22kg/m3以下であることにより、多孔質樹脂層16が適度な柔軟性を有し、被覆管14の端部を短縮変形させて管体の端部を露出させる際に、多孔質樹脂層16が被覆管14の動作に対して良好に追従し、管体12の外表面への置き去りが抑制される。その結果、管体の端部の露出を容易に行うことができる。
【0031】
一方、多孔質樹脂層16は、密度が12kg/m3以上であることで適度な強度を有し、複合管10の製造時等の加工時における多孔質樹脂層の破れ及び破損の発生が抑制される。
多孔質樹脂層16の密度は、管体12の外表面へ置き去りの抑制及び加工時における破れ、破損の抑制の観点から、14kg/m3以上20kg/m3以下の範囲がより好ましく、16kg/m3以上18kg/m3以下がさらに好ましい。
【0032】
ここで、多孔質樹脂層16の密度は、JIS-K7222(2005年)に規定の方法により測定することができる。なお、測定環境は温度23℃、相対湿度45%の環境とする。
【0033】
多孔質樹脂層16の密度を上記の範囲に制御する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば多孔質樹脂層16における孔の存在比率(例えば発泡体である場合であれば発泡率)を調整する方法、樹脂の分子構造を調整する(つまり樹脂の原料となるモノマーの分子構造や、それらの架橋構造を調整する)方法等が挙げられる。
【0034】
以上説明した多孔質樹脂層16は、管体12と被覆管14との間に配置されている。多孔質樹脂層16は、被覆管14の内周面に密着した状態で配置されていると共に後述する被覆管14の底壁26と管体12との間に挟持されている。
【0035】
なお、多孔質樹脂層16の自然状態での厚さは、底壁26と管体12とで圧縮された圧縮挟持部の形成のし易さの観点から、1mm以上20mm以下の範囲が好ましく、2mm以上15mm以下がより好ましく、2.5mm以上10mm以下がさらに好ましい。なお、多孔質樹脂層16の自然状態での厚さは、複合管10から多孔質樹脂層16を取り出して、任意の箇所3箇所を測定して得られた値の平均値とする。
【0036】
また、管体12の外周と底壁26の径方向内側面との差は、例えば0.3mm以上5mm以下の範囲が好ましく、0.5mm以上3mm以下がより好ましく、1mm以上2mm以下がさらに好ましい。
【0037】
次に、被覆管14の詳細な構成について説明する。
【0038】
被覆管14は、蛇腹状とされており、径方向外側(矢印R方向側)へ凸となる環状の山部18と、径方向外側が開放された凹となる環状の周溝20とが、軸方向(矢印S方向)に交互に配列された構成となっている。詳述すると、山部18は、軸方向から見て環状に形成されていると共に軸方向に隣り合って配置された一対の側壁22と、一対の側壁22の径方向外側の端を軸方向につなぐ頂壁24と、によって構成されている。また、周溝20は、軸方向に隣合って配置された一対の山部18のうちの軸方向一方側の山部18の軸方向他方側の側壁22と、一対の山部18のうちの軸方向他方側の山部18の軸方向一方側の側壁22と、これら一対の側壁22の径方向内側の端を軸方向につなぐ底壁26と、によって構成されている。また、本実施形態では、周溝20が周方向(矢印R方向)に途切れなくつながっている。
【0039】
また、特に限定されるものではないが、山部18の軸方向の長さL1は、周溝20の軸方向の長さL2(後述する周溝20の幅W2)よりも長く設定されていることが好ましい。長さL1は、被覆管14の軸方向への収縮のしやすさを確保するため、長さL2の1.2倍以上であることが好ましい。
【0040】
また、長さL2は、0.8mm以上であることが好ましい。これは、長さL2が0.8mm未満では、被覆管14を製造する金型の谷部の幅が小さすぎて、被覆管14の製造時において、被覆管14を構成する樹脂を押し出した後に、金型で当該樹脂に凹凸をつける時に、当該樹脂の金型の谷部に対応する部分が細く壊れやすくなり、被覆管14の成形が難しくなるからである。一方、長さL1は、長さL2の5倍以下であることが好ましい。これは、長さL1を長さL2の5倍以下にすることにより、複合管10の可撓性を保つことができるからである。また、長さL1が長すぎると、複合管10を敷設する際に、地面との接触面積が大きくなって施工しにくくなるためでもある。
【0041】
被覆管14の厚さは、最も薄い部分で0.1mm以上、最も厚い部分で0.4mm以下であることが好ましい。頂壁24の厚さは、底壁26の厚さよりも薄くなっており、頂壁24の厚さは、底壁26の厚さの0.9倍以下であることが好ましい。
【0042】
山部18の頂壁24と周溝20の底壁26の外表面での半径差ΔRは、被覆管14の厚さの平均の800%以下であることが好ましい。半径差ΔRが大きければ、山部18の軸方向Sに沿った部分が変形しなくても、短縮のときに周溝20が径方向外側へ膨出したり、隣り合う山部18同士が近づかないで歪んだ変形状態となったりしにくい。半径差ΔRが、被覆管14の厚さの平均の800%以下となる場合に、上記の変形状態となることを抑制するために、山部18の軸方向の長さを周溝20の軸方向の長さよりも長くすることが、効果的である。なお、600%以下である場合に、より効果的である。
【0043】
