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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】引戸
(51)【国際特許分類】
   E05F 3/14 20060101AFI20230418BHJP
   E05F 1/16 20060101ALI20230418BHJP
   E05F 5/02 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
E05F3/14
E05F1/16 B
E05F5/02 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019114825
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2020165281
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019068461
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 則良
(72)【発明者】
【氏名】木下 知也
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-242408(JP,A)
【文献】特許第4282666(JP,B2)
【文献】特開2019-100000(JP,A)
【文献】特開2008-208586(JP,A)
【文献】特開2008-144567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-13/04
E05F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸自動閉鎖機構と、引戸減速機構とを引戸に備え、引戸自動閉鎖機構は、引戸が開くときに引戸の開閉方向にスライダーが移動して蓄積したバネの付勢力により引戸を閉じ方向に移動するものであり、引戸減速機構は、引戸開閉方向に設けたラックとスライダーに設けたダンパギアを有し、引戸を開くときにラックとダンパギアが係合しない状態にあり、引戸を全開位置から閉じるときにラックとダンパギアが係合すると共に、全閉位置及びその手前ではラックとダンパギアが係合しないものであり、ラックとダンパギアが係合して引戸が閉じているときは引戸の閉じ速度減速されていることを特徴とする引戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸に関する。
【背景技術】
【0002】
クローザなど自動閉鎖機構付きの引戸を閉じた場合、引戸が勢いよく枠にぶつかるため、ゆっくりと閉まるものが求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、自動閉鎖機構付きの引戸を閉じた場合に、ゆっくりと閉まる引戸の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、引戸自動閉鎖機構と、引戸減速機構とを引戸に備え、引戸自動閉鎖機構は、引戸が開くときに引戸の開閉方向にスライダーが移動して蓄積したバネの付勢力により引戸を閉じ方向に移動するものであり、引戸減速機構は、引戸開閉方向に設けたラックとスライダーに設けたダンパギアを有し、引戸を開くときにラックとダンパギアが係合しない状態にあり、引戸を全開位置から閉じるときにラックとダンパギアが係合すると共に、全閉位置及びその手前ではラックとダンパギアが係合しないものであり、ラックとダンパギアが係合して引戸が閉じているときは引戸の閉じ速度減速されていることを特徴とする引戸である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明によれば、自動閉鎖機構付きの引戸を閉じた場合に、ゆっくりと閉めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施の形態にかかる引戸であって、図7に示すB-B断面図である。
