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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】セレタリシブの結晶形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20230418BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C07D471/04 116
C07D471/04 CSP
A61K31/519
A61P43/00 111
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019566167
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2018063640
(87)【国際公開番号】W WO2018219772
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】1708856.8
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーツ、リュック ランベール ヨーゼフ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】アサフ、ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】カーリー、ニコラス エドモンド
(72)【発明者】
【氏名】クール、ビンセント アドルフ キャロル
(72)【発明者】
【氏名】デラティンネ、ジャン - ピエール
(72)【発明者】
【氏名】デルハイエ、ローラン ジャック ウィリー
(72)【発明者】
【氏名】ケステモン、ジャン ポール
(72)【発明者】
【氏名】ル ムール、サラ
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-537183(JP,A)
【文献】特表2005-534684(JP,A)
【文献】BIJU, Purakkattle,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2009年,19,1434-1437
【文献】CHAO, Jianhua,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2007年,17,3778-3783
【文献】CAIRA, M.R.,Crystalline Polymorphism of Organic Compounds,Topics in Current Chemistry,1998年,No.198,pp.163-208
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K 31/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IA)によって表される、セレタリシブの水和結晶形態である、セレタリシブの結晶形態B
【化1】

[式中、nは、1.0又は2.0であり、
uKα放射線を使用して、11.0°~11.1°、12.5°~12.6°、20.9°~21.1°、及び22.9°~23.0°2θ±0.2°2θにおいて特徴的なピークを示すXRPDパターンを有する]。
【請求項2】
nが、1.0である、請求項1に記載のセレタリシブの結晶形態B。
【請求項3】
nが、2.0である、請求項1に記載のセレタリシブの結晶形態B。
【請求項4】
DSCサーモグラムにおいて146℃±6℃で吸熱事象を示す、請求項1から3までのいずれか一項に記載のセレタリシブの結晶形態B。
【請求項5】
セレタリシブの無水結晶形態であり、CuKα放射線を使用して、6.4°、8.7°、15.2°、15.5°、及び20.3°2θ±0.2°2θにおいて特徴的なピークを示すXRPDパターンを有する、セレタリシブの結晶形態F。
【請求項6】
DSCサーモグラムにおいて238.5℃±5℃で融解吸熱を示す、請求項5に記載のセレタリシブの結晶形態F。
【請求項7】
請求項1から4までのいずれか一項に記載のセレタリシブの結晶形態B或いは請求項5又は請求項6に記載のセレタリシブの結晶形態Fを、薬学的に許容される担体と共に含む、医薬組成物。
【請求項8】
選択的PI3K阻害剤の適応症である障害の処置及び/又は予防において使用するための、請求項7に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレタリシブ(seletalisib)の結晶形態、及び治療におけるそれらの使用に関する。より具体的には、本発明は、セレタリシブの形態B及び形態Fを提供する。
【背景技術】
【0002】
セレタリシブの系統的な化学名は、N-{(R)-1-[8-クロロ-2-(1-オキシピリジン-3-イル)キノリン-3-イル]-2,2,2-トリフルオロエチル}ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イルアミンである。セレタリシブは、WO2012/032334に具体的に開示されており、式(I)によって表される化学構造を有する。
【化1】
【0003】
セレタリシブは、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)酵素、特にヒトPI3Kδアイソフォームの選択的阻害剤である。結果的にセレタリシブは、医薬品として、特に、有害な炎症性、自己免疫性、心血管性、神経変性、代謝性、腫瘍学的、侵害受容の及び眼疾患の処置において利益がある。
