(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】凹部の成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 59/02 20060101AFI20230418BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20230418BHJP
B26D 7/20 20060101ALI20230418BHJP
B26D 1/04 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B29C59/02 Z
B26D3/00 603Z
B26D7/20
B26D1/04 Z
(21)【出願番号】P 2019106445
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】花房 秀和
(72)【発明者】
【氏名】野口 大輝
(72)【発明者】
【氏名】椎名 理一
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-137324(JP,A)
【文献】特開平03-137325(JP,A)
【文献】特開2005-288701(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0113914(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物であるマットの表面に凹部を設けるための凹部の成形装置において、
前記マットを挟み込む第一型および第二型と、前記マットの一部を切断する切断手段とを備え、
前記第二型には、前記マットの一部が押し出される開口部が設けられ、
前記第二型の前記開口部は、前記マットの押し出し方向に向かって縮径するテーパ面を備えており、
前記第一型には、少なくとも前記開口部に対応する位置に基準面より突出する突部が設けられ、
前記切断手段は、前記開口部から押し出された前記マットを切断する
ことを特徴とする凹部の成形装置。
【請求項2】
被加工物であるマットの表面に凹部を設けるための凹部の成形装置において、
前記マットを挟み込む第一型および第二型と、前記マットの一部を切断する切断手段と
、前記第一型と前記第二型との間隔を調整する距離調整手段とを備え、
前記第二型には、前記マットの一部が押し出される開口部が設けられ、
前記第一型には、少なくとも前記開口部に対応する位置に基準面より突出する突部が設けられ、
前記切断手段は、前記開口部から押し出された前記マットを切断する
ことを特徴とする凹部の成形装置。
【請求項3】
前記突部は、前記開口部に対してそれぞれ独立して形成された柱形状を呈している
ことを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の凹部の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物であるマットの表面に凹部を設けるための凹部の成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培に用いられるスポンジ状のマットは、たとえば特許文献1に示すようなものがあった。特許文献1の水耕栽培用マットは、ブロック状に分割可能に形成されており、各ブロックには、種や苗を挟んで保持可能な保持スリットと、保持スリットの上方(ブロックの上端部)に形成された円形凹部とを備えていた。ブロックの上端部に凹部を成形するに際しては、平板の上にマットを敷設し、そのマットの上方から複数の孔が形成されたメス型を押圧させて、マットの一部を孔からはみ出させる。そして、このはみ出た部分をカットした後、メス型による押圧を解除すると、マットが通常の状態に戻り、カットした部分が間欠部分となり凹部が成形される。
【0003】
ところで、一般的には、マットの主材料として軟質のポリウレタンフォーム等が用いられている。マットは、連続気泡による毛細管現象を利用することによって、給水および保水が為される。ブロックに保持された種子には、このブロック内に保持された水分やその他の栄養分が供給される。植物の成長促進には、その栄養分の供給環境の整備が必要になる一方で、同じ環境下で繁殖する藻類等の成長を抑制する必要がある。そこで、植物成長促進効果および防藻効果を併せ持つ水耕栽培用マットが開発されていた(たとえば特許文献2参照)。
【0004】
特許文献2の水耕栽培用マットは、植物の成長に必要な微量必須元素であるZnをZnO粒子として含有しつつ、このZnO粒子の平均粒子径を藻類が持つクロロフィルが吸収する光の波長に対して散乱を生じる範囲に調整されている。このような構成によって、かかる水耕栽培用マットは、植物成長促進効果および防藻効果を発揮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-155442号公報