図2図1に示す引戸の開動作を説明する図であって、(a)は全閉状態、(b)は半開状態、(c)は全開状態の図である。
図3図1に示す引戸の閉動作を説明する図であって、(a)は全開状態、(b)は半閉状態、(c)は全閉状態の図である。
図4図1に示すスライダーを拡大して示す図であって、(a)は引戸の開動作中の状態、(b)は閉動作中の状態である。
図5図1に示す引戸のバネの強度調整を説明する図であって、(a)は引戸の建込み前の状態、(b)は建込み後の状態である。
図6図5(b)に示す引戸のバネの強度調整を説明する図であって、(a)は閉じる力が弱い場合、(b)は初期状態、(c)は閉じる力が強い場合である。
図7】本発明の実施の形態にかかる引戸を備える掃出し窓であって、図8に示すA-A断面図である。
図8】本発明の実施の形態にかかる引戸を備える掃出し窓の横断面図である。
図9図11に示すストッパー装置の作用を説明する横断面図であって、(a)は内障子を開き動作中の状態であり、(b)は内障子の停止状態、(c)は内障子が閉じ動作中の状態である。
図10】ストッパー装置の縦断面図である。
図11】ストッパー装置を内障子に取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図7及び図8に示すように、本発明の実施の形態にかかる引戸は、掃出し窓1の内障子(引戸)3と外障子(引戸)5である。内障子3と外障子5は、枠7内を走行する引き違い障子である。
図7に示すように、内障子(引戸)3及び外障子(引戸)5には、それぞれ上框3a、5a内に引戸自動閉鎖ユニット9が設けてある。
以下に、引戸自動閉鎖ユニット9について説明するが、内障子(引戸)3と外障子(引戸)5に設けた引戸自動閉鎖ユニット9は障子(引戸)の開閉方向が異なるだけであり、同じ構成であるから、以下の説明では内障子(引戸)3に設けた引戸自動閉鎖ユニット9について説明する。
【0008】
図1に示すように、引戸自動閉鎖ユニット9は、内障子3の上框3aの長手方向に亘って設けてあり、ケース11と、ケース11内に収納した引戸自動閉鎖機構13と、引戸減速機構15と、ワイヤ16と、スライダー移動量調整機構18を備えている。
ケース11は、戸先側に設けたバネ係止部10と、戸尻側に設けた固定滑車取付部14と、長手方向に設けたラック12とを備えている。
固定滑車取付部14には、大径固定滑車14aと、小径固定滑車14bとが取り付けてある。
ラック12は、内障子3の閉側と開側とに段差を設けて連続する歯列12a、12bを有し、閉側(戸尻側)歯列12aの位置を、開側(戸先側)歯列12bよりも上側にしてある。ラック12は内障子3の戸先側にはなく戸尻側に設けてある。即ち、図2(a)に示すように、内障子3の全閉状態において、内障子3が開き始めるときのラックピニオン27(後述する)の位置にはラック12の歯列12a、12bはなく、図2(b)(c)に示すように、半開状態及び全開状態にあるときのラックピニオン27の位置にラックピニオン27と歯合する位置に歯列12a、12bが設けてある。
【0009】
図1に示すように、引戸自動閉鎖機構13は、バネ19と、スライダー17を備え、内障子3が開くときに内障子3の開閉方向にスライダー17が移動して蓄積したバネ19の付勢力により内障子(引戸)3を閉じ方向(戸先側)に移動するものである。
バネ19は、一端をケース11のバネ係止部10に係止してあり、他端をスライダー17のバネ固定部29(後述する)に固定してある。
スライダー17は、ケース11の長手方向を移動自在であり、動滑車21と、バネ固定部29と、ロータリーダンパ23と、可動ピニオン25と、ラックピニオン27を備えている。
動滑車21には、ワイヤ16が巻かれている。ワイヤ16は、一端16aを枠7に固定してあり、大径固定滑車14a、動滑車21、小径固定滑車14bの順序で巻かれ、他端16bをスライダー17のワイヤ取付部17aに取り付けて固定してある。
【0010】
ロータリーダンパ23と、可動ピニオン25と、ラックピニオン27と、上述したラック12は、引戸減速機構15を構成しており、引戸減速機構15は、内障子(引戸)3が閉じるときに内障子3の開閉方向に設けたラック12とスライダー17に設けたダンパギア23b(後述する)が係合して引戸の閉じ速度を減速するものである。