【0004】
PI3K経路は、ヒトの様々な疾患において有効であると考えられる様々な生理的及び病理学的機能に関与している。したがって、PI3Kは、細胞増殖、細胞生存、膜トラフィッキング、グルコース輸送、神経突起伸長、膜ラフリング、スーパーオキシド生成、アクチン再構成及び走化性(S.Wardら、Chemistry&Biology、2003、10、207~213及びS.G.Ward&P.Finan、Current Opinion in Pharmacology、2003、3、426~434を参照されたい)にとって非常に重要なシグナルを提供し、がん、並びに代謝性、炎症性及び心血管性の疾患の病理に関与することが知られている(M.P.Wymannら、Trends in Pharmacol.Sci.、2003、24、366~376を参照されたい)。PI3K経路の異常な上方調節は、多種多様なヒトのがんに関与している(S.Brader&S.A.Eccles、Tumori、2004、90、2~8を参照されたい)。
【0005】
セレタリシブは、強力な選択的PI3K阻害剤であり、したがって、ヒトの様々な病気の処置及び/又は防止において有益である。これらには、自己免疫性及び炎症性障害、例えばシェーグレン症候群、活性化ホスホイノシチド3-キナーゼデルタ症候群(APDS)、関節リウマチ、多発性硬化症、喘息、炎症性腸疾患、乾癬及び移植片拒絶反応;血栓症、心肥大、高血圧、及び心臓の不規則な収縮(例えば、心不全中)を含めた心血管障害;神経変性障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、脊髄傷害、頭部外傷及び発作;代謝性障害、例えば肥満及び2型糖尿病;白血病、膠芽腫、リンパ腫、メラノーマ、並びにヒトの肝臓、骨、皮膚、脳、膵臓、肺、乳房、胃、結腸、直腸、前立腺、卵巣及び頸部のがんを含めた腫瘍学的状態;疼痛及び侵害受容障害;並びに加齢性黄斑変性症(ARMD)を含めた眼の障害が含まれる。
【0006】
セレタリシブは、現在、シェーグレン症候群(原発性シェーグレン症候群を含む)及びAPDSの処置へのその適合性をアセスメントするために、別個の臨床試験の段階にある。
【0007】
前述の通り、セレタリシブは、WO2012/032334に具体的に開示されている。しかし、その文献には、セレタリシブの具体的な結晶形態は開示されていない。
【0008】
WO2016/170014は、シェーグレン症候群(原発性シェーグレン症候群を含む)の処置のためのセレタリシブの使用を記載している。
【0009】
同時係属の国際特許出願PCT/EP2017/061567(2017年11月23日、WO2017/198590として公開されている)は、PASLI(T細胞の老化、リンパ節腫大及び免疫不全を引き起こすp110δ活性化突然変異)としても公知の活性化ホスホイノシチド3-キナーゼデルタ症候群(APDS)の処置のためのセレタリシブの使用を記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の結晶形態、すなわちセレタリシブの形態B及び形態Fは、特に医薬品としての製剤化にそれらを適するものにする有利な特性を有する。特に、本発明の結晶形態は、高い熱力学的な物理的安定性(最終平衡状態を表す)及び/又は高い動力学的な物理的安定性(特定の温度及び相対湿度の環境に曝露された固体粉末としての実際の安定性を表す)を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1~3は、異なる水和比:水和物.nHO(0<n≦2)を有する水和固体形態のXRPDパターンを示す。図1:n=2。図2:n=1。図3:n≦1。
図2図1~3は、異なる水和比:水和物.nHO(0<n≦2)を有する水和固体形態のXRPDパターンを示す。図1:n=2。図2:n=1。図3:n≦1。
図3図1~3は、異なる水和比:水和物.nHO(0<n≦2)を有する水和固体形態のXRPDパターンを示す。図1:n=2。図2:n=1。図3:n≦1。
図4図4は、閉鎖鍋内で実施した水和物.nHOのDSCサーモグラムを示す。
図5図5は、水和物.nHOのTGAサーモグラムを示す。
図6図6は、可変相対湿度下の水和物の水分収着及び脱着を示すDVS曲線を示す。
図7図7及び8は、それぞれ水和物.nHO(n=2及びn=1)の結晶充填を示す。
図8図7及び8は、それぞれ水和物.nHO(n=2及びn=1)の結晶充填を示す。
図9図9は、両方の結晶充填の完全な重ね合わせを示す、水和物.nHO(n=2及びn=1)の構造的オーバーレイを提供している。
図10図10は、無水形態のXRPDパターンを示す。
図11図11は、無水形態のDSCサーモグラムを示す。
図12図12は、無水形態のTGAサーモグラムを示す。
図13図13は、可変相対湿度下の無水形態の水分収着及び脱着を示すDVS曲線を示す。
図14図14は、無水形態の結晶充填を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の態様では、本発明は、セレタリシブの形態Bを提供する。形態Bは、下記の通り調製することができる水和結晶形態である。形態Bは、式(IA)によって表すことができる
【化2】

[式中、nは、少なくとも約0.1であり、かつ約2.1以下である]。
【0013】
適切には、nは、少なくとも約0.9であり、かつ約2.1以下である。
【0014】
