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特許7264823多層フィルムの製造方法、多層フィルム、セキュリティエレメント、及び、セキュリティドキュメント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】多層フィルムの製造方法、多層フィルム、セキュリティエレメント、及び、セキュリティドキュメント
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/26 20060101AFI20230418BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230418BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230418BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20230418BHJP
   B42D 25/378 20140101ALI20230418BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D7/24 301M
B05D7/00 A
B42D25/328
B42D25/378
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019553570
(86)(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2018057619
(87)【国際公開番号】W WO2018178000
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】102017106721.3
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507370644
【氏名又は名称】レオンハード クルツ シュティフトゥング ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カチョレック ハイモ
(72)【発明者】
【氏名】チコス ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】プフォルテ クラウス
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106457873(CN,A)
【文献】特表2017-500607(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092044(WO,A1)
【文献】特表2021-514485(JP,A)
【文献】特表2019-522813(JP,A)
【文献】特表2010-500186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/26
B05D 7/24
B05D 7/00
B42D 25/328
B42D 25/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層フィルムの製造方法であって、少なくとも1つのステップにおいて、少なくとも1つ のインクがインクジェット印刷によって層に塗布され、それによって、第1のプリントの少なくとも1つの領域が設けられ、前記第1のプリントは少なくとも1つの別の層によって覆われ、
前記インクは、複製層に少なくとも部分的に塗布され、
a)前記インクは、前記複製層の実質的に滑らかな表面に塗布され、又は、
b)前記インクは、前記複製層の既に複製された表面に塗布され、
反射層は、前記インク及び前記複製層に塗布され、
前記反射層は、前記第1のプリントを覆う前記少なくとも1つの別の層を形成し、
前記複製層は、当該層の上面に少なくとも部分的に複製構造を有する層であって、当該複製構造は、回折的又は屈折的に作用するマイクロ構造及びマクロ構造の少なくとも一方である方法。
【請求項2】
個別化されたプリントが設けられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プリントは、単一のインクの塗布によって形成され、又は、
前記プリントは、複数のインクの塗布によって形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記インクの塗布、又は、前記プリントの提供は、前記UV複製と同じ製造ステップで行われ、又は、
前記インク及び前記UV硬化複製ニスは一緒に硬化され、又は、前記インクは、前記UV硬化複製ニスのUV硬化によって後架橋され、又は、
前記インクは、複製層に少なくとも部分的に塗布されることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記インクは、未だ複製されていない複製層に塗布されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記複製層は、それに塗布される前記プリントと一緒に複製されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
次の複製中に、導入される複製構造が前記プリントに刻印されるが、前記プリントによって覆われた前記複製層の領域には刻印されないように、前記インクが塗布されることを特徴とする請求項又はに記載の方法。
【請求項8】
前記プリントは、前記複製中に圧縮又は変形されることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記インクが前記複製構造にのみ部分的に充填するように、前記インクは塗布されることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
接着促進層は、層又は前記インク若しくは前記プリントに少なくとも部分的に塗布されることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
接着着防止層は、前記多層フィルムの層又は前記インク若しくは前記プリントに少なくとも部分的に塗布されることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記インクは、少なくとも1つの接着促進層又は接着防止層を介在させて、前記多層フィルムの層に塗布され、又は、
レーザー感受性顔料を有するインクが提供されることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
洗浄ニスとして形成されるプリントが設けられることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
金属層又はメタライゼーションが塗布され、次いで、前記金属層又は前記メタライゼーションの一部と一緒に溶媒処理によって前記洗浄ニスが再び除去され、その結果、前記金属層又は前記メタライゼーションは、洗浄ニスが塗布されていない場合にのみ残ることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
干渉顔料又は少なくとも1つの体積ホログラムを有する層が、少なくとも部分的に設けられることを特徴とする請求項 1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの光吸収プリントが少なくとも部分的に設けられることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルムの製造方法及び多層フィルムに関する。更に、本発明の主題は、多層フィルムを有するセキュリティエレメント及びセキュリティドキュメント、特に、紙幣、証券、身分証明書類、査証書類、パスポート、又は、クレジットカードである。
【背景技術】
【0002】
特に、光学的外観に関する多層フィルムの個別化は、一般的に知られている。このような目的のために、多層フィルムブランクが設けられている。次に、多層フィルムの提供後に行われるステップにおいて、個別化が行われる。したがって、それは、特に、後発的な個別化である。この場合、個別化特徴は、少なくとも多層フィルムの外側に塗布される。多層フィルムを基板に適用した直後に、特に個別化は行われる。ここでの欠点は、個別化特徴が多層フィルムの表面に配置されていることから、これらが、意図的及び意図せずに容易に損傷を受ける可能性があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、改良された方法、及び、その方法より得ることのできる多層フィルムを提供することである。これにより、上記欠点は低減又は回避される。特に、偽造に対するセキュリティと、耐久性とが改良される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、多層フィルムの製造方法により達成される。この方法の少なくとも1つのステップにおいて、少なくとも1つのインクはインクジェット印刷によって層に塗布され、それによって、少なくとも1つの領域に少なくとも1つの第1のプリントが設けられ、第1のプリントは、少なくとも1つの別の層によって覆われる。個別化されたプリントが設けられることが好ましい。
【0005】
ステップは、指定された順序で実行されることが有利である。
【0006】
更に、この目的は、特に、本発明によって得ることのできる多層フィルムによって達成される。多層フィルムは、少なくとも第1のプリントを有し、当該プリントはインクジェット印刷によって生成され、多層フィルム内に配置され、多層フィルムの別の層によって覆われる。
【0007】
更に、本発明の主題は、本発明による多層フィルムを有するセキュリティエレメント及びセキュリティドキュメント、特に、紙幣、証券、税金ステッカー、チケット、オフィシャルシール、身分証明書類、査証書類、パスポート、又は、クレジットカードである。
【0008】
本発明によるインクの塗布により、多層フィルムを個々の希望及び要求に迅速且つ簡単に適合させることができる方法が得られる。したがって、多層フィルムは、広範囲の用途に使用される。特に、この方法又は多層フィルムは、セキュリティエレメント又はセキュリティドキュメントの製造に非常に適している。多層フィルムは、紙幣、身分証明書類等のセキュリティドキュメントの一部とすることができる。
【0009】
プリントは、多層フィルム内の任意の特定の配置に限定されない。多層フィルム内のインク又はプリントのこのような自由な位置決めによって、相互作用、特に、少なくとも1つのプリントと、多層体の別の層及び/又は多層フィルムの別の光学的特徴若しくは光学エレメント、特に光学可変エレメントとの光学的相互作用を達成することができる。したがって、例えば、カラーオーバーレイ、及び/又は、色相互作用を発生又は引き起こすことができる。
【0010】
加えて、プリントによって、多層体及び/又は局所的に改質された回折構造における所望の所定の破断点を実現することができる。
【0011】
プリントは多層フィルム内に配置されることから、プリントは環境から分離又は隔離される。これは、例えば、意図的に及び簡単な使用によって引き起こされ得る表面への機械的影響、例えば、機械的摩耗に対してプリントが保護されるという利点をもたらす。更に、多層フィルムの別の層に損傷を与えることによってのみ偽造が可能になることから、プリントの偽造も困難になる。
【0012】
本発明の意味の範囲では、インクとは、特に、印刷インク、ニス、接着剤、及び/又は、インクを意味する。インクは、特に、印刷方法、例えば、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、又は、スクリーン印刷によって印刷することができる液体、又は、ペーストであることが好ましい。塗布後、熱的に、酸化的に、及び/又は、放射線、特に、電磁放射線によって、インクを乾燥及び/又は硬化させることができる。
【0013】
インクとは、原則として、ゼログラフィ印刷法により印刷することができる乾燥、液体、又は、ペースト状のトナー材料を意味することもできる。更に、インクとは、特に、転写方法、例えば、熱転写プリンタにより印刷することができる、特に、転写フィルム、例えば、熱転写フィルムの転写プライの形態の乾燥材料を意味することができる。
【0014】
原則的に、本発明によるインクは、特定の実施例に限定されない。インクは、透明、半透明、不透明、不可視、着色、及び/又は、無色とすることができる。同様に、原則として、プリントは特定の実施例に限定されない。プリントは、透明、半透明、不透明、不可視、着色、及び/又は、無色にすることができる。
【0015】
この場合、透明とは、特に、人間の観察者に見える光の波長範囲における透過率が50%を超える、好ましくは70%を超える、特に好ましくは80%を超える領域を意味する。
【0016】
この場合、不透明とは、特に、人間の観察者に見える光の波長範囲における透過率が40%未満、好ましくは30%未満、特に好ましくは20%未満の領域を意味する。
【0017】
また、プリントは、CIELAB色空間において0~50、好ましくは0~30の輝度L*を有することも考えられる。
【0018】
使用される層の輝度L*は、特に、分光光度計に基づくCIELAB Datacolor SF 600測定システムによって決まる。CIELAB L*a*b*式による体色における色距離の比色測定では、値L*は明/暗軸を表し、値a*は赤/緑軸を表し、値b*は黄/青軸を表す。したがって、L*a*b*色空間は、3次元座標系として記述され、L*軸は明度を示し、0~100の間の値を推測することができる。
【0019】
明度L*の測定は、以下の条件で行うことが好ましい。
測定ジオメトリ: DIN5033及びISO2496に準拠した拡散/8°
測定開口径: 9 mm
スペクトル範囲: DIN6174に準拠した360nm~700nm
標準的な光源: D65
【0020】
この場合、不可視とは、特に、人間の目に知覚できないものを意味する。
【0021】
着色インクが提供されることが好ましい。これによって、色効果、及び/又は、既に着色されたフィルムの場合、追加の色効果を多層フィルムに導入することができる。
【0022】
インク又はインクにより提供されるプリントが入射放射線及び/又は光を実質的に吸収するように、インクを形成することができる。インク又はそれから形成されたプリントは、暗い外観を有することが好ましい。インクは、実質的に、黒色及び/又は暗色及び/又は不透明に形成されることが好ましい。
【0023】
更に、着色インクの特別な形態として、好ましくはバインダに取り込まれた、マイカのような金属外観を有する金属顔料又は顔料を有するインクも考えられる。これらの顔料は、好ましくは、入射放射線をより大きく反射し、したがって、それらの周囲と対照的になる。
【0024】
更に、発光インク、透明及び着色発光インク、蛍光インク、透明及び着色蛍光インク、化学発光インクを含む燐光インク、透明及び着色燐光インク、及び/又は、液晶インク、特に、二色性色効果及び/又はレーザー感受性インク、及び/又は、タガントを有するインクを提供し、それにって、追加の機械可読性の追加を達成することも考えられる。
【0025】
光硬化、特に、UV硬化インク、並びに、溶媒及び/又は水性インクの両方を使用することができる。
【0026】
塗布又は印刷されるインク層の層厚は、好ましくは0.1μm~30μmの間、特に0.5μm~15μmの間、特に好ましくは0.5μm~15μmの間、有利には1μm~8μmの間である。溶媒及び/又は水性インクが使用される場合、層の層厚は、好ましくは約0.5μmである。UV硬化インクが使用される場合、層の厚さは、約1μm~30μmの間、好ましくは1μm~15μmの間、特に好ましくは1μm~8μmの間である。
【0027】
プリントは、単一のインクの塗布によって形成されることが好ましい。このようにして、単一のインクによってのみ形成されるプリントを有する多層フィルムが得られる。
【0028】
