(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】洗面台の排水経路洗浄用エアゾール製品及び洗面台の排水経路洗浄方法
(51)【国際特許分類】
E03C 1/30 20060101AFI20230418BHJP
C11D 17/00 20060101ALI20230418BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
E03C1/30
C11D17/00
B05B9/04
(21)【出願番号】P 2019105671
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】三原 涼
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-150461(JP,A)
【文献】特開2008-260788(JP,A)
【文献】特開2002-317198(JP,A)
【文献】特開2006-124958(JP,A)
【文献】特開2006-160978(JP,A)
【文献】特開2020-007047(JP,A)
【文献】特開平2-175800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/30
C11D 17/00
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射により洗浄剤を含む泡が形成され、
噴射量が1mL/秒以上であり、泡の50%液化時間が20秒以上であり、泡比重が0.3g/mL以下である、洗面台の排水経路を洗浄するためのエアゾール製品。
【請求項2】
前記排水経路がオーバーフロー流路を含む、請求項1に記載のエアゾール製品。
【請求項3】
洗面台の排水経路を洗浄する方法であって、
前記排水経路がオーバーフロー流路を含み、
請求項1に記載のエアゾール製品を用いて排水口から排水路内に洗浄剤を噴射して、前記洗浄剤を含む泡を排水経路内に充満させる、洗浄方法。
【請求項4】
前記排水経路が排水トラップ以降の排水路をさらに含む、請求項3に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面台の排水経路を洗浄するためのエアゾール製品及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗面台の排水経路は、石鹸カスや垢等の有機物汚れが付着しやすく、また、常に水と接触する場所であるため、ぬめりやカビ、悪臭等が発生しやすい。しかしこれらの洗浄は不快を伴い負担も大きい作業である。このため、排水経路の洗浄を簡便に行うことを目的とした各種洗浄剤が提案され、液剤、粉剤、錠剤、エアゾール等の様々な剤型が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、洗面台の排水設備には、排水経路の途中を水(封水)で常に遮断しておくことで、下水道の悪臭や硫化水素などのガスを遮断したり、害虫等の屋内への侵入を防いだりするための排水トラップが設けられている。
上記従来の技術では、洗浄範囲が排水口から排水トラップ前(封水)までにとどまっていた。
【0005】
また、洗面台には、排水口を閉じた場合に洗面器から水が溢れ出さないよう、補助的な排水口として洗面器の上部にオーバーフロー穴(満水防止穴)が設けられている。オーバーフロー穴は大きさが様々であり、オーバーフロー穴から排水路(主排水管)に接続するオーバーフロー流路は洗面台の背面に入り込んでいる。そのため、上記従来の技術ではオーバーフロー流路の洗浄までは困難であった。
【0006】
そこで本発明は、洗面台のあらゆる排水経路を簡便に洗浄できる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定の噴射量と特定の泡の液化時間、特定の泡比重を満たすエアゾール製品を用いて、排水口から排水路内に洗浄剤を噴射することで、洗浄剤を含む泡を排水経路内に充満させることができ、洗面台の排水経路を広範囲にわたり簡便に洗浄できることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は以下のエアゾール製品及び洗浄方法に関する。
[1] 噴射により洗浄剤を含む泡が形成され、
噴射量が1mL/秒以上であり、泡の50%液化時間が20秒以上であり、泡比重が0.3g/mL以下である、洗面台の排水経路を洗浄するためのエアゾール製品。
[2] 前記排水経路がオーバーフロー流路を含む、[1]に記載のエアゾール製品。
[3] 洗面台の排水経路を洗浄する方法であって、
前記排水経路がオーバーフロー流路を含み、