【文献】特許第5947993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の水耕栽培用マットにおいて、従来の工法で凹部を成形すると、適切な凹部を形成できないという問題があった。具体的には、特許文献2の水耕栽培用マットでは、マットの密度が高いほど、上方からメス型を押圧させた際に、孔からはみ出すマットの量が小さい。そのため、大きい圧力でメス型を押圧させなければならないが、このとき、マットからメス型に対して作用する抵抗が大きいので、メス型が湾曲してしまう場合があった。メス型が湾曲すると、はみ出したマットをカットするカッタとメス型が接触し、メス型の破損やカッタの刃こぼれを招いてしまう問題があった。ここで、メス型を厚くすることが考えられるが、そうするとメス型の孔からはみ出すマットの量が少なくなり、凹部の容積が小さくなってしまう。
【0007】
さらに、特許文献2の水耕栽培用マットでは、マットが軟らかいほど、カッタで切断する際の、マットのハリとコシが足りない。そのため、カッタの刃がマットに入り込み難く、穴繰り成形が困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、前記の問題を解決するために案出されたものであり、型が変形することなく、マットの切断が行い易く、凹部を所望の形状に成形できる凹部の成形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための本発明は、被加工物であるマットの表面に凹部を設けるための凹部の成形装置において、前記マットを挟み込む第一型および第二型と、前記マットの一部を切断する切断手段とを備えている。前記第二型には、前記マットの一部が押し出される開口部が設けられ、前記第二型の前記開口部は、前記マットの押し出し方向に向かって縮径するテーパ面を備えており、前記第一型には、少なくとも前記開口部に対応する位置に基準面より突出する突部が設けられている。そして、前記切断手段は、前記開口部から押し出された前記マットを切断することを特徴とする。
【0010】
このような凹部の成形装置によれば、突部がマットを押すので、第二型を押圧する圧力を高くすることなく、マットの押し出し量を所望の値にすることができる。したがって、型の変形と、型やカッタの破損を防止できる。また、マットは突部に押されてハリとコシを確保することができ、カッタによって円滑に切断される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る凹部の成形装置によれば、型が変形することなく、マットの切断が容易に行え、凹部を所望の形状に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る凹部の成形装置を示した分解斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る凹部の成形装置の第一型を示した斜視図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る凹部の成形装置の第二型を示した斜視図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る凹部の成形装置の第一型を示した要部拡大斜視図である。
【
図6】(a)は第一型上にマットを設置した状態を示した断面図、(b)は第一型と第二型とでマットを挟み込んだ状態を示した断面図、(c)は開口部から押し出されたマットを切断する状態を示した断面図である。
【
図7】(a)は開口部から押し出されたマットを切断した状態を示した断面図、(b)はマットから第二型を離間させた状態を示した断面図である。
【
図8】(a)はマットのスリットと第一型の突部の先端面の凹凸との位置関係を示した平面図、(b)は開口部から押し出されたマットと第一型の突部の先端面の凹凸との位置関係を示した平面図である。
【
図9】(a)は第一スペーサを介して第一型と第二型とでマットを挟み込んだ状態を示した断面図、(b)は第一スペーサより長い第二スペーサを介して第一型と第二型とでマットを挟み込んだ状態を示した断面図である。
【
図10】(a)~(i)は、第一実施形態の変形例に係る突部の先端面の凹凸を示した斜視図である。
【
図11】(a)は本発明の第二実施形態に係る凹部の成形装置の第一型の突部を示した斜視図、(b)は側面図である。
【
図12】(a)は第一型上にマットを設置した状態を示した断面図、(b)は第一型と第二型とでマットを挟み込んだ状態を示した断面図、(c)は開口部から押し出されたマットを切断する状態を示した断面図である。
【
図13】(a)は開口部から押し出されたマットを切断した状態を示した断面図、(b)はマットから第二型を離間させた状態を示した断面図である。
【
図14】(a)~(d)は、第二実施形態の変形例に係る突部の先端面の凹凸を示した斜視図である。
【
図15】第三実施形態に係る凹部の成形装置の第一型を示した斜視図である。
【
図16】第三実施形態の変形例に係る第一型を示した斜視図である。