ここでは、原則として、後続のステップにおいて、プリントが少なくとも部分的に更に処理され、特に照射されることが考えられる。これにより、プリントの光学的外観は、これらのエリアで変化する。このようにして、単一のインクのみからなるが、光学的外観が互いに異なる少なくとも2つの領域を備えるプリントを得ることができる。したがって、プリントは、好ましくは、少なくとも1つの可視領域及び少なくとも1つの不可視領域を有することができる。
【0029】
複数のインク、特に、互いに異なるように生成されたインクの塗布により、プリントを形成することもできる。複数のインクは、特に、それらの光学的外観及び/又はそれらの組成が互いに異なる。したがって、インクを、例えば、互いに異なる色とすることもできる。しかしながら、使用されるインクのうちの少なくとも1つが透明及び/又は不可視であり、使用される少なくとも1つの他のインクが不透明及び/又は可視に生成されることも考えられる。インクは、好ましくは、互いに隣接して、一方を他方の上に、又は、重なりあって印刷することもできる。
【0030】
任意選択的に後続するステップでは、対応するインクの使用中に、少なくとも部分的に、特に、透明インクが位置するエリアにおいて、プリントを処理及び/又は照射することができる。これによって、透明又は不可視インクは、可視になり、好ましくは、可視又は不透明インクにより生成される部分モチーフなどを補完し、それによって、特に、全体的なモチーフが現れる。
【0031】
少なくとも1つのプリントを設けるために、複数のインク、特に、異なるように生成されたインクが塗布される場合、インクは、互いに隣接して、特に、互いに直接隣接して、又は、少なくとも部分的に重なり合って配置され得る。しかしながら、インクは、一方を他方の上に印刷することもできる。
【0032】
同時に、時間的に重複して、時間的に連続して、複数のインクの塗布を行うことができる。インクジェットプリンタの場合、塗布は、時間的に連続して行われることが好ましい。特に、ヘッド当たり1色が印刷される。特に、この場合、複数のヘッドが同時に同じ場所にあることは不可能である。例えば、Hewlett Packard Indigo法では、印刷画像が転写ブランケットに事前に印刷される、又は、個々の単色インクからそこに構築され、その後、この転写ブランケットからターゲット基板に転写されることから、全てのインクの最終転写が同時に行われる。
【0033】
インライン、すなわち、フィルムの製造における一体的なステップとして、インクの塗布を行うことができる。この場合、フィルムの中間巻き上げ及び/又は保管は行わないことが好ましい。しかしながら、原則として、オフライン及び/又は任意の時点でインクの塗布を行うこともできる。フィルムの中間巻き上げ及び/又は保管は、ここで行われてもよい。
【0034】
インクは、特に、モチーフの一部として又はモチーフとして層に部分的に塗布されることが好ましい。
【0035】
本発明の意味の範囲では、モチーフを、例えば、図形的に形成された輪郭、図形表現、画像、視覚的に認識可能なデザインエレメント、シンボル、ロゴ、ポートレート、パターン、英数字、コード、コードパターン、暗号パターン、テキスト、カラーデザインとすることができる。モチーフを個別化して形成することもできる。
【0036】
本発明の意味の範囲では、個別化とは、特に、プリントが固有のシリアル番号のような各個別プリントに個別に固有の情報を有することを意味する。個別化とは、特に、プリントが固有の生年月日、固有の税金識別番号、パス番号、個人識別番号などの個別化され、それぞれの個別プリントに固有の情報を有することも意味する。個別化とは、特に、プリントがプリントのグループに対して同一であるが、各プリントのグループに固有の情報、例えば、バッチ番号を含むことも意味する。以下では、プリントという用語は、個別化されたプリント、又は、個別化されていないプリントも意味され得る。
【0037】
しかしながら、原則として、インクを層の全表面に塗布することもできる。インクが層の全表面に塗布される場合、インク又はプリントの光学的外観が、後のステップで少なくとも部分的に変化する場合に有利である。
【0038】
多層フィルムを製造するために、少なくとも1つのキャリア層、少なくとも1つの剥離層、少なくとも1つの保護層、特に、保護ニス層、少なくとも1つの複製層、少なくとも1つの反射層、特に、メタライゼーション又は金属層又はHRI層、及び/又は、少なくとも1つの接着剤層及び/又は少なくとも1つのプライマ層のうちの少なくとも1つを設けることができる。このようにして、少なくとも1つのキャリア層、少なくとも1つの剥離層、少なくとも1つの保護層、少なくとも1つの複製層、少なくとも1つの反射層、特に、少なくとも1つの金属層及び/又は少なくとも1つのHRI層の少なくとも1つのメタライゼーション、及び/又は、少なくとも1つの接着剤層及び/又はプライマ層を有する多層フィルムが得られる。キャリア層に加えて、少なくとも1つの剥離層、少なくとも1つの保護層、特に、保護ニス層、少なくとも1つの複製層、少なくとも1つの反射層、特に、メタライゼーション又は金属層又はHRI層、及び/又は、少なくとも1つの接着剤層及び/又は少なくとも1つのプライマ層のうちの少なくとも1つを設けることが好ましい。
【0039】
例えば、薄膜エレメントを有する特別な多層フィルムの場合、フィルタ層又はスペーサ層のような別の層が必要である。
【0040】
キャリア層は、特に、自立型材料及び/又はプラスチック類の物質からなる。キャリア層は、PET、ポリオレフィン、特に、OPP、BOPP、MOPP、PP及び/又はPE、PMMA、PEN、PA、ABS、及び/又は、これらのプラスチックの複合材料から形成されることが好ましい。また、キャリア層は、製造業者により既にプレコートされており、多層フィルムは、このプレコートされた材料に形成されてもよい。また、キャリア層が生分解性及び/又は堆肥化可能なキャリア層であってもよい。この場合、EVOHを使用することが好ましい。キャリア層の層厚は、有利には、4μm~500μmの間、特に、4.7μm~250μmの間である。
【0041】
多層フィルムは、キャリア層及び多層摩耗層、例えば、多層装飾プライ、並びに、特に、熱活性可能な接着剤層を有する積層フィルムとして形成することができる。キャリア層及び摩耗層は、基板にスタンピング層の形態で一緒に配置される。
【0042】
特に、多層フィルムは転写フィルムとして形成される。転写フィルムは、特に、好ましくは複数の層から形成される転写プライを備え、特に、少なくとも1つの接着剤層、1つの反射層、1つの複製層及び/又は1つの保護層、及び、キャリア層を備える。転写プライはキャリア層から剥離可能である。転写プライの剥離を容易にするために、剥離層を転写プライとキャリア層との間に配置することができる。
【0043】
剥離層によって、特に、多層フィルムの層が、転写パイルとして、キャリア層から非破壊的に確実に分離され得る。剥離層は、ワックス、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、セルロース誘導体、及び/又は、ポリ(オルガノ)シロキサンから形成されることが好ましい。上記のワックスは、天然ワックス、合成ワックス、又は、それらの組み合わせであり得る。上記のワックスは、例えば、カルナウバワックスである。上記のセルロース誘導体は、例えば、酢酸セルロース(CA)、硝酸セルロース(CN)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、又は、それらの混合物である。上記のポリ(オルガノ)シロキサンは、例えば、シリコーンバインダ、ポリシロキサンバインダ、又は、それらの混合物である。分離層は、好ましくは1nm~500nmの間の層厚、特に5nm~250nmの間の層厚、特に好ましくは10nm~250nmの間の層厚を有する。
【0044】
多層フィルムが、例えば、ラベル及び/又はステッカー塗布のための積層フィルムとして使用される場合、キャリア層と後続の層又は摩耗層との間の連結は、一般的に、塗布中に変化しないままである。したがって、フィルムを積層する場合には、原則として、剥離層は省略される、又は、例えば、セキュリティ用途のためにフィルムを積層する場合には、摩耗層からのキャリア層の剥離が、好ましくは、塗布後にのみ起こり得るように、剥離層は設計される。
【0045】
剥離層は、公知の印刷方法で製造することができる。特に、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、又は、スロットダイが好適である。しかしながら、剥離層は、蒸着、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、及び/又は、スパッタリングによって形成することもできる。
【0046】
保護層は、PMMA、PVC、メラミン、及び/又は、アクリレートの層であることが好ましい。保護ニスは、放射線硬化二重硬化ニスからなるものでもよい。この二重硬化ニスは、液体状での塗布中及び/又は塗布後の第1ステップで熱的に予備架橋することができる。好ましくは、第2のステップにおいて、特に、多層フィルムの加工後に、二重硬化ニスは、特に高エネルギー放射線、好ましくはUV放射線により、ラジカル後架橋される。このタイプの二重硬化ニスは、不飽和アクリレート又はメタクリレート基を有する異なるポリマー又はオリゴマーからなることができる。これらの官能基は、特に、第2のステップにおいて、互いにラジカル架橋することができる。第1のステップにおける熱的予備架橋のために、少なくとも2つ以上のアルコール基がこれらのポリマー又はオリゴマー中に存在することも有利である。これらのアルコール基は、多官能性イソシアネート又はメラミンホルムアルデヒド樹脂で架橋させることができる。好ましくは、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、及び、特に、アクリレートアクリレートのような異なるUV原料が、不飽和オリゴマー又はポリマーとして考慮される。TDI (TDI=トルエン-2,4-ジイソシアネート) 、HDI (HDI=ヘキサメチレンジイソシアネート) 又はIPDI (IPDI=イソホロンジイソシアネート) に基づくブロックされた代表及びブロックされていない代表の両方が、イソシアネートとして考慮され得る。メラミン架橋剤は、完全にエーテル化された形態であってもよく、イミノタイプであってもよく、又は、ベンゾグアナミン代表例を表してもよい。
【0047】
保護層は、好ましくは50nm~30μmの間、好ましくは1μm~3μmの間の層厚を有する。保護層は、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スロットダイ、及び/又は、蒸着、特に、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、及び/又は、スパッタリングによって製造することができる。蒸着は、特に、1μm未満の薄い保護層の場合に行われる。
【0048】
複製層は、好ましくは、その上側の一方に少なくとも部分的に複製構造を有する。回折的及び/又は屈折的に作用するマイクロ及び/又はマクロ構造は、好ましくは、複製層に成形される。複製層は、好ましくはアクリレート、セルロース、PMMA、及び/又は、架橋イソシアネートから形成され、好ましくは、熱可塑性特性を有する。表面構造は、好ましくは、スタンピング工具の作用による熱及び圧力によって複製層に成形される。
【0049】
更に、複製層をUV架橋ニスによって形成し、表面構造をUV複製によって複製層に成形することも可能である。表面構造は、スタンピング工具の作用によってまだ最終的に硬化されていない複製層に成形され、複製層は、成形中又は成形後に、UV光の照射によって直接硬化される。成形の前及び/又は間に、UV光による追加の照射を行うことができる。
【0050】
原則として、複製層は、公知の印刷法によって製造することができる。特に、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、又は、インクジェット印刷が好適である。しかしながら、スロットダイを用いた製造も可能である。
【0051】
複製層に成形される表面構造又は複製構造は、好ましくは、回折表面構造、例えば、ホログラム、キネグラム(登録商標)、又は、別の光学回折能動格子構造である。そのような表面構造は、一般的には、0.1μm~10μmの範囲、好ましくは0.5μm~4μmの範囲の構造エレメントの間隔を有する。更に、表面構造を0次回折構造とすることも可能である。この回折構造は、少なくとも一方向に、可視光の波長よりも短い周期、可視光の半波長と可視光の波長との間の周期、又は、可視光の半波長よりも短い周期を有することが好ましい。更に、表面構造をブレーズド格子とすることも可能である。この場合、それは無色ブレーズド格子であることが特に好ましい。そのような格子は、好ましくは、少なくとも一方向に、1μm~100μmの間、更に好ましくは2μm~10μmの間の周期を有する。しかしながら、ブレーズド回折格子を着色ブレーズド回折格子とすることも可能である。更に、表面構造は、線形又は交差正弦波回折格子、線形又は交差単一又は多段矩形格子であることが好ましい。この格子の周期は、好ましくは0.1μm~10μmの間の範囲、好ましくは0.5μm~4μmの範囲にある。更に好ましくは、表面構造は非対称レリーフ構造、例えば非対称鋸歯構造である。この格子の周期は、好ましくは0.1μm~10μmの間の範囲、好ましくは0.5μm~4μmの範囲にある。更に好ましくは、表面構造は、光回折及び/又は光屈折及び/又は集光マイクロ又はナノ構造、バイナリ又は連続フレネルレンズ、バイナリ又は連続フレネル自由形状表面、回折又は屈折マクロ構造、特にレンズ構造又はマイクロプリズム構造、ミラー表面又は艶消し構造、特に異方性又は等方性艶消し構造、又は、上記表面構造の複数の組み合わせ構造である。
【0052】
上記の表面構造又は複製構造の構造深さは、好ましくは10nm~10μmの間、更に好ましくは100nm~2μmの間の範囲にある。
【0053】
複製層は、200nm~5μmの間の層厚を有することが好ましい。複製層が回折表面構造を有する場合、層の厚さは、好ましくは0.3μm~6μmの間である。複製層がより粗い構造、特に、より大きな周期及び/又はより大きな深さ、例えば、いわゆる「表面レリーフ」を有する場合、層の厚さは、好ましくは約1μm~10μmの間である。複製層がレンズ形状の表面構造を有する場合、層の厚さは、好ましくは1.5μm~10μmの間である。
【0054】
複製層の表面の複製又は構造化は、様々な方法で行うことができる。熱可塑性複製層の場合、特に熱及び/又は圧力の影響下で、熱複製が行われる。プリントは、この時点で既に複製層に塗布されていてもよい。この場合、プリント又はインクは、複製層の滑らかな表面に実質的に塗布されている。
【0055】
UV複製が行われることも考えられる。プリントがUV硬化インクで形成される場合、UVプリントは、UV硬化複製ニスにより有利に保護することができる。特に、UV硬化複製層で「架橋」する反応性基は、UV硬化インクの表面に位置する。
【0056】
特に、表面架橋に加えて、UV硬化インクの硬化は、特に薄いUV硬化層の架橋により、例えば大気中の酸素による破壊的な抑制効果を防ぐことができることから、UV硬化複製ニスによるオーバーモールド及び/又はカプセル化によっても改善することができる。特に、これは、約1.5μmより薄く塗布されたUV硬化インクの場合に特に有利である。それは、UV硬化インクの層厚を減少させると、抑制効果がより強い影響を有する、又は、プリント若しくはインクが粘着性のままであり、例えば、印刷された多層フィルムがロールとして巻き取られない程度まで表面及び層架橋を防止することができるからである。
【0057】
薄いUV硬化層を硬化させるためには、一般的に、UV硬化中に、特にアルゴン又は窒素などの保護ガス下でのUV硬化の場合には、複雑で高価な不活性化手段が必要である。UV硬化インクによる印刷が、UV複製と同じ製造ステップで多層フィルムを巻き上げることなく行われる場合、これらの複雑で高価な手段は、UV硬化プリントにUV硬化複製ニスを下流に重ねることによって回避することができる。
【0058】
