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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 19/16 20060101AFI20230418BHJP
   D05B 27/04 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
D05B19/16
D05B27/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019114994
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021000229
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】武井 達男
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-52122(JP,A)
【文献】実開昭53-106150(JP,U)
【文献】特開2008-104836(JP,A)
【文献】米国特許第3570427(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 19/16
D05B 29/02
D05B 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針板の上側に設けられた上送り歯に送り動作をさせる上送り機構を備え、
前記上送り機構は、
上軸に一体回転可能に設けられた駆動カムと、
前記駆動カムの動力が伝達されることで作動するリンク機構と、
前記駆動カムの動力を前記リンク機構に伝達して前記リンク機構を作動させる伝達機構と、
前記上送り歯が取付けられると共に、前記リンク機構に連結され、前記リンク機構が作動することで前記上送り歯を上下動させる上送り足と、
前記伝達機構を、前記駆動カムの動力を前記リンク機構に伝達する伝達状態、又は前記駆動カムの動力を前記リンク機構に非伝達にする非伝達状態に切替える切替機構と、
を含んで構成され、
前記切替機構の切替えにより、前記伝達機構を非伝達状態にして、前記上送り足の上下動を停止させるミシン。
【請求項2】
前記伝達機構の前記非伝達状態では、前記上送り歯が、縫製対象物を押える押えよりも上側で停止することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記伝達機構は、スライド伝達部材を有しており、前記スライド伝達部材は、前記上軸と平行な送り上軸に揺動可能に設けられると共に、前記送り上軸の軸方向に移動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のミシン。
【請求項4】
前記切替機構は、
前記上軸に一体回転可能に設けられた停止カムと、
前記スライド伝達部材に連結され、作動することで前記スライド伝達部材を前記送り上軸の軸方向に移動させて前記駆動カムに連結させる第1位置と前記停止カムに連結させる第2位置とを切替える切替部材と、
を含んで構成され、
前記切替機構を作動させることで、前記第1位置と前記第2位置とを切替えて、前記停止カムに連結した前記スライド伝達部材の揺動を停止させて、前記伝達機構を非伝達状態にすることを特徴とする請求項3に記載のミシン。
【請求項5】
前記伝達機構は、
前記上軸と平行な送り上軸に揺動可能に設けられ、前記駆動カムに連結されると共に、前記駆動カムが回転することで揺動する第1伝達部材と、
前記リンク機構に連結されると共に、前記送り上軸に揺動可能に且つ前記送り上軸の軸方向に移動可能に設けられ、前記送り上軸の軸方向に移動することで前記第1伝達部材に連結する第1位置と前記第1伝達部材から離間して非連結になる第2位置とに切替わる第2伝達部材と、
を含んで構成されている請求項1又は請求項2に記載のミシン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のミシンは、上送り歯及び下送り歯を有しており、上送り歯及び下送り歯によって縫製対象物を後側へ送るようになっている。また、このミシンは、上送り停止機構を有しており、上送り歯の送り機能を停止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-185299号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ミシンでは、上送り停止機構によって上送り歯の送り機能を停止するときには、上送り歯の前後方向の駆動が停止されているものの、上送り歯の上下方向の駆動は継続している。これにより、ミシンにおいて、上送り歯の上下方向の駆動に起因する振動や騒音が発生する可能性がある。したがって、上記ミシンでは、振動や騒音を低減するという観点からすると、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、振動や騒音の低減に寄与することができるミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、針板の上側に設けられた上送り歯に送り動作をさせる上送り機構を備え、前記上送り機構は、上軸に一体回転可能に設けられた駆動カムと、前記駆動カムの動力が伝達されることで作動するリンク機構と、前記駆動カムの動力を前記リンク機構に伝達して前記リンク機構を作動させる伝達機構と、前記上送り歯が取付けられると共に、前記リンク機構に連結され、前記リンク機構が作動することで前記上送り歯を上下動させる上送り足と、前記伝達機構を、前記駆動カムの動力を前記リンク機構に伝達する伝達状態、又は前記駆動カムの動力を前記リンク機構に非伝達にする非伝達状態に切替える切替機構と、を含んで構成され、前記切替機構の切替えにより、前記伝達機構を非伝達状態にして、前記上送り足の上下動を停止させるミシンである。
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記伝達機構の前記非伝達状態では、前記上送り歯が、縫製対象物を押える押えよりも上側で停止することを特徴とするミシンである。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記伝達機構は、スライド伝達部材を有しており、前記スライド伝達部材は、前記上軸と平行な送り上軸に揺動可能に設けられると共に、前記送り上軸の軸方向に移動することを特徴とするミシンである。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記切替機構は、前記上軸に一体回転可能に設けられた停止カムと、前記スライド伝達部材に連結され、作動することで前記スライド伝達部材を前記送り上軸の軸方向に移動させて前記駆動カムに連結させる第1位置と前記停止カムに連結させる第2位置とを切替える切替部材と、を含んで構成され、前記切替機構を作動させることで、前記第1位置と前記第2位置とを切替えて、前記停止カムに連結した前記スライド伝達部材の揺動を停止させて、前記伝達機構を非伝達状態にすることを特徴とするミシンである。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記伝達機構は、前記上軸と平行な送り上軸に揺動可能に設けられ、前記駆動カムに連結されると共に、前記駆動カムが回転することで揺動する第1伝達部材と、前記リンク機構に連結されると共に、前記送り上軸に揺動可能に且つ前記送り上軸の軸方向に移動可能に設けられ、前記送り上軸の軸方向に移動することで前記第1伝達部材に連結する第1位置と前記第1伝達部材から離間して非連結になる第2位置とを切替える第2伝達部材と、を含んで構成されているミシンである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態のミシンによれば、振動や騒音の低減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態に係るミシンを示す左斜め前方から見た斜視図である。
図2図1に示されるミシンのブロック図である。
図3図1に示されるミシンの内部機構を模式的に示す模式図である。
図4】(A)は、図1に示される押えユニットを拡大して示す斜視図であり、(B)は、(A)に示される上送り歯と下送り歯との位置関係を、押え本体を取り除いた状態で示す斜視図である。
図5図1に示されるミシンに取付可能に構成された交換用押えユニットを示す斜視図である。