第1の実施形態では、形態Bは、一水和物として存在する。典型的に、nは、少なくとも約0.9であり、かつ約1.5以下である。適切には、nは、少なくとも約0.9であり、かつ約1.1以下である。一般に、nは、およそ1.0である。
【0015】
第2の実施形態では、形態Bは、二水和物として存在する。典型的に、nは、少なくとも約1.5であり、かつ約2.1以下である。適切には、nは、少なくとも約1.9であり、かつ約2.1以下である。一般に、nは、およそ2.0である。
【0016】
第3の実施形態では、形態Bは、可変含水量の水和物として存在し、ここで、nは、少なくとも約0.9であり、かつ約2.1以下である。適切には、nは、少なくとも約1.0であり、かつ約2.0以下である。一般に、nは、およそ1.5である。
【0017】
セレタリシブの形態Bの分析データ及び特徴付けデータは、以下に提示される。
【0018】
第2の態様では、本発明は、セレタリシブの形態Fを提供する。形態Fは、下記の通り調製することができる無水結晶形態である。
【0019】
セレタリシブの形態Fの分析データ及び特徴付けデータは、以下に提示される。
【0020】
本発明はまた、セレタリシブの形態B又は形態F(以下、「活性成分」と呼ばれる)を、1種又は複数の薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明による医薬組成物は、経口、口腔内頬側、非経口、経鼻、局所、点眼若しくは直腸投与に適した形態、又は吸入若しくは吹送による投与に適した形態を取ることができる。
【0022】
経口投与では、医薬組成物は、従来の手段によって、薬学的に許容される賦形剤、例えば結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ)、崩壊剤(例えば、グリコール酸デンプンナトリウム又はクロスカルメロースナトリウム)、又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて調製された、例えば、錠剤、ロゼンジ剤又はカプセル剤の形態を取ることができる。錠剤は、当技術分野で周知の方法によってコーティングされ得る。顆粒剤(例えば、カプセルに組み込むための)は、当技術分野で周知の方法によって得ることができる。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ若しくは懸濁液の形態を取ることができ、又は使用前に水若しくは他の適切なビヒクルを用いて構成するために、乾燥生成物として提示することができる。このような液体調製物は、従来の手段によって、薬学的に許容される添加剤、例えば懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル又は防腐剤を用いて調製することができる。調製物は、適宜、緩衝塩、香味剤、着色剤又は甘味剤を含有することもできる。
【0023】
経口投与のための調製物は、適切には、活性成分を制御放出するように製剤化され得る。
【0024】
口腔内頬側投与では、組成物は、従来の方式で製剤化された錠剤、ロゼンジ剤又は薄膜の形態を取ることができる。
【0025】
活性成分は、注射による非経口投与のために、例えば、ボーラス注射又は注入のためのミクロ懸濁液又はナノ懸濁液の形態に製剤化され得る。注射のための製剤は、単位剤形で、例えばガラスアンプル又は多用量容器、例えばガラスバイアルに入れて提示され得る。注射のための組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンなどの形態を取ることができ、製剤化剤、例えば懸濁化剤、安定剤、防腐剤及び/又は分散化剤を含有することができる。或いは、活性成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば発熱物質を含まない滅菌水を用いて構成するための粉末形態であってよい。
【0026】
前述の製剤に加えて、活性成分は、デポー調製物として製剤化することもできる。このような長時間作用性の製剤は、移植又は筋肉内注射によって投与され得る。
【0027】
経鼻投与又は吸入による投与では、活性成分は、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、フルオロトリクロロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素若しくは他の適切な気体、又はガス混合物を使用して、加圧パック又はネブライザーのためのエアゾールスプレー提示の形態で、好都合に送達することができる。
【0028】
組成物は、所望に応じて、活性成分を含有する1つ又は複数の単位剤形を含有し得るパック又はディスペンサーデバイスで提示され得る。
【0029】
局所投与では、活性成分は、1種又は複数の薬学的に許容される担体に懸濁又は溶解した活性な構成成分を含有する適切な軟膏に、好都合に製剤化することができる。特定の担体には、例えば、鉱油、液化石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、乳化蝋及び水が含まれる。或いは、活性成分は、1種又は複数の薬学的に許容される担体に懸濁又は溶解した活性成分を含有する適切なローションに製剤化され得る。特定の担体には、例えば、鉱油、ソルビタンモノステアラート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、ベンジルアルコール、2-オクチルドデカノール及び水が含まれる。
【0030】