更に、UV複製の間に使用されるUV乾燥プロセスは、抑制の最小化のために有効であるUV印刷のための追加の後硬化である。特に、任意のピニング(UV予備硬化)の後、UV複製のUV硬化装置は、プリント自体を硬化させるために追加のUV硬化装置を必要とすることなく、UV印刷の塗布中に使用することもできる。
【0059】
特に、UV硬化インクの印刷を直接下流のUV複製プロセスと組み合わせることにより、硬化によって決まる複雑な手段を用いることなく、可能なものよりもはるかに薄くUVインクを塗布することができる。
【0060】
特に、UV複製ニスの周囲マトリックスへのUV硬化インク又はUV硬化プリントの「架橋」により、プリントがポリマー周囲に実質的に分離不能に連結される。この場合、プリントは、有利には、それ自体ではもはや個別の層を表さない。これにより、偽造が更に困難になる。
【0061】
特に、UV硬化複製ニスのUV硬化によって、UV硬化インクのより高い安定性をもたらすUV硬化インクの後架橋の可能性があると有利である。
【0062】
特に、プリントの材料組成とは独立して、プリントにUV複製を塗布するためには、特に、接触圧力又は熱複製中に生じる温度によるプリント上の機械的及び/又は熱的応力が著しく低減されることが更に有利である。
【0063】
UV複製の間、構造受容複製層は、特に液体として塗布される。印刷は、液体複製層を塗布する前に行うこともでき、又は、多層体の予め塗布された層に既に存在することもでき、その層に液体複製ニスが塗布される。
【0064】
しかしながら、インク又はプリントの塗布は、構造化後にのみ、及び、任意に、複製層の硬化後にのみ行うこともできる。
【0065】
複製前にプリントが設けられる場合、プリントは、原則として、キャリア側から観察して複製構造を有する層の前に空間的に位置する。複製後の印刷の場合、プリントは、原則として、キャリア側から観察して複製構造を有する層の後ろに空間的に位置する。両方の配置は、異なる光学効果を可能にする。例えば、キャリア側から観察したとき、構造化複製ステップ後の印刷の場合は、回折構造をプリント上に重ね合わせることができる。これは、構造化複製ステップ前に印刷が既に行われている場合には、キャリア側から観察しても不可能である。
【0066】
キャリア層側及びキャリア側と反対側から、特に、窓又は透明な基板領域において、多層フィルムを観察した場合、複製層の前、又は、キャリ層側から観察して複製層の後ろのプリント又はプリントの目標位置は、観察側で異なる視覚的効果を可能にする。
【0067】
複製構造をプリントに対して、特に、互いに見当合わせして位置決めすることもできる。
【0068】
好ましくは、複製層には、高屈折率(HRI)を有する金属層又はメタライゼーション及び/又はHRI層から成り得る反射層が設けられている。反射層は、不透明、半透明、又は、透明であってもよく、透明性は、特に、観察角度に依存し得る。
【0069】
反射層は、表面に全体的及び部分的に塗布することができる。反射層は、特にモチーフの形成のためにパターン化されて形成されることが好ましい。反射層は、パターン及び/又はモチーフを表すことができ、特に、プリント及び/又は複製層の構造と見当合わせして配置することもできる。
【0070】
反射層は、金属層又はメタライゼーションであることが好ましい。金属層又はメタライゼーションは、アルミニウム、クロム、金、銅、スズ、銀、又は、そのような金属の合金から形成されることが好ましい。金属層又はメタライゼーションは、好ましくは蒸着によって、特に真空蒸着によって製造される。蒸着された金属層又はメタライゼーションは、全表面にわたって実施することができ、全表面にわたって保持される、又は、エッチング、リフトオフ、又は、フォトリソグラフィなどの公知の脱金属化方法で構造化することができ、したがって、部分的にのみ存在する。層の厚さは、特に10nm~500nmの間にある。
【0071】
しかしながら、金属層又はメタライゼーションは、印刷層、特にバインダー中の金属顔料の印刷層からなることもできる。これらの印刷された金属顔料は、表面に全体的に又は部分的に塗布することができ、及び/又は、異なる表面領域において異なる色を有することができる。層の厚さは、特に1μm~3μmの間にある。
【0072】
導電性金属顔料を有するニスから反射層を製造、特に、印刷及び/又は注入することも可能である。
【0073】
更に、反射層は、透明な反射層、例えば、薄い若しくは微細構造の金属層、又は、HRI (高屈折率)若しくはLRI (低屈折率)層によって形成されることも可能である。このような誘電体反射層は、例えば、金属酸化物、金属硫化物、酸化チタンの蒸着層からなる。このような層の層厚は10nm~500nmが好ましい。
【0074】
更に、少なくとも1つの着色ニス層によって、反射層を形成することもでき、特に、少なくとも1つの着色ニス層の屈折率n 1 及び複製層の屈折率n 2は、屈折率n 1及びn 2の虚数部分間の差が0.05~0.7の範囲にあるように選択される。少なくとも1つの着色ニス層の明度L*は、0~90の範囲にあり、特に、複製層の回折レリーフ構造は、潜在的な光学可変効果を生成し、明度L*は、以下の条件下でCIELAB L*a*b*式にしたがって測定されている:幾何学的測定:DIN5033及びISO2496に準拠した拡散/8°、測定開口の直径:26mm、スペクトル範囲:DIN6174による360~700nm、標準光源: D65。顔料番号PZが1.5~120cm3/gの範囲、特に5~120cm3/gの範囲にあるように少なくとも1つの着色ニス層の顔料を選択した場合には効果的であることが証明された。顔料番号PZは、次のように計算される。
【数1】

ここで、
mP=着色ニス層における着色ニス層の顔料の質量(グラム)
mBM=定数; 着色ニス層における着色ニス層のバインダーの質量(グラム)
mA=定数; 着色ニス層における添加物の固体質量(グラム)
OZ=顔料のオイル数(DIN53199に準拠)
d=顔料密度(DIN53193に準拠)
x=着色ニス層における異なる顔料の数に対応する制御変数
【0075】
更に、半透明の実施例において、光学フィルタ層として第1の反射層を設けることも可能である。このような誘電反射層は、例えば、薄い金属(Al、Cr)の蒸着層、又は、薄く塗布された金属酸化物、金属硫化物、酸化ケイ素などからなる。このような層の層厚は、光学密度が特に0.1~0.9 OD (OD =光学密度)の範囲にあるように選択される。薄膜効果のために必要とされる後続の誘電スペーサ層は、複製層と同様に覆うことができ、層の厚さの範囲は、好ましくは0.1μm~1.0μmの間にあり、及び/又は、組成は、特に複製層に対応する。この場合、スペーサ層は、複製層としても直接機能することができる。スペーサ層はセラミックスペーサ層として蒸着することもできる。一般的には、金属又は半金属酸化物、例えば、SiO2、TiO2、Na3AlF6又はMgF2を、反射層にも挙げられた方法の1つにしたがって蒸着する。ここで、層の厚さは、特に20nm~500nmの間にある。
【0076】
この光学フィルタ層を複製層の前に既に塗布することもできる。この場合、複製層は、特に誘電体スペーサ層として機能し、層の厚さ範囲は、好ましくは0.1μm~1.0μmの間にある。
【0077】
次に、誘電体スペーサ層に関連して、不透明又は半透明の反射層が、特に上記のように蒸着される。
【0078】
接着剤層又はプライマ層は、好ましくは、PMMA、PVC、アクリレート、ポリアミド、ポリ酢酸ビニル、炭化水素樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリオレフィン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、及び/又は、ポリウレタンポリオール、特に不活性化イソシアネートと組み合わせて形成される。接着剤層又はプライマ層は、更に、例えばSiO2 及び/又はTiO2などの充填剤を含有することができる。
【0079】
接着剤層又はプライマ層の層厚は、好ましくは0.5μm~20μmの間、特に好ましくは1.5μm~5μmの間である。接着剤層又はプライマ層は、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、及び/又は、スロットダイによって製造することができる。
【0080】
インクは、原則として、多層フィルムの各層、特に、キャリア層、剥離層、複製層、保護層、反射層、及び/又は、接着剤層及び/又はプライマ層に少なくとも部分的に塗布することができる。
【0081】
インク又はプリントは、特に、マーキング及び/又は見当マークとして、及び/又は、着色のために役立つ。特に硬化後及び/又は乾燥後に、インクがそれに隣接する層への不十分な接着性を示す場合、インク又はそれと共に設けられるプリントは、特に、多層フィルム内の所定の破断点として機能することができ、及び/又は、部分的な剥離効果を引き起こすことができる。
【0082】
必要に応じて、インクが塗布される層は、この層へのインクの十分な接着性又は非接着性を確実にするために、事前に改質されることが好ましい。これは、例えば、ニス配合物中の対応する表面添加剤、又は、例えば、表面に架橋可能なUV活性基を有する層の対応する設計によって保証され得る。これは、UV硬化インクが使用される場合に特に有利である。
【0083】
インクが多層フィルムの複数の層に塗布される場合が有利である。層に塗布されるインクは、同一であっても異なっていてもよい。特に、インクは、互いに見当合わせして塗布される。
【0084】
プリントは、複数の層上に設けられることが好ましい。特に、プリントは、互いに見当合わせして配置することができる。多層フィルムのいくつかの層にプリントが設けられる場合、個々のプリントは、互いに異なるように形成することができる。これは、特に、プリントがその光学的外観において互いに異なるという効果と理解されるべきである。プリントは、例えば、異なるインクによって形成することができ、及び/又は、互いに異なるモチーフとして形成することができる。
【0085】
多層フィルムの上面図において、プリントは、互いに対してオフセットされてもよく、又は、重なり合って配置されてもよい。しかしながら、多層フィルムの上面図では、プリントは、互いに隣接して配置することもできる。有利には、プリントは、多層フィルムの上面図において、プリントの少なくともいくつか又はプリントのいくつかの部分が全体的なモチーフを形成するように、層に配置又は形成される。これらのプリントのうちの1つ以上は、個別化されてもよく、又は、個別化されなくてもよい。例えば、1つ以上の個別化されていないプリントは、全体的なモチーフを形成するために、1つ以上の個別化されたプリントで補完され得る。これは、あるプリントが、例えば、人の頭部を表し、別のプリントが、人の身体を表す効果と理解され得る。多層フィルムの上面図では、頭部と身体とを合わせて人を形成する。
【0086】
見当又は見当合わせ、見当の正確性又は見当合わせの正確性とは、互いに対する2つ以上のエレメント及び/又は層の位置的な正確性を意味する。見当合わせの正確性は、可能な限り小さい事前に定義された許容範囲内にある。同時に、互いに対する複数のエレメント及び/又は層の見当合わせの正確性は、プロセスの安定性を高めるための重要な特徴である。位置的に正確な位置決めは、特に、感覚的に、好ましくは光学的に検出可能な見当(位置)合わせマーク又は見当マークによって実現する。これらの見当(位置)合わせマーク又は見当マークは、特定の個別のエレメント又は領域又は層を表す、又は、配置されるエレメント又は領域又は層の一部であるマーク自体を表す。
【0087】
インクは、キャリア層に少なくとも部分的に塗布されることが好ましい。このようにして、少なくとも1つのプリントがキャリア層に少なくとも部分的に配置されている多層フィルムが得られる。
【0088】
1つの変形例では、キャリア層に塗布されるインクは、インク又はプリントが触覚及び/又は触覚的に知覚可能な特性を有するように厚く塗布されることが好ましい。この場合、層厚さ範囲は、特に5μm~30μmの間である。これにより、特に、個別化することもできる触覚面を作り出すことができる。特に、印刷されたインク又は設けられたプリントは、表面構造を有する。特に、インク又はプリントが、層、特に任意に後に塗布される保護層にある構造又は構造を与えるように、インクが塗布され、又は、プリントが設けられる。
【0089】
別の実施例では、多層フィルムを基板に塗布し、キャリア層を除去した後に、インク又はプリントが少なくとも部分的に、好ましくは完全に、キャリア層に残るように、インクをキャリア層に塗布することもできる。これにより、例えば、後に、例えば、キャリア層に残っているプリントを読み取ることによって、多層フィルムのどのラベル又はどの部分が実際に塗布されたかを記録することができる。これは、例えば、番号及び/又は暗号化されたコード、例えばバーコードとして実現されるシリアル番号、バッチ番号、又は、制御番号によって達成され得る。
【0090】
好ましくは、インクは、剥離層に少なくとも部分的に塗布される。このようにして、少なくとも1つのプリントが、剥離層に少なくとも部分的に配置された多層フィルムが得られる。
【0091】
インクが保護層に少なくとも部分的に塗布されることが有利である。インクは、全表面に形成された保護層に部分的に塗布されることが好ましい。このようにして、少なくとも1つのプリントが保護層に少なくとも部分的に配置された多層フィルムが得られる。特に、少なくとも1つのプリントが、観察方向において、保護層の下に配置され、これにより、保護層によって保護される。
【0092】
更に、インクは、反射層、特に金属層及び/又はメタライゼーション及び/又はHRI層に少なくとも部分的に塗布されることも可能である。このようにして、少なくとも1つのプリントが反射層に少なくとも部分的に配置された多層フィルムが得られる。
【0093】
インクが金属層に塗布される場合、インク又はプリントは、特に、脱金属化のためのエッチングレジストとして役立つことができる。インクが、例えば、アルカリ含有である場合、直接エッチングは、塗布によっても製造され得る。このようにして設けられたインク又はプリントがエッチングレジストとして形成される場合、後続のステップで脱金属化を行うことができる。金属層は、プリントによって覆われていない領域で除去されることが好ましい。プリントが個別化される場合には、個別化された脱金属化もまた、それを用いて製造することができる。
【0094】
好ましくは、インクは、接着剤層及び/又はプライマ層に少なくとも部分的に塗布される。このようにして、少なくとも1つのプリントが接着剤層及び/又はプライマ層に少なくとも部分的に配置された多層フィルムが得られる。ここで、インク又はプリント自体が部分接着剤層として機能するように、インクが形成されていることが好ましい。このようにして、例えば、個別化された接着剤層が得られる。例えば、実際に透明な接着剤の場合には、所望の領域を設計、例えば、印刷によって着色することができる。接着剤層が、例えば、基板又はドキュメントの透明な領域又は窓において、可視である場合、例えば、個別化された情報を接着剤層に導入することができる。
【0095】
しかしながら、不動態化のために、特に、接着剤層の部分的な不動態化のために、インクを接着剤層に少なくとも部分的に塗布することも可能である。その後の塗布又はホットスタンピングの場合、多層フィルムの基板への転写は、インクで印刷されていない接着剤層の領域においてのみ行われる。特に、個別化された結合がこのようにして得られる。したがって、ホットスタンピングによる塗布の場合、例えば、個別化されたホットスタンピングのための特別な形状のダイの必要性は、非スタンピング領域を不動態化するインクジェット印刷によって達成される。
【0096】
有利には、インクは、複製層に少なくとも部分的に塗布される。このようにして、少なくとも1つのプリントが複製層に少なくとも部分的に配置された多層フィルムが得られる。
【0097】
インクは、まだ複製されていない複製層に塗布することができる。複製層又は複製ニスは、特に、滑らかな表面を有する。次に、複製は、特に、プリントが設けられた後に行われる。次に、複製により、構造をプリント及び/又は複製層に導入することができる。例えば、複製層の個別化されていない情報は、個別化されたプリントと組み合わせることができる。プリントの複製は、それによってプリントが多層フィルムのシステム全体に更に一体化されることから、偽造に対する追加の保護手段を示すことができる。