図6】(A)は、図3に示される切替機構を示す左側から見た側面図であり、(B)は、(A)の切替機構の上側から見た平面図であり、(C)は、(A)の切替機構の前側から見た正面図である。
図7】(A)は、図6に示される切替機構のスライド部材が第2位置に切替えられた状態を示す左側から見た側面図であり、(B)は、(A)の切替機構の上側から見た平面図であり、(C)は、(A)の切替機構の前側から見た正面図である。
図8】(A)は、切替機構が図6に示される状態のときの送り状態における上送り機構の動作を説明するための説明図であり、(B)は、切替機構が図6に示される状態のときの縫目形成状態における上送り機構の動作を説明するための説明図である。
図9】(A)は、切替機構が図7に示される状態のときの送り状態における上送り機構の動作を説明するための説明図であり、(B)は、切替機構が図7に示される状態のときの縫目形成状態における上送り機構の動作を説明するための説明図である。
図10】第1の実施の形態のミシンの動作を説明するためのフローチャートである。
図11】第2の実施の形態に係るミシンにおける伝達機構及び切替機構を示す右斜め前方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
以下、図1図10を用いて、第1の実施の形態に係るミシン10について説明する。なお、図面において適宜示される矢印UPは、ミシン10の上側を示し、矢印FRは、ミシン10の前側を示し、矢印RHは、ミシン10の右側(幅方向一方側)を示している。以下、上下、前後、左右の方向を用いて説明する場合は、ミシン10の上下、前後、左右を示すものとする。
【0014】
(ミシン10の全体について)
図1に示されるように、ミシン10は、全体として、前側から見た正面視で、左側へ開放された略U字形状に形成されている。具体的には、ミシン10は、ミシン10の下端部を構成し且つ左右方向に延在されたベッド部10Aと、ベッド部10Aの右端部から上側へ延出された脚部10Bと、脚部10Bの上端部から左側へ延出されたアーム部10Cと、を含んで構成されている。
【0015】
また、ミシン10のベッド部10Aの左上端部には、針板11が設けられており、針板11の上側には、後述する押えユニット70の押え73が設けられている。また、押え73の前側には、針棒(図示省略)に固着された針12が設けられている。そして、針板11及び押え73によって生地(縫製対象物)を上下に挟み込んで、針12が上下方向に往復移動することで、生地に対して縫い目を形成するようになっている。具体的には、針12が針板11(の上面)よりも下側に配置されるときに、生地に対して縫い目を形成する。一方、針12が針板11(の上面)よりも上側に配置されているときには、後述する下送り歯35及び上送り歯77によって、生地を後側へ送るようになっている。そして、以下の説明では、針12が針板11よりも下側に配置される状態を、縫目形成状態と称し、針12が針板11よりも上側に配置される状態を送り状態と称する。
【0016】
また、ミシン10は、タッチパネルを含む操作部13を有しており、操作部13は、ミシン10の脚部10Bに操作可能に露出されている。そして、使用者が操作部13を用いて、ミシン10の各種設定を行える構成になっている。また、ミシン10のアーム部10Cの前面には、操作ボタン14が設けられており、ミシン10の作動を開始又は停止するときには、使用者が操作ボタン14を押圧操作するようになっている。以下、ミシン10の詳細な構成について説明する。
【0017】
図3に示されるように、ミシン10は、押え機構20と、駆動機構25と、下送り機構30と、上送り機構50と、押えユニット70と、切替機構80と、制御部90(図2参照)と、を含んで構成されている。
【0018】
(押え機構20について)
押え機構20は、押え棒21を有している。押え棒21は、上下方向を軸方向とする略丸棒状に形成されて、ミシン10の骨格を構成するフレーム(図示省略)に上下方向に相対移動可能に支持されている。また、押え棒21の上下方向中間部には、後述するバネ解放機構66を構成する押え棒抱き67が固定されており、押え棒抱き67が、操作レバー22によって下側から支持されている。これにより、押え棒21の上下方向の位置が設定されている。また、操作レバー22は、左右方向を軸方向として回転操作可能に構成されている。そして、操作レバー22を図1に示される位置から上側へ回転操作することで、操作レバー22によって押え棒抱き67が持上げられて、押え棒21が、生地を押える押え位置から持上位置へ上昇するようになっている。これにより、生地に対する縫製開始前には、押え棒21を持上げることで、後述する押えユニット70と針板11との間に生地を載置できるようになっている。
【0019】
また、押え機構20は、レバー操作センサ23を有している。このレバー操作センサ23は、操作レバー22の回転操作を検知して、押え棒21の位置(押え位置、持上位置)を検知するようになっている。そして、レバー操作センサ23が、後述する制御部90へ検知信号を出力する構成になっている(図2参照)。
【0020】
押え棒21の上部には、押えバネ24が装着されている。押えバネ24は、圧縮コイルスプリングとして構成されている。そして、押えバネ24の上端部が、フレームに係止されている。一方、押えバネ24の下端部は、後述するバネ解放機構66に係止されており、押えバネ24の下側への付勢力が、バネ解放機構66を介して押え棒21に付与されている。
【0021】
(駆動機構25について)
駆動機構25は、針12、後述する下送り機構30、及び後述する上送り機構50を駆動させるための駆動部として構成されている。駆動機構25は、上軸26を有している。上軸26は、アーム部10Cの内部において左右方向を軸方向として配置されて、フレームに回転可能に支持されている。また、駆動機構25は、ミシンモータ27を有しており、ミシンモータ27は、左右方向を軸方向として脚部10Bの下端部内に配置されている。ミシンモータ27の出力軸及び上軸26の右端部には、モータベルト28が掛け回されており、上軸26とミシンモータ27とがモータベルト28よって連結されている。これにより、ミシンモータ27の駆動によって、上軸26が自身の軸回りに回転する構成になっている。
【0022】
また、上軸26の左端部には、図示しない針機構が連結されており、針機構によって上軸26の回転動力が針棒に伝達される構成になっている。これにより、上軸26が回転することで、針12(針棒)が上下方向に往復移動するようになっている。なお、針板11には、針12の針落ち位置に対応する位置において、針孔が貫通形成されており、針12が上下方向に往復移動するときには、針12が針孔内を挿通するようになっている。また、上軸26は、後述する上送り歯77を上下方向に移動させるための駆動源として構成されている。
【0023】
(下送り機構30について)
下送り機構30は、下軸31と、下送り歯35と、送り下軸37と、を含んで構成されている。
【0024】
<下軸31について>
下軸31は、ベッド部10Aの内部において左右方向を軸方向として配置されて、フレームに回転可能に支持されている。下軸31の右端部及び上軸26の右端側の部分には、連結ベルト32が掛け回されており、上軸26と下軸31とが連結ベルト32によって連結されている。これにより、ミシンモータ27が駆動することで、下軸31が上軸26と連動して回転するようになっている。
【0025】
下軸31の左端部には、第1下送りカム33が一体回転可能に設けられている。第1下送りカム33は、左右方向を板厚方向とする略円板状の板カムとして構成されており、第1下送りカム33の外周面がカム面として構成されている。そして、下軸31の軸心(第1下送りカム33の回転中心)が、第1下送りカム33の中心に対して偏心した位置に配置されている。
【0026】
下軸31の軸方向中間部には、第2下送りカム34が一体回転可能に設けられている。第2下送りカム34は、左右方向を板厚方向とする略三角形板状の板カムとして構成されており、第2下送りカム34の外周面がカム面として構成されている。そして、下軸31の軸心(第2下送りカム34の回転中心)が、第2下送りカム34の中心に対して偏心した位置に配置されている。
【0027】
<下送り歯35について>