[1]に記載のエアゾール製品を用いて排水口から排水路内に洗浄剤を噴射して、前記洗浄剤を含む泡を排水経路内に充満させる、洗浄方法。
[4] 前記排水経路が排水トラップ以降の排水路をさらに含む、[3]に記載の洗浄方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエアゾール製品及び洗浄方法によれば、洗面台の排水経路を、オーバーフロー流路を含む広範囲にわたり簡便に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明のエアゾール製品の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は実施例の噴射試験を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<エアゾール製品>
本発明に係る洗面台の排水経路を洗浄するためのエアゾール製品(以下、本発明のエアゾール製品とも記載する。)は、噴射により洗浄剤を含む泡が形成され、噴射量が1mL/秒以上であり、発生する泡の50%液化時間が20秒以上、泡比重が0.3g/mL以下である。
【0012】
噴射量が1mL/秒以上であることで排水口より噴射した泡が封水に当たり逆流した後にオーバーフロー流路へ泡が充満する。噴射量は好ましくは2mL/秒以上であり、より好ましくは5mL/秒以上であり、さらに好ましくは7mL/秒以上である。
上記の所望の噴射量とするためには、例えば、後述するステム孔面積、噴口面積、噴射剤の種類及び圧力、噴射剤と洗浄剤原液の配合割合等を調整することが挙げられる。
【0013】
本発明のエアゾール製品は発生する泡の50%液化時間が20秒以上であることで、泡の液化速度と比較して泡の起泡速度の方が高くなるため、泡の膨張が続きオーバーフロー穴まで泡が到達する。50%液化時間とは、噴射した際に起泡した泡が破泡する速度を表す指標であり、具体的には泡の液化率が50%になるまでの時間である。50%液化時間に達するまでの時間が長いほど形成された泡の持続性が高いことを意味する。
50%液化時間は次の方法により規定できる。まず、泡が破泡することでできる滞留液の質量と全吐出液の質量とから下記式により液化率を算出する。次に、任意の時間内で経時的に測定した液化率をもとに、液化率が50%より大きい点を含むように4点以上プロット(0分を含む)して近似曲線を描き、50%の液化率に相当する時間(50%液化時間)を算出する。
液化率(%)=滞留液の質量/全吐出液の質量×100
50%液化時間は好ましくは60秒以上であり、より好ましくは120秒以上であり、さらに好ましくは180秒以上である。
上記の所望の液化時間とするためには、例えば、後述する洗浄剤原液の組成、噴射剤の種類、噴射剤と洗浄剤原液の配合割合等を調整することが挙げられる。
【0014】
本発明のエアゾール製品は、発生する泡の泡比重が特定の範囲にあることが好ましい。泡比重とは、吐出した内容液が形成する泡の体積を表す指標であり、泡の質量を体積で割ることにより求められ、単位はg/mLである。泡比重が小さいほど空気が多く、大きく粗い泡である(起泡性が大きい)ことを意味し、泡比重が大きいほど空気が少なく、小さくきめ細やかな泡である(起泡性が小さい)傾向にある。
泡比重は、液が過多でなく、泡沫(フォーム)ではなく気泡(バブル)の割合が多くなる観点から0.3g/mL以下であることが好ましく、0.1g/mL以下であることがより好ましく、泡の量と液の量のバランスが良好で効率よく起泡できる観点から0.05g/mL以下であることがさらに好ましく、また、気泡が粗くならない観点から0.001g/mL以上であることが好ましく、泡の量と液の量のバランスが良好で効率よく起泡できる観点から0.01g/mL以上であることがより好ましく、0.02g/mL以上であることがさらに好ましい。
【0015】
泡比重が大きすぎると気泡(バブル)になるため、泡が破泡しやすくオーバーフロー穴まで到達しにくい。また、泡比重が小さすぎると嵩だけ大きくて泡と洗浄箇所との接触面積が減るおそれがある。泡比重が上記範囲であることで泡がオーバーフロー穴まで到達するのに十分な起泡性を有する。
上記の所望の泡比重とするためには、例えば、後述する洗浄剤原液の組成、噴射剤の種類、噴射剤と洗浄剤原液の配合割合等を調整することが挙げられる。
【0016】
本発明のエアゾール製品の洗浄剤原液は、25℃における粘度が1~10000mPa・sであることが好ましく、1~5000mPa・sであることがより好ましく、1~1000mPa・sであることがさらに好ましい。粘度が上記範囲であることで泡の持続性に寄与する。
上記の所望の粘度とするためには、例えば、後述する増粘剤、溶剤、界面活性剤の配合割合を調整することが挙げられる。