【0098】
理想的には、インクは、複製層の実質的に滑らかな表面に塗布され、その表面は、後の時点で少なくとも部分的に複製されることが好ましい。
【0099】
しかしながら、インクを、既に複製された複製層、したがって、表面構造、複製構造が既に設けられた複製層に塗布することも可能である。インクは、好ましくは、構造化表面又は複製構造に少なくとも部分的に塗布されることが好ましい。この場合、例えば、複製層の個別化されていない情報は、個別化されたプリントと組み合わせることもできる。
【0100】
インクが既に複製された複製層に塗布される、又は、プリントが設けられる場合、塗布は、複製構造と見当合わせして行われることが好ましい。これにより、構造、特に、回折構造の少なくとも部分的な領域は、例えば、それによって充填され、特に、光学的に除去されることができる。これは、特に、インクが複製層と同様の屈折率、特に0.2未満の差を有する屈折率を有する場合である。これは、特に、インクが構造の深さよりも厚い層厚で塗布される場合に生じる。しかしながら、インクが構造のトポロジーに従い、したがって特に回折の一部となるように、インクをより薄い層厚で塗布することも可能である。
【0101】
更に、インクは、インクが複製構造、特に複製層の表面の回折構造を部分的にのみ充填するように塗布することもできる。構造の部分的な充填は、特に、最終的に塗布されたインク層の厚さが複製構造の深さよりも小さい場合に生じる。特定の条件下では、インクは、光学的に除去されずに、構造を充填することができる。これは、特に、インクが反射特性又は高屈折特性を有し、複製層の複素屈折率とその複素屈折率が特に0.2より大きく異なる場合に当てはまる。反射インクの例は、金属効果顔料又は金属フレークを有するインクである。高屈折率インクの例は、液晶をベースとするインクである。部分的な充填のために、特に巨視的な構造、すなわち、特に、もはや回折効果のない構造も複製層に適している。
【0102】
インクは、複製層に導入される構造の深さより大きい層厚で複製層に塗布されることが好ましい。特に、塗布されるインクの層厚は、複製層に導入される構造の層厚の実質的に2倍の厚さである。複製層に導入される構造の深さの少なくとも2倍のインクの層厚は、複製がインクの塗布後にのみ行われる場合に特に有利である。これにより、複製中に、導入された構造が塗布されたインクに完全に浸透することが防止される。
【0103】
別の実施例では、インクは、複製層に導入される構造の深さよりも薄い層厚で印刷されることが好ましい。複製中、インクは、それによって、プリントの層全体を通して導入された構造で浸透することができる。それによって、連続構造によるプリントは、キャリア側からも見える高解像度の微細構造化を受けることができ、これは、インクジェットプリンタのプリント解像度を超え、したがって、別のセキュリティ特徴を現わす。
【0104】
また、少なくとも1つのインクがまだ複製されていない複製層に塗布され、少なくとも1つのインクが複製された複製層に塗布されることも考えられる。したがって、少なくとも1つのプリントが、まだ複製されていない複製層に設けられ、少なくとも1つのプリントが、既に複製された複製層に設けられる。この場合、同じ及び異なるインクを使用することができる。例えば、1つのインクは、特に別の色で他のインクの背景色を提供することができる。
【0105】
複製層は、それに塗布されたプリントと一緒に複製される場合に有利である。これにより、印刷層及び複製層は、それぞれ、少なくとも部分的に複製構造を得る。プリントの複製構造は、透明領域又は基板若しくはドキュメントの窓に適用する場合、裏面から観察すると光学的に見え、別のセキュリティ特徴を示す。透過光で観察される場合、このようにプリントに導入された構造は、特に、異なる厚さコントラストのために視覚的に認識可能なセキュリティ特徴を現わすことができ、これは、最初は観察者に隠れてみえて、透過光で観察される場合にのみ、特に、すかしと同様に、見えるようになる。
【0106】
複製は、好ましくは、プリントと見当合わせして行われる。特に、プリントに対する複製の許容範囲は、+/-1.0mm以内、好ましくは+/-0.7mm以内、特に好ましくは+/-0.4mm未満で達成される。
【0107】
後続の複製中に、導入された複製構造がプリントに刻印されるが、プリントによって覆われた複製層の領域には刻印されないように、インクが塗布されることが好ましい。
【0108】
プリントは、プリントに導入される複製構造の深さよりも大きい厚さを有することが好ましい。特に、プリントは、0.5μm~10μmの間の層厚を有する。
【0109】
多層フィルムの上面図において、プリントに隣接して配置される複製層の領域が複製されないように、特に、プリントのエンボス加工された性質により複製されないように、複製構造が導入されることが有利である。以下では、この領域をコロナと呼ぶ。複製中、コロナは、複製ツールと接触しないことが好ましい。多層フィルムの上面図において、コロナは、特に、プリントに直接隣接する。複製されない複製層の領域は、インク塗布厚に依存する。例えば、コロナは、実質的に1μm~100μmの間の幅を有する。
【0110】
複製中、プリントが複製層に押し込まれることが好ましい。熱可塑性設計の場合、複製層は、一般的に、インクプリントよりも容易に変形可能である。これは、特に、高度に顔料化されたインク及び架橋されたUVインクの場合に当てはまる。これは、特に、プリントが配置される又は置かれる複製層の領域が層厚を失うという効果と実質的に理解されるべきである。この場合、プリントの領域における複製層の厚さは、好ましくは、全領域にわたって均一に又は均等に減少する。多層フィルムの上面図において、プリントに隣接して、すなわちプリントに隣接して配置される複製層の領域において、複製層の層厚は、プリントからの距離が増加するにつれて、特に複製中に、減少する。
【0111】
複製中に、プリントが圧縮及び/又は変形されることが好ましい。これにより、特に、複製層としてのプリントを少なくとも部分的に一緒に複製することができる。
【0112】
例えば、接着性を改善するために必要であれば、接着促進層を、多層フィルムの層、及び/又は、インク若しくはプリントの下、及び/又は、インク若しくはプリントに少なくとも部分的に塗布することが有利である。接着促進層は、好ましくは、後にインクが塗布されるこれらの領域にのみ塗布される。
【0113】
接着促進層によって、特に、それに連結された層の間に良好な接着性が保証される。その結果、層間剥離を可能な限り防止することができる。特に、接着促進層は、硬化したプリントの場合に、望ましくない所定の破断点が形成されることを防止する。
【0114】
特に、PVC、熱硬化及びUV硬化アクリレートの混合物、例えば、官能性アクリレート、ヒドロキシ官能性コポリマー、ブロックコポリマー(例えば、BYK又はTEGOから)の接着改善表面添加剤を有する接着促進層、プラズマ及び/又はコロナ処理、及び/又は、金属蒸着によるシーディングは、接着促進層として考えられる。
【0115】
接着促進層は、好ましくは、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷、スロットダイ、及び/又は、スプレー塗装によって製造することができる。印刷中に、接着促進層が0.1μm~1.5μmの間の層厚を有することが好ましい。接着促進層が蒸着によって製造される場合、層の厚さは、好ましくは1nm~50nmの間である。
【0116】
インクがまだ複製されていない複製層に塗布される場合、接着促進層は、多くの場合、省略され得る。経験によれば、プリントと一緒の複製層の複製によって、複製層へのプリントの接着性が改善される。更に、一緒の複製は、プリントの表面粗化をもたらし、それによって、後続の層もプリントに良好に接着する。
【0117】
別の実施例では、接着防止層は、好ましくは、多層フィルムの層及び/又はインク若しくはプリントに塗布され得る。
【0118】
接着防止層は、好ましくは、アクリル酸ケイ素、フッ素化ポリマー及び/又はワックスから形成される。
【0119】
インクが、多層フィルムの層、特にキャリア層、剥離層、複製層、反射層、接着剤層、及び/又は、保護層に、少なくとも1つの接着促進層及び/又は接着防止層を介在させて塗布される場合に有利である。
【0120】
別の実施例では、レーザー感受性顔料を含むインクが提供されることが好ましい。顔料は、例えば、オクタモリブデン酸アンモニウム(AOM)とすることができる。レーザー感受性顔料は、多層フィルム及び/又はプリントの特に別の個別化が印刷の下流で可能になるという利点をもたらす。レーザー感受性顔料を含むインクは、透明若しくは半透明に形成されてもよく、又は、少なくとも部分的に着色されてもよい。
【0121】
レーザー感受性顔料又はレーザー感受性顔料を含むインクが、例えば、レーザー照射にさらされると、特に顔料の光学的外観が変化する。顔料は、特に、色を変化させる、又は、黒化させる。別のタイプのレーザー感受性顔料は、特に、変性マイカに基づいている。これらの変性マイカは、レーザー照射によって強く加熱され、したがって周囲のポリマーを燃焼させてカーボンブラックを形成する。これは、同様に、黒化につながる。
【0122】
有利には、インク又はプリントは、放射線源、特に、レーザーによって少なくとも部分的に照射される。これにより、プリントの光学的外観が変化する。特に、レーザー感受性顔料及び/又は有機染料を含むインク又はプリントは、放射線源によって照射される。
【0123】
プリントの少なくとも一部の色変化及び/又は黒化及び/又は漂白は、照射、特にレーザービームによる照射によって生じることができる。更に、好ましくは、プリントの以前は不可視及び/又は透明な部分若しくは領域を、照射によって、部分的又は完全に可視にすることができる。照射前に不可視及び着色の両方で形成することができるプリントの少なくとも一部の部分的な黒化、及び、完全な黒化もまた可能である。また、プリントの着色又は可視領域は、特に、着色顔料の代わりに、耐光性の低い有機染料が少なくとも部分的にプリントの色度を形成する場合に、漂白することができ、特に、可視コントラスト差をもたらすことができる。特に、プリントの別の若しくは補助的な個別化、又は、プリント若しくは多層フィルムの個別化は、照射によって達成され得る。
【0124】
多層フィルムの製造中、及び、フィルムの製造後、特に、フィルムを基板、特に、セキュリティドキュメントに塗布した後に、補助的な個別化を行うことができる。
【0125】
プリントを数回照射することも考えられる。それによって、特に、第1の補助的な個別化又は個人化と、少なくとも1つの別の補助的な個別化又は個人化とが作成される。照射は、好ましくは、プリントの異なる点で行われる。しかしながら、照射又は照射領域が重複することも可能である。
【0126】
複数の照射は、全て多層フィルムの製造中に、又は、部分的に製造中に、及び、部分的に製造後に、特に、多層フィルムの基板への塗布後に行うことができ、又は、全て製造後に行うことができる。第1の補助的な個別化が多層フィルムの製造中に行われ、少なくとも1つの別の個別化がフィルムの製造後に、特に、フィルムの基板への塗布後に行われると有利である。
【0127】
別の又は補助的な個別化の製造のために複数の可能性が考えられる。1つの可能性は、例えば、不可視インクの塗布である。特にモチーフとして、全表面に又は部分的にインクを塗布することができる。その後、部分的に又は完全にインクの照射が行われる。したがって、インクの領域のみ、又は、インクで印刷された全表面が、これによって見えるようになる。塗布されたインクの領域のみが照射される場合に有利である。
【0128】
更に、少なくとも1つのインク、特に不可視又は透明なインクを、可視マーキング、特に可視部分マーキングに隣接して、好ましくは、直接隣接して塗布することが可能である。マーキング又は部分マーキングは、本発明の意味の範囲では、インク又はプリントの領域であり得る。しかしながら、可視マーキング又は部分マーキングは、多層フィルムの層のいずれか1つに配置することができる、コード、装飾、装飾デザイン、及び/又は、モチーフであることも可能である。コード、装飾デザイン、及び/又は、モチーフは、特に規定されていない方法で作成又は製造されていてもよい。少なくとも1つのインクは、少なくとも1つのインクの照射された表面が、可視マーキング又は部分マーキングを有する全体マーキングを形成するように、照射されることが好ましい。ここで、可視マーキング又は部分マーキングは、コードの一部、形状の一部、特に幾何学的形状の一部、又は、モチーフの一部を表し、形状又はモチーフは、少なくとも1つのインクの少なくとも部分的な照射により照射されたインクによって完成されることが考えられる。
【0129】
また、インクを、可視及び/又は着色表面及び/又は構造及び/又はモチーフとして塗布し、次いで、部分的に又は完全にレーザーで照射することによって黒化することも可能である。
【0130】
別の実施例では、好ましくは、洗浄ニスとして形成されるプリントが設けられる。
【0131】
リフトオフ法は、従来技術から知られている。それらは、特に、金属微細構造体を製造するために役立つ。リフトオフ法では、特に洗浄ニスが所望の設計で塗布され、次いで少なくとも1つの別の層、特に、メタライゼーション又は別のニスで上塗り、又は、覆われる。次いで、洗浄ニスは、別の層又は別の層の一部と一緒に、溶媒処理によって再び除去することができる。その結果、別の層は、洗浄ニスが事前に塗布されていない場所にのみ残る。
【0132】
洗浄ニスとしてプリントを設けるために、特に、ポリビニルピロリドン及び/又はメチルセルロースを含むインクが提供される。
【0133】
この場合、インクの解像度は、特に、実質的に、インクジェットのDPI解像度の範囲内にある(以下の表を参照されたい)。溶剤処理中のプリントの一定の膨張により、表面領域の増加があり得る。プリントの解像度の著しい低下を引き起こさないように、ドットゲインは約10%を超えてはならない。
【0134】
DPI ドットサイズ (μm)
300 84.7 μm x 84.7 μm
360 70.6 μm x 70.6 μm
600 42.3 μm x 42.3 μm
900 28.2 μm x 28.2 μm
1200 21.2 μm x 21.2 μm
水、エタノール、及び/又は、イソプロパノールを溶媒として使用することができる。
【0135】
洗浄ニスとして形成されたプリントを設けた後、金属層及び/又はメタライゼーションを全面に塗布することが好ましい。次いで、洗浄ニスは、特に溶剤処理によって、金属層及び/又はメタライゼーションの一部と共に再び除去される。その結果、金属層及び/又はメタライゼーションは、インクが塗布されていない、又は、プリントが事前に設けられていない場所にのみ残る。
【0136】
別の実施例では、干渉顔料及び/又は少なくとも1つの体積ホログラムを有する層を、少なくとも部分的に塗布することができる。更に、好ましくは、少なくとも1つの光吸収、好ましくは不透明、特に好ましくは黒色プリントが、少なくとも部分的に設けられる。
【0137】
干渉顔料は一般的に知られており、観察角度及び/又は照明角度を変化させる場合に光学的に変化する色変化効果を有する。顔料は、多くの場合、透明又は半透明であり、このために、明るい背景では見ることが難しく、又は、全く見ることができず、その場合、色変化効果も相応に弱い。体積ホログラムは、一般的に知られており、観察角度及び/又は照明角度が変化する場合に光学的に変化する効果を有する。体積ホログラムは、多くの場合、透明又は半透明であり、このために、明るい背景では見ることが難しく、又は、全く見ることができず、その場合、光学的に変化する効果も相応に弱い。光吸収性又は不透明性に形成されたプリントは、特に、干渉顔料及び/又は体積ホログラムがプリントにおいて部分的により良好に目立つ、又は、見えるようになることを保証する。好ましくは、プリントは実質的に黒色に形成される。
【0138】