被覆管14の径(最外部の外径)としては、特に限定されるものではないが、例えば13mm以上130mm以下の範囲とすることができる。
【0044】
また、本実施形態では、側面視で(径方向外側から見て)周方向及び軸方向に対して傾斜していると共に径方向外側が開放された凹となる複数の斜め溝28が、山部18の周方向の中間部に形成されている。これにより、山部18が複数の斜め溝28によって周方向に分割された構成となっている。なお、複数の斜め溝28によって周方向に分割された各々の山部18を矩形状ブロック30と呼ぶ。また、矩形状ブロック30は、前述の一対の側壁22と、頂壁24と、頂壁24における周方向の両端からそれぞれ径方向内側へ延びる一対の周壁32と、を含んで構成されている。
【0045】
斜め溝28は、周方向に隣合って配置された一対の矩形状ブロック30のうちの周方向一方側の矩形状ブロック30の周方向他方側の周壁32と、一対の矩形状ブロック30のうちの周方向他方側の矩形状ブロック30の周方向一方側の周壁32と、これら一対の周壁32の径方向内側の端を周方向につなぐ底壁34と、によって構成されている。斜め溝28は、周方向に隣合う一対の周溝20をつないだ構成となっている。
また、本実施形態では、斜め溝28の深さ(底壁34の径方向外側の面から頂壁24の径方向外側の面までの径方向への寸法)が、周溝20の深さ(底壁26の径方向外側の面から頂壁24の径方向外側の面までの径方向への寸法)と同じ寸法に設定されている。
また、本実施形態では、斜め溝28の幅W1(一対の周壁32の間の間隔)が、周溝20の幅W2(一対の側壁22の間の間隔)よりも大きな寸法に設定されている。
【0046】
図2には、被覆管14の周方向の一部を軸方向に沿って切断して、この被覆管14を周方向に展開した状態の複数の山部18(矩形状ブロック30)の一部を示した模式図が示されている。この図に示されるように、本実施形態では、一の山部18の周方向の中間部に形成された斜め溝28と、当該一の山部18と軸方向に隣合う他の山部18の周方向の中間部に形成された斜め溝28と、が軸方向及び周方向に対して斜め方向につながるように構成されている。さらに、本実施形態では、複数の山部18にそれぞれ形成された斜め溝28が、軸方向に沿って螺旋状につながるように配置されている。
【0047】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0048】
図1Aに示されるように、以上説明した本実施形態の複合管10が曲げられると、当該複合管10を構成する管体12、多孔質樹脂層16及び被覆管14が曲げられる。ここで、被覆管14が曲げられると、当該曲げられた方向側で周溝20の幅が狭まって、軸方向に隣合う山部18(矩形状ブロック30)どうしが当接する。これにより、被覆管14の曲げが制限されて、当該被覆管の内部に配置された管体12の曲げも制限される。また、被覆管14が周方向一方側又は他方側へねじられると、斜め溝28の幅が変化して、被覆管14が軸方向へ収縮又は伸長する。これにより、本実施形態では、管体12の曲げを制限するために、周溝20の幅W2を狭く設定したとしても、斜め溝28を有することにより、被覆管14の軸方向への伸縮性が低下することを抑制することができる。特に、本実施形態では、斜め溝28の幅W1が周溝20の幅W2よりも広くに設定されていることにより、管体12の曲げを小さくしつつ被覆管14の軸方向への伸縮性が低下することを抑制することができる。また、被覆管14の軸方向への収縮性が低下することを抑制することができることにより、
図1Bに示されるように、管体12(
図1A参照)の端部を被覆管14から容易に露出させることができる。その結果、被覆管14の内部の管体12の端部に継手などを接続する際の作業性を良好にすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、被覆管14に形成された各々の周溝20が周方向に途切れなくつながっていることにより、被覆管14の径方向の全方向への曲げを許容することができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、山部18の周方向の中間部が、複数の斜め溝28によって周方向に分割されている。これにより、被覆管14が周方向へねじられると、山部18の周方向の中間部に形成された複数の斜め溝28の幅W1がそれぞれ変化して、被覆管14が軸方向へ収縮又は伸長する。これにより、本実施形態の被覆管14では、山部18の周方向の中間部が、単一の斜め溝28によって周方向に分割されている構成と比べて、軸方向への伸縮性が低下することをより一層抑制することができる。また、複数の山部18にそれぞれ形成された斜め溝28が、軸方向に沿って螺旋状につながるように配置されていることにより、被覆管14の単位長さ当たりの周方向へのねじり角度に対する軸方向への伸縮量を安定させることができる。
【0051】
なお、
図1A及び
図2に示されるように、本実施形態の被覆管14では、周溝20が周方向に途切れなくつながるように構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図3に示されるように、周溝20が周方向に分割されるように構成してもよい。この例では、