【0017】
本発明のエアゾール製品は洗浄成分として、また、泡調整を目的として、洗浄剤原液中に界面活性剤を含む。界面活性剤としては、デシルグルコシド等のアルキルグルコシド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、コカミドメチルMEA等のアルキルアルカノールアミド等のノニオン界面活性剤、アルキル硫酸アミン、アルキル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸アミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、サルコシン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、トリデセス-4カルボン酸ナトリウム等のアルキルエーテルカルボン酸塩、スルホン酸塩等のアニオン界面活性剤、アルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤、ドデシルアミノエチルアミノエチルグリシン等のアミノ酸型、アルキルヒドロキシスルホベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアルキルアミンオキシド、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルイミダゾール、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等の両性界面活性剤等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、起泡性の観点からアニオン界面活性剤が好ましい。
【0018】
界面活性剤は洗浄剤原液中に好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.5~10質量%含まれる。含有量がかかる範囲であることで所望の泡比重を実現することができる。
また、ノニオン界面活性剤の含有量は、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.3~10質量%である。アニオン界面活性剤の含有量は、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.3~10質量%である。カチオン界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%である。両性界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%である。
【0019】
本発明のエアゾール製品はさらに洗浄剤原液中に増粘剤を含むことが好ましい。増粘剤は、泡の持続性の向上ならびに洗浄剤に適度な粘性を与えて排水口および排水管内に到達し、かつ、付着することにより洗浄効果を上げる目的で配合される。増粘剤としては、キサンタンガム等の合成高分子多糖類、天然高分子多糖類、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ベントナイト等の粘土鉱物、カチオン化グアガム等の半合成高分子、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子、アルギン酸ナトリウム塩、アルギン酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でもキサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
【0020】
増粘剤は洗浄剤原液中に好ましくは0.01~15質量%、より好ましくは0.05~5質量%含まれる。含有量がかかる範囲であることで適度な粘性を得ることができる。
【0021】
本発明のエアゾール製品はさらに配合成分の溶解性の観点から洗浄剤原液中に溶剤を含むことが好ましい。溶剤としては、水、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも水、エタノールが好ましい。
【0022】
溶剤は洗浄剤原液中に好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%含まれる。含有量がかかる範囲であることで配合成分の溶解性の向上と適切な泡の起泡性・保持性を得ることができる。
【0023】