図4(A)及び(B)にも示されるように、下送り歯35は、針板11の下側に設けられている。下送り歯35の上端部には、前後方向に延在された左右一対の第1歯部35Aが形成されており、第1歯部35Aは、下送り歯35の左右方向両端部に配置されている。また、下送り歯35の上端部には、前後方向に延在された3箇所の第2歯部35Bが形成されており、第2歯部35Bは、下送り歯35の後部で且つ一対の第1歯部35Aの間に配置されている。第1歯部35A及び第2歯部35Bには、それぞれ複数の歯が形成されている。さらに、第1歯部35Aの前端部は、針12の針落ち位置よりも前側に配置されており、第2歯部35Bの全体が、針12の針落ち位置よりも後側に配置されている。なお、針板11には、下送り機構30の作動時に第1歯部35A及び第2歯部35Bが挿通する、孔部が形成されている。
【0028】
図3に示されるように、下送り歯35の下側には、送り台36が設けられており、下送り歯35が送り台36に固定されている。送り台36は、後述する第1下送りアーム38に、左右方向を軸方向として回転可能に連結されている。また、送り台36の下側には、前述した第1下送りカム33が配置されており、第1下送りカム33のカム面が送り台36に当接している。これにより、第1下送りカム33が回転することで、送り台36(すなわち、下送り歯35)が上下方向に往復移動するようになっている。
【0029】
<送り下軸37について>
送り下軸37は、下軸31の前側において左右方向を軸方向として配置されて、フレームに回転可能に支持されている。送り下軸37の左端部には、第1下送りアーム38が一体回転可能に設けられ、送り下軸37の軸方向中間部には、第2下送りアーム39が一体回転可能に設けられ、送り下軸37の右端部には、第3下送りアーム40が一体回転可能に設けられている。これら第1下送りアーム38、第2下送りアーム39、及び第3下送りアーム40は、送り下軸37から送り下軸37の径方向外側へ延出されている。
【0030】
第1下送りアーム38の先端部には、前述した送り台36が回転可能に連結されている。これにより、送り下軸37が往復回転することで、第1下送りアーム38が送り下軸37の軸回りに揺動して、送り台36(すなわち、下送り歯35)が前後方向に往復移動する構成になっている。すなわち、下送り歯35には、第1下送りカム33の回転による上下方向の駆動と、第1下送りアーム38の揺動による前後方向の駆動と、が伝達されて、側面視で、下送り歯35が、楕円状の軌跡を描くように作動する構成になっている。具体的には、下送り歯35の第1歯部35A及び第2歯部35Bが、初期位置から針板11の上面から突出すると共に、後側へ移動する。また、下送り歯35の第1歯部35A及び第2歯部35Bが後側へ移動した後、下側へ移動して、針板11の上面よりも下側に配置される。その後、下送り歯35の第1歯部35A及び第2歯部35Bが前側へ移動して上昇することで初期位置に配置される。
【0031】
第2下送りアーム39の先端部には、二股リンク41の基端部が、左右方向を軸方向として揺動可能に連結されている。二股リンク41の先端部は、二股状に形成されている。そして、二股リンク41の先端部の内部に、前述した第2下送りカム34が配置されて、第2下送りカム34のカム面が二股リンク41の先端部の内周面に当接している。
【0032】
二股リンク41の近傍には、送り設定器42が設けられており、送り設定器42は、左右方向を軸方向としてフレームに回転可能に支持されている。送り設定器42には、溝部42Aが形成されており、この溝部42A内には、角駒43が摺動可能に挿入されている。そして、二股リンク41の先端部が、この角駒43に左右方向を軸方向として回転可能に連結されている。
【0033】
また、送り設定器42には、送り量設定モータ44が連結されており、送り量設定モータ44の駆動によって、送り設定器42が回転するように構成されている。そして、第2下送りカム34が下軸31の軸回りに回転すると、角駒43が、送り設定器42の溝部42A内を摺動して、二股リンク41が前後方向に揺動するようになっている。これにより、二股リンク41に連結された第2下送りアーム39が揺動して、送り下軸37が自身の軸回りを往復回転するようになっている。そして、送り下軸37の往復回転が、第1下送りアーム38を介して送り台36(下送り歯35)に伝達されて、下送り歯35が、前後方向に往復移動するようになっている。また、送り量設定モータ44の駆動によって送り設定器42が回転すると、溝部42Aの傾斜角度が変化する。これにより、二股リンク41の揺動量が変更されると共に、送り下軸37の往復回転量が変更され、下送り歯35の前後方向の送り量が変更される構成になっている。
【0034】
(上送り機構50について)
上送り機構50は、後述する押えユニット70の上送り歯77を駆動させるための送り駆動機構部51と、押え棒21に対する押えバネ24の付勢力を解放させるためのバネ解放機構66と、を含んで構成されている。また、上送り機構50は、後述する切替機構80を有している。
【0035】
<送り駆動機構部51について>
送り駆動機構部51は、駆動カム52と、送り上軸53と、上送りアーム54と、上送り足56と、伝達機構60と、「リンク機構」としての送りリンク機構61と、を含んで構成されている。
【0036】
[駆動カム52について]
図3図6、及び図7に示されるように、駆動カム52は、上軸26の左端部に一体回転可能に設けられている。駆動カム52は、左右方向を板厚方向とする略円板状の板カムとして構成されており、駆動カム52の外周面がカム面として構成されている。そして、上軸26の軸心(駆動カム52の回転中心)が、駆動カム52の中心に対して偏心した位置に配置されている。
【0037】
[送り上軸53について]
送り上軸53は、上軸26の後側において左右方向を軸方向として配置され、フレームに回転可能に支持されている。送り上軸53と、下送り機構30の送り下軸37と、の間には、連結リンク機構45(図3参照)が設けられており、送り上軸53が、連結リンク機構45によって送り下軸37に連結されている。具体的には、連結リンク機構45の一端部が、送り上軸53の右端部に連結されており、連結リンク機構45の他端部が、送り下軸37の第3下送りアーム40の先端部に連結されている。これにより、送り下軸37の往復回転に連動して、送り上軸53が、自身の軸回りに往復回転するようになっている。また、送り上軸53は、後述する上送り歯77を前後方向に移動させるための駆動源として構成されている。
【0038】
[上送りアーム54について]
図3に示されるように、上送りアーム54は、上下方向に延在されており、上送りアーム54の上端部が、送り上軸53の左端部に一体回転可能に固定されている。上送りアーム54の下端部は、前後方向に延在された送りリンク55の一端部に、左右方向を軸方向として回転可能に連結されている。
【0039】
[上送り足56について]
上送り足56は、上送りアーム54の下方側に配置されており、左側から見た側面視で、略L字形状に形成されている。そして、上送り足56の上端部が、送りリンク55の他端部に、左右方向を軸方向として回転可能に連結されている。また、図4(A)に示されるように、上送り足56の下端部における前端部には、連結体57が左右方向を軸方向として回転可能に連結されている。この連結体57は、押え棒21の下端側の部分に、上下方向に相対移動可能に連結されている。これにより、送り上軸53が軸回りに往復回転することで、上送り足56が、連結体57との連結部を中心に回転する構成になっている。
【0040】
また、上送り足56の下端部には、後述する押えユニット70を取付けるための前後一対の連結シャフト58R及び連結シャフト58Fが設けられている。連結シャフト58R及び連結シャフト58Fは、左右方向を軸方向とした円柱状に形成されて、上送り足56から左側へ突出している。
【0041】
[伝達機構60について]
図6及び図7に示されるように、伝達機構60は、「スライド伝達部材」としてのスライドアーム60Aを有している。スライドアーム60Aは、略矩形ブロック状に形成されて、上下方向に延在されている。そして、スライドアーム60Aの上端部が、送り上軸53に揺動可能に支持されている。スライドアーム60Aの右端部における下端部には、前側へ延出されたアーム部60A1が一体に形成されている。また、スライドアーム60Aは、図示しない付勢バネによって前側(駆動カム52側)へ付勢されており、スライドアーム60Aにおけるアーム部60A1の先端部が、駆動カム52のカム面に当接している。これにより、スライドアーム60Aが駆動カム52に連結されており、駆動カム52が回転することで、スライドアーム60Aが、カム面の形状に対応して、送り上軸53の軸回りを揺動するようになっている。また、スライドアーム60Aは、送り上軸53の軸方向において送り上軸53に対して相対移動可能に構成されている。
【0042】