ロータリーダンパ23は、回転軸23aの軸の回転を制動するものであり、回転軸23aにはダンパギア23bが取り付けてある。このロータリーダンパ23は、回転軸23aがいずれの方向に回転しても制動するものが用いられている。
【0011】
図4(a)(b)に示すように、可動ピニオン25は、スライダー17に形成された案内溝31をその一端部31aと他端部31bとの間を移動自在に設けてある。図4(a)に示すように、可動ピニオン25は一端部31a側にあるときにはダンパギア23bとの非係合位置にあり、図4(b)に示すように、他端部31b側にあるときにはダンパギア23bとの係合位置にある。
可動ピニオン25とダンパギア23bとのギア比は、1:2としてある。
ラックピニオン27は、同軸に設けた大径歯車27aと小径歯車27bを備えており、大径歯車27aはラック12の閉側歯列12a(図2(b)参照)に歯合し、小径歯車27bは開側歯列12b(図2(b)参照)に歯合するものである。大径歯車27aと小径歯車27bのギア比は、2:1である。大径歯車27aのギア比を小径歯車27bに対して大きくすることで、制動力が増加する。
【0012】
スライダー移動量調整機構18は、固定滑車取付部14と、スライダー17と、バネ19とワイヤ16とで構成されている。スライダー移動量調整機構18では、ワイヤ16の一端16aを枠7に固定し、他端16bをスライダー17に固定していると共に、固定滑車取付部14の固定滑車14a、14b及びスライダー17の動滑車21に巻き付けた構成としてある。これにより、スライダー17の移動量を内障子(引戸)3の移動量よりも小さくできる。
【0013】
次に、内障子3の開閉操作を説明するが、まず、開き操作について説明する。
図2(a)に示すように、内障子(引戸)3が全閉位置にあるときには、バネ19は付勢力を放出して縮んだ状態になっている。一方、スライダー17は固定滑車取付部14との間が最も離れた位置にある。
図2(a)に示す全閉状態から内障子3を開くと、スライダー17は、ワイヤ16に巻かれた動滑車21と固定滑車14a、14bにより、戸尻側に移動し、バネ19が伸びて付勢力を蓄積する。
本実施の形態では、スライダー17と固定滑車取付部14との間にはワイヤ16が3回架け渡されている(図1参照)ことになるので、バネ19の伸び量は内障子の開移動量の1/3にすることができる。
内障子3が開き始める位置には、ラックピニオン27に歯合するラック12がなく、ロータリーダンパ23はラックピニオン27と係合していない。
【0014】
更に内障子3を開き方向に移動すると、ラックピニオン27がラック12に差しかかり、ラックピニオン27の大径歯車27aが閉側歯列12aに歯合する。図4(a)に示すように、大径歯車27aが閉側歯列12aを開き側に移動しながら矢印a方向に回転すると、可動ピニオン25は矢印b方向に回転することでラックピニオン27に押し上げられて、案内溝31の一端部31a側へ押し上げられる。これにより、可動ピニオン25はダンパギア23bと非係合状態になり、ロータリーダンパ23は作用しない。
図2(b)に示すように、続いて、内障子3を開き方向に移動すると、ラックピニオン27の小径歯車27bが開側歯列12bに歯合して移動し始める半開状態になるが、引き続き可動ピニオン25はダンパギア23bと非係合状態にあるから、ロータリーダンパ23は作用しない。
そして、内障子3を開き切ると、図2(c)に示す全開状態になる。この全開位置では、バネ19は最も伸び切った状態にあり、最も付勢力を蓄えた状態になる。
【0015】
次に、内障子3の閉じ操作について説明する。
図3(a)に示す内障子3の全開位置において、障子3から手を離すと、バネ19の蓄積された付勢力により、スライダー17が戸先側へ移動し、内障子3の閉じ動作が始まる。