本発明のエアゾール製品はまた、混合物の好適な泡比重、泡の起泡性・保持性を実現するため、洗浄剤原液中に適度な消泡(破泡)作用を有する成分を配合してもよい。当該適度な消泡(破泡)作用を有する成分としては、シリコーン系消泡剤、エステル系消泡剤、エーテル系消泡剤、ポリアルキレンオキシド系消泡剤、アルキルリン酸エステル系消泡剤、及びアセチレングリコール系消泡剤、アルコール系消泡剤、鉱油系消泡剤、植物油系消泡剤、合成油系消泡剤、シリカ、油溶性香料、金属石鹸等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
消泡(破泡)性成分の洗浄剤原液中の配合量は0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。
なお、消泡(破泡)性成分の中には、アルコールなど、溶剤としての機能を兼ね備える場合もある。その場合、含有量は溶剤成分としての含有量に含めるものとする。
【0024】
本発明のエアゾール製品の洗浄剤原液には、上記成分の他にも、チャ、カキ、ツバキ、タケ、グレープフルーツ、ユズ、ミカン、レモン等の各種植物抽出物、銀や銅等の金属化合物、そのイオン等の消臭・防臭剤、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、銀や銅等の金属化合物、そのイオン等の抗菌・殺菌剤、ピレスロイド等の殺虫剤、ピリプロキシフェン等の昆虫成長制御剤、フッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン等の被膜形成剤、クエン酸等の防錆剤、BHA、BHT等の酸化防止剤、フローラル、ブーケ、シトラス、ソープ等の香料等を配合してもよい。
【0025】
本発明のエアゾール製品は、上記成分を含む洗浄剤原液と噴射剤とを、噴射装置を備えたエアゾール缶に充填することで製造できる。
噴射剤としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン等の液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)等の液化ガス、窒素、炭酸ガス、圧縮空気、亜酸化窒素等の圧縮ガス、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)等のハロゲン化炭素ガスの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、泡の起泡性・持続性の観点から、LPG、ジメチルエーテル、HFO-1234zeが好ましく、LPG、HFO-1234zeがさらに好ましい。
また噴射剤としてLPGを用いる場合、LPGの圧力としては、封水の奥まで内容液を到達させる観点から、0.2~0.5MPa/25℃が好ましく、0.3~0.5MPa/25℃がより好ましい。
【0026】
エアゾール缶内における洗浄剤原液と噴射剤の割合は、噴射力と泡質の観点から、容積比で好ましくは原液:噴射剤=50:50~99:1、より好ましくは70:30~95:5、さらに好ましくは80:20~90:10とする。
【0027】
本発明の洗面台の排水経路洗浄用エアゾール製品としては、特に限定されないが、例えば、
図1に示すようなものが挙げられる。
図1に示すように、エアゾール製品1は、エアゾール容器2と、押圧部材5と取付部材4を備えるアクチュエーター3とを有する、倒立型の噴射装置である。使用時は、
図2に示すようにエアゾール製品1を倒立させて押圧部材5を排水口12を塞ぐように密着させ、エアゾール容器2を排水口方向に押すことによりアクチュエーター3が押し下げられて、ステム孔6が開放され、噴口7から洗浄剤(図示せず)が噴射される。
【0028】
本発明のエアゾール製品の噴射装置としては、噴口、孔数1~3のステム孔のバルブを備えたものがよい。ベーパータップはあってもなくてもよい。好ましくは倒立型の噴射装置であり、かつ、噴口の向きはエアゾール本体の軸方向であることが好ましい。
噴口は円形状でも四角形状でもよく、面積として好ましくは0.005~25mm2、より好ましくは0.10~10mm2である。また、円形状の場合は直径が好ましくは0.1~5mm、より好ましくは0.5~3mmである。
ステム孔は円形状でも四角形状でもよく、面積としては好ましくは0.01~5mm2、より好ましくは0.05~4mm2である。また、円形状の場合は直径が好ましくは0.3~1.2mm、より好ましくは0.6~1.2mmである。四角形状の場合は、0.1~1.5mm×0.1~1.5mmの大きさであることが好ましい。
噴口面積とステム面積の比(噴口面積/ステム面積)は、好ましくは0.01~500、より好ましくは0.05~50、さらに好ましくは0.1~20である。
上記噴射装置を用いて、上記所望の噴射量が得られるようにする。
【0029】
<洗浄方法>