【
図18】第三変形例に係る第一型を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第一実施形態に係る凹部の成形装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、マットの表面に凹部を備えた水耕栽培マットを製造するための凹部の成形装置を例に挙げて説明する。本実施形態の水耕栽培用マットは、植物の成長に必要な微量必須元素であるZnをZnO粒子として含有する樹脂発泡体からなる。このZnO粒子の平均粒子径は、藻類が持つクロロフィルが吸収する光の波長に対してミー散乱およびレイリー散乱のうち少なくとも一方の散乱を生じる範囲に調整されている。このような構成の水耕栽培用マットは、一般的な水耕栽培用マットと比較して、密度が高く、硬さがやわらかくなっている。また、本実施形態では、マットに形成されるスリットが、凹部の成形前に形成される場合を例に挙げて説明する。
【0014】
かかる凹部の成形装置1は、被加工物であるマット2の表面に凹部3(
図7の(b)参照)を設けるための装置である。
図1に示すように、凹部の成形装置1は、第一型10と第二型30とスペーサ50と切断手段55(
図6の(c)参照)とを備えている。
【0015】
マット2は、前記構成の樹脂発泡体からなり平面視矩形の平板形状を呈している。マット2には、
図5に示すように、凹部の成形位置に十字形状のスリット5,5・・が複数形成されている。スリット5は、このスリット5を狙って種や苗が設置されることにより、種や苗を静置または挟んで保持できる。スリット5は、マット2の表面から裏面に渡って貫通している。なお、スリット5は、表面から所定深さで形成されて、裏面まで貫通していない場合もある。本実施形態では、スリット5は、凹部の成形前に形成される。スリット5は、マット2を切断することで形成されており、幅を有さず、押し広げることで種や苗を挿入可能となる。また、マット2には、水耕栽培用のブロック6,6・・に分割できるように、分離可能な連結部8を備えた切込部7が形成される。切込部7は、凹部の成形前に、ブロック6の大きさに合わせた格子状に形成される。連結部8は、隣り合うブロック6,6を連結する部分であって、切込部7の一部が切断されずに部分的に設けられている。
【0016】
第一型10は、
図6に示すように、上部にマット2を載置する型であって、第二型30とでマット2を挟み込む。
図2及び
図4にも示すように、第一型10は、平板部11と複数の突部12,12・・を備えたオス型からなる。平板部11は、マット2より大きい平面視矩形形状を呈している。平板部11の周縁部には、スペーサ50を設置するためのスペーサ設置穴13が形成されている。スペーサ設置穴13は、周方向に所定の間隔をあけて複数形成されている。
【0017】
突部12は、マット2を第二型30側に相対的に押し込むためのものである。
図4および
図6の(a)に示すように、突部12は、平板部11の上面14(第二型30に対向する面)に設けられており、上面14(基準面)より第二型30側に突出している。突部12は、マット2の凹部成形位置(スリット5が形成された位置)に対応する位置にそれぞれ設けられている。突部12は、図中、大径部15の先端側に形成された小径の円柱形状の小径部16ならなる。大径部15は、基端部を構成する。小径部16は、基礎部に対して同心状に形成されている。小径部16の先端面は、凹凸状に形成されている。具体的には、小径部16の先端に、十字形状の突条17が形成されている(
図4参照)。突条17は、基端部と先端部が同等の幅寸法となっており、断面矩形形状を呈している。突条17の十字の中心部は、小径部16の軸芯と同軸状になっている。
図8の(a)に示すように、突条17は、突条17の十字の中心部(交点)と、マット2のスリット5の十字の中心部(交点)とが、平面視で重なるように形成されている。突条17は、突条17の十字を構成する直線部と、マット2のスリット5の十字を構成する直線部とが、平面視で45度回転してオフセットするように配置されている。つまり、スリット5の互いに交差する直線部と直線部との間の下側に、突条17が位置するようになっている。
【0018】
第二型30は、
図6に示すように、マット2を覆い、第一型10とともにマット2を挟み込む。
図1及び
図3にも示すように、第二型30は、開口部31が形成された平板状の押板部32と枠部33とを備えたメス型からなる。押板部32は、第一型10の平板部11と同等の平面視矩形形状を呈している。押板部32の周縁部には、枠部33が一体的に取り付けられている。枠部33は、押板部32の外周形状に沿った矩形枠状を呈しており、押板部32の下面(第一型10に対向する面)に固定されている。枠部33は、第一型10と第二型30とでマット2を挟んだ際に、突部12の先端部に干渉せずに、外側から囲うようになっている。枠部33の下面(第一型10に対向する面)には、第二型30をスペーサ50に対して位置決めするための位置決め穴34が形成されている。位置決め穴34は、周方向に所定の間隔をあけて複数形成されている。