図2に示された構成に対して、周方向に隣り合う矩形状ブロック30が、互いに斜め溝28の方向にオフセットした構成となっている。
また、
図1A及び
図2に示されるように、本実施形態の被覆管14では、一の山部18の周方向の中間部に形成された斜め溝28と、当該一の山部18と軸方向に隣合う他の山部18の周方向の中間部に形成された斜め溝28と、が軸方向及び周方向に対して斜め方向につながるように構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図4に示されるように、各々の斜め溝28が分割されるように構成してもよい。この例では、
図2に示された構成に対して、軸方向に隣り合う矩形状ブロック30が、互いに周溝20の方向にオフセットした構成となっている。
なお、
図3及び
図4において、
図2に示された被覆管14の各部と対応する部分には、
図2と同一の符号を付している。
【0052】
(被覆管14の軸方向への収縮状態を保つ構成)
次に、
図5及び
図6を用いて、被覆管14の軸方向への収縮状態を保つ構成について説明する。なお、
図3及び
図4において、
図2に示された被覆管14の各部と対応する部分には、
図2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0053】
図5には、被覆管14が軸方向へ収縮されるように周方向へねじられ始めた状態の山部18(矩形状ブロック30)が示されており、
図6には、
図5に示された状態よりもさらにねじられて軸方向への収縮状態が保たれた状態の山部18(矩形状ブロック30)が示されている。これらの図に示されるように、この例では、被覆管14が軸方向へ収縮されるように周方向へねじられると、一の矩形状ブロック30の軸方向一方側(矢印S方向側)かつ周方向他方側(矢印Cとは反対側)の端部36Aが、当該一の矩形状ブロック30の軸方向一方側に配置された他の一対の矩形状ブロック30の間の斜め溝28の内部に配置される。そして、一の矩形状ブロック30の軸方向一方側かつ周方向他方側の端部36Aが、当該一の矩形状ブロック30の軸方向一方側に配置された他の一対の矩形状ブロック30のうち周方向他方側の矩形状ブロック30の軸方向他方側かつ周方向一方側の端部36Bに係止される。これにより、被覆管14の軸方向への収縮状態が保たれるようになっている。
【0054】
ここで、
図5及び
図6に示された例では、被覆管14が軸方向へ収縮されるように周方向へねじられることで、一の矩形状ブロック30の軸方向一方側かつ周方向他方側の端部36Aが、当該一の矩形状ブロック30の軸方向一方側に配置された他の一対の矩形状ブロック30のうち周方向他方側の矩形状ブロック30の軸方向他方側かつ周方向一方側の端部36Bに当接するように、矩形状ブロック30の形状、周溝20の幅、斜め溝28の幅等が設定されている。
【0055】
また、被覆管14が軸方向へ収縮されるように周方向へさらにねじられることで、一の矩形状ブロック30の軸方向一方側かつ周方向他方側の端部36Aが、当該一の矩形状ブロック30の軸方向一方側に配置された他の一対の矩形状ブロック30のうち周方向他方側の矩形状ブロック30の軸方向他方側かつ周方向一方側の端部36Bを乗り越えるように、矩形状ブロック30の形状、周溝20の幅及び斜め溝28の幅等が設定されている。
また、被覆管14のねじりに伴う矩形状ブロック30の形状変化(一例として、
図5に示された破線で描かれた状態から実線で描かれた状態への形状変化)も考慮して、被覆管14の軸方向への収縮状態が保たれる構成を設定してもよい。
【0056】
以上説明した例では、被覆管14の軸方向への収縮状態を保つことができることにより、例えば、被覆管14の内部の管体12(
図1B参照)の端部に継手などを接続する際の作業性を良好にすることができる。なお、被覆管14の軸方向への伸長状態を保つために、上記構成を適用してもよい。
【0057】
(被覆管の内径側にリブを設けた構成)
多孔質樹脂層16等の中間層を備えず、代わりに被覆管14の内周面から径方向内側へ突出するリブを複数設けた構成としてもよい。リブを備えた被覆管14では、リブの先端(径方向内側の端)が管体12(
図1A参照)を当該管体12の外周面から支えるとともに、被覆管14が周方向一方側又は他方側へねじられると、同時にリブもねじられることになる。リブは被覆管14をねじった際、リブも同時にねじられる程度の剛性を有する。
【0058】
リブは、例えば軸方向に沿って、軸方向に平行に設けてよい。また、軸方向に対してある一定の角度で交差する様に設けてもよい。被覆管14の外周面に設けられた斜め溝28の角度に合わせて、ねじり易いように適宜設定することができる。また、リブの本数は被覆管14の周方向に等間隔に4つ設けることができるが、この数に限らず適宜設定することができる。なお、被覆管14の外周においてリブが形成された部分には、真空による金型への吸着を考慮して、周溝20や斜め溝28による凸凹は形成されていない。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
10…複合管、12…管体、14…被覆管、16…多孔質樹脂層(中間層)、18…山部、20…周溝、28…斜め溝、W1…斜め溝の幅、W2…周溝の幅