スライドアーム60Aの上端部には、上側へ突出した連結突起60A2が一体に形成されている。スライドアーム60Aの下端部には、連結軸60Bが一体揺動可能に設けられている。連結軸60Bは、左右方向を軸方向とした円柱状に形成されて、スライドアーム60Aから左側へ延出されている。これにより、スライドアーム60Aの揺動時には、連結軸60Bが、送り上軸53の軸回りに揺動する構成になっている。
【0043】
[送りリンク機構61について]
図3に示されるように、送りリンク機構61は、連結リンク62と、三角リンク63と、切替リンク65と、を含んで構成されている。
【0044】
連結リンク62は、スライドアーム60Aの連結軸60Bの前側に配置されており、連結リンク62の一端部が、連結軸60Bに回転可能に連結されている。
【0045】
三角リンク63は、左右方向を板厚方向とした略三角形プレート状に形成されて、連結リンク62の前側に配置されている。そして、三角リンク63の上端部が、連結リンク62の他端部に左右方向を軸方向として回転可能に連結されている。これにより、三角リンク63とスライドアーム60Aとが連結リンク62によって連結されている。そして、駆動カム52の回転時に、スライドアーム60Aが、駆動カム52のカム面の形状に対応して、揺動することで、三角リンク63が作動する構成になっている。
【0046】
三角リンク63の下端部には、解放リンク64の一端部が左右方向を軸方向として回転可能に連結されており、解放リンク64の他端部は、後述するバネ解放機構66のバネホルダ69に回転可能に連結されている。
【0047】
切替リンク65は、三角リンク63の下側において、上下方向に延在されている。そして、切替リンク65の上端部が、三角リンク63の下端部に左右方向を軸方向として回転可能に連結されている。一方、切替リンク65の下端部は、前述した連結体57に左右方向を軸方向として回転可能に連結されている。これにより、切替リンク65が、連結体57を介して上送り足56に連結されている。そして、駆動カム52の回転時に、スライドアーム60Aが、駆動カム52のカム面の形状に対応して揺動し、三角リンク63が解放リンク64との連結部を中心に回転することで、切替リンク65及び連結体57が上下方向に往復移動するようになっている。
【0048】
<バネ解放機構66について>
バネ解放機構66は、押え棒抱き67と、バネ受け68と、バネホルダ69と、を含んで構成されている。
【0049】
[押え棒抱き67について]
押え棒抱き67は、前後方向に延在されている。そして、押え棒抱き67の一端部が、押え棒21の長手方向中間部に固定されており、押え棒抱き67の他端部が、前述した操作レバー22によって下側から支持されている。
【0050】
[バネ受け68について]
バネ受け68は、上下方向を軸方向とした略円筒状に形成されている。そして、押え棒21が、バネ受け68の内部に相対移動可能に挿通されており、バネ受け68が、押え棒抱き67の一端部の上側に隣接して配置されている。
【0051】
[バネホルダ69について]
バネホルダ69は、前側へ開放された略U字形板状に形成されている。そして、バネホルダ69の上端部及び下端部が、押え棒21に上下方向に相対移動可能に連結されている。また、バネホルダ69の上端部と下端部との間には、押え棒抱き67の一端部及びバネ受け68が配置されている。さらに、バネホルダ69の上端部は、押えバネ24の下端部を下側から支持しており、押えバネ24の付勢力によってバネホルダ69が下側へ付勢されている。これにより、バネホルダ69の上端部が、バネ受け68の上端に当接して、押えバネ24の付勢力が、バネホルダ69、バネ受け68、及び押え棒抱き67を介して押え棒21に伝達される構成になっている。なお、バネホルダ69の下端部は、押え棒抱き67に対して下側に離間して配置されている。
【0052】
また、バネホルダ69には、前述した解放リンク64の他端部が、左右方向を軸方向として、回転可能に連結されている。そして、詳細については後述するが、後述する上送り歯77が針板11又は下送り歯35に当接することで、送りリンク機構61によってバネ解放機構66が作動するようになっている。また、バネ解放機構66が作動するときには、バネホルダ69が、押えバネ24の付勢力に抗して押え棒21に対して上側へ相対移動するようになっている。そして、このときには、バネホルダ69の上端部がバネ受け68から上側へ離間する。このため、押え棒21に対する押えバネ24の付勢力が解放される構成になっている。
【0053】
(押えユニット70について)
図4(A)及び(B)に示されるように、押えユニット70は、生地を上側から押えるための押え本体71と、前述した下送り歯35と共に生地を後側へ送るための上送り歯ユニット75と、を含んで構成されている。そして、上送り歯ユニット75が、押え本体71に連結されて、押え本体71及び上送り歯ユニット75が、押えユニット70としてユニット化されている。
【0054】
<押え本体71について>
押え本体71は、押えホルダ72と、押え73と、を有している。
【0055】
押えホルダ72は、後側から見て、全体として下側へ開放された略U字形ブロック状に形成されている。この押えホルダ72の前端部には、固定溝72Aが左右方向に貫通形成されており、固定溝72Aは、側面視で、前側へ開放された略U字形状に形成されている。そして、固定ネジSC1が固定溝72A内に挿入されて、固定ネジSC1によって押えホルダ72が押え棒21の下端部に締結固定されている。これにより、押えホルダ72(押え本体71)が、押え棒21に着脱可能に固定されている。
【0056】
押えホルダ72の下端部には、後述する押え73を取付けるための左右一対の押え取付部72Bが一体に形成されており、押え取付部72Bは、押えホルダ72の下端部の幅方向両端部から下側へ延出している。
【0057】
押え73は、略上下方向を板厚方向とし且つ前後方向を長手方向とした略矩形板状に形成されており、押え73の前端部が、側面視で前側へ向かうに従い上側へ滑らかに傾斜されている。また、押え73の左右の側部には、左右一対の取付壁73Aが一体に形成されており、取付壁73Aは、押え73から上側へ突出されている。そして、取付壁73Aが、左右方向を軸方向とした取付ピン74によって、押えホルダ72の押え取付部72Bに連結されている。
【0058】
<上送り歯ユニット75について>
上送り歯ユニット75は、上送りホルダ76と、上送り歯77と、を含んで構成されている。
【0059】
上送りホルダ76は、側面視で略クランク形状に形成されて、押えホルダ72内に配置されている。上送りホルダ76の上端の後端部には、上側へ延出され且つ前側へ屈曲された連結片76Aが一体に形成されている。これにより、上送りホルダ76の上端部には、前側へ開放されたリヤ連結溝76Bが形成されており、リヤ連結溝76Bには、前述した上送り足56の後側の連結シャフト58Rが嵌入されている。また、上送りホルダ76の上端部には、リヤ連結溝76Bの前側において、フロント連結溝76Cが形成されており、フロント連結溝76Cは左右方向に貫通されている。このフロント連結溝76Cは、側面視で、上側へ開放した略U字形状に形成されており、前述した上送り足56における前側の連結シャフト58Fがフロント連結溝76C内に嵌入されている。これにより、上送りホルダ76が、上送り足56(送り駆動機構部51)に着脱可能に取付けられている。
【0060】
また、上送りホルダ76の上端部には、フロント連結溝76Cの後側において、上側へ突出した突起76Dが形成されている。なお、上送りホルダ76は、押えホルダ72内に設けられた支持部材(図示省略)によって、揺動可能に支持されている。
【0061】
上送り歯77は、下送り歯35に対応して、平面視で、前側へ開放された略U字形ブロック状に形成されている。そして、上送り歯77の左右方向中間部が、左右方向を軸方向とする連結ピン78によって、上送りホルダ76の下端部に連結されている。また、上送り歯77の下面には、下送り歯35の第1歯部35A及び第2歯部35Bに対応する歯部が形成されている。これにより、上送り歯77の送り動作時には、下送り歯35における第2歯部35Bと上送り歯77とによって、生地を上下に挟み込んで、生地を送るように構成されている。
【0062】
ここで、上述のように、押えユニット70は、押え棒21及び上送り足56に着脱可能に取付けられている。このため、ミシン10では、各種の押えユニットを、交換して取付けることができるようになっている。一例として、ミシン10には、交換押えユニット110が取付可能に構成されている。以下、交換押えユニット110について説明する。
【0063】