干渉顔料を有する層は、好ましくは、全表面に、又は、パッチ形態、ストリップ形態で、又は、広範囲のオーバーレイフィルムとして塗布される。体積ホログラムは、好ましくは、パッチ形態、又は、ストリップ形態、又は、広範囲のオーバーレイフィルムの形態で塗布される。プリント、特に、光吸収及び/又は不透明及び/又は黒色プリントは、ここでは、部分的にのみ又は領域内に形成されることが有利である。これは、光学効果が、プリントによって設けられる領域において目立っていることから、干渉顔料及び/又は体積ホログラムが局所的にのみ、すなわち、プリントによって設けられる領域においてのみ塗布されるという光学印象を作成する。
【0139】
プリントがコードとして、特にQRコードとして、又はマイクロQRコードとして、又はバーコードとして、又はデータマトリックスコードとして形成される場合に有利である。QRコード又はマイクロQRコードは、複数のコードエレメントから構成されることが好ましい。マイクロQRコードは、例えば、11×11、13×13、15×15、又は、17×17のコードエレメントから形成することができる。QRコードは、例えば、22×22又は32×32のコードエレメントから形成することができる。
【0140】
個々のコードエレメントが複数のインク液滴から構成されている場合に有利である。特に、一方向、特に、X方向に観察すると、コードエレメントを設けるために、少なくとも2つ、好ましくは、4つのインク液滴が印刷される。したがって、特に2×2、好ましくは、4×4のインク液滴が、2次元観察の場合に、コードエレメントのために印刷又は必要とされる。インク液滴が多ければ多いほど、コードエレメント、したがってコードの縁部もより良く且つよりきれいに見える。
【0141】
QRコード又はマイクロQRコードは、いずれの場合も、好ましくは、約5×5mm、好ましくは3×3mmのサイズを有する。
【0142】
プリントに関連する情報は、好ましくはデータベースに記憶され、プリントの塗布は、特に記憶された情報に基づいて行われる。
【0143】
デジタルプリントにおけるインクの塗布のために、300~1200npi (ノズル/インチ)の解像度を有するインクジェットプリントヘッドが使用されることが好ましい。これにより、インクの高解像度の塗布が可能になる。その結果、微細なモチーフ構造を鋭い端部で印刷することもできる。原則として、プリントヘッドの解像度は、dpi (ドット/インチ)で表される層の接着剤液滴の達成された解像度に対応する。
【0144】
インクの塗布のために、15μm~25μmのノズル直径、及び/又は、30μm~150μmのノズル間隔若しくは30μm~80μmのノズル間隔を有するインクジェットプリントヘッドが使用される場合が更に好ましい。このノズル直径の許容範囲は、±5μm未満、このノズル間隔の許容範囲は、±5μm未満である。
【0145】
ノズル間隔、特に印刷方向を横切るノズル間隔が小さいことによって、転写されたインクが層上で互いに十分に接近して位置すること、又は、任意選択的に重なり合うことが保証される。その結果、印刷面全体にわたって良好な接着性が達成される。
【0146】
更に、0.5g/m2~30g/m2の単位面積当たりの重量、及び/又は、0.2μm~30μmの間、より好ましくは0.5μmから15μmの間の層厚でインクが少なくとも1つの部分領域に塗布されることが好ましい。良好な接着性を保証するこの領域内で、インクの塗布量又は層厚は、塗布結果を更に最適化するために、使用される層に応じて、特にその吸収性に応じて変えることができる。
【0147】
インクジェットプリントヘッドを介して、接着剤液滴が6kHz~110kHzの周波数で提供される場合が有利である。印刷されるフィルムの10m/分~30m/分の通常の搬送速度の場合には、360dpi~1200dpiの所望の解像度が達成され得る。
【0148】
好ましくは、±6%未満の許容範囲を有する2pl~50plの体積を有するインク液滴が、インクジェットプリントヘッドによって提供される。したがって、上記の塗布解像度及び塗布速度の場合、必要なインク量が層に均等に塗布される。
【0149】
インク液滴が、±15%未満の許容範囲で5m/秒~10m/秒の空気速度でインクジェットプリントヘッドによって提供される場合が好ましい。これにより、プリントヘッドから層への転写中の特にドラフトによるインク液滴の偏向が最小限に抑えられ、その結果、インク液滴は、所望の規定された配置で層に着地する。
【0150】
10μm~100μmの間、好ましくは20μm~90μmの間、特に好ましくは21.2μm~84.7μmの間の幅又は範囲を有するインク液滴が塗布されることが好ましい。
【0151】
インクが、30℃~45℃、好ましくは40℃~45℃の塗布温度及び/又は7mPas~30mPas、好ましくは5mPas~20mPasの粘度で層に塗布される場合が有利である。プリントヘッドの温度制御によって、インクが確実に所望の粘度を有する。層に塗布されるインクの画素サイズ及び画素形状は、粘度に依存し、ここで、インクの最適な印刷適性は、特定の値の場合に保証される。この目的のために、プリントヘッドは、温度制御可能、特に加熱可能及び/又は冷却可能に形成することができる。
【0152】
インクがプリントヘッドを出て、周囲空気又は層と接触するとすぐに、冷却が起こり、それによってインクの粘度が増加する。これは、転写されたインク液滴の流れ又は拡散に対抗する。
【0153】
更に、インクの塗布中に、インクジェットプリントヘッドと層との間の距離が1mmを超えないことが有利である。これにより、ドラフトによるインクの影響も低減される。
【0154】
インクの塗布中、インクジェットプリントヘッドと層との間の相対速度は、好ましくは10m/分~100m/分、特に約10m/分~75m/分である。これらの速度で、特に上記のパラメータと組み合わせて、層に印刷されたインクの所望の解像度が達成される。
【0155】
黒色UV硬化インクの組成の例を以下に示す(%は容量パーセント)。
アクリル酸2-フェノキシエチル 10%~60%、好ましくは25%~50%;
4-(1-オキソ-2-プロペニル)-モルホリン 5%~40%、好ましくは10%~25%;
エキソ-1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]-ヘプト-2-イルアクリレート 10%~40%、好ましくは20%~25%;
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシド 5%~35%、好ましくは10%~25%;
ジプロピレングリコールジアクリレート 1%~20%、好ましくは3%~10%;
ウレタンアクリレートオリゴマー 1%~20%、好ましくは1%~10%;
カーボンブラック顔料 0.01%~10%、好ましくは2.5~5.0%。
【0156】
熱乾燥シアン着色インクの組成の例を以下に示す(%は容量パーセント)。
2-ピロリドン 5%~15%、好ましくは7%~10%;
1,5-ペンタンジオール 6%~10%、好ましくは8%~9%;
2-ピロリドン 5%~15%、好ましくは7%~10%;
2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール 5%~15%、好ましくは7%~10%;
染料(シアン用、例えばDB 199) 5%~10%、好ましくは7%~10%;
水 30%~80%、好ましくは60%~70%。
【0157】
熱乾燥顔料含有インクの組成の例を以下に示す(%は容量パーセント)。
N-メチル-N-オレイル-タウレート 0.5%~2%、好ましくは1%~1.5%;
ジエチレングリコール 5%~10%、好ましくは7%~8%;
グリセロール 10%~15%、好ましくは11%~13%;
顔料 1%~5%、好ましくは2%~3%;
水 20%~80%、好ましくは60%~75%。
【0158】
このような配合物は、特に、所望の特性、特に、迅速な硬化及び/又は乾燥及び粘度をもたらし、これは、良好な印刷適性を可能にし、同時に、安定的且つ鋭い塗布を可能にする。
【0159】
好ましくは、光硬化、特にUV硬化インクが印刷される。
【0160】
この場合、光とは、特に、人間の目に見える電磁放射線の部分だけでなく、特に、可視光に隣接する範囲、特に赤外線及び/又は紫外線も意味する。実質的に、光の物理的定義が適用され、すなわち、光は、電磁スペクトル全体をカバーする。
【0161】
インクは、放射線、好ましくはUV放射線、特にUV LED放射線によって、部分的に硬化、又は、予備硬化及び/又は硬化させることができる。以下、このようなインクをUVインクと呼ぶ。
【0162】
UVインクの場合、1g/ml~1.5g/ml、好ましくは1.0g/ml~1.1g/mlの密度を有するインクが使用されると有利である。
【0163】
UVインクを予備硬化させることが有利である。インクの予備硬化は、インクの塗布後、0.02秒~0. 025秒で行われることが好ましい。印刷後、インクは、硬化によって層に非常に迅速に固定され、その結果、インク液滴の流れ又は拡散が大幅に回避され、高い印刷解像度が可能な限り良好に維持される。しかしながら、層の特性のためにUV予備硬化が必要とされない用途もあり得る。これは、塗布されたインク液滴が、予備硬化なしで、層に流れたり拡散しない場合には必要ではない。
【0164】
予備硬化の場合、UVインクの予備硬化がUV光で行われ、そのエネルギーが380nm~420nmの間の波長範囲において少なくとも90%放出されると有利である。特に、上記のUVインク配合物の場合には、ラジカル硬化はこれらの波長で確実に開始される。
【0165】
UVインクの予備硬化が、2W/cm2~5W/cm2 の全放射照度、及び/又は0.7W/cm2~2W/cm2の正味放射照度、及び/又は8 mJ/cm2~112mJ/cm2のインクへのエネルギー投入で行われる場合、更に有利である。これにより、特に、インクの粘度が所望の値に上昇する。その結果、UVインクが層に塗布されると、UVインクの流れ又は拡散が、完全な硬化のためのUV硬化ステーションを通過するまでの時間で大幅に最小限に抑えられる。
【0166】
UVインクの予備硬化は、好ましくは0.02秒~0. 056秒の露光時間で行われる。このように、層の上記の搬送速度及び特定の放射照度において、予備硬化のために必要なエネルギーの投入が保証される。
【0167】
UVインクを予備硬化させる場合には、その粘度を50mPas~200mPasに上昇させることが有利である。このような粘度の上昇によって、UVインクは、層に拡散又は流れることなく、UVインクを印刷するときに達成される解像度でデジタルプリントを層に実質的に転写することができる。
【0168】
インクの硬化、特に完全な硬化は、層への塗布後、特に0.2秒~1.7秒で行われる。硬化は、好ましくは、スペース上の理由から一般的に下流に配置されたUV硬化ステーションで行われる。
【0169】
UVインクの硬化が、380nm~420nmの間の波長範囲で少なくとも90%のエネルギーが放出されるUV光で行われると有利である。特に、上記のUVインク配合物の場合には、ラジカル硬化はこれらの波長で確実に開始される。
【0170】
更に、UVインクの硬化は、12W/cm2 0~20W/cm2 の全放射照度、及び/又は、4.8W/cm2~8W/cm2の正味放射照度、及び/又は、200mJ/cm2~900mJ/cm2、好ましくは200mJ/cm2 ~400mJ/cm2の接着剤へのエネルギー投入で行われることが好ましい。このようなエネルギー投入の場合、インクの確実な硬化が達成される。その結果、硬化ステップの後、デジタルプリントはもはや粘着性はなく、印刷された層又はフィルムは原則的に巻き上げることができる。
【0171】
更に、UVインクの硬化が、0.04秒~0.112秒の露光時間で行われる場合に有利である。指定された総放射照度及び通常の搬送速度の場合、UVインクの硬化のために必要な正味エネルギー投入がこのようにして保証される。
【0172】
しかしながら、それ自体で乾燥、及び/又は、塗布後若しくは印刷後に乾燥されるインクを使用することも可能である。特に、溶剤及び/又は水を含むインクがこのために適している。好ましくは、熱乾燥性インクが使用される。溶媒及び/又は水の一部は、インク液滴の飛行段階中に既に蒸発することがある。次いで、少なくとも1つの別の部分を添加剤により蒸発させることができる。
【0173】
インクは、特に放射線、特にIR放射線(IR=赤外線)によって乾燥させることができる。対流乾燥機の使用も考えられる。乾燥の持続時間は、好ましくは1秒~60秒の間であり、及び/又は、温度は40℃~120℃の間である。
【0174】
プリントは、複製層に配置されることが好ましい。特に、プリントは少なくとも部分的に複製される。このことは、プリントが少なくとも部分的に複製構造を有することを意味する。複製構造がプリントと見当合わせされて配置されていると有利である。特に、プリントに対する複製の許容範囲は、+/-1.0mm以内、好ましくは+/-0.7mm以内、特に好ましくは+/-0.4mm未満である。
【0175】
多層フィルムの上面図において、プリントに隣接する、特にプリントに直接隣接する複製層の少なくとも1つの領域が複製されないことが有利である。このことは、特に、この領域が複製構造を有していないことを意味する。この領域の表面は滑らかであることが好ましい。この領域は、特に、プリントに対してコントラストを高めることを保証する。構造転写を伴わないこの領域の幅は、特に、複製ツールのタイプ、特に、複製ツールが硬質又は可撓性に形成されているか、プリントの塗布厚及び/又はプリントのレイアウト、すなわち、例えば、プリントの印刷された領域の互いの距離に依存する。例えば、コロナは、実質的に1μm~100μmの間の幅を有する。特に、より柔軟性の低い複製ツールの場合、プリントのエンボス加工された性質は、構造化と複製層の全表面との間の完全な接触を防止することができる。
【0176】
塗布されたインク又はプリントは、好ましくは、複製構造、特に複製層の回折構造を部分的にのみ充填する。しかしながら、インク又はプリントが存在する領域では、これらが複製構造を完全に充填することも可能である。更に、インク又はプリントが複製構造のトポグラフィに追従することも考えられる。
【0177】
多層フィルムは、少なくとも部分的に接着促進層を有することができ、接着促進層は、好ましくは、プリントも配置される領域にのみ塗布される。好ましくは、プリントは接着促進層に直接隣接する。
【0178】
更に、多層フィルムは、接着防止層を少なくとも部分的に有することができる。接着防止層は、プリントに配置されることが好ましい。
【0179】
インク又はプリントは、レーザー感受性顔料を含むことが好ましい。
【0180】
プリントが単一のインクで形成され、少なくとも第1の領域と第2の領域とを有し、これらの領域の光学的外観が互いに異なることが有利ある。一方の領域は透明又は不可視に形成され、他方の領域は不透明及び/又は着色されて形成され得る。また、いずれかの領域が黒色に着色されていることも考えられる。
【0181】
特に、プリントは、可視領域及び不可視領域を有する。ここで、レーザー感受性顔料を用いたプリントであれば有利である。
【0182】
多層フィルムは、少なくとも部分的に、好ましくは全表面にわたって、干渉顔料及び/又は少なくとも1つの体積ホログラムを有する層を有することができる。プリントは、好ましくは光吸収性、特に不透明、特に好ましくは黒色に形成される。
【0183】
干渉顔料又は体積ホログラムは、プリントを通して特に強く目立ち、したがって観察者にはよく見える。特に、部分的に計画的に塗布されたプリントを通して、観察角度及び/又は照明角度に依存する色の印象を、干渉顔料及び/又は体積ホログラムの個々の表面領域においてのみ生成することもできる。
【0184】
プリントは、好ましくは、体積ホログラムの領域及び/又は干渉顔料を含む層にのみ配置される。これは、体積ホログラム及び/又は干渉顔料が部分的にのみ塗布されるという印象を生み出す。理想的には、干渉顔料を含む層は、全表面にわたって形成され、又は、体積ホログラムは、パッチ又はストリップとして、又は、広範囲なオーバーレイフィルムとして形成される。
【0185】
プリントは、干渉顔料を含む層に直接隣接して、又は、体積ホログラムに必ずしも配置される必要はない。プリントと干渉顔料及び/又は体積ホログラムを備える層との間に更に別の層を配置することも可能である。
【0186】