点眼投与では、活性成分は、防腐剤、例えば殺菌剤又は殺真菌剤、例えば、硝酸フェニル水銀、塩化ベンジルアルコニウム(benzylalkonium)又は酢酸クロルヘキシジンを用いて、又は用いずに、等張のpH調整した滅菌生理食塩水中の微粒子化懸濁液として、好都合に製剤化することができる。或いは、点眼投与では、活性成分は、軟膏、例えばワセリンに製剤化することができる。
【0031】
直腸投与では、活性成分は、坐剤として、好都合に製剤化することができる。これらは、活性成分を、室温では固体であるが、直腸温度で液体になり、したがって直腸で融解して活性な構成成分を放出する、適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができる。このような材料には、例えば、カカオバター、蜜蝋及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0032】
特定の状態を予防又は処置するのに必要な活性成分の量は、選択される活性成分、医学的適用、並びに処置を受ける患者の年齢及び状態に応じて変わる。しかし一般に、体重1kg当たり約10ng~1000mgの1日投与量が、典型的に適している。所与の患者のための投与量範囲及び最適な投与量の決定は、当業者の通常の能力内である。
【0033】
セレタリシブの形態Fは、式(II)の化合物を、式(III)の化合物
【化3】

[式中、Lは、C1~6アルコキシ、任意選択で置換されているアリールオキシ、任意選択で置換されているアリールチオ又は任意選択で置換されているヘテロアリールを表す]
と、無水条件下で反応させるステップを含む方法によって調製することができる。
【0034】
第1の実施形態では、Lは、C1~6アルコキシ、特にC1~4アルコキシを表す。第2の実施形態では、Lは、非置換アリールオキシ又は置換アリールオキシを表す。第3の実施形態では、Lは、非置換アリールチオ又は置換アリールチオを表す。第4の実施形態では、Lは、非置換ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールを表す。
【0035】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、直鎖及び分岐C1~6アルキル基、例えばC1~4アルキル基を含む。典型的な例として、メチル及びエチル基、並びに直鎖又は分岐プロピル、ブチル及びペンチル基が挙げられる。特定のアルキル基には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2,2-ジメチルプロピル及び3-メチルブチルが含まれる。したがって、「C1~6アルコキシ」などの派生表現は上記に従って解釈されるべきである。
【0036】
がC1~6アルコキシを表す場合、適切な値には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ及びイソブトキシが含まれる。Lの特定の値は、エトキシである。
【0037】
上の任意選択の置換基の典型的な例として、ハロゲン、ニトロ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ及びジ(C1~6)アルキルアミノから独立に選択される、1~5個(好ましくは1、2又は3個)の置換基が挙げられる。
【0038】
上の特定の置換基の典型的な例として、フルオロ、クロロ、ニトロ、メチル、メトキシ及びジメチルアミノから独立に選択される、1~5個(好ましくは1、2又は3個)の置換基が挙げられる。
【0039】
「アリール」という用語は、本明細書で使用される場合、単一の芳香環又は複数の縮合芳香環から誘導された、一価の炭素環式芳香族基を指す。適切なアリール基には、フェニル及びナフチル、好ましくはフェニルが含まれる。したがって、「アリールオキシ」及び「アリールチオ」などの派生表現が解釈されるべきである。
【0040】
が、任意選択で置換されているアリールオキシを表す場合、典型的な値には、非置換フェノキシ及び置換フェノキシが含まれる。適切な値には、フェノキシ、ペンタフルオロフェノキシ、クロロフェノキシ(特に、4-クロロフェノキシ)、ニトロフェノキシ(特に、4-ニトロフェノキシ)、メチルフェノキシ(特に、4-メチルフェノキシ)、トリメチル-フェノキシ(特に、2,4,6-トリメチルフェノキシ)及びメトキシフェノキシ(特に、4-メトキシ-フェノキシ)が含まれる。
【0041】
が、任意選択で置換されているアリールチオを表す場合、典型的な値には、非置換フェニルチオ及び置換フェニルチオが含まれる。適切な値には、フェニルチオが含まれる。
【0042】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書で使用される場合、単一の環又は複数の縮合環から誘導された、少なくとも5個の原子を含有する一価の芳香族基を指し、ここで1個又は複数の炭素原子は、酸素、硫黄及び窒素から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって置き換えられている。適切なヘテロアリール基には、イミダゾリル、トリアゾリル及びピリジニルが含まれる。
【0043】
が、ヘテロアリールを表す場合、典型的な値には、非置換ヘテロアリール及び置換ヘテロアリールが含まれる。適切な値には、イミダゾリル(特に、イミダゾール-1-イル)、トリアゾリル(特に、1,2,4-トリアゾール-1-イル)及びジメチルアミノピリジニウム(特に、4-(ジメチルアミノ)ピリジニウム-1-イル)が含まれる。
【0044】