洗面台の排水経路を洗浄するに際しては、本発明のエアゾール製品を用いて、排水口から排水路内に洗浄剤を1~10秒程度噴射して、所定の時間、好ましくは5分以上、より好ましくは10~30分程度放置すればよい。噴射により洗浄剤を含む泡が形成され、洗浄剤を含む泡が排水経路内に充満されることで、排水経路内を洗浄することができる。このとき、エアゾール製品の噴射口を排水口に密着させながら噴射すると、泡状の洗浄剤が排水口からあふれ出ることなく排水路内に噴射されるため好ましい。
【0030】
本発明の洗浄方法によれば、エアゾール製品の噴射量と泡の50%液化時間、泡比重を制御することで、勢いよく噴射された洗浄剤が排水トラップの封水に到達し、濃密な泡が形成されて、排水口から排水トラップ前(封水の前)までの排水路だけでなく、洗面器のオーバーフロー穴から排水路に接続するオーバーフロー流路、さらに、排水トラップ以降の排水路、すなわち、排水トラップ内及び排水トラップより下流側の排水路も、泡で満たすことができ、これらの排水経路を同時に洗浄することができる。
また、エアゾール製品の噴射量と泡の50%液化時間、泡比重を調整することで、封水に到達した泡がオーバーフロー流路と排水トラップ以降のいずれか一方に偏って広がることを制御することができる。
なお、排水トラップの形状は特に制限されず、S字型、P字型等の各種形状の排水トラップが適用される。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明は下記例に何ら制限されるものではない。
〔実施例1~15〕
下記表1に示す組成の洗浄剤原液と、表2~表3に示す噴射剤とを、表2~表3に示す割合で混合して、容器に200mL充填した洗浄用エアゾール製品を調製し試験に用いた。
なお、噴射装置は、表2~表3に示すステム径及びステム孔数、噴口径1mmのストレート噴口を備えた、倒立型エアゾール装置を用いた。
図2に噴射試験の様子を示す。
洗面台10として、排水口12:直径25mm、排水路(主排水路)13:内径25mm、排水口12から封水14までの長さ:240mm、オーバーフロー流路16:内径25mm、長さ290mm、排水トラップ17(S字型):長さ525mmのものを用いた。洗面器、排水管は透明な樹脂素材製である。
エアゾール製品1の押圧部材5を排水口12に密着させ、洗浄剤を60秒間噴射した。ただし、60秒間以内にオーバーフロー穴まで泡が到達した場合、その時点で噴射を終了した。また、60秒間噴射してもオーバーフロー穴に泡が到達しなかった場合、その時点で噴射を終了した。
【0032】
液化率および50%液化時間は下記方法により評価した。
計量容器(30mL円錐型液量計)に本品を約2g吐出し、破泡速度の大きいものは30秒ごとに、破泡速度の小さいものは2分ごと(6分以降は3分ごと)に底部に滞留した液を採取し、滞留液採取前の全吐出液の質量と採取した滞留液の質量を測定し、下記の式にて液化率を算出した。
液化率(%)=滞留液の質量/全吐出液の質量×100
次に、任意の時間内で経時的に測定した液化率をもとに、液化率が50%より大きくなる点を含むように4点以上プロット(0分を含む)して近似曲線を描き、50%の液化率に相当する時間(50%液化時間)を算出した。
【0033】
泡比重は下記方法により評価した。
計量容器(30mL円錐型液量計)に本品を約1g吐出し、起泡した泡の最大体積を測定し、下記の式にて算出した。
泡比重(g/mL)=泡の質量/泡の最大体積
【0034】
試験結果は下記により評価した。
◎:オーバーフロー穴及び封水の先まで泡が到達した
○:オーバーフロー穴まで泡が到達し、封水の先には到達しなかった
×:オーバーフロー穴及び封水の先のいずれにも泡が到達しなかった
表2~表3に、噴射量、液化時間、泡比重、噴射試験の結果を示す。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
上記結果より、噴射量、50%液化時間、泡比重を適切に制御した本発明の排水経路洗浄用エアゾール製品であれば、オーバーフロー流路を含む排水経路を広範囲に渡り簡便に洗浄できることが分かる。
【0039】
〔実施例16〕
実施例12と同様の処方のエアゾール製品を用い、実際の洗面台の排水口から排水管内に洗浄剤を噴射したところ、オーバーフロー穴から洗浄剤を含む泡と汚れが出てくることが確認された。したがって、本発明のエアゾール製品によれば、オーバーフロー流路内の汚れがしっかりと洗浄されていることを使用者が視認できることが分かる。
【符号の説明】
【0040】
1 エアゾール製品
2 エアゾール容器
3 アクチュエーター
4 取付部材
5 押圧部材
6 ステム孔
7 噴口
10 洗面台
11 洗面器
12 排水口
13 排水路(主排水路)
14 封水
15 オーバーフロー穴
16 オーバーフロー流路
17 排水トラップ