【0019】
開口部31は、マット2の一部が押し出される孔であって、押板部32の枠部33で囲まれた内側の部分に複数形成されている。開口部31は、円形状を呈しており、第一型10の突部12に対向する位置に形成されている。つまり、開口部31と突部12とは、同等の配置ピッチで形成されており、突部12は、開口部31に対応する位置で基準面から突出している。開口部31は、突部12と同心状になるように形成されている。開口部31の径は、突部12の小径部16の外径より大きい。開口部31の内周面は、上側(第一型10から離間する側)に向かって縮径している。つまり、開口部31は、マット2の押し出し方向に向かって縮径するテーパ面35を備えている。なお、開口部31の内周面の上端部は、テーパ面35の小径の上端に連続して内径が一定に形成されている。
【0020】
スペーサ50は、第一型10と第二型30との離間距離を規制する距離調整手段であるとともに、第二型30の第一型10に対する位置決めを行う部位である。
図6に示すように、スペーサ50は円柱形状を呈しており、その一端面(下端面)には、固定ピン51が設けられている。固定ピン51が第一型10のスペーサ設置穴13に嵌合されて、スペーサ50が第一型10に固定されている。スペーサ50の他端面(上端面)には、位置決めピン52が設けられている。位置決めピン52は、第二型30でマット2を押圧する際に、第二型30の位置決め穴34に嵌合される。第二型30をスペーサ50上に載置することで、第一型10と第二型30との離間距離が規制される。さらに、位置決めピン52が位置決め穴34に嵌合されることで、第二型30の第一型10に対する位置決めが為される。固定ピン51は、スペーサ設置穴13に対して着脱可能に嵌合されるとともに、位置決めピン52は、位置決め穴34に対して着脱可能である。長さが異なるスペーサ50に交換することによって、第一型10と第二型30との離間距離を変更できる。
【0021】
切断手段55は、
図6の(c)に示すように、開口部31から押し出されたマット2の一部を切断するものである。切断手段55は、第二型30の上面に沿って移動するカッタ56を備えている。カッタ56は、図示しない移動手段を介して、第二型30の上面に接しないギリギリの高さを水平に移動する。
【0022】
次に、前記構成の凹部の成形装置1を用いてマット2に凹部を成形する方法を、
図6および
図7を参照しながら説明する。本実施形態では、凹部の成形前に、マット2にスリット5と切込部7を形成する場合の凹部の成形方法を説明する。かかる凹部の成形方法は、スリット形成工程と、マット設置工程と、マット挟持工程と、マット切断工程と、マット取外工程とを備えている。
【0023】
スリット形成工程は、
図5に示すように、凹部の成形前のマット2にスリット5と切込部7を形成する工程である。スリット5の加工と切込部7の加工はどちらを先行して行ってもよい。なお、スリット5の加工と切込部7の加工は、同時に行ってもよい。
【0024】
マット設置工程は、
図6の(a)に示すように、第一型10上にマット2を設置する工程である。マット設置工程では、突部12が上向きになるように、第一型10を水平状態で設置する。第一型10には、予め所定長さのスペーサ50を取り付けておく。スリット5の十字の中心部が突条17の十字の中心部上に重なるように、マット2を第一型10上に載置する。このとき、スリット5の十字と、突条17の十字とは、
図8の(a)に示すように、平面視で45度回転してオフセットした状態となっている。
【0025】
マット挟持工程は、
図6の(b)に示すように、第一型10と第二型30とでマット2を挟み込む工程である。マット挟持工程では、マット2の上方から第二型30を下降させて、マット2を下方に押し込む。すると、凹部成形位置のマット2は、突部12によって下方から押さえられるので、開口部31から上方に押し出されて突出する。このとき、開口部31では、テーパ面35に沿って開口部31の内側にマット2がガイドされ、上方に押し出されやすくなる。押し出されたマット2は、
図8の(b)にも示すように、スリット5が開いて、マット2の先端部が広がった状態となる。凹部成形位置以外のマット2は、突部12の外周面に沿って突部12の最上端部よりも下方に押し下げられて、突部12の上端部を覆った状態となる。
【0026】
マット切断工程は、
図6の(c)に示すように、開口部31から押し出されたマット2の一部を切断する工程である。マット2の切断は、切断手段55のカッタ56を第二型30の上面に沿わせて移動させることで行う。カッタ56でマット2を切断するとき、マット2は、カッタ56によって、第一型10側に押される。ここで、マット2は、突部12によって開口部31側に押し上げられているので、押されたマット2を下側から支持できる。さらに、スリット5の十字を構成する直線部と直線部との間の下側に突条17が位置しているので、広がってコシが弱くなったマット2をさらに近い位置で支持できる。したがって、密度が高く、硬さがやわらかいマット2であっても、カッタ56の歯に負けずに踏ん張れるので、