図5に示されるように、交換押えユニット110は、押えユニット70と以下の点を除いて同様に構成されている。なお、図5では、交換押えユニット110において、押えユニット70と同様に構成されている部材には、同一の符号を付している。すなわち、交換押えユニット110では、本実施の形態の上送り歯ユニット75が省略されている。換言すると、交換押えユニット110は、生地を上側から押さえる押え本体71(上送りホルダ76及び押え73)のみを有する構成になっている。
【0064】
図4及び図5に示されるように、ミシン10は、装着された押えユニットを検知する押え検知センサ79を有している。この押え検知センサ79は、上送り足56の下端部において、連結シャフト58Rと連結シャフト58Fとの間に設けられている。押え検知センサ79は、レバー式のセンサとして構成されている。具体的には、押え検知センサ79は、センサ本体79Aと、センサ本体79Aから下側へ延出されたレバー部79Bと、を含んで構成されている。レバー部79Bは、左右方向を軸方向としてセンサ本体79Aに回転可能に連結されている。
【0065】
また、押え検知センサ79は、後述する制御部90に電気的に接続されている(図2参照)。さらに、押え検知センサ79では、レバー部79Bが回転することで、検知信号(オン信号)を制御部90へ出力する構成になっている。具体的には、交換押えユニット110がミシン10に装着されたときには、レバー部79Bが押圧されず、押え検知センサ79から制御部90へオフ信号を出力するようになっている。また、押えユニット70がミシン10に装着されたときには、レバー部79Bが、押えユニット70の突起76Dによって押圧されて、初期位置から回転角θ1分だけ回転するようになっている(図4(A)参照)。これにより、押え検知センサ79から制御部90へオン信号を出力するようになっている。
【0066】
(切替機構80について)
切替機構80は、前述した上送り機構50の一部を構成している。図6及び図7に示されるように、切替機構80は、停止カム81と、「切替部材」としてのスライド部材82と、切替ギヤ84と、切替モータ85と、を含んで構成されている。
【0067】
<停止カム81について>
停止カム81は、左右方向を板厚方向とした円形状の板カムとして構成されている。停止カム81は、上軸26に一体回転可能に設けられており、駆動カム52の右側に隣接して配置されている。なお、本実施の形態では、停止カム81が駆動カム52と一体に形成されている。停止カム81の外周面は、カム面として構成されている。また、停止カム81は、上軸26と同軸上に配置されている。すなわち、上軸26の軸心から停止カム81のカム面までの距離が一定に設定されている。さらに、上軸26の軸心から停止カム81のカム面までの距離は、上軸26の軸心から駆動カム52のカム面までの最小距離と一致している。
【0068】
<スライド部材82について>
スライド部材82は、前後方向を板厚方向とし且つ左右方向を長手方向とする略長尺板状に形成されている。スライド部材82には、複数(本実施の形態では、3箇所)のスライド孔82Aが貫通形成されており、スライド孔82Aは、左右方向を長手方向とする長孔状に形成されている。また、スライド部材82の後側には、取付プレート83が設けられており、取付プレート83は、ミシン10のフレームに固定されている。この取付プレート83には、スライド部材82のスライド孔82Aに対応する位置において、ボス83Aが設けられており、ボス83Aは、前後方向を軸方向する円柱状に形成されて、取付プレート83から前側へ突出している。そして、ボス83Aがスライド孔82A内に挿入されて、スライド部材82が取付プレート83に左右方向にスライド可能に連結されている。
【0069】
スライド部材82の左端部には、前側へ屈曲されたアーム連結部82Bが形成されている。アーム連結部82Bは、前述したスライドアーム60Aの上側に隣接して配置されて、スライドアーム60Aの連結突起60A2に連結されている。これにより、スライド部材82が左右方向にスライドすることで、スライドアーム60Aが送り上軸53の軸方向に沿って左右に移動する構成になっている。具体的には、スライドアーム60Aが、第1位置(図6(B)及び(C)に示される位置)と、第1位置から右側へ移動した第2位置(図7(B)及び(C)に示される位置)と、の間を移動する構成になっている。そして、スライドアーム60Aの第1位置では、スライドアーム60Aにおけるアーム部60A1の先端部が駆動カム52のカム面に当接して、スライドアーム60Aと駆動カム52とが連結する構成になっている。また、スライドアーム60Aの第2位置では、アーム部60A1の先端部が停止カム81のカム面に当接して、スライドアーム60Aと停止カム81とが連結する構成になっている。
【0070】
スライド部材82の右端部には、連結軸部82Cが一体に設けられている。連結軸部82Cは、前後方向を軸方向とした円柱状に形成されて、スライド部材82から前側へ突出している。
【0071】
<切替ギヤ84について>
切替ギヤ84は、前後方向を板厚方向とした略扇形板状に形成されて、スライド部材82の右端部の前側に配置されている。切替ギヤ84の基端部は、連結軸部82Cの上側の位置において、取付プレート83に設けられた支持軸83Bによって、前後方向を軸方向として回転可能に支持されている。
【0072】
切替ギヤ84の基端部には、下側へ延出されたギヤ連結片84Aが一体に形成されている。このギヤ連結片84Aには、長孔状の連結孔84Bが貫通形成されている。そして、連結孔84Bの内部に、スライド部材82の連結軸部82Cが相対移動可能に挿入されている。これにより、切替ギヤ84が支持軸83Bの軸回りに回転することで、スライド部材82及びスライドアーム60Aが左右方向に移動するようになっている。
【0073】
切替ギヤ84の円弧状の先端部は、ギヤ部84Cとして構成されており、ギヤ部84Cには、複数のギヤ歯が形成されている。
【0074】
<切替モータ85について>
切替モータ85は、前後方向を軸方向として取付プレート83の後面に固定されている。切替モータ85の出力軸85Aは、取付プレート83よりも前側に配置されて、切替ギヤ84のギヤ部84Cの径方向外側に配置されている。切替モータ85の出力軸85Aには、円筒状のモータギヤ86が固定されており、モータギヤ86の外周部には、複数のギヤ歯が形成されている。そして、モータギヤ86のギヤ歯と、切替ギヤ84のギヤ歯とが噛合されており、切替モータ85の駆動によって切替ギヤ84が回転する構成になっている。
【0075】
(制御部90について)
図2に示されるように、制御部90には、前述した、操作部13と、レバー操作センサ23と、ミシンモータ27と、送り量設定モータ44と、押え検知センサ79と、切替モータ85と、が電気的に接続されている。そして、制御部90は、押え検知センサ79の検出信号に基づいて、切替モータ85を作動制御するようになっている。
【0076】
(作用及び効果)
次に、切替機構80、下送り機構30、及び上送り機構50の各動作と、各種押えユニットが押え棒21に取付けられたときのミシン10の動作を説明しつつ、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0077】
<切替機構80の動作について>
図6に示されるように、スライド部材82が第1位置に配置されている状態では、上送り機構50のスライドアーム60Aが、駆動カム52の後側に配置されて、スライドアーム60Aにおけるアーム部60A1の先端部が、駆動カム52のカム面に当接している。これにより、伝達機構60が、駆動カム52の回転動力を送りリンク機構61へ伝達する伝達状態になっている。そして、制御部90の制御によって、切替モータ85が駆動すると、切替モータ85のモータギヤ86が、前側から見た正面視で、時計回りに回転する。これにより、モータギヤ86に噛合された切替ギヤ84が、正面視で、支持軸83Bの軸回りに反時計回りに回転する。
【0078】
切替ギヤ84が支持軸83Bの軸回りに反時計回りに回転すると、切替ギヤ84に連結軸部82Cを介して連結されたスライド部材82が、右側へスライドして、第2位置に配置される。これにより、図7に示されるように、スライド部材82に連結されたスライドアーム60Aが、スライド部材82と共に右側へスライドする。そして、この状態では、スライドアーム60Aが、停止カム81の後側に配置されて、アーム部60A1の先端部が、停止カム81のカム面に当接する。これにより、伝達機構60が、駆動カム52の回転動力を送りリンク機構61へ非伝達する非伝達状態に切替わる。換言すると、切替機構80によって、上軸26から上送り機構50への動力伝達経路が、駆動カム52から停止カム81に切替わる。