の適切な値には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、フェノキシ、ペンタフルオロフェノキシ、4-クロロフェノキシ、4-ニトロフェノキシ、4-メチルフェノキシ、2,4,6-トリメチルフェノキシ、4-メトキシフェノキシ、フェニルチオ、イミダゾール-1-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル及び4-(ジメチルアミノ)ピリジニウム-1-イルが含まれる。
【0045】
化合物(II)と(III)の反応は、一般に、酸、例えば塩酸などの鉱酸の存在下で実施される。反応は、高温において、無水溶媒、例えばC1~4アルカノール、例えば無水n-プロパノール中で、好都合に行うことができる。
【0046】
式(II)の中間体は、付随する実施例に記載される方法によって、又はWO2012/032334に記載されている手順の任意の1つに類似の手順によって調製され得る。
【0047】
式(III)の中間体は、付随する実施例に記載される方法によって、又はそれに類似の手順によって調製され得る。
【0048】
セレタリシブの形態Bは、セレタリシブの形態Fを、有機溶媒中水と接触させ(例えば、溶液又はスラリーとして)、その後、それから結晶化させるステップを含む方法によって調製され得る。
【0049】
それとは逆に(Appositely)、セレタリシブの形態Fは、水及び環式エーテル溶媒、例えば2-メチルテトラヒドロフランの混合物に、高温で、例えば40℃の領域の温度で溶解し得る。典型的に、混合物は、10.5の領域のpHを得るために、塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムで処理され得る。中性pHを再確立するために、有機相を、水性媒体、例えば水及び/又はブラインで洗浄した後、混合物を、典型的に、代替溶媒、例えばC1~4アルカノール、例えば2-プロパノールに再溶解し、次に水で処理し、65℃を超える温度で加熱することができる。20℃の領域の温度にゆっくり冷却した後、さらなる水をゆっくり添加する。次に、混合物を徐々に冷却し、一般に0℃の領域の温度で寝かせた後、生成物を混合物から結晶化し、収集する。
【0050】
セレタリシブの形態Bは、セレタリシブの形態Bを、水を含まない媒体と接触させ(例えば、溶液又はスラリーとして)、その後、それから結晶化させるステップを含む方法によって、形態Fに変換され得る。
【0051】
それとは逆に、セレタリシブの形態Bは、実質的に水を含まない溶媒、例えばC1~4アルカノール、例えば2-プロパノールに、高温で、例えば50℃の領域の温度で溶解させることができ、その後、溶媒を一部蒸留し、0℃の領域の温度にゆっくり冷却した後、生成物を反応混合物から結晶化し、収集する。
【0052】
以下の実施例は、セレタリシブの形態B及び形態Fの調製、分析及び特徴付けを示す。
【実施例
【0053】
調製例
中間体1
2,8-ジクロロキノリン-3-カルバルデヒド
反応器に、2-メチルテトラヒドロフラン(50mL)を充填した。反応器を-10℃に冷却し、次にn-ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M溶液24mL)を、滴下により反応器に充填した。混合物を10分間撹拌し、次に、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(8.9g)の2-メチルテトラヒドロフラン(7.5mL)溶液をゆっくり添加した。混合物を-10℃で10分間撹拌し、次に0℃に温めた。0℃で1時間経過した後、反応器を-78℃に冷却した。別個に調製した2,8-ジクロロキノリン(7.5g)の2-メチルテトラヒドロフラン(50mL)溶液を、反応温度を-70℃未満に維持しながら、滴下により反応器に充填した。反応器に、反応温度を-70℃未満に維持しながら、4-ホルミルモルホリン(7.2g)を滴下により充填した。クエン酸水溶液(25wt%、3.5mL)を-78℃で滴下添加した。反応混合物を、ゆっくり室温に温めた。クエン酸水溶液(25wt%、30mL)を室温で添加し、次に、混合物を45~50℃に加熱し、1時間撹拌した。有機相を分離し、次に10%クエン酸(30mL)及び水(30mL)で洗浄した。洗浄した有機層を、およそ5.5体積になるまで真空下で濃縮し、次に、結晶化が始まるまで約60℃で維持した。混合物を寝かせ、次に、ヘプタン(60mL)をゆっくり添加しながら0℃に冷却した。残留物を0℃で寝かせ、次に濾過し、ヘプタン(30mL)で洗浄した。湿潤材料を、40℃において真空下で乾燥させて、標題化合物を得た。
【0054】
注記
・前述の反応は、2-メチルテトラヒドロフラン中で実施される。先の反応で用いることができる代替溶媒は、テトラヒドロフランである。ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル及び/又はシクロペンチルメチルエーテルも、代替溶媒として用いることができると考えられる。
・前述の反応は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンのリチウム塩を用いる。用いることができる代替試薬は、ジイソプロピルアミンのリチウム塩である。
【0055】
中間体2
8-クロロ-2-(ピリジン-3-イル)キノリン-3-カルバルデヒド