図7の(a)に示すように、第二型30の表面に沿った所望の形状でマット2を切断できる。
【0027】
マット取外工程は、
図7の(b)に示すように、マット2を、第一型10と第二型30から取り外す工程である。マット取外工程では、第二型30を上昇させて、マット2から離間させる。さらに、マット2を上昇させて、第一型10から離間させる。すると、マット2は、平坦な状態に戻り、上面に凹部3が成形される。凹部3の内周面には、スリット5が連続しており、凹部3の内側に種や苗(図示せず)を収容しつつ、スリット5で種や苗の基端部を挟持できる。
【0028】
以上説明した凹部の成形装置1および成型方法によれば、突部12がマット2を開口部31に向けて相対的に押すので、第二型30を押圧する圧力を高くすることなく、マット2の押し出し量を所望の値にすることができる。また、第二型30の開口部31に相当しない部分には、突部12が存在しないので、押板部32に作用する力を小さくできる。したがって、第二型30の変形を防止できる。さらに、第二型30が変形せずに平坦なままであるので、第二型30とカッタ56が干渉することなく、これらの破損を防止できる。
【0029】
また、マット2は突部12に押されて下側から支持されるので、ハリとコシを確保することができる。これによって、マット2がカッタ56の押圧力に対抗できるので、マット2を所望の形状に円滑に切断できる。
【0030】
さらに、本実施形態では、突部12の先端に突条17が形成されて、凹凸状になっているので、マット2の凹部3の成形前にスリット5を形成しても、所望の形状に凹部3を成形できる。特に、突条17が十字形状を呈し、スリット5の十字形状と45度回転してオフセットしていることで、カッタ56による切断時のマット2の変形を効率的に防止している。
【0031】
また、第二型30の開口部31は、マット2の押し出し方向に向かって縮径するテーパ面35を備えているので、突部12に押されたマット2が、テーパ面35に沿って開口部31の内側にガイドされる。したがって、マット2が開口部31から上方に押し出されやすくなる。
特に、マット2が第二型30から受ける力による型の湾曲を抑える目的(いわゆる補強目的)で型の厚みを増した場合、開口部31の高さが増すために、マット挟持工程において、開口部31からのマット2の押し出し量が減少する。そこで、テーパ面35を備える開口部31を用いることで、マット2が開口部31から上方に押し出される際に、十分な押し出し量を確保することができる。
【0032】
さらに、
図9に示すように、本実施形態の凹部の成形装置1は、交換可能なスペーサ50を備えているので、第一型10と第二型30との離間距離を変更できる。
図9の(a)では、高さ寸法L1が小さいスペーサ50aが装着され、
図9の(b)では、高さ寸法L2が大きいスペーサ50bが装着されている。高さ寸法が小さいスペーサ50aを用いると、第一型10と第二型30との離間距離が小さくなり、開口部31から押し出されるマット2の体積が大きくなり、突出長さが大きくなる。これに対して、高さ寸法が大きいスペーサ50bを用いると、第一型10と第二型30との離間距離が大きくなり、開口部31から押し出されるマット2の体積が小さくなり、突出長さが小さくなる。これによって、凹部3の深さおよび容積を調整することができる。
【0033】
次に、
図10を参照しながら、突部12の先端面の凹凸形状の変形例を説明する。
図10の(a)に示す突条17aは、前記実施形態の突条17と同様に、十字形状を呈しており、水平状態から45度回転している。突条17aは、基端部から先端部に向かうにつれて幅寸法が小さくなっており、断面台形形状を呈している。このような構成の突条17aによれば、前記突条17で得られる作用効果の他に、突条17aがマット2に食い込み易く、カッタ56による切断時にマット2がより一層ずれ難くなる、という作用効果を得られる。
【0034】
図10の(b)に示す突条17bは、突部12の先端面の中心から外側に向かって広がる8本の直線部を備えている。直線部は、45度ピッチで放射状に広がっている。直線部は、基端部と先端部が同等の幅寸法となっており、断面矩形形状を呈している。このような構成の突条17bによれば、前記突条17で得られる作用効果の他に、突条17bがマット2を支持する面積が突条17よりも大きくなるので、カッタ56による切断時に、大きい反力でカッタ56の押圧力に対抗できる。さらに、突部12の先端面の凹凸形状が複雑になるので、マット2が突条17bに対してずれ難くなる。
【0035】
図10の(c)に示す突条17cは、前記突条17bと同様に、45度ピッチで放射状に広がる8本の直線部を備えている。突条17cは、直線部が基端部から先端部に向かうにつれて幅寸法が小さくなっており、断面台形形状を呈している点で、突条17bと構成が異なる。このような構成の突条17aによれば、前記突条17bで得られる作用効果の他に、突条17cがマット2に食い込み易く、カッタ56による切断時にマット2がより一層ずれ難くなる、という作用効果を得られる。