全開位置ではラックピニオン27の小径歯車27bが開側歯列12bに歯合した状態にあり、図4(b)に示すように、大径歯車27aが開き方向とは反対方向の矢印c方向に回転する。これにより、可動ピニオン25が大径歯車27aに押し下げられるように矢印d方向に回転し、案内溝31を他端部31bに移動する。これにより、ラックピニオン27の大径歯車27aが可動ピニオン25を介して、ダンパギア23bに歯合し、ロータリーダンパ23が作用し、内障子(引戸)3はゆっくり閉じる。図3(a)の全開位置から図3(b)に示す半開位置までは、開側歯列12bに小径歯車27bが歯合することで、可動ピニオン25の回転数が大きくなってロータリーダンパ23に作用するので、大きな付勢力のバネ19に対して大きな制動力を付与する。例えば、図3(a)の全開位置から図3(b)に示す半開位置までの障子閉速度は、本実施の形態では0.15m/secであった。
【0016】
図3(b)に示す半閉位置では、小径歯車27bと開側歯列12bの歯合状態が、大径歯車27aと閉側歯列12aの歯合状態に切り替わり、大径歯車27aと閉側歯列12aが歯合した状態で内障子(引戸)3が閉じ方向に移動する。この状態では、ロータリーダンパ23が作用したまま、バネ19が縮んで付勢力が全開位置よりも小さくなったところで、閉側歯列12aにラックピニオン27の大径歯車27aが歯合するから、可動ピニオン25の回転数が小さくなってロータリーダンパ23に作用するので、小さな付勢力となったバネ19に対して小さな制動力を付与する。例えば、図3(b)の半開位置から大径歯車27aが閉側歯列12aの戸先側端まで歯合している間の障子閉速度は、本実施の形態では0.18m/secであった。
【0017】
そして、図3(c)に示すように、内障子3を閉じ切るときには、即ち、ラックピニオン27の大径歯車27aが閉側歯列12aとの歯合が終了して、更に大径歯車27aが閉側歯列12aに歯合しない状態で、内障子3がバネ19の付勢力のみで閉じ方向に移動する。この状態では、ラック12の歯列がなく、ラックピニオン27はラック12とは歯合しない。したがって、全閉状態及びその手前では、ロータリーダンパ23は作用しない。例えば、ラックピニオン27の大径歯車27aが閉側歯列12aとの歯合が終了してから全閉位置(図3(c)参照)までの障子閉速度は、本実施の形態では0.20m/secであった。
【0018】
次に、内障子(引戸)3におけるバネ19の付勢力の調整(スライダー移動量調整機構18)について説明する。
図5(a)に示すように、まず、引戸自動閉鎖ユニット9を設けた内障子3を枠7内に建て込むが、内障子3の建込みは、ワイヤ16の一端16aを垂らした状態にして行う。
次に、図5(b)に示すように、ワイヤ16の一端16aを引いて、ワイヤ16をケース11から引き出すようにして、バネ19の付勢力を調節しつつ、適当な付勢力となる位置でワイヤ16の一端16aを枠7にねじ34で固定する。例えば、ワイヤ16の一端16aの取り付け位置は、バネ19の付勢力の調整との関係で、初期位置(b)にしたり、初期位置(b)よりもバネの付勢力を強くして閉力を強くする位置(a)にしたり、初期位置(b)よりもバネの付勢力を弱くして閉力を弱くする位置(c)にして調整する。
【0019】
例えば、図6(b)に示す初期位置(b)から、バネ19による閉じる力を強くしたい場合には、図6(a)に矢印mで示すように、ワイヤ16を引っ張ってケース11から出ているワイヤ16の量を増やして、バネ19を伸ばして位置(a)に固定する。これにより、バネ19の強度が初期状態(図6(b))よりも強くなり、障子(引戸)3の閉じる力を強くできる。
【0020】
図6(b)に示す初期状態から、バネ19による閉じる力を弱くしたい場合には、図6(c)に矢印nで示すように、ワイヤ16をケース11内に繰り出すことでケース11から出ているワイヤ16の量を減らし、バネ19を縮めて位置(c)に固定する。これにより、バネ19の強度が初期状態(図6(b))よりも弱くできる。
このように、ケース11から出ているワイヤ16の量を変えることで、バネ19による障子(引戸)3の閉じるときの力を調整できる。
【0021】
次に、内障子3の開閉移動を停止にする開閉停止具35について説明する。
本実施の形態では、内障子3は、開いていく途中又は開き切った状態で手を離すと、バネ19の付勢力により、スライダー17が戸先側に移動してしまうので、開閉停止具35は、内障子(引戸)3を任意の位置で停止するものである。