窒素でフラッシュした反応器に、中間体1(10g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(200mg)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(200mg)、3-ピリジニルボロン酸(6g)、脱気エタノール(120mL)、脱気水(30mL)及びトリエチルアミン(7.7mL)を充填した。混合物を、反応が完了するまで70℃で加熱し、次に、温度を20℃に下げ、混合物を濾過した。反応器及び濾過ケーキを、水(2×5体積)で洗浄した。湿潤ケーキを、水(5体積)及びアセトニトリル(5体積)の混合物に懸濁させた。スラリーを60~65℃に加熱し、次に、塩酸(33%、1.3当量)を添加した後、トリエチルアミン(1.4当量)を添加した。混合物を1時間寝かせ、次に20℃に冷却し、濾過した。湿潤ケーキを、水/エタノール(50:50混合物)で洗浄した。ケーキを、40℃において真空下で乾燥させて、標題化合物を得た。
【0056】
中間体3
(NE)-N-{[8-クロロ-2-(ピリジン-3-イル)キノリン-3-イル]メチレン}-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド
窒素でパージした反応器に、(S)-(-)-2-メチル-2-プロパンスルフィンアミド(27g)、KHPO(5.4g) 中間体2(50g)及びKPO(31.5g)を充填した後、テトラヒドロフラン(165mL)を充填した。懸濁液を、反応が完了するまで40~45℃で加熱し、次に、混合物を10℃に冷却した。KHPO(22.7g)及び水(13体積)を添加し、スラリーを20℃で撹拌し、次に濾過した。固体残留物を、水及びKHPO水溶液で洗浄し、次に、40℃において真空下で乾燥させて、標題化合物を得た。
【0057】
中間体4
N-{(1R)-1-[8-クロロ-2-(ピリジン-3-イル)キノリン-3-イル]-2,2,2-トリフルオロエチル}アセトアミド、メタノール溶媒和物
窒素でパージした反応器に、中間体3(20g)、テトラブチルアンモニウムアセタート(3.24g)及びトルエン(140mL)を充填した。混合物を0℃に冷却し、反応温度を0~5℃に維持しながら(トリフルオロメチル)トリメチルシラン(11.5g)を添加した。反応混合物を、反応が完了するまで0~5℃で撹拌した。混合物を20℃に温め、次に水(100mL)に注いだ。水相を廃棄し、有機層を水で再び洗浄した。得られたトルエン溶液を、水(20mL)及び濃HCl水溶液(5.25当量)で処理した。反応混合物を50℃で加熱した。反応が完了した後、水層を、50~70℃において新鮮なトルエン(60mL)で抽出し、次に、中和する量の30%NaOH水溶液を添加した。有機層を分離し、水層を70℃においてトルエン(3体積)で再抽出した。合わせた有機相を、70℃において水(3体積)で洗浄し、次におよそ2.5体積の希釈度まで濃縮した。残留物を5~10℃に冷却し、次に、トリエチルアミン(1.5当量)を添加した。無水酢酸(1.3当量)を、反応温度を10℃未満に維持しながら滴下添加した。反応混合物を、40~45℃で1時間加熱し、次に、メタノール(約1.1体積)を添加した。結晶化を観測し、次に、懸濁液を-10℃に冷却し、濾過した。ケーキを-10℃においてメタノールで洗浄した。得られた固体を、40℃において真空下で乾燥させて、標題化合物を得た。
【0058】
中間体5
N-{(1R)-1-[8-クロロ-2-(1-オキシドピリジン-1-イウム-3-イル)キノリン-3-イル]-2,2,2-トリフルオロエチル}アセトアミド
中間体4を反応器に入れた。アセトニトリル(5体積)を反応器に移し、次に、酢酸(1.42当量)及び1.5MのKHCO水溶液(5体積)を添加した。混合物を40℃に加熱し、次に、過酢酸(酢酸中39%w/w溶液、2.0当量)を滴下添加した。混合物を、反応が完了するまで40℃で撹拌した。Naの1M水溶液(3.0体積)を40℃で滴下添加した。混合物を25℃に冷却し、次に、1MのNaOH水溶液(約7体積)を、pH7~13になるまで添加した後、水(5.0体積)を添加した。スラリーを0℃に冷却し、次に濾過した。湿潤濾過ケーキを、水で洗浄した。得られた湿潤固体を、40℃において真空下で乾燥させて、標題化合物を得た。
【0059】
中間体6
ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-オール
反応器に、イソブタノール(50g)及びホルムアミジン酢酸塩(45g)を充填した。スラリーを75~85℃に加熱し、次に、3-アミノピコリン酸(25g)を少しずつ添加した。スラリーを、反応が完了するまで加熱還流した。反応混合物を20℃に冷却し、次に、水(3.1mL)を添加した。スラリーを1時間撹拌し、濾過し、次に水で洗浄し、40℃において真空下で乾燥させて、標題化合物を得た。
【0060】
中間体7
4-エトキシピリド[3,2-d]ピリミジン
酢酸エチル(50mL)中、中間体6(10g)の懸濁液に、N,N-ジメチルエチルアミン(13.8g)を添加した。混合物を0~5℃に冷却し、次に、トリフルオロ酢酸無水物(15.8g)を添加した。反応の完了後、エタノール(59mL)中2.7Mのナトリウムエトキシドの溶液をゆっくり添加した。反応の完了後、酢酸(1.94mL)を添加し、残りのN,N-ジメチルエチルアミン及びエタノールを蒸留によって除去した。20%KCl水溶液(5体積)を添加し、次に、相を50℃で分離した。水層を、50℃において酢酸エチル(2×3体積)で再抽出した。合わせた有機層を共沸乾燥させ(azeodried)、次に、溶媒をメチルシクロヘキサンに変更した。濃度を7~8体積に調整した。蒸留残留物を、90℃において20%KCl水溶液(0.5体積)で洗浄した。有機層を、ゆっくり0℃に冷却した。得られた固体を濾過し、メチルシクロヘキサンで洗浄し、次に、40℃において真空下で乾燥させて、標題化合物を得た。