【0036】
図10の(d)に示す突条17dは、矩形枠形状(本変形例では正方形枠形状)を呈している。突条17dは、水平な上下の2辺とこれらを結ぶ垂直な2辺とから構成されている。突条17dの正方形の角部は、スリット5の互いに交差する直線部と直線部との間の下側に位置するようになっている。このような構成の突条17dによれば、スリット5の十字を構成する直線部と直線部との間の下側に突条17dが位置するので、前記突条17と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
図10の(e)に示す突条17eは、円形枠形状を呈している。突条17eは、突部12の先端面の外周縁と近い位置を通過している。突条17eは、スリット5の互いに交差する直線部と直線部との間の下側を通過するようになっている。このような構成の突条17eによれば、スリット5の十字を構成する直線部と直線部との間の下側に突条17eが位置するので、前記突条17と同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
図10の(f)に示す突起部18aは、小型の円柱形状を呈している。突起部18aは、4か所に形成されており、スリット5の互いに交差する直線部と直線部との間の下側に配置されている。このような構成の突起部18aによれば、スリット5の十字を構成する直線部と直線部との間の下側に突起部18aが位置するので、前記突条17と同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
図10の(g)に示す突起部18b、小型の三角柱形状を呈している。突起部18bは、4か所に形成されており、底面の三角形の頂角が突部12の先端面の中心に向くように放射状に配置されている。突起部18bは、スリット5の互いに交差する直線部と直線部との間の下側に配置されている。このような構成の突起部18bによれば、スリット5の十字を構成する直線部と直線部との間の下側に突起部18bが位置するので、前記突条17と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
図10の(h)に示す突条17hは、十字形状を呈しており、水平な直線部と垂直な直線部とを備えている。直線部は、基端部と先端部が同等の幅寸法となっており、断面矩形形状を呈している。このような構成の突条17hによれば、スリット5の十字を構成する両直線部の下側に突条17hが位置する。スリット5を凹部の成形後に形成するような場合でも、マット2に突条17hが食い込むので、カッタ56による切断を行い易くできる。
【0041】
図10の(i)に示す突条17iは、突条17hと同様に、十字形状を呈しており、水平な直線部と垂直な直線部とを備えている。突条17iは、基端部から先端部に向かうにつれて幅寸法が小さくなっており、断面台形形状を呈している。このような構成の突条17iによれば、スリット5の十字を構成する両直線部の下側に突条17iが位置する。スリット5を凹部の成形後に形成するような場合でも、マット2に突条17iが食い込むので、カッタ56による切断を行い易くできる。さらに、突条17iの先端部が薄くなっているので、マット2に食い込み易く、カッタ56による切断時にマット2がより一層ずれ難くなる。
【0042】
次に、本発明の第二実施形態に係る凹部の成形装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、マット2のスリット5が、凹部の成形後に形成される場合を例に挙げて、凹部の成形装置を説明する。
【0043】
第二実施形態に係る凹部の成形装置21は、突部22の先端面の凹凸形状が第一実施形態と異なる。突部22の先端面の凹凸は、
図11に示すように、中心部に向かうにつれて突出長さが大きくなっている。具体的には、突部22の先端面には、中央突出部23と周縁傾斜部24とを備えている。中央突出部23は、突部22の中心部に円柱状に形成されている。中央突出部23は、円形の先端面25を備えており、この先端面25の突出長さが一番長くなっている。周縁傾斜部24は、中央突出部23の先端面25に連続して、周縁部に向かうに連れて突出長さが小さくなるように傾斜している。周縁傾斜部24は、先端面25を中心に、突部22の径方向に沿って外側に向かって広がる8本の傾斜部26を備えている。傾斜部26は、45度ピッチで放射状に広がっている。隣り合う傾斜部26,26の間には、切込部27が形成されている。切込部27も45度ピッチで放射状に広がっている。
【0044】
その他の構成については、第一実施形態の凹部の成形装置1と同様であるので、
図12および
図13で同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
前記構成の凹部の成形装置を用いてマット2に凹部を成形する方法を、
図12および