プリントがコードとして、特にQRコードとして、又は、マイクロQRコードとして、又は、バーコードとして、又は、データマトリックスコードとして形成される場合に有利である。
【0187】
プリントを多層フィルムの複数の層の各々に塗布することが有利である。それぞれの層に塗布されるプリントは、好ましくは、互いに異なるものでもよい。特に、多層フィルムの上面図において、プリントは、互いに見当合わせして、及び/又は、互いに重なり合って、及び/又は、隣接して配置される。
【0188】
以下、添付図面を用いた複数の実施例を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0189】
図1図1は、多層フィルムにおけるプリントの可能な配置の概略図である。
図2図2は、複製構造の概略形成プロセスを示す。
図3図3は、1つの実施例における多層フィルムの概略製造プロセスを示す。
図4図4は、実施例におけるレーザー照射前後の多層フィルムの概略図である。
図5図5は、別の実施例におけるレーザー照射前後の多層フィルムの概略図である。
図6図6は、別の実施例におけるレーザー照射前後の多層フィルムの概略図である。
図7図7は、1つの実施例におけるプリントの概略上面図である。
図8a図8aは、別の実施例におけるプリントの概略上面図である。
図8b図8bは、別の実施例におけるプリントの概略上面図である。
図8c図8cは、別の実施例におけるプリントの概略上面図である。
図8d図8dは、別の実施例におけるプリントの概略上面図である。
図9a図9aは、別の実施例におけるプリントの概略上面図である。
図9b図9bは、別の実施例におけるプリントの概略上面図である。
図10a図10aは、1つの実施例におけるプリントの領域の顕微鏡画像である。
図10b図10bは、1つの実施例におけるプリントの領域の顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0190】
図1は、多層フィルム10における少なくとも1つのプリント100の可能な配置の概略図を示す。
【0191】
インクは、原則として、多層フィルム10の各層に少なくとも部分的に塗布することができる。その結果、プリント100は、原則として、多層フィルム10の各層に設ける、又は、配置することができる。特に、プリント100は、キャリア層12、剥離層14、複製層18、保護層16、反射層20、及び/又は、接着剤層22に配置される。プリント100は、個別化されたプリントでもよいし、個別化されていないプリントでもよい。
【0192】
必要に応じて、インクが塗布される層は、この層へのインク又はプリント100の十分な接着性又は非接着性が保証され得るように、事前に改質されることが好ましい。これは、例えば、ニス配合物中の対応する表面添加剤、又は、層の対応する設計、例えば、表面の架橋可能なUV活性基によって保証され得る。これは、UV硬化インクが使用される場合に特に有利である。
【0193】
インクが多層フィルムの複数の層に塗布される場合が有利である。層に塗布されるインクは、同一であっても異なっていてもよい。特に、インクは互いに見当合わせして塗布される。これにより、少なくとも1つの第1のプリント100が複数の層に形成された多層フィルム10が得られる。特に、プリント100は、互いに見当合わせして配置することができる。
【0194】
多層フィルム10の複数の層に複数のプリント100が設けられる場合、個々のプリント100は、互いに異なるように形成され得る。これは、特に、プリント100の光学的外観が互いに異なるという点で理解されるべきである。プリント100は、例えば、異なるインクによって形成することができ、及び/又は、互いに異なるモチーフとして形成することができる。
【0195】
更に、多層フィルム10の上面図において、プリント100は、互いにオフセットされていてもよく、又は、重なり合って配置されていてもよい。しかしながら、多層フィルム10の上面図では、プリント100は、互いに隣接して配置することもできる。有利には、多層フィルムの上面図において、プリント100の少なくともいくつか又はプリント100のいくつかの部分が一緒になって全体的なモチーフを形成するように、プリント100は層に配置又は形成される。
【0196】
好ましくは、インクはキャリア層12に少なくとも部分的に塗布される。このようにして、少なくとも1つのプリント100が少なくとも部分的にキャリア層12に配置された多層フィルム10が得られる。
【0197】
キャリア層12に塗布されるインクは、好ましくは、インク又はプリント100が触覚及び/又は触覚的に知覚可能な特性を有するように塗布される。プリント100が個別化されるとき、個別化された触覚表面が、特に、これにより生成されることができる。設けられるプリント100又は印刷されるインクは、特に、表面構造を有する。特に、インク又はプリントが、層、特に選択的に後に塗布される保護層16にある構造を与える若しくは構造化するように、インクが塗布され、又は、プリントが設けられている。
【0198】
インクは、多層フィルム10を基板に塗布し、続いてキャリア層12を除去した後に、インク又はプリント100が少なくとも部分的に、好ましくは完全にキャリア層12に残るように、キャリア層12に更に塗布することができる。これにより、キャリア層12に残っているプリント100を読み取ることによって、例えば、後に、例えば、多層フィルム10のどの部分が実際に塗布されたかを記録することができる。
【0199】
キャリア層12は、特に、自立型材料及び/又はプラスチック類の物質からなる。キャリア層12は、PET、ポリオレフィン、特にOPP、BOPP、MOPP、PP及び/又はPE、PMMA、PEN、PA、ABS、及び/又は、これらのプラスチックの複合材料から形成されることが好ましい。また、キャリア層12は、製造業者によって既にプレコートされていることも可能であり、多層フィルム10は、このプレコートされた材料に形成される。また、キャリア層12は生分解性及び/又は堆肥化可能なキャリア層12であることも可能である。この場合、EVOHを使用することが好ましい。キャリア層12の層厚は、有利には、4μm~500μmの間、特に4.7μm~250μmの間にある。
【0200】
多層フィルム10は、キャリア層12及び多層摩耗層、例えば多層装飾プライ、並びに、特に熱活性可能な接着剤層を有する積層フィルムとして形成することができる。キャリア層12及び摩耗層は、基板にスタンピング層の形態で一緒に配置される。
【0201】
特に、多層フィルム10は、転写フィルムとして形成される。転写フィルムは、特に、好ましくは複数の層から形成される転写プライを含み、特に、少なくとも1つの接着剤層22、1つの反射層20、1つの複製層18及び/又は1つの保護層16、及び、キャリア層12を備える。転写プライはキャリア層12から剥離可能である。転写プライの剥離を容易にするために、剥離層14を転写プライとキャリア層12との間に配置することができる。
【0202】
好ましくは、インクは、少なくとも部分的に剥離層14に塗布される。このようにして、少なくとも1つのプリントが剥離層14に少なくとも部分的に配置されている多層フィルム10が得られる。剥離層は、一部14'及び全表面14の両方に存在することができる。
【0203】
剥離層14によって、特に、キャリア層12から多層フィルム10の層を確実に非破壊的に剥離することができる。剥離層14は、ワックス、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、セルロース誘導体、及び/又は、ポリ(オルガノ)シロキサンから形成されることが好ましい。上記のワックスは、天然ワックス、合成ワックス、又は、それらの組み合わせであり得る。上記のワックスは、例えば、カルナウバワックスである。上記のセルロース誘導体は、例えば、酢酸セルロース(CA)、硝酸セルロース(CN)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、又は、それらの混合物である。上記のポリ(オルガノ)シロキサンは、例えば、シリコーンバインダー、ポリシロキサンバインダー、又は、それらの混合物である。剥離層14は、好ましくは1nm~500nmの層厚、特に5nm~250nmの層厚、特に好ましくは10nm~250nmの層厚を有する。
【0204】
剥離層14は、公知の印刷方法で製造することができる。特に、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、又は、スロットダイによる印刷が適している。しかしながら、剥離層14は、蒸着、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、及び/又は、スパッタリングによって形成することもできる。
【0205】
インクは、保護層16に少なくとも部分的に塗布されることが有利である。好ましくは、インクは、全表面に形成された保護層16に部分的に塗布される。したがって、プリント100が保護層16に少なくとも部分的に配置されている多層フィルム10が得られる。特に、プリント100は、観察方向において、保護層16の下に配置され、したがって、保護層16によっても保護されている。
【0206】
保護層16は、好ましくは、PMMA、PVC、メラミン、及び/又は、アクリレートの層である。保護ニスは、放射線硬化二重硬化ニスから成ることができる。この二重硬化ニスは、液体形態での塗布中及び/又は塗布後の第1のステップで熱的に予備架橋することができる。好ましくは、第2のステップにおいて、特に多層フィルムの加工後に、二重硬化ニスは、特に高エネルギー放射線、好ましくはUV放射線によって、ラジカル後架橋される。このタイプの二重硬化ニスは、不飽和アクリレート又はメタクリレート基を有する異なるポリマー又はオリゴマーから成ることができる。これらの官能基は、特に、第2のステップにおいて、互いにラジカル架橋され得る。第1のステップにおける熱的予備架橋のために、少なくとも2つ以上のアルコール基がこれらのポリマー又はオリゴマー中に存在することも有利である。これらのアルコール基は、多官能性イソシアネート又はメラミンホルムアルデヒド樹脂で架橋させることができる。エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、及び、特にアクリレートアクリレートのような異なるUV原料が、好ましくは不飽和オリゴマー又はポリマーとして考慮される。TDI (TDI=トルエン-2,4-ジイソシアネート)、HDI (HDI=ヘキサメチレンジフェニルメタンジイソシアネート)又はIPDI (IPDI=イソホロンジフェニルメタンジイソシアネート)に基づくブロックされた代表及びブロックされていない代表の両方が、イソシアネートとして考慮され得る。メラミン架橋剤は、完全にエーテル化された形態であってもよく、イミノ型であってもよく、又は、ベンゾグアナミン代表例を表してもよい。
【0207】
保護層16は、50nm~30μm、好ましくは1μm~5μmの間の層厚を有することが好ましい。保護層16は、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、又は、スロットダイによって、及び/又は、蒸着、特に物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、及び/又は、スパッタリングによって製造することができる。
【0208】
更に、インクは、反射層20、特に金属層及び/又はメタライゼーション及び/又はHRI層に少なくとも部分的に塗布されることも可能である。このようにして、少なくとも1つのプリント100が反射層20に少なくとも部分的に配置されている多層フィルム10が得られる。
【0209】
インクが金属層に塗布される場合、インク又はプリント100は、特に、脱金属化のためのエッチングレジストとして機能することができる。インク又はこのようにして設けられたプリント100がエッチングレジストとして形成される場合、次に、次のステップで脱金属化を行うことができる。金属層は、プリント100によって覆われていない領域で除去されることが好ましい。例えば、インクがアルカリ含有である場合には、塗布によっても直接エッチングを生成することができる。プリント100が個別化される場合、それによって、個別化された脱金属化を生成することもできる。
【0210】
反射層20は、全表面及び領域の両方に塗布することができる。反射層20は、特にモチーフの形成のためにパターン化されて形成されることが好ましい。反射層20は、パターン及び/又はモチーフを表すことができ、特に、多層フィルム10の他の層のプリント100及び/又は複製層18の構造と見当合わせして配置することもできる。
【0211】
反射層20は、好ましくは、金属層又はメタライゼーションである。金属層又はメタライゼーションは、アルミニウム、クロム、金、銅、スズ、銀、又は、そのような金属の合金から形成されることが好ましい。
【0212】
金属層又はメタライゼーションは、好ましくは蒸着によって、特に真空蒸着によって製造される。蒸着された金属層又はメタライゼーションは、全表面にわたって行われ、全表面にわたって保持される、又は、エッチング、リフトオフ若しくはフォトリソグラフィなどの公知の脱金属化方法で構造化され、それによって部分的にのみ存在することができる。層の厚さは、特に10nm~500nmの間にある。
【0213】
しかしながら、金属層又はメタライゼーションは、印刷層、特にバインダー中の金属顔料の印刷層から成ることもできる。これらの印刷された金属顔料は、全表面又は部分的に塗布することができ、及び/又は、異なる表面領域において異なる色を有することができる。層の厚さは、特に1μm~3μmの間にある。
【0214】
導電性のメタリック顔料を有するニスから反射層20を製造することも可能であり、特に、印刷及び/又は注入することが可能である。
【0215】
更に、反射層20は、透明な反射層20、例えば、薄い若しくは微細構造の金属層、又は、HRI (高屈折率)若しくはLRI (低屈折率)層によって形成することも可能である。このような誘電体反射層20は、例えば、金属酸化物、金属硫化物、酸化チタン等の蒸着層からなる。このような層の層厚は10nm~500nmが好ましい。
【0216】
好ましくは、インクは、接着剤層22及び/又はプライマ層に少なくとも部分的に塗布される。このようにして、少なくとも1つのプリント100が接着剤層22及び/又はプライマ層に少なくとも部分的に配置された多層フィルム10が得られる。接着剤層22、22'は、部分的及び全表面に塗布することができる。接着剤層は、原則として、部分接着剤層22'であってもよい。同様に、接着剤層は、全面にわたる接着剤層22であることが考えられる。
【0217】
インクは、好ましくは、インク又はプリント100自体が部分接着剤層22'として機能するように形成される。特に、プリント100が個別化されるとき、個別化された結合がこのようにして得られる。しかしながら、不動態化のために、特に接着剤層22の部分的な不動態化のために、インクを接着剤層22に少なくとも部分的に塗布することも可能である。その後の塗布又はホットスタンピングの場合、多層フィルムの基板への転写は、インクで印刷されていない接着剤層22の領域においてのみ行われる。
【0218】
接着剤層22、22'又はプライマ層は、好ましくは、PMMA、PVC、アクリレート、ポリアミド、ポリ酢酸ビニル、炭化水素樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリオレフィン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、及び/又は、はポリウレタンポリオール、特に不活性化イソシアネートと組み合わせて形成される。接着剤層22又はプライマ層は、更に、例えばSiO2 及び/又はTiO2などの充填剤を含有することができる。
【0219】
接着剤層22、22'又はプライマ層の層厚は、好ましくは0.5μm~20μmの間、特に好ましくは1.5μm~5μmの間である。接着剤層又はプライマ層は、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、及び/又は、スロットダイによって製造することができる。