図9(a)に示すように、開閉停止具35は、外障子(他方の障子)5を押圧する押圧部材37を内障子(一方の障子)に設けてあり、押圧部材37は、一方又は他方の障子の開閉操作時は開閉方向に揺動するものであり、揺動した状態から手を離すと開閉方向において開閉方向と直交する方向に戻るものであり、ケース39(図11参照)と、回動軸41と、ケース側マグネット43と、押圧部材側マグネット45を備えている。
図10及び図11に示すように、開閉停止具35は内障子3の召合せ框3bの上端部見込面にネジ47で固定してあり、図9に示すように、押圧部材37を回動軸41に対して左右に回動自在に設けてある。
押圧部材37は、先端部37aが樹脂部材としてあり、先端部37aを外障子5の上框5a(図10及び図11参照)の室内側面に当接している。樹脂部材は例えばウレタン樹脂である。
図10に示すように、ケース側マグネット43は、押圧部材37の下方で、押圧部材37に対向する位置でケース39の下壁39aに固定されている。
押圧部材側マグネット45は、押圧部材37内に埋め込んである。押圧部材側マグネット45とケース側マグネット43は、互いに引きあうように磁極を対向させて設けてある。
尚、図11には、開閉停止具35のカバーを外した状態を示している。
【0022】
開閉停止具35の動作について説明する。
図9(a)に矢印Eに示すように、内障子3を開操作しているときには、押圧部材37の先端部37aは、内障子3の戸先側を向いて位置し、内障子3が止まらない程度に外障子5に接触しており、内障子3の開き動作を妨げない。この状態で、ケース側マグネット43に対して押圧部材側マグネット45は内障子3の戸先側にずれた状態にある。
そして、内障子3の開き動作を止めて矢印Eと逆方向に少し戻すと、図9(b)に示すように、ケース側マグネット43と押圧部材側マグネット45が互いに重なる位置になり、ケース側マグネット43と押圧部材側マグネット45が磁石の磁力により引かれてその位置が保持される。これにより、押圧部材37の先端部37aは開閉方向に対して垂直に位置し、外障子5を押圧することで、外障子5に対して相対的に内障子3の移動が停止される。
図9(c)に矢印Fに示すように、内障子3を閉操作しているときには、押圧部材37の先端部37aは、内障子3の戸尻側を向いて位置し、内障子3が止まらない程度に外障子5に接触しており、内障子3の閉じ動作を妨げない。この状態で、ケース側マグネット43に対して押圧部材側マグネット45は内障子3の戸尻側にずれた状態にある。
そして、内障子3の閉じ動作を止めて、矢印Fと逆方向に少し戻すと、図9(b)に示すように、ケース側マグネット43と押圧部材側マグネット45が互いに重なる位置になり、ケース側マグネット43と押圧部材側マグネット45が磁石の磁力により引かれてその位置が保持される。これにより、内障子3を開いているとき(図9(a)参照)と同様に、押圧部材37の先端部37aが開閉方向に対して垂直に位置し、外障子5を押圧することで、外障子5に対して相対的に内障子3の移動が停止される。
【0023】
次に、本実施の形態に係る内障子(引戸)3の作用効果について説明する。
図3(a)に示す全開位置から内障子3を閉じるときには、内障子3から手を離すことで、スライダー17がバネ19の付勢力により戸先側に移動し、図4(b)に示すように、ラック12に歯合しているラックピニオン27が可動ピニオン25を押し下げ、可動ピニオン25を他端側に移動してダンパギア23bと歯合し、ロータリーダンパ23に係合する。これにより、閉じ状態にある内障子3に制動力を付与するので、内障子3をゆっくり閉じることができる。
【0024】
図2(a)に示すように、全閉位置から内障子(引戸)3を開くときには、ラックピニオン27は、歯列12a、12bのいずれにも係合しない状態にあり、ロータリーダンパ23が作用しないから、軽い力で内障子(引戸)3を開き始めることができる。