図13を参照しながら説明する。本実施形態では、凹部の成形後に、マット2にスリット5と切込部7を形成する場合の凹部の成形方法を説明する。かかる凹部の成形方法は、マット設置工程と、マット挟持工程と、マット切断工程と、マット取外工程と、スリット形成工程とを備えている。
【0046】
マット設置工程は、
図12の(a)に示すように、第一型10上にマット2を設置する工程である。マット設置工程では、突部22が上向きになるように、第一型10を水平状態で設置する。第一型10には、予め所定長さのスペーサ50を取り付けておく。スリット5の凹部成形位置が、突部22の先端面25の上に重なるように、マット2を第一型10上に載置する。
【0047】
マット挟持工程は、
図12の(b)に示すように、第一型10と第二型30とでマット2を挟み込む工程である。マット挟持工程では、マット2の上方から第二型30を下降させて、マット2を下方に押し込む。すると、凹部成形位置のマット2は、中心部に向かうにつれて突出長さが大きくなる突部22の先端面25で下方から押さえられるので、開口部31から上方に押し出されて突出する。マット2には、スリットが形成されていないので、開口部31から押し出された部分の表面は曲面状になる。
【0048】
マット切断工程は、
図12の(c)に示すように、開口部31から押し出されたマット2の一部を切断する工程である。マット2の切断は、切断手段55のカッタ56を第二型30の上面に沿わせて移動させることで行う。カッタ56でマット2を切断するとき、マット2は、カッタ56によって、第一型10側に押される。ここで、マット2は、突部22の先端面の中央突出部23と周縁傾斜部24とによって開口部31側に押し上げられているので、押されたマット2を下側から支持できる。さらに、マット2は、傾斜部26および切込部27からなる凹凸と噛み合うので、カッタ56によって押されてもずれ難い。したがって、密度が高く、硬さがやわらかいマット2であっても、
図13の(a)に示すように、第二型30の表面に沿った所望の形状でマット2を切断できる。
【0049】
マット取外工程は、
図13の(b)に示すように、マット2を、第一型10と第二型30から取り外す工程である。マット取外工程では、第二型30を上昇させて、マット2から離間させる。さらに、マット2を上昇させて、第一型10から離間させる。すると、マット2は、平坦な状態に戻り、上面に凹部3が成形される。凹部3の内周面は、曲面状になっている。
【0050】
スリット形成工程は、凹部3の成形後のマット2にスリット(図示せず)と切込部(図示せず)を形成する工程である。スリットは、十字状に形成され、凹部3の内周面からマット2の下面に向けて貫通させる。スリットの加工と切込部の加工はどちらを先行して行ってもよし、同時に行ってもよい。
【0051】
以上説明した凹部の成形装置21および成形方法によれば、第一実施形態の凹部の成形装置1および成形方法と同様に、第二型30の変形を防止できるとともに、第二型30とカッタ56の破損を防止できる。また、マット2は突部12に押されて下側から支持されるので、ハリとコシを確保できる。これによって、マット2がカッタ56の押圧力に対抗できるので、マット2を所望の形状に円滑に切断できる。
【0052】
さらに、本実施形態では、突部22の先端面が中心部に向かうにつれて突出長さが大きくなっているので、マット2を凹部成形位置の中心部分が開口部31から大きく突出するようになる。これによって、凹部3の深さを大きくすることができる。すなわち、中心部が深く、周縁に向かって適宜浅くなる椀状の凹部3を形成できる。
【0053】
次に、
図14を参照しながら、突部22の先端面の凹凸形状の変形例を説明する。
図14の(a)に示す突部22aの先端面は、中央突出部28と周縁傾斜部29とを備えている。中央突出部28は、突部22aの中心部に位置して、円形の平坦面にて構成されている。この平坦面の突出長さが一番長くなっている。周縁傾斜部29は、中央突出部28の外周部に連続して、突部22aの外周部に向かうに連れて突出長さが小さくなるようにテーパ状に傾斜している。
【0054】
図14の(b)に示す突部22bの先端面は、円錐形の側面形状を呈しており、突部22の軸芯部の突出長さが最も大きい。突部22bの先端部は尖っている。
【0055】
図14の(c)に示す突部22cの先端面は、半球の表面形状を呈しており、突部22cの軸芯部の突出長さが最も大きい。
【0056】
図14の(a)乃至(c)に示す突部22によれば、突部22の先端面が中心部に向かうに連れて突出長さが大きくなっているので、凹部3の深さを大きくすることができる。また、突部22の先端面の形状を変えることで、凹部3の内周面の形状を変更することができる。
【0057】
図14の(d)に示す突部22dの先端面は、半球形状に正面視十字状の切欠き部41が形成されている。切欠き部41の内側には底面43から所定高さ突出した突出面44が形成されている。突出面44は、切欠き部41に沿って十字状に形成されている。このような構成の突部22dによれば、凹部3の深さを大きくすることができる。また、マット2と切欠き部41が噛み合うので、カッタ56による切断時にマット2がずれ難い。