【0220】
有利には、インクは、複製層又は複製ニス18、24に少なくとも部分的に塗布される。このようにして、少なくとも1つのプリント100が複製層18、24に少なくとも部分的に配置された多層フィルム10が得られる。
【0221】
インクは、まだ複製されていない複製層24に塗布することができる。複製層又は複製ニス24は、特に、まだ滑らかな表面を有する。次に、複製は、特にプリント100が設けられた後に行われる。次に、複製により、プリント100及び/又は複製層24に構造28を導入することができる。例えば、複製層18内の個別化されていない情報は、個別化されたプリント100と組み合わせることができる。プリント100が多層フィルム10のシステム全体に更に一体化されることから、プリント100の複製は、偽造に対する追加の保護手段となり得る。
【0222】
理想的には、インクは、複製層18又は複製ニス24の実質的に滑らかな表面に塗布される。次いで、表面は、好ましくは、後の時点で少なくとも部分的に複製される。
【0223】
しかしながら、既に複製された複製層18、したがって既に表面構造、複製構造28が設けられている複製層18にインクを塗布することも可能である。インクは、好ましくは、構造化表面又は複製構造28に少なくとも部分的に塗布される。
【0224】
インクが既に複製された複製層18に塗布され、又は、プリント100が既に複製された複製層18に設けられる場合、インクが複製層18と同様の屈折率、特に0.2未満の差を有する屈折率を有する場合、構造28、特に回折構造の少なくとも部分的な領域は、これによって除去され得る。これは、特に、インクが構造の深さよりも厚い層厚で塗布される場合に生じる。しかしながら、インク又はプリント100が構造のトポロジーに従い、したがって特に回折の一部となるように、インクをより薄い層厚で塗布することも可能である。これは、特に溶剤インクを使用する場合に考えられる。
【0225】
更に、インク又はプリント100が複製構造28、特に複製層18の表面の回折構造を部分的にのみ充填するように、インクを塗布することもできる。この場合、特に、最終的に塗布されるインク層の厚さが複製構造28の深さよりも小さい場合に、構造の部分的な充填のみが行われる。特定の条件下では、インクは、光学的に除去されずに、構造を充填することができる。これは、特に、インクが反射特性又は高屈折特性を有し、複製層18の複素屈折率とその複素屈折率が、特に0.2よりも大きく異なる場合に当てはまる。反射インクの例は、金属効果顔料又は金属フレークを有するインクである。高屈折インクの例は、液晶をベースとするインクである。
【0226】
インクは、複製層18、24に導入される構造の深さよりも大きい層厚で複製層18、24に塗布されることが好ましい。特に、塗布されるインクの層厚は、複製層18、24に導入される構造の層厚の実質的に2倍の厚さである。複製層に導入される構造の深さの少なくとも2倍のインクの層厚は、複製がインクの塗布後にのみ行われる場合に有利である。これにより、複製中に、導入された構造が塗布されたインクに完全に浸透することが防止される。
【0227】
別の実施例では、インクは、複製層18に導入される構造の深さよりも薄い層厚で印刷されることが好ましい。複製中、インクは、それによって、プリント100の層全体を通して導入された構造で浸透することができる。それによって、連続構造によるプリント100は、キャリア層12側からも見える高解像度の微細構造を受け取ることができ、これは、インクジェットプリンタのプリント解像度を超え、したがって、別のセキュリティ特徴を現わす。
【0228】
複製層18は、好ましくは、その上側の一方に少なくとも部分的に複製構造28を有する。回折的及び/又は屈折的に作用するマイクロ及び/又はマクロ構造は、好ましくは、複製層18に成形される。複製層18、24は、好ましくはアクリレート、セルロース、PMMA、及び/又は、架橋イソシアネートから形成される。複製層18、24は、熱可塑性ニスからもなることができる。表面構造28は、好ましくは、スタンピング工具の作用による熱及び圧力によってニスに成形される。更に、UV架橋可能なニスによって複製層18、24を形成し、UV複製によって表面構造を複製層24に成形することも可能である。表面構造は、スタンピング工具の作用によって未硬化の複製層24に成形され、複製層18は、成形中又は成形後にUV光の照射によって直接硬化される。
【0229】
原則として、複製層18、24は、公知の印刷法によって製造することができる。特に、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、又は、インクジェット印刷が好適である。しかしながら、スロットダイを用いた製造も可能である。
【0230】
複製層18に成形された表面構造又は複製構造28は、好ましくは、回折表面構造、例えば、ホログラム、キネグラム(登録商標)、又は、別の光学回折能動格子構造である。そのような表面構造は、典型的には、0.1μm~10μmの範囲、好ましくは0.5μm~4μmの範囲内の構造エレメントの間隔を有する。更に、表面構造を0次回折構造とすることも可能である。この回折構造は、少なくとも一方向に、可視光の波長よりも短い周期、可視光の半波長と可視光の波長との間の周期、又は、可視光の半波長よりも短い周期を有することが好ましい。更に、表面構造をブレーズド格子とすることも可能である。特に好ましくは、この場合、それは無色ブレーズド格子である。そのような格子は、好ましくは、少なくとも一方向に、1μm~100μmの間、更に好ましくは2μm~10μmの間の周期を有する。しかしながら、ブレーズド回折格子を着色ブレーズド回折格子とすることも可能である。更に、表面構造は、線形又は交差正弦波回折格子、線形又は交差単一又は多段矩形格子であることが好ましい。この格子の周期は、好ましくは0.1μm~10μmの間の範囲、好ましくは0.5μm~4μmの範囲にある。更に好ましくは、表面構造は非対称レリーフ構造、例えば非対称鋸歯構造である。この格子の周期は、好ましくは0.1μm~10μmの間の範囲、好ましくは0.5μm~4μmの範囲にある。更に好ましくは、表面構造は、光回折及び/又は光反射及び/又は集光マイクロ又はナノ構造、バイナリ又は連続フレネルレンズ、バイナリ又は連続フレネル自由形状表面、回折又は反射マクロ構造、特にレンズ構造又はマイクロプリズム構造、ミラー表面又は艶消し構造、特に異方性又は等方性艶消し構造、又は、上記表面構造の複数の組み合わせ構造である。
【0231】
上記の表面構造又は複製構造28の構造深さは、好ましくは10nm~10μmの間、更に好ましくは100nm~2μmの間の範囲にある。
【0232】
複製層18、24は、200nm~5μmの間の層厚を有することが好ましい。複製層が回折表面構造を有する場合、層の厚さは、好ましくは0.3μm~6μmの間である。複製層がより粗い構造、特により大きな周期及び/又はより大きな深さ、例えば、いわゆる「表面レリーフ」を有する場合、層の厚さは、好ましくは約1μm~10μmの間である。複製層がレンズ形状の表面構造を有する場合、層厚は、好ましくは1.5μm~10μmの間である。
【0233】
複製層の表面の複製又は構造化は、様々な方法で行うことができる。熱可塑性複製層の場合、特に熱及び/又は圧力の影響下で、熱複製が行われる。プリント100は、この時点で既に複製層24に塗布されている可能性がある。この場合、プリント100又はインクは、複製層の滑らかな表面に実質的に塗布されている。
【0234】
UV複製が行われることも考えられる。プリント100がUV硬化インクで形成される場合、UVプリントは、UV硬化複製ニス24で有利に保護することができる。UV硬化複製ニス24に「架橋」する反応性基は、UV硬化インクの表面に位置する。UV硬化中のUV複製ニスにおけるカプセル化することにより、特に薄いUV硬化層の場合に活性である抑制効果が最小限に抑えられるので、特にUV硬化インクを用いた特に薄いプリントの架橋及びそれによる安定性も改善することができる。記載されたカプセル化によって、UV硬化インクで形成されたプリントのより薄い層厚も複雑で高価な不活性化手段なしに実現することができる。
【0235】
熱複製の場合のように、接触圧力及び/又は熱応力による機械的応力も低減することができる。
【0236】
好ましくは、複製層は、高屈折率(HRI)を有する金属層又はメタライゼーション及び/又はHRI層からなることができる反射層を備える。反射層は、不透明、半透明、又は、透明であってもよく、透明性は、特に観察角度に依存し得る。
【0237】
多層フィルム100が、接着促進層を少なくとも部分的に有することが有利である。接着促進層は、原則として、多層フィルム10の各層上及び/又は下及び/又はプリント100に配置することができる。接着促進層は、好ましくは、後にインクが塗布される領域にのみ塗布される。
【0238】
接着促進層によって、特に、それに連結された層間に良好な接着性が保証される。これにより、層間剥離を可能な限り防止することができる。特に、接着促進層は、硬化したプリント100の場合に、望ましくない所定の破断点が形成されるのを防止する。
【0239】
特に、PVC、熱硬化及びUV硬化アクリレートの混合物、例えば、官能性アクリレート、ヒドロキシ官能性コポリマー、ブロックコポリマー(例えばBYK又はTEGOから) 接着改善表面添加剤を有する接着促進層、プラズマ及び/又はコロナ処理、及び/又は、金属蒸着によるシーディングは、接着促進層として考えられる。
【0240】
接着促進層は、好ましくは、グラビア印刷、スクリーン印刷、スロットダイ、フレキソ印刷、インクジェット印刷、及び/又は、スプレー塗装によって製造することができる。接着促進層は、印刷中に0.1μm~1.5μmの間の層厚を有することが好ましい。接着促進層は、蒸着によって製造され、その場合、層の厚さは、好ましくは1nm~50nmの間である。
【0241】
更に、多層フィルム10は、接着防止層を有することができる。接着防止層は、原則として、多層フィルム10の各層及び/又はプリント100に配置することができる。接着防止層は、好ましくは、アクリル酸ケイ素、フッ素化ポリマー、及び/又は、ワックスから形成される。
【0242】
インクを多層フィルム10の層、特にキャリア層12、剥離層14、複製層18、反射層20、接着剤層22、及び/又は、保護層16に、少なくとも1つの接着促進層及び/又は接着防止層を介在させて塗布する場合に有利である。
【0243】
更に、多層フィルム10は、少なくとも部分的に、干渉顔料及び/又は少なくとも1つの体積ホログラムを有する層を有することができる。更に、好ましくは、少なくとも1つの光吸収性、好ましくは不透明、特に好ましくは黒色プリント100が、多層フィルム10に少なくとも部分的に配置される。
【0244】
干渉顔料及び/又は体積ホログラムを有する層は、全表面に、又は、パッチ形態、ストリップ形態で、又は、広範囲なオーバーレイフィルムとして塗布することもできる。プリント100、特に、光吸収及び/又は不透明及び/又は黒色プリントは、ここでは、部分的にのみ又は領域内に形成される。これは、光学効果が、プリント100によって設けられる領域において目立っていることから、干渉顔料及び/又は体積ホログラムが局所的にのみ、すなわち、プリントによって設けられる領域においてのみ塗布されるという光学印象を作成する。
【0245】
干渉顔料は一般的に知られており、観察角度及び/又は照明角度を変化させる場合に光学的に変化する色変化効果を有する。顔料は、多くの場合、透明又は半透明であり、このために、明るい背景では見ることが難しく、又は、全く見ることができず、その場合、色の変化も相応に弱い。体積ホログラムは一般的に知られており、観察角度及び/又は照明角度が変化する場合に光学的に変化する効果を有する。体積ホログラムは、多くの場合、透明又は半透明であり、このために、明るい背景では見ることが難しく、又は、全く見ることができず、その場合、光学的に変化する効果も相応に弱い。光吸収性又は不透明に形成されたプリント100は、特に、干渉顔料及び/又は体積ホログラムがプリントにおいて部分的により良好に目立つ、又は、見えるようになることを保証する。プリント100は、好ましくは実質的に黒色に形成される。
【0246】
図2は、プリント100を複製層18又は複製ニス24に塗布し、その後に複製する概略プロセスを示す。
【0247】
第1のステップAでは、インクが複製ニス24に少なくとも部分的に塗布される。これによって、少なくとも1つのプリント100が設けられる。
【0248】
原則として、本発明によるインクは、特定の設計に限定されない。インクは、透明、半透明、不透明、不可視、着色、及び/又は、無色に形成することができる。原則として、プリント100は、同様に、特定の設計に限定される。プリント100は、透明、半透明、不透明、不可視、着色、及び/又は、無色に形成することができる。
【0249】
インクは、蛍光インク、及び/又は、発光インク、及び/又は、化学発光インクを含む燐光インク、及び/又は、特に、二色性色効果を有する液晶インク、及び/又は、タガント及び/又はレーザー感受性顔料を有するインクであり得る。蛍光インクは、透明及び着色蛍光インクの両方を含む。発光インクは、透明及び着色発光インクの両方を含む。燐光インクは、透明及び着色燐光インクの両方を含む。
【0250】
光硬化、特にUV硬化インク、及び、溶媒及び/又は水性インクの両方を使用することができる。
【0251】
塗布又は印刷されるインク層の厚さは、好ましくは0.1μm~30μmの間、特に0.5μm~15μmの間、特に好ましくは0.5μm~15μmの間、有利には1μm~3μmの間である。溶媒及び/又は水性インクが使用される場合、層の厚さは、約0.5μmであることが好ましい。UV硬化インクが使用される場合、層の厚さは、約1μm~30μmの間、好ましくは1μm~15μmの間、特に好ましくは1μm~8μmの間である。
【0252】
プリント100は、好ましくは、単一のインクの塗布によって形成される。原則として、後続のステップにおいて、プリント100は、少なくとも部分的に更に処理、特に、照射されることが考えられる。これにより、プリント100の光学的外観は、これらの領域で変化することが好ましい。このようにして、単一のインクのみからなるが、その光学的外観が異なる少なくとも2つの領域を備えるプリント100を得ることができる。したがって、プリント100は、好ましくは、少なくとも1つの可視領域及び少なくとも1つの不可視領域を有することができる。
【0253】
プリント100は、複数のインクを塗布することによって形成することもでき、特に互いに異なるように形成することができる。複数のインクは、特にそれらの光学的外観及び/又はそれらの組成が互いに異なる。したがって、インクは、例えば、色が互いに異なることがある。しかしながら、使用されるインクのうちの少なくとも1つが透明及び/又は不可視であり、使用される少なくとも1つの他のインクが不透明及び/又は可視であることも考えられる。インクは、互いに隣接して、一方が他方の上に、又は、重なり合って印刷され得る。任意選択的に後続するステップでは、対応するインクが使用される場合、プリント100は、特に透明インクが位置する領域で、少なくとも部分的に、処理及び/又は照射されることが可能である。これにより、透明又は不可視インクは、可視になり、好ましくは、可視又は不透明インクによって生成される部分モチーフなどを補完し、それによって特に全体的なモチーフが現れる。
【0254】
少なくとも1つのプリント100を設けるために、複数のインク、特に、異なるように形成されたインクが塗布される場合、インクは、互いに隣接して、特に、互いに直接隣接して、又は、少なくとも部分的に重なり合って配置され得る。しかしながら、インクは、一方を他方の上に印刷することもできる。同時に、時間的に重複して、時間的に連続して、複数のインクの塗布を行うことができる。例えば、インクジェットプリンタの場合、塗布は、時間的に連続して行われる。特に、ヘッド当たり1色が印刷される。特に、この場合、複数のヘッドが同時に同じ場所にあることは不可能である。Hewlett Packard Indigo法では、印刷画像が転写ブランケットに事前に印刷される、又は、個々の単色インクからそこに構築され、その後、この転写ブランケットからターゲット基版に転写されことから、全てのインクの最終転写が同時に行われることが好ましい。