【0079】
なお、スライド部材82の第2位置において、制御部90の制御によって、切替モータ85のモータギヤ86を、正面視で、反時計回りに回転させることで、スライド部材82が第1位置に配置される。これにより、伝達機構60が、非伝達状態から伝達状態に切替わる。
【0080】
<下送り機構30の動作について>
下送り機構30が動作するときには、ミシンモータ27の駆動によって上軸26が回転することで、上軸26の回転に連動して下軸31が回転する。これにより、下送り機構30が作動して、下送り歯35が、針板11よりも上側へ突出し且つ後側へ変位しながら、生地を後側へ送る。具体的には、針12が針板11よりも上側に配置されている送り状態のときには、下送り歯35の上端が針板11の上面と一致する位置に上昇して、下送り歯35の生地に対する送りが開始される。その後、下送り歯35が、さらに上昇し且つ後側へ変位する。これにより、下送り歯35の上端が針板11の上面よりも突出して、生地を後方側へ送る。そして、下送り歯35の上端が針板11の上面と略一致する位置へ下降して、下送り歯35の生地に対する送りが完了する。一方、針12が針板11よりも下側に配置される縫目形成状態のときには、下送り歯35が下側へ変位して、針板11よりも下側へ下降する。そして、下送り歯35が前側へ変位して、生地を送る前の状態に復帰する。
【0081】
<スライド部材82が第1位置に配置されたときの上送り機構50の動作について>
上送り機構50の送り駆動機構部51は、下送り機構30の作動に伴って作動する。具体的には、図8(A)に示されるように、針12が針板11よりも上側に配置された送り状態のときには、送り上軸53が、自身の軸回りを反時計回りに回転する。これにより、上送りアーム54が、送り上軸53を中心として反時計回りに回転すると共に、上送り足56が連結体57との連結部を中心に回転する。その結果、上送り足56に上送りホルダ76を介して連結された上送り歯77が、後側へ変位する。
【0082】
また、切替機構80によってスライドアーム60Aが第1位置に配置された状態では、伝達機構60が、駆動カム52の回転動力を送りリンク機構61に伝達にする伝達状態になっている。そして、針12が針板11よりも上側に配置された送り状態のときには、スライドアーム60Aが、駆動カム52のカム面に伴って、送り上軸53を中心として時計回りに回転する。このとき、スライドアーム60Aの連結軸60Bには、三角リンク63が連結リンク62によって連結されているため、三角リンク63が解放リンク64との連結部を中心に反時計回りに回転する。このため、三角リンク63に連結された切替リンク65が下側へ変位して、切替リンク65に連結された連結体57及び上送り足56が下側へ変位する。これにより、上送り足56に上送りホルダ76を介して連結された上送り歯77が、下側へ変位して、下送り歯35に直接的に又は間接的に(生地を介して)当接する。これにより、上送り歯77及び下送り歯35によって生地を挟み込みながら、生地を後側へ送る。
【0083】
また、スライドアーム60Aが送り上軸53を中心として時計回りにさらに回転するときには、下送り歯35が上送り歯77に直接的に又は間接的に当接しているため、下送り歯35によって上送り歯77の下側への変位が制限されている。このため、上送り歯77に上送りホルダ76及び上送り足56を介して連結された連結体57(すなわち、切替リンク65)の下側への変位が制限される。これにより、三角リンク63が切替リンク65との連結部を中心として反時計回りに回転して、解放リンク64が上側へ変位する。その結果、バネ解放機構66が作動する。具体的には、解放リンク6によって、バネホルダ69が押え棒21に対して上側へ持ち上げられて、押えバネ24による押え棒21に対する付勢力が、解放される。
【0084】
そして、スライドアーム60Aの駆動カム52におけるカム面への当接部位が、当該カム面の最大半径部から最小半径部側へ切替り、スライドアーム60Aの揺動が反転する。これにより、バネホルダ69が付勢力を解放した位置から下側へ変位して、バネ受け68に当接する位置に復帰する。その結果、生地に対する送り完了時には、押えバネ24による押え棒21に対する付勢力が付与された状態に復帰する。
【0085】
一方、図8(B)に示されるように、針12が針板11よりも下側に配置された縫目形成状態のときには、送り上軸53が、自身の軸回りを時計回りに回転する。これにより、上送りアーム54が、送り上軸53を中心として時計回りに回転すると共に、上送り足56が連結体57との連結部を中心に回転する。その結果、上送り足56に上送りホルダ76を介して連結された上送り歯77が、前側へ変位する。なお、この縫目形成状態のときには、下送り歯35が、針板11よりも下側に配置されて、上送り歯77との当接状態が解除される。
【0086】
さらに、駆動カム52には、スライドアーム60Aにおけるアーム部60A1の先端部が当接しているため、駆動カム52が回転することで、スライドアーム60Aが送り上軸53を中心に反時計回りに回転する。これにより、スライドアーム60Aに連結リンク62を介して連結された三角リンク63が解放リンク64との連結部を中心に時計回りに回転する。このため、三角リンク63に連結された切替リンク65が、上側へ変位すると共に、連結体57及び上送り足56が上側へ変位する。よって、上送り足56及び上送りホルダ76を介して連結された上送り歯77も上方側へ変位して、上送り歯77が生地に対して上側へ離間する。
【0087】
以上により、スライド部材82が第1位置に配置されたときには、上送り機構50(送り駆動機構部51)によって上送り歯77が前後方向及び上下方向に往復駆動して、上送り歯77の送り動作が許可された状態になる。
【0088】
<スライド部材82が第2位置に配置されたときの上送り機構50の動作について>
図9(A)及び(B)に示されるように、切替機構80によってスライドアーム60Aが第2位置に配置された状態では、伝達機構60が、駆動カム52の回転動力を送りリンク機構61に非伝達にする非伝達状態になっている。ここで、停止カム81は、上軸26と同軸上に配置されているため、上軸26の軸心から停止カム81のカム面までの距離が一定に設定されている。このため、上軸26の回転によって停止カム81が回転しても、スライドアーム60Aが揺動しない。これにより、伝達機構60の非伝達状態では、送りリンク機構61が作動せず、上送り歯77の上下方向の往復移動が停止される。すなわち、上送り機構50において、上送り歯77に対する上下方向の駆動が停止された状態になる。換言すると、上送り歯77の送り動作が停止された状態になる。
【0089】
また、上軸26の軸心から停止カム81のカム面までの距離が、上軸26の軸心から駆動カム52のカム面までの最小距離と一致している。このため、上送り歯77が下送り歯35に対して上側に離間した位置に配置される。具体的には、上送り歯77が、送り動作をする下送り歯35に当接しない位置に配置される。これにより、バネ解放機構66の作動が停止する状態になる。つまり、縫目形成状態及び送り状態の何れの状態においても、押え73から生地に押え圧が付与される。これにより、下送り歯35と押え73とによって、生地を挟み込んで、後側へ送る。なお、この状態では、上送り歯77が、送り動作をする下送り歯35に当接しない位置において、前後方向に往復移動する。
【0090】
<各種押えユニットが押え棒21に取付けられたときのミシン10の動作について>
次に、図10に示されるフローチャートを用いて、各種押えユニットが押え棒21に取付けられたときのミシン10の動作について説明する。なお、以下の説明では、ミシン10の作動前の状態として、切替機構80のスライド部材82が第1位置に配置されている状態とする。すなわち、伝達機構60が、駆動カム52の回転動力を送りリンク機構61に伝達にする伝達状態になっている。
【0091】
始めに、ステップS1において、使用者がミシン10の操作ボタン14を用いてスタート操作を行うと、ミシン10の作動が開始される。
【0092】
そして、ステップS1の処理後、ステップS2に移行する。ステップS2では、制御部90が、押え検知センサ79の検知信号に基づいて、押え棒21に装着された押えの種類を判別する。ステップS2において、交換押えユニット110が押え棒21に装着された場合(ステップS2の「オフ信号を検出」の場合)は、ステップS3に移行する。
【0093】