【0058】
次に、本発明の第三実施形態に係る凹部の成形装置について、図面を参照しながら説明する。第二実施形態に係る凹部の成形装置は、第一型10の突部61の形状が第一実施形態と異なる。
図15に示す第一型10では、突部61は、第一型10の平板部11に取り付けられたベース部62と、ベース部62の表面に形成された突条63とを備えている。ベース部62は、所定厚さの矩形板部である。ベース部62は、平板部11の内側で、マット2に対応する位置に取り付けられている。
【0059】
突条63は、ベース部62と一体形成されており、平板部11の長手方向に延在している。突条63は、平板部11の短手方向に所定間隔をあけて、複数列形成されている。平板部11の短手方向に切った断面(
図15のA-A線断面)では、
図17の(a)に示すように、突条63は、第二型30の開口部31に対応する位置に形成されている。平板部11の長手方向に切った断面(
図15のB-B線断面)では、
図17の(b)に示すように、突条63は、開口部31がある位置とない位置の両方に跨って形成されている。つまり、本実施形態の突条63は、全ての開口部31に対応する位置と、開口部31間の位置の一部とに配置されており、少なくとも開口部31に対応する位置に配置されている。突条63の頂部は、第二型30の押板部32の下面と同等の高さになっている。なお、第二型30の設置高さは、押板部32と突条63が干渉しない範囲で、スペーサを交換することで調整可能である。
【0060】
図16に示す第一型10では、突部61の突条63は、平板部11の短手方向に延在している。突条63は、平板部11の長手方向に所定間隔をあけて、複数列形成されている。平板部11の長手方向に切った断面(
図16のC-C線断面)では、
図17の(a)に示すように、突条63は、第二型30の開口部31に対応する位置に形成され、突部61の上面が波形形状を呈している。平板部11の短手方向に切った断面(
図16のD-D線断面)では、
図17の(b)に示すように、突条63は、開口部31がある位置とない位置の両方に跨って形成されている。
【0061】
なお、第二型30等のその他の構成については、第一実施形態の凹部の成形装置1と同様であるので、
図17で同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
このような突部61を備えた凹部の製造装置では、突部61の耐久性能が向上することで、マット挟持工程において生じうる型の変形を防止できる、という作用効果を得られる。
【0063】
図18に示す第一型10では、突部65は、ベース部62と、ベース部62の表面に形成された突条66とを備えている。突条66は、平板部11の長手方向に延在する第一突条67aと、平板部11の短手方向に延在する第二突条67bとを備えてなる。第一突条67aは、平板部11の短手方向に所定間隔をあけて複数列形成され、第二突条67bは、平板部11の長手方向に所定間隔をあけて複数列形成されている。第一突条67aと第二突条67bとは、格子状に組み合わせている。第一突条67aと第二突条67bとの交点は、第二型30の開口部31に相当する位置に配置されている。突条66は、第二型30の全ての開口部31に対応する位置に形成されている。
【0064】
第二型30の開口部がある位置で切った断面(
図18のE-E線断面)では、
図19の(a)に示すように、第一突条67a(または第二突条67b)は、開口部31がある位置とない位置の両方に跨って形成されている。第二型30の開口部がない位置で切った断面(
図18のF-F線断面)では、
図19の(b)に示すように、第一突条67a(または第二突条67b)は、第二型30の開口部31に対応する位置の延長線上に配置され、突部65の上面が波形形状を呈している。
【0065】
このような突部61を備えた凹部の製造装置では、第一実施形態と同様の作用効果を得られる。
【0066】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、第二型30の開口部31は円形であるが、これに限定されるものではない。凹部の形状に応じて、矩形、多角形または楕円形等の他の形状であってもよい。
【0067】
また、前記実施形態では、第一型10が下側に配置され、第二型30が上側に配置されているが、これに限定されるものではない。第一型10と第二型30の上下関係を入れ替えてもよいし、また、例えば、第二型30の押板部30が
図6中の紙面方向、左右いずれかの方向に向くよう各部材の配置関係を入れ替えてもよい。このような配置の場合には、後述するマット切断工程において、カッタ56を第二型30の端面に沿わせることで、マット2の切断ができる。
【符号の説明】
【0068】
1 凹部の成形装置
2 マット
3 凹部
5 スリット
10 第一型
12 突部
14 上面(基準面)
17 突条
30 第二型
31 開口部
35 テーパ面
50 スペーサ
55 切断手段
56 カッタ