【0255】
ステップB~Dは実質的に複製を表す。複製中に、複製層18 の少なくとも領域と、それに塗布されるプリント100と の両方が複製される。特に、このようにして、プリント100と見当合わせした複製が得られる。特に、プリントに対する複製の許容範囲は、+/-1.0mm以内、好ましくは+/-0.7mm以内、特に好ましくは+/-0.4mm未満で達成される。
【0256】
プリント100によって覆われた領域aへの複製中に、導入された複製構造28がプリント100にのみ刻印され、複製層24には刻印されないように、インクが塗布されると有利である。
【0257】
複製の前に、プリント100は、プリント100に導入される複製構造の深さよりも大きい厚さを有することが好ましい。特に、プリントは、0.5μm~6μmの間の層厚を有する。複製の前に、塗布されたプリント100の層厚は、複製層24に導入される構造の深さの約2倍の厚さであることが好ましい。
【0258】
複製中、プリント100は、複製層24に押し込まれる(ステップB)ことが好ましい。これは、実質的に、特に、プリント100が配置される複製層24の領域aが層厚を失うという効果と理解されるべきである。
【0259】
この場合、プリント100の領域aにおける複製層24の厚さは、好ましくは、この領域にわたって均質又は均一に減少する。多層フィルム10の平面図において、プリント100に隣接して配置され、したがってプリント100に隣接する複製層24の領域bでは、特に、複製中に、プリント100からの距離がより大きくなる複製層24の厚さはより減少する。層厚は、実質的に、直線的に増加する。
【0260】
プリント100は、複製中に圧縮される(ステップC)ことが好ましい。これにより、特に、プリント100は、複製層18と同様に、少なくとも部分的に一緒に複製されることが可能である。
【0261】
方法ステップDでは、プリント100が複製ニス24と一緒に複製される。複製構造28は、少なくとも部分的に導入される。複製構造28は、多層フィルム10の上面図において、プリント100に隣接して配置される複製層の領域bが複製されないように導入されることが有利である。本実施例では、この領域をコロナ26と呼ぶ。複製中、領域bにおいて、コロナ26は、複製ツールと接触しないことが好ましい。多層フィルム10の上面図において、この領域は、特に、プリント100に直接隣接する。複製されない複製層の領域のサイズは、特に、インクの塗布厚、及び/又は、それが複製層18に圧入される強度に依存する。例えば、コロナ26は、実質的に1μm~100μmの間の幅を有する。
【0262】
インクがまだ複製されていない複製層24に塗布される場合、接着促進層は、多くの場合、省略され得る。経験によれば、プリント100と一緒に複製層24を複製することによって、プリント100の複製層18への接着性が改善されることが示されている。更に、複製は、プリント100の表面粗化をもたらし、それによって、後続の層もプリント100に良好に接着する。
【0263】
図3は、1つの実施例における多層フィルム10の製造の概略的なプロセスを示す。第1のステップAにおいて、キャリア層12が設けられる。剥離層14は、キャリア層12に少なくとも部分的に塗布されることができる。剥離層の存在は、多層フィルム10が転写フィルムとして形成され、基板に多層フィルム10を塗布した後にキャリア層12が除去される場合に有利である。しかしながら、剥離層14の存在は必須ではない。特に、積層膜として多層膜を形成する場合には、剥離層を省略する必要がある。
【0264】
更に、保護層16が設けられている。次に、複製層又は複製ニス24を保護層16に塗布することが有利である。複製層又は複製ニス24は、好ましくは、まだ複製されていない層であり、したがってまだ複製構造28を有さず、及び/又は、特に実質的にまだ滑らかな表面を有する。少なくとも1つのインクが、好ましくは、インクジェット印刷によって複製層又は複製ニス24に塗布される。これにより、プリント100が設けられる。層厚比は必ずしも実際の層厚比に対応していない。
【0265】
次に、プリント100及び複製ニス26又は複製層18は、ステップBで共に複製される。したがって、複製構造28は、好ましくは、プリント100及び/又は複製層又は複製ニス26に成形又は導入される。ステップBにおいて複製構造28が全表面にわたって延在する場合であっても、これは、この場合には必須ではない。複製構造28又は複製構造は、プリント100又は複製層18の領域にのみ導入することもできる。
【0266】
ステップCでは、反射層20が、プリント100及び/又は複製層18若しくは複製ニス24に塗布される。反射層20は、好ましくは、金属層又はメタライゼーションである。反射層20は、領域及び全表面の両方に塗布することができる。有利には、反射層20は、最初に、実質的に全表面に適用され、次いで、再び部分的に除去される。このためには、リフトオフ法が適している。これは、特に、洗浄ニスとして形成されたプリント100が設けられる場合に有利である。この場合、プリント100は、好ましくは、所望の設計の形態で塗布され、次いで、メタライゼーション及び/又は少なくとも1つの別のニスで被せられ、又は、覆われる。その後、プリント100は、別の層又は別の層の一部と一緒に、溶媒処理によって再び除去することができる。その結果、別の層、特にメタライゼーション又は反射層20は、プリント100が事前に塗布されていない場所にのみ残る。プリント100を洗浄ニスとして設けるために、特に、ポリビニルピロリドン及び/又はメチルセルロースを含むインクが提供される。
【0267】
接着剤層22は、別のステップDで塗布される。接着剤層22は、全表面又は部分的に塗布することができる。
【0268】
図4図6は、実施例におけるレーザ照射Lの前後の多層フィルム10の概略図をそれぞれ示す。
【0269】
このために、レーザー感受性顔料を含むインクが提供されるのが好ましい。顔料は、例えば、オクタモリブデン酸アンモニウム(AOM)とすることができる。レーザー感受性顔料は、多層フィルム10及び/又はプリント100、102の特に別の個別化又は個人化が、印刷の下流で可能になるという利点を提供する。
【0270】
レーザー感受性顔料を有するインクは、透明又は半透明に形成することができ、又は、少なくとも部分的に着色することもできる。レーザー感受性顔料又はレーザー感受性顔料を含むインク又はプリント100が、例えばレーザー照射Lに露光される場合、特に顔料の光学的外観は変化する。顔料は、特に、色変化又は黒化する。
【0271】
補助的な個別化又は個人化は、多層フィルム10の製造中及びフィルム10の製造後の両方で、特にフィルム10を、基板、特にセキュリティドキュメントに塗布した後に行うことができる。
【0272】
プリント100、102が複数回照射されることも考えられる。それによって、特に、第1の補助的な個別化又は個人化、及び、少なくとも1つの別の補助的な個別化又は個人化が生成される。照射は、好ましくは、プリント100、102の異なる点で行われる。しかしながら、照射又は照射領域が重複することも可能である。
【0273】
複数回の照射は、全て多層フィルム10の製造中に、又は、部分的に製造中に、及び、部分的に製造後に、特に多層フィルム10を基板に塗布した後に行うことができ、又は、全ては製造後に行うこともできる。第1の補助的な個別化が多層フィルム10の製造中に行われ、少なくとも1つの別の個別化がフィルム10の製造後に、特に、基板にフィルムを塗布した後に行われると有利である。
【0274】
図4に示されるプリント102は、矩形領域として形成される。特に、透明又は不可視のインクが、このための層に塗布されている。したがって、プリント102は、レーザ照射の前には見えず、したがって、原則として、人間の観察者には見えない。プリント102の少なくとも一部がレーザーLで照射され、それによって、この領域104が可視化され、例えば黒化が起こり得る。プリントの他の領域106は、不可視のままであり続ける。原則として、プリント102は、レーザー処理Lの前に既に可視又は着色されて形成されており、その光学的外観は、レーザー処理Lによって変化し、それによって、照射された領域106は、プリントの残りの領域106とは異なることも考えられる。
【0275】
図5に示されるプリント102は、雲形状に形成される。レーザ照射Lの前に、プリント102を見えないように形成することができる。プリント102は、好ましくは、レーザーで完全に照射され、それによって、プリント104が見えるようになり、特に黒に変わる。しかしながら、原則として、レーザー処理Lの前に、プリント102が可視的に、特に着色されて形成され、レーザー照射Lによるその光学的外観の変化、特に色の変化、及び/又は、漂白、及び/又は、黒化が生じることも考えられる。
【0276】
別の又は補助的な個別化の製造のために複数の可能性が考えられる。1つの可能性は、例えば、不可視インクの塗布である。インクは、全表面又は領域において、特にモチーフとして塗布することができる。その後、部分的又は完全にインクの照射が行われる。したがって、インクの領域のみ又はインクで印刷された全表面が、これによって見えるようになる。塗布されたインクの領域のみが照射される場合に有利である。
【0277】
図6は、モチーフ108に隣接して配置されたプリント102を示している。プリント102は、好ましくは、透明及び/又は不可視インクの塗布によって設けられる。したがって、図6に示されるプリント102は、透明及び/又は不可視に形成される。しかしながら、プリント102は、原則として、着色及び/又は不透明に形成することもできる。
【0278】
モチーフ108は、本発明の意味の範囲では、インク又はプリントとすることができる。しかしながら、モチーフ108は、多層フィルムの任意の層に配置される、任意のコード、任意の装飾、装飾デザイン、及び/又は、モチーフであることも可能である。このモチーフは、特に規定された様式で作製又は製造されている必要はない。
【0279】
プリント102は、好ましくは、プリントの照射領域104が可視モチーフ108と共に全体モチーフを形成するように照射される。
【0280】
図7は、1つの実施例におけるプリント100を有する多層フィルム10の概略上面図を示す。プリント100は、コードとして、特にデータマトリックスコードとして、QRコード及び/又はマイクロQRコードとして形成される。QRコード及びマイクロQRコードは、複数のコードエレメント108から構成される。個々のコードエレメント108が、複数のインク液滴から構成されていると有利である。特に一方向、特にX方向に観察すると、コードエレメント108を設けるために、少なくとも2つ、好ましくは4つのインク液滴が印刷される。したがって、特に2×2、好ましくは4×4のインク液滴が、2次元観察の場合に、コードエレメントのために印刷又は必要とされる。インク液滴が多ければ多いほど、コードエレメント108の縁部もより良く且つよりきれいに見え、したがって、コードも現れる。
【0281】
図7に示すプリント100はコロナ26で囲まれている。コロナ26は、特に、複製層又は複製ニス24の複製構造が設けられていない領域である。コロナ26は、プリント100の視認性又は認識性を促進することができる。コロナ26は、特にコントラスト増強手段として機能する。コロナ26の幅は特に1μm~100μmの間である。
【0282】
図8a図8dは、別の実施例におけるプリント100の概略上面図を示す。図8a~8dに示されたプリント100は、マイクロQRコードとして形成される。図8aに示されたマイクロQRコードは、11×11コードエレメント108を有し、図8bに示されたマイクロQRコードは、13×13コードエレメント108を有し、図8cに示されたマイクロQRコードは、15×15コードエレメント108を有し、図8dに示されたマイクロQRコードは、17×17コードエレメント108を有する。
【0283】
マイクロQRコードは、3mm又は5mmのサイズを有することができる。マイクロQRコードが3mmの全体サイズを有し、11×11のコードエレメント108を備える場合、各コードエレメント108は272.7μmのサイズを有する。マイクロQRコードが3mmの全体サイズを有し、13×13のコードエレメント108を備える場合、各コードエレメント108は230.8μmのサイズを有する。マイクロQRコードが3mmの全体サイズを有し、15×15ののコードエレメント108を備える場合、各コードエレメント108は200μmのサイズを有する。マイクロQRコードが3mmの全体サイズを有し、17×17のコードエレメント108を備える場合、各コードエレメント108は176.5μmのサイズを有する。
【0284】
マイクロQRコードが5mmの全体サイズを有し、11×11のコードエレメント108を備える場合、各コードエレメント108は454.5μmのサイズを有する。マイクロQRコードが5mmの全体サイズを有し、13×13のコードエレメント108を備える場合、各コードエレメント108は384.6μmのサイズを有する。マイクロQRコードが5mmの全体サイズを有し、15×15のコードエレメント108を備える場合、各コードエレメント108は333.3μmのサイズを有する。マイクロQRコードが5mmの全体サイズを有し、17×17のコードエレメント108を備える場合、各コードエレメント108は294.1μmのサイズを有する。
【0285】
値は以下の表に要約されている。
【表1】
【0286】
インク液滴が形成される大きさに応じて、個々のコードエレメント108は、複数のインク液滴から構成される。この例は、以下の表に示されている。
【表2】

【表3】
【0287】
図9a、9bは、別の実施例におけるプリント100の概略上面図を示す。図9a図9bに示されたプリント100はQRコードとして形成される。図9aに示されたQRコードは22×22のコードエレメント108を有し、図9bに示されたQRコードは32×32のコードエレメント108を有する。
【0288】
QRコードは3mm又は5mmのサイズを有することができる。QRコードが3mmの全体サイズを有し、22×22のコードエレメント108を備える場合、各コードエレメント108は136. 4μmのサイズを有する。QRコードが3mmの全体サイズを有し、32×32のコードエレメント108を備える場合、各コードエレメント108は93.8μmのサイズを有する。
【0289】
QRコードが5mmの全体サイズを有し、22×22のコードエレメント108を備える場合、各コードエレメント108は227.3μmのサイズを有する。QRコードが5mmの全体サイズを有し、32×32のコードエレメント108を備える場合、各コードエレメント108は156.3μmのサイズを有する。
【0290】
値は以下の表に要約されている。
【表4】
【0291】
インク液滴が形成される大きさに応じて、個々のコードエレメント108は複数のインク液滴から構成される。この例は、以下の表に示されている。
【表5】

【表6】
【0292】
図10aは、32×32のコードエレメントを有する3mmのQRコードの顕微鏡画像(100×)を示し、QRコードは600 dpiで印刷されている。図10bは、32×32のコードエレメントを有する5mmのQRコードの顕微鏡画像(100×)を示し、QRコードは600 dpiで印刷されている。個々のコードエレメントの値又は寸法は、図面に示されている。
【符号の説明】
【0293】
10 多層フィルム
12 キャリア層
14, 14' 剥離層(全表面、一部)
16 保護(ニス)層
18 複製層
20 反射層
22, 22' 接着剤層(全表面、一部)
24 複製ニス(複製されていない複製層)
26 コロナ
28 複製構造
30 (部分)マーキング/(部分)モチーフ
100 プリント
102 レーザー処理前のプリント
104 レーザー処理後のプリントの可視領域
106 レーザー処理後のプリントの不可視領域
108 コードエレメント
a 印刷された領域
b コロナの幅
L レーザー処理
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図9a
図9b
図10a
図10b