ステップS3では、切替機構80によって、伝達機構60を非伝達状態にする。ここでは、スライド部材82が第1位置に配置されているため、伝達機構60が伝達状態になっている。このため、制御部90の制御によって切替機構80の切替モータ85が作動して、スライド部材82が第1位置から第2位置へスライドする。これにより、伝達機構60が非伝達状態になる。ステップS3の処理後、ステップS4に移行する。
【0094】
ステップS4では、制御部90の制御によってミシンモータ27が駆動して、生地に対する縫製が開始される。すなわち、上軸26の回転によって針機構が駆動して、針12が上下方向に往復移動する。これにより、生地に縫い目が形成される。また、このときには、上軸26の回転によって下送り機構30が駆動して、下送り歯35が側面視で楕円状の軌跡を描くように作動する。
【0095】
そして、ステップS4の処理後、ステップS5に移行する。ステップS5において、使用者がミシン10の操作ボタン14を用いてストップ操作を行うと、ステップS6に移行する。そして、ステップS6では、制御部90の制御によって、ミシンモータ27の駆動が停止され、ミシンモータ27の駆動停止後、処理を終了する。
【0096】
以上により、上送り歯77を備えていない交換押えユニット110が押え棒21に装着された場合には、伝達機構60を非伝達状態にし、送りリンク機構61の作動を停止した状態にして、生地に対する縫製が行われる。
【0097】
一方、ステップS2において、押えユニット70が押え棒21に装着された場合(ステップS2の「オン信号を検出」の場合)は、ステップS7に移行する。
【0098】
ステップS7では、切替機構80によって、伝達機構60を伝達状態にする。ここでは、スライド部材82が第1位置に配置されているため、伝達機構60が伝達状態になっている。このため、切替機構80の切替モータ85が作動せずに、スライド部材82の第1位置に配置された状態が維持される。これにより、伝達機構60の伝達状態が維持される。そして、ステップS7の処理後、ステップS8に移行する。
【0099】
ステップS8では、ステップS4と同様の処理が行われる。すなわち、制御部90の制御によってミシンモータ27が駆動して、生地に対する縫製が開始される。
【0100】
そして、ステップS8の処理後、ステップS9に移行する。ステップS9において、使用者がミシン10の操作ボタン14を用いてストップ操作を行うと、ステップS10に移行する。そして、ステップS10では、制御部90の制御によって、ミシンモータ27の駆動が停止され、ミシンモータ27の駆動停止後、処理を終了する。
【0101】
以上により、上送り歯77を備えた押えユニット70が押え棒21に装着された場合には、伝達機構60を伝達状態にし、送りリンク機構61の作動を許可した状態にして、生地に対する縫製が行われる。つまり、通常上送り歯101の送り動作が許可された状態で、生地に対する縫製が行われる。
【0102】
なお、上記ミシン10の動作では、制御部90の制御によって切替機構80が自動で作動するようになっているが、使用者の操作部13への操作によって切替機構80を作動させてもよい。例えば、押えユニット70が押え棒21に装着され、且つ上送り歯77の送り動作を許可した状態において、使用者の操作部13への操作によって切替機構80を作動させて、上送り歯77の送り動作を停止させてもよい。これにより、上送り歯77による送り動作が不要であるときには、使用者によって上送り歯77の送り動作を停止させることができる。
【0103】
以上説明したように、本実施の形態のミシン10では、切替機構80が、上送り機構50における伝達機構60のスライドアーム60Aに連結されている。そして、切替機構80が作動することで、スライドアーム60Aが、駆動カム52の動力を送りリンク機構61に伝達する伝達状態、又は駆動カム52の動力を送りリンク機構61に非伝達にする非伝達状態に切替えられる。このため、切替機構80によって、スライドアーム60Aを非伝達状態に切替えることで、送りリンク機構61の動作を停止させることができると共に、上送り歯77の上下動を停止させることができる。したがって、例えば、上送り歯77を有しない交換押えユニット110が押え棒21に装着されたときには、スライドアーム60Aを非伝達状態にすることで、送りリンク機構61の動作を停止することができる。また、例えば、上送り歯77を有する押えユニット70が押え棒21に装着されたときでも、スライドアーム60Aを非伝達状態にすることで、送りリンク機構61の動作を停止することができる。したがって、ミシン10の振動や騒音の低減に寄与することができる。
【0104】
また、伝達機構60(スライドアーム60A)の非伝達状態では、上送り歯77が、押え73よりも上側に配置される。このため、押えユニット70が押え棒21に装着された状態で、上送り歯77の上下駆動を停止することができる。これにより、例えば、上送り歯77の不使用時に、上送り歯77の上下運動による振動や騒音を低減するために、押えユニット70を押え棒21から取外して、交換押えユニット110を押え棒21に装着させる必要がなくなる。したがって、使用者に対する利便性を向上することができる。
【0105】
また、切替機構80は、上軸26に一体回転可能に設けられた停止カム81と、スライドアーム60Aに連結されたスライド部材82と、を含んで構成されている。さらに、切替モータ85の駆動によってスライド部材82が作動することで、スライドアーム60Aが送り上軸53の軸方向に沿って移動して、駆動カム52又は停止カム81に連結される。そして、スライドアーム60Aが停止カム81に連結されることで、スライドアーム60Aの揺動が停止されて、上送り歯77の上下方向の移動が停止する。これにより、停止カム81の半径を適宜設定することで、上送り歯77を下送り歯35に当接しない位置に配置して、バネ解放機構66の作動を停止させることができる。
【0106】
また、本実施の形態では、上送り足56の下端部に、押え検知センサ79が設けられており、押え検知センサ79によって、押え棒21に取付けられた、押えユニットの種類を検出するようになっている。このため、例えば、上送り歯77を備えていない交換押えユニット110が押え棒21に取付けられたときには、制御部90によって切替機構80を作動させて、送りリンク機構61の作動を自動で停止させることができる。これにより、使用者に対する利便性を効果的に向上することができる。
【0107】
(第2の実施の形態)
図11を用いて第2の実施の形態に係るミシン200について説明する。第2の実施の形態のミシン200では、以下に示す点を除いて、第1の実施の形態のミシン10と同様に構成されている。なお、図11では、第1の実施の形態のミシン10と同様に構成されている部材には、同一の符号を付している。
【0108】
すなわち、ミシン200では、切替機構80において停止カム81が省略されている。また、ミシン200では、上送り機構50が、第1の実施の形態の伝達機構60の代わりに、伝達機構210を有している。伝達機構210は、「第1伝達部材」としての伝達アーム212と、「第2伝達部材」としての連結スライドアーム214と、を含んで構成されている。
【0109】
伝達アーム212は、略矩形ブロック状に形成されて、駆動カム52の後側において上下方向に延在されている。そして、伝達アーム212の上端部が、送り上軸53に揺動可能支持されている。伝達アーム212の下端部には、前側へ延出されたアーム部212Aが形成されている。また、伝達アーム212は、図示しない付勢バネによって前側(駆動カム52側)へ付勢されており、アーム部212Aの先端部が、駆動カム52のカム面に当接している。これにより、伝達アーム212が駆動カム52に連結されており、駆動カム52が回転することで、伝達アーム212が、カム面の形状に対応して、送り上軸53の軸回りを揺動するようになっている。
【0110】
伝達アーム212の長手方向中間部には、伝達ピン212Bが一体に設けられている。伝達ピン212Bは、左右方向を軸方向として伝達アーム212から左側へ突出されている。また、伝達ピン212Bの径寸法は先端側へ向かうに従い小さくなるように設定されている。すなわち、伝達ピン212Bが円錐状に形成されている。
【0111】
連結スライドアーム214は、左右方向を長手方向とする略長尺ブロック状に形成されている。連結スライドアーム214は、伝達アーム212の左側に配置されており、連結スライドアーム214の上端部が、送り上軸53に揺動可能に支持されている。また、連結スライドアーム214は、送り上軸53の軸方向において送り上軸53に対して相対移動可能に構成されている。
【0112】