【0061】
(例1)
N-{(R)-1-[8-クロロ-2-(1-オキシピリジン-3-イル)キノリン-3-イル]-2,2,2-トリフルオロエチル}ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イルアミン、結晶形態F
濃硫酸(1.25体積)の水溶液(溶液の総体積は約4体積)を、反応器内で調製し、次に、中間体5を室温で添加した。得られた溶液を70℃で加熱し、反応が完了するまでその温度で維持した。反応混合物を0℃に冷却し、次に、2-メチルテトラヒドロフラン(1.0体積)を添加し、反応混合物を、28%アンモニアを添加することによって中和した。相を分離した後、水層を2-メチルテトラヒドロフランで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、次に、得られた溶液を木炭で濾過した。溶媒をn-プロパノールに変更し、次に共沸乾燥させた。蒸留残留物(約3体積)に中間体7(1.1当量)を充填し、次に、内部温度を60℃に上昇させた。反応混合物に、60℃において1MのHCl溶液(0.09当量)(別個の容器内で、塩化アセチルをn-プロパノールに添加することによって調製した)を添加した。得られた混合物を撹拌し、反応が完了するまで60℃で維持した。混合物を、ゆっくり-5℃に冷却し、次に、残留物を濾過によって収集した。湿潤ケーキを、n-プロパノールで洗浄し、-5℃に予冷した。残留物を、40℃において真空オーブン中で乾燥させて、標題化合物を得た。
【0062】
(例2)
N-{(R)-1-[8-クロロ-2-(1-オキシピリジン-3-イル)キノリン-3-イル]-2,2,2-トリフルオロエチル}ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イルアミン、結晶形態B(水和物)
例1を、pH10.5±0.5になるまでNaOHを添加することによって、40℃で2-メチルテトラヒドロフラン/水(26体積:4.5体積)に溶解させた。水層を廃棄した。有機層をブラインで洗浄し、次に水層のpHが中性になるまで水で洗浄した。溶媒を、真空下で蒸留することによって2-プロパノールに変更した(必要な場合、2-プロパノールを、溶解するまで65~75℃で添加することができる)。水を、2-プロパノール:水比がおよそ80:20になるまで、>65℃で溶液にゆっくり添加した。混合物を20℃にゆっくり冷却し、次に水を、2-プロパノール:水比がおよそ40:60になるまでゆっくり添加した。混合物を0.5時間寝かせ、次に、ゆっくり0℃に冷却した。スラリーを一晩寝かせた。残留物を濾過によって収集し、次に、0℃において2-イソプロパノール/水(40:60)で洗浄して、標題化合物を得た。
【0063】
(例3)
結晶形態B(水和物)から結晶形態Fへの変換
例2を、2-プロパノール(7体積)に溶解させた。50℃で1時間寝かせた後、溶媒(1.0~1.5体積)を蒸留によって除去した。混合物を0℃にゆっくり冷却し、次に、濾過した。湿潤ケーキを、40℃において真空下で乾燥させた。
【0064】
分析例
X線粉末回折(XRPD)
XRPDパターンを、Bruker D8回折計で、CuKα放射線(40kV、40mA)、θ-2θ角度計、V12の発散及びLynxeye検出器を使用して収集した。データ収集のために使用したソフトウェアは、Diffrac Plus XRD Commander 2.6.1であり、データは、Diffrac Plus Eva 13.0.0.3を使用して分析した。
【0065】
試料を、単結晶支持体上に置き、分析中、以下のデータ収集設定により、それら自体の面で回転させた。
・角度範囲4.5~30°2θ。
・増分:0.02。
・1ステップ当たりの時間:0.5秒/ステップ。
【0066】
結晶充填
固体形態の結晶回折測定を、単結晶X線回折計、モデルOxford Gemini R Ultra、Mo陽極で収集した。結晶構造を、方法SHELXL-97を使用してそれから分解した。
【0067】
示差走査熱量測定(DSC)
DSCサーモグラムを、TA Instruments Q2000熱量計を使用して得た。熱容量の較正は、サファイアを使用して行い、温度及びエネルギーの較正は、認定インジウムを使用して行った。40μLの穿孔アルミニウム鍋又は100μLの閉鎖ステンレス鋼鍋のいずれかを、10℃/分で25℃から300℃に加熱した。乾燥窒素パージを、試料上に50mL/分で維持した。データを、Thermal Advantage(Qシリーズ)バージョン5.4.0で収集し、Universal Analysisバージョン4.5Aで分析した。
【0068】
熱重量測定分析(TGA)
TGAサーモグラムを、Mettler Toledo TGA/SDTA851eで収集した。100μLのアルミニウム鍋を、10℃/分で25℃から500℃に加熱した。窒素パージを、熱天秤及びオーブンで、測定中50mL/分で維持した。データを、Starソフトウェア、バージョン9.30で収集し、分析した。
【0069】
動的蒸気収着(DVS)
2つの異なる種類のDVS装置を使用した。ここで、試料の重量取込みを、試料にわたって相対湿度に対してプロットする。