また、内障子(引戸)3を開くときに、スライダー17がラック12のある位置に移動しても、図4(a)に示すように、ラックピニオン27が歯列12a、12bにそれぞれ係合した状態では、ラックピニオン27が可動ピニオン25を押し上げて、ダンパギア23bから外れる位置に移動するので、ラック12とダンパギア23bは係合が外れた状態を維持するから、これによってもロータリーダンパ23が作用しないので、軽い力で内障子(引戸)3を開くことができる。
図3(a)に示すように、内障子3が全開位置から閉じようとしているときに、開側歯列12bに小径歯車27bが歯合し、大きな回転数でロータリーダンパ23に作用するから(図4(b)参照)、大きな付勢力のバネ19に対して大きな制動力を付与し、内障子3が所定位置まで閉じると、バネ19が縮んで付勢力が全開付近よりも小さくなると、閉側歯列12aにラックピニオン27の大径歯車27aが歯合するので、小さな回転数でロータリーダンパ23に作用するから、小さな付勢力となったバネ19に対して小さな制動力を付与するから、内障子3の移動量にかかわらず、ゆっくり閉じることができる。
上述したように、図3(a)の全開位置から図3(b)に示す半開位置までの障子閉速度は、0.15m/secであり、図3(b)の半開位置から大径歯車27aが閉側歯列12aの戸先側端まで歯合している間の障子閉速度は、0.18m/secであり、ラックピニオン27の大径歯車27aが閉側歯列12aとの歯合が終了してから全閉位置(図3(c)参照)までの障子閉速度は、0.20m/secであったことから明らかなように、引戸減速機構がない場合の障子閉じ速度が0.5~0.6m/secであったので、本実施の形態では、引戸減速機構がない場合の障子閉じ速度の半分以下であるから、全開位置から全閉位置まで、略同一の速度でゆっくり閉じることができる。
図5及び図6に示すように、スライダー17の一端側にはバネ19が取り付けてあり、スライダー17の他端側にはワイヤ16の一端が取り付けてあるから、ワイヤ16のケース11からの引き出し長さを調整することにより、バネ19の伸び量を調整できるので、内障子3の閉じる力の調整が容易にできる。
【0025】
図9(a)に示すように、開閉停止具35は、内障子3の開動作中又は図9(c)に示す内障子3の閉動作中に、動作方向と反対方向に内障子3を動かすことで、障子の動きを止め、図9(b)に示すようにケース側マグネット43と押圧部材側マグネット45が磁石の磁力により引かれて重なる位置を保持するので、任意の位置で内障子3の開きを保持できる。
【0026】
本願の第2の発明及び第3の発明について説明する。
本願の第2の発明は、引戸自動閉鎖機構13を引戸(内障子)3に備え、引戸自動閉鎖機構13は、スライダー17とバネ19とスライダー移動量調整機構18とを有し、引戸3が開くときに引戸3の開閉方向にスライダー17が移動して蓄積したバネ19の付勢力により引戸3を閉じる方向に移動するものであり、スライダー移動量調整機構18は、引戸3の移動量よりもスライダー17の移動量を小さくすることを特徴とする引戸3である。
この第2の発明によれば、引戸自動閉鎖機構13を引戸移動方向にコンパクトに収納可能である。
【0027】
本願の第3の発明は、引戸減速機構15を引戸(内障子)3に備え、引戸減速機構15は、ラック12とダンパギア23bを有し、引戸3が閉じるときにラック12とダンパギア23bが係合して、引戸3の閉じ速度を蓄積したバネ19の付勢力による閉じ速度よりも減速し且つ閉じ方向に向けて略一定の速度に調整することを特徴とする引戸である。
この第3の発明によれば、バネ19の付勢力にかかわらず、引戸3をゆっくり閉じることができる。
【0028】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、引戸3は掃出し窓の引き違い障子に限らず、室内の部屋を仕切る引戸であっても良い。
【符号の説明】
【0029】
3 内障子(引戸)
5 外障子(引戸)
13 引戸自動閉鎖機構
15 引戸減速機構
17 スライダー
19 バネ
12 ラック
23 ロータリーダンパ(ダンパー)
23b ダンパギア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11