連結スライドアーム214の右側面には、連結凹部214Aが形成されている。連結凹部214Aは、右側へ開放された凹状に形成されており、右側から見て円形状に形成されている。そして、伝達アーム212の伝達ピン212Bが連結凹部214A内に挿入可能に構成されている。また、連結スライドアーム214の下端部には、左側へ突出された連結軸216が設けられており、連結軸216には、送りリンク機構61の連結リンク62が回転可能に連結されている。なお、送り上軸53の軸線から連結軸216の軸線までの距離は、第1の実施の形態の送り上軸53の軸線から連結軸60Bの軸線までの距離と同じに設定されている。
【0113】
さらに、連結スライドアーム214の上端部には、上側へ突出された連結突起214Bが形成されており、連結突起214Bが、切替機構80におけるスライド部材82のアーム連結部82Bに連結されている。これにより、切替機構80のスライド部材82が左右方向にスライドすることで、連結スライドアーム214が送り上軸53の軸方向に沿って左右に移動するようになっている。なお、第2の実施の形態では、スライド部材82の第1位置と第2位置とが、第1の実施の形態と比べて、左右逆に設定されている。
【0114】
具体的には、スライド部材82が第1位置に配置された状態では、連結スライドアーム214が伝達アーム212の左側に隣接して配置されて、伝達アーム212の伝達ピン212Bが連結スライドアーム214の連結凹部214A内に挿入されるようになっている。この状態では、伝達ピン212Bが連結凹部214Aに係合して、連結スライドアーム214が伝達アーム212と一体に揺動する構成になっている。これにより、伝達機構210が伝達状態になる構成になっている。そして、伝達機構210の伝達状態では、上軸26(駆動カム52)の回転駆動が伝達機構210によって送りリンク機構61に伝達されて、送りリンク機構61(図示省略)が作動する構成になっている。
【0115】
一方、スライド部材82が第1位置から左側へスライドして第2位置に配置された状態では、連結スライドアーム214が伝達アーム212から左側へ離間して、伝達アーム212の伝達ピン212Bと連結スライドアーム214の連結凹部214Aとの係合状態が解除される構成になっている。これにより、伝達機構210が非伝達状態になる構成になっている。そして、伝達機構210の非伝達状態では、伝達アーム212の揺動運動が連結スライドアーム214に伝達されず、連結スライドアーム214の揺動が停止する構成になっている。これにより、上軸26(駆動カム52)の回転駆動が送りリンク機構61に伝達されず、送りリンク機構61(図示省略)の作動が停止する構成になっている。
【0116】
また、連結スライドアーム214の前側には、アーム付勢バネ218が設けられている。アーム付勢バネ218の一端部は、連結スライドアーム214の下端部に係止され、アーム付勢バネ218の他端部は、ミシン200のフレームに係止されており、連結スライドアーム214がアーム付勢バネ218によって前側へ付勢されている。これにより、スライド部材82が第2位置に配置された状態では、連結スライドアーム214が、左側から見て反時計回りに回動するようになっている。具体的には、第1の実施の形態においてスライドアーム60Aが停止カム81のカム面に当接したときの連結軸60Bの位置と同じ位置に連結軸216が位置するように、連結スライドアーム214が回動するようになっている。このため、スライド部材82が第2位置に配置された状態では、第1の実施の形態と同様に、上送り歯77が下送り歯35に対して上側に離間した位置に配置されて、上送り歯77の送り動作が停止するようになっている。具体的には、上送り歯77が、送り動作をする下送り歯35に当接しない位置に配置される。
【0117】
また、スライド部材82が第2位置に配置された状態では、伝達アーム212の伝達ピン212Bの先端部が、連結スライドアーム214の連結凹部214Aの開口部内に配置されている。このため、スライド部材82が第2位置から右側へスライドすると、連結スライドアーム214の連結凹部214Aの内周面が伝達ピン212Bの外周面に当接して、連結スライドアーム214が送り上軸53の軸回りに回動しながら、連結スライドアーム214が伝達アーム212に接近するようになっている。このため、スライド部材82が第1位置に配置されときには、伝達ピン212Bが連結スライドアーム214の連結凹部214A内に再度挿入して係合するようになっている。
【0118】
そして、第2の実施の形態のミシン200においても、切替機構80によって、伝達機構210が伝達状態又は非伝達状態に切替わる。そして、切替機構80のスライド部材82を第2位置に配置することで、伝達機構210が非伝達状態になり、上送り機構50の送りリンク機構61の動作を停止させることができる。これにより、押え棒21に装着された押えユニット70の上送り歯77の送り動作を停止させることができる。以上により、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0119】
(変形例)
なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態のミシン10,200では、切替機構80によって、伝達機構60,210を非伝達状態にすることで、上送り歯77の上下駆動が停止する。これに加えて、上送り歯77の前後駆動を停止させる、公知の送り停止機構を、ミシン10,200に設けてもよい。これにより、ミシン10,200の振動や騒音の低減に一層寄与することができる。
【0120】
また、第1及び第2の実施の形態では、押えユニット70、110は上送り機構50から着脱可能な構造となっているが、着脱可能な構造に限定されない。その他、例えば、着脱可能な構造の代わりに、上送り足56などの上送り機構50の一部が折り畳み構造や伸縮可能な構造になっており、上送りを使用しない場合に上送り機構50の一部をミシン内部に収納可能となっているような構成や、さらには着脱構造や折り畳み構造、伸縮構造が無い上送りであっても本発明の効果は期待できる。
【0121】
なお、本発明は、第1~第2の実施の形態及び上記変形例を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
10 ミシン
10A ベッド部
10B 脚部
10C アーム部
11 針板
12 針
13 操作部
14 操作ボタン
20 押え機構
21 押え棒
22 操作レバー
23 レバー操作センサ
24 押えバネ
25 駆動機構
26 上軸
27 ミシンモータ
28 モータベルト
30 下送り機構
31 下軸
32 連結ベルト
33 第1下送りカム
34 第2下送りカム
35 下送り歯
35A 第1歯部
35B 第2歯部
36 送り台
37 送り下軸
38 第1下送りアーム
39 第2下送りアーム
40 第3下送りアーム
41 二股リンク
42 送り設定器
42A 溝部
43 角駒
44 送り量設定モータ
45 連結リンク機構
50 上送り機構
51 送り駆動機構部
52 駆動カム
53 送り上軸
54 上送りアーム
55 送りリンク
56 上送り足
57 連結体
58R 連結シャフト
58F 連結シャフト
60 伝達機構
60A スライドアーム(スライド伝達部材)
60A1 アーム部
60A2 連結突起
60B 連結軸
61 送りリンク機構(リンク機構)
62 連結リンク
63 三角リンク
64 解放リンク
65 切替リンク
66 バネ解放機構
67 押え棒抱き
68 バネ受け
69 バネホルダ
70 押えユニット
71 押え本体
72 押えホルダ
72A 固定溝
72B 押え取付部
73 押え
73A 取付壁
74 取付ピン
75 上送り歯ユニット
76 上送りホルダ
76A 連結片
76B リヤ連結溝
76C フロント連結溝
76D 突起
77 上送り歯
78 連結ピン
79 押え検知センサ
79A センサ本体
79B レバー部
80 切替機構
81 停止カム
82 スライド部材(切替部材)
82A スライド孔
82B アーム連結部
82C 連結軸部
83 取付プレート
83A ボス
83B 支持軸
84 切替ギヤ
84A ギヤ連結片
84B 連結孔
84C ギヤ部
85 切替モータ
85A 出力軸
86 モータギヤ
90 制御部
110 交換押えユニット
200 ミシン
210 伝達機構
212 伝達アーム(第1伝達部材)
212A アーム部
212B 伝達ピン
214 連結スライドアーム(第2伝達部材)
214A 連結凹部
214B 連結突起
216 連結軸
218 アーム付勢バネ
SC1 固定ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11