・SMS DVSを、ソフトウェアDVS Winによって制御した。試料温度を25℃に維持する。RH%(百分率として表される相対湿度)の関数としての試料の重量変化を、微量天秤によってモニタリングした。試料を、微量天秤に接続したガラス鍋上に置いた。湿気サイクルを、25℃において30~90%から0~30%RHで実施した(走査ステップ10%でdm/dt0.002)。
・Projekt Messtechnik Sorptions Prufsystem SPS 11-100n又は表面測定系DVS-1;試料を、微量天秤上のアルミニウム(SPS11)又は白金(DVS-1)ホルダーに入れ、25%RH及び25℃で調整した。湿気サイクルは、25℃において1時間当たり5%RHで、25~95%から0~25%RHで実施した。
【0070】
形態B
図1~3は、異なる水和比:水和物.nHO(0<n≦2)を有する水和固体形態のXRPDパターンを示す。図1:n=2。図2:n=1。図3:n≦1。XRPDパターンは、11.0°~11.1°、12.5°~12.6°、20.9°~21.1°、及び22.9°~23.0°2θ±0.2°2θにおける可変の特徴的なピークを示す。
【0071】
図4は、閉鎖鍋内で実施した水和物.nHOのDSCサーモグラムを示す。水和固体形態は、146℃±6℃で吸熱事象を示した後、無水形態Fへの再結晶化及びその後の形態Fの融解に対応する発熱事象を示す。
【0072】
図5は、水和物.nHOのTGAサーモグラムを示す。2つの明確な重量減少、並びにスペクトルの最初の連続勾配を観測した。連続勾配は、結晶表面の水を表す一方、25℃~150℃の間で特定された重量減少(5.97%は1.7分子に相当する)は、結晶充填と関連する水の放出に相当する。約210℃から開始する、観測された第2の重要な重量減少は、生成物の分解に相当する。
【0073】
図6は、可変相対湿度下の水和物の水分収着及び脱着を示すDVS曲線を示す。25%RHから95%RHで、連続的な水の取込みが観測される(約2.4%重量)。サイクルの第2の部分(95%RHから0%RH)では、試料は連続的に質量喪失し、低RHでは、3.3%重量の段階的な質量喪失が観測される。第3の部分(0%RHから25%RH)では、試料は、3.6%の段階的な水の取込みを示す。DVSプロファイルは、明らかに、水和物.nHOの可変含水量の挙動を示す。試料を、測定前及び測定後にXRPDによってチェックし、回折ピークのわずかなシフトを観測した。
【0074】
表1は、単結晶X線回折から誘導される通り、水和物.nHO(n=1及びn=2)の結晶格子比較を示す。それらは非常に類似しているように見える。
【表1】
【0075】
図7及び8は、それぞれ水和物.nHO(n=2及びn=1)の結晶充填を示す。
【0076】
図9は、両方の結晶充填の完全な重ね合わせを示す、水和物.nHO(n=2及びn=1)の構造的オーバーレイを提供しており、わずかな差異は、組み込まれた水分子の数である。
【0077】
形態Bの熱力学的及び動力学的安定性
水和固体形態(形態B)は、25℃/60%RH及び40℃/75%RHを意味するICH条件下で熱力学的に安定であることが見出された。熱力学的安定性は、形態Bの結晶を適切な溶媒/水の混合物に30日間懸濁させ、したがって、所望の水活性を伴う環境を作製することによってチェックした。水活性が、相対湿度(例えば、60%RH=水活性0.6)に等価であり、懸濁液における結晶と飽和溶液の間の分子交換がより急速なので、この手法により、固体形態の平衡状態を観測する可能性が得られる。したがって、形態Bは、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで7週間、動力学的に安定であることも見出された。動力学的安定性は、固体粉末試料を、選択された温度及び相対湿度で空気に曝露することによってチェックした。
【0078】
形態F
図10は、無水形態のXRPDパターンを示す。無水形態の特徴的なピークは、6.4°、8.7°、15.2°、15.5°、及び20.3°2θ±0.2°2θにおいて観測される。
【0079】
図11は、無水形態のDSCサーモグラムを示す。この固体形態は、238.5℃±5℃で特徴的な融解吸熱を示した後、発熱を示す。このことは、試料が融解時に分解することを示唆している。
【0080】
図12は、無水形態のTGAサーモグラムを示す。開始時の狭い連続勾配は、結晶表面の一部の溶媒を表している一方、210℃で開始する真の重量減少は、融解及び分解に相当する。
【0081】
図13は、可変相対湿度下の無水形態の水分収着及び脱着を示すDVS曲線を示す。図は、無水形態の非吸湿性挙動を示しており、限られた1%の水の取込みが70%RH以降に観測される。
【0082】
表2は、無水形態の結晶格子データを提供する。
【表2】
【0083】
図14は、無水形態の結晶充填を示す。
【0084】
形態Fの熱力学的及び動力学的安定性
無水固体形態(形態F)は、25℃/60%RH及び40℃/75%RHを意味するICH条件下では、熱力学的に安定でないことが見出された。熱力学的安定性は、形態Bの結晶について先に説明した通り、形態Fの結晶を適切な溶媒/水の混合物に30日間懸濁させることによってチェックした。それにもかかわらず、無水固体形態は、固体粉末試料を、選択された温度及び相対湿度で空気に曝露することを意味するICH条件下で動力学的に安定であることが見出された。したがって、形態Fは、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで7週間、動力学的に安定であることが見出された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14